公開日: 2016/03/22
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平成22年度税制改正(法人税制)

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〔Ⅰ〕 法人税制 改正のポイント

我が国の国税と地方税を合わせた法人実効税率は、国際的にみると高く、国際競争力などの観点から税率引下げの必要性が指摘されるところです。しかし、法人所得課税の負担に社会保険料の事業主負担をあわせてみると、国際的にも必ずしも高い水準ではないという見方もあります。

このところ法人課税の分野では、主に租税特別措置により特定の分野や活動に限られた財源を集中することで我が国経済を後押しする手法がとられてきました。しかし、諸外国をみれば、この間に課税ベースの拡大と併せた法人税率の引下げが進んできています。そこで、我が国でも、租税特別措置の抜本的な見直しなどを進め、これにより課税ベースが拡大した際には、成長戦略との整合性や企業の国際的な競争力の維持・向上、国際的な協調などを勘案しつつ、法人税率を見直していくこととされました。

このような方向性が示された上で、ことしの法人税制の改正は、グループ法人税制の整備や国際課税制度の強化、一人オーナー会社課税制度の廃止、租税特別措置の整理合理化などが行われました。

1 グループ法人税制の整備等

――資本に関係する取引等に係る税制――

企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、税制においても、法人の組織形態の多様化に対応するとともに、課税の中立性や公平性等を確保する観点から、見直しが行われました。

グループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現させるようグループの要素を反映した課税のあり方について検討することがふさわしいという考えが根底にあります。グループ法人税制は、法人相互の関係を反映したグループ法人全体を一つの納税主体とする制度として位置付けられます。グループ法人税制の対象となる法人のうち、自ら選択した企業に対しては、連結納税制度が適用されます。
選択した場合連結納税制度 (選択制) グループ法人税制 適用対象法人 グループ法人 選択しなかった 単体課税制度 場合は自動適用

グループ法人税制は、連結納税制度を選択した連結法人以外の法人については、「グループ法人単体課税制度」が自動適用されます。

そのおおまかな制度のしくみと概要は次のとおりです。

【1】 グループ内取引等に係る税制

① 100%グループ内(「完全支配関係がある」)法人間の取引について適用されます。

② 内国法人(普通法人又は協同組合等に限られます。)について適用されます。

③ 「完全支配関係がある」とは、次のいずれかです。

イ 一の者(個人や特殊関係のある個人、外国法人も含む。)が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有するなどの関係がある。

ロ 一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係がある。

※ 完全支配関係の判定においては、自己株式を発行済株式総数から除き、従業員持株会やストックオプションによる取得株式が発行済株式総数の5%未満である場合を除外するなど、従来の連結納税制度の考え方が踏襲されています。

① 完全支配関係がある内国法人間の資産の譲渡取引等(法法61の13)

連結納税制度においては既に「連結法人間取引の損益の調整制度」として導入されていた制度ですが、この制度が、完全支配関係がある内国法人間の取引に自動適用されることとなりました。

つまり、完全支配関係がある内国法人間で、譲渡損益調整資産(※)の移転(非適格合併による移転を含みます。)を行ったことにより生ずる譲渡損益は、実質的にその所得金額に反映しないこととなり、その資産がそのグループ外へ移転等されたときに、その移転を行った法人において損益を計上する制度とされました。これに伴い、適格事後設立制度が廃止されました。(法法2、旧法法62の5)

これに伴い、完全支配関係がある内国法人間の非適格株式交換等は、一定の外国親法人から交付される株式が合併等の対価である場合を除き、「非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度」の対象から除外されました。(法法62の9①カッコ書き)

(※) 譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいいます。

《適用期日》
この改正は、平成22年10月1日以後に行われる取引について適用されます。(平22改所法等附10、22、27)

(注) 対象は、100%グループに限定 棚卸資産、帳簿価額1,000万円未満の資産等は対象外  (財務省「平成22年度税制改正案について」(資料)P.11より)

