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【重要】会員2万人突破記念! 新連載開始キャンペーンのお知らせ

【重要】 会員2万人突破記念! 新連載開始キャンペーンのお知らせ 平素より株式会社プロフェッションネットワークのサービスをご愛用いただき、厚くお礼申し上げます。 既報のとおり、当社が運営しております税務・会計Web情報誌プロフェッションジャーナル(Profession Journal)はおかげさまで会員2万人を突破いたしました。 会員2万人突破に伴い、2025年10月1日(水)より、本誌掲載の連載第1回をすべて無料公開とさせていただいておりますが、今回これに続くキャンペーンの一環として、年明けより複数の新連載を順次開始してまいります。 以下、新連載の概要及び開始時期等をお知らせさせていただきますので、どうぞご期待ください。 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ※下記の新連載のタイトルをクリックすると詳細箇所に遷移します。   ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ※上記新連載の内容は随時更新し、今後も追加を予定しています。 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ 今後ともプロフェッションジャーナルをご愛読賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
#Profession Journal 編集部
2025/12/16
New お知らせ 会計 会計情報の速報解説 監査 税務・会計 速報解説一覧

《速報解説》 会計士協会、監基報570「継続企業」の改正に係る公開草案を公表~経営者による継続企業の評価期間の開始日を変更~

《速報解説》 会計士協会、監基報570「継続企業」の改正に係る公開草案を公表 ~経営者による継続企業の評価期間の開始日を変更~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月15日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書570「継続企業」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2025年4月9日に国際監査・保証基準審議会(The International Auditing and Assurance Standards Board :IAASB)から公表された、Internal Standard on Auditing(ISA)570 (Revised 2024), Going Concern に対応するものである。 公開草案は、現行のものから大幅な項目の追加・削除等が行われている。 意見募集期間は2026年1月15日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査人の手続の改正 主に次の改正が行われている。   Ⅲ 監査役等とのコミュニケーション 識別した継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況について、監査役等と適時にコミュニケーションを行わなければならず、監査役等とのコミュニケーションの内容が強化されている。   Ⅳ 監査報告書の記載事項など 監査報告書において、継続企業の前提に関する監査人の結論などを新たに記載する。 すべての企業の監査で要求される記載事項に加え、経営者の評価を監査人がどのように評価したかの説明などを新たに記載する。 経営者確認書に記載を求めるべき項目の拡充も行われている。   Ⅴ 適用時期等 2027年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。 (了)
#阿部 光成
2025/12/15
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プロフェッションジャーナル No.648が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年12月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.648を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/12/11
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第82回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第82回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   オ 暗号資産の分散性 暗号資産について、スーパータックスヘイブンとなる可能性を秘めているという見解を示したMarianは、「仲介役の金融機関の不存在」に着目していた(本連載第78回参照)。 通常の銀行取引では、必ず銀行や決済業者などの仲介者が関与し、その記録は中央のサーバーなどで管理される。しかし、ビットコインなどの暗号資産では、こうした中央の管理者や仲介者が存在しない取引が可能になる。 このような特徴は、「中央集権的に運用されるものではない」という意味における暗号資産の分散性と言い換えることができる。 暗号資産の文脈で「分散性」という語が使われる場合、主に次のような側面が含まれる。 