〔小説〕
『東上野税務署の多楠と新田』
~税務調査官の思考法~
【第4話】
「追及」
税理士 堀内 章典
《前回までの主な登場人物》
◆多楠調査官
東上野税務署に入って2年目、今回初めて調査部門である法人課税第5部門に配属。
◆新田調査官
多楠の調査指導役、調査はできるが、なぜか多楠には冷たく当たる、近づきがたい先輩調査官。
◆田村統括官
法人課税第5部門の責任者である統括官、定年まであとわずか、小太りで好人物。
◆法人課税第5部門のメンバー
・三浦上席調査官(淡路の調査指導役)
・小泉調査官(調査経験4年目、寡黙な調査官)
・淡路調査官(多楠と同じ調査1年目の女性調査官)
◆森本鉄男
有限会社金杉商店の社長
◆尾崎税理士
有限会社金杉商店の顧問税理士
オーバーラップ
(前回までのあらすじ)
多楠と新田は森本鉄男が経営する有限会社金杉商店の調査に着手する。
業種は鋼材加工卸、12月決算、ここ5年間で売上は2倍で急成長、最終期は年商5億円、申告所得は毎年2,000万円前後という内容の会社である。
多楠は赤羽のスナック「かわばた」でビールを飲んでいる。
多楠の隣では、さっきまでカラオケを熱唱していた新田が、また黙って水割りを飲んでいる。
前回ここに来たのは異動直後だったから、2ヶ月ほど前。
京子ママの話では、新田はその間にもちょくちょく顔を出していたようだ。
(黙って酒を飲んでカラオケを歌うだけなら、何も僕を連れてくる必要はないだろうに・・・)
今日は9月20日。7月からスタートした調査事務も第一四半期がそろそろ終りというタイミングで、署長、副署長以下東上野署幹部を相手に「事案報告会」が行われた。
その報告が無事終了したことで、田村の発案で部門全体の「ご苦労さん会」が行われ、そのあと前回と同じように新田に誘われ、スナック「かわばた」に来たのだ。
今回事案報告をしたのは三浦上席チームと、新田調査官チームであった。三浦チームの報告事案はこの間から大騒ぎしていた仏具屋の売上除外1,000万円事案、結局不正計算もあったが、もともと帳簿がズサンで経費のもれが出てきて、プラスマイナスの不正所得200万円で終結していた。
一方、新田チームの事件は、例の金杉商店の不正事案。
不正所得で3,000万円は、東上野署でもそう多くはない大型不正事案に発展していた。
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