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プロフェッションジャーナル No.657が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年2月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.657を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/19

日本の企業税制 【第148回】「政府系ファンドは消費税減税の財源となりうるか」

日本の企業税制 【第148回】 「政府系ファンドは消費税減税の財源となりうるか」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博   2月8日に実施された衆議院議員総選挙では、各政党が有権者に対して多くの政策を訴えた。その中で特に物価高を背景として最も注目を集めた論点の一つが消費税減税であった。 中低所得者を中心に生活苦を抱える人々への対応が求められる状況下において、効果的な政策を迅速に実行することが期待されるが、自由民主党が多くの議席を獲得して勝利したことから、「国民会議」を早急に設置して検討が加速されることになると予想される。   〇 各党の比較 政党による消費税減税に関する提案内容と財源に関する考え方を比較すると、それぞれに違いが出ていた。 政党名 提案内容 財源の考え方 自由民主党 飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後「国民会議」において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速。 社会保障支出の伸びを抑えるとともに、社会保険料等の負担を見直す。 特例公債には頼らない。 補助金や租税特別措置の見直し、また、税外収入などといった歳出・歳入全般の見直しが考えられる。 中道改革連合 食料品消費税ゼロおよび社会保険料等負担の低減。 インボイス廃止。 国の資産を一体運用して財源を生み出す「ジャパン・ファンド(政府系ファンド)」の創設や基金の活用。 日本維新の会 飲食料品は2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後「国民会議」において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速。 新聞については軽減税率の対象から除外し、標準税率を適用。 租税特別措置・補助金見直し担当室(日本版DOGE)を活用し、租税特別措置、高額補助金及び政府予算の基金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止するとともに、積極財政のための財源を改革で生み出す。 国民民主党 実質賃金が持続的にプラスになるまで一律5%。 外国為替資金特別会計(外為特会)や日銀が保有する上場投資信託(ETF)といった公的な金融資産の運用益や売却益。 参政党 消費税の段階的廃止。インボイス制度の即時撤回。 財政法4条を改正し、国債を財源とする政府支出を可能に。 国債償還政府通貨の発行による積極財政の実現と国債利払いからの脱却。 チームみらい 現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す(※消費税減税に関する言及なし)。 現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討。 入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ等、外国人旅行者の消費税免税制度の見直し等、日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討。 日本共産党 消費税廃止をめざし、ただちに5%に減税。 インボイス廃止。 消費税減税や社会保障・教育予算拡充などの恒常的な施策のために必要な財源(年間 30 兆円規模)は、大企業や富裕層に応分の負担を求めて格差と不公正を是正する税制改革や、軍事費や大企業補助金の削減などの歳出の改革によって確保。   〇 各国の政府系ファンド 仮に消費税の飲食料品にかかる現行8%の税率を0%あるいは非課税にした場合、年間約5兆円の税収が失われることになると試算されている。その財源として、中道改革連合や国民民主党は上記の通り、公的な資産運用等から得られる収益を財源として活用する案を主張していた。こうした考え方は、2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」において、政府全体のEBPMの強化の項目の中で、「公的部門が保有する資産について、その保有目的等も踏まえつつ、運用改善や有効活用の有用性を検討する」旨が明記されていた経緯がある。現在、公明党は連立政権から離脱しているが、2025年11月11日の高市早苗総理大臣と岡本三成衆議院議員との国会質疑において、「骨太方針2025」が現政権においても有効な文書であることが確認されている。 また、同様の仕組みは海外でも政府系ファンド(SWF:Sovereign Wealth Fund)として多くの国で活用されている。Global SWFの統計によると、中央銀行や年金基金を含めた世界のSWFの資産運用残高は過去最高の15兆ドル(1ドル=155円で換算すると2,325兆円)に達しており、2026年2月現在の資産運用額ランキングは表の通りである。 世界第4位で2025年度第3四半期末現在の運用資産総額が293兆4,276億円である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2001年度から2025年度第3四半期までの累積収益額として196兆3,721億円(うち、利子・配当収入は60兆2,838億円)を獲得しており、年率での収益率は4.71%である。運用資産として、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券をそれぞれ約25%ずつで構成しており、長期的な観点からの基本ポートフォリオを策定している。 順 位 組織 国 分類 運用資産額 (10億ドル) 1 中国人民銀行(PBoC) 中国 中央銀行 3,723.65 2 ノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM) ノルウェー SWF 2,048.09 3 中国国家外国為替管理局インベストメント・カンパニー(SAFE IC) 中国 SWF 1,951.96 4 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 日本 年金基金 1,868.26 5 中国投資有限責任公司(CIC) 中国 SWF 1,567.33 6 日本銀行 日本 中央銀行 1,341.27 7 アブダビ投資庁(ADIA) UAE(アブダビ) SWF 1,186.97 8 パブリック・インベストメント・ファンド(PIF) サウジアラビア SWF 1,151.28 9 スイス国立銀行 スイス 中央銀行 1,054.11 10 クウェート投資庁(KIA) クウェート SWF 1,002.03 11 韓国国民年金公団(NPS) 韓国 年金基金 972.75 12 連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB) アメリカ 年金基金 963.37 13 シンガポール政府投資公社(GIC) シンガポール SWF 935.98 14 ロシア連邦中央銀行(CBR) ロシア 中央銀行 741.5 15 インド準備銀行(RBI) インド 中央銀行 687.26 16 オランダ公的年金基金(APG) オランダ 年金基金 641.01 17 中華民国中央銀行(CBC) 台湾 中央銀行 600.2 18 カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS) アメリカ 年金基金 595.8 19 カタール投資庁(QIA) カタール SWF 579.87 20 ドイツ連邦銀行(DB) ドイツ 中央銀行 558.8   (了)

