件すべての結果を表示
New
お知らせ
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 国税庁が質疑応答事例を更新~贈答に係る送料の交際費等該当性など12事例を追加~
《速報解説》 国税庁が質疑応答事例を更新 ~贈答に係る送料の交際費等該当性など12事例を追加~ Profession Journal編集部 国税庁は12月3日付けで質疑応答事例を更新し、新規掲載事例一覧を公表した。税目等は、所得税、源泉所得税、譲渡所得、相続税、法人税、消費税、印紙税の7項目で新たに12事例を掲載している。 なお、新規掲載の12事例は以下の通り。 (了)
New
お知らせ
その他お知らせ
プロフェッションジャーナル No.647が公開されました!~今週のお薦め記事~
2025年12月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.647を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
New
税務
税務・会計
解説
解説一覧
monthly TAX views -No.154-「繰り返される金利・成長率論争」
monthly TAX views -No.154- 「繰り返される金利・成長率論争」 東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹 高市総理は、衆議院予算委員会での答弁で、単年度プライマリーバランス(PB)黒字化目標の見直しを明言し、目標の確認サイクルを複数年度に変える旨発言した。 背景には「名目成長率(g)が国債金利(r)を上回る状況を維持できれば、債務残高の対GDP比は自然に安定する」という考え方がある。事実、高市総理は記者会見で、「名目成長率が金利より高ければ(g >r)財政は自然に安定するので破綻はしない」と発言している。これはリフレ派の主張でもある。 問題は、「そのような前提が現実に続くのか」という点である。 * * * 名目成長率と金利の関係を論じたのは米国の経済学者ドーマーである。金利(r)と名目成長率(g)が同水準であれば、PBがバランスした状況では債務残高GDP比は一定になる。一方、rがgを上回る状況では、PBはバランスしていても債務残高GDP比は増加し財政リスクは拡大し、逆にgがrを上回る状況ではPBが多少赤字でも債務残高GDP比は一定値に収束する(財政の持続可能性は維持できる)。これがいわゆるドーマー定理である。 わが国のように債務残高のGDP比が2倍を超える状況下で、rがgを上回る状況が生じると大きな財政リスク(長期金利の上昇)が生じかねない。そこで、金利と成長率の差がどうなるのかは極めて重要なポイントとなる。 * * * 実は同じことが20年前にも経済財政諮問会議で議論されている。2005年(平成17年)12月26日の竹中平蔵氏(当時総務大臣)と吉川洋氏 (当時東京大学教授)の「成長率・金利論争」で、2006年(平成18年)2月1日の同会議でも同じメンバーで議論された。後者は、小泉純一郎総理(当時)が「マンキューだがサンキューだが知らんが興味深い議論だった」とコメントしたので、「マンキュー・サンキュー論争」と揶揄されている。 竹中氏が「現実に長期で見ると、マンキューやサマーズの議論は常に名目成長率の方が名目金利より高かったという歴史的なファクトからの主張だ」と述べたのに対して、吉川氏は「経済理論では長期金利はマーケットで決まるもの、理論の世界では金利の方が成長率よりも高いというのが通常の理解だ」と反論した。 * * * 「成長率・金利論争」は、PBの黒字化の達成だけでは財政再建は不十分で、GDP比2%程度の財政黒字が必要という「財政規律派」と、成長率が長期金利を上回るドーマー条件を満たせば、増税なくして財政再建は可能だとする「上げ潮派」の論争であるが、各国の事例を長期にわたり観察すると、長期金利と名目経済成長率の関係は多様である。1980年から2024年のG7諸国の推移を見ると、rがgを上回った例が60%、わが国では64%となっており、いずれも多数となっている。 わが国でコロナ後の直近3年間を調べてみると、成長率が長期金利を大きく上回る状況が続いているが、これは日銀の金融緩和が大きく影響していると考えられる。日銀の金融政策の正常化が進み、物価上昇への期待が生じてくれば、長期金利は今後も上昇傾向が続く可能性が高い。 * * * いずれにしてもrとgの関係は経済学でも理論的に解明されておらず、ほぼ同水準で推移すると考えて財政運営をすることが望ましい。その上で地道にPB黒字を続け、それを利払い返済に充てて債務残高GDP比を引き下げていく財政政策を行い、国家の信認を保っていくことが必要ではないか。 楽観過ぎる見通しは、市場から手痛いしっぺ返しを食らう可能性がある。 (了)
New
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例81】「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外国為替換算差損の損金性」
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例81】 「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の 外国為替換算差損の損金性」 拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、アメリカ国内に本店を有する保険会社の東京支店において、10年前から経理部門を統括するディレクターを務めております。日本人は保有する金融資産のうちに保険商品が占める割合が高く、保険好きの国民であると称されることがありますが、私の勤務する外資系の保険会社にとっては、なかなか厳しいマーケットであると認識しております。 どういうことかと言えば、外資系保険会社は、クライアントの要望に沿った保険内容を一から組み立てて商品として提案するのが通例ですが、実際のところクライアントは、保険商品に関する知識に乏しいことが一般的であり、日系保険会社が提供するような、誰にでも「わかりやすい」保険商品を求めている傾向にあります。そのため、外資系保険会社の営業担当者は、自社が提供できる保険の内容を丁寧に説明しながら、相手のニーズに合ったプランを作っていくよう努めますが、このような営業スタイルが「ハマる」クライアントは、いまだ限定的というのが正直なところです。 以上のような経営環境の中、わが東京支店は懸命な営業努力により一定のクライアント層をつかむことができましたが、アメリカの親会社の経営陣を納得させるような水準には達していなかったようで、残念ながら一昨年に業務の大幅な縮小を実施しました。 さて、今般、その際に行った外貨建社債の円換算により生じた損失の損金計上につき、現在受けている国税局の税務調査で問題となっております。すなわち、当該外貨建社債については、外国為替の売買相場が著しく変動したため、わが社は期末換算差損につき損金算入を行ったのですが、調査官は、当該外貨建社債については、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされていることから、損金算入は認められないと主張しております。損失が生じているのに損金算入されないという主張は理解できないのですが、税法上どう考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 【A】 外貨建社債のような外貨建有価証券については、外国為替の売買相場が著しく変動した場合、期末換算差損につき損金算入が認められるのが原則ですが、例外として、有効な繰延ヘッジ処理又は時価ヘッジ処理により為替変動のリスクがヘッジされている場合には、損金算入が認められないこととされています。 したがって、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされているという実態がある場合には、期末換算差損につき損金算入が認められない可能性があるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) デリバティブ取引に係る損益相当額の取扱いについて 法人税法上、デリバティブ取引とは、金利、通貨の価格、商品の価格その他の指標の数値として、あらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値との差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引をいうものとされている(法法61の5①)。 