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令和4年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和4年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和4年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/30

プロフェッションジャーナル No.488が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年9月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.488を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/29

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第18回】「瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱い」-特別土地保有税「経過的事実」事件・最判平成14年12月17日判時1812号76頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第18回】 「瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱い」 -特別土地保有税「経過的事実」事件・最判平成14年12月17日判時1812号76頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前々回から課税要件事実の認定に関する問題を検討してきたが、今回は、その問題の1つとして、瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱いの問題を取り上げることにする。これは、私法上の法律行為に瑕疵があるとき、その瑕疵に対する私法的評価ないしその効力如何が、課税要件事実の認定において考慮されるべきか否か、また、どのように考慮されるべきかという問題である(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【61】参照)。 この問題は、古くから、ドイツにおける経済的観察法に相当する実質主義ないし実質課税の原則に関連する問題として、議論されてきた(清永敬次『租税回避の研究』(ミネルヴァ書房・1995年/復刻版2015年)71頁、368頁参照)。例えば、税制調査会『国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)』(昭和36年7月)4頁は下記のとおり「実質課税の原則」規定の創設を答申し、同答申の『説明(答申別冊)』(以下『昭和36年答申別冊』という)22-24頁で「実質課税の原則に関連する問題」の1つとして「無効な法律行為又は取り消しうべき法律行為等と課税」を検討している。 国税通則法制定に当たっては、この「実質課税の原則」規定の創設は見送られたが(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)26頁参照)、ただ、『昭和36年答申別冊』24頁で「流通税の場合」に関して示された次の見解(下線筆者)は、その後の判例に大きな影響を与えたように思われる。 今回は、瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱いの問題に関して、土地の売買契約が詐害行為として取り消された場合における当該契約に基づく土地の取得及び所有に対する特別土地保有税の課税に係る更正の請求の拒否通知の取消しを認めなかった最判平成14年12月17日判時1812号76頁(以下「詐害行為取消最判」という)を検討することにするが、その検討に入る前に、同判決が「経過的事実」の概念を用いて展開した議論(「経過的事実」論)について、先例をみておくことにする。   Ⅱ 流通税における「経過的事実」論 1 「経過的事実」論と法的形式主義 流通税の課税客体(課税対象・課税物件)について「経過的事実」論を最初に採用したのは、最判昭和48年11月2日集民110号399頁・裁判所ウェブサイトである(同日付の最判集民110号385頁・裁判所ウェブサイトも同旨。ただし、「経過的事実に則して」を「経過的事実に即して」と表記している)。これは、土地の売買契約の解除に基づく売主の所有権の回復が不動産取得税の課税客体としての「不動産の取得」に該当するかどうかについて、次のとおり判示して(下線筆者)、これを肯定した(以下「契約解除最判」という)。 次に、最判昭和48年11月16日民集27巻10号1333頁は、「経過的事実」という概念こそ用いていないが、契約解除最判では「その[所有権の得喪という]経過的事実に則してとらえられた」とされる「不動産の移転の事実」自体に着目し、次のとおり判示して(下線筆者)、譲渡担保による不動産所有権の取得が不動産取得税の課税客体としての「不動産の取得」に該当することを認めた(以下「譲渡担保最判」という)。 契約解除最判も譲渡担保最判も、『昭和36年答申別冊』が説く「強度に形式を尊重する」(第1実線下線部)という不動産取得税(流通税)の「特殊性」を考慮し、「不動産の移転の事実」に着目し、これを不動産取得税の課税客体としての「不動産の取得」の本質とみるものと解される。 「不動産の取得」は、契約解除最判によれば、「所有権の得喪に関する法律効果の側面」から捉えられるものではないとされるが、そうすると、その本質である「不動産の移転の事実」も、譲渡担保最判のいう「実質的に完全な内容の所有権」すなわち使用・収益・処分の全ての権能を含む完全な所有権の移転の事実を意味するものではないことは明らかである。