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《速報解説》 国税庁、食事支給に係る非課税限度額の引上げの適用時期を案内~R8所得税法等の法改正とは別に通達改正で対応~

《速報解説》 国税庁、食事支給に係る非課税限度額の引上げの適用時期を案内 ~R8所得税法等の法改正とは別に通達改正で対応~   Profession Journal編集部   国税庁は、源泉徴収義務者向けのページにおいて「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」と題する特設ページを公開した。   1 現行制度の概要 現行制度では、使用者が役員や使用人に対して食事を支給する場合、次の2つの要件をいずれも満たすときは、当該役員や使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとされている(所得税基本通達36-38の2)。   2 令和8年度税制改正の方針 「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日付閣議決定)において、上記②の使用者の負担額の上限について、月額3,500円(現行)から月額7,500円に引き上げることとされた。   3 国税庁の対応予定 国税庁は、上記閣議決定を受け、所得税基本通達の改正を行い、令和8年4月1日以後に支給する食事について、非課税限度額を引き上げる予定であることを明らかにした。   4 深夜勤務に伴う夜食代の非課税限度額の引上げ なお、使用者が深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭について所得税が非課税とされる1回の支給額についても、同様に300円以下(現行)から650円以下に引き上げる予定とされている(「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」の改正)。   5 実務上の留意点 今回の非課税限度額の引上げは、法令そのものの改正ではなく、所得税基本通達の改正(通達36-38の2の改正)により行われる予定である。 令和8年度税制改正大綱においては、所得税法等の法改正事項とは別に「税制上の基準額の点検・見直し」として整理されており、法律の改正を待たずに通達改正で対応するものとして位置づけられている。 通達改正の正式な公表時期等について、今後の国税庁からのアナウンスに注視されたい。 (了)

#Profession Journal 編集部
2026/02/26

令和8年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和8年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和8年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/26

プロフェッションジャーナル No.658が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年2月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.658を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/26