このような分散性の要素は、伝統的な金融機関に依存しないエコシステムを構築する基盤として機能している。 特に、分散化された運営構造は、国家権力や特定企業による恣意的介入を回避しうる制度的枠組みとして理解されており、その意味では「政治的中立性」、「検閲耐性」といった制度的自律性の確保を志向した仕組みとも理解される。 暗号資産の分散性については、ノードの分布、コンセンサスメカニズムによる合意形成のあり方、意思決定権限の所在など種々の考慮要素を検討する必要がある。 参考として、FSB(金融安定理事会)は、金融サービスの分散化とは、伝統的に金融サービスの提供に関与してきた1つ以上の仲介機関や中央集権的なプロセスの排除又は役割縮小を指し、場合によっては伝統的な仲介業者からのリスクテイクの分散化を意味し、一般に、以下の3つの形態をとると説明している(FSB, DECENTRALISED FINANCIAL TECHNOLOGIES: REPORT ON FINANCIAL STABILITY, REGULATORY AND GOVERNANCE IMPLICATIONS 1-4(2019))。 このような分散性は、分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)に支えられている。 ここでいう「台帳」とは取引記録を管理する帳簿のようなもので、銀行では中央サーバーに保管されている。一方、ブロックチェーンなどの分散型台帳では、全ノードが同じ台帳を持ち、互いに検証し合う仕組みとなっている。 分散型台帳技術により、ノードは、信頼できるデータを得るために、中央集権的な機関に依存することなく、ネットワークのノード全体で一貫した状態変更又は更新を提案、検証、記録することが可能となる(FSB, DECENTRALISED FINANCIAL TECHNOLOGIES, at 26)。 このように、分散型台帳とは複数のノードに分散されたデータの集合体であり、その整合性は分散型台帳を通じて情報を記録する分散型台帳技術によって確保される。 より具体的には、次のような仕組み等で成り立っている。 このような構造により、分散型台帳は、単なるデータの分散保存ではなく、制度的権力の分散=ガバナンスの脱中心化を可能にする技術であると位置づけられている。 また、このような分散型台帳は、単一障害点の除去、改ざん耐性のほか、実行されたトランザクションやプログラムが公開されることからくる透明性や事後検証の容易さ(暗号資産の追跡可能性・透明性)という種々の利点を有するといわれる(デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会「中間論点整理」(2021)2-3頁)。 これらの点にこそ、暗号資産が金融インフラとしての信頼を得つつも、国家主導の課税・規制システムと構造的に緊張関係に立つゆえんがあるといえる。 ところで、暗号資産の取引については、次のような異なる潮流が観察されている。 多くの利用者は、本人確認を実施し、法定通貨との交換や使いやすいインターフェースを提供するCEXを利用している。これにより、当初の分散性とは裏腹に、中央集権的な仕組みが中核的な役割を果たすこととなった。 他方、暗号資産の利用者の一部は、手元の暗号資産を運用する際にDeFi(分散型金融)を利用している。 DeFiの台頭により、仲介機関を介さない金融取引の仕組みが現実化している。 DeFiとは、スマートコントラクトなどの技術を活用し、誰でも自由にアクセスできるパーミッションレス型のブロックチェーン上で構築された金融サービスである。 ネットワーク上でデータを記録し、共有する分散型技術の1つであるブロックチェーン技術に基づく分散型金融システムでは、仲介者や中央集権化されたプロセスの必要性を低減又は排除したピアツーピア、つまりコンピュータ同士が直接的につながり、データを送受信するネットワークモデルの金融取引が可能となる。 例えば、暗号資産に関わる貸付・借入・保険・資産運用などの金融取引を、銀行などの仲介なしに自動で実行する仕組みが提供されている(DeFiの意義及びDeFi取引の課税関係については、本連載第65回参照)。 つまり、このようなDeFiの出現は、暗号資産が単なる「価値移転手段」にとどまらず、制度的金融インフラの代替物として機能し得る段階に達しつつあることを意味する。その実現には分散性が不可欠な要素として組み込まれており、分散性は理念ではなく、制度技術の中核となっている。 もっとも、分散性が制度的優位性を意味するとは限らない。DeFiには、スマートコントラクトの脆弱性、プロトコル設計の瑕疵、ハッキングリスクなどの構造的課題が存在し、利用者保護や内部統制の不在といった問題も浮き彫りとなっている。 したがって、分散性=透明・公正・安全とは必ずしも直結しないという視点が必要である。 分散性が高まることによって規制回避が容易になり、同時に情報非対称性が拡大するという逆説も内包している。   (了)
#648(掲載号)
#泉 絢也
2025/12/11
