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《速報解説》総務省、ふるさと納税の指定基準の見直しを公表~返礼品の地場産品基準の明確化を行う~

《速報解説》 総務省、ふるさと納税の指定基準の見直しを公表 ~返礼品の地場産品基準の明確化を行う~   税理士 菅野 真美   令和7年6月24日に総務省は、ふるさと納税の指定基準等の見直しを公表した。今回は、この見直しに関連したことを以下で記載する。   1 ふるさと納税 ふるさと納税は、地方団体に寄付した金額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで所得税の寄付金控除や住民税の税額控除のメリットを受けることができる制度である。さらに寄付を受け入れた地方団体によっては返礼品が納税者に送られる場合もある。 この制度を活用すると、居住地以外の地方団体に納税者の寄付を通じて資金を移転することができ、住民税が一定の地方団体に集中することを緩和することができる。さらに返礼品の製造等を通じて地方経済の活性化にも資する。   2 ふるさと納税の変遷 当初は、返礼品もなく利用者数も少なかったが、2015年度の税制改正により税額控除の上限が拡大され、確定申告をせずにワンストップ特例で税メリットを受けることができたこと、さらに魅力的な返礼品を受け取れることから利用者数が激増した。 より多くの寄付を集めるために地方団体が返礼品の返礼割合を高く設定し、地域性のない返礼品を送付するなど、ふるさと納税の趣旨と異なる形で制度が拡大された。このことに懸念をもった総務省は、2019年度の税制改正により指定制度を設け、住民税の税額控除を受けるためには地方団体が指定基準をクリアしなければならなくなった。指定制度により、返礼品を送付する場合は、返礼割合が3割以下、返礼品を地場産品にすることとなった。 しかし、その後も指定制度の趣旨からかけ離れた返礼品の送付等が後を絶たないことから見直しが行われ、例えば、2025年10月からは、ふるさと納税へのポイント付与が全面的に禁止となる。 (出典) 総務省ホームページ「ふるさと納税の指定基準の見直し(令和6年6月28日の告示第203号)」   3 今回の見直しのポイント 地場産品基準の明確化 今回公表された見直しの1つに地場産品基準の明確化がある。返礼品は、地場産品である必要があるが、全ての製造工程が海外で、企画立案・販売のみその地方団体で行われるような事例があった。このことから、2026年10月以降、製造等を行う者が価値の半分が区域内で生じたことを証明し、返礼品提供開始日までに地方団体が公表することになる(総務省告示第220号)。   4 今回の見直しの影響 地場産品基準の明確化は、ふるさと納税の指定制度の趣旨に沿うものであるが、ふるさと納税ビジネスに参入した業者等にとっては厳しい見直しかもしれない。ふるさと納税の受入額が令和5年度で約1兆1,175億円まで伸びたことは、寄付者が節税して少ないコストで返礼品がもらえるメリットだけでなく、このビジネスから受ける収益を目指して多様な業者が参入したことも大きな要因である。純粋な地域産品の返礼品に特化すると、ふるさと納税ビジネスはどのくらいの規模で落ち着くのだろうか。 疾走する制度をあるべき姿に変えていくためには、行政側の絶妙な匙加減が不可欠だ。今後、さらなる返礼率の引き下げを行うのか、返礼割合3割は維持するのか引き続き注視したい。 (了)
#菅野 真美
2025/07/01
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令和7年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和7年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和7年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/06/30
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令和6年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和6年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和6年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/06/30
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《速報解説》 会計士協会、「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」を公表~収益や資産に関する補助金等に係る実務上の課題等に言及~

