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プロフェッションジャーナル No.643が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年11月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.643を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/11/06

monthly TAX views -No.153-「高市政権、新メンバーの下で税制議論はどうなる」

monthly TAX views -No.153- 「高市政権、新メンバーの下で税制議論はどうなる」   東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹   高市早苗総理は、自民党税制調査会(以下、党税調)について、「スタイルそのものをガラッと変えて欲しい」と、財務省出身者が税調幹部に重用されてきたことを暗に批判し、メンバーを一新した。 会長は宮沢洋一参議院議員から小野寺五典前政調会長に変わり、「インナー」と呼ばれる幹部に、山際大志郎元経済再生担当大臣、西村康稔元経済産業大臣、松島みどり総理補佐官などが就任、森山裕前幹事長は退任した。 かつて党税調は、山中貞則会長の下で総理をもしのぐ力があった。しかし第2次安倍政権下では、2度の消費税増税延期が党税調の議論を経ずに決定されるなど、官邸主導で行われ、党税調の力は大きく低下した。その後の菅政権、岸田政権下では往年の力が復活し、「103万円の壁」の議論では、財源問題と税の論理が重視され、安易な減税は排除された。 *  *  * 今回これを官邸主導に戻すというのは、論理として間違った話ではない。 わが国の予算の決定方式は、歳出予算と歳入予算とで大きな差異がある。歳出予算は財務省主計局と各省と党政務調査会との協議で決まるが、財務省が大きな力を持つ。一方歳入予算(税制)は、租税法律主義の下で税法が国会議決になることもあり、党税調が独占的な決定権を持ってきた。 党税調のメンバーは、長年の税制改正にかかわり、数年で交代する役人よりはるかに豊富な専門的知識を持つ政治家に限定されてきた。重要な資質は、業界の個別利害から離れ、専門的知識に基づく大局的判断ができるという点だ。税制要望に〇×をつけ、党税調の権威を保ちつつ公平な税制を構築してきた歴史の積み重ねがある。 財政面への目配りもきちんと行われてきた。減税を考える際には、その経済効果や将来財源などもきちんと議論されてきた。一例を挙げれば、安倍総理(当時)が推進した法人税減税である。税率の引下げは課税ベースの拡大とセットの「税収中立」で行われ、これが今日法人税の大きな増収効果が出る要因となっている。 昨年の「103万円の壁」の議論を振り返ってみると、自民党税調が問題にしたのは「財源」だけではない。「税制の在り方」として、所得制限を付けないままの基礎控除の引上げは高所得者ほど恩恵が大きく、税制の所得再分配機能を損ない格差の拡大を招くという点であった。そこで、ほぼ国民全員に2~4万円程度の減税となるような改正が行われたのであるが、この点について国民への説明が十分でなかったのは残念だ。 *  *  * さて、来年度改正の焦点の1つは、租税特別措置をいかに合理化できるかという点だ。 維新との連立合意書(2025年10月20日)には、「租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する。そのための事務を行う主体として政府効率化局(仮称)を設置する。」とされている。 EBPM(証拠重視の政策)の知見を活用しながらメリハリをつけた大胆な取捨選択が必要となる。重点分野へ絞った集中的な減税は必要だが、一方で、例えば7,000億円の減収となっている賃上げ促進税制については、企業が人材確保の観点から賃上げをせざるを得ない状況にある中、減税してまで支援をする必要があるのか、立ち止まって考える必要がある。十分な賃上げをしない企業には、かつて安倍政権下で導入したペナルティー(租特の適用停止)を考えてもいいのではないか。 新たな税調メンバーが、個別業界の利害を超えて租特の整理統合を行うことができるかどうか、試金石として注目される。 (了)

#No. 643(掲載号)
#森信 茂樹
2025/11/06

〈令和7年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第2回】「改正事項が年末調整実務へ及ぼす影響」

〈令和7年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第2回】 「改正事項が年末調整実務へ及ぼす影響」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   第2回(本稿)は、第1回で取り上げた令和7年度税制改正事項が令和7年分の年末調整実務に及ぼす影響について、各申告書のチェックポイントとして具体的に解説する。 なお、本稿では、特に指定のない限り、令和7年12月1日以後に行う年末調整を前提とする。   【1】 扶養控除等申告書のチェックポイント 給与所得控除の見直し及び同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の見直しにより、新たに扶養控除及び障害者控除の対象となる親族を有することになったり、所得者本人について寡婦控除、ひとり親控除及び勤労学生控除を適用できるようになる場合がある。 このような場合には、異動内容を記載した扶養控除等申告書の提出を受ける必要がある。 (※1) 扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄には、「令和7年12月1日 改正」等と記載する。 (改正に伴う異動の例) 〈参考〉給与所得のみの場合の扶養親族等の金額要件   【2】 基礎控除申告書のチェックポイント 基礎控除の見直しが行われているため、役員及び従業員(以下、従業員等という。)から提出された基礎控除申告書に、合計所得金額に応じた改正後の基礎控除の額が記載されているか確認する。 (例)   【3】 配偶者控除等申告書のチェックポイント 給与所得控除の見直し及び同一生計配偶者の所得要件の見直しにより、配偶者に給与所得がある場合には、配偶者控除等申告書に、改正後の給与所得控除額により算出した合計所得金額に応じた配偶者控除又は配偶者特別控除の額が記載されているか確認する。 なお、同一生計配偶者の所得要件が見直しされていることにも注意が必要である。 (例)   【4】 特定親族特別控除申告書のチェックポイント 特定親族特別控除の創設により、特定親族(年齢19歳以上23歳未満で、合計所得金額が58万円超123万円以下の親族(※2))を有する従業員等は、特定親族特別控除の適用を受けることができることとなった。 (※2) 配偶者及び青色事業専従者等を除く。 年末調整において特定親族特別控除の適用を受けようとする従業員等がいる場合には、当該従業員等から特定親族特別控除申告書(※3)の提出を受ける必要がある(所法195の3)。 (※3) 特定親族特別控除申告書は、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書及び所得金額調整控除申告書との兼用様式となっている。 (例) 給与収入158万円の子の場合 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 なお、特定親族特別控除の適用に関する注意点は、次のとおりである(所法84の2②、85⑥、所令217の3①)。 *  *  * 最終回(第3回)は、令和7年度の改正事項を中心として、年末調整実務における疑問点等をQ&A方式で解説する予定である。   (了)   

