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事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第38回】「モーターメーカーの会計不正と、経営トップによる内部通報制度の軽視」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第38回】 「モーターメーカーの会計不正と、 経営トップによる内部通報制度の軽視」   弁護士 原 正雄   2025年7月、ND社は、子会社の内部監査部門から会計不正の疑いがあるとの報告を受けて調査を実施した。その結果、複数の会計不正の疑いが判明したことから、同年9月、第三者委員会を設置した。 2026年4月17日、ND社は第三者委員会からの最終報告書を公表した。「営業利益目標の達成に向けた強すぎるプレッシャー」を背景として、①売上の早期計上、②棚卸資産の評価損や固定資産の減損の回避、③資産の評価方法の変更、④コストの資産化など、多くの会計不正が発見され、純資産に1,607億円の「負の影響」が発生する、という内容であった。 同年9月4日、ND社は品質不正に関する調査報告書も公表した。重要事案60件を含む844件もの品質不正が発見されたとのことであった。 さらに同年10月20日には、役員責任調査委員会の調査報告書が公表された。そこでは創業者であるN氏をはじめとして元幹部9名に損害賠償責任ありと認定された。 こうした不正はなぜこれまで発見されなかったのか。内部通報制度は機能していなかったのか。会計不正を中心としつつ、ND社の内部通報制度について分析する。   1 内部通報制度は、一応機能していた ND社は、法務コンプライアンス部が運用する内部通報窓口を設置していた。また、外部の法律事務所が受け付ける外部通報窓口なども設置していた。にもかかわらず、今回問題となった多数の会計不正は発見されなかった。この点を捉えると、内部通報制度が機能していなかったようにも思える。 しかし、ND社の内部通報制度が全く機能していなかった、とするのは正確ではない。2024年度で見ると、ND社の通報件数は、海外グループ会社からのものも含めて398件である。連結従業員数10万4,285名なので、従業員100名あたり0.38件である。また、日本国内に限ると、国内向けホットラインへの通報件数は119件である。国内従業員数8,974名なので、従業員100名あたり1.32件である。こうした数字は、特別に少ないというわけではない。 そして、通報の多くはハラスメントや労務人事に関するものであったが、中には会計不正に関するものも含まれていた。そうした内部通報を契機として調査を実施し、会計不正を発見した実例も複数あった。 例えば、2018年、内部通報によって本社の経営幹部が米国拠点のCFOらに不正な会計処理を指示していたことが発見された。2020年には、監査法人に対する通報が契機になって調査が行われ、会計不正が発見された。2022年にも、内部通報によってブラジルにおける会計不正が発見された。加えて、2024年にも、内部通報によって中国子会社における会計不正が発見された。 したがって、ND社の内部通報制度は、一応機能していたと評価できる。   2 深掘りがなされなかった もっとも、通報を受けた場合、当該通報に対応するのは当然のこととして、その背後により根深い真因がないのかを深掘りすることも重要である。ND社では、そうしたことはできていたのだろうか。 (1) 問題意識を持つことができなかった ND社では、上述のとおり、内部通報によって、2018年、2020年、2022年、2024年と連続して会計不正が発見された。これだけ会計不正が連続して発見されれば、その暗数はもっと大きいはずだ、との推定が働く。N氏による「営業利益目標の達成に向けた強すぎるプレッシャー」の存在が社内で周知であったことも考え合わせれば、グループ全体に根深い構造的な会計不正が潜伏しているのでは、と気付くことも不可能ではなかったようにも思える。 しかし、ND社の経営陣は、そうした構造を見抜くことができなかった。社外取締役や監査役(2020年に監査等委員会設置会社に移行した後は監査等委員)も同様であった。内部通報制度を運用する法務コンプライアンス部員も、発見された会計不正をあくまで個別事象に過ぎないと受け止めてしまい、強い業績プレッシャーに基づく構造的な会計不正の存在について問題意識を持つことができなかった、とのことである。 または、仮に問題意識を持つことができたとしても、強い業績プレッシャーはN氏の経営スタイルそのものであって否定のしようがない、という事情もあった。第三者委員会は、これを「遠慮・忖度」の問題と評価している。 (2) 改善策 この問題について、第三者委員会は以下の改善策を提案する。 監査等委員が内部通報について情報共有を受ければ、問題提起のきっかけになり得る。監査等委員であれば「遠慮・忖度」のない率直な意見表明も可能である。そのうえで議論を重ねれば、通報された不正の背後に隠された原因に気付くこともできる。真因を深掘りするために有効な改善策と考える。   3 経営トップによる内部通報制度の軽視 もっとも、ND社における内部通報制度には、さらに深刻な問題があった。経営トップであるN氏自身が、内部通報制度を軽視していたのである。以下のとおりである。 (1) A特命監査部長による告発の処理 ND社では業務分担上は、会計不正の調査は経営管理監査部が中心的な役割を果たすとされていた。そのため、会計不正についての通報があれば、法務コンプライアンス部からの連絡を受けて経営管理監査部が調査を行う、というのが本来の仕組みであった。 しかし、N氏は、経営管理監査部による調査とは別にA特命監査部長に対しても、会計不正などの調査を特命で担当させていた。A特命監査部長は経営管理監査部に所属していたものの、同部の通常業務は一切担当せずにN氏からの直接の指示による調査業務に専従していた。例えば、N氏に会計不正や着服・横領等を告発する投書が届くと、N氏はA特命監査部長に調査を指示した。告発がN氏だけでなく内部通報窓口にも届いていても、A特命監査部長による調査を優先させた。