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プロフェッションジャーナル No.655が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年2月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.655を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/05

monthly TAX views -No.156-「2年限定の消費減税、やるなら給付付き税額控除につながるように」

monthly TAX views -No.156- 「2年限定の消費減税、やるなら給付付き税額控除につながるように」   東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹   突然の衆院解散となり、財政ポピュリズムが再燃、与野党とも消費税減税を打ち出した。せっかく1月から各党がメンバーとなる「国民会議」が開催され、落ち着いて給付付き税額控除をはじめとした税・社会保障改革の議論が始まる予定であったのに、選挙後に延期された。 筆者が懸念するのは、「国民会議」で消費税減税が先行して議論されるという点だ。消費税減税の代わりに給付付き税額控除というストーリーだったはずだが、高市首相は、党首会談などで「2年間限定食料品消費税ゼロ、その後は給付付き税額控除」という意向を明言している。 消費税減税の問題点はすでにマスコミでも指摘されている。食料品ゼロ税率で失われる5兆円の財源が不明確で金利上昇など財政不安を招きかねない、物価引下げ効果がはっきりしない、与党の主張する2年間限定の食料品ゼロ税率導入は、買い控え、買いだめなど経済を混乱させ、事業者のシステム変更などコストがかかるということなどである。 またゼロ税率特有の問題として、農家や食料品店への還付が生じるので、申告の手間やコスト、還付までの資金繰り、さらには農家が課税事業者となり、インボイスが必要となることへの抵抗など多くの問題がある。 これらの課題は、本来事前に幅広く検討され、その結果を選挙で国民の選択にゆだねるという手順を踏むべき話だが、各党がそろって消費税減税を主張する中、課題として議論されることはない。選挙が終わった段階で、「そんなことは知らなかった」という農家などの声が聞こえてきそうだ。 *  *  * 筆者は、仮に導入するということになれば、2年後の導入が検討されているという給付付き税額控除につながる設計が望ましいと考える。 2015年9月10日、財務省は自民党税調の場で、「日本型軽減税率」という財務省試案を提示した。詳しい経緯は拙著『日本の消費税―社会保障・税一体改革の経緯と重要資料』(中央経済社)の207頁以降、あるいは東京財団のホームページ「消費税アーカイブ」を参照いただきたいが、この制度の概要は以下のとおりである。 ポイント制度を活用して対象品目の購入に係る軽減分の消費税相当額を消費者に還付する。軽減税率が、生産者、卸、小売とあらゆる取引段階で大きなコストを生じさせるのに対し、小売段階だけの対応で完結するという点に基本的な相違がある。また、マイナンバーカードを所得情報と結びつけることにより、還付する者に所得制限を設けることが可能となるので、ばらまきではない効果的・効率的な逆進性対策になる。そもそも現在必要な政策が物価高で苦しむ生活者対策ということなら、中低所得者に対象を限定すべきで、それが可能になる。 会計(レジ)の際にマイナンバーカードを店舗の端末にかざし、カードに記載されたICチップを読み取ることで本人確認をするので、店側にはカードを読み取る機械(リーダー)の設置コストや手間がかかるが、それは国が負担する。 2019年(令和元年)10月1日の消費増税による景気の落ち込みを緩和するために、キャッシュレス・消費者還元事業が行われた。これは、消費者が電子マネーやクレジットカードなど現金以外のキャッシュレス決済を行った場合に事業者が2~5%の還元を行うというものだが、「買い物時に一定割合を払い戻す」という点において、前述の財務省案と類似している。 *  *  * わが国の地方自治体はマイナンバーで住民全員の所得を把握している。また地方自治体のシステムの標準化も進み、ガバメントクラウドの活用により、国と地方自治体との情報連携も可能になっている。マイナカードが普及し公金口座の登録も増えている今日、日本型軽減税率導入のハードルは高くない。 重要なことは、日本型軽減税率のインフラに必要な、マイナンバーで紐づいた国民の所得データベースが、給付付き税額控除に活用できるということだ。選挙後に開催予定の国民会議では、是非このことを検討してほしい。 (了)