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第56回】「「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」とその解釈論的防止」-財産分与者譲渡所得課税[名古屋医師]事件・最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第56回】 「「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」とその解釈論的防止」 -財産分与者譲渡所得課税[名古屋医師]事件・最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回は、前回にも言及した財産分与者譲渡所得課税[名古屋医師]事件・最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁(以下「昭和50年最判」という)を取り上げ、財産分与の場合における「譲渡所得課税の趣旨」法理(前回Ⅰ参照)の「独走」とその解釈論的防止について検討することにする。 本件において第一審・名古屋地裁から納税者の訴訟代理人を務められた竹下重人弁護士は、譲渡所得課税の本質を譲渡差益(譲渡益)に対する課税とみる考え方(以下「譲渡益課税説」という)を第一審から上告審まで一貫して主張された立場から、昭和50年最判が後記Ⅱ1で引用するとおり土地譲渡代金割賦弁済事件・最判昭和47年12月26日民集26巻10号2083頁(以下「昭和47年最判」という)を参照したことを、「増加益清算課税説といわれ」る「譲渡所得の本質論」の「独走」として、次のとおり批判された(竹下重人「判批」別冊ジュリスト79号(租税判例百選〔第2版〕・1983年)76頁、77頁。下線筆者。なお、増加益清算課税説が「譲渡所得課税の趣旨」法理に相当することについては前回Ⅰ参照)。 竹下弁護士の上記批判は、「譲渡所得課税の趣旨」法理に内在する「趣旨内競い合い」(前回Ⅱ参照)の観点からみると、(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶に異を称えるものではなく、財産分与の場合に(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷の根拠となる所得税法の規定の欠缺を問題にし、そのような所得税法の規定に基づくことなく財産分与に対する譲渡所得課税を認めることに対して、このことを譲渡所得の本質論(増加益清算課税説・「譲渡所得課税の趣旨」法理)の「独走」とみて、異を称えるものであると解することができよう。そうすると、この批判の当否は、結局のところ、昭和50年最判の判断を所得税法の解釈によって導き出したものと認めるか否かにかかっていることになろう。 昭和50年最判については、これまで様々な議論がされてきたが(最近における総括的な研究業績として佐藤英明「離婚時の財産分与をめぐる夫婦の課税関係」日税研論集86号(『金子租税法学の回顧と継承―金子宏先生追悼論文集―』・2025年)31頁参照)、筆者も拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【278】における解説等を通じて「不思議判例」(拙著『税法基本判例Ⅰ』(清文社・2023年)はしがき)の1つとして検討を重ねてきたところである。今回は、前回検討した譲渡所得課税に関する「趣旨内競い合い」の観点から、昭和50年最判の意義を明らかにすることにしたい。 なお、財産分与の法的性質・内容について、民法では、「夫婦財産の清算的要素(清算的財産分与)」、「扶養あるいは補償的要素(扶養〔補償〕的財産分与)」及び「慰謝料的要素(慰謝料的財産分与)」に区分して解説・議論がされること(差し当たり島津一郎=阿部徹編『新版注釈民法(22) 親族(2)』(有斐閣・2008年)193-198頁[犬伏由子執筆]参照)から、以下の検討では、これに倣い、それぞれを清算的財産分与、扶養的財産分与及び慰謝料的財産分与と呼ぶことにする。   Ⅱ 「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」の解釈論的防止 1 みなし譲渡課税に関する判示の趣旨 昭和50年最判を「不思議判例」と考える所以は、1つには、その冒頭の下記の判示(下線筆者)にある。同最判はその冒頭において、「譲渡所得課税の趣旨」法理を「当裁判所の判例」とした昭和47年最判を参照して同法理を判示し(石井健吾「判解」最判解民事篇(昭和50年度)217頁、222頁は「譲渡所得課税の趣旨」を「判例上は既に解決された問題」とする)、同法理に基づき「資産の譲渡」(所税33条1項)の意義を明らかにした。 上記の判示のうち「有償無償を問わず資産を移転させるいつさいの行為」を「資産の譲渡」と解する部分については、財産分与を有償譲渡とみるか又は無償譲渡とみるかが論点となる。この論点それ自体も筆者が昭和50年最判を「不思議判例」と考える理由の1つではあるが、上記の部分に続く「そして」以下の下線部分については、「そして」で接続することの意味も含めその部分を判示することの趣旨も俄には理解し難いように思われる。 ただ、本件当時の所得税法59条1項(「昭和48年法律第8号による改正前のもの」)においては、個人間の贈与もみなし譲渡課税の対象とされていたことからすると、前記の判示のうちみなし譲渡課税に関する判示(「そして」以下の下線部分)は、「資産の譲渡」(所税33条1項)に無償譲渡が含まれるというその前の部分の判示を前提にして、財産分与を贈与と同じく無償譲渡とみることにすれば、「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」をみなし譲渡課税によって防止すること(前回Ⅱ参照)ができるのではないかという想定の下で示した判断であるという理解も成り立ち得るかもしれない。 しかし、財産分与と贈与が異なる概念(民768条、549条)であることは民法上は当然のことといってよいが、そうである以上、上記のような理解は、税法上は経済的実質主義(前掲拙著【42】【57】参照)によるのであれば格別、そうでなければ所得税法上も成り立ち得ないはずである。それでも、昭和50年最判後の改正により追加挿入された所得税基本通達33-1の4)の(注)1で、下記【ⓐ】のとおり(下線筆者)財産分与につき「贈与ではない」という当然のことが注記されたこと(相基通9-8本文も参照)からすると、昭和50年最判も、前記のような実質主義的な理解の可能性を認識しながらも(下記【ⓑ】【ⓒ】も参照)その理解によらず、むしろ財産分与に対するみなし譲渡課税を否定するという結論を先取りしその結論を暗黙の前提にして、「資産の譲渡」のうち無償譲渡の場合における譲渡所得課税の帰結として、前記判示中の下線部分の判示を行ったのかもしれない。 みなし譲渡課税に関する昭和50年最判の前記判示の趣旨を以上のように理解するにしても、その判示には別の趣旨もあるように思われるので、Ⅳの最後でその別の趣旨についても検討することにする。 いずれにせよ、財産分与の場合における「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」をみなし譲渡課税によって防止することはできないという結論には、異論はなかろう。 2 「分与義務の消滅という経済的利益」の所得税法上の意味 では、昭和50年最判は財産分与の場合における「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」を放置したのかというと、そうではなく、下記のとおり判示して(下線筆者)、その「独走」を防止するための所得税法上の根拠を「分与義務の消滅という経済的利益」という収入金額概念(所税36条1項括弧書)に見出したものと解される。 この判示にいう「分与義務の消滅という経済的利益」を課税実務は「対価」(所基通33-1の4(注)1)と解し、学説の中にもこれと同様の理解を示す見解(佐藤英明『スタンダード所得税法〔第4版〕』(弘文堂・2024年)89頁等)がある。このような理解によれば、財産分与は有償譲渡として性格づけられることになる。昭和50年最判の調査官解説も、下記のとおり「財産分与の性質ないし内容」に関する解説を補って(下線筆者)上記の判示を敷衍した上で、「本判決は、以上のような観点から、財産分与としてされた資産の譲渡は分与義務の消滅という経済的利益の享受を伴うもの、すなわち、有償譲渡である、と解したわけである。」と解説している(石井・前掲「判解」225頁。下線筆者)。 ただ、上記の解説について注意すべきは、財産分与を有償譲渡とみるか又は無償譲渡とみるかという論点の設定に当たって、次のとおり述べていることである(石井・前掲「判解」224-225頁。下線筆者)。 この解説については、「積極的に金銭、物又は権利を対価として取得するもの」と「なんらかの経済的利益の享受」とを明確に区別していることが注目される。このことは収入金額(所税36条1項)の形態による区別を示したものにすぎないとみることもできるかもしれないが、ただ、前者について「取得」の根拠ないし態様を「対価として」に限定していることに加え、先の引用部分(「財産分与としてされた資産の譲渡は分与義務の消滅という経済的利益の享受を伴うもの、すなわち、有償譲渡である」)をも考え合わせると、調査官解説は、「積極的に金銭、物又は権利を対価として取得するもの」を伴わないが「なんらかの経済的利益の享受」を伴うものをも「有償譲渡」と呼んでいると解される。 「有償譲渡」に関するこのような用語法(以下「広義の有償譲渡」という)は、前記の課税実務や学説の用語法とは異なるものであるように思われる。