公開日: 2016/04/25
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平成27年度税制改正(法人税制)

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〔Ⅰ〕 法人税制 改正のポイント

1 法人実効税率の引下げ

【1】 法人税改革の枠組み

法人税改革の枠組みについては、与党の「平成27年度税制改正大綱」において、「平成27年度を初年度とし、以後数年で、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す」とされています。また、「その際、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するため、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により、恒久財源をしっかりと確保する」こととされています。具体的には、税率引下げと課税ベースの拡大等の改革は、2段階で進められます。

第1段階 平成27年度税制改正:欠損金繰越控除の見直し( 2 参照)、受取配当等益金不算 入の見直し( 3 参照)、法人事業税の外形標準課税の拡大( 4 参照)、租税特別 措置の見直し( 5 等参照)が行われました。(大法人が中心) 法人税率引下げなどにより、法人実効税率が引き下げられました。(下表参照) 第2段階 平成28年度税制改正:課税ベースの拡大等により財源を確保して、平成28年度に おける税率引下げ幅の更なる上乗せが図られます。 平成29年度以後の税制改正:引き続き、法人実効税率を20%台まで引き下げるこ とを目指して、改革が継続されます。

■法人実効税率の引下げの概要 (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)改正前 国の法人税率 (参考)大法人向け法人事業税    所得割 * 地方法人特別税を含む * 年800万円超所得分の標準税率 (参考)国・地方の法人実効税率    <標準税率ベース> 25.5% 7.2% 23.9% 23.9% 6.0% 4.8% 34.62% 32.11% (▲2.51%) 31.33% (▲3.29%)

【2】 法人税率の引下げ(法法66①)

法人税の税率が23.9%(改正前25.5%)に引き下げられました。

《適用期日》
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用されます。(改正法附21)

■法人税率の概要 改正前 改正後 平27.4.1以後 開始事業年度 普通法人・人格 のない社団等 資本金1億円以下の法人 及び資本金を有しない法 人(相互会社を除く) 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15%(注2) (本則19%) 年800万円超の 部分25.5% 23.9% 資本金1億円超の法人及び相互会社25.5% 23.9% 公益法人等 公益社団法人 公益財団法人 一般社団(財団)法人の うち非営利型法人 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分25.5% 23.9% 上記以外 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分19% 19% 協同組合等(注1) 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分19% 19%(注1)特定の協同組合等に対しては、所得金額のうち10億円を超える部分の金額について22%の税率 が適用されます。 (注2)中小法人の軽減税率の特例(19%→15%)等については、平成29年3月31日までに開始する事 業年度に適用されます。(【3】の①~③参照)

【3】 中小法人の軽減税率の特例等の延長(措法42の3の2)

① 中小法人の軽減税率の特例の延長

「中小法人の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

② 公益法人等の軽減税率の特例の延長

「公益法人等の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%等)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

③ 協同組合等の軽減税率の特例の延長

「協同組合等の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%等)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

 

2 欠損金の繰越控除制度の縮減

欠損金の繰越控除制度は、過去の事業年度において生じた欠損金をその事業年度の翌事業年度以降に繰り越し、所得金額から控除する制度です。

欠損金の繰越控除制度等について、大法人(中小法人等以外の法人)の控除限度(改正前:所得の80%)を、平成27年度に「所得の65%」、平成29年度に「所得の50%」に引き下げるなどの見直しが行われました。

【1】 控除限度額の引下げ(大法人)

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度(法法57)、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度(法法58)及び連結欠損金の繰越控除制度(法法81の9)における控除限度額について、次のとおり、段階的に引き下げられました(改正法附27、30)。
改正前 改正後 平27.4.1~平29.3.31開始の 繰越控除をする事業年度 平29.4.1以後開始の 繰越控除をする事業年度 控除限度80% 65% 50%

【2】 中小法人等や再建中の法人などへの措置

上記【1】に伴い、次の措置が講じられました(法法57⑪、81の9⑧)。
① 中小法人等 中小法人等については、改正前の控除限度額(所得金額又は連結所得金 額)が存置されます(控除限度100%)。 (注)上記の「中小法人等」とは、次の法人(連結納税の場合には、連結親法人) をいいます。 (イ)普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金 の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの(相互会 社等、資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100% グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除 きます。) (ロ)公益法人等 (ハ)協同組合等 (ニ)人格のない社団等 ② 再建中の法 人 更生手続開始の決定があったこと、再生手続開始の決定があったこと等 の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)については、 その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以 後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度(又は各連結 事業年度)については、控除限度額が所得金額(又は連結所得金額)と されました(控除限度100%)。 (注)金融商品取引所への再上場等があった場合におけるその再上場された日等以 後に終了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。 ③ 新設法人 法人の設立(合併法人にあっては合併法人又は被合併法人のうちその設 立が最も早いものの設立等)の日から同日以後7年を経過する日までの 期間内の日の属する各事業年度(又は各連結事業年度)については、控 除限度額が所得金額(又は連結所得金額)とされました(控除限度100%)。 (注1)金融商品取引所に上場された場合等におけるその上場された日等以後に終 了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。 (注2)資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100%グ ループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人は対象 とはなりません。 ④ 特定目的会 社など 特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人及び特定投資信 託に係る受託法人で、支払配当等の損金算入制度の適用対象となるもの については、改正前の控除限度額(所得金額)が存置されます(控除限 度100%)。 (注1)上記②の措置に伴い、平成23年12月改正における更生手続開始の決定があったこと等の事実が 生じた場合に係る経過措置については、②に統合する形で廃止されました。 (注2)会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度については、従来どおりと されます(法法59①)。

《適用期日》
【2】の改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(改正法附21)。

【3】 繰越期間の延長

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間が平成29年度から10年(改正前9年)に延長されます。これに伴い、次の措置が講じられました。
イ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しな かった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度 の適用に係る帳簿書類の保存要件について、その保存期間が10年(改正前9年)に 延長されます。 ロ法人税の欠損金額に係る更正の期間制限が10年(改正前9年)に延長されます。 ハ法人税の欠損金額に係る更正の請求期間が10年(改正前9年)に延長されます。

《適用期日》
【3】の改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されます(改正法附1七イ、27、30)。

■欠損金の繰越控除制度の改正イメージ 改正前平成27年度平成28年度平成29年度 大法人 控除限度80% 65% 65% 50% 繰越期間9年9年9年10年※ 中小法人等 控除限度100% 100% 100% 100% 繰越期間9年9年9年10年※ ※平成29年度以降生じる欠損金について10年間、繰越可能 再建中の法人や新設法人については、7年間・100%控除できる制度が新たに導入

 

3 受取配当等益金不算入制度の縮減

【1】 制度の概要

受取配当等の益金不算入制度は、配当原資が、配当支払い法人の側ですでに法人税が課税されていることから、配当受取法人で課税されると二重課税となるとの考え方に基づき、受取配当等の全部又は一部の金額を、税法上益金に算入せず、二重課税を排除しようとする制度です。