#No. 655(掲載号)
#森信 茂樹
2026/02/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例83】「グループ企業の国内統括会社に支払った経営指導料の寄付金該当性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例83】 「グループ企業の国内統括会社に支払った経営指導料の寄付金該当性」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、欧州に本社がある外資系の製薬会社の日本法人X(資本金30億円で12月決算)において、経営企画部長を務めております。ご承知の通り製薬業界、中でも新薬の開発に注力している業界のトップ企業は、いずれも多額の研究開発投資を行っています。 一般に、新薬の販売に至るまでには、「探索研究→前臨床試験→臨床試験→承認審査」という段階を経る必要があります。このような各段階を経て新薬の販売に至るまでには、9年から16年に及ぶ研究開発期間と数百億円から1千億円を越える莫大な研究開発費用がかかります。しかも、研究開発の対象となった新薬候補のほとんどが、上記プロセスのかなり早い段階において開発が断念されるという現実があります。このことから、製薬業界に属する数ある企業の中でも、新薬の研究開発部門は非常に難易度が高い業務であり、そこから多額の富が生み出されるという構図があります。 わが社は製薬業界といえども外資系ということもあり、日系企業と比較すれば、日本国内における研究開発投資は、グローバルな企業規模と比較するとそれほど大きいというわけでもありません。しかし、市場としては高齢化が進み需要が大きいため、グローバルな観点から言っても重要地域の一つですので、販売やマーケティング活動にはかなり力を入れています。そのため、日本事業を統括するわが社の傘下に、研究開発部門、製造部門、販売部門の各子会社群があり、わが社が持株会社兼事業統括会社として、欧州本社の全世界的な事業戦略を実現すべく、傘下企業のマネージメントや人事、総務、法務、会計、税務等を支援する機能を担っております。そのような業務の対価として、傘下企業から経営指導料を受けていますが、最近受けている国税局のグループ企業に対する同時調査で、その算定根拠について厳しいやり取りが続いております。 特に販売部門を担う子会社Yに対する経営指導料の料率(年間売上高の1%)が他の部門を担う子会社各社よりかなり高いことが問題視されており、その料率の差額部分は販売部門を担う子会社Yからわが社への「経済的利益の贈与」に当たるとして、子会社Yに対して寄付金課税を行う旨主張しております。わが社の子会社Yに対する経営指導の内容は、欧州本社からもたらされる顧客リストの紹介も含まれており、それがYの売上に増加に寄与する部分が大きいことから、他の子会社よりも料率が高いのは当然であり、「経済的利益の贈与」に当たることなど全くないと考えておりますが、税法上どのように考えるのが妥当でしょうか、教えてください。 【A】 経営指導のような役務の提供に対して金銭が支払われる契約が締結されている場合、仮にそれが独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離している場合には、経済的利益の贈与に当たると判断され寄付金に該当する可能性がありますが、その役務の提供が提供先の売上や利益に対する寄与度が高いと評価されれば、役務提供者における提供経費を超えているからといって、当該超える部分の金額が直ちに寄付金に該当するということにはなりません。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 寄付金の意義 法人税法上の寄付金とは、その名義を問わず、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与を指す(法法37⑦)。したがって、当該寄付金は、通常の、公共又は公益のための拠出ないし提供よりもはるかに広い概念である(※1)。寄付金は一般に販売費・一般管理費の一項目となるであろうが、それが損金性を有するかどうかは必ずしも明確ではない。そのような寄付金にどれだけ損金性があるのか客観的に判定することは困難であるため、法人税法においては、行政的便宜並びに公平維持の観点から、統一的な損金算入限度額が設定され、法人が支出した寄付金のうちその範囲内の金額は費用として損金算入を認め、それを超える部分の金額は損金に算入しないこととされている(法法37①)(※2)。 (※1) 金子宏『租税法(第二十四版)』(弘文堂・2021年)415頁参照。 (※2) 金子前掲(※1)書416頁参照。   (2) グループ内の法人間における経営指導と経済的利益の供与 平成22年度の税制改正で、直接・間接を含め100%の持株関係(完全支配関係)にあるグループ法人相互間の取引については、そのグループ内の法人が一体的管理・運営の下にあることを考慮して、その間の一定の取引について、一定の時期まで課税を繰り延べることとされた(グループ法人単体課税制度)。 一方で、100%の持分関係とまでは至っていないが、直接・間接を含め過半数の持分関係にあるグループ法人においては、そのグループ全体の競争力や収益力を強化・改善するため、法人相互間の有形・無形の指導(経営指導)や支援等がなされるのが通常である。そのような指導や支援等が、場合によっては税務調査において、「金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与」に該当するのではないかと課税庁から指摘されるケースも珍しくないところである。 このような場合において、子会社等を整理する場合の損失負担等(法基通9-4-1)や子会社等を再建する場合の無利息貸付け等(法基通9-4-2)については、実務上、それにより生じる経済的利益の供与は寄付金に該当しない旨の取扱いが明確化されている。しかし、それ以外のケースについては、残念ながら取扱いが不明確であり、実務上判断に迷うことも少なくないところである。   (3) グループ企業の国内統括会社に支払った経営指導料に関する寄付金該当性が争われた事例 それでは本件と同様に、グループ企業の国内統括会社に支払った経営指導料に関する寄付金該当性が争われた事例(東京地裁平成12年2月3日判決・税資246号393頁、TAINS Z246-8578)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 NPC(日本フィリップス株式会社)は、オランダに拠点を置く多国籍企業であるフィリップスグループ(その中核企業はオランダ法人で持株会社であるNVPG)の企業として、1)海外で製造されたフィリップスブランドの製品を輸入して日本国内で販売を行うこと、2)日本においてOEM製品(フィリップスのブランド名の付いた、フィリップスの製品仕様書に基づいて日本の製造業者によって製造されたフィリップスの商品)及び部品を含む各種製品の調達を行うことを、その役割としていた。 NPCは、オランダ法人の100%子会社であり、フィリップスグループの現地法人として、日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営について責任を負っていたPKK(フィリップス株式会社)に対し、PKKとの間で取り交わした1973年(昭和48年)3月31日付け及び1981年(昭和56年)12月15日付けの各覚書に基づき、一般経営・管理・技術援助・営業法務等の人的役務の提供並びに海外の顧客の紹介及び連絡の人的役務提供の対価として、NPCの年間売上総(予算)額の1パーセントに相当する金額13億2,217万5,000円を「経営指導料」として支払い、損金の額に算入した。 しかしながら、課税庁は、当該支払については、管理部門を有していないNPCの管理事務の遂行に対する費用負担の相当額として認められる部分を除き、個々の具体的な役務提供の事実が認められず、また、原処分に係る調査時においてNPCが提出した証拠資料等によっても、その経営指導料の額の計算根拠及び負担理由並びにその支払金額の相当性も明らかではないものと判断した。 そのため、課税庁は、NPCが負担すべき管理事務の費用の額3億2,611万6,000円を超える部分の金額9億9,605万9,000円は、PKKに対する法人税法第37条第6項に規定する経済的利益の贈与に当たると判断し、寄付金の損金不算入額について課税処分を行った。 ② 事案の争点 NPCがPKKに支払った経営指導料には、提供された役務との対価性を欠くものとして、法人税法第37条第6項にいう経済的利益の贈与に当たる部分があるか否か(経営指導料の寄付金該当性)である。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されず確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 企業活動が拡大し多角化がなされると、単体の企業(法人)が事業ごとに子会社等を設立したり、他社から企業を買収したりして、資本・持分関係を通じて企業グループを形成していくというような流れができるのは、ごく一般的な現象である。そのように形成された企業グループの事業運営を効率的・効果的・一体的に進めるという観点で、グループの中核企業がその傘下子会社等に対し経営指導を行い、その対価として経営指導料を徴収するという方法を採ることも、今や珍しくない。従来は、そのような経営指導は親会社等の業務の一環であるとして、特に対価を徴収していない企業グループも珍しくなかった。また、外資系企業の事業スタイルに倣う形で、対価の徴収を行うケースであっても、その設定基準が不明確で、適正な水準とはいえない事例も散見されたところである。当該水準が独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と比して著しく乖離しており適正とはいえないような場合には、寄付金課税の問題が惹起されることとなる。 本裁判例も課税庁がそのような問題意識の下税務調査を行い、NPCがPKKに支払った経営指導料は、PKKから実際に提供された役務の内容から見て高額であるとして、法人税法第37条第6項にいう経済的利益の贈与に当たる部分があるとのことで寄付金に係る課税処分がなされたわけである。それに対して裁判所は、「NPCの販売面におけるPKKへの依存の広範さにかんがみて、必ずしも企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきような不合理なものということはできない」とするとともに、「本件の経営指導料の額が、独立企業間において行われる同種の契約に基づく対価の水準と著しく乖離していて、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作であるとすべき事情を認めるに足りる証拠はない」と判断し、課税庁の課税処分は違法だとして取り消したところである。経営指導料の水準の適正性は、経営指導の具体的な内容に大きく依存することと言えることから、税務調査対策としては、経営指導の具体的な内容をいかに社内文書等の証憑書類で裏付けることができるかがポイントとなりそうである。   (4) 本件へのあてはめ 経営指導のような役務の提供に対して金銭が支払われる契約が締結されている場合、仮にそれが独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していている場合には、経済的利益の贈与に当たると判断され寄付金に該当する可能性がある。しかし、その役務の提供が提供先の売上や利益に対する寄与度が高いと評価されれば、役務提供者における提供経費を超えているからといって、当該超える部分の金額が直ちに寄付金に該当するということにはならないといえる。   (了)