《速報解説》 会計士協会、「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」を公表 ~収益や資産に関する補助金等に係る実務上の課題等に言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年6月26日、日本公認会計士協会は、「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」(会計制度委員会研究報告第18号)を公表した。 これにより、2025年2月19日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、補助金等に関する会計処理及び開示について研究したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 我が国には、現時点においては補助金等に関する会計基準は存在しておらず、補助金等に係る会計処理及び開示について、様々な実務が行われていることが想定されるとのことである。 研究報告は、①収益に関する補助金等、②資産に関する補助金等(圧縮記帳に関する会計処理を除く)、③資産に関する補助金等(圧縮記帳)について記載している。 以下では、主として、収益に関する補助金等について述べるが、研究報告は圧縮記帳や他の補助金等の会計処理についても詳細に検討している。 1 会計処理 我が国においては補助金等の認識に関する会計基準は存在しない。 このため、「企業会計原則」などの定めを参考に、補助金等の交付額確定通知の受領時や付帯条件を満たした時点等、具体的にどの時点で企業が計上すべきかについて、事実と状況に応じて判断することになると考えられる。 なお、補助金等の交付に付帯条件が付された場合には当該条件を満たしているか、満たす可能性が確実かどうかの検討が必要となると考えられる。 2 表示 原則として、事業対象に係る費用と補助金等を純額処理することはなく、補助金等は営業外収益に計上することになると考えられる。 3 実務上の課題 研究開発助成金について、原則として、研究開発費と助成金を純額処理することはなく、助成金は営業外収益に計上することになると考えられるとしている(純額処理した場合には追加情報の開示)。 雇用調整助成金について、政府は、雇用を維持する企業(事業主)に対して雇用の安定を図るために雇用調整助成金を支給するものであり、政府が従業員に対して支給することを目的として企業(事業主)に支給するものではないため、雇用調整助成金が支給される場合、人件費のマイナスではなく、営業外収益として表示することが考えられるとしている(純額処理した場合には追加情報の開示)。 収益に関する補助金等の会計処理及び損益計算書上の表示は企業により異なる可能性があり、その場合、これらに関する企業の判断による比較可能性の低下をもたらすことになるとし、これらに関する考え方を開示により明確にすることが期待されるとしている。 4 会計方針 補助金等の会計処理は会計事象等に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に該当すると考えられ、重要性がある場合には重要な会計方針として注記することが考えられるとしている(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)4-2項等)。 (了)
#阿部 光成
2025/06/30
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《速報解説》 IESBAのタックス・プランニング業務の倫理規程改訂を受け、JICPAが定期総会に付議予定の「倫理規則」の改正案を公表

《速報解説》 IESBAのタックス・プランニング業務の倫理規程改訂を受け、 JICPAが定期総会に付議予定の「倫理規則」の改正案を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年6月26日、日本公認会計士協会は、2025年7月23日開催の日本公認会計士協会の定期総会に付議する予定の倫理規則の改正案を公表した。 2024年11月20日に、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っていた。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表している。 倫理規則については、改正に当たって、定期総会での承認が必要となるので、今般公表する倫理規則は定期総会に付議する予定の改正規定案であり、2025年7月23日開催の定期総会の承認後に確定することになる。 これは、国際会計士倫理基準審議会(The International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)がタックス・プランニング業務及び関連業務に関して倫理規程を改訂したことを受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 タックス・プランニング業務は、所属する組織/依頼人が実務を税効率の高い方法で計画又は構築することを支援する目的で行う助言業務である(280.5 A1/380.5 A1)。 我が国では公認会計士が税理士登録をすることによって税務業務を行うことができるため、タックス・プランニング業務を行う税理士資格を持つ公認会計士に対して一定の規律を示すことが社会的にも期待されている。 