New 消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第15回】「インボイス発行事業者である国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第15回】 「インボイス発行事業者である国外事業者から受けた 事業者向け電気通信利用役務の提供」   税理士 石川 幸恵   【Q】 国外の事業者にインターネットによる広告配信を依頼しました。この国外事業者は日本のインボイス発行事業者として登録を受けているので、日本に消費税の申告・納税を行っていると考えられます。 この場合、広告配信に係る消費税はその国外事業者が納め、当社はリバースチャージの対象とならないという理解でよろしいでしょうか。 なお、当社は当課税期間について簡易課税制度や2割特例の適用はなく、課税売上割合は95%未満です。 【A】 リバースチャージ方式による申告が必要です。 インターネットによる広告配信は、通常「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当し(詳しくは後述の「解説」参照)、リバースチャージ方式の対象となります。リバースチャージでは、サービスの受け手が納税義務者となります。 ここで、上記【Q】のケースのように、サービス提供者が日本に申告・納税している場合、「サービス提供者である国外事業者が、この広告配信についても課税売上げとして納税するのでは?」と感じられるかもしれません。 消費税法においては、課税資産の譲渡等を行った事業者が、その課税資産の譲渡等に係る申告・納税を行いますが、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、リバースチャージ方式によって国外事業者からその役務の提供を受けた事業者が「特定課税仕入れ」として、申告・納税を行います(リバースチャージQ&A問1)。 さらに、「事業者向け電気通信利用役務の提供」について、消費税法第2条第8の4項は次のように定義しています。 (※) 下線は筆者追記 ここでポイントとなるのは、「国外事業者が行う」ことのみが規定されており、「国外の免税事業者が行う」とは書かれていない点です。 そのため、サービス提供者が申告・納税を行う事業者であっても、リバースチャージ方式の対象となります。同時に、サービス提供者である国外事業者が消費税申告する場合も「事業者向け電気通信利用役務の提供」について、課税売上げに含める必要はありません。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 以下では、平成27年度に導入されたリバースチャージ方式の整理と、インボイス制度との関係について主なポイントを改めて確認する。   1 リバースチャージ方式による納税が必要かどうかの確認ポイント (1) 役務の性質又は取引条件等により、事業者向けか消費者向けかを判断 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等からその役務の提供が通常事業者に限られるものが「事業者向け」に該当する。 なお、EU諸国においてはサービスの受け手が課税事業者番号(VAT-ID)を有している場合、その取引はリバースチャージ方式の対象とされている。 一方、日本でリバースチャージ方式が導入された平成27年10月時点ではインボイス制度が存在しなかったこともあり、役務の性質又は取引条件等から「事業者向け」を定義して、リバースチャージ方式の対象とした。現在、日本にも登録番号制度が整備されたため、将来的に見直しが議論される可能性に留意されたい。 (2) 事業者向け電気通信利用役務の提供である旨の表示 国内において「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、当該役務の提供に際し、カタログ等の取引相手が容易に認識できる場所に、あらかじめ「当該役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税を納める義務がある旨」を表示する必要がある(消法62)。 ただし、表示がなかったとしても当該役務の提供が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものであれば、仕入れた事業者において消費税を納める義務が生じる(リバースチャージQ&A問20、21)。 (3) サービスの受け手がリバースチャージ方式による納税が必要となる事業者であるか 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合であっても、次の①又は②に該当する課税期間については、当分の間、リバースチャージ方式による申告は不要となる。同時に仕入税額控除も適用されない(リバースチャージQ&A問16)ので、会計処理上は不課税仕入れとして取り扱われる。   2 国外事業者によるインボイス発行事業者の登録申請 (1) インボイス発行事業者の登録申請 国外事業者もインボイス発行事業者の登録を受けることが可能である。ただし、消費税に関する税務代理の権限を有する税務代理人や納税管理人の届出等、国内事業者と異なる登録の要件があるので、注意が必要である。 なお、登録国外事業者制度はインボイス制度に移行したので、下記拙稿も参照されたい。 (2) 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた事業者における仕入税額控除の要件 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受け、リバースチャージ方式による納税が必要となる事業者は、その取引について仕入税額控除を受けることができる。 この場合、インボイスの保存は不要で、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで、仕入税額控除が可能である(インボイスQ&A問103-3)。   (了)
#648(掲載号)
#石川 幸恵
2025/12/11
