「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例155(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆持分あり医療法人の新規設立不可 平成19年の医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立が認められなくなった。そのため、平成19年4月1日以降新たに設立された医療法人は、全て持分なし医療法人となる。持分なし医療法人とは、社団法人であり、その定款に出資持分に関する規定がなく、持分が一切ないものを言う。 ◆基金拠出型医療法人 平成19年の医療法改正により、医療法人社団は、非営利性の徹底にともない、持分なしの医療法人社団しか設立できなくなったが、持分なしの医療法人社団の活動資金の調達手段として、定款の定めるところにより、基金制度の採用を可能とした。この基金制度を採用した持分なしの医療法人社団を「基金拠出型医療法人」という。 基金とは、持分なしの医療法人社団に拠出された金銭やその他の財産で、当該医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところにより金銭の返還義務を負うものである。したがって、基金拠出型医療法人も持分なしの医療法人社団である。 ◆法人の均等割の税率(地法52、312) 法人税均等割とは、法人の所得の有無にかかわらず、法人の規模(資本金等の額と従業者数)に基づいて課される法人住民税の一部である。出資持分のない医療法人社団の場合、均等割は最低額(道府県民税2万円、市町村民税5万円)が適用される。 法人の区分 道府県民税 イ 公共法人及び公益法人等 ロ 人格のない社団等 ハ 一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人を除く) ニ 保険業法に規定する相互会社以外の法人で資本金の額又は出資金の額を有しないもの ホ 資本金等の額が1,000万円以下であるもの 年額2万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもの 年額5万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもの 年額13万円 資本金等の額が10億円を超え50億円以下であるもの 年額54万円 資本金等の額が50億円を超えるもの 年額80万円 法人の区分 市町村民税 イ 公共法人及び公益法人等 ロ 人格のない社団等 ハ 一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人を除く) ニ 保険業法に規定する相互会社以外の法人で資本金の額又は出資金の額を有しないもの ホ 資本金等の額が1,000万円以下であるもののうち従業者数の合計数が50人以下のもの 年額5万円 資本金等の額が1,000万円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額12万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額13万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額15万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額16万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額40万円 資本金等の額が10億円を超えるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額41万円 資本金等の額が10億円を超え50億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額175万円 資本金等の額が50億円を超えるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額300万円 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第91回】 「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける 低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その2)」 ~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~ 税理士 青木 幹 7 争点1に関する裁判所の判断 (1) 法人税法22条2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、無償による資産の譲受けも収益の発生原因となるものと規定しているところ、その趣旨は、法人が資産を無償で譲り受ける場合には、譲受時における適正な価額(時価)に相当する収益があると認識すべきものであることを明らかにしたものであると解される。 譲受時における適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるところ、たまたまそのうちの一部のみについて対価を現に支出したからといってその額と適正な価額との差額部分の収益が認識され得ないものとすれば、無償譲受けの場合との間で公平を欠くことになるから、その趣旨からして、その場合に益金の額に算入すべき収益の額は、当該資産の譲受けの対価の額と同資産の譲渡時における適正な価額との差額であると解される(※1)。 (※1) 最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決(平成6年(行ツ)第75号)・民集49巻10号3121頁を引用して説示。 (2) 本件法人税更正処分は、平成27年3月30日付けで本件株式譲渡契約に基づき、D社からC社に対してされた本件株式譲受けに係る本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額を受贈益の額と認定して、法人税法22条2項に基づき本件事業年度の益金の額に算入したものであるところ、本件株式の適正な価額が25億2,538万2,600円であることについては当事者間に争いはなく、また、前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約に係る本件株式の対価は12億1,000万円(本件対価の額)と認められる。前記説示したとおり本件対価の額と適正な価額との差額13億1,538万2,600円を受贈益の額と認定して益金の額に算入するのが相当である。 (3) これに対して原告は、受贈益の額は資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると主張する。しかしながら、前記説示したとおり、法人税法22条2項によれば、資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるため、当該資産の譲受けの対価の額と譲受時における資産の適正な価額との差額に相当する収益があると認識すべきであると解されることからすれば、これを「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限定する理由はないというべきである。 この点について、原告は、法人税法22条2項の立案過程から、資産の低額譲受けの場合、常に資産の対価と適正な価額との差額の全額が受贈益の額とされるのではなく、その差額のうち贈与を受けたと認められる金額があるときに限り、その金額が受贈益の額とされることが確認できると主張する。しかしながら、昭和40年度税制改正によって制定された現行の法人税法22条2項については、その法案の国会へ提出前の立案過程において、昭和38年B案42条として、著しく低い価格の対価により資産を譲渡した場合に、当該資産の時価と当該対価の差額のうちに贈与したと認められる部分の金額があると認められるときは、当該贈与したものと認められる部分の金額を益金の額に算入する旨の規定が検討されたことが認められるが、同案は、あくまで立法過程での一案にとどまり、実際には同案で検討された文言が現行法人税法22条2項に反映されなかったのであるから、これをもって同項の解釈とすることはできない。 また、法人税法37条8項が、内国法人が資産の譲渡等をした場合において、その譲渡等の対価の額が当該資産の譲渡の時における価額に比して低いときは、当該対価の額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれるものとする旨を規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合にも、同法22条2項の解釈として受贈益の額となる金額が、資産の対価と適正な価額との差額のうちの「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られる旨主張する。 しかしながら、法人税法にいう寄附金の額の認定に関し、同法37条7項は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産を贈与した場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与時における価額によるものとするが、このうち広告宣伝費及び見本品の費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費等とされるべきものを除くと規定しており、贈与をした側においては、金銭その他の資産の贈与であっても上記の交際費等とされるべきものは寄附金の額に含まれないのに対し、同法22条2項の収益の額は、前記のとおり資産の譲渡時の適正な価額をもって認識されるべきものであるから、贈与を受けた側においては、贈与をした側の寄附金であっても、収益の額となることに何ら変わりがないものとされている。 そうすると、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とする原告の上記主張は採用することができない。 さらに、原告は、法人税法25条の2第3項は、資産の対価とその適正な価額との差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となると規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合も、同法22条2項の解釈として受贈益となるのが資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」に限る旨主張する。 しかしながら、法人税法25条の2第3項は、あくまで内国法人が他の内国法人との間に完全支配関係がある場合に限定して、同条1項において益金不算入とされる受贈益についてその額を定めている規定であり、同条3項は、同法22条2項にいう「別段の定め」に該当するものである。 前記前提事実によれば、本件株式譲渡の時点において、D社とC社とが完全支配関係になかったと認められるのであるから、本件において法人税法25条の2第3項が適用される余地はないというべきであるし、同項が同法22条2項にいう「別段の定め」に該当する以上、このような特則規定から溯って益金算入に関する一般規定である同項を解釈する根拠とすることは妥当ではない。 したがって、法人税法25条の2第3項を根拠とする原告の前記主張は採用することができない。 なお、C社は、本件株式を取得するに当たり、本件対価と同額の12億1,000万円を借り入れていることが認められ、本件株式以外に資産がなく、その時点の純資産額は資本金と同額の1,000万円であったことが認められる(※2)。