A特命監査部長は、そうした案件について情報を経営管理監査部に共有せずに「秘密裏」に処理した。 この点について経営管理監査部の経験者の一人は「本来であれば、A氏が発見した問題は、経営管理監査部にも共有した上で、組織として適切な対応を取るべきであるとは思っていたが、A氏は、調査内容を全く説明してくれなかった。A氏は、N氏の指示を受けて、不正を闇で処理する存在であり、ND社のガバナンスシステムの外側の存在であった」と述べたとのことである。 結局、N氏は、内部通報制度を軽視していた。第三者委員会のヒアリングにも「ND社の内部通報制度は通報先を法律事務所にしているが、それでは大物は見つからない。本当に悪いことをしている者は、そのようなところには通報しない」と述べている。 もっとも、N氏は、A特命監査部長に不正調査を任せた理由について「経営管理監査部に調査させると監査法人とも情報共有することになり、大事になる」とも説明している。ガバナンスシステムの適用を回避しようとした狙いもあったのかもしれない。 (2) 従業員からの十分な信頼を獲得できていなかった ND社の内部通報制度は、従業員からの十分な信頼を獲得できていなかった。ND社の日本拠点では、アンケートで内部通報窓口を利用したくないと答えた者のうち、43.7%が「内部通報後の報復又は不利益な取扱いへの懸念」を理由に挙げている。また、品質不正に関するものであるが、品質コンプライアンス違反をすれば内部通報等によって発覚されてしまうとの認識が、有意に低かったとのことである。これでは内部通報制度があっても、不正に対するけん制効果が働かない。 これは、ある意味では当然である。経営トップであるN氏が内部通報制度を軽視しているのだから、その姿勢は従業員にもすぐに伝わる。このような状況で、従業員が内部通報制度を信頼するはずがない。内部通報制度が従業員から信頼されていないのだから、そもそも通報しようとは思ってもらえず、重大な不正について通報されることもない。まさにN氏が「そのようなところには通報しない」「大物は見つからない」と述べたとおりの状況に陥っていた。 (3) 経営陣等にも伝わっていた N氏による内部通報制度を軽視する姿勢から影響を受けていたのは、一般の従業員だけではない。むしろN氏の身近にいて経営を担っていた経営陣や社外取締役、監査役ないし監査等委員こそ、より大きな影響を受けていた。 ND社では、上述のとおり、内部通報によって会計不正が連続して発見されていた。通常であれば、背後に構造的な真因が隠されているのでは、と疑ってしかるべき状況であった。にもかかわらず、経営陣や社外取締役、監査役ないし監査等委員は、内部通報が連続したことについて深掘りをしなかった。N氏による内部通報制度の軽視という姿勢が伝わり、内部通報が連続したことを重大なものとして受け止めることができなかったものと解する。 (4) 改善策 不正について従業員に通報してもらい、経営陣としても通報制度を活用していくには、前提として、経営トップ自身が内部通報制度を重視していることが不可欠である。 社外取締役や監査役ないし監査等委員は、経営トップが内部通報制度を尊重しているかをしっかりと監視しなければならない。そして、経営トップの認識が十分ではないと判断したときは、厳しく戒めなければならない。「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第 118 号)の解説」が「組織の長その他幹部に対しても、例えば、内部公益通報対応体制の内部統制システムにおける位置付け、リスク情報の早期把握がリスク管理に資する点等について教育・周知することが求められる」と記載しているとおりである(第3.Ⅱ.3.⑴.③)。 さらに、経営トップに対して、従業員向けに内部通報制度の重要性を訴えるメッセージを発するよう求める。内部通報制度が従業員から信頼を獲得するには、経営トップからの内部通報制度の重要性を訴えるメッセージが欠かせないからである。「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第 118 号)の解説」が「組織の長が主体的かつ継続的に制度の利用を呼び掛ける等の手段を通じて、公益通報の意義や組織にとっての内部公益通報の重要性等を労働者等及び役員に十分に認識させることが求められる」と記載しているとおりである(第3.Ⅱ.3.⑴.③)。   4 小括 以上のとおり、ND社では、内部通報制度は一応、機能していた。ただ、個々の通報を個別事象として捉えてしまい、その背後に潜むより大きな問題がないかについて深堀りする、ということができていなかった。 さらに、経営トップ自身が内部通報制度を軽視していた。そのため、内部通報制度が従業員からの信頼を獲得できておらず、本当に重要な問題について通報してもらうことができなかった。経営陣が通報を深掘りできなかったのも、経営トップの姿勢が伝わった結果であった。 本件は、内部通報制度について、形式を整えれば終わりではなく、経営トップが中心となってその重要性を訴え続けないと正しく活用できない、ということを示した重要な事例である。 経営トップが内部通報制度を軽視すれば、そうした姿勢の結果は、いつか必ず経営トップ自身に跳ね返ってくる。内部通報制度の重要性を経営トップに理解してもらうことは、コンプライアンス実現のための大前提である。万一、経営トップの内部通報制度への理解が十分ではないと感じたならば、社外取締役や監査役ないし監査等委員の力を借りつつ役員研修などを実施し、その理解の促進に尽力すべきである。 (了)
#692(掲載号)
#原 正雄
2026/10/29
New 読み物 連載

実務家による実務家のためのブックガイド -No.6- 外山滋比古 著『乱読・乱談のセレンディピティ』