#No. 655(掲載号)
#安部 和彦
2026/02/05

《税務必敗法》 【第9回】「設立1期目を7ヶ月以下にすることを忘れた」

《税務必敗法》 【第9回】 「設立1期目を7ヶ月以下にすることを忘れた」   公認会計士・税理士 森 智幸   【事例】 X会計事務所の税理士甲は、飲食店を営む個人事業者Aとは約5年間、税務顧問契約を締結している。 ×1年1月、Aから「×1年度から法人成りしたい。インボイス登録は行わず、2期間は消費税を免税にしたい。決算月は3月で、できるだけ早く設立したい。」という依頼を受けた。 そこで、甲は「それでは、×1年6月中に設立手続を行い、×1年7月1日から新会社をスタートさせましょう。」と回答した。その後、Aは日本国内において、×1年7月1日を事業開始日とする資本金500万円の株式会社Bを設立した。また、インボイス登録は行わなかった。 しかし、翌×2年2月に、甲が別の顧問先の消費税の確定申告にあたり、税理士会による業務チェックリストを使ってチェックをしていたところ「特定期間における課税売上高を確認したか。」という項目を見て株式会社Bを思い出した。 調べたところ、株式会社Bの特定期間(×1年7月1日から同年12月31日)の課税売上高及び給与支払額は、ともに1,000万円を超えていたことが分かった。そのため、株式会社Bの×2年度は課税事業者となり、消費税の納税義務が生じることがわかった。 これをAに伝えたところ「2期間は免税のはずではないか」と激怒された。結局、株式会社Bの×2年度の消費税は過大納付となり、甲は損害賠償をすることになった。しかし、甲は事前税務相談業務担保特約に入っていなかったため、この損害賠償について保険金が支払われなかった。   1 はじめに 本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「設立1期目を7ヶ月以下にすることを忘れた」である。 この事故事例は、株式会社日税連保険サービス『税理士職業賠償責任保険事故事例(2023年7月1日~2024年6月30日)』の事前税務相談業務担保特約事例1に紹介されているが、筆者の周囲にも、事例のように設立1期目を7ヶ月以下にする助言を忘れたため損害賠償となった税理士がいた。原因は「うっかりしていた」ということであった。 とはいえ、会社設立業務は頻繁に行うものではないので、消費税法上の落とし穴を失念してしまうことも考えられる。そこで、今回は設立1期目の特定期間の注意点とその対策について説明する。また、税理士職業賠償責任保険の事前税務相談業務担保特約についても説明する。 なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。   2 制度の概要 (1) 納税義務の免除の特例 消費税法上、事業者はその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合は、原則として、納税義務は免除される。そのため、新たに設立された法人は、設立1期目及び2期目の基準期間はないことから、原則として納税義務が免除される。 しかしながら、一定の場合は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されない。その1つが、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合である(消費税法9条の2、消費税法施行令20条の5、20条の6)。 (2) 特定期間とは 特定期間とは、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいう(消費税法9条の2第4項)。 新設法人の場合、設立2期目は基準期間がないため、原則では納税義務が免除されるはずであるが、特定期間の課税売上が1,000万円を超えている場合、法人設立2期目であっても課税事業者となり、消費税の納税義務が生じる。 なお、国外事業者以外の事業者については、特定期間の課税売上高1,000万円超の判定について、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することができる。 すなわち、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、給与等支払額により免税事業者と判定することができる(国税庁・質疑応答事例「特定期間の課税売上高による免税事業者の判定」参照)。 (3) 給与等支払額の範囲 給与等支払額の範囲については消費税法基本通達1-5-23において定められている。同通達では、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないとしている。また、給与や賞与の未払額も含まれない。含めなくてよいものを含めてしまって誤った判定をしてしまわないよう注意されたい。また、国税庁タックスアンサー「No.6125 国内取引の納税義務者」のQ4も併せて参照していただきたい。 (4) 短期事業年度の場合 このように、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合は、納税義務は免除されないが、特定期間については、その事業年度の前事業年度が7ヶ月以下などの短期事業年度の場合は除くとされている(消費税法9条の2第4項2号かっこ書き、3号)。 すなわち、設立1期目の事業期間が7ヶ月以下の場合、特定期間による納税義務の判定は行われない。したがって、後述するが、設立1期目の事業期間は7ヶ月以下に設定することが事故を防ぐポイントである。   3 設立1期目を7ヶ月以下にすることを忘れた場合の影響 (1) 損害賠償 設立1期目を7ヶ月以下にする助言を忘れてしまい、特定期間の規定により設立2期目に納税義務が発生してしまった場合、顧問税理士は損害賠償となる可能性がある。 (2) 無申告加算税・延滞税の発生 税理士が気付かず、設立3期目以後に税務当局から指摘された場合、設立2期目は無申告となるため、無申告加算税が発生することになる。また、納付が遅延したため、延滞税も発生する。 無申告加算税や延滞税は税理士職業賠償責任保険の保険金の支払い対象とならないため、税理士の自己負担となる可能性がある。   4 対策 株式会社など法人の設立時における特定期間に関する消費税の事故を防止するためには以下の対策が考えられる。 (1) 希望の決算月を確認する 依頼者から法人を設立したいと相談された場合、まず希望する決算月を確認する。 (2) 法人設立日を調整する そのうえで、依頼者が消費税の免税を希望するかどうかを聞く。依頼者が設立1期目と2期目は免税事業者を希望する場合は、設立1期目は7ヶ月以下にすることが望ましいことを助言し、加えて法人設立日の調整を助言する。もちろん、資本金、インボイス登録についても助言が必要である。また、このようなやりとりは記録して相手にも示し、齟齬がないようにしておきたいところである。 (3) 法人成りは注意する 個人事業者が法人成りする場合、設立1期目から特定期間において、課税売上・給与等支払額がともに1,000万円を超える可能性があるので十分な注意が必要である。 売上ゼロからの新規開業であっても短期間で売上や給与支払額が大きくなる可能性もあるため、設立1期目は7ヶ月以下にしておくことが無難である。 (4) 事前税務相談業務担保特約にも加入する 今回紹介した、設立1期目を7ヶ月以下にする助言を失念した事例は、その時点では課税要件が発生していないため、課税要件が確定していない段階での税務に関する相談は、税理士法上の税務相談に該当せず、税理士職業賠償責任保険の主契約では補償対象外となる(株式会社日税連保険サービスのパンフレットより)。つまり、主契約のみの契約では、このケースは保険金が支払われないのである。 一方、株式会社日税連保険サービスでは、このような将来に課税要件が発生することを前提とした場合の相談に対しては、事前税務相談業務担保特約によって補償するとしている。 したがって、事前相談のリスクを考えると、この特約にも加入することが望まれる。   5 おわりに 今回は、新規設立時における消費税に関する助言の失念について説明した。消費税法は、「節税スキーム」を封じるために数々の制度改正が行われたため、かなり複雑化している。そのため、税理士は消費税法に関する感度を常に高める必要がある。 その手段の1つとして、普段の消費税の確定申告時から、日本税理士会連合会のサイトに掲載されている業務チェックリストを使用することをお勧めする。また、税理士会による研修受講も有効である。 本稿が皆様の実務の参考になれば幸いである。 (了)

