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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第87回】
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第87回】 東洋大学法学部教授 泉 絢也 (イ) 税務調査による税務コンプライアンスの確保とCEXへの着目 前回のとおり、暗号資産の利用が広がるにつれて、「これまで確定申告をしたことがなかった者」にも、申告義務が生じる可能性があるため、確定申告に不慣れで、取引の記録を適切に管理できない納税者においては、税金を申告しない、あるいは正しく計算できないといった事態が生じ、税務コンプライアンス違反のリスクが高まることが懸念される。 国税庁としては、納税者が適正に申告を行うための環境の整備、すなわち納税者が適正に申告を行うためのガイドライン整備やセルフチェック項目の導入といった「事前的な対応」だけでなく、「事後的な対応」である税務調査を通じて、申告漏れや誤りを是正し、税務コンプライアンスを確保することも重要である。 その際、日本では顧客の本人確認手続を実施している国内CEXが暗号資産取引の場を提供しており、市場で大きな役割を果たしているため、まずは国内CEXを起点に調査を展開することが予想される。 実務上、課税当局が最初に接触できる相手であり、かつ各種規制によって内部の態勢が整備されているCEXは、「アンカーポイント」として重要である。 国内CEXについては、次のとおり、トラベルルールの関係で、利用者にとっては使い勝手が悪い面がある一方、国税庁にとっては有益な情報ハブとして重要な存在であることを理解しておく必要がある。 とりわけ、暗号資産を円に交換、円建てでの即時決済、あるいは日本語対応といった付加価値により、一般消費者レベルでは国内CEXが引き続き主流のプラットフォームとなる傾向が強い。 国内CEXと税務調査との関係をさらに考えてみると、まず、多数存在する調査対象候補者の中から実際に税務調査を行う対象者を選定する調査選定の場面では、特定事業者等への報告の求め(通法74の7の2)や事業者等への協力要請(通法74の12①)等を利用して国内CEXから利用者の身元や取引履歴等の情報及び資料を入手することが考えられる。 特定事業者等への報告の求めを利用すると、例えば、国内CEXに対して、「〇年〇月〇日~〇年〇月〇日の期間において、取引金額が■■■円以上の暗号資産取引を行っている顧客」の情報を報告させることができる。 これは、特定の調査対象者を指定して情報を求めることを前提とせず、「取引金額が■■■円以上の暗号資産取引を行っている顧客」全員の情報の報告を求めることを可能とする制度である。 他方、個別の税務調査の場面では、国税庁は、質問検査権(通法74の2)に基づいて、調査対象者本人からだけではなく、その利用している国内CEXから同人の取引情報等を入手することができる。 実務上も、税務調査における本人申述とCEX提供データとのクロスチェックによって、容易に申告漏れが明らかとなるケースが散見されている。 上記のほか、財産債務調書の記載を端緒として調査を展開することも考えられる。 所定の要件を満たし、財産債務調書を提出する義務がある者は、同調書に暗号資産も記載しなければならないことに注意を要する(泉絢也=藤本剛平『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社、2023)246~253頁)。 上記のとおり、国税庁は、国内CEXを起点として、効率的・効果的な税務調査を展開することが可能である。 他方、後で述べるとおり、日本の居住者が、自身の身元に関する情報を保有する国内CEX等とのつながり(接点)を断ち、いわば完全にスタンドアロンな状態で海外CEXやプライベートウォレットを利用している納税者については、国税庁がその存在及び関係する暗号資産取引を捕捉することは非常に困難である。 このような納税者は暗号資産のリテラシーが高く、一般的なマス層には含まれないため、税務執行上の取組の優先順位が低くなる可能性がある。 しかしながら、このような納税者の税務コンプライアンスリスクは非常に高いため、決して放置されるべきではなく、専門部署による適正な対応が求められる。 このような層に対しては、税務調査という事後的対応による是正が唯一の手段となりやすく、国税庁にとっては、従来以上に情報収集と選定精度、そして調査能力の向上が重要となる。 もっとも、本連載第73回の29(1)のとおり、そもそも自国の居住者に係る暗号資産の利用や税務コンプライアンスの実態を把握できない現状では、各層のリスクレベルや該当する納税者数を正確に把握して、税務執行上の取組の優先順位を効果的に設定することが難しいという根本的な問題が存在する。 なお、国税庁が令和6年11月に公表した「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」の資料では、暗号資産等取引を⾏っている個人に対する調査の1件当たりの追徴税額は 662 万円であり、所得税の実地調査全体の275万円という金額の2.4倍となっている。 これは、国税庁による対象者の選定が成功している証左であるとも評価できる一方、なお潜在的な申告漏れ層が多数存在している可能性をも示唆している。 (了)
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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第91回】「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その2)」~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第91回】 「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける 低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その2)」 ~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~ 税理士 青木 幹 7 争点1に関する裁判所の判断 (1) 法人税法22条2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、無償による資産の譲受けも収益の発生原因となるものと規定しているところ、その趣旨は、法人が資産を無償で譲り受ける場合には、譲受時における適正な価額(時価)に相当する収益があると認識すべきものであることを明らかにしたものであると解される。 譲受時における適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるところ、たまたまそのうちの一部のみについて対価を現に支出したからといってその額と適正な価額との差額部分の収益が認識され得ないものとすれば、無償譲受けの場合との間で公平を欠くことになるから、その趣旨からして、その場合に益金の額に算入すべき収益の額は、当該資産の譲受けの対価の額と同資産の譲渡時における適正な価額との差額であると解される(※1)。 (※1) 最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決(平成6年(行ツ)第75号)・民集49巻10号3121頁を引用して説示。 (2) 本件法人税更正処分は、平成27年3月30日付けで本件株式譲渡契約に基づき、D社からC社に対してされた本件株式譲受けに係る本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額を受贈益の額と認定して、法人税法22条2項に基づき本件事業年度の益金の額に算入したものであるところ、本件株式の適正な価額が25億2,538万2,600円であることについては当事者間に争いはなく、また、前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約に係る本件株式の対価は12億1,000万円(本件対価の額)と認められる。