【2】 改正の概要

受取配当等の益金不算入制度について、持ち株比率の基準が見直されました(法法23)。
■改正のイメージ (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)<改正前> <負債利子控除制度について> 親会社 出資 融資 配当 (益金不算入) 利払い (損金算入) 投資先 (子会社含む) 銀行等 <改正後> 持ち株比率 25%未満 25%以上 持ち株比率 5 %以下 5 %超1/3以下 1/3超 負債利子 控除の廃止 益金不算入割合 50% 100% 益金不算入割合 20% 50% 100% 銀行等からの借入金(負債)で株式を購入する場合、その負債利 子を親会社の損金に算入(非課税)できる一方、その配当金につ いて益金不算入(非課税)にできると、二重に恩恵を受けてしまう。 そうした状況を防ぐために、負債利子相当分について益金不算 入としない(益金とみなす)仕組みが「負債利子控除制度」。

① 益金不算入の対象となる株式等の区分及びその配当等の益金不算入割合が次のとおりとされました。

改正前改正後 区分不算入割合区分不算入割合 完全子法人株式等 (株式等保有割合 100%) 100% 完全子法人株式等 (株式等保有割合 100%) 100% 関係  法人株式等(株 式等保有割合25%以 上) 関連  法人株式等(株 式等保有割合3分の 1超) その他の株式等50% 上記以外の株式等50% 非支配目的株式等 (株式等保有割合 5%以下) 20%
改正前改正後 公社債投資信託以外の証 券投資信託の収益の分配 分配金の額の12 又は14 の額に ついて50%益金不算入 全額が益金算入 ※特定株式投資信託の分配金は、 20%益金不算入

② 上記①の「その他の株式等」及び「非支配目的株式等」については、負債利子がある場合の控除計算(負債利子控除)の対象から除外されました。これにより、負債利子控除が認められるのは、関連法人株式等だけとなります。

③ 上記①に伴い、青色申告書を提出する保険会社が受ける非支配目的株式等に係る配当等の額については、その40%相当額(原則20%相当額)を益金不算入とする特例が創設されました。

④ 株式等の各区分について、保有要件判定が次のとおりとされました。

完全子法人株式等 (法令22の2) 前回の配当等の基準日の翌日から今回の配当等の額の基準日までの 期間において、完全支配関係が継続していること(改正なし) 関連法人株式等 (法令22の3) 配当の計算期間において13 超の保有を継続していること 期間の起算点 改正前(関係法人株式等) 改正後 配当の効力発生日(株 主総会翌日が一般的) 配当の基準日(決算期末 が一般的) 非支配目的株式等 (法令22の3の2) 配当の基準日に保有割合5%以下であること その他の株式等上記3区分以外の株式が該当する。

《適用期日》
これらの改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用され(改正法附21)、同日以後に支払を受けた配当等に係る株式等の保有要件判定に適用されます(改正法令附1)。

 

4 法人事業税の外形標準課税の拡大

企業間の税負担の公平の観点等から、法人事業税の一部として導入されている外形標準課税は、現在、資本金の額又は出資金の額(以下「資本金」といいます。)1億円超の普通法人が対象となっています。この外形標準課税が拡大されるなど、法人事業税に関する見直しが行われました。

【1】 税率の改正

法人事業税の付加価値割と資本割の税率引上げ及び所得割の税率引下げが次のとおり行われ、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(地法72の24の7)。
改正前 改正後 平成27年度平成28年度~ 付加価値割0.48% 0.72% 0.96% 資本割0.2% 0.3% 0.4% 所 得 割 年400万円以下の所得3.8% (2.2%) 3.1% (1.6%) 2.5% (0.9%) 年400万円超800万円以 下の所得 5.5% (3.2%) 4.6% (2.3%) 3.7% (1.4%) 年800万円超の所得7.2% (4.3%) 6.0% (3.1%) 4.8% (1.9%) (注1)所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率です。 (注2)3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、 軽減税率の適用はありません。

【2】 地方法人特別税の税率の改正

資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率が次のとおりとされ、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(地方法人特別税等に関する暫定措置法9)。
改正前 改正後 平成27年度平成28年度~ 付加価値割額、資本割額及び所得割額 の合算額によって法人事業税を課税さ れる法人の所得割額に対する税率 67.4% 93.5% 152.6%

【3】 資本割の課税標準の見直し等

資本割の課税標準について、資本金等の額が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合、当該額を資本割の課税標準とすることとされました(地法72の21)。自己株式の取得等により、資本金等の額がマイナスになっている場合等は、注意が必要です。
改正前改正後 資本割の課税標準資本金等の額 ・原則……資本金等の額 ・「資本金等の額<資本金+資本準備金」の場合 ……資本金+資本準備金

また、法人住民税均等割の税率区分の基準についても、資本金等の額に無償増減資等の金額を加減算する措置を講ずるとともに、その資本金等の額が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合、当該「資本金に資本準備金を加えた額」が均等割の税率区分の基準とされました(地法23、52等)。

【4】 付加価値割における所得拡大促進税制の導入(賃上げした企業への特例)

対象平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度に国内雇用 者に対して給与等を支給する法人 要件 ① その法人の雇用者給与等支給増加額(注1)の基準雇用者給与等支給額に対 する割合が3%以上(注2)であること ② 次のイ及びロを満たすこと イ雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額以上であること ロ平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を上回ること (注1)雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額。 (注2)平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度については4% 以上、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度について は5%以上。

上記の要件を満たす法人は、その雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることになりました(改正地法附9)。

なお、国内雇用者、雇用者給与等支給額及び基準雇用者給与等支給額等については、法人税における所得拡大促進税制の計算の例によります。

【5】 法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置(中堅企業への特例)

法人事業税の税率改正に伴う負担変動を調整するため、改正後の税率によって増加した税負担のうち一定額を事業税額から控除する措置が講じられました(改正地法附9)。
【適用期間:2年間(平成28年度末まで)】 ・適用年度の課税標準に、前年度の税率と適用年度の税率をそれぞれ乗じ、適用年度の 方が負担が重くなる場合、適用年度の付加価値額が30億円以下の法人について、その 負担増加額の50%を控除。適用年度の付加価値額が30億円超40億円未満である法人に ついては、控除率(50%)をなだらかに縮減。 (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

5 研究開発税制の見直し

【1】 研究開発税制の概要

研究開発税制は、青色申告の法人及び個人を対象とするもので、次の4つの制度によって構成されています。

① 試験研究費の総額に係る税額控除制度

損金の額に算入される試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

② 特別試験研究に係る税額控除制度

損金の額に算入される特別試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

③ 中小企業技術基盤強化税制

損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、「試験研究費の総額に係る税額控除制度」又は「特別試験研究に係る税額控除制度」との選択適用で、その試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