「積極的に金銭、物又は権利を対価として取得するもの」を伴う譲渡を「有償譲渡」と呼ぶのが「有償譲渡」に関する通常の用語法(以下「狭義の有償譲渡」という)であると思われるが(前掲拙著【299】参照)、これと異なる調査官解説の用語法をいかに理解すべきであろうか。この点については、以下のように考えるところである。 調査官解説のいう「有償譲渡」(広義の有償譲渡)は、「対価」を伴わない譲渡をも含むものであるが、調査官解説が財産分与を「分与義務の消滅という経済的利益の享受を伴うもの」とみて「有償譲渡」と呼ぶ場合、それは「対価」を伴わない譲渡であっても「収入金額」(所税36条1項括弧書)は伴う譲渡であると解される。 そもそも、「対価」と「収入金額」とは所得税法においては異なる概念である(前掲拙著【299】参照)。「対価」は常に「収入金額」を構成するが、「収入金額」は、所得税法上「労務その他の役務の提供又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない」一時所得(所税34条1項。下線筆者)についても観念し得るものとされていること(同条2項参照)からしても、「対価」を伴わない譲渡であっても「収入金額」を伴う場合があるのである。そのような場合における「資産の譲渡」は、通常の用語法(狭義の有償譲渡に対応する用語法)によれば、「無償譲渡」と呼ぶのが適切であるように思われるが、調査官解説は、通常の用語法によらず、そのような場合における「資産の譲渡」をも「有償譲渡」と呼んだものと解されるのである。 以上のように考えると、「有償譲渡」に関する用語法について特段の断りなく「有償譲渡」という語を用いている点では若干疑問は残るものの、その点は措くとして、昭和50年最判の理解については、調査官解説に従い、同最判は、財産分与が「資産の譲渡」(所税33条1項)に該当し、かつ、これによる所得(譲渡所得)に係る総収入金額(同条3項)に「分与義務の消滅という経済的利益」が該当する(所税36条1項括弧書参照)として、その経済的利益を「享受」(同条2項)する財産分与者に対する譲渡所得課税を認め(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)94頁参照)、もって財産分与の場合における「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」を防止したものと解される。 このような理解によれば、昭和50年最判に対する竹下弁護士の批判(前記Ⅰ参照)の矛先が向けられた問題、すなわち、財産分与の場合に(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷の根拠となる所得税法の規定の欠缺の問題は、同最判による所得税法の解釈によれば、存在しなかったことになると考えられる。つまり、同最判においては、「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」はなかったといってよかろう。既に述べたように、同最判は譲渡所得課税❷の根拠を所得税法36条1項の定める収入金額概念に見出し、財産分与の時における「分与義務の消滅という経済的利益」という収入金額の「享受」をもって財産分与者に対する譲渡所得課税❷を認めたものと解されるのである。 3 「分与義務の消滅という経済的利益」の法律構成 財産分与者に対する譲渡所得課税につき昭和50年最判のいう「分与義務の消滅という経済的利益」の所得税法上の意味を以上のように理解する場合、それをどのように法律構成するかも問題になる。 財産分与を「財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とした有償譲渡」(佐藤・前掲書89頁)と解する佐藤英明教授は、その法律構成について、次のとおり説いておられる(佐藤・前掲論文44-45頁。下線筆者。渋谷雅弘「離婚時における財産分与と課税」野田愛子=梶村太市総編集・小田八重子=水野紀子編『新家族法実務大系 第1巻 親族[Ⅰ]―婚姻・離婚―』(新日本法規出版・2008年)526頁、529頁も参照)。 確かに、財産分与債務は佐藤教授の説かれるとおり法定債務である。このことは、昭和50年最判も「右[財産分与に係る]権利義務そのものは、離婚の成立によつて発生し、実体的権利義務として存在するに至[る]」として判示するところである。 しかし、法定債務の代物弁済的構成は、民法が定める代物弁済(482条)の構造(「債務者の負担した給付に代えて他の給付をすること」)に照らしてみると、そもそも論理的に成り立たないように思われる。すなわち、法定債務としての財産分与債務において「債務者の負担した給付」とはどのような給付をいうのか、及び「当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまつて具体的に確定される」(昭和50年最判)財産分与債務に係る給付が「不動産の譲渡等の分与」(同)であるとして、これを「他の給付」といえるかどうかという点を考えると、前者の「債務者の負担した給付」は抽象的・不確定な意味での財産分与であり、これが具体的に確定されて行われた「給付」(具体的・確定的な意味での財産分与)が「不動産の譲渡等の分与」であるから、これを「他の給付」ということはできないように思われるのである。抽象的・不確定な債務を、これを具体的に確定した債務に係る給付によって消滅させることは、「代物弁済」とはいわないであろう。 しかも、法定債務には、約定債務とは異なり、対価支払債務の履行を要求する意思の要素は含まれておらず、それ故、そのような意思の拘束力からの解放に伴う「代償」すなわち対価を観念することはできないのであるから、財産分与は、経済的利益発生の構造の点では、代物弁済ではなく債務免除と比較すべきであり、後者に類する構造に基づく法律構成(債務免除的法律構成)により「分与義務の消滅という経済的利益の享受」の意味を明らかにすべきであろう(前掲拙著【278】参照)。 この点については、「法定債務の消滅に『対価』を観念しえないとしても、資産を手放して債務の消滅益を受ける点で、財産分与は、債権者の一方的意思表示によって行なわれる債務免除よりも、代物弁済に似ているように感じられる。」(佐藤・前掲論文45頁脚注(28))との感じ方もあるが、民法が離婚に伴う義務として法定した財産分与債務(768条1項)の履行につきその枠組み・手続を「一方的に」法定していること(同条2項・3項)からして、その枠組み・手続に従って行われる「不動産の譲渡等の分与」は、代物弁済(民482条)のように当事者の自由意思による双務契約に基づくものというよりは、債務免除という片務行為としての構成に馴染みやすいように感じられる。   Ⅲ 清算的財産分与の「資産の譲渡」該当性否定説と夫婦別産制 ところで、昭和50年最判の調査官解説は、先に引用したとおり、「財産分与の性質ないし内容については多くの議論が存するところであるが、判例[=最判昭和46年7月23日民集25巻5号805頁]は、(イ)婚姻中に蓄積された夫婦共通財産の清算と(ロ)離婚後の生活に困窮する相手方配偶者の扶養とを中核的内容とし、このほかに、(ハ)離婚に基づく損害賠償(慰謝料)の要素をも含みうる、と解している。」(石井・前掲「判解」225頁)と述べているが、その上で、「このうち扶養及び慰謝料の性質を有する財産分与の場合資産の移転が存することについては異論がない。問題は、清算の性質を有する財産分与の場合であり、肯定・否定の両説がある。」(同226頁)と述べ、清算的財産分与の「資産の譲渡」(所税33条1項)該当性に関する否定説を検討し、肯定説を支持する旨を述べている(同226-227頁参照)。 そこで否定説として検討されている金子宏教授の見解(以下「金子説」という)を原典に即してそのまま引用すると、次のとおりである(同・前掲書102-103頁[初出・1975年]。下線筆者。同『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)267-268頁参照)。 金子説は、その後、学説上多くの支持を集めてきた(佐藤・前掲論文31頁、渋谷・前掲論文529頁、遠藤みち『両性の平等をめぐる家族法・税・社会保障 戦後70年の軌跡を踏まえて』(日本評論社・2016年)71頁、浅妻章如「離婚・死別と租税法」金子宏監修・中里実ほか編集代表・佐藤英明ほか編『現代租税法講座 第2巻 家族・社会』(日本評論社・2017年)89頁、99頁等参照)。ただ、そうはいっても、「金子説の残した問題」として、「今後変わる見込みのない確立した判例を前提とした、財産分与時の課税関係のあり方に関する議論が進みにくい状況が出現していたこと」(佐藤・前掲論文40頁)は認めざるを得ないであろう。 このように昭和50年最判が「今後変わる見込みのない確立した判例」といわれるのは、民法762条1項(夫婦別産制)とこれを合憲とした最大判昭和36年9月6日民集15巻8号2047頁(以下「昭和36年最大判」という)の存在によるものと思われる。この判決は、憲法24条を「民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたもの」、「夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもつて権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたもの」、「継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定」と解した上で、民法762条1項について次のとおり判示した(下線筆者)。 