前記説示したとおり本件対価の額と適正な価額との差額13億1,538万2,600円を受贈益の額と認定して益金の額に算入するのが相当である。 (3) これに対して原告は、受贈益の額は資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると主張する。しかしながら、前記説示したとおり、法人税法22条2項によれば、資産の低額譲受けの場合にも、当該資産には譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められるため、当該資産の譲受けの対価の額と譲受時における資産の適正な価額との差額に相当する収益があると認識すべきであると解されることからすれば、これを「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限定する理由はないというべきである。 この点について、原告は、法人税法22条2項の立案過程から、資産の低額譲受けの場合、常に資産の対価と適正な価額との差額の全額が受贈益の額とされるのではなく、その差額のうち贈与を受けたと認められる金額があるときに限り、その金額が受贈益の額とされることが確認できると主張する。しかしながら、昭和40年度税制改正によって制定された現行の法人税法22条2項については、その法案の国会へ提出前の立案過程において、昭和38年B案42条として、著しく低い価格の対価により資産を譲渡した場合に、当該資産の時価と当該対価の差額のうちに贈与したと認められる部分の金額があると認められるときは、当該贈与したものと認められる部分の金額を益金の額に算入する旨の規定が検討されたことが認められるが、同案は、あくまで立法過程での一案にとどまり、実際には同案で検討された文言が現行法人税法22条2項に反映されなかったのであるから、これをもって同項の解釈とすることはできない。 また、法人税法37条8項が、内国法人が資産の譲渡等をした場合において、その譲渡等の対価の額が当該資産の譲渡の時における価額に比して低いときは、当該対価の額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれるものとする旨を規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合にも、同法22条2項の解釈として受贈益の額となる金額が、資産の対価と適正な価額との差額のうちの「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られる旨主張する。 しかしながら、法人税法にいう寄附金の額の認定に関し、同法37条7項は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産を贈与した場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与時における価額によるものとするが、このうち広告宣伝費及び見本品の費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費等とされるべきものを除くと規定しており、贈与をした側においては、金銭その他の資産の贈与であっても上記の交際費等とされるべきものは寄附金の額に含まれないのに対し、同法22条2項の収益の額は、前記のとおり資産の譲渡時の適正な価額をもって認識されるべきものであるから、贈与を受けた側においては、贈与をした側の寄附金であっても、収益の額となることに何ら変わりがないものとされている。 そうすると、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とする原告の上記主張は採用することができない。 さらに、原告は、法人税法25条の2第3項は、資産の対価とその適正な価額との差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となると規定していることをもって、資産の低額譲受けの場合も、同法22条2項の解釈として受贈益となるのが資産の対価と適正な価額の差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」に限る旨主張する。 しかしながら、法人税法25条の2第3項は、あくまで内国法人が他の内国法人との間に完全支配関係がある場合に限定して、同条1項において益金不算入とされる受贈益についてその額を定めている規定であり、同条3項は、同法22条2項にいう「別段の定め」に該当するものである。 前記前提事実によれば、本件株式譲渡の時点において、D社とC社とが完全支配関係になかったと認められるのであるから、本件において法人税法25条の2第3項が適用される余地はないというべきであるし、同項が同法22条2項にいう「別段の定め」に該当する以上、このような特則規定から溯って益金算入に関する一般規定である同項を解釈する根拠とすることは妥当ではない。 したがって、法人税法25条の2第3項を根拠とする原告の前記主張は採用することができない。 なお、C社は、本件株式を取得するに当たり、本件対価と同額の12億1,000万円を借り入れていることが認められ、本件株式以外に資産がなく、その時点の純資産額は資本金と同額の1,000万円であったことが認められる(※2)。しかるに、本件株式譲渡後にされた本件交換では、H社株式88万3,400株(本件株式譲渡日における時価相場相当額13億1,538万2,600円)がC社の株式の交換対価として、C社の株主Fらに対して交付されていることが認められるが、上記のとおりC社の純資産額は1,000万円しかなかったのであるから、H社の株式88万3,400株がFらへ本件株式交換の対価とされたことは、本件株式譲受けにおいて、C社が本件対価の額を12億1,000万円と本件株式の適正な価額25億2,538万2,600円との差額13億1,538万2,600円も含めてD社から実質的に贈与を受けたことを示しているというべきである。 (※2) ここで裁判所が言っている純資産額1,000万円は簿価純資産額であると考えられる。判示で、本件E社株式の適正な価額を25億2,538万2,600円であると認定しているのであるから、時価純資産額は有価証券の適正な価額25億2,538万2,600円から借入金を引いた12億1,000万円を引いた残額13億1,538万2,600円に裁判所が判示している資本金相当額の純資産1,000万円を加えた金額である13億2,538万2,600円であったと計算される。C社においては創立費などの経費が発生しているから、この金額より時価純資産額は若干少ないと考えられる。 そうすると、仮に、受贈益の額は、資産の対価と適正な時価との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると解される余地があるとしても、上記事実関係からすれば、本件株式譲受けにより、C社は本件対価の額と本件株式の適正な価額との差額13億1,538万2,600円を「実質的に贈与を受けたと認められる」から、原告の主張は、この点からも採用できない。 (4) 原告は、受贈益の額となる資産の対価の額と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」は、「全契約内容」に照らして本件株式譲受けに当てはめる限り、本件株式交換がされたから「実質的に贈与を受けたと認められる金額」がどこにもなく、したがって、本件株式譲受けにおいて、C社には受贈益の額はない旨主張をする。 