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第72回】「複数の価格で行う外部株主からの株式集約」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第72回】 「複数の価格で行う外部株主からの株式集約」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、Y社の代表取締役を務めるCです。当社は、私を含む取締役4名と古参の従業員3名が、創業者(A氏の父)からY社株式を低廉な価格で譲り受ける形で非同族承継を行っており、7名で総株主の議決権の55%を保有しています。 先日の定時株主総会終了後、創業家株主のA氏から株式の買い取り要請を受けました。A氏は当社の筆頭株主ですが、会社経営には関与しておらず、総株主の議決権の25%しか株式を保有していません。役員・従業員が協力して55%の議決権を保有している私たち経営陣から見ると、A氏は少数株主であり、株式を買い取るとしても少数株主に見合った比較的低廉な対価しか支払いたくないと考えています。 当社は純資産が10億円、発行済株式総数10,000株(一株当たり純資産価額100,000円、配当還元価額1,000円)の会社ですので、A氏の純資産価額による持分は2億5,000万円になります。自己株式として取得することを想定しているため、A氏から「税引後の手残りを1億円にするために、2億円程度で買い取ってほしい」との要望を受けています。 顧問税理士に確認したところ、当社には議決権の30%以上を保有する「同族株主」がいないため、15%以上の議決権を有するA氏から自己株式を取得する場合は、純資産価額や類似業種比準価額を用いた原則的な評価方法により算定した価格で取引しないと、想定外の課税がなされてしまう可能性があるそうです。 また、個人間売買であれば税務上の評価額と売買金額の差額が贈与となるため、低廉な価格で取得してもA氏に課税関係が生じることはないようですが、各取締役の議決権割合が15%以上になると買主側に課税関係が生じてしまうため、取締役が株式を取得することは避けてほしい、とのアドバイスでした。 当社としては、最大限譲歩した場合でも1億5,000万円までしかお支払いできないと考えていますが、A氏からの要請に応じて2億5,000万円で自己株式を取得するしか方法がないのでしょうか。 〈図1〉Y社の株主構成 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ 1 「同族株主のいない会社」における株式集約 Y社は、総株主の議決権の30%以上を有する「同族株主のいない会社」に該当するため、15%以上の議決権を有するA氏は、純資産価額や類似業種比準価額により算定する「原則的な評価方法」により算出された価格が税務上の評価額となります(財産評価基本通達188ならびに〈図2〉参照)。 したがって、経営権を有していない株主であることや、高値で買い取りたくないことを理由に低廉な価格で自己株式取得を行ってしまうと、みなし譲渡課税(所法59①)など、A氏に想定外の課税関係が生じてしまう可能性があることに注意が必要です。 比較的低廉な価格で株式を取得することを望む場合には、税務上の評価額と取引価格との差額が買主に対する「みなし贈与」(相法7)となり、売主に想定外の課税関係が生じない個人間の取引とし、買主に「特例的な評価方法」である配当還元価額によることが可能な少数株主を用意することになります。従業員持株会などの少数・個人株主で株式を取得することができれば、発行会社の金銭的な負担を抑えることが可能です。 C氏を含む取締役がA氏から株式を取得し、株式取得後の議決権割合が15%以上になると、買主である取締役が原則的評価の対象となります。原則的評価による評価額と売買金額との差額が買主に対する「みなし贈与」(相法7)となるため、各取締役の議決権割合は15%未満に留めるべく自己株式として取得するのが現実的でしょう。ただし、Y社が自己株式を取得して総株主の議決権数が減少する場合など、株式取得後における各取締役の議決権割合には注意を要します。 〈図2〉株主の態様による評価方法の概要 (出所)「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)令和2年9月30日 国税庁資産課税課   2 複数の価格で行う株式集約スキーム A氏が保有する株式の全てを純資産価額、あるいは、小会社方式(純資産価額と類似業種比準価額の折衷法)による価額で取得することが難しい場合は、一部の株式は高めの価格で自己株式として取得し、残りの株式は比較的低廉な価格で株式を取得することが可能な相手を斡旋して株式を譲渡してもらうような、複数価格での株式買い取りスキームを受け入れてもらえないかを提案してみることをお勧めします。 株主への提案にあたっては、会社法上の買取義務が生じていない現時点においては、買主不在では株式を売却することができないこと。非上場株式の取引価格は一物一価ではなく、売主・買主の立場によりその価値が異なること。この2点を丁寧に説明したうえで、Y社が現実的に支出可能な範囲で自己株式を取得する意思があり、残りの株式については従業員持株会など比較的低廉な価格で株式を取得することが可能な安定株主に譲渡していただきたい旨を一つのパッケージとして提案すると、売主の理解が得られやすくなるでしょう。 低廉な価格で譲渡することに抵抗を感じにくい相手、具体的には、従業員持株会や公的機関である中小企業投資育成などを組み合わせることが売主の理解を得るためのポイントになります。 〈図3〉複数価格による買取提案の一例   3 結論 株式の売却を希望する株主が、「原則的な評価方法」により評価しなければならない株主であったとしても、必ずしも原則的な評価方法により算定した価格で売買しなければならない訳ではありません。 会社として支出できる金額の限度が1億5,000万円だと仮定した場合、一株当たり100,000円で取得することが可能な1,500株だけを自己株式として取得したのでは、ほぼ確実に、将来、残りの1,000株についても買い取りを求められることになります。したがって、高値での取得が難しい部分については、継続保有を求めるのではなく、配当還元価額など低廉な価格で取得することが可能な相手に譲渡してもらえるように、複数価格での取引を組み合わせてパッケージ化した株式買い取りスキームを提案することが必要でしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)