また、内国法人がこのようなデリバティブ取引を行った場合において、当該デリバティブ取引のうち事業年度終了の時において決済されていないもの(未決済デリバティブ取引)があるときは、その時において当該未決済デリバティブ取引を決済したものとみなして財務省令で定めたところにより算出した利益の額又は損失の額に相当する金額(みなし決済損益額)は、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入するという旨が定められている(法法61の5①)。 上記規定を受け、同法施行規則においては、法人税法61条の5第1項にいう「デリバティブ取引」には、金融商品取引法2条20項に規定するデリバティブ取引、すなわち、市場デリバティブ取引、店頭デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引が、これに当たる旨が定められている(法規27の7①一)。 また、店頭デリバティブ取引のうち金融商品取引法2条22項3号に該当する取引(当事者の一方の意思表示により当事者間において金融商品の売買等を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し、当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引)に係る法人税法61条の5第1項に規定する「みなし決済損益額」とは、当該取引につき、その取引に係る権利の行使により当事者間で授受することを約した金額、事業年度終了の時の当該権利の行使に係る指標の数値及び当該指標の予想される変動率を用いた合理的な方法により算出した金額をいう旨が定められている(法規27の7③三)。 (2) 事業年度終了時における外貨建資産等の円換算について 法人税法61条の9第1項は、内国法人が事業年度終了の時において有する外貨建資産等(外貨建債権、外貨建有価証券、外貨預金及び外国通貨をいう)のその時における当該外貨建資産等の円換算の方法について定めているところ、同項2号ロは、外貨建有価証券のうち売買目的外有価証券(売買目的有価証券(法法61の3①一)以外の有価証券をいう、法法61の3①二)については、その取得等の基因となった外貨建取引の金額の円換算額への換算に用いた外国為替の売買相場により換算した金額をもって期末時の円換算額とする方法(発生時換算法、法法61の9①一イ)又は当該事業年度終了の時の外国為替の売買相場により換算した金額をもって円換算額とする方法(期末時換算法、法法61の9①一ロ)のうち内国法人が選定した方法とし、その方法を選定しなかった場合には、政令で定める方法による旨が定められている(同項柱書)。 また、上記規定を受け、法人税法施行令は、内国法人が売買目的外有価証券について換算方法を選定しなかった場合の換算方法は、「発生時換算法」とする旨が定められている(法令122の7二)。 さらに、外貨建資産等については、期末時換算法により換算した金額とその帳簿価額との差額(為替換算差額)について、益金又は損金の額に算入することとなる(法法61の9②)。 (3) 外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外国為替換算差損についてその損金性が争われた事例 それでは本件と同様に、外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外国為替換算差損につき、その損金性が争われた事例(東京地裁平成24年12月7日判決・判時2190号3頁(TAINSコード:Z262-12108)、アリコジャパン事件)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、アメリカ合衆国に本店を置き、日本国内に支店を有して保険業を営んでいた外国法人である原告が、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度終了の時に保有する外貨建有価証券について、本件事業年度において外国為替の売買相場が著しく変動したとして、本件事業年度終了の時の外国為替の売買相場により円換算した金額とその時の帳簿価額との差額に相当する金額を損金の額に算入し、本件事業年度の法人税の確定申告を行ったところ、麹町税務署長が、原告が損金の額に算入した上記差額に相当する金額のうち一部の外貨建社債に係るものについては、その外国為替の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるためにデリバティブ取引(買建オプション取引と売建オプション取引)が行われており、損金の額に算入されないなどとして、本件事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことから、本件更正処分等の一部の取消しを求めた事案である。 なお、原告は、日本国内の支店において、日本国内で保険業を営む外国法人であったが、平成24年6月1日、日本国内の支店を閉鎖している。 ② 事案の争点 通貨オプション取引について、法人税法施行令121条1項1号に定められた方法により「有効性判定」を行った場合、基礎商品比較法(金融商品会計に関する実務指針156項に定める、オプションの基礎商品の時価変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較する方法)が同号に規定する方法として認められるか否か。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴され(東京高裁平成25年10月24日判決・税資263号-197(順号12321)、TAINSコード:Z263-12321)、原判決が一部取り消されて確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 外貨建有価証券については、外国為替の売買相場が著しく変動した場合、期末換算差損につき損金算入が認められるのが原則であるが(法法61の9④(旧③)、法令122の3①)、例外として、法人税法施行令122条の2カッコ書により、有効な繰延ヘッジ処理(法法61の6)又は時価ヘッジ処理(法法61の7)により為替変動のリスクがヘッジされている場合には、損金算入が認められないこととされている。 本裁判例においては、納税者は米ドル建社債のヘッジ手段として、買建オプション取引を行っていたところ、これが法人税法の規定に照らして有効といえるかどうかが争われたが、法人税法施行令121条1項1号の規定ぶりに従えば、有効性判定の手法として納税者側が主張した「デリバティブ比較法」が採用され、課税庁側が主張した「基礎商品比較法」は採用できないと判断されたところである。 そのような判断をするに至った理由として、裁判所は、「租税法規は侵害規範であって、法的安定性の要請が強く働くものであるから、みだりに規定の文言を離れて解釈すべきではない(最高裁判所平成22年3月2日第三小法廷判決・民集64巻2号420頁参照)ところ、基礎商品比較法にいう「オプションの基礎商品の時価変動額」が、その文言上、施行令121条1項1号にいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」に該当しないことは上記(中略)のとおりであって、上記のような実務指針156項及び法61条の6の趣旨を考慮してもなお、施行令121条1項1号の文言を離れ、明らかに同号に規定する有効性判定の方法には当たらない基礎商品比較法を、同号に規定する有効性判定の方法として取り扱うべきであると解すべき合理的理由は見出すことができない。(下線部筆者)」としている。 これは租税法規解釈の原則につき最高裁判決(ホステス報酬源泉徴収事件)を引いて示したもので、それ自体は妥当であるが、一方で、一審では米ドル建社債のヘッジ手段として、買建オプション取引のみが問題とされたが、控訴審では合わせて売建オプション取引をも取り上げ、そこから生じるみなし決済に係る利益の額を益金に算入すべき点が指摘されており、一審ではこの点がそもそも取り上げられていないのは奇異であるとも言え、その観点から検討すると、一審の判断は形式主義にとらわれバランスに欠けるのではという批判(※)は、傾聴に値するものと考えられる。 (※) 例えば、中里実「デリバティブ取引の有効性判定と、租税法の解釈」『最新租税基本判例70』税研178号145-148頁参照。 条文の理解は文理解釈が原則とはいえ、それが硬直的な形式主義に陥る場合には、必ずしも妥当な結論には達しない可能性があることを示唆している事案と言えよう。 (4) 本件へのあてはめ 外貨建社債のような外貨建有価証券については、外国為替の売買相場が著しく変動した場合、期末換算差損につき損金算入が認められるのが原則であるが、例外として、有効な繰延ヘッジ処理又は時価ヘッジ処理により為替変動のリスクがヘッジされている場合には、損金算入が認められないこととされている。 したがって、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされているという実態がある場合には、期末換算差損につき損金算入が認められない可能性があるものと考えられる。 (了)