④ 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度(時限措置)

上記及びの制度とは別枠で、一定の要件に該当する場合、損金の額に算入される試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。これには、増加型と高水準型があります。

【2】 改正の概要

研究開発税制について、企業のオープンイノベーション(外部の技術・知識を活用した研究開発)の促進などの観点から、控除率が大幅に引き上げられるとともに中小企業の知的財産権の使用料等が対象費用に追加されました。

具体的には、本体(恒久措置)の控除税額の上限を当期の法人税額の30%(原則20%)に引き上げていた措置が適用期限の到来により廃止され、それに伴い、新たに以下の措置により、控除税額の上限の総枠が当期の法人税額の30%とされました(措法42の4)。所得税も同様に措置されました(措法10)。
① 特別試験研究に係る税額控除制度について、次の見直しが行われました。 イ税額控除率(改正前12%)が次のとおり引き上げられました。 特別試験研究機関等又は大学等との共同研究及びこれらに対する委託研究30% 上記以外のもの20% ロ控除税額の上限が試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤 強化税制とは別枠で当期の法人税額の5%とされました。 ハ特別試験研究費の範囲について、次の見直しが行われました。 (イ)特別試験研究機関等のうち試験研究独立行政法人の範囲から国立研究開発 法人以外の法人が除外されました。 (ロ)特定中小企業者に対する委託研究の対象となる委託先の範囲に公益法人等、 地方公共団体の機関、地方独立行政法人等が加えられました。 (ハ)特定中小企業者に対して支払う知的財産権の使用料が加えられました。② 試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制の控除税額の 上限が当期の法人税額の25%とされました。 (注)これらの制度の対象となる試験研究費の額には、特別試験研究費の額に係る税額控除制 度の対象とした特別試験研究費の額を含まないこととされました。 ③ 繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除 制度が廃止されました。

《適用期日》
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(改正法附21)。

法人税額の25% 総額型とオープン イノベーション型 を別枠化 控除上限は、 あわせて30% 控除率大幅引上げ (改正前12%) 対象費用 追加 法人税額の5 % <控除上限> + + 【増加型】 【オープンイノベーション型】 【総額型】 特別試験研究費×20%又は30%(※ 2 ) 試験研究費の総額× 8 %~10% 中小企業は、一律12% ※2 大学・特別試験研究機関等との共同・委託研究  :30%   企業間等(中小企業からの地財権使用料等の追加) :20% ※ 1 年間の繰越控除制度を廃止 試験研究費の増加額   ×増加割合( 5 ~30%) 【高水準型】 売上高比10%超の試験研究費  ×控除率(※ 1 ) ※1(試験研究費割合-10%)×0.2 本体 (恒久措置) 【増加型】 試験研究費が過去3 年平均より増加 した場合の控除制度 【高水準型】 試験研究費の対売上比率が10%を超えた 選択 場合の控除制度 できる 【総額型】 試験研究費総額にかかる控除制度 + 上乗せ措置 (平成28年度までの 時限措置) 控除額=試験研究費の総額× 8 ~10% 中小企業者等(資本金1 億円以下の法人等)の場合   12% オープンイノベーション型(特別試験研究費)の場合 12% ■その事業年度において上記控除額が控除上限を超過した場合、超過部分について翌年度に 繰越可能(試験研究費が翌年度に増加した場合のみ) 控除額=試験研究費の増加額 ×控除率( 5 ~30%) 【控除上限】 法人税額の30% (平成26年度まで の時限措置。 通常は20%) 【控除上限】 法人税額の10% 控除額= 売上高の10%を超える試験研究費の 額×控除率 【改正前】(出典:経済産業省「研究開発税制の概要」)(出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

6 所得拡大促進税制の拡充

【1】 所得拡大促進税制の概要

雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(所得拡大促進税制)とは、青色申告法人が、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、適用対象年度の給与支給額や平均支給額などに基づく一定の要件を満たす場合に、税額控除が認められるというものです。

【2】 改正の概要

所得拡大促進税制における雇用者給与等支給増加割合の要件(下図の要件①に相当)について、法人の区分ごとに次の見直しが行われました(措法42の12の4)。所得税も同様に措置されました(措法10の5の3)。
平27.4.1前 開始事業年度 (H26年度以前) 平27.4.1~ 平28.3.31 開始事業年度 (H27年度) 平28.4.1~ 平29.3.31 開始事業年度 (H28年度) 平29.4.1~ 平30.3.31 開始事業年度 (H29年度) 改正前2%以上3%以上5%以上5%以上 改 正後 法人区分 中小企業者等又は中小連結 法人及びその連結子法人2%以上3%以上3%以上3%以上 上記以外の法人(大法人) 2%以上3%以上4%以上5%以上 (注)上記の割合は、「増加促進割合」として定義されました(措法42の12の4②五)。改正概要 <制度内容> ※国内の雇用者への支払給与。役員給与は含まず、パート・アルバイトへの給与を含む。  通常の賃金のほか、残業手当・賞与を含む。退職手当は含まない。 (要件① 給与総額増加要件の一定割合) 《改正前》《改正後》大法人 中小法人 3 %増 3 %増 H27 H28 H29 3 %増3 %増 4 %増5 %増 H24 (基準年度) H25 (創設年度) 2 %増2 %増3 %増 5 %増5 %増 H26 H27 H28 H29 【適用期間:3 年間(平成29年度末まで)】10%の税額控除 (法人税額の10%(中小は20%)が上限) (【要件③】も満たせば) 【要件②】 給与等 支給額 の総額 平成24年度平成26年度平成27年度 (適用年度) 24年度から の増加額 24年度から の増加額 【要件①】 【要件①】給与等支給額※の総額:平成24年度から一定割合(下図)以上増加 【要件②】給与等支給額の総額:前の事業年度以上 【要件③】給与等支給額の平均:前の事業年度を上回る (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

7 地方拠点強化税制の創設

地方創生のための施策として、地域再生法の改正法施行日から平成30年3月31日までに同法第17条の2第1項の「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」(以下「計画」といいます。)の認定を受けた青色申告法人に対して、投資減税の創設(下記【1】)及び雇用促進税制の拡充(下記【2】)の措置が講じられました(措法42の12、42の12の2)。

「計画」については、東京23区から支援対象の区域(3大都市圏以外)への移転は「移転型」、それ以外は「拡充型」と位置づけられ、前者は後者よりも支援内容が充実しています。なお、所得税も同様に措置されました(措法10の4、10の5)。

【1】 特別償却又は税額控除制度の創設

適用要件 「計画」認定の日から2年以内に、その「計画」に記載された建物及びその 附属設備並びに構築物で、一定の規模以上のもの(注)の取得等をして、そ の事業の用に供すること。 措置 <移転型> 特別償却25% 又は 税額控除 「計画」 の認定 H29.3.31まで7% H29.4.1~ H30.3.31まで4% <拡充型> 特別償却15% 又は 税額控除 「計画」 の認定 H29.3.31まで4% H29.4.1~ H30.3.31まで2% (注)「一定の規模以上のもの」とは、一の建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が 2,000万円以上(中小企業者にあっては、1,000万円以上)のものをいいます(措令27の12)。

