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組織再編税制における不確定概念 【第4回】「包括的租税回避防止規定における『不当に』とは」

組織再編税制における不確定概念 【第4回】 「包括的租税回避防止規定における 『不当に』とは」   公認会計士 佐藤 信祐   不確定概念の最たるものとして、包括的租税回避防止規定が存在する。包括的租税回避防止規定は、「法人税の負担を不当に減少させる」場合に適用されるものであるが、どのような場合が「不当」なのかという点について、明らかにされていないからである。 本稿においては、包括的租税回避防止規定についての基本的な考え方についての解説を行い、次回(第5回)以降は、その具体的な事例についての解説を行う。   1 租税回避についての考え方 租税回避の定義については論者によって様々な定義がなされているが、金子宏教授によれば、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、119頁)としている。 他の論者も様々な定義を行っているが、基本的な内容について大差はない。すなわち、「税負担の減少」と「通常用いられない法形式の選択」という2つの点が大きな要素となる。 なお、「通常用いられない法形式の選択」については、達成しようとする経済的成果に合理的な理由がない場合だけでなく、達成しようとする経済的成果に合理的な理由があるものの当該経済的成果を達成するために選択する法形式に合理的な理由がない場合も含まれるべきである。 また、租税回避と区別すべきものとして、節税と脱税がある。 すなわち、「租税回避は、一方で、脱税と異なる。脱税が課税要件の充足の事実を全部または一部隠匿する行為であるのに対し、租税回避は、課税要件の充足そのものを回避する行為である。他方、それは、節税とも異なる。節税が租税法規が予定しているところに従って税負担の減少を図る行為であるのに対し、租税回避は、租税法規が予定していない異常な法形式を用いて税負担の減少を図る行為である。」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、120頁) しかしながら、実際には、租税回避と節税の区別は明確ではなく、組織再編成を行った結果として、税負担が減少する場合において、租税回避に該当するのか、節税に該当するのかは悩ましい問題である。 これに対し、組織再編税制については、包括的租税回避防止規定が定められており、租税回避であると認定された場合には、税務調査において否認を受ける可能性がある。 また、近年における税務訴訟の事例をみる限り、租税回避については厳しい対応がなされており、「私法上の法律構成による否認論」「課税減免規定に対する限定解釈」などの新しい否認手法も見受けられることから、形式的に、課税要件の充足そのものを回避することができたとしても、税務調査において否認される可能性は否定できない。 そのため、組織再編成を行った結果として、税負担が減少する場合において、租税回避に該当するのか、節税に該当するのかという判断は、実務上、非常に重要になってくる。   2 包括的租税回避防止規定に関する具体的な内容 組織再編税制に係る包括的租税回避防止規定については、法人税法、所得税法、相続税法及び地方税法においてそれぞれ規定されている(法法132の2、所法157④、相法64④、地法72の43④)。 これに対し、消費税法においては、包括的租税回避防止規定が設けられていない。さらに、地方税法においては、条文上、「事業税の負担を不当に減少させる」場合に適用されることが明らかにされているため、住民税均等割や不動産取得税については包括的租税回避防止規定が適用されないことになる。なお、住民税法人税割については、法人税が否認された場合に、自動的に住民税の支払いが求められることから、法人税法における包括的租税回避防止規定の範疇にあると考えても差し支えない。 このように、組織再編成により不当に法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担を減少させる行為又は計算に対して、包括的租税回避防止規定が設けられており、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、更正を行うことが可能となる。 しかしながら、どのような場合において、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かについて明らかにされていない。 これに対し、同族会社等の行為計算の否認(法法132、所法157①、相法64①、地法72の43①)については、戦前から存在する規定であり、包括的租税回避防止規定に類似する規定となっていることから、同族会社等の行為計算の否認に関する過去の判例、学説を参考にすることができる。 同族会社等の行為計算の否認は、同族会社の行為又は計算において法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担を「不当に減少」させる結果となる場合において適用される。この場合の「不当に減少」させる結果になる場合の判断基準として、非同族対比説と合理性基準説があり、実務上、合理性基準説の方が有力であると考えられている。 合理性基準説に立つ判例を見ると、「取引当事者が経済的動機に基づき自然、合理的に行動したとすれば、普通とったはずの行為形態をとらず、ことさら不自然、不合理な行為形態をとることにより、法人税回避の結果を生じた場合、あるいは取引当事者が達成しようとした経済的目的を達成するためにはいっそう自然、合理的な行為形態が存在するのにことさらに不自然、不合理な行為形態をとることによって法人税回避の結果を生じた場合に、取引当事者が経済的動機に基づき自然、合理的に行動したとすれば、普通とったであろうと認められる行為計算が行われた場合と同視して法人税を課することができるものとする趣旨と解される」(昭和49年6月17日東京高等裁判所判決)としており、前述における租税回避の定義にあるように、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除する」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、119頁)ような事実関係がある場合において、同族会社等の行為計算の否認が適用される可能性があると考えられる。 なお、同族会社等の行為計算の否認は、租税回避目的があるか否かにかかわらず、結果として法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担が不当に減少した場合に適用することができるとされている。 なぜなら、昭和25年度税制改正前においては、「法人税を免れる目的があると認められるものがある場合」とされていたものが、昭和25年度税制改正により、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるとき」と改正されたためである。 すなわち、租税回避目的の有無ではなく、実行された行為についての経済合理性の有無により、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かが判断されることになる。 そのため、組織再編成を行った場合についても、実行された組織再編成についての経済合理性の有無により、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かが判断されることになる。この場合の経済合理性の判断であるが、前述のように、組織再編成により達成しようとする経済的成果に合理的な理由がない場合だけでなく、達成しようとする経済的成果に合理的な理由があるものの当該経済的成果を達成するために選択する法形式に合理的な理由がない場合も含まれることになる。 したがって、実務上は、以下の点に留意する必要があると考えられる。 組織再編成により得られる経済的効果が、事業において必要なものであること 税目的以外の見地から、複数の選択肢のうち、選択された組織再編行為が、他の代替的な手法に比べ有利な手法であること(又は少なくても不利な手法でないこと) なお、当然のことながら、租税回避のみを目的としているにもかかわらず、わずかな事業目的を外形的に作り出して、実行された組織再編成に経済的合理性があることを主張したとしても、税務調査においては認められない可能性があるという点に留意が必要である。  ※財務省主税局において組織再編税制の立法に携わった朝長英樹氏は、「T&A master(ロータス21) No.443、No.446、No.447」において、同族会社等の行為計算の否認に係る立法趣旨と包括的租税回避防止規定に係る立法趣旨の違いについて説明されているが、納税者が行った私法上の行為についての経済合理性の有無により包括的租税回避防止規定の適用がなされるか否かが判断されるという点については大きな違いはないため、実務上の判断としては、同族会社等の行為計算の否認についての判例を参考にすることについては、差し支えないと考えられる。   (了)