New
国税通則
税務
税務・会計
解説
解説一覧
《税務必敗法》 【第7回】「振替伝票を削除した」
《税務必敗法》 【第7回】 「振替伝票を削除した」 公認会計士・税理士 森 智幸 【事例】 X会計事務所は、顧問先であるA社の記帳代行を行っている。ある日、所轄税務署の税務調査が入った。所轄税務署は、会計帳簿について電子データでの提示を希望したため、担当税理士はA社の同意をとったうえで会計ソフトのバックアップデータを提出した。なお、A社の帳簿は「優良な電子帳簿」には該当していない。 後日、調査官から連絡があった。内容は「振替伝票の一部が削除されているが、その理由を教えてほしい」ということであった。 X会計事務所内で調査したところ、入力担当職員が、仕訳を訂正する際、誤った仕訳が入力された振替伝票を削除し、新しい振替伝票に正しい仕訳を入力していたことが発覚した。 1 はじめに 本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「振替伝票を削除した」である。 会計ソフトによっては、仕訳修正時に振替伝票を容易に削除できるものもある。削除すること自体は税理士法には抵触しないが、もし削除したことが見つかると税務当局から隠蔽又は仮装を疑われる可能性もある。 そこで、今回は仕訳の修正に伴う振替伝票の削除(仕訳の削除を含む)及び上書き修正(仕訳の直接修正)の問題点と防止策を解説する。また、国税庁が2025年9月以降進めている「税務行政におけるオンラインツールの利用」についても触れることにする。今後、「オンライン税務調査」が普及すると、帳簿書類等を電子データで受渡しする機会も増えると予想されるからである。 なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。 2 振替伝票の削除事例 あくまで聞いた話だが、税務調査において、会計ソフトのバックアップデータを提出したところ、削除した振替伝票の中から売上除外が見つかり指摘された事例があるという。 発見の経緯は不明だが、削除したデータは復元することが可能である。売上除外は論外だが、仕訳修正の際に振替伝票の削除を行うと、見つかった場合、不正を疑われる可能性があるので注意する必要がある。 3 振替伝票の削除や上書き修正をした場合の問題点 会計事務所・顧問先を問わず、仕訳修正時に振替伝票を削除して新しい振替伝票に入力した、あるいは上書き修正をした、という入力担当者は少なくないのではないだろうか。しかし、振替伝票の削除や上書き修正は以下の問題点がある。なお、「優良な電子帳簿」ではないことを前提として説明する。 (1) 隠蔽又は仮装の疑義の発生 前述2の通り、電子データは復元可能である。また、帳簿書類をExcelやCSVで提出した場合でも、連番チェックにより欠番を見つけることが可能である。 もし税務調査において、振替伝票を削除したことが判明すると、仮に仕訳の修正であっても、税務当局から隠蔽又は仮装を疑われる可能性もある。この点は、上書き修正でも同様である。 (2) 修正過程や修正理由が不明となる 振替伝票の削除や上書き修正をしてしまうと、修正前の仕訳の内容が不明となってしまい、どのような理由で、どの仕訳をどのように修正したのか、その過程が不明になってしまう。 (3) 過去の試算表との不整合 例えば、金融機関に試算表を提出した後、振替伝票の削除や上書き修正を行うと、提出した時点の数値が整合しなくなってしまう。このようなことがあると、情報の信頼性を損なうことになり、もし発覚した場合、金融機関とトラブルになる可能性がある。 (4) 顧問先からの信用を失う 会計事務所が記帳代行を行っている場合、前記2(3)のように、金融機関などとトラブルになると顧問先からは信用を失う可能性がある。場合によっては顧問契約の解除となる可能性もある。 (5) 不正の温床となる 振替伝票の削除や上書き修正を認めると、入力担当者はそのような行為をしても問題はないという誤った認識を持ってしまい、会計・税務の不正につながる恐れもある。 4 振替伝票の削除や上書き修正の対策 (1) スタッフや顧問先への指導の徹底 会計事務所は、所内研修などで事務所職員に対して、仕訳を修正する際、振替伝票の削除や上書き修正を行ってはならないことを指導する必要がある。そうしないと、多くの事務所職員は、振替伝票の削除や上書き修正が重大な問題であることを認識しないまま業務を進めてしまうからである。 また、仕訳を修正するときは必ず反対仕訳を計上して取り消したうえで、修正後の仕訳を計上することを指導することも必要である。 この点は、顧問先が記帳をしている場合でも同様である。 (2) ロック機能がある会計ソフトの導入 会計ソフトにはロック機能がついているものがある。このロック機能を使って、月次決算の締後は仕訳を修正できなくなるようにすると有効である。 なお、ロック機能を設定できても、入力者が解除できてしまうと効果がない。そのため、ロックできる権限者を定め、入力者が解除できない仕組みとする必要がある。 (3) 優良な電子帳簿への移行の検討 優良な電子帳簿に移行し、振替伝票の削除や上書き修正の記録がすべて残るようにすれば、仕訳の修正過程がすべて明らかとなる。 ただし、この場合、修正履歴が残るということであって、振替伝票の削除や上書き修正を防止するものではないという点は注意する必要がある。 5 「オンライン税務調査」の到来に向けて (1) オンラインツールの利用とは 国税庁は「税務行政におけるオンラインツールの利用について」を公表し、税務調査等においても、必要に応じてオンラインツールを利用するとした。 この「オンラインツールの利用」とは、具体的には、インターネットメール、Web会議システム(Microsoft Teams)、オンラインストレージサービス(PrimeDrive)及びアンケート作成ツール(Microsoft Forms)を税務調査等の業務に利用するというものである。また、大規模法人で行われてきた「オンライン税務調査」も対象が拡大される予定である。 なお、オンラインツールの利用は、税務署及び国税局の担当者と利用者双方の合意の下で利用するとされており、利用するかどうかは納税者の希望による。 (2) 帳簿書類等は紙とデータのどちらで出すか 会計ソフトを使用していても、税務調査において提出する帳簿書類等は、電子データでないといけないという法令上の定めはない(国税通則法74条の2)。なお、国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問5では、帳簿書類等が電磁的記録である場合の提示・提出方法が記載されているので参照されたい。 ちなみに、筆者の周囲では、税務調査で帳簿書類等を電子データで提出することを求められても、紙で提出しているという税理士が圧倒的に多い。 しかし、今後、「オンライン税務調査」が普及すると、帳簿書類等も電子データでの提供が進むと予測される。なぜかというと、オンラインツールを使っているにもかかわらず、帳簿書類等だけ紙で提出するのは合理的でないからである。 6 おわりに 今回は、仕訳の修正に伴う振替伝票の削除及び上書き修正の問題点について説明した。電子データは復元可能であり、連番チェックも行いやすい。 また、国税庁は、今後オンラインツールの利用を促進することを公表しているため、帳簿書類等を電子データで受渡しする方向に進んでいくと予測される。振替伝票の削除や上書き修正をすると、悪意はなくとも隠蔽又は仮装を疑われる可能性もあることに注意していただきたい。 これらの点は、会計事務所・顧問先にとって共通の注意点である。 本稿が実務の参考になれば幸いである。 (了)
New
所得税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