【2】 雇用促進税制の拡充

平成30年3月31日までに「計画」の認定を受けた法人が、雇用促進税制の要件(下図の既存の要件ⅱを除きます。)を満たす場合、認定以後3年間、次の雇用促進税制の特例を適用できる措置が講じられました。

※税額控除額の上限は、既存の雇用促進税制と地方拠点強化税制(投資減税)とを合わせて、当期の法人税額の30%

"既存の雇用促進税制特例1

 

8 その他の法人税制関連の改正

【1】 福島再開投資等準備金制度の創設等

「避難解除区域等」への帰還を希望する事業者(福島復興再生特別措置法第25条に規定する認定事業者)で、事業再開に向けた「計画」(同条の認定避難解除等区域復興再生推進事業実施計画)を作成し、福島県知事の認定を受けた者について、次の措置が講じられました(震災特例法18の8)。所得税も同様に措置されました(震災特例法11の3の2)。

(注1) 「避難解除区域等」……避難解除区域、避難指示解除準備区域及び居住制限区域をいいます。

(注2) 事業再開に向けた「計画」については、再開する事業がその実施区域のある市町村の住民の帰還促進を図るための地域環境の整備に寄与すること等を勘案して認定を行うこととされます。

① 福島再開投資 等準備金制度 の創設 一定の「計画」の認定を受けた法人が、その「計画」に記載され た再開する事業の用に供する施設等の新増設等に要する支出に充 てるため、その「計画」に記載された投資予定額の2分の1相当 額以下の金額を福島再開投資等準備金として積み立てたときは、 その積立金額を損金算入することができます。 (注)この準備金は、積立期間終了の日から2年間据え置いた後、3年間 で均等額を取り崩して益金算入することとされます。② 避難解除区域 等に係る設備 投資減税の適 用期間の特例 避難解除区域等に係る設備投資減税(機械装置:即時償却又は 15%税額控除、建物等:25%特別償却又は8%税額控除)の適用 期間が次のようになりました。 改正前:避難指示解除等から5年後まで 改正後:避難指示解除等から5年を経過する日より後に、福島再 開投資等準備金の積立期間から2年を経過する日が到来する場 合には、その2年を経過する日 (注)改正前の適用期限より後に適用を受ける場合には、一定規模以上の 投資に限定。

【2】 租税特別措置の見直し

期限が到来する21措置のうち、19措置について見直しが行われました。
① 中小法人等の軽減税率(15%)(措法42の3の2) 単純延長 ② 研究開発税制〈一部〉(措法42の4) 総額型の控除限度額の上乗せ (法人税額の30%) 縮減+一部拡充 ③ 生産等設備投資促進税制(旧措法42の12の2) 廃止 ④ アジア拠点化推進法の認定法人の所得控除(旧 措法61) 廃止 ⑤ 環境関連投資促進税制〈一部〉(措法42の5) 太陽光・風力発電設備の即時償却縮減・延長(太陽光発電設備分は廃止) ⑥ 商業・サービス業を営む中小企業者等の経営 改善設備の特別償却・税額控除(措法42の12の3) 縮減・延長(対象者の限定等) ⑦ 技術研究組合の所得計算の特例(措法66の10) 縮減・延長(対象資産の限定) ⑧ 協同組合等の貸倒引当金の特例〈一部〉(措法 57の9) 繰入限度額の上乗せ(12%) 単純延長 ⑨ くるみん認定企業の行動計画期間中の取得建 物等の割増償却(1年32%)(措法46の2) 縮減+一部拡充(対象資産を計画記 載資産に限定し、償却率を引下げ。一 部、3年割増償却化) ⑩ 障害者就労支援事業所との取引が増加した企 業の資産の割増償却(1年30%)(旧措法46の2) 廃止 ⑪ 生活衛生同業組合の共同利用施設の特別償却 (6%)(措法44の3) 縮減・延長(取得価額要件の設定) ⑫ 医療機器等の特別償却(措法45の2) (高額機器12%・医療安全機器16%) 縮減・延長(医療安全機器分は廃止) ⑬ 特定地域における機械等の特別償却(措法45) 全体として縮減+一部拡充 半島、離島、奄美群島〔単純延長〕(割増償却(5年32%(建物等48%))) 過疎地域(特別償却(10%(建物等6%))) 〔単純延長〕 振興山村(特別償却(10%(建物等6%))) 〔縮減+拡充〕(対象者を中小企業に 限定等。5年割増償却化) ⑭ 特定再開発建築物等の割増償却(5年)(措法 47の2) 全体として縮減(一部廃止) 都市再生事業関係(40%・50%) 〔縮減・延長〕(償却率の引下げ) 市街地再開発事業関係(10%) 〔廃止〕 雨水利用施設(10%) 〔縮減・延長〕(対象地域・施設の限定) 中心市街地活性化事業関係(10%) 〔単純延長〕 ⑮ 関西文化学術研究都市の研究施設の特別償却 (12%(建物等6%))(措法44) 縮減・延長(新増設に限定) ⑯ 特定資産の買換え特例(80%圧縮記帳)(措法 65の7①九) 〈一部〉 「所有10年超の土地・建物等」→「300㎡以上 の土地・建物・機械装置・鉄道車両等」 縮減・延長(買換え資産から機械装 置・コンテナ貨車を除外し、地方→大 都市への買換えは圧縮率を引下げ) ⑰ 船舶の特別償却(16%・18%)(措法43) 縮減・延長(規模・環境性能要件の強化) ⑱ 倉庫用建物の割増償却(5年10%)(措法48) 縮減・延長(規模要件の強化) ⑲ 特定農産加工品生産設備等の特別償却(措法 44の4) 〈一部〉 新用途米穀加工品等製造設備(30%) 廃止 ⑳ 農業経営基盤強化準備金(措法61の2) 縮減+一部拡充(対象となる交付 金・法人を限定。対象資産を追加) ㉑特定信頼性向上設備等の特別償却〈一部〉(措 法44の5) 東京圏以外に立地し、専ら東京圏のデータセ ンターのバックアップを行う設備(15%) 縮減・延長(償却率の引下げ) (出典:財務省「資料(法人税改革)」(一部加工))

【3】 貸倒引当金の特例の簡便法適用時の基準年度の見直し

中小企業等の貸倒引当金の特例について、実質的に債権とみられない金額の計算について基準年度実績による簡便法を用いる場合の基準年度が平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度に見直されました(措令33の7③)。所得税も同様に措置されました。

 