実務家による実務家のための ブックガイド -No.6- 外山滋比古 著 『乱読・乱談のセレンディピティ』   〈評者〉 公認会計士 石王丸 香菜子   本書は、専門書ではない。しかし、専門家に効く本である。 専門家には、知識の蓄積が求められる。たとえば監査基準は、監査人について、「職業的専門家として、その専門能力の向上と実務経験等から得られる知識の蓄積に常に努めなければならない」としている。これは、監査を行う会計士に限った話ではないだろう。税理士、弁護士、会社の経理・法務担当者、あるいは経営に関わる人々にとっても、知識を更新・蓄積していくことは欠かせない。 しかし、知識には副作用もある。 知識が増えるほど、すでに持っている枠組みだけで物事を処理したくなる。蓄積された知識の型にはめ込むことで、かえって重要な点を見落とすこともある。 詰め込まれすぎた専門知識は、ともすると、思考の風通しを悪くする。外山氏の言葉を借りれば、「知的メタボリック・シンドローム」である。 もう一つ、監査基準の言葉を引いておきたい。 監査基準は、監査人に対し、「職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持して監査を行わなければならない」としている。 ここでいう「正当な注意」や「懐疑心」には、先入観を持たずに事実を確認する、証拠を吟味する、他者の説明をうのみにしない、矛盾があれば立ち止まる、といった姿勢が含まれる。これもまた、監査人に限らず、専門的な判断を担う人にとって欠かせないものだろう。 こうした姿勢を保つには、知識だけでなく、バランス感覚がいる。 「たしかにそうかもしれない。しかし、別の見方はないか」「説明は通っているように思えるが、どこか引っかかる」。――そのように、一歩引いて物事を見る感覚である。一種の嗅覚に近い側面があるかもしれない。 このような力は、専門書を熟読し、知識を蓄積するだけで身につくものではないように思う。 そこで、「乱読」である。 目的を決めずに読む。風のように読み散らかす。気になった本を手に取り、気になったところを読み、合わなければ途中で離れる。読み終えたとしても、内容をすべて覚えている必要はない。読み捨ててもよい。頭の中に、少し散らかったまま置いておく。 すると、いつか、それまで別々に存在していたものが、不意につながることがある。専門外の本で知った考え方が、目の前の事象を別の角度から見るきっかけになる。何気なく読んだ一節が、思わぬところで現実と結びつく。 乱読は、専門知識の代わりになるものではない。けれども、知識のまわりに風を入れ、思考を動かしてくれる。専門家が専門の内側に閉じこもらないための、静かな寄り道である。 乱読に並んで、本書で外山氏が勧めるのが、「乱談」である。 同じ専門の者同士で話しているだけでは、新しい考え方や見方にはつながりにくい。異なる分野の人たち、専門の違う人たちが、思ったことを自由に述べ合う。目的を決めず、結論を求めず、境界にこだわらずに交流する。 こうした乱談は、固定化された思考に、新しい発想や発見、思いがけない揺れを与えてくれる。 近年では対話型のAIが台頭しているが、AIとの対話は、多くの場合、自分が投げた問いから始まる。その意味では、人との会話に比べて偶然性が入り込みにくい。AI時代において、人と話すことの価値は小さくなるのではない。むしろ、その価値があらためて見えてくるのかもしれない。 現代の専門家を取り巻く環境は、複雑さを増している。 会計、税務、監査、法務、経営。どの分野でも、基準や制度は細かくなり、実務は高度化している。知識の更新を怠れば、すぐに置いていかれる。 その一方で、いま起きている変化は、専門分野の内側だけでは完結しない。たとえば、サステナビリティ情報開示の進展は、財務情報と非財務情報の境界を揺さぶっている。AIは、企業の業務の在り方を大きく変えつつある。これまでの知識が、これからもそのまま通用するとは限らない。 こうした時代には、専門知識を深めるだけでは足りない。専門の外にも目を向けること。知識を蓄えながら、その外側にあるものにも触れること。ときには答えの出ない会話に身を置くこと。 それは、一見すると寄り道である。 しかし、その寄り道にこそ、専門家の思考をしなやかにするものが含まれている。乱読も、乱談も、そのような知的な寄り道である。 本書は、乱読や乱談の効能を、肩の力を抜いた語り口で伝えてくれる。知識は増えているのに、発想が硬くなっていると感じたとき。効率よく学ぶことに、少し疲れたとき。そのようなときに手に取ってみるとよい一冊である。 (了)
#692(掲載号)
#石王丸 香菜子
2026/10/29
お知らせ その他 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧

《速報解説》ASBJ、継続企業に関する会計基準(案)等を公表~適用指針(案)にて継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象等の例を示す~

《速報解説》 ASBJ、継続企業に関する会計基準(案)等を公表 ~適用指針(案)にて継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象等の例を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年10月23日、企業会計基準委員会は、「継続企業に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第100号。以下「継続企業会計基準(案)」という)等を公表し、意見募集を行っている。「後発事象に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第101号(企業会計基準第41号の改正案)。以下「後発事象会計基準(案)」という)も公表されている。 これは、継続企業に関する会計基準を開発するものである。 意見募集期間は2026年12月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表の公表の承認日 「財務諸表の公表の承認日」とは、「後発事象に関する会計基準」(企業会計基準第41号)6-2項における財務諸表の公表の承認日をいう(継続企業会計基準(案)4項)。 「後発事象に関する会計基準」を改正し、後発事象会計基準(案)は次の定義を提案している(後発事象会計基準(案)6-2項)。   