昭和50年最判の判断対象である財産分与に関して昭和36年最大判を判示をみると、同最大判は、財産分与を「夫婦間に実質上の不平等が生じないよう」にするための「立法上の配慮」措置として捉えているが、その趣旨を受けて、「確かに、離婚の際は、財産分与の清算的要素に関して、・・・・・・実質的共有説に基づき、夫の給料であろうと婚姻中に形成・蓄積されたものは、夫婦財産として清算対象(分割割合は2分の1)とする家裁実務が定着している」(犬伏由子「判批」別冊ジュリスト239号(民法判例百選Ⅲ 親族・相続〔第2版〕・2018年)22頁、23頁)といわれている。 しかし、そのような家裁実務は「あくまでも家庭裁判所の裁量性に委ねられた結果にすぎない」(犬伏・前掲「判批」23頁)のであって、それが依拠する実質的共有説も、「別産別管理制のもとで、夫の収入は夫のものであるという原則を覆すものではない」(松川正毅「離婚は愛の終焉か」家族〈社会と法〉41号(2025年)1頁、4頁)のである。 このことを昭和36年最大判に立ち返っていえば、同最大判のいう「民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則」は、民法762条においては、「人の財産的独立という財産法的規律」(松川・前掲論文4頁)ないし「個を中心にした冷徹な法」(同5頁)として具体化され、その結果、「財産関係に関して夫婦の生活の共同性と平等性は、個人の自立性や独立性の背後に隠れてしまっている。民法典の中では財産法的な、人(個人)の自律性、独立性を前提とした規律と、団体の法の規律二分の中にあって、夫婦として、また家族としての愛情に基づくまとまり(団体)としての特質への配慮が、わが国の民法では疎かになっているように思われる。」(同4頁)といってよかろう。 金子説については、「民法(家族法)の分野の学説が指向していた離婚時の『妻』の保護の拡充を租税法の分野でも支持することに、もっとも大きな意義があったと思われる」(佐藤・前掲論文39頁)という積極的かつ肯定的な評価がされているが、ただ、民法762条は「夫婦財産関係にかんして完全な別産制を採用し、財産法的帰属原理を修正するものではないと一般に解されている」(青山道夫=有地亨編『新版注釈民法(21) 親族(1)』(有斐閣・1989年)458頁[有地亨執筆])以上、これと適合的な所得税法上の個人単位主義(昭和36年最大判参照)の下では、「離婚時の妻の経済的立場を強化しようとした金子説の実践的な意図」(同40頁)に基づき所得税法33条の解釈により清算的財産分与の「資産の譲渡」該当性を否定するのは困難であり、租税法律主義の下では、やはり、その旨の別段の定めが必要であろう(清永・前掲書96頁注(12)も参照)。 ただ、清算的財産分与として不動産等の資産が分与される場合、当該資産に増加益(キャピタル・ゲイン)が含まれている場合があることを考慮すると、清算的財産分与の「資産の譲渡」該当性否定説をそのまま実定法化することは、立法政策として妥当でないであろう。「譲渡所得課税の趣旨」法理という確立された判例法理を立法論においても尊重するのが妥当であることからすると、「結局のところ、財産分与がキャピタルゲインに対する課税タイミングとして適当であるか否かという実質論が、重要なのではないか。」(渋谷・前掲論文530頁)という指摘は、立法論において傾聴すべきものである。 そうすると、立法論においては、清算的財産分与の「資産の譲渡」該当性肯定説の立場に立ちつつ、財産分与の内容(清算的財産分与、扶養的財産分与及び慰謝料的財産分与)の区分の困難性、扶養義務者相互間における扶養義務の履行としての金品の給付及び慰謝料に対する現行所得税法上の非課税措置(所税9条1項15号柱書、同項18号・所税令30条1号)とのバランス、さらには「『財産を分与した(手放した)側に課税される』という昭和50年最判と課税実務の結論は、一般の納税者の意識と相当程度食い違っており、この点を是正する(制度の姿を納税者の一般的な理解に近づける)ことの利点は大きいと思われる」(佐藤・前掲論文46頁)ことをも考慮して、財産分与を「全体として『1個の』法定債権(債務)」(同43頁)として、個人間の贈与(所税60条1項1号)と同じく課税繰延べの対象とするのが妥当であるように思われる(佐藤・前掲論文46頁参照)。   Ⅳ おわりに 以上、今回は、昭和50年最判に対して竹下重人弁護士が譲渡所得の本質論・増加益清算課税説(筆者のいう「譲渡所得課税の趣旨」法理)の「独走」として展開された批判を受けて、譲渡所得課税に関する「趣旨内競い合い」の観点から同最判を検討した。その結果、昭和50年最判は、譲渡所得の本質論の「独走」を放置したものではなく、「分与義務の消滅という経済的利益」を収入金額として「享受」する財産分与者に対する譲渡所得課税を認め、もって財産分与の場合における「譲渡所得課税の趣旨」法理の「独走」を防止したものであると結論づけた。 そうすると、昭和50年最判に対する竹下弁護士の上記の批判は的を射たものとはいえないことになるが、それでも、竹下弁護士が上告理由の中で財産分与を「片務・無償行為」として捉えた理解は、同最判を支持する課税実務や学説による「有償譲渡」とする理解や「代物弁済的構成」とは異なり、正鵠を射たものであると考えるところである。今回の検討により、財産分与は、無償行為であるが「分与義務の消滅という経済的利益」という収入金額を伴うものであり、その「経済的利益」の法律構成としては財産分与を片務行為とみる債務免除的構成が妥当であることを明らかにした(前記Ⅱ2・3参照)。 そうすると、財産分与を「片務・無償行為」とする理解は、昭和50年最判に対する批判の決定的な論拠とはならないように思われる。そのような理解が昭和50年最判に対する批判の論拠として妥当性を欠いたのは、むしろ、竹下弁護士が譲渡所得の本質論を譲渡益課税説に基づいて捉えた上で、資産の譲渡に関する所得税法33条1項=有償譲渡・59条1項=無償譲渡という理解に基づき論旨を展開したからではないかと考えられる。 資産の譲渡に関する上記の理解は、「譲渡所得課税の趣旨」判決・最判昭和43年10月31日訟月14巻12号1442頁(以下「昭和43年最判」という。前回Ⅰ・Ⅱ参照)の下記の判示(下線筆者)を受けて示された理解(岡村忠生「判批」別冊ジュリスト120号(租税判例百選〔第3版〕・1992年)60頁、61頁のほか、同最判の原々審・浦和地判昭和39年1月29日行集15巻1号105頁に関する吉良実「判批」別冊ジュリスト17号(租税判例百選〔初版〕・1968年)82頁、83頁も参照)と同様のものであるように思われる。 しかし、資産の譲渡に関する所得税法33条1項=有償譲渡・59条1項=無償譲渡という理解は、上記最判の判示内容の理解としては正確さを欠くように思われる。このことは、昭和50年最判の調査官解説による下記の解説(石井・前掲「判解」223-224頁。下線筆者)から読みとることができるように思われる。 上記の解説にいう「有償譲渡」は広義の有償譲渡、すなわち、対価は伴わないが収入金額を伴う譲渡を意味するものと解されることについては前記Ⅱ2で述べたところであるが、この理解によれば、上記の解説にいう「無償譲渡」は、対価だけでなく収入金額も伴わない譲渡を意味することになる。このような用語法は、収入金額の有無と切り離して「資産の譲渡」の意義を理解する考え方に基づくものであると考えられ、筆者の用語法とは異なるものである。筆者は、「有償譲渡」に関する通常の用語法に従い、対価を伴う譲渡を「有償譲渡」と呼び、これに呼応して、対価を伴わない譲渡を「無償譲渡」と呼ぶことにした上で、「無償譲渡」のうち収入金額を伴うものを所得税法33条1項が規定し、収入金額を伴わないものを同法59条1項が規定していると解するものである(前記Ⅱ2、前掲拙著【278】参照)。 このようにみてくると、調査官解説と筆者は、「有償譲渡」及び「無償譲渡」に関する用語法を異にするものの、共に、竹下弁護士による資産の譲渡の理解(資産の譲渡に関する所得税法33条1項=有償譲渡・59条1項=無償譲渡という理解)とは異なり、所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」に「無償譲渡」が全部(調査官解説)又は一部(筆者)含まれると理解するものであり、同法59条1項については有償譲渡擬制説ではなく収入金額擬制説の立場に立つものである(筆者については前掲拙著【285】参照)といってよかろう。 最後に、調査官解説について附言すると、前記引用の末尾における解説は、みなし譲渡課税に関する昭和50年最判の判示の趣旨には、前記Ⅱ1で筆者の理解として述べた趣旨とは別に、「譲渡所得課税の趣旨」法理と「資産の譲渡」に関する適用法規との関係について昭和43年最判が示した考え方に関する竹下弁護士の上告理由にみられるような「誤解」を解消する趣旨が含まれていることを示そうとするものであると解される。すなわち、昭和50年最判は、そのような「誤解」を解消するために、所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」に「無償譲渡」が含まれることは「譲渡所得課税の趣旨」法理からの帰結であること及び同法59条1項は「無償譲渡」につき収入金額を擬制する規定であることを示そうとしたものであると解されるのである。 なお、ここで示された「無償譲渡」の意義に関する理解は、昭和48年改正によってみなし譲渡課税の対象から除外され取得費等の引継規定の対象とされた「贈与」(所税60条1項1号)には、贈与者に経済的な利益を生じさせる負担付贈与は含まれないとした最判昭和63年7月19日判時1290号56頁において、踏襲されているように思われる。この判決は、みなし譲渡課税に関する収入金額擬制説を前提にして、これと表裏の関係にある取得費等の引継規定にいう「贈与」について、収入金額に該当する経済的利益を伴わない「無償譲渡」に限る旨の解釈を示したものと解される。 (了)