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〔Ⅰ〕 法人税制 改正のポイント

1 法人実効税率の引下げ

【1】 法人税改革の枠組み

法人税改革の枠組みについては、与党の「平成27年度税制改正大綱」において、「平成27年度を初年度とし、以後数年で、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す」とされています。また、「その際、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するため、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により、恒久財源をしっかりと確保する」こととされています。具体的には、税率引下げと課税ベースの拡大等の改革は、2段階で進められます。

第1段階 平成27年度税制改正:欠損金繰越控除の見直し( 2 参照)、受取配当等益金不算 入の見直し( 3 参照)、法人事業税の外形標準課税の拡大( 4 参照)、租税特別 措置の見直し( 5 等参照)が行われました。(大法人が中心) 法人税率引下げなどにより、法人実効税率が引き下げられました。(下表参照) 第2段階 平成28年度税制改正:課税ベースの拡大等により財源を確保して、平成28年度に おける税率引下げ幅の更なる上乗せが図られます。 平成29年度以後の税制改正:引き続き、法人実効税率を20%台まで引き下げるこ とを目指して、改革が継続されます。

■法人実効税率の引下げの概要 (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)改正前 国の法人税率 (参考)大法人向け法人事業税    所得割 * 地方法人特別税を含む * 年800万円超所得分の標準税率 (参考)国・地方の法人実効税率    <標準税率ベース> 25.5% 7.2% 23.9% 23.9% 6.0% 4.8% 34.62% 32.11% (▲2.51%) 31.33% (▲3.29%)

【2】 法人税率の引下げ(法法66①)

法人税の税率が23.9%(改正前25.5%)に引き下げられました。

《適用期日》
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用されます。(改正法附21)

■法人税率の概要 改正前 改正後 平27.4.1以後 開始事業年度 普通法人・人格 のない社団等 資本金1億円以下の法人 及び資本金を有しない法 人(相互会社を除く) 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15%(注2) (本則19%) 年800万円超の 部分25.5% 23.9% 資本金1億円超の法人及び相互会社25.5% 23.9% 公益法人等 公益社団法人 公益財団法人 一般社団(財団)法人の うち非営利型法人 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分25.5% 23.9% 上記以外 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分19% 19% 協同組合等(注1) 年800万円以下 の部分 15% (本則19%) 15% (本則19%) 年800万円超の 部分19% 19%(注1)特定の協同組合等に対しては、所得金額のうち10億円を超える部分の金額について22%の税率 が適用されます。 (注2)中小法人の軽減税率の特例(19%→15%)等については、平成29年3月31日までに開始する事 業年度に適用されます。(【3】の①~③参照)

【3】 中小法人の軽減税率の特例等の延長(措法42の3の2)

① 中小法人の軽減税率の特例の延長

「中小法人の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

② 公益法人等の軽減税率の特例の延長

「公益法人等の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%等)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

③ 協同組合等の軽減税率の特例の延長

「協同組合等の軽減税率の特例」(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する税率:19%→15%等)の適用期限が、平成29年3月31日まで2年延長されました。

 

2 欠損金の繰越控除制度の縮減

欠損金の繰越控除制度は、過去の事業年度において生じた欠損金をその事業年度の翌事業年度以降に繰り越し、所得金額から控除する制度です。

欠損金の繰越控除制度等について、大法人(中小法人等以外の法人)の控除限度(改正前:所得の80%)を、平成27年度に「所得の65%」、平成29年度に「所得の50%」に引き下げるなどの見直しが行われました。

【1】 控除限度額の引下げ(大法人)

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度(法法57)、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度(法法58)及び連結欠損金の繰越控除制度(法法81の9)における控除限度額について、次のとおり、段階的に引き下げられました(改正法附27、30)。
改正前 改正後 平27.4.1~平29.3.31開始の 繰越控除をする事業年度 平29.4.1以後開始の 繰越控除をする事業年度 控除限度80% 65% 50%

【2】 中小法人等や再建中の法人などへの措置

上記【1】に伴い、次の措置が講じられました(法法57⑪、81の9⑧)。
① 中小法人等 中小法人等については、改正前の控除限度額(所得金額又は連結所得金 額)が存置されます(控除限度100%)。 (注)上記の「中小法人等」とは、次の法人(連結納税の場合には、連結親法人) をいいます。 (イ)普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金 の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの(相互会 社等、資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100% グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除 きます。) (ロ)公益法人等 (ハ)協同組合等 (ニ)人格のない社団等 ② 再建中の法 人 更生手続開始の決定があったこと、再生手続開始の決定があったこと等 の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)については、 その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以 後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度(又は各連結 事業年度)については、控除限度額が所得金額(又は連結所得金額)と されました(控除限度100%)。 (注)金融商品取引所への再上場等があった場合におけるその再上場された日等以 後に終了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。 ③ 新設法人 法人の設立(合併法人にあっては合併法人又は被合併法人のうちその設 立が最も早いものの設立等)の日から同日以後7年を経過する日までの 期間内の日の属する各事業年度(又は各連結事業年度)については、控 除限度額が所得金額(又は連結所得金額)とされました(控除限度100%)。 (注1)金融商品取引所に上場された場合等におけるその上場された日等以後に終 了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。 (注2)資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100%グ ループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人は対象 とはなりません。 ④ 特定目的会 社など 特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人及び特定投資信 託に係る受託法人で、支払配当等の損金算入制度の適用対象となるもの については、改正前の控除限度額(所得金額)が存置されます(控除限 度100%)。 (注1)上記②の措置に伴い、平成23年12月改正における更生手続開始の決定があったこと等の事実が 生じた場合に係る経過措置については、②に統合する形で廃止されました。 (注2)会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度については、従来どおりと されます(法法59①)。

《適用期日》
【2】の改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(改正法附21)。

【3】 繰越期間の延長

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間が平成29年度から10年(改正前9年)に延長されます。これに伴い、次の措置が講じられました。
イ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しな かった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度 の適用に係る帳簿書類の保存要件について、その保存期間が10年(改正前9年)に 延長されます。 ロ法人税の欠損金額に係る更正の期間制限が10年(改正前9年)に延長されます。 ハ法人税の欠損金額に係る更正の請求期間が10年(改正前9年)に延長されます。

《適用期日》
【3】の改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されます(改正法附1七イ、27、30)。

■欠損金の繰越控除制度の改正イメージ 改正前平成27年度平成28年度平成29年度 大法人 控除限度80% 65% 65% 50% 繰越期間9年9年9年10年※ 中小法人等 控除限度100% 100% 100% 100% 繰越期間9年9年9年10年※ ※平成29年度以降生じる欠損金について10年間、繰越可能 再建中の法人や新設法人については、7年間・100%控除できる制度が新たに導入

 

3 受取配当等益金不算入制度の縮減

【1】 制度の概要

受取配当等の益金不算入制度は、配当原資が、配当支払い法人の側ですでに法人税が課税されていることから、配当受取法人で課税されると二重課税となるとの考え方に基づき、受取配当等の全部又は一部の金額を、税法上益金に算入せず、二重課税を排除しようとする制度です。