#No. 643(掲載号)
#篠藤 敦子
2025/11/06

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例80】「毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例80】 「毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は昨年地元の銀行を退職し、その後すぐに近畿地方のとある県の人口第二の都市に本社を置き、アパレル製品の輸入及び販売業を営むX株式会社(資本金2,000万円の3月決算法人)に再就職し、現在総務部長を務めております。 わが社の社長は、私がかつて勤めていた銀行の大口取引先であった中堅建設業の創業者であり、地方財界の有力者でもあるY氏の次男で、長男が建設業を継いだため、残った次男である社長は自分の趣味であるファッションとかかわる仕事がしたいということで、X社を立ち上げて今年で10年目を迎えたところです。 社長は甘やかされて育った二世特有の、変なプライドの高さが妙に鼻につくのですが、私には未だ自宅の住宅ローンと大学に通う娘の学費負担があるため、面従腹背の心持ちで日々勤務に当たっております。 さて、社長の相手以外は特に問題がなかった総務部長としての私の職務に、突然新たな難題が飛び込んできました。それは、先週から税務署の調査官が国税局の実査官を引き連れてわが社に税務調査のためやってきて、驚くべき事実が明らかになったためです。 調査官の言うところによれば、社長がわが社以外にもう一社(Z株式会社)を設立し、そこを通じてわが社の扱う製品の一部を販売しているようなのですが、わが社とZ社間の取引に関しては簡単な帳簿書類が作成されているのみで、売上や仕入れに関してそれを裏付けるような証憑が保存されていないなど、所得に関する直接的な情報が判然としないため、特にZ社の所得がどの程度であるのか分からないという事実でした。 そのため、まずはZ社の青色申告を取り消して、その後推計課税を行うしかない、と宣告されたわけです。 私のこれまでの経験上、青色申告の取消しなどというのは、脱税するような悪質な企業に限られ、わが社やZ社のような優良企業には無縁だと考えており、ましてやその後推計課税を行うなどというのはあり得ないことで、調査官の主張は極端であると憤慨しているのですが、どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 【A】 申告納税制度の下では、当然のことながら、税務調査においても、課税庁の質問検査権に基づき、納税者が作成した帳簿書類を確認し、それを裏付ける証憑を探索して、所得の実額を把握し、申告内容と齟齬がないか確認するのが基本となります。 しかし、帳簿書類が作成・保存されていないなど、納税者が作成すべき直接資料につき不備がある場合には、課税庁は、納税者の実態に即した合理的な方法により、推計課税を行うことが認められているものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 推計課税の意義 推計課税とは、一般に、税務署長が所得税又は法人税について更正・決定を行う場合において、帳簿書類や証憑といった「直接資料」によらずに、各種の間接的な資料を用いて所得を認定する方法をいう(※1)。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)982頁参照。 現金商売をしている業種においては、自らの財務内容に関する帳簿書類を作成せず、領収書や納品書といった証憑書類をも発行しなかったり、取引先が発行したそれらの書類につき保存せず破棄してしまう企業・事業者が、多くはないながらも存在するのが現状である。申告納税制度の下では、当然のことながら、帳簿書類や証憑といった直接資料に基づき経営実態を反映した申告書を作成し、それに基づき納税することが前提となっているのであるから、税務調査においても、質問検査権に基づき、納税者が作成した帳簿書類を確認し、それを裏付ける証憑を探索して、所得の実額を把握し、申告内容と齟齬がないか確認する姿勢が、課税庁に対して求められる。しかし、そうしたくてもできないのが、直接資料につき不備がある上記のような現金商売等を行っている事業者である。 この場合、課税庁は、直接資料がないからといって、正確な所得に基づく課税を放棄することは、公平負担の原則からいって適当であるとは言えない(※2)。 (※2) 金子前掲(※1)書982-983頁参照。 このような場合に課税庁に認められる課税手法が、「推計課税」であるといえる。推計課税は従来、その明文の規定がなくとも用いられてきたが、昭和25年に所得税法(所法156)及び法人税法(法法131)に明文の規定が置かれた。 なお、青色申告制度の趣旨から、課税庁が青色申告を行っている納税者に対して更正処分を行う場合には、推計課税は認められていない(所法156、法法131)。 推計課税が認められるケースは、一般に以下の3つに限定され、それ以外の場合に推計課税を行ったときには、違法になるものと解されている(※3)。 (※3) 金子前掲(※1)書984頁参照。   (2) 推計課税の方法 推計課税の方法であるが、所得税法では、納税義務者の財産又は債務の増減の状況、収入又は支出の状況、生産量・販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額を推計することを認めている(所法156)。 法人税法では推計課税の方法について、上記所得税のケースと同種の資料を用いて法人税の課税標準又は欠損金額を推計することを認めている(法法131)。 推計課税の具体的な方法として裁判例等で支持されているものとしては、以下の3つの方法が挙げられており、②と③のいずれか、または両者を併用しながら算定されることが多い(※4)。 (※4) 金子前掲(※1)書984-986頁参照。 ① 純資産増減法 課税期間の期首と期末の純資産を比較し、その増加額を計算することで、所得を推計する方法である。個人の場合、そのバリエーションとして、消費支出額から所得金額を推計する消費高法がある。 ② 比率法 仕入金額、売上金額、収入金額等、所得金額の算定の要素となる金額に一定の比率を適用して所得金額を推計する方法である。収入金額に比準同業者(※5)の所得率や経費率を適用して所得金額を推計する方法がその一例である。 (※5) 一般に、推計課税の対象となる納税者の近隣の同規模・同業種の青色申告者を指す。金子前掲(※1)書985頁参照。 ③ 効率法 推計課税される納税者の電力使用量、従業員数、販売個数等に、比準同業者の調査から得られた、これらの指標1単位当たりの所得金額の平均値(同業者単位額)を乗じて所得金額を推計する方法である。   (3) 毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非が争われた事例 それでは本件と同様に、アパレル製品(毛皮製品)の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非が争われた事例(大阪地裁平成23年3月24日判決・税資261号-60(順号11650)、TAINSコード:Z261-11650)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、甲事件原告(以下「原告A」)の昭和60年4月1日から昭和61年3月31日までの事業年度(以下「昭和61年3月期」)及び昭和62年3月期から平成元年3月期までの各事業年度(以下「本件A各事業年度」)の法人税、乙事件原告(以下「原告B」)の昭和61年9月期から昭和63年9月期までの各事業年度(以下「本件B各事業年度」といい、本件A各事業年度と併せて「本件各事業年度」という)の法人税について、原告らが処分行政庁からそれぞれ更正処分を受け、さらに、重加算税の賦課決定処分を受けたことから、これらの各処分(ただし、原告Bの昭和61年9月期に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分については、国税不服審判所が平成20年12月10日付けでした決定により一部取り消された後のもの)の取消しを求める事案である(以下、原告らに対する上記各更正処分を併せて「本件各更正処分」、原告らに対する上記重加算税の各賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各処分」という)。 本件各事業年度当時、原告Aは、原毛皮及び毛皮製品の輸入及び仕入れ等を業としていた株式会社であり、原告Bは、主として毛皮製品等の加工、販売を業としていた株式会社である。また、原告Aは、登記簿上は大阪市を本店所在地としていたが、実際には、原告Bの本店所在地である大阪市所在の「Aビル」の9階に事務所を置き、そこで営業活動を行っていた。 ② 事案の争点 原告らの売上総利益の額、貸倒損失の損金算入の可否及び本件各賦課決定処分の適法性であり、具体的には、推計課税の必要性及び被告主張の推計方法の合理性である。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されたが棄却され(大阪高裁平成24年2月24日判決・税資262号-41(順号11891)、TAINSコード:Z262-11891)、確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 申告納税制度の下では、帳簿書類やそれを裏付ける証憑類により各年度の申告書を作成するのが大原則であるため、それを「無視」して、課税庁が所得を「推測」して課税する推計課税は例外的な措置であると解されている。 実務においても、所得税や法人税に関し推計課税がなされる事例を経験することはなかなかないものと思われるが、現金商売を行っており帳簿書類の作成を怠りがちな業種や、税務調査により意図的な脱税が把握され、帳簿書類等の信頼性が疑われたことから、青色申告の取消しがなされたケースにおいては、推計課税が行われることも珍しくないようである。 推計課税については、これまでの裁判例でその手法の「合理性」が争われたケースが多くある。「推計」というのは所詮「推計」であり「実額」ではないため、本来の所得金額とは乖離せざるを得ないが、それでも推計課税が正当化されるのは、適正な申告を行うべく帳簿書類を作成し保存しているまじめな納税者との「公平性」を確保するためである。そうなると、やはり推計課税は代替的とはいえ適切な手法によることが求められ、それは「合理的な」手法ということになる。 本裁判例においては、裁判所は売上(収入・益金)については、「原告らの業務は渾然一体となっていたというのである。このことからすると、原告らの売上げ及び売上原価の算定に関しては、原告らを一体として扱うよりほかに方法はなく、かつ、それが原告らの実体(ママ)に即しているというべきである」と判示しており、事業の実態に即して判断することが「合理的」としている。 また、費用(損金)等については、「販売費及び一般管理費並びに営業外収入等は、経理担当者において、銀行勘定帳等を基におおむね正確に把握されていたのであり、これらを原告ら個別に認定することは可能」であるとして、実額を使用することとしている。その結果、本裁判例の推計課税の方法としては、「売上高及び売上原価の関係について両社一体として扱い、原告ら合算の売上総利益を算出した上で、これを原告らに案分して原告ら個別の売上総利益を算出し、これに原告ら個別の販売費及び一般管理費、営業外損益並びに特別損益をそれぞれ加減算して原告ら個別の所得の金額を推計するという手法は、一定の合理性を有する」としている。合理性の判断基準は、納税者の「実態」に即して考えることとなり、ケースバイケースとなるのであろう。   (4) 本件へのあてはめ 申告納税制度の下では、当然のことながら、税務調査においても、課税庁の質問検査権に基づき、納税者が作成した帳簿書類を確認し、それを裏付ける証憑を探索して、所得の実額を把握し、申告内容と齟齬がないか確認するのが基本となる。しかし、帳簿書類が作成・保存されていないなど、納税者が作成すべき直接資料につき不備がある場合には、課税庁は、納税者の実態に即した合理的な方法により、推計課税を行うことが認められているものと考えられる。   (了)