日本公認会計士協会の会員が行うタックス・プランニング業務は、税額の最小化を図る特定の対策を伴う可能性があり、基本原則の遵守に対する阻害要因が生じる可能性がある(280.4 A2/380.4 A2)。 このため、倫理規則において、所属する組織に対するタックス・プランニング業務及び関連業務(セクション280)と依頼人に対するタックス・プランニング業務及び関連業務(セクション380)に関する規定を設ける。 依頼人に対するタックス・プランニング業務及び関連業務を提供する会員としては、主に税理士としての資格に基づいてタックス・プランニングに関する提言又は助言を第三者に提供する会員を想定している。 タックス・プランニング業務は、幅広いトピック又は分野を対象としている。例えば、次のものが含まれる(280.5 A2/380.5 A2)。 関連業務は、依頼人又は第三者が作成したタックス・プランニングに基づく、又は当該タックス・プランニングに関係する業務である(280.6 A1/380.6 A1)。 例えば、タックス・プランニングに関する税務当局との訴訟等を解決するために、所属する組織/依頼人を支援することがあげられる(280.6 A2/380.6 A2)。 なお、所属する組織/依頼人の税務関連の法令等に基づく税務申告書の作成、申告、報告、納税及びその他の義務の履行を支援する業務は、タックス・プランニング業務には含まれない(280.5 A3/380.5 A3)。 会員は、タックス・プランニングについて法令等に照らして信頼できる根拠(Credible Basis)があると判断できなければ、当該タックス・プランニングについて所属する組織/依頼人に提言又は助言をしてはならない(R280.12/R380.12)。 また、会員は、タックス・プランニングに信頼できる根拠があると判断することに加え、職業的専門家としての判断を行使し、利害関係者の当該タックス・プランニングに対する見方次第で生じる可能性がある風評、ビジネス上の影響及びより広範な経済的影響について検討しなければならない(R280.14/ R380.14)。   Ⅲ 適用時期等 2026年4月1日から施行し、施行日以後開始するタックス・プランニング業務に適用する。 なお、会員の判断において早期適用することを妨げるものではない。 (了)
#阿部 光成
2025/06/30
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《速報解説》金融庁が過大支払利子税制に関する照会文書を公表~「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の意義について確認~

《速報解説》 金融庁が過大支払利子税制に関する照会文書を公表 ~「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の意義について確認~   公認会計士・税理士 霞 晴久     1 はじめに 金融庁は、過大支払利子税制に関し、制度の趣旨目的等を財務省主税局に確認しつつ、負債の利子に準ずるものとして政令で定める「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」の意義について国税庁に照会したところ、「貴見のとおりで差し支えない。」との回答を得たとして、6月24日、その旨公表した。   2 問題の所在 過大支払利子税制は、「関連者間において所得金額に比して過大な利子を支払うことを通じた租税回避を防止し、わが国の課税ベースの侵食を防止する」(※1)ことを目的として平成24年に創設された。 その後、OECD/G20のBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクト行動4の最終報告書(以下「報告書」という。)を踏まえ、令和元年の税制改正では、「日本の過大支払利子税制は、基本的にBEPSプロジェクトの最終報告書の勧告と同様の考え方に基づくもの」(※2)であることを前提に、この改正を通じて「通常の経済活動に与える影響に配慮しつつ、より的確にBEPSリスクに対応できるよう、勧告を踏まえた見直しが行われ」(※3)たものとされ、「制限対象となる支払利子の範囲が狭い等の相違」(※4)を解消するため、第三者への支払利子も本制度の対象とされた。 (※1) 財務省「平成24年度税制改正の解説」508頁 (※2) 財務省「令和元年度税制改正の解説」565頁 (※3) 同上 (※4) 同上 しかしながら、令和元年度の税制改正においては、租税特別措置法施行令第39条の13の2第2項に規定する「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」については特に見直されなかったことから、この文言については、基本的に報告書の勧告を踏まえたものと理解することが適当ではないかという問題が提起された。   