#No. 655(掲載号)
#森 智幸
2026/02/05

租税争訟レポート 【第83回】「内縁関係の認定と扶養義務者の範囲」(第1審:静岡地方裁判所令和6年3月14日判決、控訴審:東京高等裁判所令和6年12月12日判決)

租税争訟レポート 【第83回】 「内縁関係の認定と扶養義務者の範囲」 (第1審:静岡地方裁判所令和6年3月14日判決、 控訴審:東京高等裁判所令和6年12月12日判決)   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【判決の概要】 〈第1審判決の概要〉 〈控訴審判決の概要〉   【事案の概要】 本件は、原告が、沼津税務署長から、原告名義の普通預金口座に入金された金員のうち、甲が原資を出捐した金員について、原告が甲から贈与により取得した財産であるとして、平成30年12月19日付けで、平成24年分から平成29年分までの各年分の贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けたため、本件各金員の一部は原告が取得したものではなく、その余の本件各金員は、甲から内縁関係にある原告に対する生活費又は両者の実子及び原告の連れ子の教育費等の婚姻費用分担義務の履行として受領したものであって、贈与により取得した財産ではなく、そうでなくとも、扶養義務者相互間における生活費又は教育費に充てるためにした贈与に係る贈与税の非課税財産を定めた相続税法21条の3第1項2号の規定が適用されると主張して、国を相手に、本件各処分の取消しを求める事案である。 なお、関係者を図示すると次のとおりとなる。   【争点】   【静岡地方裁判所の判断】 静岡地方裁判所は、2つの争点について、次のような判断を示したうえで、原告の主張の一部を認容する判決を行った。   1 争点(1)原告の預金口座に入金された金員は、原告が甲から贈与により取得した財産であるか 静岡地方裁判所は、事実認定に基づいて、甲が出捐した資金が入金された原告名義の預金口座については、通帳と印鑑を原告が管理していたことなどを理由に、原告に帰属していることを認めたうえで、次のようにこれらの預金口座から支出した金員について、次のような判断を下した。 (1) 原告名義の口座から振り込まれた2つの住居の賃借料について 静岡地方裁判所は、原告による、本件各金員のうち、2つの住居の各賃料相当額は、甲自身が負う債務の履行のために入金されたものであって、贈与に該当しないという主張について、これらの住居については、賃貸借契約の当事者である甲本人が支払義務を負うものであることからすると、住民票上の住所を有しておらず、銀行口座を作ることができない甲が、原告に対して振込みを委託したにすぎないものと認めるのが相当であるとしたうえで、原告の銀行口座に、この賃料相当額の入金があったとしても、これを原告に対する贈与と評価することはできず、賃料相当額に関しては本件各年分の贈与税の課税価格から除くべきであるという判断を示した。 (2) 上記1以外の入金について 次に、静岡地方裁判所は、原告による、原告と甲が内縁関係であることを前提として、原告名義の預金口座に入金された金員が、婚姻費用分担義務又は扶養義務の履行として行われたものであるという主張については、贈与は片務性や無償性から、内縁関係を含む親密な関係の者の間で行われることが多く、租税回避の手段として用いられる危険性もあることからすると、納税者が財産の移転を内縁関係に基づく婚姻費用分担義務の履行であると認めるには、納税者は、当該財産移転当時、交付者と被交付者との間で内縁関係が成立していることに加え、当該財産移転当時、交付者が被交付者に対して内縁関係に基づく婚姻費用分担義務を負っており、かつ、移転財産額が、同義務の範囲内(具体的分担額内)であること及び交付者が、実際に同義務の履行として当該財産を移転したことを認めるに足りる特別の事情があることを要するというべきであると要件をまとめた。 そのうえで、甲は、乙及び丙と養子縁組又は認知をしていないのであるから、これらの者に対して扶養義務を負っておらず、仮に、甲と原告との間で内縁関係が認められるとしても、乙及び丙の教育費の支払が、婚姻費用分担義務の履行と認められる余地はなく、前記特別の事情を認めることはできないこと、甲自身の具体的な収入額等が不明であり、婚姻費用分担義務の具体的内容は不明であるといわざるを得ないことなどから、原告と甲との間で内縁関係が認められるとしても、甲が原資を出捐して、原告名義の銀行口座に入金されたものが、甲の原告に対する婚姻費用分担義務の履行として行われたと認めることはできず、前記特別の事情を認めることはできないという判断を示して、原告に帰属する預金口座に入金があったことにより、原告は、上記1の住居費を除く金員を支配するに至ったものと解されるから、甲からの贈与による財産の取得が認められるとした。   2 争点(2)本件贈与には、相続税法第21条の3第1項第2号が適用されるか 争点(2)について、静岡地方裁判所は、贈与税の非課税財産について相続税法21条の3第1項2号「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」の規定を引用したうえで、「扶養義務者」のうち、配偶者については、法律上の婚姻関係にある者に限られると解するのが相当であり、甲が原告と法律上の婚姻関係にある者ではない以上、相続税法第21条の3第1項2号が適用されるものとはいえない」という判断を示した。 さらに、原告の銀行口座に対する入金の使途には、甲が扶養義務を負わない乙や丙の教育費等も含まれる上、原告は、当時における収入がない原告と収入に関する資料のない甲の間における生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められる範囲がどのようなものなのかについて、具体的な主張も立証もしていないと指摘したうえで、甲から原告に対する贈与につき、相続税法第21条の3第1項2号が適用されるとする原告の主張を採用することはできないと判示した。   