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プロフェッションジャーナル No.656が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年2月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.656を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/12

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第86回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第86回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   ケ 日本における状況と国税庁が直面する問題 日本の暗号資産取引や税務執行の現状を踏まえて、国税庁が直面する税務執行上の問題を考察する。 (ア) 暗号資産利用者の増加への対応 一般社団法人日本暗号資産等取引業協会が公表している「暗号資産取引月次データ」によると、暗号資産の国内口座数は、2024年4月までに1,000万(稼働口座は約600万)、2025年5月までに1,200万(稼働口座は約750万)を超えている。 このような暗号資産の国内口座数の増加の背景には、2023年のメルカリ(メルコイン)の参入が大きいようである。 同社によれば、メルカリのビットコイン取引サービスの暗号資産口座数は、口座数を公表している各暗号資産交換業者を超える水準に達している。 さらに驚くべきは、その利用者の約83%が「初めて暗号資産を取引する人」であるということである。つまり、これまで暗号資産に縁がなかった層にも取引が広がりを見せていることになる。 同社のサービスは、メルカリのアプリを使って簡単な操作だけで暗号資産を取引できる仕組みとなっている。 メルカリの暗号資産サービスがこれほどまでに普及している理由は、その「使いやすさ」を含む次のような特徴に起因すると思われる。 これらの特徴により、普段は投資に興味がなかった人や初心者でも、気軽に暗号資産に触れることができる環境が整っている。 さらにいえば、メルカリという「生活密着型」アプリをプラットフォームとすることで、暗号資産が投資家の専有物ではなく、一般生活者にも浸透しつつあるという構造的変化を示している。 メルカリのユーザー層は若年層に限らず幅広い年代にわたっているため、日本全体での暗号資産の裾野が大きく広がったといえよう。 暗号資産の利用が広がるにつれ、見落としてはならないのが税金との関係である。 特に注意すべきは、「これまで確定申告をしたことがなかった者」にも、申告義務が生じる可能性があるという点である。 例えば次のような者が該当する。 こうした者でも、暗号資産の売買によって年間20万円以上の利益が出た場合は、原則として確定申告が必要になる。 そうすると、確定申告に不慣れで、取引の記録を適切に管理できない納税者においては、税金を申告しない、あるいは正しく計算できないといった事態が生じ、税務コンプライアンス違反のリスクが高まることが懸念される。 これに対して、国税庁としては、例えば、米国のForm1040に見られるような暗号資産関係の収入の有無をセルフチェックさせる項目を確定申告書等に設けるほか(※)、暗号資産の税務に関するガイダンス(FAQ等)の充実化、これをベースにしたチャットボットサービスの提供、CEX等への適正申告のための協力要請など、納税者が適正に申告を行うための環境を整備することが考えられる。 (※) このようなチェックボックスによるナッジ的手法は、暗号資産の収入がある納税者が「収入がない」ことを意味する「いいえ」の項目にチェックを入れた場合、その申告漏れを「不注意による見落とし」から「積極的な隠蔽」に変える側面を有する(See Haozheng Jiang & Henry Ordower, Cryptocurrency Public Key Reporting: Using Embedded Technology to Aid Tax Compliance, 185 TAX NOTES FED. 2119, 2125 (2024))。 加えて、このような「納税者の認知・行動の転換」を促す手法は、税務行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)とも整合的であり、単なる申告誘導を超えて、制度的・心理的なコンプライアンス環境の構築に資するものである。 〈参考〉Form1040の一部抜粋(赤囲み線は筆者による)   (了)

#No. 656(掲載号)
#泉 絢也
2026/02/12

〔令和8年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】「「中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長」「中小企業投資促進税制の見直しと延長」」

〔令和8年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】 「「中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長」 「中小企業投資促進税制の見直しと延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和7年度税制改正における改正事項を中心として、令和8年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。 【第1回】は「中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長」及び「中小企業投資促進税制の見直しと延長」について解説する。   1 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長 中小企業者等において、800万円までの課税所得に適用される軽減税率は本来19%だが、令和7年3月期決算申告までは、特例措置により15%に引き下げられていた。 この措置は令和7年3月31日までに開始する事業年度が対象であったが、令和7年度税制改正により2年間(令和9年3月31日までに開始する事業年度まで)延長された。したがって、中小企業者等においては令和8年3月期決算申告においても、15%が適用される。 ただし、税負担の公平性を確保する観点から、中小企業者等であっても下記に該当する法人に対しては、見直しが行われている。 法人 見直しの内容 その事業年度の所得が年10億円を超えた法人 800万円までの課税所得に適用される軽減税率を15%から17%に引上げ 通算法人 軽減税率15%の適用対象から除外(19%を適用) これにより、令和7年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度においては、中小企業者等に適用される法人税率は以下の通りである。 【中小企業者等の法人税率】 法人 年800万円までの 課税所得 年800万円超の 課税所得 中小企業者等(下記以外) 15% 23.2% 所得が年10億円超の法人 17% 23.2% グループ通算制度適用法人 19% 23.2% 適用除外法人(※) 19% 23.2% (※) 前3事業年度の平均所得が年15億円を超える法人 令和8年3月期の決算申告においては、当該改正が適用されるので注意が必要である。   2 「中小企業投資促進税制」の見直しと延長 「中小企業投資促進税制」とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、特定の機械装置などを取得等して、指定事業に供用した場合に、その事業の用に供した事業年度において、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 特定中小企業者等(※) 特別償却 30% 又は 税額控除 7 % 上記以外の中小企業者等 特別償却 30% (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 適用対象となる事業は次の通りである。 (※1) 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る (※2) 映画業以外の娯楽業は対象外 適用対象となる設備は次の通りである。 種類 適用対象 機械及び装置 指定なし ➢ 1つ160万円以上 工具 一定の測定工具及び検査工具 ➢ 1つ120万円以上、または、1つ30万円以上かつ複数合計120万円以上 車両及び運搬具 貨物運搬用の普通自動車 ➢ 車両総重量3.5トン以上 船舶 内航船舶 ➢ 取得価額の75%が対象 ソフトウェア 一定のソフトウェア ➢ 1つ70万円以上、または、複数合計70万円以上 令和7年3月31日までに取得等をして事業供用した資産が対象であったが、これが2年延長され、令和9年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和8年3月期の決算申告においては適用が継続される。 また、適用対象外となる「みなし大会社」の判定において、農地法に規定する農地所有適格法人が判定対象となる場合について、令和7年度税制改正により判定方法の見直しが行われている。 (了)