【2】 改正の概要

受取配当等の益金不算入制度について、持ち株比率の基準が見直されました(法法23)。
■改正のイメージ (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)<改正前> <負債利子控除制度について> 親会社 出資 融資 配当 (益金不算入) 利払い (損金算入) 投資先 (子会社含む) 銀行等 <改正後> 持ち株比率 25%未満 25%以上 持ち株比率 5 %以下 5 %超1/3以下 1/3超 負債利子 控除の廃止 益金不算入割合 50% 100% 益金不算入割合 20% 50% 100% 銀行等からの借入金(負債)で株式を購入する場合、その負債利 子を親会社の損金に算入(非課税)できる一方、その配当金につ いて益金不算入(非課税)にできると、二重に恩恵を受けてしまう。 そうした状況を防ぐために、負債利子相当分について益金不算 入としない(益金とみなす)仕組みが「負債利子控除制度」。

① 益金不算入の対象となる株式等の区分及びその配当等の益金不算入割合が次のとおりとされました。

改正前改正後 区分不算入割合区分不算入割合 完全子法人株式等 (株式等保有割合 100%) 100% 完全子法人株式等 (株式等保有割合 100%) 100% 関係  法人株式等(株 式等保有割合25%以 上) 関連  法人株式等(株 式等保有割合3分の 1超) その他の株式等50% 上記以外の株式等50% 非支配目的株式等 (株式等保有割合 5%以下) 20%
改正前改正後 公社債投資信託以外の証 券投資信託の収益の分配 分配金の額の12 又は14 の額に ついて50%益金不算入 全額が益金算入 ※特定株式投資信託の分配金は、 20%益金不算入

② 上記①の「その他の株式等」及び「非支配目的株式等」については、負債利子がある場合の控除計算(負債利子控除)の対象から除外されました。これにより、負債利子控除が認められるのは、関連法人株式等だけとなります。

③ 上記①に伴い、青色申告書を提出する保険会社が受ける非支配目的株式等に係る配当等の額については、その40%相当額(原則20%相当額)を益金不算入とする特例が創設されました。

④ 株式等の各区分について、保有要件判定が次のとおりとされました。

完全子法人株式等 (法令22の2) 前回の配当等の基準日の翌日から今回の配当等の額の基準日までの 期間において、完全支配関係が継続していること(改正なし) 関連法人株式等 (法令22の3) 配当の計算期間において13 超の保有を継続していること 期間の起算点 改正前(関係法人株式等) 改正後 配当の効力発生日(株 主総会翌日が一般的) 配当の基準日(決算期末 が一般的) 非支配目的株式等 (法令22の3の2) 配当の基準日に保有割合5%以下であること その他の株式等上記3区分以外の株式が該当する。

《適用期日》
これらの改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用され(改正法附21)、同日以後に支払を受けた配当等に係る株式等の保有要件判定に適用されます(改正法令附1)。

 

4 法人事業税の外形標準課税の拡大

企業間の税負担の公平の観点等から、法人事業税の一部として導入されている外形標準課税は、現在、資本金の額又は出資金の額(以下「資本金」といいます。)1億円超の普通法人が対象となっています。この外形標準課税が拡大されるなど、法人事業税に関する見直しが行われました。

【1】 税率の改正

法人事業税の付加価値割と資本割の税率引上げ及び所得割の税率引下げが次のとおり行われ、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(地法72の24の7)。
改正前 改正後 平成27年度平成28年度~ 付加価値割0.48% 0.72% 0.96% 資本割0.2% 0.3% 0.4% 所 得 割 年400万円以下の所得3.8% (2.2%) 3.1% (1.6%) 2.5% (0.9%) 年400万円超800万円以 下の所得 5.5% (3.2%) 4.6% (2.3%) 3.7% (1.4%) 年800万円超の所得7.2% (4.3%) 6.0% (3.1%) 4.8% (1.9%) (注1)所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率です。 (注2)3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、 軽減税率の適用はありません。

【2】 地方法人特別税の税率の改正

資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率が次のとおりとされ、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(地方法人特別税等に関する暫定措置法9)。
改正前 改正後 平成27年度平成28年度~ 付加価値割額、資本割額及び所得割額 の合算額によって法人事業税を課税さ れる法人の所得割額に対する税率 67.4% 93.5% 152.6%

【3】 資本割の課税標準の見直し等

資本割の課税標準について、資本金等の額が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合、当該額を資本割の課税標準とすることとされました(地法72の21)。自己株式の取得等により、資本金等の額がマイナスになっている場合等は、注意が必要です。
改正前改正後 資本割の課税標準資本金等の額 ・原則……資本金等の額 ・「資本金等の額<資本金+資本準備金」の場合 ……資本金+資本準備金

また、法人住民税均等割の税率区分の基準についても、資本金等の額に無償増減資等の金額を加減算する措置を講ずるとともに、その資本金等の額が「資本金に資本準備金を加えた額」を下回る場合、当該「資本金に資本準備金を加えた額」が均等割の税率区分の基準とされました(地法23、52等)。

【4】 付加価値割における所得拡大促進税制の導入(賃上げした企業への特例)

対象平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度に国内雇用 者に対して給与等を支給する法人 要件 ① その法人の雇用者給与等支給増加額(注1)の基準雇用者給与等支給額に対 する割合が3%以上(注2)であること ② 次のイ及びロを満たすこと イ雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額以上であること ロ平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を上回ること (注1)雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額。 (注2)平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度については4% 以上、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度について は5%以上。

上記の要件を満たす法人は、その雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることになりました(改正地法附9)。

なお、国内雇用者、雇用者給与等支給額及び基準雇用者給与等支給額等については、法人税における所得拡大促進税制の計算の例によります。

【5】 法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置(中堅企業への特例)

法人事業税の税率改正に伴う負担変動を調整するため、改正後の税率によって増加した税負担のうち一定額を事業税額から控除する措置が講じられました(改正地法附9)。
【適用期間:2年間(平成28年度末まで)】 ・適用年度の課税標準に、前年度の税率と適用年度の税率をそれぞれ乗じ、適用年度の 方が負担が重くなる場合、適用年度の付加価値額が30億円以下の法人について、その 負担増加額の50%を控除。適用年度の付加価値額が30億円超40億円未満である法人に ついては、控除率(50%)をなだらかに縮減。 (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

5 研究開発税制の見直し

【1】 研究開発税制の概要

研究開発税制は、青色申告の法人及び個人を対象とするもので、次の4つの制度によって構成されています。

① 試験研究費の総額に係る税額控除制度

損金の額に算入される試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

② 特別試験研究に係る税額控除制度

損金の額に算入される特別試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

③ 中小企業技術基盤強化税制

損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、「試験研究費の総額に係る税額控除制度」又は「特別試験研究に係る税額控除制度」との選択適用で、その試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。