Ⅲ 継続企業の前提に関する評価 1 継続企業を前提として財務諸表を作成することの適切性の評価 財務諸表の作成にあたって、合理的に入手できるすべての情報を考慮し、決算日後、少なくとも財務諸表の公表の承認日後1年を経過した日までの期間にわたり継続企業として存続する能力があるかどうかを評価する(継続企業会計基準(案)5項)。 「継続企業の前提に関する開示について」(監査・保証実務委員会報告第74号)は、「少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間」と規定しているが、上記のとおり、継続企業会計基準(案)は、「決算日後、少なくとも財務諸表の公表の承認日後1年を経過した日までの期間」とすることを提案している。 企業の清算もしくは営業停止の意図がある場合、又はこれら以外に現実的な代替案がない場合を除いて、企業は、継続企業を前提として財務諸表を作成する(継続企業会計基準(案)5項)。 2 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在するかどうか 継続企業として存続する能力があるかどうかの評価(継続企業会計基準(案)5項)において、企業の清算もしくは営業停止の意図がある場合を除いて、決算日において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在するかどうかを判断する(継続企業会計基準(案)7項)。 「継続企業に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第95号)4項において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の例が詳細に示されている。 「決算日において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合の継続企業の前提に関する重要な不確実性の評価」と「決算日後における継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の識別及び継続企業の前提に関する重要な不確実性の評価」について規定している(継続企業会計基準(案)8項~10項)。   Ⅳ 注記事項 継続企業会計基準(案)5項から8項及び10項の評価の結果、決算日において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断した場合であって、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときには、継続企業の前提に関する重要な不確実性に係る注記として、次の事項を注記する(継続企業会計基準(案)12項)。 「決算日後の継続企業の前提に関する重要な不確実性に係る注記事項」、「連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項」についても規定されている(継続企業会計基準(案)13項、14項)。   Ⅴ 適用時期等 2028年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る財務諸表から将来にわたって適用する。 適用初年度においては、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しない。 (了)
#阿部 光成
2026/10/26
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.691が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年10月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.691を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/10/22
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

[音声記事]令和9年食料品減税、ここが困りそう─税理士が語る消費税実務 【第3回】「事務所の手間と2年後」

音声記事令和9年食料品減税、ここが困りそう──税理士が語る消費税実務【第3回】(最終回)事務所の手間と2年後 収録時点の情報について 本記事は、2026年9月15日に公表された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」の内容を前提に収録しています(収録日:2026年9月26日)。その後の法案審議等により、制度の内容が変わる場合があります。 出席者(※発言者順) 出席日髙 真帆税理士 司会八ッ尾 順一公認会計士・税理士 出席廣瀬 周平税理士 出席三木 孝夫税理士 この連載について 軽減税率が始まった令和元年10月、レジの入れ替えや請求書の様式変更に追われた方も多いと思います。令和9年からの実施が検討されている飲食料品の消費税減税でも、同じような対応に追われることになるかもしれません。 この連載は、税理士が集まり、減税が始まったら実務のどこで困りそうかを話し合った内容を音声にしたものです。顧問先からどんな問い合わせが来そうか、システム改修は間に合うのかといった、解説記事ではなかなか取り上げられない話が中心となっています。 音声記事  再生時間 約11分 CHAPTER 00:06支援金と確定申告04:00届出ルートと固定資産の管理05:33増える還付申告08:20手間の割に、報酬は・・・08:56税務調査と税理士 (連載了)
#691(掲載号)
#三木 孝夫
2026/10/22
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

消費税減税大綱に伴い想定される実務への影響と対応 【第4回】「税率引下げ期間に合わせた課税期間の設定方法と留意点」