原告の主張は、判然としない部分があるが、本件における法人税法22条2項の収益の額の認定に当たっては、本件スキームに係る全契約内容に照らし、本件株式譲受け対価には、本件対価の額である12億1,000万円に限らず、その後行われた本件株式交換契約に基づきFらに交付されたH社株式88万3,400株(本件株式譲渡時の時価相当額13億1,538万2,600円)も含まれると主張すると解される。 しかしながら、法人税法22条2項の収益の額として、資産の対価と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額となるものではないことは前記説示のとおりであり、原告の上記主張は、その前提を誤っているというべきである。 法人税法22条2項の収益の額の認定にあたり、契約内容全体に照らして解釈すべきであるとしても、法人税の取扱いにおいては、資産の販売等に係る収益の額の認定は、同一の相手方又はこれとの間に支配関係がある者との間で締結した複数の契約について、一定の場合に結合したものを一つの契約とみなし収益を認定する場合もあるが、このような場合を除き、個々の契約ごとに計上するのが原則であると解される(法人税基本通達2-1-1参照)。 前記前提事実によれば、本件株式譲渡契約と本件株式交換契約は、本件スキームの一環として行われたものであると認めることができるが、これらの契約が締結された時点では、本件各合意当事者は、いまだ支配関係にあるものではなかったと認められる。本件株式譲渡契約は、D社とC社を当事者として、本件株式を本件対価の額で譲渡したものであったのに対し、本件株式交換契約は、C社とH社を当事者として、C社の全株式とH社88万3,400株とを交換するものであり、かつ、本件株式交換契約の対価であるH社の株式の交付を受けたのはFらであったことが認められるところ、これによれば両契約は、取引の当事者、取引対象とする資産及び取引態様を異にする別個の取引であったといわざるを得ない。 法人税法22条2項の収益の額の認定に当たり、本件株式譲渡契約に係る対価として、本件対価の額のほかに、別個の契約である本件株式交換契約に係る対価であるH社の株式88万3,400株を、本件株式譲受けの対価と認めることはできない。 したがって、原告の前記主張は採用することができない。 (5) 本件株式譲受けに係る受贈益の額には、本件対価の額である12億1,000万円と本件株式の適正な価額である25億2,538万2,600円の差額である13億1,538万2,600円であるというべきであるから、これを本件株式譲受けにかかる受贈益の額に算入するのが相当である。したがって、争点1についての原告の主張には理由がない。 8 まとめ及び検討 法人税法22条2項の益金の額について争われたケースである。本件譲渡で支払われた対価の額をC社がD社に支払った対価12億1,000万円で判定するべきか、納税者の主張するようにスキームを一体の取引とみて株式交換で移転したH社株式883,400株(13億1,538万2,600円相当)を加えた25億2,538万2,600円でみるべきかが争点となった。 この点については、判決は法人税基本通達2-1-1を引用して一定の場合は一体とみなして取り扱うこともあるが、本件では、取引の時期、取引の相手、取引の対象となった資産、取引の態様が異なり一体の取引と見ることはできないと判示している。このような結論になることは、全スキーム全体をみても当然の結果であると考えられる。ただし、法人税基本通達2-1-1は課税庁の見解であって法源ではないので、法人税法22条2項の解釈について本通達が合理的であることについて判断した上で、通達を判断指針として採用すべきであったと考えられる。 法人税法22条2項は、「無償による資産の譲受け」について定めているが、低額による資産の譲受けについては明文がない。原告はこの点については主張しておらず、審理の対象になっていないが、判示はこの点についても説示している。学説も低額譲渡の場合の益金算入について積極的に解している(※3)。また、判示においても、この立場である最高裁平成7年の判決を引用して低額譲渡の場合、公平性と経済的な価値が認められることを理由に益金の額に算入されると説示している。この点については、異論はないと思われる。 (※3) 金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂、2021年)346頁 本判決では、法人税法22条2項は所得の計算の本則であって、別段の定めに該当しない限り、本条文に沿って解釈するという立場をとっている。これに対し、反対する論評も存在する。「22条2項は、無償譲渡の場合に当然に時価によって収益を認識すると書いていないが、むしろ法37条7項、8項に規定の適用によって、22条2項は、適正な価額を意識することができると考える。すると、37条8項は、『当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与と認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。』と規定しているのであるから、低額譲渡又は高額譲受けにおいて差額が発生することについて、経済合理性が認められ、実際に贈与を受けたと認められない部分があるときは、22条2項の益金の額に算入されないと考えるのである。したがって、東京地裁が、『法人税法における寄附金の額の認定問題と、同法22条2項に基づく収益の額の認定問題は、基本的に別個のものというべきであるから、同法37条8項を根拠とするX社(※4)の上記主張は採用することができない。』とした部分については、筆者は賛成できない(※5)。」という指摘がある。 (※4) 本稿では、X社はE社と表記されている。 (※5) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号 この指摘については、確かに受贈益は寄附金の裏返しの概念で、多くの場合において、法人税法37条の寄附金の額と同法22条2項にいう経済的利益の発生は同じ額となるであろうが、経済的利益の供与があった場合でも経済的利益を供与した側にも経済的利益、例えば広告宣伝などの効果が生ずることがあるのであるから、寄附金の概念と同法22条2項にいう有償又は無償(低額譲渡等も含む)取引から生じる益金の概念は、判示されているように同じ概念ではないと考えられる。 仮に本件スキームによらないで、H社が外国法人D社からすべてのE社株式を直接購入すれば、H社の目的は達せられたはずである。一方で、Fらには所得課税が発生することが想定されていたと思われる。Fらが支配していたD社はタックスヘイブン(※6)と考えられるBritish Virgin Islandに存在するので、 外国法人D社に対しては株式の譲渡益が発生しても法人の居住地国の法人税が課税されない可能性が高いと思われる。 (※6) Government of British Virgin Island’s webpage visited on August 30, 2025 : Private company’s webpage visited on August 30, 2025 says “The British Virgin Islands is known for its favorable tax regime, providing businesses with significant advantages. Companies incorporated in the British Virgin Islands are exempt from corporate income tax, capital gains tax, and withholding tax on dividends or interest payments.” Website: https://www.globecapitalist.com/company-formation/british-virgin-islands/ しかし、Fらについては、D社の事業の実態などの情報がないので租税特別措置法40条の4又は同法66条の6によるCFC課税の対象となるかどうかの予測は難しいが、CFC課税の対象になる可能性も否定できない。