#No. 656(掲載号)
#新名 貴則
2026/02/12

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第2回】「決算直前の駆け込み経費(前払費用・未払金)」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第2回 決算直前の駆け込み経費(前払費用・未払金) 〈JUN税会〉 税理士 中川 諒一 * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 債務確定基準 税務上、経費(損金)として計上できる時期は、現金支払いの有無にかかわらず、「債務が確定しているかどうか」で判断されます(法法22③)。 具体的には、以下の「債務確定の3要件」をすべて満たす必要があります(法基通2-2-12)。 (2) 短期前払費用の特例 前払費用を支払った期の経費として処理するには、以下の要件をすべて満たす必要があります(法基通2-2-14)。 これは、企業会計上の「重要性の原則」を税務上も認める趣旨で設けられた例外規定です。 【法人税と所得税の比較】 項目 法人税法 所得税法 債務確定基準 22条3項 (各事業年度の所得の金額の計算) 基本通達 2-2-12 (債務の確定の判定) 37条1項 (必要経費) 基本通達 37-1 (必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定) 短期前払費用 基本通達 2-2-14 (短期前払費用) 基本通達 37-30の2 (短期前払費用)   3 本件事例への当てはめ (1) 決算料の前払い(否認リスク高) 事実関係を法的要件に当てはめて判定します。 結論として、たとえ現金を当期に支払ったとしても、当期の損金として計上することは認められません。 また、税理士報酬は「等質・等量のサービス」ではないため、短期前払費用の特例も適用できません。 (2) 家賃の年払い(損金算入可) 結論として、短期前払費用の特例を適用し、当期の損金に算入することが可能です。 (3) ホームページ制作費(損金算入可) 結論として、請求書の到着や支払いが翌期であっても、「未払金」として当期の損金に計上します。   4 実務上の処理と留意点 (1) 決算料を無理に支払う場合の処理 社長の要望通りにキャッシュを支払う場合でも、税務上は「前払金(仮払金)」として資産計上し、翌期の申告完了時に経費へ振り替える処理となります。 無理に当期の「支払手数料」等として処理すれば、税務調査での否認リスク(期ズレ指摘)が極めて高くなります。 (2) 家賃年払いの留意点(資金繰り) 特例を適用する場合、翌期以降も同様に決算月に1年分を支払う必要があります(資金繰りの固定化)。 これを止めると、その期は経費計上額がゼロになる点に留意が必要です。 当期のみ突発的に利益が出ており、翌期以降は通常に戻るような場合には、資金繰りの観点から慎重な判断が求められます。 (3) 未払外注費の証拠保存 決算作業を行う際、実際の「納品日」と「検収日」を必ず確認します。期ズレを指摘されることに備えて、納品完了メールや検収書等の証拠資料を保存しておくことが不可欠です。 なお、今回のホームページの変更はデザイン修正等であるため「広告宣伝費」や「修繕費」として一括損金処理が可能ですが、新たな機能追加(プログラム開発)を伴う場合は「ソフトウェア」として資産計上が必要になるケースもあるため、作業内容の確認も重要です。

