谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第18回】「国税通則法38条(36条~40条)」-繰上請求の意義と位置づけ-
既に第1回の2で述べたように、国税通則法はその制定の経緯からして国税徴収法の延長線上で制定されたとみるべきものであり、両法は「実は[手続の]実体的には一本のやつを、便宜主義的に二本に分かれている」(研究会「国税通則法をめぐって」ジュリスト251号(1962年)10頁、14頁[志場徳治郎発言])というようにみることができる。
〔令和5年度税制改正における〕電子帳簿等保存制度の見直し 【追補】
国税庁は、令和5年6月30日に「「電子帳簿保存法取扱通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」及び「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」(以下「一問一答」という)の更新等を公表した。
本稿では、電子帳簿保存法に関する令和5年度税制改正に伴い整備された上記の改正通達及び一問一答の内容について解説する。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第9回】「国税通則法第68条第1項の重加算税が賦課される「納税者」の範囲」
① 専務取締役は株式会社である審査請求人(請求人)に採用され、課長、部長、常務取締役を経て現職に就いている。
② 専務取締役は、その知人の経営する会社に架空の請求書を発行させること及び請求人の外注先に代金を水増しした請求書を発行させることにより、請求人の経理担当者に当該請求額が正規の請求額であると誤信させて支払処理をさせる方法により、請求人から各取引先を経由して各金員(本件各金員)を詐取した。
③ 請求人は、本件各金員を損金の額に算入して(課税仕入れの支払い対価の額に含めて)法人税等及び消費税等の申告をした。
④ 請求人は、税務調査を受け、損金の額(課税仕入れの支払い対価の額)から本件各金員を減額して修正申告をした。
⑤ 原処分庁は重加算税の賦課決定処分をして、請求人は過少申告加算税を超える部分を不服として審査請求した。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第17回】「国税通則法35条(34条~34条の7)」-申告納税方式による国税等の納付-
国税通則法は、「第2章 国税の納付義務の確定」に続き「第3章 国税の納付及び徴収」を定め、同章の中で「第1節 国税の納付」、「第2節 国税の徴収」及び「第3節 雑則」を定めている。今回は国税の納付についてその意義、方式及び手続を概説した後、特に申告納税方式による国税等(国税及び加算税)の納付(35条)について若干の検討を行うことにする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第16回】「国税通則法32条(31条・33条)」-賦課課税方式における賦課決定とこれによる納税義務の確定の「本質」-
国税通則法16条1項2号は、賦課課税方式を「納付すべき税額がもつぱら税務署長又は税関長の処分により確定する方式」と規定し、同法第2章(国税の納付義務の確定)第3節で「賦課課税方式による国税に係る税額等の確定手続(第31条-第33条)」を定めている。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第7回】「国税通則法第23条第2項第1号の「判決」の具体的範囲」
① 被相続人の相続人は、それぞれ被相続人の子である審査請求人(請求人)、A及びBの3人であり、請求人は熟慮期間の伸長を2度経た上で家庭裁判所に相続放棄の申述をした。
② Aは、請求人及びBを相手に遺産分割審判の申立てをした。
③ 請求人は、相続税法第55条の規定に基づき、自らの法定相続分が3分の1であることを前提とする期限後申告をした。
④ 家庭裁判所は、各相続人の法定相続分がいずれも3分の1ずつであることを前提に、本件土地を請求人に取得させることなどを内容とする審判(本件審判)を行い、これが確定したことに伴い、所有権移転登記が経由された。
⑤ Aは、請求人が相続放棄の申述をしていたことを知り、裁判所に対して本件審判の無効確認を求めるとともに、所有権移転登記の抹消を求める訴えを提起したところ、裁判所は、本件審判の無効を確認するとともに、請求人に対して登記の抹消を命じる判決(本件判決)を言い渡し、これが確定した。
⑥ 請求人は、相続税法第32条第1項に規定する期限内に相続税の更正の請求をしたところ、原処分庁は、更正すべき理由がない旨の通知処分をした。
〔令和5年度税制改正における〕電子帳簿等保存制度の見直し 【後編】
決算関係書類を除く国税関係書類(取引の相手方から受領した領収書・請求書等)については、以下の要件で、スキャナにより記録された電磁的記録の保存により、その書類の保存に代えることができる(電帳法4③)。
〔令和5年度税制改正における〕電子帳簿等保存制度の見直し 【前編】
本稿では、電子帳簿保存法に関する令和5年度税制改正の内容について前・後編の2回にわたって解説する。
【前編】では、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し」について、【後編】では、「スキャナ保存制度の見直し」及び「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の見直し」について、改正前後の取扱いを確認する。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第15回】「国税通則法24条~26条(~30条)」-申告納税制度における税務官庁による納税義務の確定-
第11回では国税通則法17条(~22条)について、同条の定める期限内申告を申告納税制度の中心ないし基本に据えて「申告納税制度の体系的把握と実定的把握」(同回2・3)の観点から、検討したが、今回は、その検討の延長線上で、申告納税制度における税務官庁による納税義務の確定(税通24条~26条)について検討することにする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第14回】「国税通則法23条(3)」-後発的理由の意義と範囲-
国税通則法が23条2項で特別の更正の請求を定めた趣旨は、前々回1でみたように、「期限内に[減額更正を請求する]権利が主張できなかつたことについて正当な事由があると認められる場合の納税者の立場を保護するため、後発的な事由により期限の特例が認められる場合を[個別税法で規定されていた場合よりも]拡張し、課税要件事実について、申告の基礎となつたものと異なる判決があつた場合その他これらに類する場合を追加する」(税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」(昭和43年7月)54頁)ことにあった。