加えて、「外国法人H社(本稿ではD社)が『事業譲渡類似株式』を譲渡したときは、それは国内源泉所得となり(法人税法施行令178①四ロ)、時価により我が国の法人税法が課税されることになる(※7)。」(※8)と指摘されている。 (※7) 渡辺充「関係会社間の非上場株式の譲受けと株式交換のスキームについて株式譲受けが低額譲渡に当たるとされた事例」月刊税理(Vol.66 No.6)2023年5月号95頁 (※8) 事業譲渡類似株式の譲渡益課税の指摘は、藤岡祐治「法人税法22条2項と低額譲受けによる受贈益の計上――東京地判令和3・10・29」ジュリスト(June 2022 No.1572) 11頁においても指摘されている。 Fらグループで保有していたE社株式のH社へ移転にかかるキャピタルゲイン課税は、Fらグループに関する限りは、本件スキームにより回避されたと考えられる。C社株式の譲渡対価の額がなぜ12億1,000万円に設定されたかを示す資料はないが、上記事業譲渡類似株式の譲渡益が国内所得としてD社に日本の法人税等が課税されないようにE社株式の譲渡が簿価で行われた可能性もある。仮にこの前提に立てば、低額譲受けとしてキャピタルゲインに相当する金額がD社に課税されたこととなる。その後に行われた株式交換は適格株式交換に該当したと考えられるから、Fらに移転されたH社株式については、Fらに課税されていなかったと考えられる。 結局のところ本件スキームにより、本来E社株式を譲渡したFらのグループに本来課税されるべき譲渡益に対応する法人税等は、本件スキームによりH社グループに移転したC社における低額譲受けとして課税され、H社グループが負担するという不条理な結果となったとみることもできる。本件スキームの問題点は、低額譲渡の問題に加えて、税金の負担者が入れ替わってしまった点にもあると思われる。 (了)
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財務諸表監査
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第181回】株式会社アルファクス・フード・システム「特別調査委員会調査報告書(2025年7月25日付)」
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第181回】 株式会社アルファクス・フード・システム 「特別調査委員会調査報告書(2025年7月25日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【株式会社アルファクス・フード・システム特別調査委員会の概要】 【株式会社アルファクス・フード・システムの概要】 株式会社アルファクス・フード・システム(報告書上は「AFS社」、以下「アルファクス」と略称する)は、1993(平成5)年12月設立、外食企業向け基幹系システムの提供に係る業務等を目的とする会社である。 売上高1,659百万円、経常利益80百万円、資本金905百万円、従業員数83名(訂正前の2024年9月期実績)。東京証券取引所グロース市場上場(2025年9月6日上場廃止)。 会計監査人は、2024年9月期決算までHLB Meisei有限責任監査法人、2024年12月28日付で、監査法人やまぶきを選任したが、同監査法人は2025年5月7日付で就任を辞退、その後、同年9月30日付で、プログレス監査法人を一時会計監査人に選任している。 【調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 アルファクスは、2025年3月下旬頃、外部の機関から、周辺サービス事業において過去に行った配膳ロボットを始めとする製品の販売取引に関する売上計上時期の妥当性について、疑義を投げかけられたため、過年度の決算に関して検討すべき事態が生じたものと判断し、また、より詳細かつ正確に事実経緯を把握し、かかる会計処理の妥当性等に関する深度ある調査、検証を実施するためには、独立性・中立性・専門性の高い調査委員会を設置する必要があると判断して、2025年5月8日開催の取締役会において、アルファクスとは利害関係を有しない外部の専門家から構成される特別調査委員会を設置することを決定し、会計処理の妥当性等に関する調査を委嘱した。 さらに、特別調査委員会設置後の2025年5月頃、アルファクスは、外部の機関から、2022年11月に売却したホテルに係る不動産の譲受人である法人が、アルファクス及びその関係者との関係性から、本来的には アルファクスの連結の範囲に含まれるものであり、連結の範囲に含まれないことを前提として行った会計処理は不適切だったのではないかとの指摘も受けたため、この会計処理の妥当性等についての調査も特別調査委員会に依頼することにした。 2 不適切な会計処理の概要 特別調査委員会が調査の対象とした取引は、次のとおりである。 (1)から(7)に掲げる販売取引は、特別調査委員会から、いずれも、「売上高の早期計上」と認定されており、商談によって指摘事項に差異はあるものの、未出荷状態での売上を計上したもの、買戻し特約が付されているにもかかわらず全額を売上計上したもの、ソフトウエアが稼働する前に売上を計上したものなど、次項の原因分析でも挙げられている、売上計上に係る適切な業務フローが存在していないことから、恣意的に売上が計上されたものである。 最後の「ホテル(固定資産)売却益」だけは、「早期売上の計上」とは趣が異なり、アルファクスの債務超過状態を解消するために、ナチュラルグリーンパークホテルを第三者に譲渡したように仮装して、固定資産売却益109,512千円を計上したものであり、また、代表取締役会長である田村隆盛氏(以下、「田村会長」と略称する)自ら、この取引を進めて、さらに、事実と異なる説明を行って会計監査人の追及を逃れていたことが、特別調査委員会の調査により判明している。 特別調査委員会が認定した事実関係は次のとおりである。 3 不適切な会計処理が生じた原因の分析(報告書36頁以下) 特別調査委員会は、不適切な会計処理が発生した要因をすべて記載することは現実的 ではないとして、過去の調査における指摘事項のうち適切に取り除かれていなかったものを含め、重要性の高い要因として、次のとおり原因分析を行っている。 特別調査委員会による原因分析のうち、アルファクスに特徴的な事項を見ておきたい。 特別調査委員会は、「代表取締役に対して異を唱えることが難しい社内風土」として、実質的な創業者であり、筆頭株主である田村会長が長年代表取締役を務めているが、田村会長及びその配偶者である藤井由実子氏(※1)(代表取締役社長。以下、「藤井社長」と略称する)に対しては、異を唱えることが難しい雰囲気が社内には広がっており、適切にガバナンスを利かせる土壌が欠けていると指摘したうえで、仮に代表取締役の業務執行に不正がある可能性を役職員が認識したとしても、それが監査等委員会や内部監査にエスカレートされること、または、内部通報制度に基づく通報がされることを期待することが難しい状況であったと分析している。さらに、アルファクスの2名の代表取締役は夫婦の関係にあり、相対的に相互監督を見込める状況にはないとしている。 (※1) なお、アルファクスの有価証券報告書(たとえば、2025年9月期のものであれば44頁)では、2名の関係について、「二親等以内の親族」であると注記がされているが、調査報告書の記述が事実であるとすれば、配偶者には親等はないというべきであるから、注記は誤りとまでは言えないが、「兄弟姉妹」であるとの誤解を招きかねない表記であると指摘しておきたい。 