3 照会事項 (1) 「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」に該当する金融取引の意義 報告書では、企業の借入に関連する金融派生商品又はヘッジ手段に基づく、みなし利子額が利子控除制限ルールの適用対象に含まれるべきとされ(報告書2章パラ36)、また、借入に関連しない金融派生商品又はヘッジ手段に基づく金額(例えば商品デリバティブ)は利子控除制限ルールの適用対象に含まれるべきではないとされている(報告書2章パラ39)ことから、わが国の過大支払利子税制においては、取引全体の目的や性質から見て金融派生商品取引やヘッジ手段に係る「みなし利子額」と「借入」という企業の資金調達との関係が経済的に密接である場合に、当該支払われる「みなし利子額」が、「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」に該当するものと考えられる。 なお、「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」に該当するか否かは、判断の対象となる取引の経済的な性質に着目して判定されるのであり、一連の取引全体を俯瞰したうえで、判断の対象となる取引が実質として資金調達との間で経済的に密接な関係を有するものか否かの検討が必要である。 (2) 具体的な例示と留意事項   4 国税庁によるコメント 租税特別措置法通達66の5の2-5において、私法上の利子ではない調整差金について、その経済的実質に鑑みて、その調整差金を「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」に含めるとしているが、これは上記の考え方と整合するものと理解できる。 (了)
#霞 晴久
2025/06/30
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令和8年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和8年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和8年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/06/30
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プロフェッションジャーナル No.624が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年6月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.624を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/06/26
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第50回】「実質所得者課税の原則に関する費用収益対応の原則の意義」-逆パターン養老保険事件・最判平成24年1月13日民集66巻1号1頁のもう1つの意義-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第50回】 「実質所得者課税の原則に関する費用収益対応の原則の意義」 -逆パターン養老保険事件・最判平成24年1月13日民集66巻1号1頁のもう1つの意義-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回は、所得税法における一時所得の金額の計算上一時所得に係る総収入金額から控除する「その収入を得るために支出した金額」(34条2項)の意義が争われたいわゆる逆パターン養老保険事件を取り上げ裁判所の判断を検討する。 本件では、第一審・福岡地判平成 21年1月27日判タ1304号179頁(民集6巻1号 30頁参照。以下「本件福岡地判」という)及び控訴審・福岡高判平成21年7月29日税資259号順号11251(民集 66巻1号64頁参照。以下「本件福岡高判」という)と上告審・最判 24年1月13日民集66巻1号1頁(以下「本件最判」という)とが結論だけでなく理由の点でも鋭く対立した。まず、本件の事案の概要をみておこう。 本件は、納税者X(原告・被控訴人・被上告人)らが代表取締役等として経営していた訴外株式会社等(以下「本件会社等」という)が契約者となり締結した養老保険契約に基づきXらが受け取った満期保険金及び割増保険金(以下「本件保険金等」という)に対する所得税の課税事案である。 養老保険契約とは、一般に、「生存保険と定期保険を組み合わせた典型的な生死混合保険」(山下友信=米山高生編『保険法解説―生命保険・傷害疾病定額保険』(有斐閣・2010年)60頁)をいい、「一定の保険期間中に死亡した場合、あるいは高度障害状態になった場合には死亡保険金あるいは高度障害保険金が支払われ、当該保険期間の満了時に生存していた場合には生存保険金が支払われる。生存保険金は保険期間の満了時(満期時)に生存していた場合に支払われることからとくに満期保険金と呼ばれる。死亡保険金・高度障害保険金と満期保険金の金額は同額である。死亡保障が上乗せされている場合には『定期付養老保険』となる。」(同頁)と解説されている。 