【東京高等裁判所の判断】 東京高等裁判所は、事実認定や証人による証言などから、控訴人と甲は、本件各処分当時において、婚姻の意思と夫婦共同生活があったと認めるのが相当であり、内縁関係にあったものと認められるとの判断を示したうえで、被控訴人による、内縁関係を含む夫婦間における財産の移転が租税回避の手段として利用される危険性があるため、婚姻費用分担義務の履行として認められるか否かは、これを肯定するに足りる特別な事情があったか否かという観点から判断すべきであるという主張を踏まえ、夫婦の収入・資産との対比や財産の移転の内実に照らし、具体的な事実関係に基づき個別に判断することとし、仮に、外形上、婚姻費用分担義務の履行としての体裁を採っていたとしても、不相当に過大である又は目的外で給付がされたものと認められる場合には、同義務の履行としてされたものではない財産の移転、すなわち贈与に該当すると判断するのが相当であると判示した。 そのうえで、東京高等裁判所は、甲から控訴人の預金口座に入金された6年間で1億8,613万円を超える金額については、甲が負担すべき住居費が含まれていることからすれば、甲、控訴人及び子供達の生活費・教育費等(水道光熱費、生活費、維持管理費、通信費、学習費、家事費、自治会費、旅行費、学費)に充てるためであったと認めることに特段の不自然、不合理があるものとはいえないこと、これらの使途に費消された金員が、甲と控訴人の収入や資産等によって定まる暮らし振りに応じた婚姻費用の概念から格別に外れるものがあるとはいえず、加えて、その具体的な金額や内容は明らかではないものの、本件各金員の相当部分は住民登録をしていないとの理由から預金口座を開設できない甲のために使用されたものと推認されるのであり、これらを勘案すれば、多額の資産を有する甲から収入のない控訴人に対する婚姻費用分担の合意に基づく義務の履行として不相当に過大である又は目的外で給付がされたものと認めることはできないこと、さらに、控訴人による各支出の合計額は、1億9,863万円あまりとなり、甲から入金された金員の合計額と近似し、上回っていることからすれば、甲から入金された金員からの支出は全体として生活費・養育費等の支出にとどまり、夫婦間の合意に基づき婚姻費用として支払われたものと認めるのが相当であるとの判断を示した。 そして、結論として、東京高等裁判所は、控訴人名義の預金口座に入金された金員は、甲から控訴人に対し合意に基づく婚姻費用分担義務の履行として支払われたものであり、控訴人が甲から贈与により取得した財産であると認めることはできないことから、これが贈与により取得した財産であるとして行われた各決定処分等はいずれも違法であり、取り消されるべきであり、これと異なる原判決は一部不当であるから、原判決を変更することとして、贈与税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を取り消す判決を言い渡した。   【判決の特徴】 決して統計をとったわけではないので、あくまで印象として述べるのであるが、税務訴訟においては、第1審で納税者に有利な判決が出ることがあっても、控訴審では、課税庁側の巻き返しがあって、納税者の主張が認められず(逆転敗訴)、最高裁判所では「上告不受理」となって終結する事案をよく目にする。本件は、第1審で納税者の主張の一部を認容する判決が出された後、控訴審では、納税者が完全勝訴する判決が言い渡されるというめずらしいケースである。 本件では、控訴審である東京高等裁判所は、控訴人(第1審原告)と内縁関係にあった甲との出会いから共同生活の様子、原告の連れ子である乙や実子である丙の証言、甲の有する資産、そこから出捐された金員の性質など、第1審に比較してかなり詳細な事実認定を行い、納税者勝訴の判決に導いた。 判決文から読み取れる印象でしかないのであるが、原告と内縁関係にあった甲が、第1審では消極的な証言しかしていなかったことと比較すると、控訴審では、かなり詳細な証言を行い、また、甲の証言を裏付けるための証人も出廷して、裁判所の判断を後押しした様子が見て取れるようである。   1 国税不服審判所の裁決 原告は、本件訴訟を提起する前に、国税不服審判所に対して不服申し立てを行っている。国税不服審判所の裁決要旨検索システムから、その裁決の要旨を引用しておきたい。裁決要旨検索システムによれば、裁決の争点は「贈与事実の認定」と「請求人(原告)が配偶者に含まれるか否か」の2項目である。 国税不服審判所は、静岡地方裁判所が「贈与には該当しない」とした、請求人(原告)と内縁関係にあった甲が賃借した住居の家賃も含めて、贈与と認定したうえで、請求人(原告)婚姻届けを提出しないため配偶者に該当しないとして、請求人(原告)は審査請求を棄却している。   2 判決の射程 ビジネスで成功して50億円の資産を有しながら、銃刀法違反の罪で服役をし、出所後、反社会的勢力の手を恐れて住民登録をせず、そのため、預金口座を所持することができない甲は、トラブルに巻き込みたくないことを理由に原告との間で婚姻届けを出すこともなく、原告の連れ子でありながら甲を実の父だと理解していた乙と養子縁組をせず、さらに実子である丙も認知しなかった。東京高等裁判所は、こうした本件における甲の特殊な立場と考え方に理解を示して、甲が扶養義務を果たしたものと認定して、課税庁による贈与税の決定処分を覆したものである。 本判決がいわゆる事例判決であることは言うまでもないので、その射程について判断することは難しいのだが、現在、法的に婚姻が認められていない同性婚カップルについて、相続税21条の3第1項第2号の扶養義務者の認定において、本判決の判示が及ぶ可能性があるのではないかと思料する。   (了)