そして、特別調査委員会は、「度重なる監査法人の交代」もまた、不適切な会計処理が見過ごされた原因であるとして、2020年以降、現在に至るまで、一時会計監査人を含めて、五つの監査法人が会計監査人を務めていることを挙げ、一つの監査法人が会計監査人を務める期間はかなり短いものとなることから、信頼関係の構築が十分になされないとともに、アルファクスの事業、財務への理解を深めるための時間が限定的となり、包括的かつ深度ある監査の遂行を困難にしている可能性が否定できないと分析を行っている。 4 再発防止策の提言(報告書39頁以下) 特別調査委員会は、再発防止策について、現在の役職員が今後もその地位にとどまることを前提として記述しているとしたうえで、そのことの是非について何ら見解を述べるものではないと断りを入れてから、次のような再発防止策を提言している。 特別調査委員会による再発防止策の提言のなかでは、「最高財務責任者の招聘」について、気になる記述があったので、とりあげておきたい。 特別調査委員会は、アルファクス社内の役職員には上場会社として必要とされる会計リテラシーが不十分であり、今から教育等を行っても今後の決算業務、監査対応などに適切に対応していくことが困難であるとしたうえで、最高財務責任者として、監査等委員会と連携しながら、社内の役職員への会計指導・相談対応や、適切な経理処理の確立、監査対応の実施などを担える人物を招聘することが望ましいと提言したあとで、アルファクスの本社所在地(山口県山陽小野田市)を考慮すると、最高財務責任者を確保することは非常な困難を伴うことが予想されるとして、日本公認会計士協会山口県部会に 所属する公認会計士は2025年5月31日時点で43人しかいないことを例示している。 【調査報告書の特徴】 アルファクスは、特別調査委員会による調査結果の公表を行い、期日までに半期報告書を提出できなかったことにより上場廃止の処分を受けるとともに、金融庁から課徴金納付命令を受けたあと、同社サイトにおいて、代表取締役社長名の「ごあいさつ」で次のように述べている。 上場していたことで「短期的な利益」にとらわれていたことが、「不適切な会計処理」につながったという言い訳なのかもしれないが、新型コロナウイルスの影響による業績低迷で債務超過に陥った時期に、自ら進んで上場廃止を選ぶことはできなかったのかという疑問が残るし、上場を維持することを目的として不適切な会計処理によって「短期的な利益」の計上にこだわった結果が、課徴金納付命令と上場廃止であったとすれば、株主に対する裏切り行為であり、2名の代表取締役の責任は重いというべきである。 1 社外取締役監査等委員の認識(報告書35頁以下) 特別調査委員会が、関連当事者間取引であると認定した「ナチュラルグリーンパークホテル」の売却をめぐる問題に関する取締役会の認識について、同委員会は、次のように指摘している。 社外取締役監査等委員の不作為については、特別調査委員会による原因分析の中でも次のように指摘がされている。 業務執行取締役3名に対して、4名の社外取締役監査等委員を置き、表面的には、ガバナンスが強化されているように見えるアルファクスであったが、常勤の監査等委員が不在であったこともまた、特別調査委員会が原因の一つに挙げた事項であった。 2 東京証券取引所による上場廃止等の決定 2025年8月5日、東京証券取引所は、アルファクス株式について、整理銘柄指定期間を8月5日(火)から9月5日(金)までとし、上場廃止日を9月6日(土)とすることを公表した。上場廃止の理由については、「株式会社アルファクス・フード・システムは、延長承認を受けた法定提出期限の経過後、休業日を除き8日目の日である本日までに、2025年9月期半期報告書を提出しませんでした」と説明している。 3 証券取引等監視委員会による課徴金納付命令勧告 2025年9月2日、証券取引等監視委員会は、「株式会社アルファクス・フード・システムにおける有価証券報告書等の虚偽記載等に係る課徴金納付命令及び訂正報告書等の提出命令勧告について」をリリースして、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、3,486万円の課徴金納付命令と訂正報告書等の提出命令を発出するよう勧告を行ったことを公表した。 同リリースで、証券取引等監視委員会は、「ホテル売却に係る不適切な会計処理」の事実関係を次のようにまとめている(太字・下線は原文のまま)。 なお、金融庁は、11月6日、アルファクスに対して、納付すべき課徴金の額を3,486万円、納付期限を2026年1月6日とする課徴金納付命令の決定を行った。 4 訂正された過年度の決算内容 アルファクスは、2026年1月5日に提出した有価証券報告書から、過年度決算の修正内容を確認して、本稿を終えたい。まず、株式会社ナチュラルグリーンパークホテルが連結子会社となったことで、2023年9月期から連結経営指標等が公表されていることが大きな変更点であり、時評では「修正後」は連結決算の数値を記入している。 ナチュラルグリーンパークホテルの売却により、2023年9月以降は債務超過の状況から脱していたが、修正の結果、純資産額は2022年9月期以降、債務超過の状況にある。 (了)
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税理士事務所の労務管理Q&A 【第30回】「高年齢者の災害防止策」
税理士事務所の労務管理Q&A 【第30回】 「高年齢者の災害防止策」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 定年延長や雇用継続制度により、60歳以上の労働者は増加しています。一方、労働災害による死傷者数(休業4日以上)に占める割合は約30%に達しています。このため労働安全衛生法が改正され、高年齢者の労働災害防止策が求められています。 今回は、高年齢者の労働災害とその防止策について解説します。 * * 解 説 * * 1 高年齢者の労働災害防止規定の創設 2026年4月から施行される改正労働安全衛生法により、高年齢者に対する労働災害防止策が事業者にとって「努力義務」となります。 この改正は、規模や業種にかかわらず、すべての事業者が対象です。 (高年齢者の労働災害防止のための措置) (※下線筆者) 2 事業者としての災害防止対策 高齢化に伴い増加傾向にある高年齢労働者の労働災害を防止するため、事業者がその特性に配慮した安全衛生対策(高年齢者の身体機能の低下を考慮した作業環境の改善や、作業の管理を行うこと等)を講じることが求められています。 (1) 作業環境の改善等 高年齢者の労働災害の特徴は、工場内で機械へまきこまれるなどの事故よりも、「階段を踏み外すなどによる転倒」や「不自然な姿勢で行った作業での腰痛」といった事故の方が多い点といわれています。それぞれの作業環境に合った対策が必要です。また、常に健康状態を把握しておくことも大切です。 ◆〈ご質問事例(職場内で生じた足のねん挫)の場合〉の対策 (2) 個々の労働者の状況に合わせた対応 加齢に伴い、視力・聴力、平衡感覚(バランス)、筋力等は低下します。また、「高年齢者」は、身体機能の低下には大きな個人差があります。高年齢者の年齢は、法律上明確に定められていませんので、単に年齢による線引きではなく、個々の労働者の状況に合わせた対応が求められます。 たとえ、作業環境が若いときと同じであっても、身体機能の低下が労働災害を引き起こします。 3 努力義務と法的リスク 前述のとおり、今回の改正は事業所の規模・業種を問わず適用されます。「努力義務だから」、「危険作業はないから」対策を講じなくてもよいということにはなりません。 罰則はありませんが、災害防止対策を講じていない状態で高年齢労働者が労働災害を被った場合、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償を請求されることもあります。 「義務規定」か「努力義務規定」かに関わらず、十分に対策を講じ、高年齢者の労働災害を減らしていかなければなりません。 (了)
