谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第18回】
「租税法律主義と実質主義との相克」
-税法の目的論的解釈の過形成【補遺】-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
今年前半を振り返ってみると、これまで経験したことのなかったことであるが、同一の判決の評釈を別々の雑誌に書いた。その判決は、東京地判平成29年12月6日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)であるが、1つ目の評釈は、既に『平成30年度重要判例解説』ジュリスト1531号(2019年4月)188頁で公表し、2つ目の評釈は、先月末に脱稿し『最新租税基本判例70』税研208号(2019年11月発刊予定)で公表することになっている。
今年3月に2つ目の評釈の依頼があった時には、1つ目の評釈に比べて紙数が少し多めであることから、解説を少し詳しく書くことにしようと考え引き受けたのであるが、その約2か月半後の令和元年5月29日に控訴審・東京高裁で示された判決(未公刊。以下「本件東京高判」という)に接してその方針を変更し、1つ目の評釈に比べて本件東京地判の解説を削減した上で本件東京高判についても紙数の許す限りできるだけ検討を加えることにした。
両判決はともに納税者の請求を認容して課税処分を取り消したが、その理由づけを異にする。とりわけ両判決の行った目的論的解釈は、両判決の論理構成において異なる意味を有するが、そのことを検討していくうちに、税法の目的論的解釈の「過形成」が惹起する、これまで検討してこなかった問題に気が付いた。
そこで、第16回をもって「一旦」検討を締め括った税法の解釈適用の「過形成」について「補遺」として本件東京地判及び本件東京高判における目的論的解釈を検討しておくことにするが、長くなったので2回に分けて掲載することにする(今回はⅡまで、次回はⅢ Ⅳ)。なお、前回の冒頭において、今回からは租税回避を検討する旨を予告しておいたが、租税回避の検討は次々回(第20回)からに変更させていただくことをお断りしておく。
本論に入る前に、本件の事実の概要について以下で述べておくことにする。
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