#No. 657(掲載号)
#魚住 康博
2026/02/19

〔令和8年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】「中小企業経営強化税制の見直しと延長」

〔令和8年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】 「中小企業経営強化税制の見直しと延長」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和7年度税制改正における改正事項を中心として、令和8年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。 【第1回】は「中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長」及び「中小企業投資促進税制の見直しと延長」について解説した。 【第2回】は「中小企業経営強化税制の見直しと延長」について解説する。   ◎ 「中小企業経営強化税制」の見直しと延長 「中小企業経営強化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得し指定事業に供用した場合に、即時償却又は税額控除(7%又は10%)を認める制度である。 特定中小企業者等(※) 即時償却 又は 税額控除 10% 上記以外の中小企業者等 即時償却 又は 税額控除 7% (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 令和7年度税制改正により、適用期間、対象資産及び要件について下記の通り一定の見直しが行われている。 ① 適用期限の延長 令和7年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象とされていたが、これが2年延長され、令和9年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。 ② 対象設備及び要件の見直し 生産性向上設備(A類型)の指標見直し 生産性向上の指標について、「単位時間当たり生産量」、「歩留まり率」又は「投入コスト削減率」のいずれかに限定 収益力強化設備(B類型)の要件厳格化 投資計画における投資利益率の要件を、年平均5%以上から年平均7%以上に引上げ デジタル化設備(C類型)の廃止 デジタル化設備(C類型)は、令和7年3月31日をもって本税制の対象から除外 令和7年度税制改正後の、適用対象となる設備は次の通りである。 生産性向上設備 (A類型) 収益力強化設備 (B類型) 経営資源 集約化設備 (D類型) 要件 生産性が旧モデル比で年平均1%以上向上する設備(生産性の指標は「単位時間当たり生産量」、「歩留まり率」又は「投入コスト削減率」のいずれか) 投資利益率が年平均7%以上の投資計画に係る設備 修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備 確認者 工業会等 経済産業局 経済産業局 対象設備 機械装置 全て ➤1つ160万円以上 ➤販売開始から10年以内 全て ➤1つ160万円以上 全て ➤1つ160万円以上 工具 測定工具及び検査工具 ➤1つ30万円以上 ➤販売開始から5年以内 全て ➤1つ30万円以上 全て ➤1つ30万円以上 器具備品 全て ➤1つ30万円以上 ➤販売開始から6年以内 全て ➤1つ30万円以上 全て ➤1つ30万円以上 建物附属設備 全て ➤1つ60万円以上 ➤販売開始から14年以内 全て ➤1つ60万円以上 全て ➤1つ60万円以上 ソフトウェア 情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの ➤1つ70万円以上 ➤販売開始から5年以内 全て ➤1つ70万円以上 全て ➤1つ70万円以上   令和7年度税制改正により、対象資産について下記の通り一定の見直しが行われている。 対象資産 ➤暗号資産マイニング業の用に供する設備は対象外とする また、売上高100億円超を目指す中小企業に対する、B類型の拡充措置(E類型)が創設された。 経営規模拡大設備 (E類型) 要件 ➤投資利益率が年平均7%以上の投資計画に係る設備 ➤経済産業大臣が定める経営規模拡大要件(※)に適合することにつき確認を受けた投資計画に係る設備 ➤合計60億円が限度 確認者 経済産業局 対象設備 機械装置 全て ➤1つ160万円以上 工具 全て ➤1つ30万円以上 器具備品 全て ➤1つ30万円以上 建物及び その附属設備 全て ➤1つの建物及びその附属設備の合計額1,000万円以上 ソフトウェア 全て ➤1つ70万円以上 (※) 経営規模拡大要件の詳細は次の通り。 ➤ 売上向上のための施策及び設備投資時期を示した行程表(ロードマップ)を作成していること ➤ 基準事業年度(計画の認定申請を行う事業年度の直前事業年度)の売上高が10億円超90億円未満であること ➤ 売上高100億円超を目指すための事業基盤、財務基盤及び組織基盤が整っていること ➤ 売上高100億円超及び年平均10%以上の売上高成長率を目指す投資計画であること ➤ 次の要件を満たす設備投資を行う投資計画であること ① 導入予定の設備が売上高の増加に貢献するものであること ② 計画の認定を受けた日から2年以内に導入予定の設備の取得価額の合計額が、1億円と基準事業年度の売上高の5%相当額とのいずれか高い金額以上であること ③ 生産性の向上に資する設備の導入に伴い、建物及びその附属設備の新設又は増設をするものであること ➤ 投資計画の計画期間中において、給与等の支給額を増加させるものであること ➤ 上記の他、売上高100億円超を目指すために必要とされる要件を満たすこと 上記の要件を満たす設備(建物及びその附属設備以外)については、即時償却又は税額控除(7%又は10%)が認められる。 特定中小企業者等(※) 即時償却 又は 税額控除 10% 上記以外の中小企業者等 即時償却 又は 税額控除 7% (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 建物及びその附属設備については、給与増加割合に応じて特別償却又は税額控除が認められる。 給与増加割合 特別償却 税額控除 2.5%以上 15% 1% 5%以上 25% 2% (※) 2.5%未満の場合は特別償却及び税額控除は適用不可 経済産業大臣による確認を受けた中小企業者等は、その確認を受けた投資計画の期間中は、「中小企業投資促進税制」及び「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用できない。 令和7年度税制改正後の中小企業経営強化税制は、令和7年4月1日から令和9年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされる。したがって、令和8年3月期の決算申告において適用されることになる。 (了)