#No. 11(掲載号)
#佐藤 信祐
2013/03/21

企業不正と税務調査 【第4回】「経営者による不正」 (1)売上除外

企業不正と税務調査 【第4回】 「経営者による不正」 (1) 売上除外   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   脱税をする方法は、大きく言って2つしかない。 のいずれかである。 こうした経営者自らが関与する脱税は、結果として、裏金作りにつながっていることが多い。 ここでは、経営者による典型的な脱税・裏金作りスキームとして、売上の一部を除外して計上する事例と、架空(水増し)人件費の計上する事例を説明する。 いずれも、中小企業の経営者による不正スキームであることが多いが、大企業においても、海外子会社、国内の支店長などに権限委譲が進み、本社の目が行き届かないことをいいことに行われる可能性もある不正であり、業務監査の際に留意することが要求される。   1 売上除外の手口 売上除外は、単純な手口によるものが多い。 通常と異なる銀行預金口座を記した請求書を送付して、本来の売掛金回収口座ではない預金口座に振り込ませ、その部分を申告しないとか、現金売上の一部をレジに入力せずに現金を抜くといった手口は、誰もが思いつくところであろう。 もちろん、不正実行者も考えてはいるのである。 なにしろ、経営者を売上除外へとかりたてる誘惑は少なくない。 なかには、自分だけが不正を働かないのは損であるとか、税金を納めても今の政治は信用ができないといった正当化を行っている経営者もいるかもしれない。 しかし、こうした経営者の思い込み、ちょっとした隠蔽工作は、往々にして、税務調査の前には無力である。   2 税務調査により発覚するパターン 脱税額が相当に多額で検察に告発されたとか、納税者がマスコミに登場することの多い著名人・著名店であればまだしも、売上除外による所得隠しで重加算税の賦課決定処分を受けた程度では、マスコミで報道されることもない。 それほど売上除外は、税務調査で最も多く発見される不正なのである。 国税調査官がどのようにして売上除外の端緒をつかむかについては、業種・業態によって一概には言えないところだが、まず、実地の調査にとりかかる前に、同社の過年度の実績との比較、同業他社との比較などにより、不審点を発見しておき、これを調査の中で追及していくことが考えられる。 実際の税務調査では、仕入れた商品(棚卸資産)と売上との照合とによって、売上が除外されているかどうかを確認したり、すでに調査済みの取引先から入手した取引データと照合したりした結果、調査対象会社の売上実績が少ないことを見抜くといった手法がとられる。 税務調査による主な発見パターンと挙げると、以下のとおりである。 (1) 経営者のPC・手帳・メモ 最近の税務調査では、PCに保存しているファイルの閲覧を要求されることが多くなっている。 PCそのものが押収されたとか、ハードディスクを複製されたといった事例までは聞かないが、調査官から「社長がお使いのPCを見せてください」と要求された場合、拒否することは難しい(たとえばプライバシーを問題にした場合には、会社所有のPCにプライバシー情報を入れるのはおかしいとか、国税職員は守秘義務を負っているためプライバシーが漏れることはない、といった反論がされることだろう)。 そうすると、PCの中から、通常と異なる預金口座が記載された請求書ファイルが発見されたり、隠し預金口座の出納記録が保存されていたり、除外した売上を集計していたりと、社長のPCには売上除外を裏づけるデータが残っている可能性が高い。 この段階で、社長がすべてを自白すれば、以下の調査は省略されるのだが、白を切ろうとすると、さらに調査が進むことになる。 (2) 反面調査・取引先の調査データによる場合 怪しい請求書データを発見したら、反面調査である。 まずは、国税総合管理システムなどを利用して、調査対象会社の取引先の申告書に添付された内訳書や税務調査の際に得たデータをもとに、両社の間で取引実績に乖離がないかどうかを調べる。 そこで、不信感が増幅されたら、実際に取引先に調査に赴いて、通常の振込先と異なる預金口座を指定した請求書について、取引先から事情を聴取して、裏づけを得る。 (3) 銀行調査による場合 次は、隠した売上代金がどこにあるかを探るための銀行調査である。 すでに請求書データから、除外した売上代金の入金口座情報は取得しているので、当該口座の入出金履歴を調べ、出金については現金引出か、他の口座への振込みかどうか、振込みの場合は送金先の口座情報を把握することによって、売上除外による「たまり」を特定して、課税処分へとつなげる。 (4) 無予告調査による場合 現金商売を主とする飲食業、小売業への調査は、無予告で行われることが多い。 もちろん、事前の内偵調査により、不審な点はすでに発見されている。 外観調査で、来店客数のわりに売上高が少ないと判断すると、割りばしやおしぼりの納入業者に調査に入る。無予告調査の前日には、調査官が客を装って入店し、伝票や1万円札に印をつけておいて、その翌朝、調査に入って、伝票が捨てられていないか、1万円札がレジに残っているかどうかを調べたりする手法がとられることもあるようである。 次回は、もう一つの経営者による不正の典型例である「架空(水増し)人件費」について、その手口と税務調査による発見方法について説明する。 (了)

#No. 11(掲載号)
#米澤 勝
2013/03/21