#No. 655(掲載号)
#米澤 勝
2026/02/05

〔実務で差がつく!〕相続時精算課税制度Q&A 【第5回】「相続時精算課税と相続税の2割加算(その1)」

〔実務で差がつく!〕 相続時精算課税制度Q&A 【第5回】 「相続時精算課税と相続税の2割加算(その1)」   税理士 徳田 敏彦   【Q】 祖父Aは孫Cと令和4年8月に普通養子縁組を行った。 その後、令和5年2月に祖父Aから孫Cへ土地1,000万円を贈与し、孫Cは相続時精算課税制度を選択した。 令和6年1月に祖父Aの子である父B(孫Cの父)に先に相続が発生し、その後令和7年2月に祖父Aに相続が発生した。 この場合、祖父Aに係る相続税で孫Cが相続時精算課税制度により贈与された財産は相続税の2割加算の対象になるのか。 【A】 相続税の2割加算の対象にはならない。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 相続税法18条の規定では、相続税の2割加算の対象者には被相続人の直系卑属で養子となっている者が含まれている。 ただし、被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し又は相続権を失ったため、代襲して相続人となっている場合は、2割加算の対象には含まれないと規定している。 そのため、直系卑属で養子となった者が相続開始の時において代襲相続人である場合には2割加算の対象にはならない。 したがって、孫Cは贈与により財産を取得した時には将来の祖父Aの相続税における2割加算の対象者であるが、相続又は遺贈によって財産を取得した時点では2割加算の対象者ではないので、相続時精算課税制度により贈与された財産についても2割加算の対象にはならない。 また、本事例とは異なるが、贈与により財産を取得した時においては被相続人の1親等の血族であった者が、相続開始の時には養子縁組の解消等により、1親等の親族ではなくなっていた場合(つまり2割加算の対象になっていた場合)にはどうなるのだろうか。 この場合には、相続又は遺贈により財産を取得した時点では2割加算の対象になるが、贈与により財産を取得した時において被相続人の1親等の親族であったため、1親等の時に贈与を受けた部分は2割加算の対象から除かれることから、贈与により取得した財産については2割加算の対象にはならない(相法21条の15②)。   (了)

#No. 655(掲載号)
#徳田 敏彦
2026/02/05

金融・投資商品の税務Q&A 【Q102】「公社債に投資する投資信託の分類」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q102】 「公社債に投資する投資信託の分類」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○●   1 公社債に投資する投資信託の分類 (1) 公社債投資信託の定義 証券投資信託のうち、その信託財産を公債又は社債に対する投資として運用することを目的とするもので、株式又は出資に対する投資として運用しないものを公社債投資信託といいます。 株式等を運用資産に組み込まない投資信託かどうかは、その投資信託の目論見書で確認することができます。目論見書には、投資対象とする資産の範囲や信託約款で定められた投資制限が記載されていて、その記載内容から株式等に投資をするか否かが確認できます。また、株式等に対する投資が制限されている場合、税務上、公社債投資信託として取り扱われる旨が明記されていることもあります。 (2) 公社債投資信託以外の証券投資信託に分類されるケース 主要な投資資産が公社債である証券投資信託であっても、目論見書を確認すると、株式に対する投資が制限されていないものがあります。目論見書上、投資対象は国債などの公社債である旨が記載されている一方、投資制限の項目で株式等への投資をしないとはされていない場合は、上記(1)の株式又は出資に対する投資として運用しないものには該当しないことになります。 したがって、そのような証券投資信託は、税務上は公社債投資信託には該当せず、公社債投資信託以外の証券投資信託に分類されることになります。   2 NISA口座で受け入れ可能な投資信託 NISA口座では上場又は公募の証券投資信託の受益権のうち一定の要件を充足するもので、公社債投資信託、公社債等運用投資信託に該当するもの以外が受け入れ可能とされています。 つまり、実際の投資対象が公社債であっても、税務上の公社債投資信託、公社債等運用投資信託に該当しなければNISA口座で保有することが可能であるため、投資信託の目論見書等で株式に対する投資が制限されているか否かなど、その投資信託の税務上の分類を確認することで、NISA口座で受け入れ可能か否かを判断することができます。 なお、公社債投資信託、公社債等運用投資信託は、NISA口座で保有することはできませんが、上場又は公募であれば上場株式等として特定口座で保有することは可能です。   3 本件へのあてはめ 公社債に投資する公募の投資信託とのことですが、主要な投資対象が公社債であっても、株式等に投資をすることが制限されていないのではないかと考えられます。 目論見書で投資対象や投資制限を確認し、株式等への投資が制限されていないのであれば、税務上、公社債投資信託以外の証券投資信託に該当することとなり、NISA口座での受け入れは可能であると考えられます(一定の要件を充足するものに限ります)。   (了)