#No. 643(掲載号)
#安部 和彦
2025/11/06

金融・投資商品の税務Q&A 【Q99】「外国親会社株式を外国の証券会社で保管している場合の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q99】 「外国親会社株式を外国の証券会社で保管している場合の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 外国の証券会社で保管している上場株式の課税上の取扱い (1) 配当に係る源泉徴収と申告区分 外国の法人が発行した株式に係る配当も、国内の法人が発行する株式に係る配当と同様に、配当所得として取り扱われますが、支払いの方法により課税上の取扱いが異なります。日本の証券会社で保管されている株式である場合、証券会社(国内における支払の取扱者)が、配当金を交付する際に支払いを受けるべき金額(外国所得税が課されている場合は控除後の金額)に対し、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率で源泉徴収します。 これに対して、外国の証券会社で保管されている株式に係る配当金で、国内における支払の取扱者を通じないで受領するものは、日本では源泉徴収が行われません。源泉徴収が行われないため、上場株式に係る配当であっても、外国の証券会社で保管されている株式に係るものである場合には、総合課税(最高税率約56%)又は申告分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の対象として確定申告する必要があり、申告不要制度を選択することはできません。 (2) 譲渡損の取扱い 上場株式等の譲渡から生じる所得については、上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得として、申告分離課税が適用され、この点については証券会社が外国か国内かによる差異はありません。 ただし、上場株式等が証券会社等の特定口座(源泉徴収選択口座)で保管されている場合には、確定申告は不要となりますが、外国の証券会社で保管されている場合、その証券口座は特定口座には該当しませんので、原則として申告が必要となります。 また、上場株式等について譲渡損が生じた場合には、上場株式等の配当所得等の金額(申告分離課税を選択したもの)との通算や、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越す特例が認められています。 しかしながら、これらの特例を適用するためには、上場株式等の譲渡が、金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります)又は同法第2条第11項に規定する登録金融機関への売委託による譲渡など一定のものであることが要件とされており、外国の証券会社に売委託をしたものは特例の適用が認められていません。   2 本件へのあてはめ インセンティブ報酬として交付された外国親会社の株式を外国の証券会社で保管しているとのことですので、配当を受領する際には日本での源泉徴収が行われません。上場株式であるものの、国内の証券会社を通じて受領する場合と異なり、確定申告する必要がありますので注意が必要です。なお、適用税率は、国内の証券会社を通じて受領する場合と同じですので、税負担に差異はありません。 また、外国の証券会社に売委託をしたことにより生じた譲渡損失の額は、上場株式等の配当所得等の金額(申告分離課税を選択したもの)との通算や繰越控除の特例が認められませんので、この点については、国内の証券会社を通じて譲渡する場合と税負担に差異が生じることが考えられます。   (了)