#648(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2025/12/11
New 相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔実務で差がつく!〕相続時精算課税制度Q&A 【第4回】「特定贈与者である父と母から贈与を受けたその年の中途で父が亡くなった場合の相続税及び贈与税の課税価格に加算される贈与財産の価額」

〔実務で差がつく!〕 相続時精算課税制度Q&A 【第4回】 「特定贈与者である父と母から贈与を受けたその年の中途で父が亡くなった場合の相続税及び贈与税の課税価格に加算される贈与財産の価額」   税理士 徳田 敏彦   【Q】 子Cは、令和7年2月に特定贈与者である父Aから現金2,000万円の贈与を受け、同じく特定贈与者である母Bから令和7年7月に株式200万円の贈与を受けた。 その後、令和7年8月に父Aが亡くなった。 子Cは過去に父A、母Bいずれからの贈与にも相続時精算課税制度を選択している。 この場合に、父に係る相続税の課税価格に加算する金額、母からの贈与に係る贈与税の課税価格に算入される金額はどのようになるのか。 【A】 父A、母Bからの贈与について贈与税の基礎控除額を按分し、その按分後の基礎控除額を控除した金額が相続税の課税価格に加算され、贈与税の課税価格に算入される。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 相続開始の年に被相続人父A(特定贈与者でもある)から贈与により取得した財産について、相続時精算課税制度を選択する場合には、贈与税の申告は不要である。 その代わりに、特定贈与者である父Aに係る相続税の計算において、特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を、相続税の課税価格に加算することになる。 父Aからの贈与にのみ相続時精算課税を選択しているのであれば、父Aからの贈与金額から相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除した金額を相続税の課税価格に加算すればよいが、父Aに相続が発生した年において、他の特定贈与者(本事例では母B)からも贈与を受けている場合には、相続時精算課税に係る基礎控除額をどのように取り扱うのか。 このような場合には、死亡した特定贈与者(父A)からの贈与により取得した財産の価額も贈与税の課税価格に含めて、父Aと母Bの相続時精算課税に係る基礎控除額を算出することになる。 ① 父Aの死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額 ② 母Bからの贈与に係る贈与税の課税価格に算入される金額   (了)
#648(掲載号)
#徳田 敏彦
2025/12/11
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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第85回】「オウブンシャホールディング事件 (地判平13.11.9、高判平16.1.28、最判平18.1.24)(その1)」~法人税法22条2項の「取引」の解釈~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第85回】 「オウブンシャホールディング事件 (地判平13.11.9、高判平16.1.28、最判平18.1.24)(その1)」 ~法人税法22条2項の「取引」の解釈~   税理士 中野 洋     1 はじめに 株式会社における新株発行手続きは、私法上の法律関係から見ると「発行法人」と「新株引受人」の「取引」である。しかしながら、一定の新株発行手続きには株主総会の決議を要するため、決議に参加する「既存株主」も間接的に取引に影響を与える。 本事案は、既存株主に株式価値の希釈化が生じる新株発行(有利発行による第三者割当増資。以下「非按分的有利発行増資」又は、文脈により「同増資」)が行われ、これによって生じた既存株主から新株引受人への「持分の移転」ないし「株式価値の移転」に対して、支配関係にもとづく「合意」を認定し、かかる合意が法人税法(以下、単に「法」)22条2項にいう「取引」に当たるとして、既存株主に課税した事案である。 事件当時の課税実務では、新株発行は発行法人と新株引受人間の取引という認識の下、非按分的有利発行増資が行われた場合には、新株引受人に受贈益課税が行われるが、既存株主には課税が行われないと考えられていた(※1)。しかしながら、新株引受人が外国法人である場合、わが国の既存株主が喪失した「持分」ないし「株式価値」については、日本で課税できないことになる。本事例では、既存株主と新株引受人間に事実上の「合意」を認定し、これを「取引」と解したが、裁判所のこのような判示には、批判的な意見が多数見受けられる。 (※1) 但し「株式の発行は、有利な条件による場合も資本等取引に該当するため、発行法人に対する無償譲渡(寄附金)課税はないと思われるが(22条5項)、非按分的な場合には、資本等取引と並行して損益取引(贈与)が認定される可能性はある」という見解がある。