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〔業種別Q&A〕労使間トラブル事例と会社対応 【第13回】「長時間労働・残業代問題」
〔業種別Q&A〕 労使間トラブル事例と会社対応 【第13回】 「長時間労働・残業代問題」 〈情報通信業・IT〔Q2〕〉 弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士 木原 康雄 【Q】 SEの仕事はクライアントの要求・要望次第というところがあり、また、チームでの作業のため、自分で作業進捗管理をすることが難しい場合があります。そのため、長時間残業になってしまうことがありますが、残業代の増加を抑制する方法としてどのようなものがあるでしょうか。 【A】 下記解説のとおり方法は各種あり得ますが、有効とされるための要件・手続を満たしていなければならず、慎重な検討が必要です。 ▲ ▼ ▲ 解 説 ▲ ▼ ▲ 1 情報通信業・IT業界における長時間労働の問題 SE等のITエンジニアあるいは情報通信業・IT業界の特徴として、長時間労働となるケースが多いという点がある。 厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和6年度確報)でも、「情報通信業」における所定外労働時間は、「運輸業、郵便業」に次いで多くなっている。 長時間労働の要因として、厚生労働省HP「IT業界の働き方・休み方の推進」では、受発注の仕組みやITエンジニアの仕事の特性が挙げられている。具体的には、以下のとおりである。 上記のいずれにおいても、関係者間のコミュニケーション不足があると、プロジェクト・作業の滞りが生じ、その結果、長時間労働が生じてしまうことになる。 長時間労働を原因として発生する大きな問題は、労働者の過労死や精神疾患の発症であるが、会社の経営という観点からは、人件費(残業代)の増加も問題となる。 前者(過労死等)については、平成30年版過労死等防止対策白書が、IT業界において過労死等が多く発生していると指摘し、当該業界を個別に分析している。 また、労災支給決定事案からみられる要因としては、「厳しい納期」「顧客対応」「急な仕様変更」等、主に発注者等顧客からの要望に対応する業務が大きな比重を占めており、労働者に対して実施したアンケートにおいても同様に、所定外労働が発生する理由として、「トラブル等の緊急対応」「顧客対応」「仕様変更」「納期・予算に無理がある」等顧客に関連する理由が多く占めているとのことである(上記厚生労働省HP)。 長時間労働自体の削減のためには、以上述べてきた要因からすれば、受注会社(使用者)側の労働時間管理の徹底、柔軟な働き方の導入、年次有給休暇取得の促進といった方策だけでは不十分であり、発注者側とも話し合って、プロジェクトの現場における仕事の進め方や取引のあり方を見直す必要があるといえる。 上記厚生労働省HPでは、様々な対応策や実際の事例紹介が掲載されているので、是非参考にしていただきたい。 以下では、後者(残業代の増加)への対策について見ていきたい。 2 不払い残業代が発生した場合のリスク 残業代(割増賃金)は適正に計算し、確実に支払わなければならない。人件費の経営への圧迫を恐れるあまり不払いを生じさせてしまうと、以下のリスクを負うことになる。 3 残業代の増加を抑制する方法 では、残業代の増加を抑制して、不払いを生じさせないようにする法的方策としてはどのようなものが考えられるだろうか。 (1) 事業場外みなし労働時間制 前述のように、情報通信業・IT業界では、自社の事業場ではなく、顧客先(つまり事業場外)に常駐して業務にあたることがある。このような場合、事業場外みなし労働時間制を適用できないかが検討の対象となる。 事業場外みなし労働時間制とは、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合に、所定労働時間(当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間)労働したものとみなす制度をいい、別途実労働時間を計算して残業代を支払うことを要しない(労働基準法38条の2)。 ただし、その適用のためには、「(実)労働時間を算定し難いとき」という要件を充足する必要がある。 客先に常駐してシステム開発等を行っていたSEへの事業場外みなし労働時間制の適用が問題となったイノベ―クス事件・東京地判令和4年3月23日労ジャ128号32頁は、以下の理由から「労働時間を算定し難いとき」には該当しないとして、適用が否定されている。 (2) 専門業務型裁量労働制 ITエンジニアに対して、専門業務型裁量労働制の適用を検討することも考えられる。 専門業務型裁量労働制とは、一定の専門的な業務に従事する労働者について、法が定める要件のもと、1日の実労働時間にかかわらず、所定の労働時間を働いたものとみなす制度である(労働基準法38条の3)。 専門業務型裁量労働制を適用するには、法が定める対象業務に該当しなければならないが、IT業務に関連するものとしては、以下のものがある。 労働者の業務が上記対象業務のいずれかに該当するとしても、専門業務型裁量労働制の適用が認められるためには、業務遂行の裁量性(業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難な事情)がなければならない点に注意が必要である。 エーディーディー事件・大阪高判平成24年7月27日労判1062号63頁は、プログラミング業務について、業務遂行の裁量性に乏しいとして専門業務型裁量労働制の適用が否定された事例である。 (3) 固定残業代 実際の残業の有無にかかわらず予め一定額を残業代として支給する、固定残業代という方策も考えられる。 有効な固定残業代であると認められれば、その限りで割増賃金も支払い済みとなり、不払いの心配はなくなる。ただし、固定残業代に相当する残業時間を超えて残業が行われた場合には、その超過分の割増賃金の支払いを行わなければならない。 固定残業代の有効性を巡る判例・裁判例は数多く存在するが、一般には、①時間外労働等の対価として支給されていること(対価性)、②通常の労働時間の賃金に当たる部分と区分できること(明確区分性)の2つの要件が必要であると解されている(日本ケミカル事件・最判平成30年7月19日労判1186号5頁)。 前掲・イノベークス事件は、「プロジェクト手当」につき、①の対価性が否定され、固定残業代と認められなかった事案でもある。 このように固定残業代として有効であるとは認められなかった場合、上記の「プロジェクト手当」等固定残業代のつもりで支給していた部分も、割増手当算定の基礎賃金に含められてしまい、結果として、思わぬコスト増に直面することになる。 (4) 管理監督者 ITエンジニアが管理監督者(労働基準法41条2号)に該当するのであれば、深夜割増賃金以外の割増賃金の支払いを要しない。 もっとも、管理監督者の実態を伴っていない、いわゆる「名ばかり管理監督者」であれば、割増賃金の不払いは違法となる。 管理監督者と認められるためには、一般に、①職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、②部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、③管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、④自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があることが求められている(ゲートウェイ21事件・東京地判平成20年9月20日労判977号74頁等)。 前掲・イノベークス事件でも、会社側から管理監督者該当性が主張されたが、判決では認められなかった。 