平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第7回】

平成26年1月から施行される 「国外財産調書制度」の実務と留意点 【第7回】   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   (第2章 制度の詳細な内容) 2-6 修正申告等があった場合の加算税の計算方法 調査により修正申告等(更正・決定を含む)が行われた場合の「加算税の計算の基礎となる所得税額又は相続税額」の計算方法は、次のとおりである(送金等法6①②)。 【計算例1】 国外財産に係るもののみの場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告により追加納付すべき税額:800,000円 (計算) 通常の過少申告加算税の額=以下のA+B=80,000円 A・・・追徴本税額のうち50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(800,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0円 B・・・上記以外の部分=800,000×10%=80,000 ●加重する場合の加算税額=80,000+800,000×5%=120,000円 ○軽減する場合の加算税額=80,000-800,000×5%= 40,000円 【計算例2】 国外財産部分、それ以外の部分、 及び隠ぺい・仮装部分がある場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ・(イ)国外財産に係る事実以外の事実のみと仮定した場合の税額(隠ぺい・仮装部分は除く):300,000円 ・(ロ)隠ぺい・仮装部分の税額:100,000円 (計算) 800,000-隠ぺい・仮装部分(100,000)=過少対象部分(700,000) 通常の加算税の額 ・重加算税:100,000×35%=35,000 ・過少申告加算税:以下のA+B=60,000 A・・・700,000のうち、50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(700,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0 B・・・上記以外の部分=(700,000-100,000)×10%=60,000 ∴通常の加算税の額=35,000+60,000=95,000 国外財産に係る追徴本税額=800,000-100,000-300,000=400,000 ●加重する場合の加算税額=95,000+400,000×5%=115,000円 ○軽減する場合の加算税額=95,000-400,000×5%= 75,000円 【計算例3】 加重部分と減額部分の両方がある場合で、 重加算税対象がない場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ・(イ)追徴本税額中、国外財産を記載していなかった部分:200,000円 ・(ロ)同上中記載していた部分:600,000円 (計算) 通常の加算税の額 A・・・800,000のうち、50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(800,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0円 B・・・上記以外の部分=(800,000-0)×10%=80,000 ∴通常の加算税の額=A+B=80,000 ●加重部分の加算額=200,000×5%=10,000円 ○軽減部分の減算額=600,000×5%=30,000円 ∴合計加算税額=80,000+10,000-30,000=60,000円 【計算例4】 加重部分と減額部分が両方あり、 かつ、重加算税対象がある場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ① 加重措置が適用される国外財産に係る事実、及び国外財産に係る事実以外の事実のみに基づいて修正申告等があったものと仮定して計算した場合に算出される所得税額:300,000円 ② 加重措置が適用される国外財産に係る事実(重加算税対象を除く)のみに基づいて修正申告等があったものと仮定して計算した場合に算出される所得税額:100,000円 ③ 国外財産に係る事実以外の事実のみに基づいて修正申告等があったものと仮定計算した場合に算出される所得税額:100,000円 ④ 隠ぺい・仮装による重加算税対象本税:100,000円   (注)*は結果として算出される金額 (計算) 通常の加算税の額:95,000円 ←【計算例2】と同じ 【手順1】 加重措置対象の計算 ①(300,000)-②(100,000)=200,000・・・X 【手順2】 減額措置対象の計算 800,000-(X(200,000)+③(100,000)+④(100,000))=400,000円→ ⑤ ●加重部分の加算額=200,000×5%=10,000円 ○軽減部分の減算額=400,000×5%=20,000円 ∴合計加算税額=95,000+10,000-20,000=85,000円 ※次ページ(参考資料)へ 参考資料 【本法】(下線は筆者) 【施行令】(下線・緑色字による強調は筆者) 【施行規則】 (了)