(岡村忠生『法人税法講義[第3版]』成文堂(平19)242頁。) 【図1】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※2) 【図1】は、太田洋・伊藤剛志『企業取引と税務否認の実務』大蔵財務協会(平27)334~335頁_に掲載のオウブンシャホールディング事件関係図を一部加筆等したもの 本件一連の取引の目的は、内国法人が保有する株式の含み益に対する課税を回避しつつ、株式の帳簿価額を時価に置換えることであった。その手段として、株式譲渡益非課税国において設立したグループ法人間の株式売買を通じて、その帳簿価額を時価に置換え、速やかに国内のグループ法人に時価で還流し、グループ外部に売却する、という手法が採用された。 近い将来、大幅な値上がりが見込まれる株式の譲渡益課税を回避しつつ、時価で売却するためのスキームである。   2 取引の概要   3 本件スキームについて 以下、【図1】に付した番号順に、納税者の節税若しくは租税回避の意図を簡潔に説明する。   4 課税処分の概要 X社は平成7年9月期の法人税について、所得金額を0円、納税額約2億6千万円余りとする確定申告書を提出したが、平成10年12月本郷税務署長(以下「Y」)は、X社が、時価を著しく下回る新株をB社に発行する株主総会決議をすることにより、X社が保有していたA社株式の資産価値を減少させ、その差額相当額を何らの対価も得ずにB社に移転させたものと認め、このような行為は営利を目的とする法人の行為としては不自然・不合理であり、法人税の負担を不当に減少させる行為であるとして、法132条を適用し、上記資産価値の移転をB社に対する寄附金と認め、X社に対し、課税所得金額を次のアのとおり約250億円、納付すべき税額を約96億円とする更正処分等をした。 ((その2)へ続く)
#648(掲載号)
#中野 洋
2025/12/11
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国際課税レポート 【第21回】「多国籍企業課税制度と課税ベース」~ワールドワイドvsテリトリアル~

国際課税レポート 【第21回】 「多国籍企業課税制度と課税ベース」 ~ワールドワイドvsテリトリアル~   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団上席フェロー   多国籍企業の課税制度(二重課税の排除措置)は、親会社所在国が子会社の所得を課税上どう扱うかという点をめぐって、次の2分法で語られてきた。 「ワールドワイド課税」:子会社の所得だが、親会社にとって未実現(まだ配当等されていないため)の所得の親会社段階(親会社居住地国)での合算課税+外国税額控除。 「テリトリアル課税」:親会社段階(親会社居住地国)での国外所得免除方式。 (注) いずれの方式でも、子会社所在国では子会社に源泉地国課税が行われる(軽課税とする場合もある)が、親会社所在国での国外所得の取扱いが異なる。 しかし、課税ベースの考え方、実体がある場合のカーブアウト、外国税額控除等の設計によって、現実の各国の制度におけるこれら制度の境界線には“でこぼこ”がある。 以下では、各国の具体的な制度として、米国のSubpart F、日本のタックスヘイブン対策税制(CFC税制)、OECD Pillar 2(IIR)、米国のGILTI及びその後継制度であるNCTI(いわば新GILTI税制)を取り上げ、これら多国籍企業課税ルールの設計について整理し、併せて、本年6月にG7が合意したPillar 2と米国制度の“共存” (※)の多国籍企業課税制度における本質を探ることとする。 (※) 詳しくは、本連載の【第18回】「G7共存システムの具体化とピラー2」参照。   各国の制度はワールドワイド“的”かテリトリアル“的”か 【表】 多国籍企業課税制度(予備的な整理) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出所)筆者作成。制度の評価については筆者による。 以上を整理すると、Subpart F・GILTI・NCTI・日本 CFC はいずれも「ワールドワイド課税を基調としつつ、どこまで源泉地国の実体所得を尊重するか」の度合いが異なる制度であり、Pillar 2はそのうえに国別実効税率テストとQDMTT/SBIEを重ねた、テリトリアル課税的な新しい合算ルールと評価することができる。   課税権の配分の基準 源泉地国の課税権をどう位置付けるかについて、最高裁平成21年10月29日判決(グラクソ事件)は次のように述べる(筆者による要約)。 特定外国子会社等であっても、独立企業としての実体を備え、その所在する国又は地域において事業活動を行うことにつき十分な経済合理性がある場合にまで上記の取扱いを及ぼすとすれば、当該内国法人の海外進出を不当に阻害するおそれがある。 判決は、タックスヘイブン対策税制(租税特別措置法66条の6)が海外進出を不当に阻害しないよう、経済合理性のある事業活動には適用除外(経済活動基準)を設けていることを強調している。GILTI の QBAI や Pillar 2のSBIEは、いずれも「有形資産や雇用といった実体に対応する正常利潤」を控除する点で、グラクソ事件判決のロジックと通底している。すなわち、 QBAIの10%のリターンは、生産拠点国の工場・設備に対応する所得を米国へのトップアップ(合算)から守るバッファとして機能していた。 Pillar 2の SBIE(資産×5%・給与×5%など)は、低税率国であっても実体投資に対応する部分については国別 GloBE 所得から除外するルールである。 