#No. 643(掲載号)
#西川 真由美
2025/11/06

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第58回】「外国通貨の交換取引に係る為替差損益の年度帰属」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第58回】 「外国通貨の交換取引に係る為替差損益の年度帰属」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 外国の金融機関と投資一任契約を締結し、運用対象資産に属する外国通貨によって他の種類の外国通貨又は有価証券を取得する取引が行われたとしても、同取引は、投資一任契約により、多通貨で資産を保有するという分散投資の目的が継続する中で行われたものであるから、同取引は外貨建取引に該当せず、したがって、所得が生ずることはないという主張は認められるでしょうか。 〔A〕 取引前後の状況を円換算額に引き直してみると、ある外国通貨(A)により他の種類の外国通貨(B)を取得する取引については、当該他の種類の外国通貨(B)の取得価額の円換算額から当該外国通貨(A)の取得価額の円換算額を控除した差額が、正の値であるときは、その取引によって、新たな経済的利益が得られたことになり、所得が生ずることになるという判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 本連載【第41回】では、為替差損益の具体的な算定方法について取り上げたが、以下では、所得税法における為替差損益の所得認識について検討する。   1 所得税法における為替差損益の取扱いについて (1) 外貨建資産を同一通貨で保有し続ける場合 所得税法上、外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされている(所法57の3①)。 ただし、外貨建預貯金として預け入れていた元本部分の金銭につき、①同一の金融機関に、②同一の外国通貨で、③継続して預け入れる場合の預貯金の預入については、外貨建取引に該当しないものとされており、その元本部分に係る為替差損益が認識されることはないとされる(所令167の6②)。 この理由について、国税庁HP質疑応答事例では、「外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはなく、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない外貨建預貯金の預入及び払出については、その都度これらを外貨建取引とすることにより為替差損益が認識されることは実情に即さないものであると考えられる」(※1)と述べている。 (※1) 国税庁質疑応答事例「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」 (2) 保有する外国通貨を他の外国通貨への交換や他の外貨建金融資産へ投資した場合 一方、ある外貨預金を引き出して他の外国通貨に交換したり、又は預金以外の他の外貨建金融資産に投資を行うような場合には、為替差損益が実現したものとして取り扱われる。 この理由として、国税庁HPの別の質疑応答事例では、外貨建の預金をもって外貨建MMFに投資した場合を想定し、「新たな経済的価値(その投資時点における評価額)を持った資産(公社債投資信託の受益権)が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが所得税法36条《収入金額》の収入すべき金額として実現したものと考えられます」(※2)と述べている。 (※2) 国税庁質疑応答事例「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」 他の外国通貨に交換する場合も、同様に、「外国通貨を円に交換(往復)する取引ではないものの、その支払時において課税(収入すべき金額として認識)することとされており(所法174七、同209の2、所令298④二)」(※3)と述べている。 (※3) 国税庁質疑応答事例「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」 以下では、所得税における為替差損益の年度帰属が争われた裁判例を検討する。   2 過去の裁判例 《東京地裁令和4年8月31日判決》(※4) (※4) TAINSコード:Z272-13749 (1) 事案の概要 我が国の居住者である原告Xは、平成26年及び平成27年において、スイス連邦所在の金融機関と「投資一任契約」を締結し、運用対象資産に属する外国通貨によって他の種類の外国通貨又は有価証券を取得する取引(本件各取引)を行った。 本件は、Xが、本件各取引からは雑所得が生ずることはないとの前提に立ち確定申告したことに対し、所轄税務署長Yから、本件各取引から為替差損益(雑所得)が生じているとして更正処分等を受けた事案である。 (2) 争点 本件各取引に係る為替差損益から生ずる所得の有無、同為替差損益を本件各年分の所得の計算において「収入すべき金額」(所得税法36条1項)として認識することの可否及びその額(その他の争点は省略)。 (3) 裁判所の判断 東京地裁は以下のように判示し、本件各取引がされた年において、本件各取引に係る為替差損益を「収入すべき金額」として認識することができるとした。 ① 法令解釈 ② あてはめ (4) 検討 ① 本判決の意義 本判決は、最判昭和40年9月8日刑集19巻6号630頁、最判昭和49年3月8日民集28巻2号186頁、最判昭和53年2月24日民集32巻1号43頁を引用し、包括的所得概念の下、伝統的な権利確定主義の考え方により為替差損益が生じることを明らかにした(※5)。 (※5) 坂巻綾望『為替差損益の年度帰属-外貨を手放したことによる為替差損益と権利確定時期』(ジュリストNo.1607、2025年3月)151頁は、「本判決は、所得税法における為替差損益の性質及び年度帰属について1つの見解を示したものとして、意義がある。」と述べている。 ② 所得区分の問題 本件では、為替差損益から所得が生ずるとした場合のその所得区分が何かについても争われた(争点2)。 この点につき、東京地裁は、所得税法は、所得をその源泉及び性質によって10種類に分類し、これらの所得ごとに所得の金額を計算することとしているところ、「本件各取引に係る為替差損益から生ずる所得は、その性質上、上記の所得区分のうち、事業所得、一時所得及び雑所得以外に該当することはない。」とした上で、本件各取引に係る為替差損益から生ずる所得は、「投資一任契約に基づく資産の運用という『営利を目的とする継続的行為から生じた所得』(所法34条①)であるから、一時所得に該当することもない。」、さらに、「本件各取引の内容について、X自らが企画遂行していたという実態は存在せず、(中略)、基本的に余剰資金の提供にとどまっていたということができるから、本件各取引は、Xによって、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務であるということはできない。」ことから、事業所得に該当することもないと判示した。 しかし、上記(3)②のとおり、為替差損益の性質を円換算額の増減分の価値の流入と捉えると、(本判決では全く議論されていないものの)譲渡所得との類似性が惹起される。そもそも過去の判例(※6)は、譲渡所得とは、具体的に得た「譲渡の対価」に対する課税ではなく、課税せずに放置してきた「過去の値上がり分に対する課税」である(清算課税説)(※7)、という立場を採用している。 (※6) 榎本家事件最判昭和43年10月31日(昭和41年(行ツ)第8号、TAINSコード Z053-2352)等 (※7) 佐藤英明『スタンダード所得税法〔第2版補正版〕』(弘文堂、2018年)86頁。 金子宏教授も、「資産の譲渡の範囲については、種々の疑義が生ずる」として、「カナダドル建で取得し、後にカナダドル建で譲渡した不動産の譲渡所得は、それぞれ取得日と譲渡日の為替相場で円換算した金額により計算すべきであり、取得日と譲渡日の為替相場の違いにより生じた為替差益に相当する増加益は、円で評価した場合の不動産の値上がりによる増加益に含まれるとした例として、名古屋高判平成25年5月16日税資263号順号12215参照(下線筆者)」(※8)を引用している。 (※8) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)266頁。 さらに、同教授は、雑所得の解説で、「インパクトローンに係る為替差益(松山地判平成7年2月24日月報42巻10号2533頁、解釈上は譲渡所得に含めることも可能であると考える)(下線筆者)」(※9)と、含みを持たせた解釈を示している。要は、対象となる資産又は負債が不動産なのか、借入債務なのか、投資有価証券なのか、という違いで、なぜ所得区分に違いが生ずるのか、いまいち判然としない。 (※9) 金子・前掲(※8)309頁。 本判決では、この点につき明らかにしていない(※10)。その他、為替差損益には、為替差損の取扱いの問題(損益通算や損失の繰越し)や、金融所得との一体課税の問題とも絡み合うため、今後の一層の議論が必要であろう。 (※10) 坂巻・前掲(※5)は、「外貨も、邦貨と同様に、『商品の価値尺度や交換手段』であって、『貨幣自体の価値の増加又は減少を観念することができない』とする見解がありうる(中略)。この見解のもとでは、本件為替差損益の所得区分は譲渡所得にあたることはなく、事業所得又は雑所得に当たる。これは、為替差損益を原則として雑所得に当たるものとして取り扱う現行実務と整合的である。」と述べている。   (了)