#No. 656(掲載号)
#中川 諒一
2026/02/12

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第73回】「同族会社への無利息貸付」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第73回】 「同族会社への無利息貸付」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 西田 尚子   相談内容 私は、以前経営していた会社をM&Aにより他社に売却して40億円(所得税支払い後)の現預金を保有しています。まだ50代なので仕事は続けたいため、不動産賃貸業を始めようと考えています。 そこで、資本金100万円の会社を設立し、その会社に40億円を貸し付け、会社がその資金をもって賃貸不動産を購入することを考えています。 理由としては、貸付金であれば法人で余剰資金が出た際に、随時、私が返済を受けることができるので、配当や給与として受け取るよりも私個人の税効率が良いと考えたためです。そして、顧問税理士からは、オーナーから法人への貸付は無利息であっても税務上のリスクはない旨のコメントを得ています。 このまま進めて問題ないでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 同族会社等の行為又は計算の否認等(所法157①) 同族会社等においては、会社を支配する株主等の所得税の負担を不当に減少させるような行為又は計算が行われやすいことから、税負担の公平を維持するために、こうした行為又は計算が行われた場合には、これを正常な行為又は計算に引き直して株主等に係る所得税の更正又は決定を行う権限が税務署長に認められています。 そして、「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同族会社の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済合理性を欠くものであって、所得税の負担を減少させる結果となるものと解されます。   [2] 国税不服審判所の裁決事例 個人から同族会社への無利息貸付について、同族会社等の行為又は計算の否認規定が適用され、利息相当額について所得税が課税された裁判事例としては、最高裁平成16年7月20日判決(平和事件)が有名ですが、平和事件以降、裁決事例などは公表されていなかったことから、平和事件は巨額の貸付で特殊な事例であり、巨額でなければ個人からの無利息貸付については税務上のリスクは無いと一般的に言われていました。 しかし、最近、以下のような国税不服審判所の裁決事例が出ています。 いずれの事例も、無利息、無担保、無期限での貸付であり、貸付契約が経済的合理性を欠くものかどうかについて争われました。 経済的合理性の判断においては、貸付の目的、金額、期間等の融資条件と、無利息又は低金利であることの理由等の諸事情を総合的に考慮して判断されます。いずれも独立かつ対等で相互に特殊関係のない第三者間で通常行われる取引とは大いに異なり、合理的な理由や目的があったとは認められないとして、課税庁の処分が適法であると判断されました。 今後、同族会社への多額の無利息貸付が課税当局から認められるためには、その貸付がなければ法人の倒産のおそれがあるなど、やむを得ない理由が必要になると考えられます。   [3] 利息が認定される場合の課税関係 税務調査で、個人から同族会社への無利息貸付について、同族会社等の行為又は計算の否認規定により、適正利息相当額が認定される場合の課税関係は次のとおりです。   [4] 結論 上記のとおり、昨今、オーナーから同族会社への無利息・低利息の貸付について、税務当局の処分を支持する裁決事例が頻出していますので、今後、同族会社への貸付を行う際は、適正な利息をとって貸し付けるか、資本金として出資・増資するかの検討が必要です。 また、金利が上昇している現在、すでに無利息融資を受けている状態の法人においては、利息が認定課税されるリスクを検討したうえで、利息を授受するかDESにより借入金を資本とするか、金融機関からの借入に切り替えるかなどの対策が必要となるでしょう。 実行に際しての具体的な対策については顧問税理士にご相談ください。   (了)