本件における複数の養老保険契約(以下「本件各契約」という)は、福利厚生目的で全従業員を被保険者とし死亡保険金の受取人を従業員の遺族、満期保険金の受取人を契約者である法人とするいわゆるハーフタックスプランによる契約ではなく、死亡保険金の受取人を契約者である本件会社等、満期保険金の受取人をXらとするいわゆる逆ハーフタックスプランによる契約(逆パターン養老保険契約)であるが(袁雪婷「判批」法学論叢 180巻3号(2016年)135頁、147-148頁注⑥参照)、本件会社等はその保険料(以下「本件保険料」という)を支払うに当たって、その2分の1の部分についてはXらに対する貸付金として経理処理をし(以下「本件貸付金経理部分」という)実質的にXらが負担した扱いとされ(後にXらは本件保険金等を受領した際に本件貸付金経理部分に相当する金額を返済した)、その余の部分については本件会社等において損金経理をしていた(以下「本件保険料経理部分」という)。 Xらは、本件保険金等の金額を一時所得に係る総収入金額に算入した上で、本件保険料の全額が「その収入を得るために支出した金額」(所税34条2項)に該当するとして、これを一時所得の金額の計算上控除して確定申告書を提出したところ、各所轄税務署長は、本件保険料のうち本件保険料経理部分はこれに該当せず一時所得の金額の計算上控除することができないなどとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行った。これを不服として、Xらは不服申立てを経て本訴を提起した。 なお、本件と類似の事案(契約者が医療法人である事案)に関する裁判所の判断として最判平成24年1月16日判時2149号58頁がある。   Ⅱ 「その収入を得るために支出した金額」の解釈 1 問題の所在 本件が特に注目を集めたのは、「その収入を得るために支出した金額」(所税34条2項)という文言について「法律から導かれる解釈と政令における文理との間に不整合の疑いが生じたため」(藤谷俊之「判批」行政判例研究会編『平成24年行政関係判例解説』(ぎょうせい・2014年)119頁、127頁)である。 すなわち、所得税法34条2項は「その収入を得るために支出した金額」を一時所得の金額の計算上控除する旨を定めており本件当時も同様であったが、同法施行令(平成23年6月30 日政令第195号による改正前のもの)183条2項2号は、「生命保険契約等に基づく一時金」に係る一時所得の金額の計算上「当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金」の「総額」を「支出した金額」に算入する旨を定め、この規定に関する所得税基本通達(平成24年2月10 日改正前のもの)34-4は、上記の「総額」には、「その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額」も含まれる旨を規定していたことから、前記の引用文にいう「不整合の疑い」が生じたのである。 2 裁判所の解釈 本件福岡地判は、まず、前記1の「問題の所在」で取り上げた所得税法34条2項、同法施行令183条2項2号及び所得税基本通達34-4の各規定について次のとおり判示した。 その上で、次のとおり判示し(下線筆者)、「その収入を得るために支出した金額」には「所得者以外の者が負担した保険料等」が含まれると判断した。 本件福岡高判も基本的には本件福岡地判の判決理由を引用し、これと同じく法令の文言を重視する見地から「その収入を得るために支出した金額」を解釈する旨を述べ、これに加えて次のとおり判示した(下線筆者)。 本件福岡高判については、後でみる本件最判と比較すると、次のとおり判示して「所得税法における所得の本来的意義」の見地からの国側の主張を認めなかった点も注目される。 これに対して、本件最判は、次のとおり判示して(下線【A】【B】【C】筆者)、「その収入を得るために支出した金額」は「当該収入を得た個人において自ら負担して支出したもの」に限られると判断した。 なお、本件最判は、所得税法施行令183条2項2号及び所得税基本通達34-4についても、次のとおり、所得税法34条2項に関する「以上の理解と整合的に解釈されるべきもの」と説示した。 この説示について、須藤正彦裁判官の補足意見(以下「須藤補足意見」という)は次のとおり述べている。 3 解釈のアプローチ及び方法の整理・検討 以上でみてきたように、本件福岡地判及び本件福岡高判と本件最判とでは、「その収入を得るために支出した金額」の解釈に関するアプローチの仕方に違いがあることは明らかである。この点について次の見解(高橋祐介「判批」ジュリスト1441号(2012年)8頁、9頁)は正鵠を射たものである。 この見解は、本件福岡高判を「いわば、法律よりも下位の規範である政令及び通達の文言によって、上位にある法律の解釈をしようとするもの」(藤谷・前掲「判批」124頁)、本件最判を「上位規範である所得税の趣旨から所得税法 34条2項が何を定めているか解釈し、下位規範である政令及び通達についてそれと整合的に解釈されるべきであるとした」(同頁)ものと位置づける見解と、解釈アプローチに関する理解の点では同じものと解される。 