④ 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度(時限措置)

上記及びの制度とは別枠で、一定の要件に該当する場合、損金の額に算入される試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。これには、増加型と高水準型があります。

【2】 改正の概要

研究開発税制について、企業のオープンイノベーション(外部の技術・知識を活用した研究開発)の促進などの観点から、控除率が大幅に引き上げられるとともに中小企業の知的財産権の使用料等が対象費用に追加されました。

具体的には、本体(恒久措置)の控除税額の上限を当期の法人税額の30%(原則20%)に引き上げていた措置が適用期限の到来により廃止され、それに伴い、新たに以下の措置により、控除税額の上限の総枠が当期の法人税額の30%とされました(措法42の4)。所得税も同様に措置されました(措法10)。
① 特別試験研究に係る税額控除制度について、次の見直しが行われました。 イ税額控除率(改正前12%)が次のとおり引き上げられました。 特別試験研究機関等又は大学等との共同研究及びこれらに対する委託研究30% 上記以外のもの20% ロ控除税額の上限が試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤 強化税制とは別枠で当期の法人税額の5%とされました。 ハ特別試験研究費の範囲について、次の見直しが行われました。 (イ)特別試験研究機関等のうち試験研究独立行政法人の範囲から国立研究開発 法人以外の法人が除外されました。 (ロ)特定中小企業者に対する委託研究の対象となる委託先の範囲に公益法人等、 地方公共団体の機関、地方独立行政法人等が加えられました。 (ハ)特定中小企業者に対して支払う知的財産権の使用料が加えられました。② 試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制の控除税額の 上限が当期の法人税額の25%とされました。 (注)これらの制度の対象となる試験研究費の額には、特別試験研究費の額に係る税額控除制 度の対象とした特別試験研究費の額を含まないこととされました。 ③ 繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除 制度が廃止されました。

《適用期日》
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(改正法附21)。

法人税額の25% 総額型とオープン イノベーション型 を別枠化 控除上限は、 あわせて30% 控除率大幅引上げ (改正前12%) 対象費用 追加 法人税額の5 % <控除上限> + + 【増加型】 【オープンイノベーション型】 【総額型】 特別試験研究費×20%又は30%(※ 2 ) 試験研究費の総額× 8 %~10% 中小企業は、一律12% ※2 大学・特別試験研究機関等との共同・委託研究  :30%   企業間等(中小企業からの地財権使用料等の追加) :20% ※ 1 年間の繰越控除制度を廃止 試験研究費の増加額   ×増加割合( 5 ~30%) 【高水準型】 売上高比10%超の試験研究費  ×控除率(※ 1 ) ※1(試験研究費割合-10%)×0.2 本体 (恒久措置) 【増加型】 試験研究費が過去3 年平均より増加 した場合の控除制度 【高水準型】 試験研究費の対売上比率が10%を超えた 選択 場合の控除制度 できる 【総額型】 試験研究費総額にかかる控除制度 + 上乗せ措置 (平成28年度までの 時限措置) 控除額=試験研究費の総額× 8 ~10% 中小企業者等(資本金1 億円以下の法人等)の場合   12% オープンイノベーション型(特別試験研究費)の場合 12% ■その事業年度において上記控除額が控除上限を超過した場合、超過部分について翌年度に 繰越可能(試験研究費が翌年度に増加した場合のみ) 控除額=試験研究費の増加額 ×控除率( 5 ~30%) 【控除上限】 法人税額の30% (平成26年度まで の時限措置。 通常は20%) 【控除上限】 法人税額の10% 控除額= 売上高の10%を超える試験研究費の 額×控除率 【改正前】(出典:経済産業省「研究開発税制の概要」)(出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

6 所得拡大促進税制の拡充

【1】 所得拡大促進税制の概要

雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(所得拡大促進税制)とは、青色申告法人が、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、適用対象年度の給与支給額や平均支給額などに基づく一定の要件を満たす場合に、税額控除が認められるというものです。

【2】 改正の概要

所得拡大促進税制における雇用者給与等支給増加割合の要件(下図の要件①に相当)について、法人の区分ごとに次の見直しが行われました(措法42の12の4)。所得税も同様に措置されました(措法10の5の3)。
平27.4.1前 開始事業年度 (H26年度以前) 平27.4.1~ 平28.3.31 開始事業年度 (H27年度) 平28.4.1~ 平29.3.31 開始事業年度 (H28年度) 平29.4.1~ 平30.3.31 開始事業年度 (H29年度) 改正前2%以上3%以上5%以上5%以上 改 正後 法人区分 中小企業者等又は中小連結 法人及びその連結子法人2%以上3%以上3%以上3%以上 上記以外の法人(大法人) 2%以上3%以上4%以上5%以上 (注)上記の割合は、「増加促進割合」として定義されました(措法42の12の4②五)。改正概要 <制度内容> ※国内の雇用者への支払給与。役員給与は含まず、パート・アルバイトへの給与を含む。  通常の賃金のほか、残業手当・賞与を含む。退職手当は含まない。 (要件① 給与総額増加要件の一定割合) 《改正前》《改正後》大法人 中小法人 3 %増 3 %増 H27 H28 H29 3 %増3 %増 4 %増5 %増 H24 (基準年度) H25 (創設年度) 2 %増2 %増3 %増 5 %増5 %増 H26 H27 H28 H29 【適用期間:3 年間(平成29年度末まで)】10%の税額控除 (法人税額の10%(中小は20%)が上限) (【要件③】も満たせば) 【要件②】 給与等 支給額 の総額 平成24年度平成26年度平成27年度 (適用年度) 24年度から の増加額 24年度から の増加額 【要件①】 【要件①】給与等支給額※の総額:平成24年度から一定割合(下図)以上増加 【要件②】給与等支給額の総額:前の事業年度以上 【要件③】給与等支給額の平均:前の事業年度を上回る (出典:経済産業省「平成27年度経済産業関係税制改正について」)

 

7 地方拠点強化税制の創設

地方創生のための施策として、地域再生法の改正法施行日から平成30年3月31日までに同法第17条の2第1項の「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」(以下「計画」といいます。)の認定を受けた青色申告法人に対して、投資減税の創設(下記【1】)及び雇用促進税制の拡充(下記【2】)の措置が講じられました(措法42の12、42の12の2)。

「計画」については、東京23区から支援対象の区域(3大都市圏以外)への移転は「移転型」、それ以外は「拡充型」と位置づけられ、前者は後者よりも支援内容が充実しています。なお、所得税も同様に措置されました(措法10の4、10の5)。