しかるに、本件株式譲渡後にされた本件交換では、H社株式88万3,400株(本件株式譲渡日における時価相場相当額13億1,538万2,600円)がC社の株式の交換対価として、C社の株主Fらに対して交付されていることが認められるが、上記のとおりC社の純資産額は1,000万円しかなかったのであるから、H社の株式88万3,400株がFらへ本件株式交換の対価とされたことは、本件株式譲受けにおいて、C社が本件対価の額を12億1,000万円と本件株式の適正な価額25億2,538万2,600円との差額13億1,538万2,600円も含めてD社から実質的に贈与を受けたことを示しているというべきである。 (※2) ここで裁判所が言っている純資産額1,000万円は簿価純資産額であると考えられる。判示で、本件E社株式の適正な価額を25億2,538万2,600円であると認定しているのであるから、時価純資産額は有価証券の適正な価額25億2,538万2,600円から借入金を引いた12億1,000万円を引いた残額13億1,538万2,600円に裁判所が判示している資本金相当額の純資産1,000万円を加えた金額である13億2,538万2,600円であったと計算される。C社においては創立費などの経費が発生しているから、この金額より時価純資産額は若干少ないと考えられる。 そうすると、仮に、受贈益の額は、資産の対価と適正な時価との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると解される余地があるとしても、上記事実関係からすれば、本件株式譲受けにより、C社は本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額13億1,538万2,600円を「実質的に贈与を受けたと認められる」から、原告の主張は、この点からも採用できない。 (4) 原告は、受贈益の額となる資産の対価の額と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」は、「全契約内容」に照らして本件株式譲受けに当てはめる限り、本件株式交換がされたから「実質的に贈与を受けたと認められる金額」がどこにもなく、したがって、本件株式譲受けにおいて、C社には受贈益の額はない旨主張をする。 原告の主張は、判然としない部分があるが、本件における法人税法22条2項の収益の額の認定に当たっては、本件スキームに係る全契約内容に照らし、本件株式譲受け対価には、本件対価の額である12億1,000万円に限らず、その後行われた本件株式交換契約に基づきFらに交付されたH社株式88万3,400株(本件株式譲渡時の時価相当額13億1,538万2,600円)も含まれると主張すると解される。 しかしながら、法人税法22条2項の収益の額として、資産の対価と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となるものではないことは前記説示のとおりであり、原告の上記主張は、その前提を誤っているというべきである。 法人税法22条2項の収益の額の認定にあたり、契約内容全体に照らして解釈すべきであるとしても、法人税の取扱いにおいては、資産の販売等に係る収益の額の認定は、同一の相手方又はこれとの間に支配関係がある者との間で締結した複数の契約について、一定の場合に結合したものを一つの契約とみなし収益を認定する場合もあるが、このような場合を除き、個々の契約ごとに計上するのが原則であると解される(法人税基本通達2-1-1参照)。 前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約と本件株式交換契約は、本件スキームの一環として行われたものであると認めることができるが、これらの契約が締結された時点では、本件各合意当事者は、いまだ支配関係にあるものではなかったと認められる。本件株式譲渡契約は、D社とC社を当事者として、本件株式を本件対価の額で譲渡したものであったのに対し、本件株式交換契約は、C社とH社を当事者として、C社の全株式とH社88万3,400株とを交換するものであり、かつ、本件株式交換契約の対価であるH社の株式の交付を受けたのはFらであったことが認められるところ、これによれば両契約は、取引の当事者、取引対象とする資産及び取引態様を異にする別個の取引であったといわざるを得ない。 法人税法22条2項の収益の額の認定に当たり、本件株式譲渡契約に係る対価として、本件対価の額のほかに、別個の契約である本件株式交換契約に係る対価であるH社の株式88万3,400株を、本件株式譲受けの対価と認めることはできない。 したがって、原告の前記主張は採用することができない。 (5) 本件株式譲受けに係る受贈益の額には、本件対価の額である12億1,000万円と本件株式の適正な価額である25億2,538万2,600円の差額である13億1,538万2,600円であるというべきであるから、これを本件株式譲受けにかかる受贈益の額に算入するのが相当である。したがって、争点1についての原告の主張には理由がない。 8 まとめ及び検討 法人税法22条2項の益金の額について争われたケースである。本件譲渡で支払われた対価の額をC社がD社に支払った対価12億1,000万円で判定するべきか、納税者の主張するようにスキームを一体の取引とみて株式交換で移転したH社株式883,400株(13億1,538万2,600円相当)を加えた25億2,538万2,600円でみるべきかが争点となった。 この点については、判決は法人税基本通達2-1-1を引用して一定の場合は一体とみなして取り扱うこともあるが、本件では、取引の時期、取引の相手、取引の対象となった資産、取引の態様が異なり一体の取引と見ることはできないと判示している。このような結論になることは、全スキーム全体をみても当然の結果であると考えられる。ただし、法人税基本通達2-1-1は課税庁の見解であって法源ではないので、法人税法22条2項の解釈について本通達が合理的であることについて判断した上で、通達を判断指針として採用すべきであったと考えられる。 法人税法22条2項は、「無償による資産の譲受け」について定めているが、低額による資産の譲受けについては明文がない。原告はこの点については主張しておらず、審理の対象になっていないが、判示はこの点についても説示している。