#No. 656(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2026/02/12

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第17回】「無形固定資産に係る輸入消費税について」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第17回】 「無形固定資産に係る輸入消費税について」   税理士 石川 幸恵   【Q】 当社は台湾の製造業者から商品を輸入しています。この商品には特定の商標が付されており、その商標権使用料(以下「ロイヤルティ」といいます。)は製造業者ではなくアメリカの法人に支払っています。 このロイヤルティは売手である製造業者に支払ったものではなく、商品の製造委託契約とは別の契約に基づき支払われています。また、通関時にこのロイヤルティを課税価格に含めて輸入消費税を納付したとしても、その輸入消費税は仕入税額控除の対象となるため、結果的に税負担は生じません。 このような場合、ロイヤルティは輸入消費税の課税価格に含めずに申告してよいでしょうか。 【A】 ロイヤルティを関税や消費税の課税価格に含めるかどうかは、「輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるもの(関税定率法4①四)」であるか否かにより判断が異なります。具体例については、【解説】で見ていきます。 なお、「仕入税額控除により結果的に税負担が生じないから」という理由で、課税価格に含めなくてよいものではありません。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 1 輸入消費税の課税価格 保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税の課税標準は、当該課税貨物につき関税定率法第4条から第4条の8までの規定に準じて算出した価格に当該課税貨物の保税地域からの引き取りに係る消費税以外の消費税等及び関税の額に相当する金額を加算した金額とされている(消法28④)。 また、輸入貨物の課税価格の決定方法は、輸入取引がされた時に買手より売手に対し、又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において、当該貨物が輸入港に到着するまでに要する運賃・保険料等の額、当該輸入貨物に係る商標権等の使用に伴う対価で輸入取引の条件として買手により直接又は間接に支払われるもの等を加えた価格によることを原則としている(関税定率法4①)。 以下では、輸入貨物に係るロイヤルティについて、課税価格に含めるかどうかの判断基準を具体例により確認する。   2 ロイヤルティの支払いに関する事例 輸入取引の売手以外に支払うロイヤルティが輸入消費税の課税価格に含まれるかどうかは、「輸入貨物に関連しているか」、その支払が「輸入取引をするための条件」となっているか否かで決まる。以下、結論が異なる事例2つと裁決事例を紹介する。 (1) ロイヤルティを課税価格に含める場合 ① 取引の概要 図のように、買手は商標権者A社とのライセンス契約に基づき、商標の使用許諾を受け、A社の子会社である売手から当該商標が付された靴を輸入している。ロイヤルティはA社に、貨物の代金は売手にそれぞれ支払われている。 ② 取扱い 売手と特殊関係にある商標権者に支払うロイヤルティは課税価格に含める。 ③ 理由 ロイヤルティは輸入貨物に付されている商標の使用の対価であることから輸入貨物に係るものである。また、そのロイヤルティは売手の親会社である商標権者に対して支払われており、支払いがなければ売手は貨物を買手に販売しないものと解される。このため、このロイヤルティは輸入取引をするために買手により支払われるものと認められるためである(関税定率法基本通達4-13(4)ハ)。 (2) 課税価格に含めない場合 ① 取引の概要 図のとおり、買手であるB社は、商標権者L社とのロイヤルティ契約に基づいてロイヤルティを支払っている。このロイヤルティ契約により、商標権の使用許諾に加え、経営上のノウハウの利用や社会的信用の向上、競業者に対する優位性という経済的利益を得られる。 一方、B社は、売手であるS社からL社の商標が付された商品を輸入している(商標の使用については上記のロイヤルティ契約に基づくものである。)が、売手はB社がロイヤルティを支払っていることを認識していない。また、B社は売手をS社以外でも自由に選択することが可能である。 ロイヤルティの支払額は、商標を使用するか否か、輸入か国内調達かにかかわらず一定である。 ② 取扱い このロイヤルティは課税価格に含めない。 ③ 理由 この課税貨物は商標を付したものであり、ロイヤルティは輸入貨物に係るものであると認められる。 一方、商標権者L社は輸入取引及び輸入貨物の製造・管理には関与しておらず、ロイヤルティの支払いやその金額は輸入の有無によって変動しない。このことから、このロイヤルティは「輸入取引をするために買手により支払われるもの」には該当しないと認められるためである。 (3) 裁決事例 やや古いものではあるが、平成13年にロイヤルティが消費税の課税標準(関税課税価格)に含まれると認められるのが相当であると判断された裁決事例がある(TAINSコード:F0-5-125)。本件では売手は商標権者と特殊関係になかったので、(1)のケースには該当しないものの、課税価格に含まれると判断されたところが特徴である。 買手は商標権者から商品の製造権及び日本での販売権を取得し、その対価としてロイヤルティを支払う義務を負っていた。 また、実態として、商標権者は輸出者の実態を十分に把握しており、製品の製造過程や輸入取引について商標権者の立場から相当程度管理又は支配していたと認められた。 これらの事情を総合的に勘案し、ロイヤルティは「輸入取引をするために支払われるもの」に該当するとして、課税価格に算入すべきと判断されている。   (了)