これに対し、2025年の税制改正で米国が導入したNCTIにおけるQBAIの廃止は、こうした実体を伴う投資からの利益を細らせるための仕組みを削るものである。源泉地国での実体投資についても、米国居住地国課税の射程を広げる方向に働くという批判が一定程度成り立つ。日本の CFC 制度が グラクソ事件判決にあるように、経済活動基準による合算課税からの除外を維持していることとは対照的でもある。同じワールドワイド課税でも、源泉地国の実体をどこまで尊重するかで政策選択が分かれている。   G7共同声明と米国のPillar 2からの実質的カーブアウト 2025年6月のG7共同声明は、米国のGILTI/NCTIとPillar 2のIIRを並立させる“side-by-side” 方式を検討するという『共通理解(shared understanding)』を示している。米国のGILTI/NCTIを Pillar 2のIIRと「実質的に同等」とみなす方向性と言えるだろう。これは、米国については自国の制度を維持したまま、Pillar 2の追加的な負担を大きく回避する「政治的カーブアウト」と言えるだろう。 ここまでみてきたように、多国籍企業課税において、Pillar 2がテリトリアル課税的な方向に進んだ一方、米国の制度がワールドワイド課税を強化する方向に進んでいる。すなわち、真に共通のルールを作ると言いながら、実際には大国ごとに例外・特例が積み上がっていくという構図である。 国際課税の論壇で影響力を持つミシガン大学教授のAvi-Yonah教授は、2025年12月に東京で行った講演で、Substance carve-out(SBIE)の扱いについて「むしろ縮小し、より純粋なミニマム税に近づけるべきだ」といった指摘をしている。これは、SBIEを弱める方向、すなわち源泉地国の実体を伴う課税ベースの保護よりも居住地国のミニマム税を優先する方向であり、結果として Pillar 2をNCTI(新GILTI)の下での米国型のワールドワイド課税へ近づける提案と理解できる。 実際、「共存システム」(Side by Side)について、教授は、「OECDはSBIEを廃止すべきである。Pillar 2は米国のGILTIとBEATに着想を得ているのであるから、OECDはPillar 2を米国の制度・CAMT(大法人ミニマム税)やNCTIに寄せるべきだ」と指摘し、講演を締めくくっている。   日本CFCと源泉地国課税権との調整 では、日本はどうか。日本の CFC はエンティティ・アプローチであり、ある意味、米国のSubpart F(タックスヘイブン対策税制)+ NCTI(新CFC税制)同様のワールドワイド課税である。 一方、グラクソ事件判決が指摘したように、経済活動基準を通じて源泉地国課税を尊重している。源泉地国における日本多国籍企業の実体を伴う投資に対するリターンの除外(経済活動基準による除外)を縮小する方向性は、日本のCFC税制の基本的考え方に抵触するかもしれない。 G7声明にある共存システムをOECDがどのように受け入れるのかについては、2025年末までに Inclusive Frameworkで議論が本格化すると報じられており、近々何らかの方針が示される可能性がある。 ワールドワイド課税を強化しつつ、源泉地国における実体を伴う投資をどのように扱うべきかという問題は、CFCの留保利益の国内還流をいかにして促すかという重要な政策テーマとも関係している。 実は、思ったより大きな国際課税の潮流の変化につながるかもしれない。こうした動きを横目に、日本としての立場を検討しておくべきだろう。   (了)
#648(掲載号)
#岡 直樹
2025/12/11
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〈注記事項から見えた〉減損の深層 【第16回】「インドのイースト(酵母)事業が減損に至った経緯」-インフレ鈍化との関係-

〈注記事項から見えた〉 減損の深層 【第16回】 「インドのイースト(酵母)事業が減損に至った経緯」 -インフレ鈍化との関係-   公認会計士 石王丸 周夫   〈はじめに〉 今回は、インドにおいて、主としてパン酵母(イースト)を製造、販売している事業での減損損失計上事例を取り上げます。 製粉業界の最大手として知られるこの会社は、2017年7月に、子会社を通じてインドにイースト工場を建設することを決定しました。その後、2022年8月に当該工場が稼働開始しましたが、2026年3月期中間(第2四半期)に至って、インドイースト事業の固定資産について減損損失を計上しています。稼働から丸3年経過した時点での減損です。 さっそく、事例を見ていきましょう。   〈今回の注記事例〉 (出所:半期報告書) (※) 下線は筆者 上記事例のとおり、この会社は、2026年3月期中間にインドイースト事業に係る固定資産について、8,721百万円の減損損失を計上しています。減損損失を認識するに至った経緯も記載されており、上記事例の下線部のとおり、製造コストの高止まりと価格転嫁の遅れが原因です。 製造コストの高止まりについては、ウクライナ危機等を背景とした原材料や燃料関連相場の高止まりと説明されており、また、価格転嫁の遅れについては、競争の激化であると説明されています。 このように、製造原価の増分を販売価格に上乗せできなければ、利益が減少します。その結果、収益性が低下するので、その事業に係る固定資産について収益性の低下を反映させる措置、減損処理を行ったというのが本事例です。   〈前期末時点ではどうだったか〉 概要は以上のとおりですが、前期以前においてはどのような状況だったのかという点も気になります。 製造コスト高止まりの端緒になったとみられるウクライナ危機は2022年から始まっており、その影響はじわじわと進行していたはずです。