消費税減税大綱に伴い想定される 実務への影響と対応 【第4回】 (最終回) 「税率引下げ期間に合わせた課税期間の設定方法と留意点」 税理士 石川 幸恵   前回は、国税庁から公表されているQ&Aで示された、総額表示義務の特例や定期供給契約・通信販売に係る経過措置、税率変更日前後の適用税率について確認した。 最終回となる今回も国税庁から公表されているQ&Aで示された事項として、税率引下げ期間に合わせて課税期間を設定する方法などについて、実務上の留意点を交えながら確認する。   1 消費税率の引下げ期間と課税期間が一致しないことによる影響 例えば、個人事業者の課税期間は原則として1月1日から12月31日までであるのに対し、消費税率の臨時的な引下げは、令和9年4月1日から令和11年3月31日までとされている。 このため、もともと免税事業者で、引下げ期間に合わせて課税事業者となり、その終了後にまた免税事業者に戻ろうとする個人事業者については、課税期間との3か月のずれが生じる。令和9年については、1月から課税事業者となれば引下げ開始前の1月~3月も課税事業者となり、令和11年については通常の課税期間のままであれば、引下げ終了後の4月~12月も課税事業者となる。 したがって、引下げ期間にできるだけ合わせて課税事業者となるためには、この課税期間のずれをどのように処理するかが問題となる。   2 個人事業者がインボイス制度を利用して、消費税率の引下げ期間に合わせて課税事業者となる方法 令和9年4月1日から課税事業者選択と課税期間の特例を適用して3か月ごとの課税期間とする方法も考えられるが、この場合には3か月ごとに消費税の申告が必要となり、事務負担が大きくなる。 消費税率引下げQA問3-4では、これとは別に、適格請求書発行事業者の登録制度を利用する方法が示されている。 (※) 消費税率引下げQA問3-4の【適用イメージ】(15頁)及び【適用イメージ②】(16頁)より抜粋 この方法では、令和9年3月17日までに、登録希望日を「4月1日」と記載した適格請求書発行事業者登録申請書を提出し、令和9年4月1日から課税事業者となる。その後、令和11年3月17日までに登録取消届出書、同年3月31日までに課税期間特例選択届出書を提出し、令和11年3月31日で課税期間を終了して、同年4月1日から免税事業者に戻る。 手続きに当たっては複数の申請書・届出書を組み合わせるものであり、月末以外の日が提出期限となるものもあるため、注意が必要である。 令和11年1月~3月分の消費税の申告書を令和11年5月末までに提出する必要がある。以後は免税事業者となるため、消費税の申告は不要となる。 また、課税期間の特例の適用関係には注意が必要である。免税事業者に戻った後は消費税の申告義務がないため、課税期間特例選択届出書の効力が残っていることを意識する機会も少なくなる。その後、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるなどして再び課税事業者となった場合には、課税期間特例選択の適用を受ける課税事業者となり、意図しない課税期間で申告することになりかねない。 このような事態を避けるため、課税期間特例選択不適用届出書も、適用開始日を令和13年4月1日としてあらかじめ提出しておくことが考えられる。 なお、この方法では適格請求書発行事業者となるため、令和9年4月1日から令和11年3月31日まで適格請求書発行事業者としての義務が生ずることにも注意が必要である。   3 課税事業者選択をした個人事業者が令和11年4月から免税事業者に戻りたい場合の手続き 令和11年3月31日までに、課税事業者選択不適用届出書と課税期間特例選択届出書を提出する(消費税率引下げQA問3-2)。 (※) 消費税率引下げQA問3-2【適用イメージ②】より抜粋 この場合も、2と同様、令和11年1月~3月分の消費税の申告書を令和11年5月末までに提出する必要がある。また、課税期間特例選択不適用届出書も提出しておくことが望ましい。   4 令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について、そもそも中間申告不要と判定された場合に中間申告をすることはできるか 中間申告の回数は、直前課税期間の確定消費税額に応じた回数とされている(消費税率引下げQA問3-8)ため、令和11年4月1日以後に開始する課税期間について中間申告書の提出が不要となるケースも考えられる。 ただし、任意の中間申告書を提出する旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、当該届出書を提出した日以後にその末日が到来する6月中間申告対象期間から自主的に中間申告・納付することができる。この任意の中間申告書については、「中間申告対象期間」について仮決算を行い、計算した消費税額等により中間申告・納付することも可能である。 また、ダイレクト納付による予納制度を利用すれば、課税期間中に、確定申告等により納付が見込まれる金額をあらかじめ納付することもできる。中間申告の必要のない納税者がこの方法を使えば、仮決算による中間申告書を提出することなく、納税者自身が納付可能な金額を納付することができると考えられる。   (連載了)
#691(掲載号)
#石川 幸恵
2026/10/22
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例163(所得税)】 「給与所得者等が還付申告を行う場合には、暦年終了後(翌年1月1日以後)5年間行使しないと時効により消滅するにもかかわらず、法定申告期限から5年と誤認したため、還付が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例163(所得税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆給与所得に対し、甲欄で源泉徴収が認められる場合 給与所得に対し、甲欄で源泉徴収が認められるのは、源泉徴収義務者に対し、原則としてその年の最初に給与の支払いを受ける日の前日までに扶養控除等申告書を提出している場合に限られる。 ◆還付金等の消滅時効(国通法74①) 還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって時効により消滅する。 ◆還付請求の消滅時効の起算日 所得税法121条1項1号《確定申告を要しない場合》に該当する者から提出された申告書で、還付金の額が記載されているものは、還付申告書に該当するものとして取り扱われるが、還付申告書については提出期限が定められていないため、暦年終了後(翌年1月1日以後)いつでも提出することができることから、上記還付金の消滅時効の適用に当たっては、還付請求の起算日は翌年1月1日となる。したがって、X3年分の所得税を還付請求できる期間はX4年1月1日からX8年12月31日までとなり、当該期間の経過後の還付請求は認められない。       (了)