#No. 643(掲載号)
#霞 晴久
2025/11/06

決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第20回】「期中レビュー報告書の一部記載漏れ」

◆◇◆◇◆ 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第20回】 「期中レビュー報告書の一部記載漏れ」   公認会計士 石王丸 周夫   第1四半期と第3四半期の四半期決算短信については、監査人によるレビュー手続がなされているものがあります。2024年度においては、上場会社のうち、4社に1社程度がレビューを受けたようです。 今回の訂正事例は、四半期決算短信に係る期中レビュー報告書が間違っていたものです。四半期決算短信のレビューは、一部の会社に対しては義務付けられていますが、基本的には任意です。そして、いずれの場合も、レビューを受けている場合は四半期決算短信にレビュー報告書を添付します。レビュー報告書自体は監査人が作成するものなので、その間違いについて会社に責任はありませんが、訂正を公表するのは会社です。訂正になった場合の手間を考えると、一定程度の知識は持っておいた方がよいと思います。 では、早速、事例を見ていきましょう。   「その他の事項」が記載漏れ 「独立監査人の四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書」に誤りがありました。次の文が記載漏れだったようです。 その他の事項 記載漏れになった文が期中レビュー報告書全体のどの部分なのかを理解するため、期中レビュー報告書の小見出しを列挙してみます。 「独立監査人の四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書」(訂正後)の本文の小見出し 上記のうち「その他の事項」区分は、追記情報の1つです。追記情報とは、財務情報の利用者に対して強調する必要がある事項及び説明を付す必要がある事項を、レビューの結論の表明とは明確に区別して記載する事項です。「その他の事項」は、監査人が、四半期連結財務諸表の利用者の理解のために、期中レビュー報告書において説明する必要があると判断した事項が記載されます。該当する事項がある場合のみ設けられるものであり、該当がなければ区分は設けられません。 本事例では、四半期決算短信に添付される四半期連結財務諸表について、当連結会計年度についてはレビューの対象になっているが、前連結会計年度についてはレビューの対象になっていない旨を述べています。これについては、次の取扱いに従ったものと見られます。 (期中レビュー基準報告書第2号「独立監査人が実施する期中財務諸表に対するレビュー」133項、日本公認会計士協会監査・保証基準委員会)   当期にレビュー義務付けとなった理由 では、なぜ前連結会計年度についてレビューを受けていなかったのでしょうか。前述のとおり、四半期決算短信のレビューは、一部の会社に対しては義務付けられていますが、基本的には任意です。本事例の会社の場合どうだったかというと、それは、この会社の四半期決算短信に記載されています。次のとおりです。 つまり、レビューは任意なので、前連結会計年度は受けていなかったのですが、当連結会計年度は義務付けられてしまったということのようです。 レビューが義務付けられるのは、以下の条件に当てはまる場合です。 (上場会社向けナビゲーションシステム(東証ウェブサイト)) 本事例の会社について調べてみたところ、直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備があったようです。つまり、上記cに該当しています。 上記a~eのいずれかに当てはまる場合に、以降の四半期決算短信について監査人のレビューが義務付けられるということは、本事例を持ち出すまでもなかったかもしれませんが、改めて認識しておきたいですね。 なお、レビュー義務が解除される時期については、次のとおりとなっています。 (上場会社向けナビゲーションシステム(東証ウェブサイト))   開示前のチェックポイント 本事例の会社も、レビュー義務付けとなった年度末の有価証券報告書及び内部統制報告書において上記の要件に該当しなければ、その後はレビューが任意となり、レビューを受けないことになるかもしれません。そうなると、またいつか本事例と同じ状況になり、本事例のような記載漏れが発生する余地が考えられます。これは他の会社でも同じです。四半期決算短信のレビュー制度には、構造的にこの可能性が付いて回ります。 これまでレビューを受けていなかったが、上記要件に該当してレビューが義務付けられた会社においては、監査人から受け取った期中レビュー報告書の小見出しを確認しましょう。追記情報が記載されていない場合は、なしでよいことを念のため監査人に確認するとよいでしょう。 (了)