これらの見解を前提にして、本件最判が採用した解釈方法を検討すると、それは要するに「所得税法34条2項の趣旨と文言を踏まえつつ、上記の解釈を導いたもの」(小林宏司「判解」最判解民事篇(平成24年度(上))1頁、10頁)といえよう。 この点については、「本判決[=本件最判]が趣旨と文言に言及しているのは、いずれの点からも、判示の結論が根拠付けられることを示すものとも考えられる。」(小林・前掲「判解」10頁)と解説されているが、本件最判の前掲判示のうち「趣旨」は下線部【B】にいう「一時所得に係る収入を得た個人の担税力に応じた課税を図る趣旨」を意味し、「文言」は下線部【C】にいう「収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたもの」を意味するものと解される。 上記の「趣旨」は、所得税法が各種所得の金額の計算方法を定める趣旨、すなわち、下線部【A】にいう「個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨」から導き出されたものであり、後者の「趣旨」は純資産増加説に基づく担税力の観念(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【170】参照)を前提とする、所得課税法の体系を支える根本原則である担税力原則から導き出されたものであると解されることからすると、結局のところ、担税力原則の下位原則としての純所得課税の原則あるいは純額主義(同【311】参照)に基づく趣旨であると解される。 そうすると、本件最判が所得税法34条2項の「趣旨」と「文言」を踏まえて行った「解釈」は、所得税法の体系的解釈により「趣旨」を解明しその「趣旨」に照らして「文言」の規範的意味内容を確定する「客観的-目的論的解釈」(拙著『税法創造論』(清文社・2022年)183頁以下[初出・1998 年]参照)であるといえよう(前掲拙著『税法基本講義』【294】参照)。 「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではな[い]」と判示して文理解釈を原則とする厳格な解釈方法を確立したホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁(以下「平成22年最判」という。同判決について差し当たり佐藤英明「最高裁判例に見る租税法規の解釈手法」山本敬三=中川丈久編『法解釈の方法論―その諸相と展望』(有斐閣・2021年)341頁、347頁以下参照)も、「ホステス報酬に係る源泉徴収制度において基礎控除方式が採られた趣旨は、できる限り源泉所得税額に係る還付の手数を省くことにあったことが、立法担当者の説明等からうかがわれるところであ[る]」として基礎控除方式規定の「趣旨」に言及していることからすると、本件最判も「最判平成22年判決[=平成22年最判]と同様の解釈手法を採ったもの」(藤谷・前掲「判批」127頁)とみてよかろう。 ただ、平成22年最判と本件最判とでは「趣旨」に対するウェートの置き方・程度が異なるように思われる。前者は「期間」という明文の文言を解釈の対象としたのに対して、後者は「その収入を得るために支出した金額」という明文の文言を解釈の対象としながらも、その文言を「収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたもの」という不文の文言(立法者が明文の文言の「前提」とした文言)として理解した上でこれを解釈の対象としたものと解されるが、文理解釈の対象に関する両者のこのような捉え方の違いが、「趣旨」に対する両者のウェートの置き方・程度の違いに帰結したように思われる。 このことを法の解釈に関する下記の「富士山理論」(長尾龍一『法哲学入門』(講談社学術文庫・2007年)171-172頁。下線筆者。第4回Ⅲ3参照)によって整理すると、前記の平成22年最判は「期間」という文言を「頂上」(「法の言葉の中心的意味」)において解釈したのに対して、本件最判は「その収入を得るために支出した金額」という文言を「裾野」(「言葉の中心的意味から離れ」たところ)において解釈したものと整理することができるように思われる。 この整理によれば、本件最判が「趣旨」を「大きく考慮している」(占部裕典「判批」平成24年度重判解・ジュリスト1453号(2013年)206頁、207頁)のは、本件最判が「その収入を得るために支出した金額」という文言を「言葉の中心的意味から離れ」たところにおいて解釈した結果、その解釈結果の「実質的正当化」が強く要請されると判断したためであろう。もしかすると、そのような要請に適切に応えなければ、本件最判の「文理解釈」(占部・前掲「判批」207頁によれば「緩やかな文理解釈」)が、本件福岡高判により許容されないとされた「解釈の名の下に規定されていない要件を付加すること」といわば「紙一重」の微妙な解釈としてその妥当性が疑問視されるおそれがあることを考慮したからかもしれない。 また、そうであるからこそ、須藤補足意見は、「租税法の趣旨・目的に照らすなどして厳格に解釈し、そのことによって当該条項の意義が確定的に明らかにされるのであれば、その条項に従って課税要件の当てはめを行うことは、租税法律主義(課税要件明確主義)に何ら反するものではない。」