#691(掲載号)
#齋藤 和助
2026/10/22
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第65回】「土地の売買契約と補償契約は別のものであり、根抵当権を抹消した日が譲渡対価の50%以上受け取った日より早かったから、その日に土地の引渡しがあったとされた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第65回】 「土地の売買契約と補償契約は別のものであり、根抵当権を抹消した日が譲渡対価の50%以上受け取った日より早かったから、その日に土地の引渡しがあったとされた事例」   税理士 菅野 真美   ▷固定資産の譲渡損益の帰属事業年度 固定資産の譲渡損益の帰属事業年度は、固定資産の引渡しの日の属する事業年度が原則である(法人税基本通達2-1-14)。一般的な不動産の売買契約の場合、契約書に引渡し日が売買代金全額受領日のような記載がある。契約時点で手付金が支払われ、残金が支払われると同時に、登記に必要な書類が渡される。 しかし、売買契約の引渡しの時期がいつなのかに疑問が生ずる場合もある。これについて、法人税基本通達2-1-14では、2-1-2の例によるとされている。 すなわち、譲渡した資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。 つまり、代金の半分以上の収受が行われた日か、所有権の移転登記の申請(これは、法務局に申請した日でなくても必要書類を相手方に渡した日でも認められる。)のいずれか早い日となる。 今回は、土地の引渡しの日がいつになるのかで争われた事案を検討する。   ▷事案の概要 納税者は、素材製材の販売等をする株式会社である。平成30年9月7日、納税者はX機構が施工する建設工事のために土地を6,445万47円でX機構に譲渡する売買契約と、土地上の建物等を解体撤去することなどの補償金として2億3,637万510円を支払う旨の建物等の移転に伴う物件移転補償契約を締結した。 売買契約に定められた重要な事項は次のようなものである。 納税者は、契約に先立つ平成30年9月3日までに所有権移転登記に必要な登記原因証明情報兼登記承諾書、印鑑証明書を提出した。 納税者は、平成30年12月20日、土地に設定された根抵当権設定登記の抹消登記手続きを行い同日付で登記された。 平成31年1月31日、売買代金のうち4,511万円を受領した。 補償契約は、売買契約とは別に締結されており、実際に建物等の撤去が完了したのは、令和2年12月14日だった。土地の売買代金の残金と補償金の残金は、令和2年12月18日に支払われた。 納税者は、平成30年12月期に法人税の確定申告に、売買代金を益金に算入せず申告をし、また、消費税の申告において、資産の譲渡等の対価の額の計算上含めず、課税売上割合99.9%として消費税の申告をしたところ、税務署から、法人税等と消費税等の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分を行った。この処分に不服な納税者が審査請求したところ棄却されたので、提起したのが本件である。   ▷争点と、納税者の主張 争点は、引渡しの日は、平成30年12月20日であるといえるかである。 納税者の主張のポイントは以下の2点である。   ▷地裁の判決は 判決は、納税者の主張を棄却した。   ▷控訴審は この判決に不満な納税者は控訴したが、控訴審も地裁の判決を支持して棄却した。 納税者が主張した圧縮記帳による税法のメリットを受けるためには、土地の引渡しは令和2年12月14日にすべきという主張に対して、高裁は次のように判示した。   ▷まとめ このように裁判所は、土地の売買契約と補償契約は別のものであるとして、土地の売買契約等から事実関係を整理して、法人税基本通達にあてはめた。そして、譲渡対価の50%以上受け取った日よりも根抵当権を抹消した日が早かったため、その日をもって引渡しがあったと判断された。これは、他の所有権移転登記のために必要な書類は契約締結日より前に受け取っていたからである。 納税者は、収用等による代替資産の取得が、令和2年12月14日の引渡しを前提にしないと課税の繰延ができないからと主張した(代替資産の取得が実際には、いつだったのかは判決文では読みとれない)。 税理士が、引渡し日が明確ではない不動産譲渡の相談を受けた場合、引渡し日がいつなのかを事前に契約書等や通達で検討することが不可欠である。仮に土地を引渡した事業年度に代替資産を取得しなくても、特別勘定を使うことにより収用等の日から2年以内に代替資産を取得した場合は課税の繰延ができるから(租税特別措置法64条の2)、節税のためには、速やかに代替資産の取得をすべきであると顧問先に説明し、説明したことを記録しておくべきである。 (了)
#691(掲載号)
#菅野 真美
2026/10/22
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔実務で差がつく!〕相続時精算課税制度Q&A 【第9回】「相続時精算課税適用財産の相続税での相次相続控除の取扱い」