#No. 643(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/11/06

連結会計を学ぶ(改) 【第8回】「みなし取得日」

連結会計を学ぶ(改) 【第8回】 「みなし取得日」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 連結財務諸表の作成は支配獲得日から行うことになるが、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)では、支配獲得日等に関して、みなし取得日の規定を設けている(連結会計基準(注5))。 なお、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)は、2025年10月16日の「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号。以下「期中会計基準」という)の公表を受けて修正されている規定があるので、実際の適用に際しては、期中会計基準の適用時期に注意する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ みなし取得日に関する規定 1 基本的な考え方 連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価し、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は、相殺消去すると規定されている(連結会計基準20項、23項。投資と資本の相殺消去)。 株式の取得日(支配獲得日)が子会社となる会社の決算日と同一であれば、株式の取得日(支配獲得日)の当該子会社の財務諸表を利用して、連結財務諸表を作成すればよい。 しかしながら、実際には、子会社となる会社の決算日ではなく、当該会社の事業年度の途中で、株式を取得することがある。 このような場合に、当該会社の事業年度の途中で、財務諸表を作成することとすると、大変な事務負担を要することから、連結会計基準は、次のようにみなし取得日を規定している(連結会計基準(注5))。 みなし取得日については、かつて、「連結財務諸表原則」の注解9において、次のように規定されていた(下線筆者)。 当該規定は、平成20年12月26日の連結会計基準の設定に際して、「いずれか近い決算日」から「いずれかの決算日」に改正されている。 この趣旨は、平成20年6月30日に意見募集された公開草案に対するコメントへの対応において、「前後いずれか近い決算日」とすると、四半期決算では、みなし取得日が実際の支配獲得日等よりも後ろの決算日になることがあり、在外子会社の決算書の入手が間に合わないなどの実務上の問題があることに対応したものであると述べられている(「主なコメントの概要とそれらに対する対応」の「36)連結会計基準案のみなし取得日」)。 2 資本連結手続に関する実務指針 資本連結実務指針では、連結会計基準を受けて、次のように、より詳細に規定している(資本連結実務指針7項、54-3項)。 3 期中会計基準の公開草案に対するコメント対応 期中会計基準の公開草案に対する「主なコメントの概要とそれらに対する対応」のNo.33では、「みなし取得日等の定めにおける「その他適切に決算が行われた日」に関するコメント」について、次のように記載されている。 4 連結対象となる子会社の財務諸表の範囲 みなし取得日は、連結対象となる子会社の財務諸表の範囲と密接に関連している。 資本連結実務指針は、連結対象となる子会社の財務諸表の範囲について、いずれの時点において支配の獲得又は喪失が生じたとみなすかにより異なるとし、次のように規定している(資本連結実務指針7項)。 5 のれんの償却開始時期 一般に、ある会社の株式を取得(支配の獲得)して子会社とする場合、のれんが認識されることとなる。 連結会計基準では、のれんを償却することとしているので(連結会計基準24項、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)32項)、連結財務諸表に取り込まれる子会社の損益計算書との対応が論点になる。 これについて、資本連結実務指針は、のれんの償却開始時期は、原則として、支配獲得日からであり、通常、それは子会社の損益計算書が連結される期間と一致すると規定している(資本連結実務指針31-2項、62-2項)。 みなし取得日との関連については、みなし取得日(資本連結実務指針7項)の適用により、のれんが期首に発生したとみなされる場合には、償却開始日は当期首であり、それが期末に発生したとみなされる場合には、翌期首となると規定している(資本連結実務指針31-2項)。 6 みなし取得日と決算日の3ヶ月のずれ 連結会計基準及び資本連結実務指針では、子会社の決算日と連結決算日とが異なり、その差異が3ヶ月を超えない場合には、子会社の決算日現在の財務諸表に基づき連結決算を行うことができるとされており(資本連結実務指針6項)、また、前述のように、みなし取得日(資本連結実務指針7項)についても認められている。 このため、両方の規定を適用した場合、支配獲得日を開始日とする期間が、子会社の損益計算書が連結される期間とならない場合がある。この場合には、のれんの償却開始時期は、子会社の損益計算書が連結される期間に合わせて決定することになるものと考えられている(資本連結実務指針62-2項)。 例えば、3月決算の会社が6ヶ月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成する場合において、12月決算の子会社を5月末に取得し、6月末をみなし取得日としたときは、3月決算の親会社の6月末の連結上、子会社の6月末の貸借対照表のみを連結し、9月末の連結上も、子会社の6月末の貸借対照表のみを連結し、10月以降の期間の連結から、子会社の7月以降の損益計算書を連結することになる。この場合、10月以降の期間の連結からのれんの償却を行うことになる(資本連結実務指針62-2項。当該規定は期中会計基準による修正後のものである)。   (了)

