はじめに
平成21年度税制改正においては、このような経済金融情勢に即応し、世界経済の混乱やそれに伴う国内経済の不振から国民生活を守り、今年度からの3年間のうちに景気回復を最優先で実現するとの断固たる決意に基づいて、わが国の内需を刺激するため、大胆かつ柔軟な減税措置が講じられました。
まず、住宅投資の活性化を地域経済の起爆剤とするため、最大控除可能額が過去最高水準の600万円となる住宅ローン減税が導入された他、所得税から控除し切れない額は個人住民税からも控除できる制度が導入されました。あわせて、長期優良住宅の取得や省エネ、バリアフリー等の住宅リフォームについて、既存のローン減税の枠組みにとらわれない新たな減税措置が導入されました。また、土地需要を喚起し、土地の流動化と有効活用を強力に推進する観点から、今後2年間に取得する土地について、長期所有に係る譲渡益について新たな特別控除制度が設けられるとともに、同期間に土地を先行取得して他の土地を売却した場合の譲渡益課税の繰延措置が創設されました。あわせて、土地の売買等に係る登録免許税の軽減措置の現行税率が据え置かれました。
つぎに、設備投資を促進するため、成長力の強化と低炭素社会の実現に向け、資源生産性の向上に取り組むべく、省エネ・新エネ設備等に対する即時償却等を可能とする税制が導入されました。また、わが国企業が海外市場で獲得する利益について、その国内還流に向けた環境整備のため、海外子会社からの受取配当の益金不算入制度が導入されました。
また、中小企業対策として、金融不安や景気後退の影響を受けやすいことに鑑み、その経営を支援するため軽減税率が時限的に引き下げられるとともに、円滑な資金繰りに資するため欠損金の繰戻し還付制度が復活されました。また、中小企業の経営承継を円滑化するための新たな事業承継税制が導入されました。
さらに、上場株式等の配当等の軽減税率の3年間の延長、確定拠出年金制度・生命保険料控除の見直し、自動車重量税・自動車取得税の軽減措置等盛りだくさんの改正が行われました。
最後に、今回成立した所得税等の一部を改正する法律の附則第104条では、税制の抜本的改革に係る措置が平成23年度までに講じられることとされています。
本冊子では、これらの改正事項を体系化・図式化し、分かりやすく解説しました。実務家や経営者・資産家をはじめとした皆様方の実務のお役に立てれば幸いです。