〔実務で差がつく!〕 相続時精算課税制度Q&A 【第9回】 「相続時精算課税適用財産の相続税での相次相続控除の取扱い」   税理士 徳田 敏彦   【Q】 子Bは父Aから平成30年に土地3,500万円の贈与を受けた。子Bはその贈与について、相続時精算課税制度を選択した。 令和8年3月に父Aに相続が発生した。 また、令和7年4月に父Aは弟Cの相続により、財産を取得し、相続税を負担している。 この場合、父Aの相続税で相次相続控除の計算上、相続時精算課税適用財産は除かれるのか。 【A】 相続時精算課税適用財産も相次相続控除の計算に含まれる。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ ◎相次相続控除について 相次相続控除は、第一次相続から第二次相続までの期間が10年以内であった場合に、第二次相続の被相続人が第一次相続で納税した相続税額のうち一定額を第二次相続で控除できる制度である(相法20)。 各相続人の相次相続控除額は、次の算式により計算した金額となる。 〈各相続人の相次相続控除額の金額の計算式〉 つまり、第一次相続で納税した相続税額のうち残存年数1年あたり10%相当額を連続して課税される財産の割合に応じて控除する仕組みである。 この算式中の「B」、「C」、「D」の純資産価額には相続開始前7年以内の贈与により取得した財産で相続税の課税価格に加算される「暦年課税分の贈与財産価額」は含まれない。 一方、相続時精算課税制度により相続税の課税価格に加算される「相続時精算課税適用財産の価額」は含まれる。   (了)
#691(掲載号)
#徳田 敏彦
2026/10/22
国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第106回】「上村工業第二事件 -原価基準法の適用が否認され、残余利益分割法が適用された事例-(地判令2.2.28)(その1)」~租税特別措置法66条の4第2項1号ハほか~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第106回】 「上村工業第二事件 -原価基準法の適用が否認され、残余利益分割法が適用された事例- (地判令2.2.28)(その1)」 ~租税特別措置法66条の4第2項1号ハほか~   税理士・特定社会保険労務士 森田 國弘     [1] はじめに 1 第一事件(※)と第二事件の関連 第一事件は、調査対象年はH12年からH16年までの5年間で、H18年3月に更正処分が行われた。対象はTUC社(台湾)とUMM社(マレーシア)、UIS社(シンガポール)であった。 更正処分のあと、原告(以下Xという)は、H18年5月に異議申立てをしたが、UMM社との取引についてマレーシアとH18年8月に相互協議を行うこととなり、これが長引いて合意となったのがH22年1月で4年の年月を経た。 これが決着してやっと異議申立てが動き始め、審議ののち却下されたのが、同年H22年12月であった。その後、H23年1月に不服審判審査請求がなされ、H24年11月にこれも却下となった。 これらの経緯を経て、XはH25年5月に東京地裁へ提訴した。更正処分後ここまで7年かかった。 第一事件調査開始年後7年経過して2回目の調査が行われた。これが第二事件で、対象はH19年3月からH23年3月の5年分でH25年6月に更正処分が行われた。第一事件の処分について、東京地裁へ提訴した年であった。 (※) 第一事件については、拙稿 森田國弘「上村工業第一事件(その1)(その2)」Professional Journal No.536(令和5年9月21日)、No.537(令和5年9月28日)を参考とする。 2 第一事件と第二事件の違い 第一事件の延長で第二事件があったが、第一事件と第二事件の大きな違いとして次の2点がある。 ① 対象に大きな違いがある。 第一事件は、主に台湾とマレーシアが対象で、これにシンガポールが加わり、三社が対象となった。これに対し、第二事件では、マレーシアは取り上げられず、主は台湾でそれも対象の中心は、TUC社から分社したTUT社であり、検討の対象となったのは、USC社(上海)、USL社(香港)、UIC社(アメリカ)、UIS社(シンガポール)であったが、これらは取引額が少額等の理由で移転価格の対象とはならなかった。 第二事件で、マレーシアが対象とならなかったのは、国税の見解がはっきりと出ていないので、明確には分からないが、考えられるのは1回目の調査時に比べて2回目の調査時は、マレーシアはハードディスク薬品の売上が低迷し、営業利益率が低下したため、移転価格の調査対象から外れたのではないかと推測される。 ② 棚卸資産販売取引が加わった。 2011年(H23年)頃からの新契約で、ライセンス製品を製造する過程の一部をブラックボックス化した製品(以下BB品という。)を販売する取引を開始したことにより、無形資産だけでなく棚卸資産販売取引が検討の対象となった。 〈第一事件及び第二事件の全体像〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 〈第一事件〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 〈第二事件〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   [2] 上村工業第二事件 1 概 要 今回の第二事件は、Xが台湾のTUT社及びTUC社(併せて総称するときは「本件国外関連者」という。)に対して行ったノウハウ等取引に係る取引(以下「本件ライセンス取引」という。)及びBB品に係る取引(以下「本件棚卸資産販売取引」という。両取引を総称するときは「本件国外関連取引」という。)の平成19年3月期から平成24年3月期における取引が、租税特別措置法66条の4第1項に規定する国外関連者との取引に該当し、同条第2項1号ニ、2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項1号の残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格に満たないとして、当該独立企業間価格によって当該取引がされたものとみなして所得金額を計算し、平成25年6月27日付で更正処分をしたところ、Xが として、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の全部の取り消しを求めた事案で、平成27年9月3日に提訴したものである。 