#No. 657(掲載号)
#新名 貴則
2026/02/19

相続税の実務問答 【第116回】「相続時精算課税を適用した贈与財産が無価値になった場合」

相続税の実務問答 【第116回】 「相続時精算課税を適用した贈与財産が無価値になった場合」   税理士 梶野 研二   [答] 相続時精算課税の適用に係る贈与者に相続が開始した場合、その贈与者から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものについては、その贈与者の相続開始までの間に、贈与を受けた財産の価額が減少し、あるいはその財産が消滅し又は無価値になったとしても、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算又は算入しなければなりません。 ご質問の場合には、A社の株式の贈与を受けた時の価額3,000万円を相続税の課税価格に加算しなければなりません。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続時精算課税 (1) 相続時精算課税は、贈与時に、一定の贈与者(特定贈与者)からの贈与により取得した財産に対する贈与税を納め、その後、その贈与者が亡くなったときに、「相続時精算課税を適用した贈与財産の価額」と、相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を基に算出した相続税額から既に納めた相続時精算課税に係る贈与税に相当する金額を控除した額を相続税額として納めることにより、贈与税と相続税を通じた一体的な課税を実現することができる課税方法です (2) この場合の「相続時精算課税を適用した贈与財産の価額」は、当該贈与財産の贈与の時における価額とされています(相法21の15①、21の16③、相基通21-15-2)。 このため、贈与を受けた後、その特定贈与者に相続が開始するまでの間に、贈与を受けた財産の価額が上昇したとしても、贈与を受けた時の価額を基に相続税を計算することとなりますから、この場合の贈与税と相続税の総合的な税負担は、当該贈与を受けた財産を相続まで待って相続によって承継するよりも有利となります。例えば、地価の上昇が見込まれる土地を地価が上昇する前に相続時精算課税を適用して贈与することにより、その贈与者に相続が開始した場合の相続税の負担を低く抑えることができます。また、親の有する取引相場のない株式を子に相続時精算課税により贈与することにより、その後、株式の贈与を受けた子の経営努力によって会社が成長し、株式の価額が上昇したとしても、贈与時の価額によって相続税が計算されることから、会社を成長させることにより自らの税負担が増加することはなくなりますので、子の会社経営に意欲がわくこととなります。 一方、相続税の課税価格に加算される金額が、贈与時の価額に固定されるため、贈与を受けた財産の価額が、贈与者の相続開始時までに下がったとしても、贈与時の高い価額を基に相続税が計算されることとなります。さらに、相続開始時までの間に、贈与を受けた財産が消滅し、又は無価値となってしまった場合であっても、贈与時の価額で相続税が計算されることとなりますので、税負担の軽減を狙って生前に贈与したとしてもそれが裏目に出ることとなります。 相続時精算課税を選択した場合には、このように納税者に有利となることもあれば、不利に働くこともあります。 (3) このような現象を引き起こす相続時精算課税は、贈与を受けた後、贈与を受けた者の判断と責任の下にその運用若しくは利用が行われることから、贈与を受けた財産の価額が、贈与を受けた後に増加し、又は減少したとしても、その結果は贈与を受けた者に帰属するとし、贈与者である被相続人から承継するものではないとする考え方が根底にあるといえます。 (注) 暦年課税贈与においても、加算対象期間内に行われた贈与については、贈与時の価額が相続税の課税価格に加算されることから、相続時精算課税を適用した場合と同様の現象が起こり得ます。従来は、暦年贈与における加算期間が贈与者の相続開始前3年以内でしたから、この間に、贈与を受けた財産の価額の変動幅もそれほど大きくはならず、あるいは贈与を受けた財産が消滅又は無価値になる可能性はそれほど高くはなかったといえます。令和5年度税制改正により、段階的に加算期間が延び、最終的には贈与者の相続開始前7年間になりますので、従来に比して、価額変動等の幅は大きくなり、贈与財産が消滅又は無価値になる可能性も高くなったといえますが、相続時精算課税における変動幅に比較すれば、その可能性はなお小さいといえます。   2 災害により相続時精算課税に係る財産の価値が減少した場合 相続時精算課税の利用件数は、制度の創設時に比して低迷しており、その原因として、贈与財産の価額が減少し、又はその財産が消滅し、若しくは無価値になったとしても贈与時の価額で相続税が計算されるリスク、とりわけ、贈与を受けた者に責任のない災害等によるリスクが指摘されていました。そのため、令和5年度税制改正において、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した土地又は建物が、令和6年1月1日以降に災害により一定の被害を受けた場合において、当該相続時精算課税適用者が税務署長の承認を受けたとき(災害発生日から3年を経過する日までに申請書を提出する必要があります。)は、当該特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算される土地又は建物の金額を、その贈与の時における価額からその災害により被害を受けた部分に対応するものとして計算した金額を控除した残額とすることができる制度(災害特例制度)が設けられました(措法70の3の3①、措令40の5の3⑤)。 この災害特例制度における災害とは、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいいます(措法70の3の3①、措令40の5の3①)。   3 質問の場合 相続時精算課税の適用に係る贈与者に相続が開始した場合、その贈与者から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものについては、原則として、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算又は算入しなければなりません。 上記2の災害特例制度は、令和6年1月1日以後の災害による被害が生じた場合に適用され、その対象となる財産は土地及び建物に限られていますし、新型コロナ感染症の蔓延を原因とする会社の倒産は、上記の災害による被害でもありませんので、ご質問の場合には、この災害特例制度は適用されません。また、相続時精算課税に係る財産の価額の減少、その財産の消滅又は無価値化の原因が贈与を受けた者の責めに帰さないものであったとしても、この災害特例制度以外には贈与者に相続が開始した際に相続税の課税価格に加算又は算入する価額を減額することを認める規定はありません。 したがって、あなたがお父様からA社の株式の贈与を受けた時の価額3,000万円を、あなたの相続税の課税価格に加算しなければなりません。 相続時精算課税を選択しようとする場合には、その選択が、贈与税・相続税を通じた税負担の面で、有利になることもあれば、逆に不利となることもあり、大きなリスクを背負うものであることを十分に認識する必要があるといえます。 (了)