と説示して、目的論的解釈が厳格な解釈であることを強調したのかもしれない。   Ⅲ 実質所得者課税の原則における費用収益対応の原則の意義 以上でみてきたように、本件最判は税法の解釈論上重要な意義を有するとはいえようが、本件最判にはもう1つ重要な意義があると考えられる。それは、今回の連載のタイトルである「実質所得者課税の原則に関する費用収益対応の原則の意義」を明らかにした点にあると考えるところである。 本件最判は、前記Ⅱの2でみたとおり、所得税法34条2項の解釈によって「その収入を得るために支出した金額」は「当該収入を得た個人において自ら負担して支出したもの」に限られるとの規範を定立したが、これに本件の事実関係を当てはめるに当たって、次のとおり判示して(下線筆者)、本件保険料のうち本件保険料経理部分については「その収入を得るために支出した金額」該当性を否定した。 以上の判示によれば、本件貸付金経理部分はXらが支払を受けるべき満期保険金の「原資」、本件保険料経理部分は本件会社等が支払を受けるべき死亡保険金の「原資」、とされているが、「原資」に関するこの区分を前提にして所得税法34条2項の適用を考えると、この規定は、本件最判がその「趣旨」として説示した純所得課税の原則(前記Ⅱ3参照)に基づき、「原資」(投下資本)に基因する収入から「原資」の回収部分を控除することを定める規定として、適用することになろう。このことを控除される金額の側から表現すれば、「その収入を得るために支出した金額」は、「収入を得るために必要な支出」という意味で広義の必要経費(前掲拙著『税法基本講義』【312】参照)であるといってもよかろう。 そうすると、本件最判の前記判示は、「原資」(投下資本)の回収部分を、「収入を得るために必要な支出」(広義の必要経費)として、「原資」に基因する収入と対応させてこれから控除するという考え方を示したものと解される。この考え方は、広義の費用収益対応の原則と呼ぶことができようが、資本主義経済を前提とする所得税に、これを支える土台として、組み込まれていると考えられる(前掲拙著『税法基本講義』【333】参照)。 以上を要するに、本件最判は、広義の費用収益対応の原則に基づき、本件保険料のうち本件貸付金経理部分についてのみ「その収入を得るために支出した金額」該当性を肯定し、本件保険料経理部分についてはこれを否定したと解されるのである。 ただ、費用収益対応の原則は、従来は、企業会計上は費用に関して(企業会計原則第2の1のC参照)、所得税法上は狭義の必要経費(37条1項)及び広義の必要経費に関して、計上時期ないし年度帰属を判定するルールとして論じられてきたが(前掲拙著『税法基本講義』【333】参照)、本件最判はこの原則を、「原資」を支出した者に収入が帰属するという意味で、所得の人的帰属の判定についても妥当し得る考え方として展開する解釈論の余地を切り開いたものとしても、重要な意義を有すると考えるところである(この点については、袁・前掲「判批」141頁以下が「人の原資」の概念について説くところも参照)。 そもそも、所得の人的帰属と所得の年度帰属とは所得課税上密接に関連する(前掲拙著『税法創造論』471-472頁[初出・2007 年]、前掲拙著『税法基本講義』【232】参照)。確かに、両者は課税要件法の体系上異なる領域(課税要件としての帰属と課税標準)に位置づけられるが、しかし、所得が「誰」に帰属するかの判定は、その者に「いつ」帰属するかの判定と相俟って初めて、課税要件としての納税義務者と課税物件との結びつきという意味での帰属の関係について、その存否の判定を完結的に可能にすることになるから、両者は所得課税上密接に関連するといえるのである。 費用収益対応の原則に基づく本件最判の解釈論は、とりわけ実質所得者課税の原則(所税12条、法税11条)の解釈適用において重要な意義を有する。実質所得者課税の原則は「収益」という文言だけを用いて規定されているが、その規定においては、それに対応する「費用」も「これ[=収益]を享受する者」に帰属することが前提とされていると解される(前掲拙著『税法基本講義』【235】参照)。そうすると、本件最判は実質所得者課税の原則と費用収益対応の原則を結合して、「同項の『その収入を得るために支出した金額』という文言も、収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたものというべきである。」(前掲判示の下線部【C】)と判示したものであるという理解も成り立ち得るように思われるのである。   Ⅳ おわりに 本件最判が「所得税法34条2項を具体的な題材としつつ租税法規の解釈の在り方を示したもの」(小林・前掲「判解」13頁)として重要な意義を有することは大方の認めるところであろうが、今回は、本件最判のもう1つの意義として、「実質所得者課税の原則に関する費用収益対応の原則の意義」を明らかにした点をも取り上げ検討した。 前記Ⅲの最後に述べたように、所得税法34条2項の解釈適用上(担税力原則及びこれに基づく純所得課税の原則から導き出される)費用収益対応の原則を実質所得者課税の原則と結合すると、「同項の『その収入を得るために支出した金額』という文言も、収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたものというべきである。」