2 争 点 第一事件と第二事件の争点を比較すると、下記の表のとおりでほとんど差異がない。 (争点1)では、Xが主張する①独立価格比準法と同等の方法、②独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の可否について、「本件ライセンス取引」と「本件棚卸資産販売取引」に分けて検討がなされた。 (1) 「本件ライセンス取引」について ① 「本件ライセンス取引」の独立価格比準法と同等の方法の可否について この過程はほぼ第一事件と同じ経緯で下記の点について検討がなされた。 結果は、第一事件と同じ結果で「取引単位」については、Xの主張した個別単位の取引は退けられ、取引全体を一つのものとして捉えるのが合理的であると判示された。 「同種」については、「本件ライセンス取引」が非関連業者である韓国のKPM社とのライセンス取引(以下「KPMライセンス取引」という)と「同種」であるかどうかが検討されたが、無形資産の種類、内容、品目の数等の差異から「同種」とは認められなかった。 「同様の状況」についても、比較対象取引とされる「KPMライセンス取引」とが「同様の状況」の下でされたものであるか検討されたが、実施権が独占と非独占の違い、市場の違い、顧客の規模、利益率等の属性に差異があることから、「本件ライセンス取引」と「KPMライセンス取引」は、「同様の状況」の下でされたものとは、認められなかった。 これにより、Xが主張する独立価格比準法と同等の方法を用いて「本件ライセンス取引」の独立企業間価格を算定することは否認された。 ② 「本件ライセンス取引」の独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の可否について ここでの要点は、それぞれの取引の類型に応じ、取引内容に適応し、かつ基本三法と同等の方法の考え方から「乖離しない合理的な方法」をいうものと解するのが相当である。 それを前提とする限り、価格そのものを比較する方法であって、取引の対象が「同種」であること及び「同様の状況」の下であることが重視される。 これについては、既に検討をしたように「本件ライセンス取引」と「KPMライセンス取引」では、取引となる資産が「同種」のものであるとはいえず、かつ「同様の状況」ともいえないところ、差異の内容、程度等に加え、差異を調整することができないことにも照らすと、独立価格比準法と同等の方法の考え方から「乖離しない合理的な方法」であるとは認めがたいということで退けられた。 ここからが、第二事件独自に論じられた内容である。 (2) 「本件棚卸資産販売取引」について ① 原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立企業間価格を算定することの可否 ア 原価基準法を用いるための要件について 今回新たに取引された「本件棚卸資産販売取引」の対象であるBB品について、原価基準法の適用を検討する。 原価基準法は、国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める「通常の利益率」を乗じて計算した金額をいう。)を加算して計算した金額をもって当該国外関連取引の対価とする方法をいう。(租税特別措置法66条の4第2項1号ハ) イ 「通常の利益率」 政令で定める「通常の利益率」は、国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を購入(非関連者からの購入に限る)、製造その他の行為により取得した者(以下販売者という。)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引(以下比較対象取引という。)に係る当該販売者の売上総利益の額(当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計金額から当該比較対象取引に係る棚卸資産の原価の額の合計額を控除した金額をいう。)の当該原価の額の合計額に対する割合とする。ただし、比較対象取引と当該国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異が生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合とする。(租税特別措置法施行令39条の12第7項) そうすると、原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立価格基準法を算定するためには、「本件棚卸資産販売取引」の対象資産であるBB品について「通常の利益率」を算定する必要があることになる。 ウ 「本件棚卸資産販売取引」における「通常の利益率」を算定することの可否について 原告の主張 a)「本件国外関連者」に対するのと同様、非関連会社であるKPM社に対してもBB品を販売(以下「KPM棚卸資産販売取引」という)している。 b)KPM社に販売しているBB品も「本件国外関連者」に販売しているBB品も、めっき薬品を製造するための半製品であり、その性状、構造、機能等の面で同一であるか類似する。 c)KPM社に対するBB品についても、「本件国外関連者」に対するBB品についても、めっき薬品の製造に必要な複数の原料を混合するという製造行為を行った上で出荷している。 d)「KPM棚卸資産販売取引」と「本件棚卸資産販売取引」との間で、利益率に影響を及ぼすことが明らかな差異も認められない、として「KPM棚卸資産販売取引」を比較対象取引として「通常の利益率」を算定して原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立企業間価格を算定することができる旨主張する。 これに対して裁判所は次のように判示している。 ((その2)へ続く)
#691(掲載号)
#森田 國弘
2026/10/22
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