#No. 657(掲載号)
#梶野 研二
2026/02/19

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第90回】「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その1)」~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第90回】 「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける 低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その1)」 ~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~   税理士 青木 幹     1 事案の概要 (1) Fら(F及びGをいう)及び上場内国法人H社は、内国法人E社(原告。平成18年8月に設立され、インターネット・携帯電話網等の情報処理通信網を利用したマーケティング・広告宣伝・商品の発注・物流・代金決済・管理等のサービス業務等を目的とする会社)を内国法人H社の完全子会社化するスキームについて基本合意をし、平成27年1月6日付けで覚書(以下、「本件覚書」という)を作成した。その後にFらは、平成27年2月設立の内国法人C社の全株式200株をC社の代表取締役から100株ずつ譲り受けて所有した【概要図①】。 ◆平成27年3月29日以前 【概要図①】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※TAINZコード:Z271-13626の別紙【取引関係図】を参照のうえ、筆者作成(以下、同様) (2) 平成27年3月30日に外国法人D社は保有するE社株式の全部を内国法人C社へ12億1,000万円で譲渡(以下、「本件譲渡」という)した【概要図②】。 ◆平成27年3月30日【概要図②】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (3) 平成27年4月24日にFらは、J市場に上場している内国法人H社に対して株式交換によりC社の全株式200株を移転し、H社株式883,400株(13億1,538万2,600円相当)の移転を受けた【概要図③】。 ◆平成27年4月24日【概要図③】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (4) 平成27年11月●日に合併存続法人を内国法人E社とし、被合併法人を内国法人C社とする合併をし、E社の社名をA社に変更した【概要図④】。 ◆平成27年11月●日合併後【概要図④】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 当事者間の合意事項 上記事案の概要に記した行為は、以下の合意に基づいて行われた。 (1) 本件覚書(FらとH社の代表との間で締結)において、H社はE社の企業価値を30億2,000万円と評価し、同額の現金等価物のうち最低12億1,000万円は現金とするが、現金が最大となるように両者は努力し、現金部分は、D社を経由して引き渡すものとする。D社が保有するE社株について、Fらによって設立又は所有された会社(C社)が12億1,000万円でE社株式を取得し、その後、H社は、Fらが所有するC社株式とH社株式(18億1,000万円相当)を交換することにより、実質的にE社をH社の子会社にするものとする。 (2) 平成27年3月2日付け基本合意書を(H社、C社、D社、原告E社及びFらの間で)作成した。その要旨は以下のとおりである。 (3) 合意当事者は、C社株式及び本件E社株式の価値算定は収益還元法によることを基本とし、算定資料はC社及びH社が提出した事業計画及びその他の資料であることを確認する。基本合意締結日のC社株式の1株あたりの価値が1,248万6,203円から1,658万3,137円、本件E社株式の1株あたりの価値が843万7,622円から1,031万2,649円であることを相互に確認する。これらは第3者算定機関であるK株式会社により算定されたものである。合意当事者は、この算定に基づく株式価値により、株式交換比率及び譲渡対価を定めるものとする。 (4) 平成27年3月2日又は別途合意した日に、以下のとおり株式交換契約をH社とC社で締結する。H社を株式交換完全親会社、C社を株式交換完全子会社とし、C社株式1株につきH社普通株式4,417株を交付する。H社は、株式交換に際して88万3,400株を新たに発行する。株式交換効力発生日を平成27年4月24日とする。 (5) 平成27年3月30日をめどにC社とD社で株式譲渡契約を締結し、C社は本件E社株式の全部を譲渡対価12億1,000万円を上限にD社から譲り受ける。その他譲渡の諸条件は株式譲渡契約で定める。なお、本件譲渡が行われた平成27年3月30日のH社のJ市場の終値は1株あたり1,489円であった。 (6) 平成27年3月2日付けでH社及びC社は株式交換契約を締結し、平成27年4月24日を効力発生日とし、H社を完全親会社、C社を完全子会社とする株式交換を行った。H社は、FらにH社株式88万3,400株(Fらが保有するC社株式200株に交換比率4,417を乗じた株数)を割り当て交付した。   3 本件訴訟にいたる経緯 C社は、渋谷税務署長に対して平成28年1月24日に本件事業年度の法人税及び地方法人税について青色申告による確定申告書を期限内に提出した。平成30年7月27日付けで行政処分庁はC社分の本件確定申告について、本件更正処分及び賦課決定処分を組織再編成により権利義務を引き継いだA社(旧社名E社)に対して行った。 A社による平成30年10月25日付けの本件処分の取り消しを求めた再調査の請求は、平成30年12月17日付けで東京国税局長により棄却され、令和2年3月2日付けの国税不服審判所での裁決を経て、A社は令和2年9月1日に東京地方裁判所に提訴した。 