#No. 655(掲載号)
#西川 真由美
2026/02/05

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第61回】「基準所得金額計算上の配当控除規定における当初申告要件の是非」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第61回】 「基準所得金額計算上の配当控除規定における当初申告要件の是非」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 会社単位の外国子会社合算税制の適用があるとして更正処分を受けたとき、合算対象の外国関係会社がその子会社から配当等を受けていた場合には、その基準所得金額の計算において、控除明細書の添付という当初申告要件を満たしていないことから、当該配当等の額の控除は認められないでしょうか。 〔A〕 外国子会社合算税制の目的等から、当初申告要件には合理性があり、政令に委任された基準所得金額の計算において、当該委任の範囲を逸脱するものではないという判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 当初申告要件の緩和 (1) 平成23年12月の税制改正 国税通則法上の更正の請求事由に形式的に該当する場合であっても、他の国税に関する法律において、当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件が設けられている措置」については、更正の請求によって、当該措置を適用することはできないとされていたが、平成23年12月の改正により、上記措置のうち、その目的・効果や課税の公平の観点から、事後的な適用を認めても問題ないものとして、①特別償却などのインセンティブ措置、及び②各種引当金等、利用の有無で、有利にも不利にも操作が可能な措置を除き、「当初申告要件」を廃止し、所要の書類を添付することにより事後的に更正の請求が認められることとされた(※1)。 (※1) 志場喜徳郎他『国税通則法精解(令和7年改訂)』(大蔵財務協会、2025年)375~378頁参照。 かかる改正において、「当初申告要件」が廃止された項目は多岐にわたるが、国際課税関係についていえば、平成21年度の税制改正により導入された外国子会社配当益金不算入制度が該当するところとなった(法法23の2)。しかし、その一方で、同制度導入に伴い、外国子会社合算税制において、「内国法人が直接剰余金の配当等を受ける場合とのバランスを考慮して」(※2)、特定外国子会社等がその子会社から受ける剰余金の配当等についても適用対象金額から控除することとされた(措令39の15①四、同②十七)が、その場合に課される当初申告要件(※3)(当時の措令39の15⑧、現行同⑨)については、平成23年12月の改正ではそのまま維持された。 (※2) 財務省「平成21年度 税制改正の解説」444頁参照。 (※3) 外国関係会社が子会社から受ける配当等の額の控除は、確定申告書に控除額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り適用することができるというもの。 (2) 平成29年度の税制改正 外国子会社合算税制は、OECD等によるBEPSプロジェクトの最終報告書を踏まえ、平成29年に抜本的に改正され、従来適用除外基準とされていた4つの基準(※4)は、会社全体として「能動的所得」を得るために必要な経済活動の実態を備えているかを判断する基準(経済活動基準)として位置付けられ、4つの基準のうちいずれかを満たさない場合は、「会社単位の合算課税」の対象とされることになった。 (※4) 「事業基準」「実体基準」「管理支配基準」「所在地国基準又は非関連者基準」の4つを指す。 旧適用除外基準には、当初申告要件が課されていた(※5)(改正前の措法66の6⑦)が、かかる要件は緩和され、内国法人が、国税庁の職員等からの求めに応じて必要な書類その他の資料の提示又は提出がないときには、①特定外国関係会社(措置法66条の6第2項イに規定するいわゆるペーパー・カンパニー)に該当する、又は②経済活動基準を満たさないと推定されるという、推定規定が導入された(措法66の6③④)。 (※5) 確定申告書に、規定の適用がある旨を記載した書面を添付し、かつ、その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り、適用されるというもの。 以下では、子会社の配当等の額の控除に係る当初申告要件の是非について争われた裁判例を検討する。   2 裁判例 《東京地裁令和7年5月16日判決(令和5年(行ワ)第94号)》(※6) (※6) TAINSコード:Z888-2759。なお、本稿執筆時点において控訴中。 (1) 事案の概要 本件は、内国法人である原告Xが、平成30年12月期(以下「本件事業年度」という)に係る法人税等の申告をしたところ、所轄税務署長Yから、スイスに所在するXの子会社であるA社並びに香港に所在するA社の子会社であるB社は、外国子会社合算税制(平成29年度税制改正前の措法66の6①)の適用上、特定外国子会社等に該当し、両社の課税対象金額に相当する金額が、Xの本件事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分等を受け、その後、Xは、本件事業年度の法人税について更正の請求をしたが、Yから、法人税について減額再更正処分等を受けたことから、Xが、それら処分等の取消しなどを求める事案である。 A社は、下図のとおり、B社及びD社(マレーシアに所在するA社の100%子会社)から配当(以下「本件各配当」という)を受領したが、本件各配当は、Xに合算される特定外国子会社等の基準所得金額(※7)の計算上控除される(措令39の15①四)。ただし、かかる控除の適用を受けるためには、確定申告書に控除明細書の添付が義務付けられている(以下「本件規定」という)。Xは、法人税等の確定申告時に、課税対象金額に相当する金額を益金の額に算入しておらず、控除明細書を添付していなかったが、申告から約2年後に控除明細書を提出した。Yは、当初の確定申告書に控除明細書の添付がなかったことから、A社及びB社の基準所得金額の計算上、本件各配当の額は控除できないとして、上記の法人税の更正処分等を行った。 (※7) 外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額をいう(措法66の6②四)。このように、基準所得金額の計算は、政令委任されており、本件で問題となる当時の政令委任規定(平成29年度税制改正前の措法66の6②二)につき、以下「本件委任規定」という。 (2) 争点とXの主張 本件の主な争点は、本件規定が本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否かであるが、Xは、要旨、以下のように主張した。 (3) 裁判所の判断 東京地裁は、次のとおり判示し、本件規定は、委任の範囲を逸脱するものではないとしてXの請求を棄却した。 ① 政令委任の目的について ② 本件規定の意義について ③ 外国子会社配当益金不算入制度における当初申告要件の撤廃との関係について (4) 検討 現行制度の枠組みにおいて、東京地裁の下した結論はやむを得ないものであったと考える。ちなみに、本件同様外国子会社合算税制の適用除外基準について、当初申告要件が問題となったサンリオ事件については、本連載【第37回】を参照されたい。 以下では、Xの主張の排斥の充分性及び当初申告要件が緩和されてきた他の項目とのバランスの観点から検討してみたい。なお、本件は控訴されており、その動向についても注目される。 ① 政令による課税要件の加重について 上記(2)①のとおり、Xは、本件委任規定の文言上、政令には「金額の計算」についての技術的かつ細目的な事項しか規定できないと解すべきであり、本件規定のように課税要件を加重する手続規定を定めることはできないと主張した。これに対し、東京地裁は、外国子会社合算税制の目的等に照らせば、本件委任規定は、基準所得金額の具体的な計算の基準につき、どの時点までに提出されたどのような資料等に基づいて計算するかといった点も含めて、我が国の法人税法及び措置法による所得の金額の計算に準じて行う基準を定めることを委任する趣旨の規定であるとし、Xの主張は採用できないと判示した。 東京地裁がいうように、確かに、特定外国子会社等の存在自体を課税庁に申告しないというインセンティブが働きやすいという側面はあるにせよ、当初申告時までに基準所得金額の具体的な計算の資料を提出しないと同金額の計算ができないわけではないし、後日それらの資料の提出を求めれば足りることである。当初申告時までに提出がないからといって、政令によって要件を加重する根拠に乏しいといえる(※8)。 (※8) 片平亨介「CFC税制上の当初申告要件について」(T&Amaster No.1096(2025.10.27))7頁は、「そもそも本判決は、本件委任規定による委任の範囲に、課税要件を加重する手続規定を置くことが含まれるか否かについて、十分な検証を行っていない。更に、特定外国子会社等の存在自体を課税庁に申告しないというインセンティブ対策や課税庁としての情報収集の必要性については、特定外国子会社等が配当等を受ける場面にとどまらず、CFC税制一般に当てはまる問題であるところ、CFC税制は、その制定当初から、かかるインセンティブ対策や情報収集の必要性に対応する規定を置いており、それらの問題は、特定外国子会社等が配当等を受ける場合にのみ、当初申告要件を課す正当化事由にはならない。」と述べている。 ② 適用除外基準の当初申告要件の緩和とのバランス 上記1(2)のとおり、平成29年度税制改正において、従来の外国子会社合算税制の適用を除外する適用除外基準から、会社単位の合算課税の対象とする外国関係会社を特定するための基準(経済活動基準)へと適用除外基準の位置づけが変更されたことを踏まえ、同制度の適用除外を受けるための要件として設けられていた確定申告書への書面添付要件及び資料等の保存要件は廃止された(※9)。 (※9) 財務省「平成29年度 税制改正の解説」683~684頁参照。 適用除外基準の当初申告要件は、昭和53年の本外国子会社合算税制導入時から設けられていたものであるが、当該要件を廃止したということは、立法担当者が、外国関係会社の存在自体を課税庁に申告しないというインセンティブ対策はもはや不要であり、事後的な情報収集で足りると考えた結果であるとも解される(※10)。そうすると、本件規定についてのみ、当初申告要件を義務付ける必要はないといえよう。 (※10) 片平・前掲(※8)10頁参照。 本件規定は、外国子会社配当益金不算入制度の導入を契機に設けられたものではあるが、上記1(1)のとおり、同制度における当初申告要件が廃止された以上、その存立意義を失ったともいえるかもしれない(※11)。東京地裁がいうように、外国子会社配当益金不算入制度と外国子会社合算税制とはインセンティブの働く方向が違っているからといって、一方が、修正申告書や更正の請求書に必要な明細書を添付することで足りるとされているのに、他方はそれでは不十分というのはバランスに欠けるといえるからである。そうすると、Xの上記(2)②の主張は、極めて正当なもののように思われる。 (※11) 片平・前掲(※8)9頁参照。   (了)