#No. 656(掲載号)
#石川 幸恵
2026/02/12

国際課税レポート 【第23回】「データから読み解くピラー2」

国際課税レポート 【第23回】 「データから読み解くピラー2」   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団上席フェロー   先月公開した本連載【第22回】では、2026年1月5日にOECD・G20包摂的枠組み(Inclusive Framework)が公表した、いわゆる「ピラー2・共存パッケージ(Administrative Guidance)」の概要を取り上げた。そこでは「共存セーフハーバー(Side-by-Side Safe Harbour)」を導入する方針が示された。これは、米国国内法に既にある制度と、ピラー2を併存させる枠組みである。 その後、2026年1月23日、日本政府は「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」について閣議決定を行い、米国多国籍企業について、15%のトップアップ課税によるグローバル・ミニマム課税のための3つの制度(本稿では「ピラー2」と呼ぶ)のうち、IIR(所得合算ルール)及びUTPR(軽課税所得ルール)を適用しない方針を示した。2026年度(令和8年度)税制改正において所要の法整備が行われることになる。 2021年10月の「OECD・G20 BEPS包摂的枠組みによる国際合意」⇒それを踏まえた検討⇒今回の米国をつなぎとめるための共存パッケージによる決着、という流れを踏まえると、2021年10月に国際社会が合意した「ピラー2」実施を巡る検討は、1つの節目・区切りを迎えたように見える。 ピラー2は、自国の法律に基づく多国籍企業課税の事務負担と税負担を大きく変える制度である。多くの国が同時に導入し、制度間の抜け穴をふさぐことを前提としている。 裏返せば、各国が企業に負担を求める根拠の1つは、自国の歳入のためではなく、ピラー2が「グローバル・ルール」だからだ。OECDはこのたび、グローバル・ミニマム課税に関する「中央記録(Central Record)」も公開した。これは、包摂的枠組参加国間の相互審査で確認済の(但し現時点では自己申告ベースの移行的なもの)「適格国内法」のリストを公示するためのものである。 本稿ではこの機会に、「グローバル・ルール」としてのピラー2の姿を、関連データを通じてとらえてみたい。   OECD「中央記録」でみるピラー2 ピラー2の地理的な広がりから確認することとしたい。OECDの中央記録によれば、2025年12月1日現在、次のようになっている。 適格所得合算ルール(Q-IIR):43法域 適格国内ミニマム課税セーフハーバー(QDMTT Safe Harbour):46法域 両方を備える法域:40法域 少なくともいずれか一方を備える法域:49法域 内訳として、QDMTT Safe Harbourのみは 、バーレーン、バルバドス、ブラジル、ブルガリア、スロバキア、アラブ首長国連邦(UAE) の6法域である。また、Q-IIRのみは ジャージー、韓国、ニュージーランドの3法域である。 なお、中央記録は適格性についての合意を経たものを記載しており、ここに記載がなくても不適格・未導入を意味しない。なお、現在の内容は自己申告に基づく移行期間の暫定的なものとされている。   ピラー2導入国の現在地 ピラー2導入国の現在地について、表に暫定的にまとめてみた。 【表】世界の中のピラー2導入国(2026年1月現在) (注) 暫定的なもの。国数はOECD中央記録による。包摂的枠組国・地域数は2025年12月現在。GDPはIMF(WEO)による。多国籍企業数はOECD「Corporate Tax Statistics 2025」Table 7.2による。ここでいう「導入」は、OECD中央記録上「暫定的に適格性が確認できる(transitional qualified status)」であることを指す。 (出所) 筆者作成。 【表】が示すように、加盟国に導入を義務付けたEU27ヶ国においても、2025年12月時点では5ヶ国(2004年のEU拡大でEUに加盟したキプロス、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ)はピラー2の制度をいずれも現時点では導入していない。 これは、EUは2022年12月のEU指令で加盟国にピラー2導入のための国内法整備を義務付けているが、特例により、一定の要件を満たす国はIIR/UTPRの適用を2029年末まで繰り延べることができる。これらの国はこの繰延べを利用したことによる。 OECDの国でみると、チリ、コロンビア、コスタリカ、エストニア、アイスランド、イスラエル、ラトビア、リトアニア、メキシコ、米国の10ヶ国は導入していない。 ピラー2(グローバル・ミニマム課税)は、G20(加盟国数では19ヶ国)のイニシアチブでもあるが、7ヶ国(アルゼンチン、中国、インド、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、米国)は導入していない。 ピラー2について議論し、モデルルールやそのコメンタリ、事務運営指針を作成・公表している「包摂的枠組」参加国・地域148のうち、なんらかのピラー2の措置を導入している49の国・地域は3分の1に過ぎない。 