はじめに
しかしながら、与野党がそれぞれ一院の多数を占めるという政治状況にあり、平成20年度において、税体系の抜本的改革を実現させることはなかなか困難です。そこで、平成20年度税制改正においては、税体系の抜本的改革に向けた橋渡しとして、これまでの構造改革の過程で生じた諸問題への対応に重点が置かれました。
具体的には、耐用年数の大幅簡素化や研究開発税制等の拡充といった国際的競争力強化策を講ずることに加え、構造改革の進展に伴って生じつつあった負の側面にも十分配意し、国民一人ひとりの目線に重点を置いた税制上の対応が図られることとされました。
喫緊の政治課題である地域間の税源偏在の是正に早急に対応するため、消費税を含む税体系の抜本的な改革が行われるまでの間の暫定措置として、法人事業税の一部を分離し、地方法人特別税及び地方法人特別譲与税が創設されました。一方、中小企業向けの大胆な活性化策と事業承継策の創設など、地域・地場経済の再生を目指すこととされています。更に、個人投資家のリスク負担に配慮した損益通算措置の導入など金融所得課税の一体化に向けた措置が採られるほか、次代を担う起業家のチャレンジ精神を後押しする思い切った支援策等も講じられることとされました。
また、民による自発的な公益活動を支えるべく、寄附金税制の抜本的な見直しと併せて、明治以来の公益法人制度改革に相応しい税制の構築を行うとともに、住宅の省エネ改修促進税制の創設や環境問題への対応や暮らしの中での安心・安全に対する配慮等も行われました。
本冊子では、このような改正事項のほか、実務家や経営者などに関わりの深い税制改正事項を図式化等により分かり易くまとめました。実務家や経営者の皆様をはじめ税務関連の仕事に従事される方々のお役に立てれば幸いです。