#No. 658(掲載号)
#谷口 勢津夫
2026/02/26

〔令和8年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の見直しと延長」「リース取引に関する税制の整備」「外形標準課税の制度的見直し」」

〔令和8年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 (最終回) 「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の見直しと延長」 「リース取引に関する税制の整備」 「外形標準課税の制度的見直し」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和7年度税制改正における改正事項を中心として、令和8年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。 【第2回】は「中小企業経営強化税制の見直しと延長」について解説した。 【第3回】は「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の見直しと延長」、「リース取引に関する税制の整備」及び「外形標準課税の制度的見直し」について解説する。   1 「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の見直しと延長 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)とは、青色申告法人が、地域再生法の認定地域再生計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に関連する寄附を支出した場合、従来の損金算入措置に加えて税額控除(法人事業税、法人住民税、法人税)を受けることができる制度である。 最大で60%の税額控除を受けることができるため、通常の損金算入による税額軽減効果(約30%)と合わせると、最大約90%の税額軽減効果が得られることになる。 【税額軽減効果のイメージ】 (※) 法人道府県民税と法人市町村民税の合計 (※) 法人住民税から控除しきれなかった金額は、法人税から控除可能(上限あり) ① 手続の見直し 令和7年度税制改正において、下記のように手続の見直しが行われている。 ➤ 寄附活用事業を実施した認定地方公共団体は、事業完了時及び各会計年度終了時に、寄附活用事業を適切に実施していることを確認した書面を内閣総理大臣に提出する。 ➤ 寄附活用事業に係る契約等が、競争入札において一者応札で受託された場合など一定の場合においては、認定地方公共団体は内閣総理大臣に寄附者の名称を報告し、公表する。 ② 適用期間の延長 令和7年度税制改正により、適用期間が3年間(令和10年3月31日までの寄附まで)延長されている。 この改正は令和7年4月1日以後に支出する寄附に適用されるので、令和8年3月期の決算申告においては適用されることになる。   2 リース取引に関する税制の整備 令和6年9月13日に新リース会計基準が公表され、原則として全てのリース取引について資産と負債を計上し、資産の減価償却費と負債の利息相当額を計上することとされた。これにより、新リース会計基準適用後はオペレーティング・リースの賃貸借処理が認められなくなる。 ただし、新リース会計基準の適用が強制されるのは上場企業や会社法上の大会社であり、それ以外の中小企業においては、適用は任意である。 新リース会計基準の公表を受けて、令和7年度税制改正において下記の見直しが行われている。 ① 新リース会計基準において、借手の「オペレーティング・リース取引」は原則としてすべて貸借対照表に計上(オンバランス化)されるが、税務上は引き続き「賃貸借取引」として取り扱われることが明確化された。これにより、契約に基づき支払義務が確定した事業年度において、定額の支払賃借料として損金算入する従来の取扱いが継続される。 ② 貸手側において、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度について従来認められていた、リース料受取時に売上高及び売上原価を計上する方法(延払基準の特例)が廃止された。 (注) 令和7年4月1日より前に開始したリース譲渡については、令和9年3月31日までの間、一定の経過措置が設けられている。 ③ 令和9年4月1日以後に締結された「所有権移転外リース取引」について、減価償却方法である「リース期間定額法」の計算式が見直された。従来は取得価額から「残価保証額」を控除して償却限度額を計算していたが、これを控除せず備忘価額(1円)まで償却することとされた。 ④ 「オペレーティング・リース取引」については、税務上は賃貸借取引に該当するため、当該取引に係るリース料は、引き続き外形標準課税の付加価値割における支払賃借料を構成することが明確にされた。 新リース会計基準の適用が強制されるのは、令和9年4月1日以後に開始する事業年度からであるが、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から早期適用することもできる。早期適用する法人においては、令和8年3月期の決算申告において「オペレーティング・リース取引」の会計処理と税務処理に差異が生じるため、別表調整が必要になる。   3 外形標準課税の制度的見直し これまで外形標準課税の適用要件は、事業年度末の資本金の額が1億円超であることであった。そのため、意図的に資本金を1億円以下に減資したり、あるいは組織再編等の際に子会社の資本金を1億円以下に設定したりすることで、外形標準課税の適用を回避する事例が多数発生している。 このような事態を受けて、令和6年度税制改正において外形標準課税の対象法人について、制度的な見直しが行われた。 ① 大規模法人の減資への対応 過去に外形標準課税の対象であった法人が、減資により対象外となることを防ぐため、以下の要件をすべて満たす場合、資本金が1億円以下であっても引き続き外形標準課税の対象となる。 (※) 令和7年4月1日以後最初に開始する事業年度については、公布日(令和6年3月30日)を含む事業年度の前事業年度。  ただし、公布日の前日に資本金1億円以下となっていた場合は、公布日以後最初に終了する事業年度。 ② 100%子法人等への対応 外形標準課税の適用対象である大規模法人の子法人が以下の要件を満たす場合、当該子法人は新たに外形標準課税の適用対象となる。 この改正により新たに外形標準課税の適用対象となる法人については、急激な税負担の増加に配慮し、一定期間にわたり税負担の増加分を軽減する経過措置が設けられている。 上記①の改正は令和7年4月1日以後に開始する事業年度から、②の改正は令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。したがって、令和8年3月期の決算申告においては、①の改正が適用されることになる。 (連載了)