#No. 11(掲載号)
#小林 正彦
2013/03/21

税務判例を読むための税法の学び方【6】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋(その1)

税務判例を読むための税法の学び方【6】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋 (その1)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘   ある事項について規定した法令が複数存在しながら、それらの規定している内容が異なり矛盾抵触している場合に、そしてこれらの法令のうちの1つを自由に選択することが認められていない場合には、どの法令の規定を適用すべきかが問題となる。 民法第604条第1項には「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。」とあるが、借地借家法の第3条には「借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」 と規定されている。 借地契約も賃貸借契約であるから、この場合はいずれを適用すべきであろうか。 また税法においても、譲渡所得については、所得税法第33条(譲渡資産の取得費に関しては第37条や第57条の4以下等にも規定がある)に規定があるほか、租税特別措置法第31条から第40条の3までにその特例が規定されている。 また更正の請求に関しては、国税通則法第23条に規定があるが、所得税においても第152条以下に、法人税法においては第80条の2以下に、相続税法においては第32条等に、消費税法においては第54条以下に各別に定められている。このように個別税法の規定が国税通則法や租税特別措置法の規定と抵触した場合に、いずれを適用するのかといった問題がある。 このように複数の規定内容が異なる場合に、いずれを適用すべきかについて、一般に、次の4つの解決原理が挙げられている。 では、以下に、これらを各別に見ていく。   1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理) 法令の種類ごとに所管事項を定め、所管事項以外のことは規定できないこととし(所管事項を越えて規定すれば、それは無効となる)、法令間にはじめから矛盾抵触が生じないようにするという原理である。 国税徴収法に関連する法律に「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」がある。滞納処分による差押えがされている財産に対しても民事の強制執行等ができることとされているとともに、その逆に、民事の強制執行等がされている財産に対しても滞納処分ができることとされている。 そこでこの両者の調整のためにこの法律があるのであるが、同法第37条には「この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。ただし、強制執行、仮差押の執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。」とその所管事項を法律で規定している。もっともこれは、政令等の所管事項を定めたものであるが、法律の所管事項が競合する場合も多く、この所管法令優先の原理によって解決できない場合が多い。 そこで、以下に挙げる原理により解決することになる。   2 上位法令優先の原理(法令の形式的効力の原理) ある法形式の法令と別の法形式の法令とがその内容において相違するようなときには、上位の形式的効力による法令が下位の形式的効力による法令に優先するものとして、その矛盾抵触を解決しようとする原理である。 この原理のもとに、わが国の法令は憲法を頂点として、法律、最高裁判所規則、議院規則、政令、府省令、地方公共団体の条例又は規則などの各種の法形式ごとに効力に上下の差を置いており、この形式的効力に差がある場合に、この原理により解決を図るものである。 「上位法は下位法に優る」という法格言は、このことを表わしている。また「国際法は国内法を破る」という法格言も、条約は形式的効力としては法律の上位にあることから、条約と法律の関係について、この上位法令優先の原理の一部を表しているものである。 なお、条約と憲法との関係では、憲法に反する条約は無効とする見解(憲法優位説)と条約は憲法にも優先するという見解(条約優位説)とが学説上対立しており、この法格言の「国内法」に憲法が含まれるかは明確な結論が出ていない。 また、この優先順位の変更を法が規定している場合もある。 商法第1条第2項においては「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。」と規定されている。このため制定法の民法よりも不文法の商慣習法が優先されることになる。 なお租税法においては、一概に法律に反する(地方税法に規定がないことが直ちに「反する」ことになるかという議論はさておき)条例が無効とはいえない。東京都銀行税や神奈川県臨時特例企業税について大きな話題となったが、自治体は、自主財政主義により課税自主権を有しており、(一定の制約はあるが)法定外税を定め得るものと解されるからである。 法律間で抵触する場合には、形式的効力に差がなく、この原理では解決し得ない。そこで以下の原理により解決することになる。(次回へ続く) (了)