そうであるならば、本事例の半年前の前期末時点においても、減損処理の要否を慎重に検討したはずだと考えられます。 そこで、前期の有価証券報告書に記載されている「重要な会計上の見積り」の注記を参照してみます。この注記では、次年度以降に減損損失が発生する可能性のある固定資産について言及されることがあります。 実際、本事例の会社の前期有価証券報告書(2025年3月期)にも次のような注記が記載されていました。 (出所:有価証券報告書) (※) 下線は筆者 「重要な会計上の見積り」として、Oriental Yeast India Pvt. Ltd.という連結子会社の有形固定資産について言及しています。この会社は、本注記を読めばわかるとおり、今回の減損事例の対象であるインドにおけるイースト事業を行っています。 上記注記の「1.当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額」にあるように、2025年3月期末時点における当該事業の有形固定資産の帳簿価額は10,590百万円でした。半年分の減価償却を無視するとして、このうち8,721百万円を2026年3月期中間において減損処理したと解されるので、その理解であっているのであれば、帳簿価額の約8割を損失処理したことになります。 そして、2025年3月期においてはどのような状況だったのかというと、「重要な会計上の見積り」の下線部のとおり、回収可能価額が帳簿価額を上回るため、減損損失を認識していません。その半年後に、回収可能価額が帳簿価額の約2割まで減ってしまうことになるのですが、この時点では回収可能額が帳簿価額を上回っていたのです。 このことを考慮すると、本事例の減損処理については少々唐突な印象を受けますが、何があったのでしょうか。   〈事業計画の変更〉 前期末以降の半年の間に何が起こったのか。そのあたりを確認しておきたいですね。 そこで、この会社の他の開示書類を当たってみました。 すると、2025年10月30日付で、「インドイースト事業における減損損失の計上及び2026 年3月期第2四半期( 中間期) の連結業績予想と実績値の差異並びに通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」という資料が見つかりました。 その資料には、インドイースト事業について、現在の事業計画を検証し、新たな事業計画を策定したとあります。当初の事業計画から大きく乖離したようで、事業計画を下方修正したとのことです。 2026年3月期中間で減損を実施した理由はこれです。 2025年3月期時点においても、インドイースト事業を取り巻く経営環境は厳しいものだったと思われますが、その時点での事業計画を前提とした減損の判定では減損実施に至らなかったということなのでしょう。   〈インフレの鈍化〉 では、なぜここにきて減損実施に至るほどの事業計画の下方修正となったのでしょうか。 この点については、経営判断の問題であり、外部からは知り得ません。 ただし、その背景の1つとして、インドのインフレ率に着目すると、2025年において顕著な変化が起きていることがわかります。 〔図表1〕に、直近4年間のインドのインフレ率をグラフに示してみました。 〔図表1〕インドのインフレ率の推移 (出所:「CONSUMER PRICE INDEX NUMBERS ON BASE 2012=100 FOR RURAL,URBAN AND COMBINED FOR THE MONTH OF AUGUST, 2025」を参照し筆者作成) 〔図表1〕をみると、2025年のインフレ率が明らかにその前3年間より低下していることがわかります。インフレが鈍化しているのです。 一般論からいえば、インフレが鈍化すると値上げを実施しにくくなります。前年と比べて物価の上がり方が緩和されてきたなかで、価格を引き上げることは、取引先(買い手)の理解を得にくいからです。 その一方、インフレが鈍化したといっても、物価が下がったわけではありません。これまで上昇してきた物価が高止まりしているのです。このことは、〔図表2〕の消費者物価指数の推移をみるとわかります。 〔図表2〕インドの消費者物価指数の推移 (出所:「CONSUMER PRICE INDEX NUMBERS ON BASE 2012=100 FOR RURAL,URBAN AND COMBINED FOR THE MONTH OF AUGUST, 2025」を参照し筆者作成) 〔図表2〕のとおり、2023年のグラフは2022年のグラフの上にあり、2024年のグラフは2023年のグラフの上にあり、2025年のグラフは2024年のグラフの上にあります。年々、物価が上昇して現在に至っていることがわかります。 上がり方は鈍化していますが、下がったわけではなく、高止まりしているのです。しかも、グラフの下に英文で記載されていますが、この消費者物価指数は2012年を100と置いたときの指数です。2025年では190を超えており、13年間で物価がほぼ2倍になっています。 この結果、一般論としては、製造コストが結構な水準で高止まりすると考えられます。 以上から、物価上昇が累積した結果、製造コストが高止まりしているなかで、インフレ率の鈍化により価格転嫁を言い出しにくい状況となっていることが推察されます。この状況が当面続くと考えるなら、それを前提とした事業計画を策定することになります。本事例の会社が事業計画を再検討した背景には、このような経営環境の変化があったといえるかもしれません。 (了)
#648(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/12/11
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