公開日: 2016/03/22
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平成22年度税制改正(国際課税税制)

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〔Ⅱ〕 国際課税税制 改正のポイント

1 タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)等の見直し(措法40の4~40の9、66の6~66の8、66の9の2~66の9の4他)

近年、経済取引のグローバル化の進展に伴い、外国関係会社との取引関係の操作や税負担の少ない国(タックス・ヘイブン国)を利用した租税回避行為の機会が高まっています。また、グロ-バル化が進む中、国境を超える取引が恒常的に行われるとともに、その取引も法人その他の多様な事業体の利用により複雑化しています。しかし、実際の課税や徴収の確保にあたっては、情報の把握の困難性や外国の主権により執行上の制約を受けるなど、税務執行が困難になる傾向が強まっています。

一方で、税務執行に係るルールを一層明確化し、経済取引の実態により即したものとすることは、納税者側に過大な負担をかけず、正常な企業活動を阻害しないために重要なことです。

このため、制度・運用の両面において租税回避を防止して我が国の適切な課税権を確保すると同時に、企業活動の活性化のための税務執行に係るルールを明確化・適正化する必要があります。

そこで、平成22年度改正では、国外に進出する企業の事業形態の変化や諸外国における法人税等の負担水準の動向に対応しながら、租税回避行為を一層的確に防止する観点から、内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆるタックス・ヘイブン税制)等について、次の見直しが行われました。(※タックス・ヘイブン=租税回避地)
 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い租税負担割合の基準(いわゆ るトリガー税率)が20%以下(改正前25%以下)に引き下げられました。(措令39 の14二) また、トリガー税率の計算における非課税所得の範囲から除くこととされている配 当等の範囲が拡大され、外国法人の所在地国の法令により、二重課税排除を目的と したものとして株式保有割合要件以外の要件により所在地国の課税標準に含まれな いこととされる配当等が追加されました。  外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人等の直接及び間接の外国関係会社株式 等の保有割合要件が10%以上(改正前5%以上)に引き上げられました。(措法66 の6、68の90)  特定外国子会社等の適用除外基準について、次の措置が講じられます。(措法66の6) イ 事業基準に関し、適用除外とならない「株式等の保有を主たる事業として営 む法人」の判定上、統括会社が保有する被統括会社の株式等については、「株 式等」から除外されます。 ロ 非関連者基準の判定上、卸売業を主たる事業として営む統括会社が被統括会 社との間で行う取引については、関連者取引に該当しないものとされます。 ハ 特定外国子会社等で所在地国基準又は非関連者基準を満たさないものが、事 業基準、実体基準及び管理支配基準を満たす場合の適用対象金額の計算にお いて、人件費の10%相当額を控除する措置が廃止されます。 (注1)「統括会社」とは、次のすべての要件を満たす特定外国子会社等をいいます。 