金融・投資商品の税務Q&A 【Q100】「不動産セキュリティトークンからの配当金」
金融・投資商品の税務Q&A 【Q100】 「不動産セキュリティトークンからの配当金」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 西川 真由美 ●○ 検 討 ○● 1 不動産セキュリティトークンの税務上の区分 (1) 特定受益証券発行信託とは 不動産セキュリティトークンの税務上の取扱いを考える際には、その不動産セキュリティトークンがどのような法形式で組成されているのかを確認することが必要ですが、現状、流通しているものは、主に、受益証券発行信託を利用して組成されています。 日本の信託法上、受益証券を発行する旨の定めのある信託を受益証券発行信託といいますが、そのうち次に掲げる要件のすべてに該当するものは、税務上、特定受益証券発行信託として区分され、集団投資信託に分類されています。 (2) 特定受益証券発行信託に係る配当の課税関係 不動産セキュリティトークンが特定受益証券発行信託の受益権であり、その信託契約の締結時において委託者が取得する受益権の募集が公募により行われたものである場合は、上場株式等として取り扱われることになります。 上場株式等の配当等は、20.315%(所得税及び復興特別所得税 15.315%、地方税 5%)の税率で源泉徴収されます。原則として、総合課税(最高税率約56%)または申告分離課税(所得税及び復興特別所得税 15.315%、地方税 5%)の対象として確定申告するか、申告不要制度を選択することもできます。 2 本件へのあてはめ 税務上、特定受益証券発行信託に該当する不動産セキュリティトークンとのことですので、受益権の募集が公募により行われたものである場合には、上場株式等として取り扱われることになります。 当該不動産セキュリティトークンに係る配当は、申告不要制度を選択することができますが、総合課税または申告分離課税の対象として確定申告することも可能です。 〇不動産セキュリティトークンとは (了)
New
国税通則
税務
税務・会計
解説
解説一覧
租税争訟レポート 【第82回】「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」
租税争訟レポート 【第82回】 「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」 (第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、 控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【判決の概要】 〈第1審判決の概要〉 〈控訴審判決の概要〉 【事案の概要】 原告は、昭和27年10月27日、電気工事、照明工事、機械設備工事、プラント工事、土木工事、建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社である。 原告は、土木工事業を営む訴外株式会社A(以下「A社」という)に対する土木工事の外注費について、平成24年9月期から平成29年9月期までの事業年度(本件各事業年度)の法人税、復興特別法人税及び地方法人税の計算上、これを損金の額に算入するとともに、平成24年9月課税期間から平成29年9月課税期間(本件各課税期間)までの消費税及び地方消費税の計算上、仕入税額控除を適用して申告した。 これに対し、仙台北税務署長は、申告されたA社に対する外注費の一部は、原告の従業員であった甲、乙、丙及び丁、並びにA社の代表取締役である戊らが行った工事代金の水増し請求によるものであり(以下、この水増し請求に係る甲らの行為を「本件不正行為」という)、当該外注費のうち水増し金額分(本件外注費水増し分)は、役務の提供を受けた対価であるとは認められないから、これを損金に算入することも、仕入税額控除を適用することもできず、法人税の計算上、本件不正行為により生じた損失は、本件各事業年度の損金に算入され、当該損失に対応する損害賠償請求権は、当該損失が生じた事業年度の益金に算入されることになるなどとして、下記の処分(本件各更正処分等)を行った。 本件は、原告が、本件各更正処分等を不服としてその全部の取消しを求める事案である。 〈仙台北税務署長による処分〉 【争点】 【仙台地方裁判所の判断】 仙台地方裁判所は、本件不正行為について、甲は、遅くとも平成22年頃から、A社の戊と示し合わせ、原告をして、実際に要する工事費から水増しした金額が記載されたA社作成の見積書に基づき、A社への土木工事の発注(外注)を行わせ、A社作成の請求書に基づいて外注費の請求がされ、水増し分を含む外注費(工事代金)が原告からA社の口座に振り込まれると、甲が水増し額の概ね8割、A社の戊が水増し額の概ね2割を取り分として取得し、それらを個人的な目的のために費消していたことを認定したうえで、それぞれの争点について、次のような判断を示している。 1 本件外注費水増し分をAのBへの外注費に基づいて算定することの当否及び本件外注費水増し分の金額 仙台地方裁判所は、甲及び戊は、本件不正行為において、水増しされた外注費(本件外注費水増し分)に相当する金額が、A社において、B社への外注費として計上していたと供述しており、甲及び戊の供述は、客観的証拠に整合し、かつ、原告における水増しした外注費の特定の方法につき、具体的かつ合理的な内容であり、供述が概ね整合していることを併せ考えると、いずれも信用性のあるものと認められ、本件外注費水増し分については、A社のB社への外注費に基づいて算定するのが相当であり、その金額は、少なくとも、A社においてB社に対する架空外注費として計上した金額から消費税5%を控除した金額となるという判断を示した。 2 本件外注費水増し分の「損金」及び「課税仕入れ」該当性 仙台地方裁判所は、本件外注費水増し分は、原告がA社から役務の提供等を受けた事実がないにもかかわらず、甲らが自身の利益を得る目的で、外注費を過大に水増しして計上したものにすぎず、事業の遂行上必要な資産の減少と認めることはできないから、本件外注費水増し分は法人税法22条3項の「損金」には該当しないものと認めるのが相当であるとの事実認定に基づき、本件外注費水増し分は、事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることに対して支出したものと認めることはできないから、消費税法30条1項の「課税仕入れ」には該当しないと判断すると同時に、本件外注費水増し分と同額の損害は、通常の事業活動とは無関係な偶発的原因により発生する資産の減少であるといえるから、法人税法22条3項3号の損失に該当するものと認めるのが相当であるという判断を示した。 3 益金に算入すべき損害賠償請求権の発生及びその益金への算入時期 仙台地方裁判所は、甲らは、原告をして、本件外注費水増し分の金額を水増ししてA社に対する土木工事の発注(外注)を行わせ、本来よりも過大な外注費を支払わせ、これにより、本件外注費水増し分と同額の損害を原告に被らせたものであるから、原告は、甲らに対し、この損害につき、不法行為に基づく損害賠償請求権を有することとなり、これは、本件各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるべきこととなるという判断を示した。 その根拠として、本件不正行為においては、本来の金額の5倍や10倍もの金額の外注費で取引していた工事が複数あったことから、通常人を基準とすると、見積書の内容及び金額を精査していれば、工事代金が不自然に高額であることを認識することができたというべきであり、原告において外注工事の取引に関与する人物がAとの間で外注費の水増しを行っていることを疑ってしかるべき客観的状況にあったということができることを挙げている。 4 重加算税賦課要件該当性 仙台地方裁判所は、国税通則法68条1項は、隠ぺいし、又は仮装する行為の主体を納税者としているのであって、本来的には、納税者自身による隠ぺい仮装行為の防止を企図したものと解されるが、納税者以外の者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、形式的にそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課が許されないとすると、重加算税制度の趣旨及び目的を没却することになるという法解釈をしたうえで、事実認定に基づき、原告の組織として、原告の発注(外注)する土木行為に係る外注先や外注費について、甲及び乙らに対し、自身の裁量によって決定することができる権限を与えていたものと認めることはできないことから、本件不正行為を行った甲及び乙らについて、会社の営業活動の中心となってその経営に参画していたとはいえないし、外注先の選定や外注費の決定に関する権限も、これを与えられていないか、限られたものであったことからすると、原告において代表者に準じるような地位にあったとまでは認められないことを理由に、原告については、重加算税の賦課要件を充足しないものと認めるのが相当であるという判断を示した。 