4 まとめ 以上のとおり、残業代の増加を抑制し、不払いを防止する方法は各種あり得るが、有効なものとして運用するための要件・手続を満たしていなければならず、無効と判断した裁判例も多い。そして、その場合、つまり残業代が不払いであると判断されてしまった場合のリスクは大きいものがある。 導入の際は、慎重な検討が必要である。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例112】Abalance株式会社「第三者委員会の調査結果報告書公表に関するお知らせ」(2025.12.17)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例112】 Abalance株式会社 「第三者委員会の調査結果報告書公表に関するお知らせ」 (2025.12.17) 公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、Abalance株式会社(以下「Abalance」という)が2025年12月17日に開示した「第三者委員会の調査結果報告書公表に関するお知らせ」である。同社は2025年8月12日に第三者委員会の設置を決定したのだが(同日「第三者委員会の設置に関するお知らせ」開示)、その調査報告書(以下「第三者委員会報告書」という)を受領したため、公表するというのである。 第三者委員会報告書の「当委員会の設置経緯等」は次のように記載されている。同社において不適切な会計処理があり、その経緯・理由等について監査等委員会が調査を行ったようなのだが、さらに疑義が生じたため、第三者委員会が改めて調査を行ったのである。 2 監査等委員会の調査結果 Abalanceは2024年3月26日に「調査報告書の受領に関するお知らせ」を開示している。同社における不適切な会計処理について監査等委員会が調査を行い、その調査報告書(以下「監査等委員会報告書」という)を受領したというのである。その開示の主文は次のとおりである(下線は筆者による)。 不適切な会計処理は、意図的な不正ではなく、意図的ではない誤謬だったようである。監査等委員会報告書の「調査結果」も次のように記載されている(下線は筆者による)。 「誤りが意図的な行為であった」はおかしな文章のように思われるが、それはさておき、監査等委員会も、不適切な会計処理を誤謬と結論付けている。 3 第三者委員会の調査結果 それに対して、今回公表された第三者委員会報告書では、「誤謬ではなく不正会計(粉飾)であること」として、次のように記載されている(WWBはAbalanceの完全子会社)。 このように、第三者委員会は、不適切な会計処理を誤謬ではなく不正と結論付けている。監査等委員会は「WWB等の経営陣から不適切な会計処理を行うよう直接的な指示があったことを示す客観的な証拠までは認められない」ことをもって、誤謬と結論付けたようである。しかし、これについて第三者委員会は次のように評価している。 不適切な会計処理であることを認識しながら、それを継続することは、当然、誤謬ではなく、意図的な不正であるといえるだろう。 4 誤謬ありきの調査 そもそも監査等委員会による調査は、不適切な会計処理を誤謬であると認定するためのものだったようである。第三者委員会報告書の「第三者委員会の発足を回避した経緯及び関係者のメール」には、次のような記載がある。 不適切な会計処理について、外部の第三者委員会ではなく内部の監査等委員会の調査によって、Abalanceに都合の良い結論に持って行きたかったようである。第三者委員会報告書には、「第三者委員会の設置を回避するための弥縫策」として次のような記載もある(最後の「不正ではなく錯誤であると認定しております」の中の「錯誤」とは、誤謬のことだろう)。 さらに「中立性の観点からの限界」として次のように記載されている。他の取締役の職務執行が正しいか否かをチェックしなければならないはずの監査等委員が、会計不正の隠蔽に加担していたことになる。 なお、「この仕切り」を発案し、「会社の立場が悪くならないようWWBのトップが知って行っていた有償支給取引ではないという路線から徹底的に弁護をされた報告書を提出し、第三者委員会が入り決算がさらに2か月遅れることが無いようにし」たという監査等委員のI氏は、記載にあるとおり弁護士のようである。依頼人(ここではAbalance)の利益のために働くというのが弁護士の習性なのだろうか。 5 第三者委員会の調査結果に対する検証委員会? 今回の開示の約1週間後の2025年12月25日、Abalanceは「第三者委員会の調査結果報告書に対する検証委員会設置に関するお知らせ」を開示した。監査等委員会の調査結果に疑義が生じたため、第三者委員会が調査を行うことになったのだが、今度は更にその第三者委員会の調査結果を検証するための委員会を設置するのだという。「検証委員会の設置の理由」は次のように記載されている。 しかし、同社が2026年1月8日に開示した「検証委員会の委員の選任に関するお知らせ」には、次のような記載がある。 やはり第三者委員会の調査結果に対して不満があるため、検証委員会を設置するようである(不正をどう定義するかはともかく、少なくとも重過失による重大な責任が生じていることを自覚すべきだと思われるが)。検証委員会は同社に都合の良い結論を出してくれるのだろうか。場合によっては、検証委員会の結論にさらなる疑義が生じるかもしれない。 (了)
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書く論 【第2回】「誰に書く?」
〈執筆:編集X〉 書く論 第2回 「誰に書く?」 今回は、原稿を書く時に必ず考えなければならない「読者」の考え方についてお話しましょう。 書籍の出版企画について著者の方と打合せをするとき、当然ながらその本の読者対象について意見交換します。 そのような時、数々の著作歴のある方を除いて、イメージが曖昧なケースが意外と多いものです。 例えば、「税理士に向けて書きたい」「中小企業の社長に向けた本だ」「会社の経理の人に読んでもらいたい」などの意見をいただくことがありますが、税理士の方々でも個人の資産税に特化したサービスなのか、法人を顧問にしているのか、さらにその法人はどの程度の規模感なのかで、それぞれの興味の対象は大きく異なります。 またひと言で「中小企業」と言っても、国内のほとんどの会社が中小企業とされていて、昨今では「中堅企業」などと言われるほとんど大企業のようなところもあれば、一般にイメージされるような中小企業まで、とても幅広いです。「会社の経理」の方も、企業規模によって求められる知識やスキルがまったく異なります。 そこをあまり考えずに、とりあえず「税理士向け」や「中小企業向け」などと設定してしまうと、原稿を書き始めたあと、事あるごとに指(筆)が止まってしまうのです。 それは「対象者の範囲が広すぎて、どこまで書けばいいか」が分からなくなってしまうからです。 特に執筆経験の少ない方はこの沼に陥りやすく、不安からか、原稿を書きすぎてしまいます。 1つエピソードを。 とある方が編集Xのところへ原稿をお持ちいただき、本にしたいとおっしゃいました。 その方は「わかりやすい解説を、一般の方に広く読んでいただきたい」と言って、打合せの長テーブルに山積みの原稿を乗せました。一般的な実務書であるA5サイズの本で見積もると、どう考えても軽く500ページを超える量です。 こちらの力不足で説得が奏功せず、結果的に600ページを超えて発刊されたその本は、販売的に厳しいものでした。想定された一般の方が読むには内容が専門的過ぎ、かつ、ページが多いということは、制作にかかる費用も増えるわけですから、やむを得ず本の価格も上がります。一般の方が町の本屋さんで購入するにはハードルの高いお値段。適切ではない原稿の量というのは、そういう齟齬も生んでしまうのです。 ではどうすれば、届けたい読者対象を明確に想像できるのか。 このようなとき、こちらからはこのようなお話をします。 「その本の読者対象としてお一人、お知り合いなどで具体的に想像できる方はおられますか? 『その方だけに伝えたい』というイメージで、原稿を書いてみてください」 そうすると固かった表情がパッと明るくなり、解説すべき内容について話が一気に進むことがとても多いです。そして、制度通りの解説ではなく、ちょっとした読者への気遣いが文面に表れ、伝え方、図表などの見せ方もどんどん良くなってきます。 誰か特定の人に向けて書いたものが、広く受け入れられるのかというご指摘もあるかと思いますが、その特定の人(点)の周りには、似たような課題を抱え困った人がたくさんおられますので、点が面へ広がっていくように、良書も普及していくと思います。 中小企業の社長に向けた本ではなく、お知り合いの○○社長さんへこの本を届けたい。 税理士向けではなく、独立開業したばかりの○代の税理士さんへこの話を伝えたい。 もし、何を書けばいいか分からなくなって筆が止まってしまったら、一度その読者を具体的な誰かに設定してみると、書くべきことが、伝えるべき内容やレベルが、明確になるのではないでしょうか。 (注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)> (つづく)