学説も低額譲渡の場合の益金算入について積極的に解している(※3)。また、判示においても、この立場である最高裁平成7年の判決を引用して低額譲渡の場合、公平性と経済的な価値が認められることを理由に益金の額に算入されると説示している。この点については、異論はないと思われる。 (※3) 金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂、2021年)346頁 本判決では、法人税法22条2項は所得の計算の本則であって、別段の定めに該当しない限り、本条文に沿って解釈するという立場をとっている。これに対し、反対する論評も存在する。「22条2項は、無償譲渡の場合に当然に時価によって収益を認識すると書いていないが、むしろ法37条7項、8項に規定の適用によって、22条2項は、適正な価額を意識することができると考える。すると、37条8項は、『当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与と認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。』と規定しているのであるから、低額譲渡又は高額譲受けにおいて差額が発生することについて、経済合理性が認められ、実際に贈与を受けたと認められない部分があるときは、22条2項の益金の額に算入されないと考えるのである。したがって、東京地裁が、『法人税法における寄附金の額の認定問題と、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とするX社(※4)の上記主張は採用することができない。』とした部分については、筆者は賛成できない(※5)。」という指摘がある。 (※4) 本稿では、X社はE社と表記されている。 (※5) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号 この指摘については、確かに受贈益は寄附金の裏返しの概念で、多くの場合において、法人税法37条の寄附金の額と同法22条2項にいう経済的利益の発生は同じ額となるであろうが、経済的利益の供与があった場合でも経済的利益を供与した側にも経済的利益、例えば広告宣伝などの効果が生ずることがあるのであるから、寄附金の概念と同法22条2項にいう有償又は無償(低額譲渡等も含む)取引から生じる益金の概念は、判示されているように同じ概念ではないと考えられる。 仮に本件スキームによらないで、H社が外国法人D社からすべてのE社株式を直接購入すれば、H社の目的は達せられたはずである。一方で、Fらには所得課税が発生することが想定されていたと思われる。Fらが支配していたD社はタックスヘイブン(※6)と考えられるBritish Virgin Islandに存在するので、 外国法人D社に対しては株式の譲渡益が発生しても法人の居住地国の法人税が課税されない可能性が高いと思われる。 (※6) Government of British Virgin Island’s webpage visited on August 30, 2025 : Private company’s webpage visited on August 30, 2025 says “The British Virgin Islands is known for its favorable tax regime, providing businesses with significant advantages. Companies incorporated in the British Virgin Islands are exempt from corporate income tax, capital gains tax, and withholding tax on dividends or interest payments.” Website: https://www.globecapitalist.com/company-formation/british-virgin-islands/ しかし、Fらについては、D社の事業の実態などの情報がないので租税特別措置法40条の4又は同法66条の6によるCFC課税の対象となるかどうかの予測は難しいが、CFC課税の対象になる可能性も否定できない。加えて、「外国法人H社(本稿ではD社)が『事業譲渡類似株式』を譲渡したときは、それは国内源泉所得となり(法人税法施行令178①四ロ)、時価により我が国の法人税法が課税されることになる(※7)。」(※8)と指摘されている。 (※7) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号95頁 (※8) 事業譲渡類似株式の譲渡益課税の指摘は、藤岡祐治「法人税法22条2項と低額譲受けによる受贈益の計上――東京地判令和3・10・29」ジュリスト(June 2022 No.1572) 11頁においても指摘されている。 Fらグループで保有していたE社株式のH社へ移転にかかるキャピタルゲイン課税は、Fらグループに関する限りは、本件スキームにより回避されたと考えられる。C社株式の譲渡対価の額がなぜ12億1,000万円に設定されたかを示す資料はないが、上記事業譲渡類似株式の譲渡益が国内所得としてD社に日本の法人税等が課税されないようにE社株式の譲渡が簿価で行われた可能性もある。仮にこの前提に立てば、低額譲受けとしてキャピタルゲインに相当する金額がD社に課税されたこととなる。その後に行われた株式交換は適格株式交換に該当したと考えられるから、Fらに移転されたH社株式については、Fらに課税されていなかったと考えられる。 結局のところ本件スキームにより、本来E社株式を譲渡したFらのグループに本来課税されるべき譲渡益に対応する法人税等は、本件スキームによりH社グループに移転したC社における低額譲受けとして課税され、H社グループが負担するという不条理な結果となったとみることもできる。本件スキームの問題点は、低額譲渡の問題に加えて、税金の負担者が入れ替わってしまった点にもあると思われる。 (了)