5 国税通則法70条4項該当性 仙台地方裁判所は、国税通則法70条4項1号は、偽りその他不正の行為による申告行為等、課税当局の発見、調査が妨げられるような事情があった場合に、国税の更正、決定等の期間制限(賦課権の除斥期間)の例外を規定するものであって、国税通則法68条1項とは異なり、偽りその他不正の行為をした者への制裁を目的にしたものではないことから、納税者の補助者又は代理人によるものであっても、納税者の納税義務の確定手続において客観的に「偽りその他不正の行為により全部又は一部の税額を免れ」たとの事実がある場合には、納税者自身が具体的な偽りその他不正の行為を意図し、又は指示したか否かを問うことなく、国税通則法70条4項1号が適用されるものと解するのが相当であるという法解釈を示したうえで、原告は、客観的にみれば、対応する役務の提供を受けていない本件外注費水増し分を含む過大な外注費を「損金」として計上し、甲らに対する損害賠償請求権を益金として計上せず、税額を過少に記載した確定申告書及び修正申告書を提出したのであるから、課税標準等又は納税の基礎となる事実を仮装したものであると認定できることを理由に、原告において、納税義務の確定手続において客観的に「偽りその他不正の行為により全部又は一部の税額を免れ」た事実があり、国税通則法70条4項1号の要件を充足し、その適用により、平成24年9月期及び平成25年9月期に関する法人税、復興特別法人税、消費税及び地方消費税に関する各更正処分をすることができるという判断を示した。 【仙台高等裁判所の判断】 仙台高等裁判所は、結論として、原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す判決を言い渡した。第1審原告に対する重加算税の賦課決定処分を認めた論旨は次のとおりである。 1 重加算税の賦課要件該当性について (1) 納税者本人の行為と同視することができる者の範囲 仙台高等裁判所は、重加算税の賦課要件について、 本来的には、納税者自身による隠ぺい仮装行為の防止を目的としているが、納税者以外の第三者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、形式的にそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課を免れることになると、重加算税制度の趣旨及び目的を没却することになるため、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、重加算税賦課の対象になるというべきである。と前置きしたうえで、とりわけ法人の場合には、複数の者が事業活動に関わっており、事業目的を遂行するために組織を編成して従業員を配置し、代表者や役員によって構成される意思決定機関や執行機関の指揮命令の下、各事業部門の従業員が事業活動に従事し、活動領域を拡大することによって経済的利益を獲得しているところ、その納税者は代表者個人でなく、代表者を頂点とした有機的な組織体としての法人そのものであると判示した。 そのうえで、現代社会において相応の規模を有する法人では、その代表者が事業活動の細部まで掌握し、直接にこれを管理することはほとんど不可能であり、法人の意思決定機関や執行機関の下に、設置された組織の部門ごとに一定の権限と裁量を与えた責任者を置き、その責任者が付与された権限と裁量に基づき、部下従業員を指揮監督して、事業活動を遂行しているのが常態であると指摘し、申告納税制度の実効性を確保するという重加算税制度の趣旨及び目的に照らせば、法人の代表機関である代表者自身や、これに準ずる地位にある者が隠ぺい仮装行為を行った場合にとどまらず、法人における当該行為者の地位や役職、付与された権限と裁量の範囲、担当する業務の内容とそこでの役割等の事情を踏まえ、法人内で相応の地位と権限を有する者が、その権限と裁量を利用して、法人の業務として行った隠ぺい仮装行為であると認められる場合には、特段の事情がない限り、納税者たる法人の行為として評価するのが相当であって、国税通則法68条1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきであるとの結論を導いた。 (2) 本件不正行為の関係者の地位と権限等 仙台高等裁判所は、事実認定に基づき、B(第1判決では「甲」)は、本件不正行為が行われるようになった平成22年頃には、営業推進部統括次長の地位にあり、部長職が置かれていなかった営業推進部の実質的な最高責任者を務め、その後も、平成23年10月に営業部部長、平成24年11月に執行役員営業部部長と営業部門で昇進し、平成27年以降は取締役(営業部長)に就任して、代表者を含めて3人ないし5人程度で構成される取締役会の構成員となり、平成28年以降は代表取締役に次ぐ専務取締役(営業統括)の地位にあって、本件不正行為が行われた期間を通じて被控訴人の営業部門の最高責任者として、経営戦略会議のメンバーとして同会議に出席するなど、被控訴人の営業活動全般で責任ある重要な役割を担っていたという判断を示した。 次に、仙台高等裁判所は、C(第1審判決では「乙」)について、本件不正行為が行われるようになった平成22年頃には、建設事業部内のプラントG管理者(課長)の地位にあり、その後も、平成25年1月に工事管理部課長、平成26年4月に工事管理部プラント工事管理部次長、平成27年4月に同部部長、平成28年1月にプラント建設部部長に就き、建設事業部門での役職を歴任していたもので、本件不正行為が行われた期間を通じて、被控訴人の建設部門での責任ある地位にあったと認定した。 (3) 重加算税の賦課要件該当性についての結論 仙台高等裁判所は、上記の事実認定に基づき、本件不正行為を行うためには、概算予算策定を所管する営業部門と現場における工事内容の詳細な検討を行う建設部門による共同作業が必要であったところ、営業部門においてはその最高責任者であるBが、建設部門においては責任ある役職を歴任していたCが、それぞれ地位と権限を有し、その権限と与えられた裁量に基づき、被控訴人における外注工事の適正実施に関する管理監督体制の不備に付け込んで本件不正行為を行っていたものであると指摘した そのうえで、事実関係によれば、本件不正行為は、法人内部において相応の地位と権限を有する者が示し合わせ、その権限と裁量を利用して、法人の業務として組織的に行った隠ぺい仮装行為であって、その管理監督体制の長年にわたる不備が本件不正行為を許した要因になったことを併せて考慮すれば、本件不正行為を納税者たる被控訴人の行為として評価するのが相当であるとし、被控訴人は、国税通則法68条1項に定める重加算税の賦課要件を満たしている結論づけた。 2 被控訴人の主張に対する仙台高等裁判所の判断 (1) 仙台高等裁判所は、被控訴人による、BやCには対外的な代理権がない単なる従業員や取締役に過ぎず、部課長会議である経営戦略会議に出席していたとしても実質的に経営に関与していたものではないし、外注先の選定や外注費を決定する権限も与えられていなかったから、Bらの行為を被控訴人の行為と同視することはできないとする主張に対して、重加算税制度の趣旨及び目的に照らせば、被控訴人の行為と同視できる範囲を対外的代理権が与えられている者の行為に限定的に解するのは相当ではなく、法人内で相応の地位と権限を与えられた者が、その権限と裁量を利用して事業活動を遂行する過程でなされた行為についても、法人による行為として評価することが相当であることは前示のとおりであり、Bは、本件不正行為が行われた期間を通じて被控訴人の営業部門の最高責任者の地位にあり、取締役にも就任して執行機関の一員となり、被控訴人の経営戦略会議では経営や事業に関する議論がなされていて、Bも営業に関する発言や報告を行っていたものであるから、被控訴人の経営に関与していたといえるとして、被控訴人の主張を斥けた。 (2) さらに、仙台高等裁判所は、被控訴人による、外注先の選定や外注費の決定に関して、総務部長の決裁を要するから、Cが最終決裁権者ではないという主張に対しては、実際の具体的な検討は、現場を担当するプラント建設部等で行っていたことは原判決が認定するとおりであり、本件不正行為が長年発覚しなかった経緯に照らせば、総務部長の決裁が形骸化していたことは明らかであって、建設部門で責任ある地位に就いていたCが実質的に権限を有していたとの判断を左右するものではないとして、被控訴人の主張を斥けた。 3 結論 仙台高等裁判所は、本件各賦課決定処分は全部適法であり、その取消しを求める被控訴人の請求を棄却すべきであるところ、その請求を一部認容した原判決は相当でなく、本件控訴は理由があるから、原判決中、控訴人敗訴部分を取り消し、上記取消しに係る部分の被控訴人の請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決した。 【判決の特徴】 本事案は、第1審判決で取り消された重加算税の賦課決定処分が、控訴審判決で覆っただけでなく、納税者側の上告受理申立ても、2024(令和6)年12月13日、最高裁第2小法廷が上告不受理決定を行い、納税者の全面敗訴が確定した訴訟である。 第1審判決は、原告の役員であった甲(控訴審では「B」)らの不正行為(水増し発注とキックバック)について、水増しされた外注費は、「損金には該当しないが損失」であり、「課税仕入には該当しない」、損害賠償請求権については同時両建て説をとり、国税通則法70条の「偽りその他不正の行為」と認定して、7年分の更正処分を認めるなど、甲らの行為を法人の行為と同視することはできないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した以外の争点については、いずれも国と処分行政庁の主張を認めており、ある意味、穏当な判決であったと思料するところ、控訴審では、かなり踏み込んだ判示をしているものではないかと考える。 1 国税不服審判所の裁決 原告は、本件訴訟を提起する前に、国税不服審判所に対して不服申し立てを行っている。国税不服審判所の裁決要旨検索システムから、その裁決の要旨を引用しておきたい。裁決要旨検索システムによれば、裁決の争点は2項目である。 本判決における[争点(2)]と[争点(3)]について、国税不服審判所は、以下の裁決(1)及び(2)にかかる判断で、仙台地方裁判所と同様の判断を示して、請求人の審査請求を棄却している。 〈国税不服審判所令和2年10月20日裁決、仙裁(法・諸)令2-8〉 2 納税者本人の行為と同視できる者の範囲 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)916ページには以下の記述がある。 本事案は、売上を除外してその代金を横領する行為ではないものの、「私的利益を目的」として、「会社の納税義務を過少に見せかけることを目的」としていない点では、引用した例に近いものがあると考える。 法人税における重加算税の賦課決定処分において、納税者本人の行為と同視できる者は、法人の意思決定や経理に関与する者(代表者、経理責任者など)や、納税申告に直接関与した者など、かなり限定的に解釈されており、単なる従業員の独断的な不正行為は原則として同視できない、または、上記引用文のように「慎重な検討」が要求されてきた。 本事案における甲(控訴審では「B」))については、最終的には、営業担当の専務取締役まで昇進したとはいえ、本件不正行為が開始された時には営業部の次長職に過ぎなかったわけで、仙台高等裁判所の判断は、こうした肩書よりも実施的な権限・裁量に重きを置いた判決であり、最高裁判所が上告不受理決定を行ったこともあり、今後の重加算税の賦課決定に大きな影響を与える判決であると言えるだろう。 (了)
New
国際課税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第59回】「租税条約における「一方の締約国の居住者」該当性と恒久的施設帰属所得の算定」
〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第59回】 「租税条約における「一方の締約国の居住者」該当性と恒久的施設帰属所得の算定」 公認会計士・税理士 霞 晴久 〔Q〕 租税条約にいう「一方の締約国の居住者」とはどのような者をいうのでしょうか。 〔A〕 租税条約が、源泉地国又は所在地国と、居住地国との間の二重課税及び二重居住者の問題を解決するという趣旨である以上、一方の締約国においてその所得に課税されない者は、「一方の締約国の居住者」に該当しないという判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 恒久的施設帰属所得 (1) 総合主義から帰属主義へ OECDモデル条約7条《事業利得》は、帰属主義を原則としていたものの、その解釈や運用が各国で統一されていなかったため、結果として二重課税・二重非課税を効果的に排除することができていないという問題提起がなされ、OECD租税委員会で検討を重ねた結果、恒久的施設に帰属すべき利得(以下「恒久的施設帰属所得」という。)の算定アプローチを定式化したモデル租税条約新7条(以下「新7条」という。)が2010年に導入された。具体的には、①恒久的施設の果たす機能及び事実関係に基づいて、外部取引、資産、リスク、資本を恒久的施設に帰属させ、②恒久的施設と本店等との内部取引を認識し、③その内部取引が独立企業間価格で行われたものとして、恒久的施設帰属所得を算定するアプローチ(Authorised OECD Approach(※1)、 以下「AOA」という。)が採用された(※2)。 (※1) OECD承認アプローチともいう。 (※2) 財務省「平成26年度税制改正の解説」672~673頁 この新7条の導入によって、従来総合主義を採用していたわが国の国内法をAOAに基づく帰属主義へ見直す機運が高まり、平成26年度税制改正において、非居住者・外国法人に対する国内法における課税原則については、我が国が締結する多くの租税条約が採用する帰属主義への転換が行われた。 (2) 恒久的施設帰属所得の認識 恒久的施設帰属所得は、外国法人が恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該恒久的施設が当該外国法人から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、当該恒久的施設が果たす機能(注1)、当該恒久的施設において使用する資産(注2)、当該恒久的施設と当該外国法人の本店等との間の内部取引その他の状況(注3)を勘案して、当該恒久的施設に帰せられるべき所得とされる(法法138①一)。 (注1) 「恒久的施設が果たす機能」には、恒久的施設が果たすリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能、資産の帰属に係る人的機能、研究開発に係る人的機能、製造に係る人的機能、販売に係る人的機能、役務提供に係る人的機能等が含まれる。また、ここでいう「恒久的施設が果たすリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能」とは、当該恒久的施設を通じて行う事業に従事する者が行うリスクの引受け又はリスクの管理に関する積極的な意思決定が必要とされる活動をいう(法基通20-2-3)。 (注2) 「恒久的施設において使用する資産」には、法人税法基本通達20-5-21《恒久的施設に帰せられる資産の意義》の判定により恒久的施設に帰せられることとなる資産のほか、例えば、賃借をしている固定資産(法令13条8号イからナまで《減価償却資産の範囲》に掲げる無形固定資産を除く。)、使用許諾を受けた無形資産(措置法第66条の4の3第5項第2号《外国法人の内部取引に係る課税の特例》に規定する無形資産のうち重要な価値のあるものをいう。)等で当該恒久的施設において使用するものが含まれる。また、ここでいう「賃借」及び「使用許諾」には、賃借及び使用許諾に相当する内部取引が含まれる(法基通20-2-4)。 (注3) 「その他の状況」には、恒久的施設に帰せられるリスク及び恒久的施設に帰せられる外部取引が含まれる。ここでいう、①リスクとは、為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれをいい、②リスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能を恒久的施設が果たす場合には、当該リスクは当該恒久的施設に帰せられる(法基通20-2-1)。 