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〔Ⅰ〕 法人税制 改正のポイント

我が国の国税と地方税を合わせた法人実効税率は、国際的にみると高く、国際競争力などの観点から税率引下げの必要性が指摘されるところです。しかし、法人所得課税の負担に社会保険料の事業主負担をあわせてみると、国際的にも必ずしも高い水準ではないという見方もあります。

このところ法人課税の分野では、主に租税特別措置により特定の分野や活動に限られた財源を集中することで我が国経済を後押しする手法がとられてきました。しかし、諸外国をみれば、この間に課税ベースの拡大と併せた法人税率の引下げが進んできています。そこで、我が国でも、租税特別措置の抜本的な見直しなどを進め、これにより課税ベースが拡大した際には、成長戦略との整合性や企業の国際的な競争力の維持・向上、国際的な協調などを勘案しつつ、法人税率を見直していくこととされました。

このような方向性が示された上で、ことしの法人税制の改正は、グループ法人税制の整備や国際課税制度の強化、一人オーナー会社課税制度の廃止、租税特別措置の整理合理化などが行われました。

1 グループ法人税制の整備等

――資本に関係する取引等に係る税制――

企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、税制においても、法人の組織形態の多様化に対応するとともに、課税の中立性や公平性等を確保する観点から、見直しが行われました。

グループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現させるようグループの要素を反映した課税のあり方について検討することがふさわしいという考えが根底にあります。グループ法人税制は、法人相互の関係を反映したグループ法人全体を一つの納税主体とする制度として位置付けられます。グループ法人税制の対象となる法人のうち、自ら選択した企業に対しては、連結納税制度が適用されます。
選択した場合連結納税制度 (選択制) グループ法人税制 適用対象法人 グループ法人 選択しなかった 単体課税制度 場合は自動適用

グループ法人税制は、連結納税制度を選択した連結法人以外の法人については、「グループ法人単体課税制度」が自動適用されます。

そのおおまかな制度のしくみと概要は次のとおりです。

【1】 グループ内取引等に係る税制

① 100%グループ内(「完全支配関係がある」)法人間の取引について適用されます。

② 内国法人(普通法人又は協同組合等に限られます。)について適用されます。

③ 「完全支配関係がある」とは、次のいずれかです。

イ 一の者(個人や特殊関係のある個人、外国法人も含む。)が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有するなどの関係がある。

ロ 一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係がある。

※ 完全支配関係の判定においては、自己株式を発行済株式総数から除き、従業員持株会やストックオプションによる取得株式が発行済株式総数の5%未満である場合を除外するなど、従来の連結納税制度の考え方が踏襲されています。

① 完全支配関係がある内国法人間の資産の譲渡取引等(法法61の13)

連結納税制度においては既に「連結法人間取引の損益の調整制度」として導入されていた制度ですが、この制度が、完全支配関係がある内国法人間の取引に自動適用されることとなりました。

つまり、完全支配関係がある内国法人間で、譲渡損益調整資産(※)の移転(非適格合併による移転を含みます。)を行ったことにより生ずる譲渡損益は、実質的にその所得金額に反映しないこととなり、その資産がそのグループ外へ移転等されたときに、その移転を行った法人において損益を計上する制度とされました。これに伴い、適格事後設立制度が廃止されました。(法法2、旧法法62の5)

これに伴い、完全支配関係がある内国法人間の非適格株式交換等は、一定の外国親法人から交付される株式が合併等の対価である場合を除き、「非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度」の対象から除外されました。(法法62の9①カッコ書き)

(※) 譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいいます。

《適用期日》
この改正は、平成22年10月1日以後に行われる取引について適用されます。(平22改所法等附10、22、27)

(注) 対象は、100%グループに限定 棚卸資産、帳簿価額1,000万円未満の資産等は対象外  (財務省「平成22年度税制改正案について」(資料)P.11より)

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