#No. 643(掲載号)
#阿部 光成
2025/11/06

空き家をめぐる法律問題 【事例71】「集会決議の円滑化のための議決要件の緩和」

空き家をめぐる法律問題 【事例71】 「集会決議の円滑化のための議決要件の緩和」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私が区分所有するマンションでは、集会を招集しても出席しない区分所有者が多数います。出席しない者の中には、他の場所に居住し、空き室にしている者もいるようです。今後、集会で以下のような事項を審議する際に、支障が生じることが懸念されます。 改正後の区分所有法のもとで、これらの事項を審議する場合に留意すべき点は何でしょうか。 (1) 高齢者の負担軽減のためのエレベーター設置工事 (2) 冷暖房効率向上のためのエントランスや共用廊下への断熱材設置工事   1 検討の視点 近年、区分所有建物の老朽化や区分所有者の高齢化が進行し、それに伴い実際に居住しない区分所有者が増加している。その結果、マンションの集会に出席しない区分所有者が多くなり、集会の開催や重要事項の決議が円滑に行えないという問題が生じている。 こうした状況も踏まえ、「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分所有法」)が改正され、令和8年4月1日から施行される予定である。 本事例では、区分所有法の改正によって、集会決議がどのように円滑化されたのかを確認する。なお、本文中では改正前後の区分所有法を区別するため、「改正前」「改正後」と表記する。   2 欠席者の取扱いと絶対多数決による不都合 集会に出席せず、議決権を行使しない区分所有者は、決議において反対者と同様に扱われる。そのため、このような区分所有者が増加すると、決議に必要な賛成を得ることが困難となり、建物の管理が円滑に進まなくなるおそれがある。 この点に関して、改正前の区分所有法では、集会の決議に際して、原則として区分所有者及び議決権の過半数による絶対多数決が要件とされていた(改正前第39条第1項)。普通決議については、規約によって要件を緩和することも認められていたが、規約にその定めがない場合や特別決議事項については、従来どおり絶対多数決が要件とされていた。 そのため、集会を欠席する区分所有者が増加すると、決議の成立が一層困難になるという懸念があった。   3 出席者多数決による緩和 改正後の区分所有法は、集会決議の円滑化を図るべく、次の①から⑦までの決議事項について、出席者多数決の制度を導入し、出席した区分所有者及びその議決権の一定多数をもって決することで議決要件の緩和を図っている。 これは、招集手続を経てもなお集会に出席せず、議決権を行使しない区分所有者は、決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねており、自らが決議の母数から除外されることも許容しているとの考え方に基づくものである。なお、上記緩和の対象となった決議事項以外の事項については、従前どおり絶対多数決を要件とすることに変わりはない。 また、次の②から⑦までの決議事項については、出席者多数決による緩和を認めつつも、集会における意思決定の正当性を担保するため、区分所有者の過半数にして議決権の過半数を有する者が出席することを要件とする議決定足数要件を設けている(規約により過半数要件を加重することも可能である)。   4 共用部分の変更決議について 省エネルギー化工事、バリアフリー工事、第三者への被害防止のための外壁工事などは、いずれも共用部分の変更(改正後第17条第1項)に該当する。そのため、これらの工事を行う場合には、規約で別段の定めがなければ、出席者の4分の3以上の賛成による決議を得る必要がある。 しかし、共用部分の変更に該当する工事の中には、①生命や身体に危険が及ぶため実施が強く求められるものや、②住宅としての基本的な機能が欠如しており、バリアフリー工事などで改善する必要が高いものも含まれている。このような工事については、たとえ反対者の権利に一定の制約が生じたとしてもやむを得ないものと考えられる。 そこで、次の❶・❷の場合には、多数決要件を緩和し、出席者の3分の2以上の賛成による決議で足りるものとされた(改正後第17条第5項)。一方で、省エネルギー化工事については、上記❶・❷に比べて反対者の権利を制約する必要性が高くないため、原則どおり出席者の4分の3以上の賛成による決議が必要となる。   5 本件において ① 高齢者の負担軽減を目的としてエレベーターを設置する工事は、共用部分の変更に該当すると考えられる(規模的に見ても軽微な変更には該当しない。)。この工事の目的が高齢者の身体的負担を減らし、施設の利便性や安全性の向上を図るものである場合には、改正後第17条第5項に該当するため、出席者の3分の2以上の賛成による決議で実施が可能となる。 ② 冷暖房効率の向上を目的として、エントランスや共用廊下に断熱材を設置する工事も、その内容から共用部分の変更に該当すると考えられる。しかし、このような省エネルギー化工事は、改正後第17条第5項のいずれにも該当しないため、原則どおり出席者の4分の3以上の賛成による決議が必要となる。 ③ 上記①と②の工事を同時期に実施する場合には、工事ごとに別々の議案として審議する方法と、両方の工事を一つの議案として審議する方法がありうる。前者の場合には、それぞれの工事ごとに必要な多数決要件を満たす必要があり、後者の場合には、両方の工事をまとめて議決することになるため、全体として4分の3以上の賛成を得ておく必要があると考えられる。いずれの方法をとるにしても、それぞれの決議要件を確認してから工事を進めることに留意が必要である。 (了)