なお、【概要図③】に示す株式交換及び【概要図④】に示す合併により本件の原告は株式を譲り受けたC社ではなく、C社の権利義務を引き継いだE社(名称変更によりA社)となっている。   4 争点   5 争点1に関する原告の主張 (1) 本件譲渡は、基本合意書に基づいて本件株式譲渡と株式交換を順次行ったものであり、本件E社株式の譲受けと株式交換はスキームの中で一体として行われたものであって、個別に行われたものではない。本件株式の対価12億1,000万円とFらが株式交換によるH社から移転を受けたH社株式88万3,400株(当時の時価13億1,538万2,600円)の取引は一体であり、C社がD社に対して支払った12億1,000万円に加えて、C社D社に13億1,538万2,600円(Fらが移転を受けたH社株式88万3,400株の時価と同額)を加えた金額を支払わなければならないということはあり得ない。C社からD社に13億1,538万2,600円の贈与があったとする本件更正処分の事実認定は誤っており違法である。 (2) 被告の主張は、法人税法22条2項の受贈益の額は、資産が低額譲渡された場合には、常に資産の対価と適正な価額の差額が益金の額に算入されるという解釈を前提にしているが、このような解釈は誤っている。受贈益の額は、資産の対価と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額があるとき」に限られると解される。資産の低額譲渡を定めた法人税法37条8項は、資産の対価と適正な価額との差額のうち、「実質的に贈与(中略)をしたと認められる金額」のみが寄附金となると規定し、同様に、資産の低額譲受け等における受贈益の額について定めた法人税法25条の2第3項も、資産の対価の額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額とされている。 (3) 以上から「実質的に贈与を受けたと認められる金額」は、「全契約の内容」に従って判断されるべきであり、株式交換がされたから、「実質的に贈与をされた金額」はなく、C社には受贈益の額はない。   6 争点1に関する被告の主張 (1) 法人税法22条2項は、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資本等取引以外の収益の額である。同項にいう「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け」は資本等取引以外の取引の例示であり、それゆえに同項は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のもの」に関わる収益の額を益金の額に算入していると解される。資産の低額譲受けの場合であっても、当該資産の適正な価額に相当する経済的価値の実現が認められることは、無償資産の譲受けと同様であるから、当該資産の適正な価額に相当する価値が収益の額として益金の額に算入されるべきである。  本件に関する第三者機関の評価は、36億円を上回るとされており、この評価が不合理であるとする理由も見当たらないことに加えて、本件各合意当事者において、本件株式の価額が25億2,538万2,600円(本件対価の額12億1,000万円+H社株式88万3,400株に1,489円を乗じた金額13億1,538万2,600円)と評価されていたことからすれば、本件株式の適正な価額は、25億2,538万2,600円を下回るものではなく、同金額を適正な価額とみることに合理性がある。  したがって、本件対価の額12億1,000万円は、本件株式の適正な価額25億2,538万2,600円に比して低額であるから、本件譲渡は低額譲渡に当たり、対価と適正な時価の差額13億1,538万2,600円は受贈益の額に当たり、本件事業年度の益金の額に算入されるべきである。 (2) 原告は本件スキームにおける本件株式譲受けと本件株式交換とは一体の取引であって、各取引において本件株式の時価に相当する25億2,538万2,600円で取引されているから、各取引者が贈与をしたり贈与を受けたりすることはないと主張するが、本件株式譲受けと本件株式交換は、取引の当事者、取引の対象となる資産及び取引形態が異なり別々の取引である。原告が指摘する法人税法25条の2第1項は、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係のある他の内国法人から受けた受贈益について、益金の額に算入しない旨を規定し、同条3項は資産の対価の額との差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額になるとする根拠に上記を主張するが、同項は、あくまで内国法人が他の内国法人との間に完全支配関係のある場合に、同条1項において不算入とされる受贈益についてその額を定めているに過ぎない規定であって、同法22条2項にいう「別段の定め」に該当するものである。このような特則の規定から溯って、益金算入に関する一般規定である同項の解釈を導き出すことは相当でない。 (3) 原告は、法人税法22条2項の解釈について、資産の低額譲受けがあった場合に、益金の額に算入すべき受贈益の額は「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると主張するが、そのように限定する理由はない。仮に原告の主張するように「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られるとしても、上記のとおり本件株式の譲受けにより13億1,538万2,600円の差額が出ている以上、当該差額が「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に該当する。 (4) したがって、本件対価の額と適正な価額との差額13億1,538万2,600円は、受贈益の額にあたり、益金の額に算入されるべきであるから、原告の主張には理由がない。 ((その2)へ続く)