【1】 特別償却又は税額控除制度の創設

適用要件 「計画」認定の日から2年以内に、その「計画」に記載された建物及びその 附属設備並びに構築物で、一定の規模以上のもの(注)の取得等をして、そ の事業の用に供すること。 措置 <移転型> 特別償却25% 又は 税額控除 「計画」 の認定 H29.3.31まで7% H29.4.1~ H30.3.31まで4% <拡充型> 特別償却15% 又は 税額控除 「計画」 の認定 H29.3.31まで4% H29.4.1~ H30.3.31まで2% (注)「一定の規模以上のもの」とは、一の建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が 2,000万円以上(中小企業者にあっては、1,000万円以上)のものをいいます(措令27の12)。

【2】 雇用促進税制の拡充

平成30年3月31日までに「計画」の認定を受けた法人が、雇用促進税制の要件(下図の既存の要件ⅱを除きます。)を満たす場合、認定以後3年間、次の雇用促進税制の特例を適用できる措置が講じられました。

※税額控除額の上限は、既存の雇用促進税制と地方拠点強化税制(投資減税)とを合わせて、当期の法人税額の30%

"既存の雇用促進税制特例1

 

8 その他の法人税制関連の改正

【1】 福島再開投資等準備金制度の創設等

「避難解除区域等」への帰還を希望する事業者(福島復興再生特別措置法第25条に規定する認定事業者)で、事業再開に向けた「計画」(同条の認定避難解除等区域復興再生推進事業実施計画)を作成し、福島県知事の認定を受けた者について、次の措置が講じられました(震災特例法18の8)。所得税も同様に措置されました(震災特例法11の3の2)。

(注1) 「避難解除区域等」……避難解除区域、避難指示解除準備区域及び居住制限区域をいいます。

(注2) 事業再開に向けた「計画」については、再開する事業がその実施区域のある市町村の住民の帰還促進を図るための地域環境の整備に寄与すること等を勘案して認定を行うこととされます。

① 福島再開投資 等準備金制度 の創設 一定の「計画」の認定を受けた法人が、その「計画」に記載され た再開する事業の用に供する施設等の新増設等に要する支出に充 てるため、その「計画」に記載された投資予定額の2分の1相当 額以下の金額を福島再開投資等準備金として積み立てたときは、 その積立金額を損金算入することができます。 (注)この準備金は、積立期間終了の日から2年間据え置いた後、3年間 で均等額を取り崩して益金算入することとされます。② 避難解除区域 等に係る設備 投資減税の適 用期間の特例 避難解除区域等に係る設備投資減税(機械装置:即時償却又は 15%税額控除、建物等:25%特別償却又は8%税額控除)の適用 期間が次のようになりました。 改正前:避難指示解除等から5年後まで 改正後:避難指示解除等から5年を経過する日より後に、福島再 開投資等準備金の積立期間から2年を経過する日が到来する場 合には、その2年を経過する日 (注)改正前の適用期限より後に適用を受ける場合には、一定規模以上の 投資に限定。

【2】 租税特別措置の見直し

期限が到来する21措置のうち、19措置について見直しが行われました。
① 中小法人等の軽減税率(15%)(措法42の3の2) 単純延長 ② 研究開発税制〈一部〉(措法42の4) 総額型の控除限度額の上乗せ (法人税額の30%) 縮減+一部拡充 ③ 生産等設備投資促進税制(旧措法42の12の2) 廃止 ④ アジア拠点化推進法の認定法人の所得控除(旧 措法61) 廃止 ⑤ 環境関連投資促進税制〈一部〉(措法42の5) 太陽光・風力発電設備の即時償却縮減・延長(太陽光発電設備分は廃止) ⑥ 商業・サービス業を営む中小企業者等の経営 改善設備の特別償却・税額控除(措法42の12の3) 縮減・延長(対象者の限定等) ⑦ 技術研究組合の所得計算の特例(措法66の10) 縮減・延長(対象資産の限定) ⑧ 協同組合等の貸倒引当金の特例〈一部〉(措法 57の9) 繰入限度額の上乗せ(12%) 単純延長 ⑨ くるみん認定企業の行動計画期間中の取得建 物等の割増償却(1年32%)(措法46の2) 縮減+一部拡充(対象資産を計画記 載資産に限定し、償却率を引下げ。一 部、3年割増償却化) ⑩ 障害者就労支援事業所との取引が増加した企 業の資産の割増償却(1年30%)(旧措法46の2) 廃止 ⑪ 生活衛生同業組合の共同利用施設の特別償却 (6%)(措法44の3) 縮減・延長(取得価額要件の設定) ⑫ 医療機器等の特別償却(措法45の2) (高額機器12%・医療安全機器16%) 縮減・延長(医療安全機器分は廃止) ⑬ 特定地域における機械等の特別償却(措法45) 全体として縮減+一部拡充 半島、離島、奄美群島〔単純延長〕(割増償却(5年32%(建物等48%))) 過疎地域(特別償却(10%(建物等6%))) 〔単純延長〕 振興山村(特別償却(10%(建物等6%))) 〔縮減+拡充〕(対象者を中小企業に 限定等。5年割増償却化) ⑭ 特定再開発建築物等の割増償却(5年)(措法 47の2) 全体として縮減(一部廃止) 都市再生事業関係(40%・50%) 〔縮減・延長〕(償却率の引下げ) 市街地再開発事業関係(10%) 〔廃止〕 雨水利用施設(10%) 〔縮減・延長〕(対象地域・施設の限定) 中心市街地活性化事業関係(10%) 〔単純延長〕 ⑮ 関西文化学術研究都市の研究施設の特別償却 (12%(建物等6%))(措法44) 縮減・延長(新増設に限定) ⑯ 特定資産の買換え特例(80%圧縮記帳)(措法 65の7①九) 〈一部〉 「所有10年超の土地・建物等」→「300㎡以上 の土地・建物・機械装置・鉄道車両等」 縮減・延長(買換え資産から機械装 置・コンテナ貨車を除外し、地方→大 都市への買換えは圧縮率を引下げ) ⑰ 船舶の特別償却(16%・18%)(措法43) 縮減・延長(規模・環境性能要件の強化) ⑱ 倉庫用建物の割増償却(5年10%)(措法48) 縮減・延長(規模要件の強化) ⑲ 特定農産加工品生産設備等の特別償却(措法 44の4) 〈一部〉 新用途米穀加工品等製造設備(30%) 廃止 ⑳ 農業経営基盤強化準備金(措法61の2) 縮減+一部拡充(対象となる交付 金・法人を限定。対象資産を追加) ㉑特定信頼性向上設備等の特別償却〈一部〉(措 法44の5) 東京圏以外に立地し、専ら東京圏のデータセ ンターのバックアップを行う設備(15%) 縮減・延長(償却率の引下げ) (出典:財務省「資料(法人税改革)」(一部加工))

【3】 貸倒引当金の特例の簡便法適用時の基準年度の見直し

中小企業等の貸倒引当金の特例について、実質的に債権とみられない金額の計算について基準年度実績による簡便法を用いる場合の基準年度が平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度に見直されました(措令33の7③)。所得税も同様に措置されました。

 

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