#No. 658(掲載号)
#新名 貴則
2026/02/26

グループ企業の税務Q&A 【第2回】「グループ通算制度を適用している場合の寄附修正」

グループ企業の税務Q&A 第 2 回 グループ通算制度を適用している場合の寄附修正 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター/税理士 川瀬 裕太   ◆ ◆ ◆〈解説〉◆ ◆ ◆ 1 グループ法人税制 (1) 完全支配関係のある法人間の寄附金の損金不算入と受贈益の益金不算入 ① 寄附金の損金不算入 内国法人が各事業年度においてその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、その支出した内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しません(法法37②)。 ② 受贈益の益金不算入 内国法人が各事業年度においてその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額は、その受贈益の額を受けた内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しません(法法25の2)。 (2) 寄附修正 ① 寄附修正の内容 法人が有するその法人との間に完全支配関係がある法人(以下「子法人」といいます)の株式又は出資について寄附修正事由(下記③参照)が生ずる場合には、次の算式により計算した金額を利益積立金額に加算することとされています(法令9①七)。 ② 持分割合 持分割合とは、当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除きます)の総数又は総額のうちに当該法人が直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいいます。 ③ 寄附修正事由 寄附修正事由とは、次のイ又はロの事由をいいます。 (3) 寄附修正事由が生じた株式の1単位(1株)当たりの帳簿価額 内国法人が有する子法人の株式について寄附修正事由が生じた場合には、その株式のその寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した1単位当たりの帳簿価額は、その寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額にその寄附修正事由による利益積立金額の増加額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とします(法令119の3⑨)。   2 グループ通算制度における投資簿価修正 (1) グループ通算制度における投資簿価修正 グループ通算制度を適用した場合、通算子法人の稼得した利益に対する二重課税や、通算子法人に生じた損失に対する二重控除の排除のために投資簿価修正という制度が設けられています。 通算法人が有する株式を発行した通算子法人(初年度離脱通算子法人及び通算親法人を除きます)について通算終了事由(通算制度の承認がその効力を失う場合をいいます)が生じる場合には、その株式のその通算終了事由が生じた時の直後の移動平均法により算出した1単位当たりの帳簿価額は、その通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額に簿価純資産不足額(※1)又は簿価純資産超過額(※2)を、加算又は減算した金額をその株式の数で除して計算した金額とします(法令119の3⑤)。これを、投資簿価修正といいます。 (※1) 簿価純資産不足額 簿価純資産不足額とは、その株式の通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額が簿価純資産価額(下記(2)参照)に満たない場合におけるその満たない部分の金額をいいます。 (※2) 簿価純資産超過額 簿価純資産超過額とは、その株式の通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額が簿価純資産価額(下記(2)参照)を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。 (2) 簿価純資産価額 簿価純資産価額とは通算承認の効力を失った日の前日の属する事業年度終了の時において有する資産の帳簿価額の合計額から負債の帳簿価額の合計額を減算した金額に通算承認の効力を失う直前の発行済株式又は出資(当該他の通算法人が有する自己の株式又は出資を除きます)の総数又は総額のうちに当該内国法人が通算承認の効力を失う直前に有する当該他の通算法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合を乗じて計算した金額をいいます。 (3) グループ通算制度を適用している場合の寄附修正 法人が有するその法人との間に完全支配関係がある法人(子法人)の株式について寄附修正事由が生ずる場合に、寄附修正を行うこととされていますが、ここでいう完全支配関係からは、通算完全支配関係が除かれています(法令9①七)。   3 本件へのあてはめ 通算子法人A社が各事業年度においてA社との間に完全支配関係がある通算子法人B社に対して支出した寄附金の額は、その支出したA社の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しません。また、通算子法人B社が各事業年度においてB社との間に完全支配関係がある通算子法人A社から受けた受贈益の額は、その受贈益の額を受けたB社の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しません。 通算子法人A社から通算子法人B社に現金1,000万円の寄附を行った場合には、通算子法人A社側で寄附金の損金不算入、通算子法人B社側で受贈益の益金不算入が適用され、当社(P社)が有する完全支配関係があるA社、B社の株式について寄附修正事由が生じているため、寄附修正について検討が必要となります。 寄附修正を適用する完全支配関係からは通算完全支配関係が除かれ、グループ通算制度の場合、投資簿価修正で対応することとされているため、通算完全支配関係があるA社とB社の間での寄附金については寄附修正を行う必要はありません。   (了)

#No. 658(掲載号)
#川瀬 裕太
2026/02/26

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例155(法人税)】 「持分の定めのない医療法人であるため、均等割は最低額が適用されるにもかかわらず、過大な均等割を納付し続けてしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例155(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆持分あり医療法人の新規設立不可 平成19年の医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立が認められなくなった。そのため、平成19年4月1日以降新たに設立された医療法人は、全て持分なし医療法人となる。持分なし医療法人とは、社団法人であり、その定款に出資持分に関する規定がなく、持分が一切ないものを言う。 ◆基金拠出型医療法人 平成19年の医療法改正により、医療法人社団は、非営利性の徹底にともない、持分なしの医療法人社団しか設立できなくなったが、持分なしの医療法人社団の活動資金の調達手段として、定款の定めるところにより、基金制度の採用を可能とした。この基金制度を採用した持分なしの医療法人社団を「基金拠出型医療法人」という。 基金とは、持分なしの医療法人社団に拠出された金銭やその他の財産で、当該医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところにより金銭の返還義務を負うものである。したがって、基金拠出型医療法人も持分なしの医療法人社団である。 ◆法人の均等割の税率(地法52、312) 法人税均等割とは、法人の所得の有無にかかわらず、法人の規模(資本金等の額と従業者数)に基づいて課される法人住民税の一部である。出資持分のない医療法人社団の場合、均等割は最低額(道府県民税2万円、市町村民税5万円)が適用される。 法人の区分 道府県民税 イ 公共法人及び公益法人等 ロ 人格のない社団等 ハ 一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人を除く) ニ 保険業法に規定する相互会社以外の法人で資本金の額又は出資金の額を有しないもの ホ 資本金等の額が1,000万円以下であるもの 年額2万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもの 年額5万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもの 年額13万円 資本金等の額が10億円を超え50億円以下であるもの 年額54万円 資本金等の額が50億円を超えるもの 年額80万円   法人の区分 市町村民税 イ 公共法人及び公益法人等 ロ 人格のない社団等 ハ 一般社団法人及び一般財団法人(非営利型法人を除く) ニ 保険業法に規定する相互会社以外の法人で資本金の額又は出資金の額を有しないもの ホ 資本金等の額が1,000万円以下であるもののうち従業者数の合計数が50人以下のもの 年額5万円 資本金等の額が1,000万円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額12万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額13万円 資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額15万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額16万円 資本金等の額が1億円を超え10億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額40万円 資本金等の額が10億円を超えるもののうち、従業者数の合計数が50人以下であるもの 年額41万円 資本金等の額が10億円を超え50億円以下であるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額175万円 資本金等の額が50億円を超えるもののうち、従業者数の合計数が50人を超えるもの 年額300万円       (了)