以下では、一方の締約国の居住者及び恒久的施設帰属所得の意義につき争われた事例を検討する。 2 裁判例 《東京地裁令和5年5月30日判決(令和3年(行ウ)第334号(第1事件)、令和4年(行ウ)第378号(第2事件)》〈棄却・確定〉(※3) (※3) TAINSコード:Z273-13855 (1) 事案の概要 本件は、UAEの首長国の一つであるドバイに本店を置くLLCである原告Xが、所轄税務署長Yから、Xは、日・UAE租税条約(以下「本件条約」という。)4条1の「一方の締約国の居住者」には該当せず、Xによる株式の譲渡に係る所得及び役務提供に係る所得は、国内源泉所得(法法138①)に当たるとして、法人税等の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を受けたのに対し、Xはドバイの「居住者」であって本件条約が適用されるなどとして、各処分の全部の取消しを求める事案である。 ドバイを本店所在地とするXは、平成20年2月、我が国に営業所を設置し代表者(以下「本件代表者」という。)を定め、支店登記を行った上で、平成24年1月頃、東京都豊島区で事務所(以下「本件活動拠点」という。)を賃借した。Xは、平成27年12月事業年度から平成30年事業年度にわたり、日本の関連会社の株式(以下「本件各関連会社株式」という。)の譲渡やこれに付随する役務提供、顧客に対する資金移動サービスの提供を行ったが、これらに係る所得について法人税等の確定申告書を提出しなかったため、上記各処分を受けた。 本件当時、連邦国家であるUAEにおいては、法人(LLCを含む。以下同じ。)に対する連邦レベルの課税制度が設けられておらず、各首長国が独自の課税制度を有していた。また、ドバイでは、全ての課税対象者の課税所得に対して所定の税率による所得税を課す旨規定していた(ドバイ所得税命令)が、実際に租税を課されるのは、石油会社、ガス会社、石油化学会社又は外国銀行の支店等に限られており、Xは、UAE及びドバイにおいて租税を課されていなかった。 (2) 争点及びXの主張 本件の争点は、本件条約4条1に規定する「一方の締約国の居住者」該当性(争点1)、及びXが納付すべき法人税の課税標準となる国内源泉所得の有無及びその範囲(争点2)である(他の争点は省略)。 Xは、本件各関連会社株式の譲渡に係る譲渡益は本件条約13条6の国内源泉所得に該当せず(※4)、Xのドバイ本店には実態があり、日本における本件代表者がドバイを訪れた際には日本における事業内容を報告し了承を得ていたのであるから日本の活動拠点における事業活動の所得を全て日本の活動拠点の所得として帰属させることはできない、ドバイ本店と本件活動拠点の帰属割合を0対100とすることは誤りであるなどと主張した。 (※4) 同項では、不動産化体株式その他一定の財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ租税を課することができる旨規定されている。 (3) 裁判所の判断 東京地裁は要旨、次のように判示し、Xの請求を棄却した。 ① 争点1について ➤「一方の締約国の居住者」の意義 OECDモデル租税条約2010年度版(以下「モデル条約」という。)4条1は、「『一方の締約国の居住者』とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者(括弧内略)をいう。」と規定されており、本件条約4条1と同趣旨の規定と解される。モデル条約4条1は「一方の締約国の居住者」の意義を明らかにすることにより、源泉地国又は所在地国と、居住地国との間の二重課税及び二重居住者の問題を解決する趣旨の規定とされており、具体的には、条約の締約国の国内法が、いずれも、納税者と居住地国との人的結び付きに着目して、課税上「居住者」と取り扱われる条件を定め、その条件を満たす納税者に無制限納税義務を課している場合において、双方の締約国において『居住者』とされる者を、いずれか一方の締約国の居住者に振り分けるための基準を定めるものである。本件条約4条1についても上記と同様の機能を有する規定と解される。 ➤ 当てはめ 本件条約4条1は、「一方の締約国の居住者」について、居住者基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう旨規定しているが、連邦国家としてのUAEは、法人に対する課税制度を設けておらず、また、ドバイ所得税命令の規定によれば、ドバイに所在する恒久的施設を通じてドバイにおいて事業を行う法人は、その設立地、本店又は主たる事務所の所在地等を問わず、等しく「課税対象者」に該当し、かつ、ドバイにおける取引又は事業に由来する所得に限って課税対象とする旨規定されていることから、ドバイ所得税命令に基づき、「住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準」(居住者基準)により課税を受けるべきものとされる者はない(※5)。以上のようなUAE及びドバイの税制の下においては、Xは、ドバイの「居住者」、すなわち本件条約4条1の規定する「一方の締約国の居住者」に当たらない。 (※5) 本件条約の「不可分の一部」をなす日本・UAE間で取り交わされた議定書2項によれば、「一方の締約国の居住者」には、国等のほかに、UAEの「一方の締約国の居住者」として、(a)アラブ首長国連邦中央銀行、(b)アブダビ投資庁、(c)国際石油投資会社、(d)アブダビ投資評議会、(e)ドバイ投資会社、及び(f)ムバダラ開発会社の6機関が含まれるとされている(ただし、これに限らないとされている)。 ② 争点2について ➤ 恒久的施設帰属所得に係る判断の枠組みについて 平成30年改正前法人税法138条1項1号は、国内源泉所得の一つとして、「恒久的施設に帰せられるべき所得」を掲げ、当該所得に当たるか否かにつき、「当該恒久的施設が果たす機能」、「当該恒久的施設において使用する資産」及び「当該恒久的施設と当該外国法人の本店等・・(中略)・・との間の内部取引その他の状況」を勘案することとしている。同規定は、OECDが2010年に国際課税原則の見直しを行い、モデル条約において新たに導入された7条において採用されたアプローチ(筆者注:AOAを指す。)を踏まえ定められたものであることからすれば、法人税基本通達(筆者注:法基通20-2-1、同20-2-3~4を指す。上記1(2)参照。)の定めは、平成30年改正前法人税法138条1項1号の趣旨に沿う合理的なものといえる。 ➤ 事実認定及び当てはめ 次に掲げる点から、本件各関連会社株式の譲渡益及びその他役務提供に係る収入につき、本件活動拠点に帰せられる所得に当たる。 (4) 検討 ① 本判決の意義 本判決の意義は、本件条約にいう「一方の締約国の居住者」の意義について、モデル条約4条1と同趣旨と解した上で、「住所、居所、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者」がそれに当たることを明らかにした点にある。そもそも、租税条約は源泉地国又は所在地国と、居住地国との間の二重課税及び二重居住者の問題を解決するためのものである以上、実際に課税されているか否かは重要な判断要素となり得る。 ② 本判決の射程 UAEでは、2023年6月1日以降開始事業年度から、UAEで設立された法人及びUAE外で設立されUAEで管理支配されている法人について、連邦法人税が導入された(※6)ため、本判決はあくまで事例判決であるものの、租税条約の解釈に当たりモデル条約コメンタリーが「解釈の補足的な手段」として参照されるべき資料であること(※7)、恒久的施設帰属所得の解釈において、一連の法人税法基本通達(上記1(2)参照)に準拠すべきことを明らかにした点(※8)で有用である。 (※6) EY「Worldwide Corporate Tax Guide 2024」1917~1918頁 (※7) グラクソ事件最高裁平成21年10月29日判決。本連載【第12回】参照。 (※8) 西中間浩「連邦法人税導入前のUAEのドバイに本店を置いていたLLCにつき、日・UAE租税条約の『一方の締約国の居住者』に該当しないとして同条約の特典の享受を認めなかった事例」(税経通信、2024年11月)130頁は、「本裁判例では、株式の譲渡に係る利益変動をリスクとみなし、そのリスクにつき意思決定を行っている拠点に負わせていること、本店に実体があり報告を定期的に行っていたとしてもそれが事業全般の報告であって、個別の取引について許可を求めること等がなければ、意思決定はPE側にあるとされることなど、『恒久的施設に帰せられるべき所得』の範囲を考える上で、実務上参考となる判示がなされている。」と述べている。 (了)