1 内国法人等に係る特定外国子会社等で、その内国法人等により発行済株式 等の全部を直接又は間接に保有されていること 2 二以上の被統括会社を有し、その被統括会社の事業を統括する業務として 一定のものを行っていること 3 所在地国において統括業務に係る固定施設及び統括業務を行うに必要な従 業者(専ら統括業務に従事する者であって、その特定外国子会社等の役員を 除きます。)を有すること (注2)「被統括会社」とは、次のすべての要件を満たす外国法人をいいます。 1 統括会社が、発行済株式等の25%以上を直接に保有し、かつ、議決権の25% 以上を直接に保有するその統括会社の関連者(非関連者基準における関連者 であって、外国法人に限るものとし、内国法人等の同族関係者に係る関連者 を除きます。)であること 2 所在地国において、実体のある事業活動を行っていること (注3)内国法人等に係る特定外国子会社等が統括会社に該当する場合には、そ の特定外国子会社等が行う統括業務の内容及び被統括会社との資本関係図等 を確定申告書に添付しなければならないこととされます。  〈特定外国子会社等に係る資産性所得合算課税制度の導入〉 特定外国子会社等のうち適用除外基準を満たす者であっても、次に掲げる所得(以 下「資産性所得」といいます。)を有する場合には、その資産性所得について、内 国法人等のその特定外国子会社等に対する株式等の保有割合に応じ、内国法人等の 所得に合算して課税されます。(措法66の6) イ 株式保有割合10%未満の株式等の配当等に係る所得又はその譲渡(取引所又 は店頭における株式等の譲渡に限ります。)による所得 ロ 債券の利子に係る所得又はその譲渡(取引所又は店頭における債券の譲渡に 限ります。)による所得 ハ 工業所有権及び著作権(出版権及び著作隣接権を含みます。)の提供による所 得(特定外国子会社等により開発されたもの等から生ずる所得を除きます。) ニ船舶又は航空機の貸付けによる所得 ただし、特定外国子会社等の資産性所得の合計額がその特定外国子会社等の税引前 所得の5%以下である場合又は特定外国子会社等の資産性所得に係る収入金額の合 計額が1,000万円以下である場合(デミニマス基準:少額所得除外基準)には、本措置は適用されないこととされました。(措法66の6) (注1)資産性所得の金額は、その特定外国子会社等の課税対象金額が上限とさ れます。 (注2)資産性所得に係る収入金額から直接経費(収支の関係が明らかなものに 限ります。)が控除されます。ただし、株式等の配当等及び債券の利子につい ては、当期の支払利息を按分した金額の控除が認められます。 (注3)資産性所得のうち特定外国子会社等が行う事業(事業基準に掲げる事業 が除かれます。)の性質上、基本的かつ重要で欠くことのできない業務から生 ずる上記イ及びロの所得が除かれます。 内国法人等が外国法人から配当等を受ける場合には、その配当等の額のうち、内国 法人等の配当等を受ける日を含む事業年度及びその事業年度開始の日前2年以内に 開始した各事業年度における次のいずれか少ない金額に達するまでの金額は、益金 の額に算入されないこととされました。(措法66の8) イ その外国法人が他の外国法人(合算対象とされた金額を有さない者が除かれ ます。)から受けた配当等の額のうち、その内国法人等がその外国法人を通 じて間接に有する株式等に対応する部分の金額に相当する金額の合計額 ロ その他の外国法人につき合算対象とされた金額のうち、その内国法人等がそ の外国法人を通じて間接に有する株式等に対応する部分の金額の合計額  特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例につ いて、上記、ハ、及びと同趣旨の改正が行われました。(措法66の9の2)  その他所要の措置が講じられました。