#No. 658(掲載号)
#齋藤 和助
2026/02/26

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第57回】「建物等の取得目的が当初から建物を取り壊して借地権を利用する目的であることが認められるから建物の取壊し費用は必要経費ではなく借地権の取得費に算入されるべきものとされた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第57回】 「建物等の取得目的が当初から建物を取り壊して借地権を利用する目的であることが認められるから建物の取壊し費用は必要経費ではなく借地権の取得費に算入されるべきものとされた事例」   税理士 菅野 真美   ▷建物の取扱い費用の扱い 個人が所有する賃貸用建物を取り壊して借家人を立ち退かせたい場合により生ずる費用の税務上の取扱いについては、所得税法上、以下の3つの取扱いが定められている。 必要経費や譲渡費用になった場合は、費用を支出した年の不動産所得や譲渡所得を圧縮させる効果があるが、土地の取得費に算入されると売却して譲渡所得が生ずる時まで所得を圧縮させる機会がないことから、土地の取得費に算入されないように納税者は検討する方向にふれやすい。 今回は、建物付きの借地権を買い取り、その後建物を取り壊したことにより生じた費用や弁護士報酬が必要経費になるのか、借地権の取得費になるのかで争われた事案を検討する。   ▷事案の検討 (1) 概要 不動産賃貸業を営む納税者は、父が所有していた土地を平成〇年〇月〇日に取得した。この土地は、父の生前にEとの賃貸借契約を締結していたものであるが、Eの弟であるFが建物を建て、建物を賃貸していた。そこで納税者はFに対し、主位的には土地に係る賃借契約の無断譲渡による契約消滅を理由として、建物を収去して土地の明渡しを求めて裁判所に訴えた。 納税者は、平成31年3月には、この土地を保育園の敷地として利用しようと考え、顧問税理士が、保育園の運営会社に保育園の設置を働きかけた。 令和〇年〇月〇日、Fとの間で和解が成立し、借地権と建物を納税者が買い受けるとともに弁護士に報酬を支払った。 納税者は、和解成立から2ヶ月以内に、建物の賃借人らに対し、保育園設置の意向を明示した上で、令和2年6月末までに建物からの転居を依頼する旨の通知を行った。 そして、納税者は建物の賃借人らとの賃借契約を解除し、移転補償料等金銭を支払うことに合意し、支払った。賃借人が退去したあと建物を取り壊し、解体費用を支払った。 納税者は、建物の未償却残高、解体費用、移転補償料及び弁護士費用を不動産所得の必要経費に算入して申告したところ、課税庁が借地権の取得費に算入すべきこと等を理由として令和元年分と2年分、3年分の所得税等につき課税処分をした。建物解体工事費用と移転補償料を繰延資産として計上していたことから連年の課税処分になったと考えられる。そして、この課税処分に不服な納税者が審査請求を行ったのが本件である。 争点は、上記費用を借地権の取得費に算入すべきか、不動産所得の必要経費に算入すべきかである。 (2) 審判所の判断 国税不服審判所は、納税者の請求を棄却した。 ① 建物取壊し費用等 建物等の取得目的は、当初から建物を取り壊して借地権を利用する目的であることが認められる。 なぜなら、平成31年3月には土地を保育園の敷地として利用することを計画していたものであり、和解成立時点において、建物に居住する賃借人らを立ち退かせた上、建物を取り壊してその土地を含めて保育園の敷地とするために、借地権を利用する目的を有していたと認められる。 さらに和解成立後2ヶ月以内に建物の譲受けは保育園設置の準備の一環であることを明示して転居を依頼する通知を行い、賃借人らを退去させた上、令和2年7月までに建物を解体し、実際に令和4年3月にP社との間で、J社に対して賃貸する保育園用建物の敷地として、各土地を令和4年4月から賃貸する旨の契約を締結している。 建物の取得は、当初から建物を取り壊して借地権を利用する目的であるから、建物の未償却残高や、取壊し費用、建物の賃借人を退去させるための費用は、借地権の取得価額に算入されるべきものであり、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきものではない。 ② 弁護士報酬 訴訟は、主位的には土地に係る賃借権の無断譲渡により解除消滅を理由として、Fに対して建物収去土地明渡しを求めるために提起したものである。納税者が訴訟代理人から受けた役務提供は、借地権という権利の買戻しのためと認められ、借地権とともに建物を買い受けており、建物は、当初から借地権を利用するために取壊しが予定され、その予定に従って取り壊された建物であるから、弁護士報酬は、すべて借地権の取得に関連して発生した費用である。 したがって、弁護士報酬は、借地権の取得費に算入されるべきものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきものとは認められない。 (3) この事案のポイント このように納税者の請求は棄却された。この事案のポイントは、「取得が当初からその建物を取り壊して土地を利用することが明らかと認められるとき」に該当するかである。納税者としては、早期に立ち退き交渉をすすめるために「保育園を建てる」という大義名分を和解から2ヶ月以内に賃借人に伝えたが、皮肉にもその「明示」が、税務上は「当初から建物を壊して土地を利用すること」を裏付ける決定的な証拠となった。 同様の事案として、所有権を取得してから4ヶ月以内に取り壊した際に生じた費用について争われた令和3年3月9日山形地裁判決(TAINSコード:Z271-13536)、令和3年9月30日仙台高裁判決(TAINSコード:Z271-13610)がある。 建物を取得してから短期間に取壊しを行った場合の取壊し費用の必要経費算入は、建物取得時点で建物の利用が目的での取得であると明確に説明できない場合は難しい。 (了)

#No. 658(掲載号)
#菅野 真美
2026/02/26

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第87回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第87回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   (イ) 税務調査による税務コンプライアンスの確保とCEXへの着目 前回のとおり、暗号資産の利用が広がるにつれて、「これまで確定申告をしたことがなかった者」にも、申告義務が生じる可能性があるため、確定申告に不慣れで、取引の記録を適切に管理できない納税者においては、税金を申告しない、あるいは正しく計算できないといった事態が生じ、税務コンプライアンス違反のリスクが高まることが懸念される。 国税庁としては、納税者が適正に申告を行うための環境の整備、すなわち納税者が適正に申告を行うためのガイドライン整備やセルフチェック項目の導入といった「事前的な対応」だけでなく、「事後的な対応」である税務調査を通じて、申告漏れや誤りを是正し、税務コンプライアンスを確保することも重要である。 その際、日本では顧客の本人確認手続を実施している国内CEXが暗号資産取引の場を提供しており、市場で大きな役割を果たしているため、まずは国内CEXを起点に調査を展開することが予想される。 実務上、課税当局が最初に接触できる相手であり、かつ各種規制によって内部の態勢が整備されているCEXは、「アンカーポイント」として重要である。 国内CEXについては、次のとおり、トラベルルールの関係で、利用者にとっては使い勝手が悪い面がある一方、国税庁にとっては有益な情報ハブとして重要な存在であることを理解しておく必要がある。 とりわけ、暗号資産を円に交換、円建てでの即時決済、あるいは日本語対応といった付加価値により、一般消費者レベルでは国内CEXが引き続き主流のプラットフォームとなる傾向が強い。 国内CEXと税務調査との関係をさらに考えてみると、まず、多数存在する調査対象候補者の中から実際に税務調査を行う対象者を選定する調査選定の場面では、特定事業者等への報告の求め(通法74の7の2)や事業者等への協力要請(通法74の12①)等を利用して国内CEXから利用者の身元や取引履歴等の情報及び資料を入手することが考えられる。 特定事業者等への報告の求めを利用すると、例えば、国内CEXに対して、「〇年〇月〇日~〇年〇月〇日の期間において、取引金額が■■■円以上の暗号資産取引を行っている顧客」の情報を報告させることができる。 これは、特定の調査対象者を指定して情報を求めることを前提とせず、「取引金額が■■■円以上の暗号資産取引を行っている顧客」全員の情報の報告を求めることを可能とする制度である。 他方、個別の税務調査の場面では、国税庁は、質問検査権(通法74の2)に基づいて、調査対象者本人からだけではなく、その利用している国内CEXから同人の取引情報等を入手することができる。 実務上も、税務調査における本人申述とCEX提供データとのクロスチェックによって、容易に申告漏れが明らかとなるケースが散見されている。 上記のほか、財産債務調書の記載を端緒として調査を展開することも考えられる。 所定の要件を満たし、財産債務調書を提出する義務がある者は、同調書に暗号資産も記載しなければならないことに注意を要する(泉絢也=藤本剛平『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社、2023)246~253頁)。 上記のとおり、国税庁は、国内CEXを起点として、効率的・効果的な税務調査を展開することが可能である。 他方、後で述べるとおり、日本の居住者が、自身の身元に関する情報を保有する国内CEX等とのつながり(接点)を断ち、いわば完全にスタンドアロンな状態で海外CEXやプライベートウォレットを利用している納税者については、国税庁がその存在及び関係する暗号資産取引を捕捉することは非常に困難である。 このような納税者は暗号資産のリテラシーが高く、一般的なマス層には含まれないため、税務執行上の取組の優先順位が低くなる可能性がある。 しかしながら、このような納税者の税務コンプライアンスリスクは非常に高いため、決して放置されるべきではなく、専門部署による適正な対応が求められる。 このような層に対しては、税務調査という事後的対応による是正が唯一の手段となりやすく、国税庁にとっては、従来以上に情報収集と選定精度、そして調査能力の向上が重要となる。 もっとも、本連載第73回の29(1)のとおり、そもそも自国の居住者に係る暗号資産の利用や税務コンプライアンスの実態を把握できない現状では、各層のリスクレベルや該当する納税者数を正確に把握して、税務執行上の取組の優先順位を効果的に設定することが難しいという根本的な問題が存在する。 なお、国税庁が令和6年11月に公表した「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」の資料では、暗号資産等取引を⾏っている個人に対する調査の1件当たりの追徴税額は 662 万円であり、所得税の実地調査全体の275万円という金額の2.4倍となっている。 これは、国税庁による対象者の選定が成功している証左であるとも評価できる一方、なお潜在的な申告漏れ層が多数存在している可能性をも示唆している。   (了)