#No. 11(掲載号)
#長島 弘
2013/03/21

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載11〕 現物配当に係る会計上・税法上の取扱い

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載11〕 現物配当に係る 会計上・税法上の取扱い   日本税制研究所研究員 朝長 明日香   平成22年度税制改正において適格現物分配が組織再編成の一形態として位置づけられたことにより、完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合には、その現物分配に係る資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされた。 従来、商法において現物配当の可否についての明確な規定は設けられていなかったが、平成18年に施行された会社法においては、株主総会での決議を経ることにより、現物配当が可能とされている(会法454①一)。 しかし、本稿においても述べるとおり、現物配当に係る会計上の取扱いは、現物分配に係る税法上の取扱いと異なるケースがあるため、両者を混同しないよう注意しなければならない。 法人税法に規定する現物分配とは、次のⅰ又はⅱをいい(法法2十二の六括弧書)、本稿においては、ⅰに該当する現物配当が行われたものとして会計上の取扱いを述べることとする。 以下、企業集団外の企業間で現物配当を行った場合と企業集団内の企業間で現物配当を行った場合の会計上の取扱い(下記1)、及び、完全支配関係のない法人間で現物分配を行った場合と完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合の法人税法上の取扱い(下記2)を述べることとする。 なお、「現物分配」という用語は法人税法独自の用語であるため、以下の会計上の取扱いの解説に当たっては「現物配当」という用語を用いることとし、源泉徴収については考慮しないものとする。 1 現物配当に係る会計上の取扱い (1) 企業集団外の企業間で現物配当を行った場合 ① 現物配当を行った会社における会計処理 金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を行った場合には、配当の効力発生日(会法454①三)における配当財産の時価をもって繰越利益剰余金を減額し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、配当の効力発生日の属する期の損益とされる(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(以下「自己株式等適用指針」という)10)。 現物配当を行った会社の会計仕訳は、次のとおりである。 ② 現物配当を受けた株主における会計処理 金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を受けた場合には、交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて会計処理をすることが適当であると考えられており、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなされ、配当直前のその株式の適正な帳簿価額を合理的に按分した金額を、株式の帳簿価額から減額することとされている(事業分離等に関する会計基準(以下「事業分離等会計基準」という)52、143)。 合理的な按分方法には、次のような方法があり、実態に応じて適切に用いることとされている(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針295)。 また、移転を受けた配当財産は、時価により計上することとされており、合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は、その期の損益とすることとなる(事業分離等会計基準15、16)。 現物配当を受けた株主の会計仕訳は、次のとおりである。   (2) 企業集団内の企業間で現物配当を行った場合 ① 現物配当を行った会社における会計処理 会社が企業集団内の企業に現物配当を行った場合には、企業結合における共通支配下の取引に準ずることとされており、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって繰越利益剰余金を減額することとなる(自己株式等適用指針10(3)、38)。 企業集団内の企業に現物配当を行った場合の会計仕訳は、次のとおりである。 ② 現物配当を受けた株主における会計処理(子会社からの現物配当の場合) 現物配当をした会社が子会社である場合にも、上記(1)②と同様に、株式の一部が実質的に引き換えられたものとみなされ、合理的に按分した金額を株式の帳簿価額から減額することとなる(事業分離等会計基準52)。 ただし、移転を受けた配当財産は、移転直前の適正な帳簿価額により計上することとされており、合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は、原則として、その期の損益とされる(同前14)。 子会社から現物配当を受けた株主の会計仕訳は、次のとおりである。   2 現物分配に係る税法上の取扱い (1) 完全支配関係のない法人間で現物分配が行われた場合(非適格現物分配の場合) ① 現物分配法人における税務処理 完全支配関係のない法人間で行われた現物分配による資産の移転は、無償による資産の譲渡(法法22②)に該当し、資産の譲渡益の額又は譲渡損の額は、益金の額又は損金の額に算入することとなる。 非適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 ② 被現物分配法人における税務処理 金銭以外の資産の移転により剰余金の配当を受けた場合においても、その配当は通常の配当と何ら変わりはなく、受取配当等の益金不算入制度(法法23)の適用を受ける場合には、一定額が益金不算入となる。 また、移転を受けた資産の取得価額は、時価によることとなる。 非適格現物分配に係る被現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。   (2) 完全支配関係のある法人間で現物分配が行われた場合(適格現物分配の場合) ① 現物分配法人における税務処理 完全支配関係のある法人間で行われる現物分配は、適格現物分配に該当し、現物分配法人は、被現物分配法人に対し、資産を適格現物分配直前の帳簿価額により譲渡したものとされる(法法62の5③)。 このため、資産を移転したことによる譲渡損益は繰り延べられることとなる。 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 ② 被現物分配法人における税務処理 適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益も、配当を受けたことによる収益であることは明らかであるが、この収益に関しては、法人税法62条の5第4項において全額益金不算入とされ、同額の利益積立金額が増加することとなる(法令9①四)。 また、移転を受けた資産の取得価額は、適格現物分配直前の帳簿価額に相当する金額とされている(法令123の6①)。 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 (了)