(本件最判の前掲判示の下線部【C】)といえようが、この点について、須藤補足意見は、「同条項で、収入を得た者と支出をした者が同一でなければならないとの前提が採られているという点は、一般的な常識に合致するものであろう」(下線筆者)と述べている。 ここで須藤補足意見が「一般的な常識」を援用したのは、本件福岡高判により許容されないとされた「解釈の名の下に規定されていない要件を付加すること」といわば「紙一重」の微妙な解釈を、「趣旨」による実質的正当化に加えて、補強するためであったかもしれない。ただ、そのこと自体は一般論として妥当であるとしても、そういえるのは「一般的な常識」が税法の明示的な要件に反しない限りにおいてである。この点については、一時所得が「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」(所税34条1項)として定められていることとの関係をどのように考えるかが問題になる。 この問題については次の見解(岩﨑政明「判批」ジュリスト1407号(2010年)173頁、175頁。下線筆者)が(この見解と異なる結論を支持する筆者にとっても)有益な示唆を与えてくれるように思われる。 この見解は上記の理解に基づき本件福岡高判の結論を支持しているが、この見解のいう「一定の行為又は原因との個別対応関係」を、狭義の必要経費(所税37条1項)のうち「当該総収入金額を得るため直接要した費用の額」に係る個別対応関係(前掲拙著『税法基本講義』【314】参照)と同様の意味に理解するならば、所得税法34条2項は「その収入を得るために支出した金額」を括弧書でもって「一般的な常識」に適合するように限定的に(いわば「堅めに」)定めたものと理解することもできるであろう。筆者としては、このような理解に立って、費用収益対応の原則のうち費用と収益との個別対応関係の観点から、本件最判の理由及び結論を支持しておきたい。 (了)
#624(掲載号)
#谷口 勢津夫
2025/06/26
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例147(法人税)】 「令和6年4月1日以後の譲渡について「特定資産の買換えの圧縮記帳」の適用を受けるためには、同一年中の買換えであっても届出書の提出が必要になったことを知らなかったため、圧縮記帳の適用ができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例147(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆特定の資産の買換えの場合の課税の特例(措法65の7) 法人が、昭和45年4月1日から令和8年3月31日までの間に、その所有する棚卸資産以外の特定の資産(譲渡資産)を譲渡し、譲渡の日を含む事業年度において特定の資産(買換資産)を取得し、かつ、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合または供する見込みである場合に、買換資産について圧縮限度額の範囲内で帳簿価額を損金経理により減額するなどの一定の方法で経理したときは、その減額した金額を損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができる。 ◆買換資産を取得すべき時期 特定資産の買換えの圧縮記帳の適用を受けるためには、原則として買換資産を譲渡した日を含む事業年度において取得する必要があるが、特例として買換資産を先行取得した場合、又は翌事業年度以後に取得した場合にも適用が認められる。 ◆「特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例の適用に関する届出書」の提出 (1) 譲渡した年中に取得した場合(措法65の7①⑨、措令39の7②) 譲渡資産を譲渡した日又は買換資産を取得した日のいずれか早い日を含む3月期間(事業年度をその開始の日以後3か月ごとに区分した各期間(最後の3か月未満の期間を生じたときは、その3か月未満の期間)をいう。)の末日の翌日から2か月以内に、課税の特例の規定の適用受けること及び次の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 【参考】3月決算の場合 (※) 提出期限が土・日曜・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となる。 (2) 譲渡した年の前年に取得した場合(措法65の7③、措令39の7⑩) 先行取得した資産を買換資産として「特定資産の買替えの圧縮記帳」の適用を受ける場合には、その先行取得した資産を取得した事業年度終了の日の翌日から2か月以内に課税の特例の規定の適用受けること及び次の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。       (了)
#624(掲載号)
#齋藤 和助
2025/06/26
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