結果として、中央記録上の「導入」法域は地理的に欧州に偏っており、経済規模でみてもピラー2の対象になる多国籍企業数でみると6割程度、GDPでみると4割程度にとどまっている。 最大の要因は、世界第一、第二の経済大国であり、世界第一、第三の多国籍企業大国である米国と中国がピラー2の制度を導入していないことが大きい。この点では、今回、共存パッケージで米国を的に取り込んだ形で一応の決着をみることができたが、「グローバル・ルール」と呼べる実質を伴っているかについての見解は分かれたとしても不思議ではないかもしれない。   地理的拡大の見通し ピラー2の核心は、①複数の制度を組み合わせた「パッケージ」として、②とりわけ域外適用という法的問題を伴うUTPRを含めて、③各国が協調的に実施することで、本国での課税を含め、多国籍企業に全世界で15%以上のミニマム課税を徹底する点にある。国際協調がなければ、そこが“抜け穴”となり、意味をもちにくい制度設計になっている。 しかし、そのピラー2の核心に位置付けられた措置であるIIRとUTPRについて、米国を母国とする多国籍企業については、個別の実効税負担率を不要とし、一括して適用対象から除くセーフハーバー(トップアップ税額をゼロとみなす)を導入したことで、他の多国籍企業の母国である国(及びその国を母国とする多国籍企業)からみれば不公平感がある一方(中国は米国同様の扱いを求めたことが報じられている)、米国から直接投資を受け入れている国からは、新たにQDMTTを適用するインセンティブは削がれることになる(自国で課税しなければ、米国を親会社とする多国籍企業にとってはメリットがある)。 実際、シンガポールは米国をQDMTTの対象としない制度を検討したことが報じられている(ただし、OECDはその場合適格なDMTTに該当しなくなると牽制したようだ)。 現時点で導入を繰り延べているEUの5ヶ国はいずれ導入する蓋然性が高いが、OECDやEU域外の導入国が今後国内法による施行を取りやめる可能性が指摘されている。今後、参加国が拡大するか否かは、各国の国内政治・産業政策の帰結に左右されよう。   OECDによる監視と予測可能性 米国制度の共存セーフハーバー適格性については、包摂的枠組みが審査することになるが、このプロセスは外形上「見えにくい」部分が残る。 そもそも、各国の制度がピラー2制度としての基準を満たしているかどうかについての包摂的枠組による審査の仕組みについては、今後詳細に詰めることとされている(OECDピラー2モデルルールコメンタリ(2025))。 ピラー2の制度を導入していない国が3分の2を占める包摂的枠組が、審査に必要な経験や権威を持っているのかという疑問も生じるかもしれない。 OECD(包摂的枠組み)は、1月5日の共存パッケージの中で、2029年までに共存システムの現状検証を行い、必要な見直しを行うとしている。欧州委員会も、2029年までに今回のパッケージが欧州の競争力に及ぼす影響を評価することとしている。いってみれば、制度の恒久化を最初から前提としていないことになる。 多国籍企業にとって、予測可能性の確保と税制の安定は重要である。制度間の差異が残る局面では、企業行動(投資・組織再編・本社機能の配置等)に影響が生じ得る。究極の親会社が米国であればセーフハーバーが適用されるので、形式的に米国に親会社を移す多国籍企業が出てくるかもしれないという指摘もある。   輸出で稼ぐ国から多国籍企業への投資リターンで潤う国へ わが国は、米国の約2,000に次ぐ900の多国籍企業を有する多国籍企業大国である。ピラー2の対象となる水準は1,100億円程度であるので、対象となる多国籍企業のすそ野は広い。ピラー2の影響は、一部の巨大多国籍企業に限られない。 下記の【図1】にあるように、近年、貿易収支は4.2兆円あまりの赤字に転じる一方、投資収益等からなる第一次所得収支の黒字が31.3兆円あまりになっている(直近5年間の平均)。 【図1】貿易収支と第一次所得収支の推移 (出所) 財務省国際収支統計より筆者作成。 わが国は輸出で稼ぐ国から、海外への投資からの収益で潤う国に変わっている。 また、直接投資からのリターン(収益)の内訳をみると、配当が12兆円あまり、留保所得(再投資)が11兆円あまりとなっており、子会社等からの収益のおよそ半分が子会社に留保されている。 【図2】直接投資収益の推移(配当と再投資(留保)) (出所) 財務省国際収支統計より筆者作成。   おわりに 多国籍企業課税の在り方は、企業の国際競争力という意味でも、課税ベースという意味でも、わが国にとって重要な意味を持つ。 本稿では、ピラー2の導入状況のデータから、ピラー2の「導入」法域が地理的に欧州に偏っていること、また経済規模や対象多国籍企業数でみたカバー率が地理的な広がりを欠いていることをみてきた。 欧州では、共存パッケージが欧州企業の競争力に与え得る影響を踏まえ、欧州委員会が一定期間後にパッケージの影響を評価し、必要に応じて見直す枠組みが置かれている。 以上を踏まえると、資源も市場も限られている日本は、国内に閉じこもり、輸出を通じて稼ぐだけでなく、これまでどおり海外展開を通じて稼ぐ力を強くしていく必要があると言えるだろう。 そのためにも、わが国としては国際的な動きを精緻に把握し、制度の実質とインセンティブを見極めた上で、適切な対応を講じることにより、わが国企業の国際競争力を保持・向上させることが重要となるだろう。   (了)