トリガー税率=引き金になる税率

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1 タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)等の見直し(措法40の4~40の9、66の6~66の8、66の9の2~66の9の4他)

近年、経済取引のグローバル化の進展に伴い、外国関係会社との取引関係の操作や税負担の少ない国(タックス・ヘイブン国)を利用した租税回避行為の機会が高まっています。また、グロ-バル化が進む中、国境を超える取引が恒常的に行われるとともに、その取引も法人その他の多様な事業体の利用により複雑化しています。しかし、実際の課税や徴収の確保にあたっては、情報の把握の困難性や外国の主権により執行上の制約を受けるなど、税務執行が困難になる傾向が強まっています。

一方で、税務執行に係るルールを一層明確化し、経済取引の実態により即したものとすることは、納税者側に過大な負担をかけず、正常な企業活動を阻害しないために重要なことです。

このため、制度・運用の両面において租税回避を防止して我が国の適切な課税権を確保すると同時に、企業活動の活性化のための税務執行に係るルールを明確化・適正化する必要があります。

そこで、平成22年度改正では、国外に進出する企業の事業形態の変化や諸外国における法人税等の負担水準の動向に対応しながら、租税回避行為を一層的確に防止する観点から、内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆるタックス・ヘイブン税制)等について、次の見直しが行われました。(※タックス・ヘイブン=租税回避地)
 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い租税負担割合の基準(いわゆ るトリガー税率)が20%以下(改正前25%以下)に引き下げられました。(措令39 の14二) また、トリガー税率の計算における非課税所得の範囲から除くこととされている配 当等の範囲が拡大され、外国法人の所在地国の法令により、二重課税排除を目的と したものとして株式保有割合要件以外の要件により所在地国の課税標準に含まれな いこととされる配当等が追加されました。  外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人等の直接及び間接の外国関係会社株式 等の保有割合要件が10%以上(改正前5%以上)に引き上げられました。(措法66 の6、68の90)  特定外国子会社等の適用除外基準について、次の措置が講じられます。(措法66の6) イ 事業基準に関し、適用除外とならない「株式等の保有を主たる事業として営 む法人」の判定上、統括会社が保有する被統括会社の株式等については、「株 式等」から除外されます。 ロ 非関連者基準の判定上、卸売業を主たる事業として営む統括会社が被統括会 社との間で行う取引については、関連者取引に該当しないものとされます。 ハ 特定外国子会社等で所在地国基準又は非関連者基準を満たさないものが、事 業基準、実体基準及び管理支配基準を満たす場合の適用対象金額の計算にお いて、人件費の10%相当額を控除する措置が廃止されます。 (注1)「統括会社」とは、次のすべての要件を満たす特定外国子会社等をいいます。 1 内国法人等に係る特定外国子会社等で、その内国法人等により発行済株式 等の全部を直接又は間接に保有されていること 2 二以上の被統括会社を有し、その被統括会社の事業を統括する業務として 一定のものを行っていること 3 所在地国において統括業務に係る固定施設及び統括業務を行うに必要な従 業者(専ら統括業務に従事する者であって、その特定外国子会社等の役員を 除きます。)を有すること (注2)「被統括会社」とは、次のすべての要件を満たす外国法人をいいます。 1 統括会社が、発行済株式等の25%以上を直接に保有し、かつ、議決権の25% 以上を直接に保有するその統括会社の関連者(非関連者基準における関連者 であって、外国法人に限るものとし、内国法人等の同族関係者に係る関連者 を除きます。)であること 2 所在地国において、実体のある事業活動を行っていること (注3)内国法人等に係る特定外国子会社等が統括会社に該当する場合には、そ の特定外国子会社等が行う統括業務の内容及び被統括会社との資本関係図等 を確定申告書に添付しなければならないこととされます。  〈特定外国子会社等に係る資産性所得合算課税制度の導入〉 特定外国子会社等のうち適用除外基準を満たす者であっても、次に掲げる所得(以 下「資産性所得」といいます。)を有する場合には、その資産性所得について、内 国法人等のその特定外国子会社等に対する株式等の保有割合に応じ、内国法人等の 所得に合算して課税されます。(措法66の6) イ 株式保有割合10%未満の株式等の配当等に係る所得又はその譲渡(取引所又 は店頭における株式等の譲渡に限ります。)による所得 ロ 債券の利子に係る所得又はその譲渡(取引所又は店頭における債券の譲渡に 限ります。)による所得 ハ 工業所有権及び著作権(出版権及び著作隣接権を含みます。)の提供による所 得(特定外国子会社等により開発されたもの等から生ずる所得を除きます。) ニ船舶又は航空機の貸付けによる所得 ただし、特定外国子会社等の資産性所得の合計額がその特定外国子会社等の税引前 所得の5%以下である場合又は特定外国子会社等の資産性所得に係る収入金額の合 計額が1,000万円以下である場合(デミニマス基準:少額所得除外基準)には、本措置は適用されないこととされました。(措法66の6) (注1)資産性所得の金額は、その特定外国子会社等の課税対象金額が上限とさ れます。 (注2)資産性所得に係る収入金額から直接経費(収支の関係が明らかなものに 限ります。)が控除されます。ただし、株式等の配当等及び債券の利子につい ては、当期の支払利息を按分した金額の控除が認められます。 (注3)資産性所得のうち特定外国子会社等が行う事業(事業基準に掲げる事業 が除かれます。)の性質上、基本的かつ重要で欠くことのできない業務から生 ずる上記イ及びロの所得が除かれます。 内国法人等が外国法人から配当等を受ける場合には、その配当等の額のうち、内国 法人等の配当等を受ける日を含む事業年度及びその事業年度開始の日前2年以内に 開始した各事業年度における次のいずれか少ない金額に達するまでの金額は、益金 の額に算入されないこととされました。(措法66の8) イ その外国法人が他の外国法人(合算対象とされた金額を有さない者が除かれ ます。)から受けた配当等の額のうち、その内国法人等がその外国法人を通 じて間接に有する株式等に対応する部分の金額に相当する金額の合計額 ロ その他の外国法人につき合算対象とされた金額のうち、その内国法人等がそ の外国法人を通じて間接に有する株式等に対応する部分の金額の合計額  特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例につ いて、上記、ハ、及びと同趣旨の改正が行われました。(措法66の9の2)  その他所要の措置が講じられました。

トリガー税率=引き金になる税率

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