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開示関係
《速報解説》 金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を公表~SSBJ基準の適用、人的資本開示、株主総会前の有報の開示等について規定~
《速報解説》 金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を公表 ~SSBJ基準の適用、人的資本開示、株主総会前の有報の開示等について規定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026(令和8)年2月20日、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第5号)が公布された。これにより、2025年11月26日から意見募集されていた内閣府令(案)等が確定することになる。内閣府令(案)等に対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されており、60ページに及ぶものとなっている。 これは、サステナビリティ開示基準の適用、人的資本開示に関する制度見直し、株主総会前の有価証券報告書の開示などについて規定するものである。 このほか、2026年2月20日に、次のものが公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備 1 サステナビリティ開示基準の適用(開示府令19条の9) 2 SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加 3 Scope3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備 Scope3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、差異が生じる要因や推論過程等、社内の開示手続等が一般に合理的と考えられる範囲で具体的に記載されている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないとする考え方を明示する(企業内容等開示ガイドライン「B基本ガイドライン5-16-2」)。 Ⅲ 人的資本開示に関する制度見直し 開示府令第二号様式「第二部 第4【提出会社の状況】」、記載上の注意「(58-2)人材戦略に関する基本方針等」及び「(58-3)従業員の状況」等を改正し、以下のとおりとする。 「従業員の状況」の位置を「第1【企業の概況】」から「第4【提出会社の状況】」に移動した上で、新たに次の事項について開示する。 (※) 提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社である場合には、提出会社及び最大人員会社(外国会社を除く連結子会社のうち、従業員数が最も多い会社(当該会社の従業員数が連結会社の従業員数の過半数を超えない場合には、次に従業員数の多い会社も含む))についての方針。 なお、提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社である場合には、最大人員会社についての従業員給与の平均額、その前年比増減率等の記載も必要。 使用人のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度を導入している場合には、これらの制度の概要を、「第4【提出会社の状況】」の「1 株式等の状況」に代えて、「5 従業員の状況等」に記載することもできる。 Ⅳ 株主総会前の有価証券報告書の開示への対応 有価証券報告書において、株主総会前開示を行う場合における定時株主総会又は取締役会の決議事項に係る記載について、自己株式の取得及び剰余金の配当に関する事項のみを求める(開示府令第三号様式「記載上の注意(1)一般的事項」等)。 半期報告書において、中間配当基準日現在における「大株主の状況」及び「議決権の状況」を記載することができることとする(開示府令第四号の三様式記載上の注意「(15)大株主の状況」及び「(16)議決権の状況」)。 Ⅴ その他 特定有価証券に係る半期報告書の提出期限延長申請に係る手続規定の整備、株式転換条項の付された社債券について、あらかじめ定められた条件に基づき株式を発行する場合には「有価証券の募集」に該当しない旨の明確化を行う。 Ⅵ 公布・施行日等 改正後の内閣府令は、2026年2月20日で公布・施行する。 改正後の規定は、以下のとおり、適用する。 1 サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備 2 人的資本開示に関する制度見直し、株主総会前の有価証券報告書の開示への対応 2026(令和8)年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等 Ⅶ 有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点 総会前開示を行う場合に有報への記載が必要と考えられる事項の記載、総会前開示に関するQ&Aが記載されている。 Ⅷ 上場会社における有価証券報告書の総会前開示に係る取組の好事例 上場会社における取組の推進、議決権基準日の変更による株主総会の後倒し、株主総会3週間以上前の一体開示について、好事例及び対応によるメリットが紹介されている。 Ⅸ 総会前開示に関する有価証券報告書レビューにおける調査結果 3月期決算会社の調査票回答分析、株主総会の3週間以上前の開示の実現についての意見等が記載されている。 (了)
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《速報解説》 財務省HPにて、令和8年度税制改正関連法案が明らかに~衆院選の影響を受け、例年より遅れての公表~
《速報解説》 財務省HPにて、令和8年度税制改正関連法案が明らかに ~衆院選の影響を受け、例年より遅れての公表~ Profession Journal編集部 2月24日(月)、財務省ホームページにおいて令和8年度税制改正の関連法案となる「所得税法等の一部を改正する法律案」が公表された。 1月末から2月初旬にかけて行われた衆院選を受けた特別国会が2月18日(水)に開会。例年よりも1ヶ月ほど遅れての予算案と税制改正関連法案の提出となったことから年度内の成立については困難とする見通しもあるものの、報道等によれば高市総理は年度内の成立を目指すとしており、今後の動向が注目される。 (了)
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