#No. 658(掲載号)
#泉 絢也
2026/02/26

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第91回】「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その2)」~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第91回】 「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける 低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その2)」 ~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~   税理士 青木 幹     7 争点1に関する裁判所の判断 (1) 法人税法22条2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、無償による資産の譲受けも収益の発生原因となるものと規定しているところ、その趣旨は、法人が資産を無償で譲り受ける場合には、譲受時における適正な価額(時価)に相当する収益があると認識すべきものであることを明らかにしたものであると解される。  譲受時における適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるところ、たまたまそのうちの一部のみについて対価を現に支出したからといってその額と適正な価額との差額部分の収益が認識され得ないものとすれば、無償譲受けの場合との間で公平を欠くことになるから、その趣旨からして、その場合に益金の額に算入すべき収益の額は、当該資産の譲受けの対価の額と同資産の譲渡時における適正な価額との差額であると解される(※1)。 (※1) 最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決(平成6年(行ツ)第75号)・民集49巻10号3121頁を引用して説示。 (2) 本件法人税更正処分は、平成27年3月30日付けで本件株式譲渡契約に基づき、D社からC社に対してされた本件株式譲受けに係る本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額を受贈益の額と認定して、法人税法22条2項に基づき本件事業年度の益金の額に算入したものであるところ、本件株式の適正な価額が25億2,538万2,600円であることについては当事者間に争いはなく、また、前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約に係る本件株式の対価は12億1,000万円(本件対価の額)と認められる。前記説示したとおり本件対価の額と適正な価額との差額13億1,538万2,600円を受贈益の額と認定して益金の額に算入するのが相当である。 (3) これに対して原告は、受贈益の額は資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると主張する。しかしながら、前記説示したとおり、法人税法22条2項によれば、資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるため、当該資産の譲受けの対価の額と譲受時における資産の適正な価額との差額に相当する収益があると認識すべきであると解されることからすれば、これを「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限定する理由はないというべきである。  この点について、原告は、法人税法22条2項の立案過程から、資産の低額譲受けの場合、常に資産の対価と適正な価額との差額の全額が受贈益の額とされるのではなく、その差額のうち贈与を受けたと認められる金額があるときに限り、その金額が受贈益の額とされることが確認できると主張する。しかしながら、昭和40年度税制改正によって制定された現行の法人税法22条2項については、その法案の国会へ提出前の立案過程において、昭和38年B案42条として、著しく低い価格の対価により資産を譲渡した場合に、当該資産の時価と当該対価の差額のうちに贈与したと認められる部分の金額があると認められるときは、当該贈与したものと認められる部分の金額を益金の額に算入する旨の規定が検討されたことが認められるが、同案は、あくまで立法過程での一案にとどまり、実際には同案で検討された文言が現行法人税法22条2項に反映されなかったのであるから、これをもって同項の解釈とすることはできない。  また、法人税法37条8項が、内国法人が資産の譲渡等をした場合において、その譲渡等の対価の額が当該資産の譲渡の時における価額に比して低いときは、当該対価の額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれるものとする旨を規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合にも、同法22条2項の解釈として受贈益の額となる金額が、資産の対価と適正な価額との差額のうちの「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られる旨主張する。  しかしながら、法人税法にいう寄附金の額の認定に関し、同法37条7項は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産を贈与した場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与時における価額によるものとするが、このうち広告宣伝費及び見本品の費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費等とされるべきものを除くと規定しており、贈与をした側においては、金銭その他の資産の贈与であっても上記の交際費等とされるべきものは寄附金の額に含まれないのに対し、同法22条2項の収益の額は、前記のとおり資産の譲渡時の適正な価額をもって認識されるべきものであるから、贈与を受けた側においては、贈与をした側の寄附金であっても、収益の額となることに何ら変わりがないものとされている。  そうすると、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とする原告の上記主張は採用することができない。  さらに、原告は、法人税法25条の2第3項は、資産の対価とその適正な価額との差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となると規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合も、同法22条2項の解釈として受贈益となるのが資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」に限る旨主張する。  しかしながら、法人税法25条の2第3項は、あくまで内国法人が他の内国法人との間に完全支配関係がある場合に限定して、同条1項において益金不算入とされる受贈益についてその額を定めている規定であり、同条3項は、同法22条2項にいう「別段の定め」に該当するものである。  前記前提事実によれば、本件株式譲渡の時点において、D社とC社とが完全支配関係になかったと認められるのであるから、本件において法人税法25条の2第3項が適用される余地はないというべきであるし、同項が同法22条2項にいう「別段の定め」に該当する以上、このような特則規定から溯って益金算入に関する一般規定である同項を解釈する根拠とすることは妥当ではない。  したがって、法人税法25条の2第3項を根拠とする原告の前記主張は採用することができない。  なお、C社は、本件株式を取得するに当たり、本件対価と同額の12億1,000万円を借り入れていることが認められ、本件株式以外に資産がなく、その時点の純資産額は資本金と同額の1,000万円であったことが認められる(※2)。しかるに、本件株式譲渡後にされた本件交換では、H社株式88万3,400株(本件株式譲渡日における時価相場相当額13億1,538万2,600円)がC社の株式の交換対価として、C社の株主Fらに対して交付されていることが認められるが、上記のとおりC社の純資産額は1,000万円しかなかったのであるから、H社の株式88万3,400株がFらへ本件株式交換の対価とされたことは、本件株式譲受けにおいて、C社が本件対価の額を12億1,000万円と本件株式の適正な価額25億2,538万2,600円との差額13億1,538万2,600円も含めてD社から実質的に贈与を受けたことを示しているというべきである。 (※2) ここで裁判所が言っている純資産額1,000万円は簿価純資産額であると考えられる。判示で、本件E社株式の適正な価額を25億2,538万2,600円であると認定しているのであるから、時価純資産額は有価証券の適正な価額25億2,538万2,600円から借入金を引いた12億1,000万円を引いた残額13億1,538万2,600円に裁判所が判示している資本金相当額の純資産1,000万円を加えた金額である13億2,538万2,600円であったと計算される。C社においては創立費などの経費が発生しているから、この金額より時価純資産額は若干少ないと考えられる。 そうすると、仮に、受贈益の額は、資産の対価と適正な時価との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると解される余地があるとしても、上記事実関係からすれば、本件株式譲受けにより、C社は本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額13億1,538万2,600円を「実質的に贈与を受けたと認められる」から、原告の主張は、この点からも採用できない。 (4) 原告は、受贈益の額となる資産の対価の額と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」は、「全契約内容」に照らして本件株式譲受けに当てはめる限り、本件株式交換がされたから「実質的に贈与を受けたと認められる金額」がどこにもなく、したがって、本件株式譲受けにおいて、C社には受贈益の額はない旨主張をする。  原告の主張は、判然としない部分があるが、本件における法人税法22条2項の収益の額の認定に当たっては、本件スキームに係る全契約内容に照らし、本件株式譲受け対価には、本件対価の額である12億1,000万円に限らず、その後行われた本件株式交換契約に基づきFらに交付されたH社株式88万3,400株(本件株式譲渡時の時価相当額13億1,538万2,600円)も含まれると主張すると解される。  しかしながら、法人税法22条2項の収益の額として、資産の対価と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となるものではないことは前記説示のとおりであり、原告の上記主張は、その前提を誤っているというべきである。  法人税法22条2項の収益の額の認定にあたり、契約内容全体に照らして解釈すべきであるとしても、法人税の取扱いにおいては、資産の販売等に係る収益の額の認定は、同一の相手方又はこれとの間に支配関係がある者との間で締結した複数の契約について、一定の場合に結合したものを一つの契約とみなし収益を認定する場合もあるが、このような場合を除き、個々の契約ごとに計上するのが原則であると解される(法人税基本通達2-1-1参照)。  前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約と本件株式交換契約は、本件スキームの一環として行われたものであると認めることができるが、これらの契約が締結された時点では、本件各合意当事者は、いまだ支配関係にあるものではなかったと認められる。本件株式譲渡契約は、D社とC社を当事者として、本件株式を本件対価の額で譲渡したものであったのに対し、本件株式交換契約は、C社とH社を当事者として、C社の全株式とH社88万3,400株とを交換するものであり、かつ、本件株式交換契約の対価であるH社の株式の交付を受けたのはFらであったことが認められるところ、これによれば両契約は、取引の当事者、取引対象とする資産及び取引態様を異にする別個の取引であったといわざるを得ない。  法人税法22条2項の収益の額の認定に当たり、本件株式譲渡契約に係る対価として、本件対価の額のほかに、別個の契約である本件株式交換契約に係る対価であるH社の株式88万3,400株を、本件株式譲受けの対価と認めることはできない。  したがって、原告の前記主張は採用することができない。 (5) 本件株式譲受けに係る受贈益の額には、本件対価の額である12億1,000万円と本件株式の適正な価額である25億2,538万2,600円の差額である13億1,538万2,600円であるというべきであるから、これを本件株式譲受けにかかる受贈益の額に算入するのが相当である。したがって、争点1についての原告の主張には理由がない。   8 まとめ及び検討 法人税法22条2項の益金の額について争われたケースである。本件譲渡で支払われた対価の額をC社がD社に支払った対価12億1,000万円で判定するべきか、納税者の主張するようにスキームを一体の取引とみて株式交換で移転したH社株式883,400株(13億1,538万2,600円相当)を加えた25億2,538万2,600円でみるべきかが争点となった。 この点については、判決は法人税基本通達2-1-1を引用して一定の場合は一体とみなして取り扱うこともあるが、本件では、取引の時期、取引の相手、取引の対象となった資産、取引の態様が異なり一体の取引と見ることはできないと判示している。このような結論になることは、全スキーム全体をみても当然の結果であると考えられる。ただし、法人税基本通達2-1-1は課税庁の見解であって法源ではないので、法人税法22条2項の解釈について本通達が合理的であることについて判断した上で、通達を判断指針として採用すべきであったと考えられる。 法人税法22条2項は、「無償による資産の譲受け」について定めているが、低額による資産の譲受けについては明文がない。原告はこの点については主張しておらず、審理の対象になっていないが、判示はこの点についても説示している。学説も低額譲渡の場合の益金算入について積極的に解している(※3)。また、判示においても、この立場である最高裁平成7年の判決を引用して低額譲渡の場合、公平性と経済的な価値が認められることを理由に益金の額に算入されると説示している。この点については、異論はないと思われる。 (※3) 金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂、2021年)346頁 本判決では、法人税法22条2項は所得の計算の本則であって、別段の定めに該当しない限り、本条文に沿って解釈するという立場をとっている。これに対し、反対する論評も存在する。「22条2項は、無償譲渡の場合に当然に時価によって収益を認識すると書いていないが、むしろ法37条7項、8項に規定の適用によって、22条2項は、適正な価額を意識することができると考える。すると、37条8項は、『当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与と認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。』と規定しているのであるから、低額譲渡又は高額譲受けにおいて差額が発生することについて、経済合理性が認められ、実際に贈与を受けたと認められない部分があるときは、22条2項の益金の額に算入されないと考えるのである。したがって、東京地裁が、『法人税法における寄附金の額の認定問題と、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とするX社(※4)の上記主張は採用することができない。』とした部分については、筆者は賛成できない(※5)。」という指摘がある。 (※4) 本稿では、X社はE社と表記されている。 (※5) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号 この指摘については、確かに受贈益は寄附金の裏返しの概念で、多くの場合において、法人税法37条の寄附金の額と同法22条2項にいう経済的利益の発生は同じ額となるであろうが、経済的利益の供与があった場合でも経済的利益を供与した側にも経済的利益、例えば広告宣伝などの効果が生ずることがあるのであるから、寄附金の概念と同法22条2項にいう有償又は無償(低額譲渡等も含む)取引から生じる益金の概念は、判示されているように同じ概念ではないと考えられる。 仮に本件スキームによらないで、H社が外国法人D社からすべてのE社株式を直接購入すれば、H社の目的は達せられたはずである。一方で、Fらには所得課税が発生することが想定されていたと思われる。Fらが支配していたD社はタックスヘイブン(※6)と考えられるBritish Virgin Islandに存在するので、 外国法人D社に対しては株式の譲渡益が発生しても法人の居住地国の法人税が課税されない可能性が高いと思われる。 (※6) Government of British Virgin Island’s webpage visited on August 30, 2025 : Private company’s webpage visited on August 30, 2025 says “The British Virgin Islands is known for its favorable tax regime, providing businesses with significant advantages. Companies incorporated in the British Virgin Islands are exempt from corporate income tax, capital gains tax, and withholding tax on dividends or interest payments.” Website: https://www.globecapitalist.com/company-formation/british-virgin-islands/ しかし、Fらについては、D社の事業の実態などの情報がないので租税特別措置法40条の4又は同法66条の6によるCFC課税の対象となるかどうかの予測は難しいが、CFC課税の対象になる可能性も否定できない。加えて、「外国法人H社(本稿ではD社)が『事業譲渡類似株式』を譲渡したときは、それは国内源泉所得となり(法人税法施行令178①四ロ)、時価により我が国の法人税法が課税されることになる(※7)。」(※8)と指摘されている。 (※7) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号95頁 (※8) 事業譲渡類似株式の譲渡益課税の指摘は、藤岡祐治「法人税法22条2項と低額譲受けによる受贈益の計上――東京地判令和3・10・29」ジュリスト(June 2022 No.1572) 11頁においても指摘されている。 Fらグループで保有していたE社株式のH社へ移転にかかるキャピタルゲイン課税は、Fらグループに関する限りは、本件スキームにより回避されたと考えられる。C社株式の譲渡対価の額がなぜ12億1,000万円に設定されたかを示す資料はないが、上記事業譲渡類似株式の譲渡益が国内所得としてD社に日本の法人税等が課税されないようにE社株式の譲渡が簿価で行われた可能性もある。仮にこの前提に立てば、低額譲受けとしてキャピタルゲインに相当する金額がD社に課税されたこととなる。その後に行われた株式交換は適格株式交換に該当したと考えられるから、Fらに移転されたH社株式については、Fらに課税されていなかったと考えられる。 結局のところ本件スキームにより、本来E社株式を譲渡したFらのグループに本来課税されるべき譲渡益に対応する法人税等は、本件スキームによりH社グループに移転したC社における低額譲受けとして課税され、H社グループが負担するという不条理な結果となったとみることもできる。本件スキームの問題点は、低額譲渡の問題に加えて、税金の負担者が入れ替わってしまった点にもあると思われる。 (了)

#No. 658(掲載号)
#青木 幹
2026/02/26
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