#No. 657(掲載号)
#青木 幹
2026/02/19

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第17回】「リスク管理の開示 ~リスク・マネジメントのプロセスをわかりやすく示す」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第17回】 「リスク管理の開示 ~リスク・マネジメントのプロセスをわかりやすく示す」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔ジャーナル食品社の登場人物〕 *  *  * SSBJ基準では、企業がサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示を行うにあたり、次の4要素を開示することが求められます(【第14回】参照)。 企業は、さまざまな不確実性(リスク)に直面しています。こうしたリスクを把握・評価し適切に対応するために企業が設ける体系的なプロセスは、リスク・マネジメントと呼ばれます。上記の「リスク管理」は、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントについての開示を求めるものです。 *  *  * *  *  * 【(株)ニッスイ 2025年3月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】 より抜粋) *  *  * *  *  * サステナビリティ関連のリスクは単独で存在するとは限らず、他のリスクと密接に関わることもあります。そのため、これらのリスクを総合的なリスク管理体制の中で把握・評価・対応することが不可欠です。 情報利用者である投資家も、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントが全社的なリスク・マネジメントにどのように組み込まれているかにも大きな関心を寄せていると考えられます。 *  *  * 【イオンモール(株) 2025年2月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】より抜粋) (第2 事業の状況 3【事業等のリスク】より抜粋) *  *  * なお、有価証券報告書の【事業等のリスク】欄の記載にあたっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を踏まえわかりやすく説明することが求められています。リスクの重要性(マテリアリティ)をどのように判断しているかの説明や、リスクを把握し管理する体制・枠組みについての説明も含めることが望ましいとされています(※)。 (※) 金融庁「記述情報の開示に関する原則」参照 サステナビリティ関連財務開示の「リスク管理」は、一定要件を満たせば、こうした【事業等のリスク】などの箇所の記載を参照する形をとることもできると考えられます。 *  *  * *  *  * 【リスクの評価を説明する際に利用される図表のイメージ】 *  *  * *  *  * 4つのコア・コンテンツのうち「リスク管理」の開示は、企業がサステナビリティ関連のリスクや機会をどのように識別・評価・優先順位付け・モニタリングしているのか、そしてそれが全社的なリスク・マネジメントにどのように組み込まれているのかを伝える情報です。 「ガバナンス」(【第15回】参照)や「戦略」(【第16回】参照)と合わせて開示されることで、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントの全体像を伝える役割を果たします。 *  *  * Q サステナビリティに関するリスク管理についてどのような開示をするの? A サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価・優先順位付け・モニタリングするプロセスと、それが全体的なリスク・マネジメントにどのように統合されているかについて開示します。サステナビリティ関連のリスク・マネジメントの全体像を伝える役割を担っています。 (了)

#No. 657(掲載号)
#石王丸 香菜子
2026/02/19

連結会計を学ぶ(改) 【第15回】「子会社の資産及び負債の評価」

連結会計を学ぶ(改) 【第15回】 「子会社の資産及び負債の評価」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価することになる(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)20項)。 今回は、資本連結に関する子会社の資産及び負債の評価について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社の資産及び負債の評価 1 全面時価評価法 支配獲得時における資本連結の手続には次のものがある(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)3項)。 連結会計基準は、連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価するとし、「全面時価評価法」を規定している(連結会計基準20項)。 時価により評価する子会社の資産及び負債の範囲については、部分時価評価法と全面時価評価法とが考えられる(連結会計基準61項、資本連結実務指針57項)。 前述のように、連結会計基準では「全面時価評価法」だけを採用している。 なお、持分法を適用する関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分については、部分時価評価法により、原則として投資日ごとに当該日における時価によって評価する(連結会計基準61項)。 2 時価 資本連結実務指針は、子会社の資産及び負債の時価評価額について、原則として市場価格等に基づく評価額とするが、子会社の株式取得時に、個々の貸借対照表項目について、当該株式の売買契約等により取得側と売却側との間に合意された評価額が存在し、かつ、それらに合理性がある場合には、当該金額によることができると規定している(資本連結実務指針12項)。 3 評価差額 子会社の資産及び負債の時価による評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)は、子会社の資本になる(連結会計基準21項)。 これに関して、資本連結実務指針は、連結貸借対照表の作成に当たっては、支配獲得日において、取得した株式に係る子会社の資産及び負債を時価により評価し、この時価評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額を資産及び負債の帳簿価額の修正額(以下「時価評価による簿価修正額」という)として計上するとともに、その純額を「評価差額」として子会社の資本に計上すると規定している(資本連結実務指針11項)。 時価評価による簿価修正額が税効果会計上の一時差異に該当する場合、当該一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を計上し、当該税効果額は法人税等調整額に計上せずに直接評価差額から控除することになる。したがって、評価差額の残高は当該税効果額を控除した後の金額となる(資本連結実務指針11項)。 なお、評価差額に重要性が乏しい子会社の資産及び負債は、個別貸借対照表上の金額によることができる(連結会計基準22項)。この場合の重要性の有無は、個々の貸借対照表項目の時価評価による簿価修正額ごとに判断する(資本連結実務指針13項)。 親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本については、投資と資本の相殺消去の資本連結手続が行われる(連結会計基準23項、24項)。 資本連結手続において相殺消去の対象となる子会社の資本の額は、以下の①及び②に③の項目を加えた額となる(以下の金額はいずれも当期までの期間に課税された法人税等及び税効果額控除後の金額である。資本連結実務指針9項)。 資産及び負債の時価評価の結果生じた評価差額は、個別貸借対照表の資本に計上されても投資と資本との相殺消去により消去され、又は非支配株主持分へ振り替えられて連結貸借対照表の資本には計上されない(資本連結実務指針57項)。 具体的な会計処理は、資本連結実務指針の「設例10 資産の売却により評価差額が実現した場合」を参照していただきたい。 4 時価評価による簿価修正額及び評価差額の計上後の処理 次の会計処理が行われる(資本連結実務指針25~29項、64項、設例10、「金融商品会計に関するQ&A」Q75)。   (了)