#No. 656(掲載号)
#岡 直樹
2026/02/12

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第50回】「参考として掲載された前期の連結P/Lの訂正」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第50回】 「参考として掲載された前期の連結P/Lの訂正」   公認会計士 石王丸 周夫   1 営業外費用の内訳表示の訂正 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 参考として掲載した前期の連結損益計算書について、営業外費用の内訳表示に訂正すべき事項が判明したというものです。 会社法による計算書類の開示では、決算書本体は単年度開示が基本です。すなわち、当期の決算書のみを開示します。しかしながら、過年度の決算書を参考のために併記することも可能であり、そのような会社も少数ながらみられます。今回の事例の会社は、そのような会社の1つです。 では早速、事例を見ていきましょう。 【事例50】 ご参考として掲載した前期の表示を訂正した事例 〈訂正前〉 〈訂正後〉 (出所) 森永製菓株式会社「「第177期定時株主総会招集ご通知」の一部訂正について」(2025年6月11日) この事例の会社は、2025年5月29日に本事例を含む「第177期定時株主総会招集ご通知」を公表(電子提供措置の開始)し、2025年6月11日に当該一部訂正を公表しています。 訂正された箇所は【事例50】の赤字下線部で、連結損益計算書の営業外費用の内訳を見直したものです。訂正前は、営業外費用の内訳として、「自己株式取得費用」を区分掲記していましたが、訂正後はそれを削除しています。これは、前期の金額に着目するとわかるとおり、「自己株式取得費用」の金額を「その他」に含める訂正を行ったものです。当期については、「自己株式取得費用」の金額欄は「-」(0円)となっているので、科目統合の影響は特にないということになります。   2 訂正前と訂正後の違いは? 【事例50】の訂正前と訂正後について、各表示が示している内容を考えてみましょう。 訂正前は、営業外費用の内訳に「自己株式取得費用」がありました。当期の金額欄は「-」となっています。つまり、0円です。当期において、自己株式取得費用は一切発生しなかったことを示しています。 次に訂正後です。訂正後は「自己株式取得費用」の科目は示されていません。訂正後の営業外費用の表示を見る限りでは、当期においても前期においても自己株式取得費用が発生したかどうかはわかりません。発生している場合は「その他」に含まれていることになります。 もし、当期において自己株式取得費用の発生がなかったとしたら、訂正前の状態で問題ないため、訂正の必要はなかったことになります。そのように考えると、当期において自己株式取得費用が発生していたということになります。ただし、それを「その他」に含めていることから、金額的には重要性が乏しかったということだと考えられます。   3 表示方法の変更か? 【事例50】は、表示方法の変更に伴う前期の連結損益計算書の組替を忘れてしまったというミスであるようにみえます。その線で話を進めます。 この事例の会社について、前年の定時株主総会招集通知を確認すると、連結損益計算書の営業外費用の内訳には「自己株式取得費用」の科目がありました。前述のように、当期において「自己株式取得費用」を「その他」に統合したというのであれば、これは前期からの表示方法の変更になります。表示方法の変更を行った場合は、連結注記表にその旨を記載します(会社計算規則第102条の3第1項)。 しかしながら、この会社の当期の連結注記表をみても、表示方法の変更の注記は見当たりません。表示方法の変更の注記対象については、「重要性の乏しいものを除く」(会社計算規則第102条の3第1項)とあるので、この表示方法の変更は重要性が乏しいと判断され、注記は省略されたのではないでしょうか。 自己株式取得費用は、すでに前期の段階で営業外費用計の金額の約1%にすぎず、重要性の乏しい項目でした。当期における表示方法の変更を前期にも適用した結果、前期の「その他」の金額が比較的大きくなっているというなら、その説明も必要ですが、そのような現象も起きていないので、重要性が乏しいといえます。 なお、前期の決算書は「ご参考」として掲載しているものなので、前期に開示した連結損益計算書と同じものを載せればよいという考え方もあるのかもしれませんが、2期併記する以上、比較可能性を確保する観点から前期の組替が必要と考えるのが適切ではないかと思われます。   4 このミスを防止するには このミスを防止するにはどうすればよいかも考えてみましょう。 ミスを発生させないという1点に絞った場合の話ですが、「ご参考」として掲載している前期の決算書について、「掲載しない」というのが答えになります。 ミスの発生を防ぐには、そのミスが発生する作業そのものを行わないのが最も確実です。【事例50】の場合、ミスが発生した箇所は参考のために記載した部分でしたので、必ず記載すべき箇所ではありません。記載省略可能なのです。実際、多くの会社では、前期の金額を併記していません。 もちろん、積極的な情報開示という意味では、2期併記は望ましいことなのですが、同様の情報は決算短信で開示されています。決算短信の公表は、通常、株主総会招集通知の公表よりも前です。この企業の場合も期末決算短信は2025年5月9日に公表されています。2025年5月29日の株主総会招集通知の開示の20日前です。情報開示としては、それで十分だったといえないでしょうか。   〈今回のまとめ〉 ミスを発生させないためには、そのミスが発生した作業を行わないことが最も確実な防止法であり、そのような対策がとれる作業なのかどうかを議論してみる価値はあります。 (了)

#No. 656(掲載号)
#石王丸 周夫
2026/02/12

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2026年1月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年1月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年1月1日から1月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 ① 企業会計基準公開草案第94号「法人税等に関する会計基準(案)」等 (内容:法人税等に関する原則的な定めを置くこととし、具体的な税金を特定しない方法に見直す方向を提案。意見募集期間は2026年3月9日まで) ② 企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」等 (内容:後発事象に関する会計処理及び開示について規定するもの)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」 (内容:「全般、気候、個別テーマ」、「人的資本、従業員の状況」の開示例に関する好事例集) ② 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告 (内容:スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等について検討したもの) ③ 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告 (内容:主にサステナビリティ情報の第三者保証制度のあり方について記載) ④ 「人的資本可視化指針(改訂版)」(案) (内容:人的資本開示を行う場合に、どのような開示が企業と投資家の建設的な対話に有用であると考えられるか検討を行い、取りまとめたもの。意見募集期間は2026年2月10日まで) ⑤ サステナビリティ開示実務対応基準公開草案第1号「温対法におけるSHK制度の定める方法により測定し報告する温室効果ガス排出を用いて『気候基準』の定めに従う場合の測定及び開示(案)」 (内容:サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」の解釈に関する懸念に対応するもの。意見募集期間は2026年3月25日まで)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇「新規上場会社等の会計不正事例を踏まえた監査上の対応について(通知)」 (内容:最近の新規上場会社等の会計不正事例を踏まえて、監査業務実施上の留意事項を改めて取りまとめ) (了)