#No. 643(掲載号)
#羽柴 研吾
2025/11/06

《税務必敗法》 【第6回】「守秘義務を怠った」

《税務必敗法》 【第6回】 「守秘義務を怠った」   公認会計士・税理士 森 智幸   【事例】 ×7年11月、Ⅹ会計事務所に、顧問先であるA社の社長からクレームのメールが来た。 そのメールによると、先日、社長が都内のカフェに寄ったところ、Ⅹ会計事務所の職員甲が、そのカフェの中で、パソコン画面を誰でも見ることができる状態で仕事をしていた、ということであった。 そして、メールの最後には次のように記載されていた。 「貴事務所の情報管理体制には問題があるのではないか。今回の件は、誠に遺憾であるとともに、不快感を覚えた。」   1 はじめに 税理士は秘密を守る義務が税理士法において定められている(税理士法38条)。また、税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者についても秘密を守る義務が定められている(税理士法54条)。 税理士業務では顧問先の内部情報に触れることになる。しかし、税理士や使用人等が、顧問先の内部情報を外部に漏らしては、顧問先からの信頼を失うことになり、さらには税理士業界の信用の低下にもつながることになる。 当然、税理士や会計事務所職員は守秘義務を遵守することは心得ているはずであるが、場合によっては、自覚せずに守秘義務違反をしてしまうこともありうる。そこで今回は、デジタル社会において自覚しないで守秘義務違反をしてしまう例とその防止策を説明する。 なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。   2 守秘義務に違反する可能性の事例 (1) メールやFAXの誤送信 メールやFAXの誤送信も守秘義務に違反する。「他に洩らす」とは、積極的な意味だけではなく、結果として漏れることも含まれるためである(日本税理士連合会「税理士の専門家責任を実現するための100の提案」36)。 宛先の誤りはもちろん、宛先は正しくても、他の顧問先のファイルを誤って添付するケースも誤送信である。 (2) オンラインストレージのアップロード誤り オンラインストレージにおいては、データのアップロード誤りというリスクがある。自分に編集権限があれば、削除することは可能であるが、ゲストで利用している場合、こちらに編集権限がないときがある。このケースだと、アップロードしたデータを自分で削除できないため、もし顧問先に関するデータを他所にアップロードした場合、守秘義務違反に該当することになる。 (3) 生成AIへの入力 顧問先情報を生成AIに入力することについては、現時点では守秘義務とのかかわりは指摘されていない。しかしながら、企業向けデータセキュリティ機能がない生成AIに顧問先の情報を入力すると、その情報が外部サーバーに保存され、そこから漏洩する可能性がある。 (4) 公共の場でのパソコンの使用 カフェや新幹線など公共の場でパソコンを使用して仕事をしているビジネスパーソンをよく見かけるが、そのパソコンの画面が周囲から丸見えのときがある。このような状況では、顧問先の情報を他人に見られる可能性がある。 (5) SNSでの書き込み SNSで匿名アカウントを使っている税理士がみられるが、顧問先名は書いていないものの、税理士業務に関して知り得た秘密ではないかと思われる書き込みも見受けられる。 特に、顧問先に対する不平不満を書き込むときにその傾向が見られる。   3 守秘義務に違反した場合の影響 (1) 税理士法違反 守秘義務に違反した場合、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止となる(税理士法38条、46条)。また、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる場合がある(税理士法59条1項3号)。 (2) 受信側からのクレーム メールやFAXの誤送信、オンラインストレージでのアップロード誤りをした場合、受信側から、強いクレームが来る可能性が高い。仮に受信側が別の顧問先だとすると「こちらの情報もいい加減に扱われているのではないか」と思われる可能性がある。 (3) 契約解除 守秘義務に違反した場合はもちろん、その疑惑を持たれた場合も顧問契約を解除される恐れがある。 (4) マイナンバー法違反 税理士法における守秘義務の事例ではないが、2022年、勤務していた税理士法人から顧客のマイナンバー情報などを持ち出したとして、税理士が不正競争防止法違反とマイナンバー法違反により逮捕された事件があった。 個人情報の漏洩があると、マイナンバー法に抵触する可能性がある。   4 守秘義務を徹底するための対策 (1) 連絡先は「顧問先+氏名」 メールの連絡先表示はメールアドレスのままではなく「顧問先名+氏名」とすると誤送信のリスクを低くできる。例えば「株式会社〇〇 国税太郎様」といった具合である。顧問先名を入れる点がポイントである。 (2) オンラインストレージの使用 オンラインストレージを使用すれば、メールよりも誤送信のリスクは低くなる。 ただし、前述のように、編集権限がない場合のアップロード誤りというリスクはあるので、その点は注意する必要がある。 (3) 複数のフォルダを開かない メールでのファイルの添付誤り、あるいはオンラインストレージのアップロード誤りのリスクを低減する方法としては、複数の顧問先のフォルダを同時に開かないことがあげられる。 複数の顧問先のフォルダを開いていると、別の顧問先のファイルを選択するリスクがあるためである。 (4) 生成AIは企業向けを使用する 生成AIについては、例えばMicrosoft365 Copilotのエンタープライズデータ保護機能のような企業向けデータセキュリティ機能がついているものを使用すべきである。 言い方を変えれば、企業向けデータセキュリティ機能がないプランは、業務で使用することは避けるべきである。なぜならば、このようなプランでは、入力した情報が外部サーバーに提供されてしまうからである。 (5) 公共の場でのパソコン使用は原則禁止 ① 会計事務所でルールを策定 会計事務所のルールとして、全職員、公共の場でのパソコンの使用は原則禁止とすべきである。 カフェや新幹線などでパソコンを使用する行為に問題がないと思っている会計事務所職員は多いと推測される。そのため、各職員の判断に任せると、公共の場でパソコンを使用する職員が出るおそれがあるからである。 ② 覗き見防止フィルターの導入 とはいえ、外出先で緊急対応しないといけない場面も出てくるであろう。その場合は、上長の許可をとったうえでパソコンを使用するというルールにすることが望ましい。 また、職員全員に覗き見防止フィルターを配布し、外出先でパソコンを使用するときは、覗き見防止フィルターを使用することを義務付けるとよいであろう。 ③ 所長が模範を示す 最も重要なのは、所長が模範を示すということである。具体的には、所長がカフェや新幹線など公共の場でパソコンを使用しないということである。 もし、所長が公共の場でパソコンを使用して仕事をしていれば、それを見た会計事務所職員は「外でパソコンを使ってもいいんだ」と思うようになる。 職員は所長を映す鏡である。所長が自覚を持った行動をすべきである。 (6) SNSは社内教育を徹底する SNSについては、社内教育で使い方の注意点を周知することが望まれる。なお、職員に対してSNSの使用を禁止することは私生活への干渉となるので注意されたい。   5 おわりに 情報技術の高度化により、仕事の進め方も便利になったが、デジタル社会では、思わぬところで情報漏洩のリスクがある。守秘義務を怠れば、会計事務所の信頼は大きく下がるということを認識していただきたい。 本稿が実務の参考になれば幸いである。 (了)

#No. 643(掲載号)
#森 智幸
2025/11/06
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