#No. 657(掲載号)
#阿部 光成
2026/02/19

給与計算の質問箱 【第74回】「青色事業専従者の給与計算」

給与計算の質問箱 【第74回】 「青色事業専従者の給与計算」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 今月、個人事業主として開業しました。妻に月額10万円の青色事業専従者給与を支給するため、所轄の税務署に青色事業専従者給与に関する届出書を提出しました。給与計算についてご教示ください。 A 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 雇用保険 同居親族は、原則として雇用保険に加入できない。 例外として以下の①~③をすべて満たす場合は雇用保険に加入できる。   2 社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険) 従業員が常時5人未満の個人事業所や法定17業種以外の個人事業所は、社会保険の適用対象外の事業所とされる。常時5人以上の個人事業所や法定17業種の個人事業所は社会保険の適用対象とされるが、個人事業主の家族は原則として社会保険の被保険者にはならない。 例外として以下の①~④をすべて満たす場合は社会保険の被保険者になる。   3 源泉所得税 甲欄で源泉徴収する。他の勤務先に給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合には乙欄で源泉徴収する。その場合であっても、その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、青色申告者の営む事業に専ら従事するという青色事業専従者給与の要件は満たす必要がある。   4 支給について 未払の場合は必要経費に算入できないとされる。   5 具体例 月額10万円―源泉所得税0円(甲欄)=10万円を振り込み、または、現金手渡しする。 (了)

#No. 657(掲載号)
#上前 剛
2026/02/19

《税理士のための》登記情報分析術 【第33回】「所有不動産記録証明制度がスタート」~制度の概要と既存制度との比較~

《税理士のための》 登記情報分析術 【第33回】 「所有不動産記録証明制度がスタート」 ~制度の概要と既存制度との比較~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   2026年2月2日から法務局において、特定の個人や法人が所有する不動産を一覧的にリスト化した証明書を発行する「所有不動産記録証明制度」(以下、「本制度」という)がスタートした。 本制度は2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されたことを受けて、被相続人が所有する不動産の調査を容易にすることを目的としてスタートした制度であるが、活用の余地は広く税理士実務にも影響を与えると思われる。 本稿では、所有不動産記録証明制度の概要や既存制度との比較について解説を行う。   1 本制度の創設理由 所有者不明土地問題の解消のため、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続や遺贈により不動産の所有権を取得した相続人等は、不動産を相続等で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要がある。正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとされている。 相続登記を漏れなく行うことは意外に難しく、どれだけ不動産調査に力を入れても被相続人が所有する不動産の一部が漏れてしまうことがあり、意図せず期限を徒過してしまう事例も生じうる。そこでできるだけ不動産調査を容易にするために本制度が創設された。   2 他の制度との比較 これまでも不動産調査には様々な制度が利用されてきたが、本制度との比較は次のとおりである。 (1) 名寄帳 本制度とよく似た制度として「名寄帳」の制度がある。これは市町村が固定資産税の課税のために個人や法人が所管の区域内に所有する不動産を取りまとめた帳簿である。名寄帳はあくまで作成した市町村に存在する不動産のみが記載されるのに対して、本制度は日本全国に存在する不動産が対象になるという違いがある。 (2) 固定資産納税通知書 固定資産納税通知書も不動産の調査資料として活用されてきた。毎年市町村の方から郵送がなされるため入手しやすい資料であるといえる。 しかし1月1日時点の所有者に通知がされるため、1月2日以降に取得した不動産は記載がされない。また共有の不動産の場合は、特定の共有者に通知がされ他の共有者には届いていないこともある。これに対して本制度は交付の請求を行い、法務局が検索を行った時点の不動産が記載されることになる。   3 本制度の概要 本制度の利用方法などの概要は、次のとおりである。 (1) 請求ができる者 証明書の交付の請求ができる者は、所有権の登記名義人やその相続人等である(法人を含む)。司法書士に請求を依頼することも可能である。 (2) 請求方法等 証明書の交付の請求は、全ての法務局に対してすることが可能である。請求方法は書面又はオンライン請求で可能であるが、オンライン請求の場合は印鑑証明書等の必要書類もオンラインで提供する必要があり事実上書面によることがほとんどであると思われる。なお、書面にて請求を行う場合は郵送で請求することも可能となっている。 請求から証明書の交付までは一定の期間を要することになるため、個別に請求先の法務局に問い合わせる必要がある。 【証明書交付までの流れ】 (※) 検索条件とは、検索に必要となる住所や氏名等の情報である。現在の住所・氏名だけではなく過去の住所や氏名を検索条件として指定することで、住所等の変更登記が終わっていない不動産でも検索することが可能となる。  法務局では一定のルールのもと検索を行い、検索条件と合致するものについて選定し、証明書に記載する。 (3) 必要書類 証明書の交付の請求を行うにあたって、必要となる書類は次のとおりである。なお、いずれも原則として原本の提出が必要となる。 【所有権登記名義人が請求を行う場合の必要書類】 1―1 印鑑証明書(発行期限なし) 1-2 本人確認書類の写し(運転免許証、マイナンバーカードなど) 2 過去の住所や氏名を検索条件とするときは、その証明となる戸籍証明書や住民票の写しなど   1-1、1-2はいずれか一方が必要となる。ただし、1-2については窓口で原本の提示が必要になる。 所有権登記名義人の相続人等が請求する場合には、上記の【所有権登記名義人が請求を行う場合の必要書類】に加えて次の書類が必要になる。 【相続人その他の一般承継人が請求を行う場合の必要書類】 1 所有権登記名義人との相続関係を証明する戸籍証明書など 2 被相続人等の過去の住所や氏名を検索条件とするときは、その証明となる戸籍証明書等   このほか、代理人によって請求を行う場合は委任状が必要となる。 (4) 手数料 証明書の交付に必要となる手数料は次のとおりである。 (1つの検索条件につき1通当たり) (5) 受領方法 証明書の受領方法は、窓口での受領と郵送による受領が選択できる。郵送による受領の場合は請求の際に返信用封筒と切手の提出が必要となる(オンライン請求を除く)。 【所有不動産記録証明書のひな形】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 657(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/02/19