#No. 11(掲載号)
#朝長 明日香
2013/03/21

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第1回】「改正の経緯と指針の読み方」

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の 主な改正点と留意点 【第1回】 「改正の経緯と指針の読み方」   税理士 永橋 利志   1 はじめに(改正までの経緯) 「平成24年版 中小企業の会計に関する指針(以下「中小会計指針」という)」が、本年2月に公表された。 中小会計指針は、平成17年8月に公表され、平成18年の会社法施行に伴う純資産の部に係る取扱いの変更をはじめ、その後のわが国の会計基準(以下「日本基準」という)の動向に呼応し、毎年改定されてきた。 ただし、その改定は、日本基準の改正等をすべて受け入れたものではなかった。それは、中小企業の規模や会計情報を必要とする利害関係者は、金融機関や取引先、そして、利害関係者とはいえないが、法人の申告内容の適否を調査する課税庁であるという実態を鑑み、精緻な日本基準を適用することが中小企業の実態に合わず、中小企業の会計の質を高め、財務体質の改善等に資すると考えられなかったからである。 このように、中小会計指針は、日本基準の動向に対応しつつ、中小企業の実態に合うように改正が行われてきたが、近年の国際会計基準(以下「IFRS」という)適用の影響を中小会計指針も受け、中小企業の経営者や経理担当者にとって、中小会計指針が複雑な処理を求めるようになり、利用しづらいものになるのではないかという議論がされるようになった。 また、以前から、中小会計指針の規定そのものが複雑で、中小企業にとって利用しづらいという指摘もあり、平成24年2月に「中小企業の会計に関する基本要領(以下「中小会計要領」という)」が公表された。 これは、中小会計指針より中小企業経営者にとって、理解しやすく、利用しやすい会計処理の基準という基本的考え方で導入されたものであるが、会計処理について、中小会計指針と大きく変わることなく、中小会計指針の簡易版というよりはむしろ、中小企業として最低限クリアすべき会計処理が規定されていると考えるべきである。 今回の中小会計指針の改正は、このような状況の下で、中小会計指針に対するこれまでの評価を受けて、水準を維持しつつ、中小企業経営者にとっても理解しやすく、利用しやすい基準とするよう、会計処理や計算書類への表示方法等について、大きく変えるのではなく、各規定の表現ぶりを理解しやすいようにし、必要に応じて脚注で解説を加える等の変更がなされた。 本連載では、今回の改正点をはじめ、中小会計指針を適用する場合の注意点を確認することとする。   2 中小会計指針における「重要性」 中小企業に限らず、企業が会計処理を検討する際に「重要性がないと認められる場合には、簡便的な方法が認められる。」という旨の規定を見ることがある。 この場合の「重要性」の判断基準は、画一的に決められるのものではなく、個々の事案ごとに金額的重要性や当該処理に係る取引が企業に与えるインパクト等を加味して判断することになる。 ただし、その判断は非常に難しく、中小会計指針においても、各論の該当する個々の規定ごとに「重要性」について触れていくべきであるが、そのような対応は、規定を増やすだけで実効性に欠けることから、中小会計指針の【総論】の「本指針の記載範囲及び適用に当たっての留意事項」第9項(2)に「重要性について」という項目を新たに設けた。 そこでは、「本指針の各論において記載の会計処理の中には、重要性の乏しいものについて、簡便な方法によることが認められているものがある。重要性が乏しいかどうかについては、金額的な面と質的な面の双方を考慮して判断することとなるが、具体的な判断基準は、企業の個々の状況によって異なり得ると考えられる。」としている。 さらに、重要性に関連して、「重要性が乏しいもの以外に、退職給付債務の計算方法等、中小企業の特性を考慮した簡便的な方法が認められている場合もある。」として、簡便法処理基準の具体例を紹介し、中小会計指針全体に共通するルールを示すこととした。   3 中小会計指針における「要点」と読み方 今回の改正により、本文が変更されたものではないが、中小会計指針を利用する上で認識しておかなければならないものとして掲げられるのは、各項目にある「要点」の位置づけについてである。 中小会計指針では、総論が第1項から第9項まで、金銭債権から始まる各論が第10項から第89項までの全89項の規定がある。 特に、日常の業務では、各論の該当項目を確認することが多くなるが、その際、中小会計指針の規定本体は、例えば、金銭債権であれば、第10項の金銭債権の定義「金銭債権とは、~(後略)~。」の本文であり、各論の冒頭にある枠組みの部分は、本文規定を要約したサマリー的位置づけのものであるという点について、これまでと同様であり、変更がない部分であるが、要点が規定であると見られていたような事実も散見された。 中小会計指針を利用するときは、各項の本文が規定であり、枠組み内の要点は、本文規定のポイントを要約したものであるという位置づけを認識しておく必要がある。   4 まとめに代えて 今回は、中小会計指針の今回の改正に至る経緯と、総論の改正点を確認した。 次回からは、各論での改正による変更点及び改正による変更点の有無にかかわらず会計処理を行う際の注意点、さらには、日本税理士会連合会が作成し公表している「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」を作成する際の注意点について確認することとしたい。 【参考】 日本税理士会連合会ホームページ ・「「中小企業の会計に関する指針(平成24年版)」の公表について」 ・「中小企業の会計に関する基本要領」 (了)