New
印紙税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第101回】「営利法人の本業以外の行為に関連して作成された受取書」
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第101回】 「営利法人の本業以外の行為に関連して作成された受取書」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社は株式会社として飲食店を全国に展開しています。今回、不採算店舗を閉鎖するに際してその店舗敷地を売却する予定です。金額も多額なため、譲渡代金は銀行振込みにより入金してもらおうと思いますが、入金確認後、当社からは下記の領収書を発行します。 この場合、印紙税の取扱いはどうなりますか。 記載金額6,000万円の第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)に該当し、印紙税額20,000円となる。 [検討1] 銀行振込みであり、直接現金の引渡しを受けていないが、この場合の領収書にも収入印紙の貼付が必要なのか 第17号文書でいう金銭又は有価証券の受取書とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者が、その受領事実を証明するため作成し、その引渡者に交付する単なる証拠書類をいうとされている。 事例は、直接現金の引渡しを受けたことにより発行した領収書ではないが、銀行振込みにより、銀行口座に入金された譲渡代金の受領事実を証明するために作成されたものであることから、売上代金に係る金銭の受取書に該当する。 [検討2] 当社の所有していた不動産を譲渡した対価として、代金を受領した際に発行するものであり、当社事業である飲食店の売上げではないので、営業に関しない受取書として非課税にならないのか 株式会社等の営利法人は、事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、会社法の規定により「商行為」とされており、その名義で作成される受取書は、基通別表第一第17号文書の29~32を除き、営業に関する受取書に該当する。 (了)
New
会計
税務・会計
解説
解説一覧
財務会計
連結会計
連結会計を学ぶ(改) 【第10回】「投資と資本の相殺消去・非支配株主持分」
連結会計を学ぶ(改) 【第10回】 「投資と資本の相殺消去・非支配株主持分」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結貸借対照表は、親会社及び子会社の個別貸借対照表における資産、負債及び純資産の金額を基礎とし、子会社の資産及び負債の評価、連結会社相互間の投資と資本及び債権と債務の相殺消去等の処理を行って作成する(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)18項)。 今回は、投資と資本の相殺消去及び非支配株主持分について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 投資と資本の相殺消去 資本連結とは、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去し、消去差額が生じた場合には当該差額をのれん又は負ののれんとして計上するとともに、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を非支配株主持分に振り替える一連の処理をいう(連結会計基準59項)。 支配獲得時における資本連結の手続には次のものがある(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)3項)。 1 基本的な考え方 連結貸借対照表は、親会社及び子会社の個別貸借対照表における資産、負債及び純資産の金額を基礎にしてこれらの数値を合算し、さらに二重計上になっている部分を調整することにより作成される。 支配獲得日において算定した子会社の資本のうち親会社に帰属する部分を投資と相殺消去し、支配獲得日後に生じた子会社の利益剰余金及び評価・換算差額等のうち親会社に帰属する部分は、利益剰余金及び評価・換算差額等として処理する(連結会計基準(注6))。 作成のイメージは、おおむね次の図表のとおりである。 【図表:連結貸借対照表の作成プロセスのイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 連結精算表の作成 【設例1】 Ⅲ 投資と資本の相殺消去に関する留意点 1 相殺消去される子会社の資本 連結会計基準は、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は相殺消去するものとし、相殺消去される子会社の資本は、子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等と評価差額からなると規定している(連結会計基準23項)。 具体的には、資本連結手続において相殺消去の対象となる子会社の資本の額は、以下の①及び②に③の項目を加えた額となる(以下の金額はいずれも当期までの期間に課税された法人税等及び税効果額控除後の金額である。資本連結実務指針9項)。 なお、子会社の資本の額には、新株予約権は含まれない(「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」(企業会計基準適用指針第8号)5項)。 2 支配獲得日までに生じた子会社の利益剰余金 支配獲得日までに生じた子会社の利益剰余金は投資と相殺される(資本連結実務指針21項)。 一方、支配獲得日後に生じた親会社の持分に帰属する子会社の損益は、親会社株主に帰属する当期純利益として処理され、取得後利益剰余金となる。 子会社に係るその他の包括利益累計額(その他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額など)については、支配獲得日までの持分額(投資と相殺消去)とその後に生じた持分額(連結株主資本等変動計算書上のその他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額の区分等に計上)とに分けて処理されることとなる。 子会社のその他有価証券評価差額金の増減額に関する連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書上の取扱いについては、「金融商品会計に関するQ&A」(移管指針第12号)Q73が参考となる。 Ⅳ 非支配株主持分 1 非支配株主持分の概要 子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は、非支配株主持分とする(連結会計基準26項)。 支配獲得日の子会社の資本は、親会社に帰属する部分と非支配株主に帰属する部分とに分け、前者は親会社の投資と相殺消去し、後者は非支配株主持分として処理する(連結会計基準(注7)(1))。 支配獲得日後に生じた子会社の利益剰余金及び評価・換算差額等のうち非支配株主に帰属する部分は、非支配株主持分として処理する(連結会計基準(注7)(2))。 2 連結精算表の作成 設例を用いて、非支配株主持分を説明すると次のようになる。 【設例2】 3 非支配株主持分に関する留意点 非支配株主持分は、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分であり、支配獲得時に子会社の資本のうち非支配株主に帰属する部分について、議決権を有する株式の持分比率に基づいて計上する(資本連結実務指針23項)。 株式を段階的に取得している場合であっても非支配株主持分を計上するのは支配獲得時である。 支配獲得後においては、子会社の損益のうち非支配株主に帰属する部分を、持分比率に基づき算定して連結損益計算書の非支配株主に帰属する当期純利益に計上するとともに、非支配株主持分に加減する(資本連結実務指針24項)。 非支配株主持分の増減は、このほか、株式の追加取得、一部売却及び時価発行増資等による非支配株主持分比率の変動、子会社における支払配当金の発生、連結会社間の債権債務の相殺消去に伴う子会社における貸倒引当金の減額、子会社における未実現損益の消去などによっても生じる(資本連結実務指針24項)。 (了)