#No. 655(掲載号)
#霞 晴久
2026/02/05

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第102回】「消費税等の免税事業者が作成する受取書の取扱い」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第102回】 「消費税等の免税事業者が作成する受取書の取扱い」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は物品販売業を行っている者です。消費税及び地方消費税の免税事業者となっていますが、売上代金を現金で受領した際の領収書について、消費税及び地方消費税の額(以下「消費税額等」という。)に相当する金額を区分記載して交付しております。 この場合の記載金額は消費税等を含めない金額で判断してよろしいですか。含めない金額で判断すると、領収書である第17号文書の場合、5万円未満は非課税なので、収入印紙の貼付が必要なくなります。   消費税等の免税事業者であるため、消費税額等を区分記載していたとしても、記載金額は消費税額等を含めなければならない。 したがって、記載金額52,800円の第17号の1文書に該当し、印紙税額200円となる。   [検討] 消費税等を区分記載している場合は記載金額に消費税額等を含めないのでは? 記載金額は、消費税額等を含んだ金額とされるが、消費税額等を区分して記載している場合、又は税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、消費税額等が明らかである場合には、記載金額に消費税額を含めないこととされている。 しかしながら、消費税及び地方消費税の免税事業者については、その取引に課される消費税及び地方消費税がないため、たとえ領収書等に「消費税額等」と具体的な金額を記載していたとしても、これに相当する金額は記載金額に含めることとなる。 この取扱いについては、第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)、第2号文書(請負に関する契約書)、第19号文書(金銭又は有価証券の受取書)、第20号文書(判取帳)についても同様の取扱いになる。   (了)

#No. 655(掲載号)
#山端 美德
2026/02/05

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第49回】「損失を利益と表示してしまった例」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第49回】 「損失を利益と表示してしまった例」   公認会計士 石王丸 周夫   1 損失を「~利益」と表示 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 損益計算書の税引前当期純損益について、その年度は赤字であったにもかかわらず、「税引前当期純利益」と表示してしまったというミスです。 このミスは計算書類におけるうっかりミスの典型例といってよいでしょう。14年前の拙著『パターン別 計算書類作成「うっかりミス」の防ぎ方』(2012年)でも、ほぼ同じ事例を1番目の事例として紹介しました。また、本連載の【第25回】でも、経常損失であるにもかかわらず経常利益と表示してしまった【事例25-2】を紹介しています。 デジタル化が一層の進展を遂げている今日、企業の経理実務においてもシステム化が浸透していることは間違いないと思われますが、それでもなお、このようなミスが発見されることなく外部公表に至っています。 では早速、事例を見ていきましょう。 【事例49】 税引前当期純利益を税引前当期純損失に訂正した事例 〈訂正前〉 (出所) 株式会社FRONTEO「第22回定時株主総会招集ご通知」(2025年6月10日、電子提供措置の開始日2025年6月3日)及び「「第22回定時株主総会招集ご通知及び株主総会資料」の一部訂正について」(2025年6月20日) この事例の会社は、2025年6月3日に本事例を含む「第22回定時株主総会招集ご通知」を公表(電子提供措置の開始)し、2025年6月20日に当該誤記載の訂正を公表しています。 間違っていたのは【事例49】の赤枠部分で、損益計算書の税引前当期純利益の名称です。正しくは、「税引前当期純損失」でした。つまり、赤字だったわけです。損益の名称を逆にしてしまったもので、うっかりミスと思われます。 会社計算規則の定めを確認しておきましょう。 この規定の趣旨は、赤字の場合、「~損失」と表示しなければならないというものです。そして、数字には△(負数の記号)をつける必要はなく、数字のみを記載します。【事例49】は、この定めに従い訂正されています。   2 このミスに気づかなかった背景 【事例49】では表記を省略していますが、この損益計算書では、ミスのあった税引前当期純損益を除き、他の段階損益はすべて黒字でした。売上総利益、営業利益、経常利益、そして一番下の当期純利益というように、すべて「~利益」という表示になっています。そのなかで税引前当期純損益のみが赤字だったことから、「~損失」という表示にするのを忘れてしまったのではないかとみられます。 また、【事例49】の会社は連結財務諸表作成会社なので、業績は連結ベースで判断されます。個別財務諸表(株主総会招集通知では計算書類)への関心は高くはないでしょう。この会社の業績は、株主総会招集通知公表より前に決算短信で公表されており、その内容は基本的に連結ベースの数値です。そこには参考として個別業績の概要も記載されていますが、PL項目について開示されているのは、売上高、営業利益、経常利益、そして当期純利益の4つです。税引前当期純利益は開示対象になっていません。 つまり、株主総会招集通知の作成作業に先行して行われていると考えられる決算短信の作業に際して、個別決算における税引前損益が赤字であることを目にしたり耳にしたりする機会は少なかったのではないかと思われます。【事例49】のミスについて、公表前に気づくことができなかったのは、そういったこともあったのかもしれません。   3 計算チェックを欠かさない 【事例49】のミスについては、それが発生してしまったことは仕方がなかったとしても、開示前に発見することは可能だったと考えられます。 発見方法については、本連載の【第42回】が参考になります。【第42回】は、連結損益計算書の当期純利益に関するミスで、【事例42-1】と【事例42-2】は数字に関するミスでした。ミスが発生、見逃された原因は、関心の低い項目だったこととクロスチェックする相手項目がなかったことの2点だと述べましたが、その点で本事例と共通しています。 その【第42回】では、「最低でも計算チェックは行うべき」としました。 今回のミスも、計算チェックで検出可能です。 損益計算書を上から順に電卓で足し引きして、計算チェックしていきます。その際、段階損益のところでは、必ず損益の名称と計算結果のプラスマイナスの整合性を確認します。そうすると、税引前当期純利益のところで計算結果がマイナス値になるので、損益名称との不整合に気がつくはずです。 もちろん、人間が行うことですから、「そのように計算チェックしたのだけれど見逃してしまった」ということもあります。しかし、計算チェックを常に行うよう習慣づけていけば、間違いを開示前に発見できることが多くなってくるはずです。   〈今回のまとめ〉 損益計算書のうっかりミスを開示前に見つけるには、まずは計算チェックを欠かさないことです。 (了)

#No. 655(掲載号)
#石王丸 周夫
2026/02/05
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