#No. 656(掲載号)
#阿部 光成
2026/02/12

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第18回】「無断欠勤を継続する従業員に対して解雇通知を交付する方法」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第18回】 「無断欠勤を継続する従業員に対して解雇通知を交付する方法」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の従業員Aが無断欠勤を継続し、当社からの電話や電子メールにも応答しません。当社の就業規則上、一定期間の無断欠勤がある場合を懲戒解雇事由としていますので、当該懲戒事由に基づいてAを解雇することになりましたが、解雇通知はどのように交付すればよいでしょうか。 【Answer】 解雇通知がAに到達したことを証明できるよう、郵送の場合は配達証明付き郵便で送付するのがよいでしょう。電子メールで送付する場合は、送付先のアドレスがAが通常利用するメールアドレスであるかを確認してから送付するべきです。郵送による方法と電子メールによる方法の双方を併用することも考えられます。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 従業員が長期間欠勤した場合、就業規則に、一定期間の無断欠勤を懲戒解雇事由とする定めがあれば、会社は、これを根拠に当該従業員を解雇することを検討することになる。 しかし、いざ解雇しようとしても、当該従業員に対して解雇の意思表示をどのように通知するかが問題となる。すなわち、解雇の意思表示は相手方(対象の従業員)に到達しなければ効力を生じないことから、対象の従業員に対して解雇を通知しなければならない。 解雇の通知の様式(口頭か書面か等)に法的な要件はないが、多くの場合、書面や電子メールなどにより行われる。しかし、対象の従業員と連絡がつかず、解雇通知を直接交付することができないし、郵送しても対象の従業員に到達するかどうかがわからない場合がある。 本稿においては、このような場合に対象の従業員に対して解雇通知を交付する方法について論じるものとする。   2 解雇通知を不要とする方法 まず、そもそも、設問のような場合に解雇通知なく退職の効果を得られる方法として、就業規則上に「従業員が行方不明となり、●日以上連絡がとれないとき」には退職するものとする、といった規定を定めておくことが考えられる。このような条項があれば、解雇通知を交付しなくても、「従業員が行方不明となり、●日以上連絡がとれないとき」に、自動的に問題の従業員の退職の効果が生じることになる。 しかし、「従業員が行方不明となり、●日以上連絡がとれないとき」とは、従業員が所在不明となり、かつ、会社が当該従業員に対して出勤命令や解雇等の通知や意思表示をする通常の手段が全くなくなったときを指すと考えられている(※1)。通信手段が多岐にわたる昨今において、どこまでの手段をとれば「解雇等の通知や意思表示をする通常の手段が全くなくなったとき」といえるかは、なかなか難しい問題である。 (※1) 東京地判令和2年2月4日(O・S・I事件)   3 解雇通知の方法①:郵便による場合 解雇通知を郵便で送付する方法として、主なもの及びそれぞれのメリット・デメリットは以下のとおりである。 上記のとおり、解雇通知は相手方(対象の従業員)に到達しなければ効力を生じないが、通知が相手方に到達した(民法97条1項)といえるためには、必ずしも相手が実際に内容を読んだことを要せず、相手が通知内容を了知し得る状態に置かれれば足りるとされている。すなわち、郵便による通知なら、相手の郵便受けに書面が投函された時点が「到達」に該当することになり、実際に開封・閲覧されたかは問われない。 よって、以上より、郵送であれば、基本的には、②や③のように、相手方に配達されたことの証明までを要するわけではなく、①の特定記録郵便でもよいということになるが、特定記録郵便の場合、本人が「しばらく実家に帰っていた」などと主張した場合には、「相手が通知内容を了知し得る状態に置かれた」かどうかについて疑義が生じ得る。 一方、上記のとおり、②や③の方法については、相手方が留守の場合や相手方に受領拒否をされた場合、配達されないリスクがある。もっとも、正当な理由のない受領拒絶の場合は、解雇通知は通常到達すべきであったときに到達したとみなされるため、解雇通知の効力が生じることになる(民法97条2項)(※2)。すなわち、②や③の方法によると、相手方が受領した場合にその事実を証明できるというメリットがある一方、相手方が受領しない場合のリスクは限定的であるともいえる。 (※2) 出勤停止の懲戒処分を受けた従業員が、処分の通知書を受領していないため処分は無効であると主張した事案において、裁判所は、当該従業員が簡易書留によって送付された通知書の受領を拒絶し、普通郵便によって送付された通知書を使用者に返送したことなどから、当該従業員が通知書の受領を不当に拒絶したものであり、使用者の意思表示は通常到達すべきであったときに到達したとみなされる(民法97条2項)とした(東京地判令和6年4月24日)。 なお、実務的には、内容証明郵便は、主に紛争関係にある当事者間で内容に争いが生じるおそれのある書面のやりとりをするときに使用されるものであるため、そのような場合を除き、解雇通知の送付に際しては、内容証明郵便ではなく配達証明付き郵便が使用されることが多い。   4 解雇通知の方法②:電子メールによる場合 電子メールについては、相手がそのメールアドレスに通常ログインして確認できる状況になれば、メールは相手方のメールサーバに届いた時点で「了知し得る状態」に置かれたと評価される。ただし、本人が通常利用していないメールアドレス宛への通知は「了知し得る状態」に置かれたとはいえないと判断されるおそれがあるため、注意が必要である(※3)。 (※3) 取締役会の招集通知をメールで送ったところ、取締役Xが受け取っていないと主張し、取締役会決議の有効性が争われたケースにおいて、裁判所は、Xが自らPC操作をせず、XのPCは秘書室において管理されていた上、当該メールアドレスに電子メールが送信されることがなく、秘書室において同アドレスの受信状況を確認していなかったことなどをもって、メールサーバに記録されたというだけでは受信者が了知し得る状態におかれたとはいえないとして、メールは到達していないと判断した(東京地判平成29年4月13日)。 (了)

#No. 656(掲載号)
#柳田 忍
2026/02/12
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