#No. 11(掲載号)
#永橋 利志
2013/03/21

対談 管理会計を学ぶ 【第1回】

管理会計を学ぶ 【第1回】 (対談日:2013年2月18日)       (次回へ続く) おすすめ書籍のご案内 『崖っぷち女子大生あおい、チョコレート会社で会計を学ぶ。』 林 總、山本 宣明 著 清文社・2013年2月発行・定価:1,575円(税込) ※プロフェッションネットワークの書籍販売ページでは、会員優待価格でご購入いただけます。

#No. 11(掲載号)
#林 總、秦 美佐子
2013/03/21

改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点 【第3回】「改正高齢法対応の就業規則と労使協定モデル」

改正高年齢者雇用安定法の 実務上の留意点 【第3回】 「改正高齢法対応の就業規則と 労使協定モデル」   社会保険労務士 平澤 貞三   改正高齢法においては、就業規則中の定年に関する条文及び定年後再雇用に関する労使協定の中身の見直しが重要となるが、現行法でのポピュラーな就業規則及び労使協定例を示すと、以下のようになる。 《現行法での就業規則・労使協定例》 改正高齢法を踏まえた就業規則及び労使協定の変更ポイントとして、以下の点が挙げられる。 上記を踏まえた就業規則及び労使協定モデルを示すと、以下のようになる。 《正高齢法対応の就業規則と労使協定モデル》 (了)