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第74回】「売買の対象地が複数の筆の一部にまたがる場合」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第74回】 「売買の対象地が複数の筆の一部にまたがる場合」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに (資料1)のように、売買の対象地が隣接する他の複数の土地(筆)の一部にまたがり、しかも分筆がされていない状態で売買契約を締結することがあります。また、このような状態を前提(所与)として土地価格を評価することもあります。 (資料1) 売買の対象地が複数の筆(それぞれの一部)にまたがる場合 今回は、このようなケースを前提とする売買契約の考え方を中心に述べ、その場合の評価条件についても言及したいと思います。   2 拠り所となる最高裁判例 判決が下された時期は相当遡りますが、一筆の土地の一部の売買を可能とならしめる考え方の拠り所となるものとして最高裁昭和30年6月24日判決(裁判所ホームページ:裁判例情報、民集9巻919頁)があげられます。 判決の要旨は以下のとおりです。 このような方法が容認される理由として、次のような考え方が背景にあるものと推察されます。 ちなみに、民法第176条には以下の規定が置かれています。 すなわち、一筆の土地の一部であっても、その範囲が特定されていれば、譲渡の意思表示により所有権は買主に移転するという趣旨です。ただし、そのままの状態では物権の取得を第三者に対抗(主張)することはできず、対抗手段としては当該部分を分筆の上、所有権移転登記をしなければならないことはもちろんです(下記条文参照)。   3 過去の判例の推移 参考までに、判例は、古くは一筆の一部についての所有権時効取得を否定していたが(注1)、後にこれを改め(注2)、その後に取得時効以外の取引についても一筆の一部の所有権移転を認めるに至り、最高裁もこれを踏襲することを明らかにしている(注3)との解説があります(注4)。 (注1) 大審院大正11年10月10日判決、民集1巻575頁。 (注2) 大審院連合部大正13年10月7日判決、民集3巻509頁。 (注3) 本稿で紹介している昭和30年6月24日判決。 (注4) 大塚明「一筆の一部の土地の所有権移転請求訴訟 仮処分と本訴と分筆登記との関連」『神戸学院法学』第41巻第3・4号(2012年3月)、105頁~106頁。なお、(注1)から(注3)の出典も当該資料によっています。   4 重要事項説明書や売買契約書の作成にあたって 通常の場合、一筆の土地の一部について売買および所有権移転を行う際には、これに先立って分筆登記が行われます。しかし、なかには本稿で紹介しているようなケースもあります(筆者も実際にこのような取引を経験したことがあります)。 そのため、宅地建物取引業者が作成する重要事項説明書や売買契約書においては、対象物件の表示に関してそれなりの留意が必要となります。 例えば、測量図(ただし、該当部分の測量が済んでいる場合)や概略図面に売買対象土地の範囲を明確に印した上で、かつ、対象物件の表示(所在)の欄に、 というような記載をすることが求められます(またがる筆が複数ある場合は、それぞれの地番につき上記の要領で記載を行います)。(資料2)はその一例です。 (資料2) 売買契約書における記載例 仮に、売買契約後に正確な測量を実施する約定となっている場合には、重要事項説明書や売買契約書に記載した面積と相違が生じた際の売買代金の精算方法を定めておくことも重要です(例えば、契約書に記載された単価を用いて差額を精算する等の方法です)。 なお、既に述べてきたとおり、売買契約前に対象部分の分筆登記を行わず契約手続きを進めることは可能ですが、その流れが煩雑となるほか、所有者の異なる隣接地との境界査定の段階で予期しない紛争が生ずることもあり得ます。 このような事情を踏まえれば、できる限り売買契約の前に分筆登記を済ませ、確定した地番や面積を前提とした上で契約を締結することが望ましいといえます。   5 対象地が複数の筆の一部にまたがる場合の鑑定評価を行う場合 不動産鑑定士が(資料1)のような土地の鑑定評価を行う際には、例えば次のような評価条件(対象確定条件)を付しているのが通常です。 (了)

#No. 657(掲載号)
#黒沢 泰
2026/02/19
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