#No. 11(掲載号)
#平澤 貞三
2013/03/21

会社が取り組む社員の健康管理【第3回】「健康診断に係る費用負担と事後措置について」

会社が取り組む 社員の健康管理 【第3回】 「健康診断に係る費用負担と 事後措置について」   社会保険労務士 佐藤 信   1 はじめに 前回は会社が行う健康診断のポイントや実施スケジュール等について触れたが、引き続き健康診断に関連した内容として、費用負担や事後措置等について触れていくこととする。   2 健康診断の費用負担 労働安全衛生法の定めによる健康診断を実施する場合、その健康診断の実施に要する費用は、会社が負担しなければならないとされている。 ただし、会社が指定した医師による健康診断を受けず、労働者が自ら選定した医師による健康診断(労働安全衛生法66条5項)を受診した場合は、健康診断の実施に要した費用を負担する必要はない。 なお、「協会けんぽ」においては健康診断に対する費用の一部負担が行われているため、対象者の範囲、健診項目、実施機関等について事前に確認をした上で活用していくとよい(「健康保険組合」に加入している会社の場合は、各健康保険組合が問い合わせ窓口となる)。   3 健康診断実施中の賃金 一般健康診断の場合、実施中の賃金の支払いは義務付けられていない(支払われることが望ましいとされている)。 ただし、特殊健康診断(じん肺健康診断、高気圧業務健康診断、石綿健康診断など業務の種類に応じ定められた健康診断:労働安全衛生法66条2項、3項)の受診に要する時間については、賃金の支払義務が生じる。   4 労働時間の計算 健診実施中の賃金と同様に、労働時間の計算も健康診断の種類により扱いが異なる。   5 自発的健康診断 前回紹介したように、雇入れ時や定期的に実施する健康診断のほか、深夜業(午後10時から翌朝午前5時までの業務)に従事する労働者については、自ら健康診断を受け、医師による健康診断の結果を証明する書面を会社に提出することができることとされている。 会社は、労働者から健康診断結果の提出を受けたときは、次の措置をとらなければならないことに注意を要する。   6 健康診断実施後に会社がとるべき対応(事後措置) 社員が健康診断を終えた後に会社がとるべき事後措置等については、次のとおりである。 (1) 就業場所変更等の措置 会社は、健康診断の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。 この意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して以下のような措置をとる必要がある。 また、他の労働者についても同様の健康障害が生じないよう再発防止に向けての注意喚起、労働時間等の管理方法の見直しなどを行っておくことが望ましい。 (2) 保健指導 会社が健康診断を行ったときは、労働者に対し結果を通知することのほか、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。 (3) 面接指導 会社は、長時間労働を行っている労働者からの申し出があったときは、面接指導を行わなければならない。 面接指導の対象者とは、1週間当たり40時間を超えて労働させている場合であって、その超過時間の合計が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者とされている。 面接指導の申し出があったときは、次の事項を確認する。 会社は、面接指導を実施したときは、医師からの意見聴取、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の事後措置をとる必要がある。 また、この面接指導の記録について、5年間保存しなければならない。 面接指導については、法令では「労働者からの申し出」を実施要件としているが、そのようなことまで把握している労働者は多くないと思われる。 健康障害を防止していくためにも、労働者が自己の労働時間数を確認できる仕組みの整備、面接指導を申し出る手続を行うための体制整備や労働者への周知など、面接指導の申し出を行いやすい環境づくりに努めておきたい。 以上、2回にわたり、会社が実施する健康診断のポイントや留意点について紹介してきた。 健康障害の予防や再発防止には、会社側の取組みだけでなく、労働者の理解と協力も不可欠であるため、次回は健康の保持増進策や安全衛生教育について触れていくこととする。 (了)

#No. 11(掲載号)
#佐藤 信
2013/03/21

誤りやすい[給与計算]事例解説〈第11回〉-賞与計算(2)-【事例②】標準賞与額の累計計算

誤りやすい [給与計算] 事例解説 〈第11回〉 -賞与計算(2)-   税理士・社会保険労務士  安田 大   【事例②】―標準賞与額の累計計算― 〔正しい処理〕 〔解   説〕 1 健康保険料 賞与(年4回以上支給される場合は除く)から控除する健康保険料については、標準賞与額×保険料率の算式で計算することになる。 健康保険料算定の際の標準賞与額とは、賞与の支給額の1,000円未満の端数を切り捨てた額で、年度(4月1日~3月31日)における上限が累計額で540万円となっている。 2 標準賞与額の累計額の取扱い 健康保険の標準賞与額は、年度(4月1日~3月31日)の上限が540万円となっているが、転職、転勤等があった場合には、保険者単位(全国健康保険協会、各健康保険組合)で、その累計額を算出することになる。 また、育児休業による保険料免除期間中に支払われた賞与、資格喪失月に支払われた賞与(被保険者期間中に支払われたが、保険料賦課の対象外となる賞与(前回参照))についても、累計額に含めることになる。 したがって、事例の場合については、6月10日支給の賞与(育児休業による保険料免除期間中に支払われた賞与)の支給額も累計額の対象となるため、12月10日の賞与の支給額との累計で540万円を超えることとなり、今回の標準賞与額は240万円(540万円-300万円)となる。  3 健康保険標準賞与額累計申出書 全国健康保険協会管掌健康保険において、同一年度内に転職、転勤等によって複数の被保険者期間があり、それぞれの被保険者期間中に決定された標準賞与額の累計額が540万円を超えた場合には、「健康保険標準賞与額累計申出書」を年金事務所に提出することになる。 なお、転職、転勤等がなく、被保険者期間が継続している場合には、540万円を超えても申出書の提出は不要である。 4 厚生年金保険料 賞与(年4回以上支給される場合は除く)から控除する厚生年金保険料についても、健康保険の場合と同様に、標準賞与額×保険料率の算式で計算をすることになる。 ただし、厚生年金保険料算定の際の標準賞与額は、賞与の支給額の1,000円未満の端数を切り捨てた額で、上限が150万円となっている。健康保険料算定の際の標準賞与額とは異なり、年度の累計額ではなく、1回ごとの上限額である。 したがって、事例の場合については、6月10日支給の賞与とは関係なく、今回の支給額が150万円を超えているので、標準賞与額は150万円となる。 (了)

#No. 11(掲載号)
#安田 大
2013/03/21
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