つまり、「不動産の移転の事実」は、譲渡担保最判の第一審・控訴審判決が判示する「単に法律的、形式的見地においてのみならず、経済的、実質的、観点においても、不動産所有権のあらゆる権能の移転を伴う完全な所有権の取得」(東京地判昭和39年7月18日民集27巻10号1351頁)ないし「不動産所有権のあらゆる権能が全面的恒久的に移転する意味での完全実質的な所有権の取得」(東京高判昭和43年5月29日民集27巻10号1364頁)の事実ではないのである。 これらの下級審判決の考え方については、「租税法における経済的観察法ないし実質主義の考え方によったもの」(越山安久「判解」最判解民事篇昭和48年度263頁、272頁)と解説されているが、厳密にいえば、法的実質主義の考え方によったものというべきであろう。経済的実質主義と対置される法的実質主義の意義に関して、筆者は、「『法的実質』と『経済的実質』を全く異質なものとは考えるべきでない」とした上で、「『法的実質』とは、法形式の枠内で把握される経済的実質をいい(・・・・・・)、『経済的実質』とは、法形式の枠にとらわれることなく専ら経済的観点から把握される経済的実質(いわば『ナマの経済的実質』)をいうのである」と考えている(前掲拙著【57】)。 法的実質主義のこのような理解を前提にすると、契約解除最判も譲渡担保最判も、確かに、「不動産の取得」を、法的実質主義によって認定される「不動産の移転の事実」を把握する要件としては理解していないと解される。ただ、「法的実質主義では、私法上の法律関係が真実であるということは、それが仮装でないということを意味する」(前掲拙著【74】)が、上記最判をそのように理解するとしても、上記最判が「不動産の取得」を仮装による「不動産の移転の事実」までをも把握する要件として理解しているとはいえない。 そうすると、上記最判は、法的実質主義によって認定される「不動産の移転の事実」でも仮装による「不動産の移転の事実」でもない社会経済生活上の「不動産の移転の事実」が、「不動産の取得」要件に該当すると判断したものと解される。契約解除最判は、そのような社会経済生活上の「不動産の移転の事実」を「経過的事実」と呼んだものと解される。つまり、「経過的事実」とは、社会経済生活上の「不動産の移転の事実」のうち、法的実質(法形式の枠内で把握される経済的実質)を伴う「実質的に完全な内容の所有権」の移転の事実でも、仮装(経済的実質の点はもちろん法形式の点でも「無」の存在)による所有権の移転でもない、いわば両者の中間にある、法形式の点では実在する「不動産の移転の事実」をいうものと解される。 このような理解によれば、「経過的事実」論は、課税要件事実の認定について、経済的実質主義では勿論ないが法的実質主義でもないいわば「法的形式主義」ともいうべき考え方に基づくものといえよう。法的形式主義は、『昭和36年答申別冊』が説く「強度に形式を尊重する」(第1実線下線部)という不動産取得税(流通税)の「特殊性」に適合した考え方であると考えられる。 2 復旧的移転と形成的移転 以上に関連して、『昭和36年答申別冊』で述べられていることで1点気になるのは、その前記引用文中の第2破線下線部と契約解除最判との関係である。その破線下線部では、取り消し得べき法律行為の取消しによる所有権移転が問題にされ、契約解除最判では、「それが合意によるものであると解除権の行使によるものであるとにかかわらず」契約解除に基づく所有権移転が問題にされている。 これを私法的観点からみると、前者は、「取消しの効果として従前の所有者に不動産が復帰するときは、本来の所有権が確認されるにすぎ[ない]」(前川尚美ほか『現代地方自治全集19 地方税〔各論Ⅰ〕』(ぎょうせい・1978年)391頁)ことから、「復旧的移転」ということができるのに対して、後者は、「解除契約[=合意解除]についていえば、当該不動産を再売買したのと全く効果は同じ」であるほか「[約定解除及び債務履行による]解除は、既にいつたんは確定的に有効に成立した契約を、その履行段階における瑕疵による不利益を回避又は回復するためになされるものである」(以上は石田直裕「地方税法逐条解説(連載)不動産取得税(第2回)」地方税30巻11号(1979年)63頁、73頁)ことから、「形成的移転」ということができる。 『昭和36年答申別冊』の前記引用文の第2破線下線部と契約解除最判との関係については、私法的観点からは、復旧的移転には課税しないが形成的移転には課税するとして理解することも可能であろうが、両者とも「流通税」の課税を問題にしていることからすると、流通税の性格の観点からも、両者の違いを理解しておくことも必要であろう。 流通税とは、「権利の取得・移転をはじめとする各種の経済取引またはその表現たる行為に担税力を認めて課される租税」(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)868頁)をいうが、そこでいう「担税力」は、経済取引・行為に伴って金銭の授受が行われることを前提として、自由意思による自己資金の支払可能性から間接的に推定される経済的給付能力・支払能力を意味するものと考えられる(今村隆「判批」ジュリスト1262号(2004年)173頁、174頁も参照)。そうすると、形成的移転について担税力を認めて課税をすることに問題はないとしても、復旧的移転については、従前の所有者による金銭の支払も自己資金の支払ではなく借入金元本の返済と同じ効果をもつ以上、これに担税力を認めて課税することはできないと考えられる。このように、流通税の性格の観点からも、前記両者の違いを理解することができる。   Ⅲ 詐害行為取消しと「経過的事実」論 さて、今回の本題すなわち瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱いの問題の入ることにしよう。この問題について、『昭和36年答申別冊』の前記引用文では、瑕疵ある法律行為の取消しの私法上の効果(遡及的消滅効)を流通税の課税上は考慮しない旨の見解が述べられていた。 課税実務も基本的にはこの見解を採用してきた。すなわち、課税実務は、無効の場合と取消しの場合を区別し、「契約が虚偽表示、要素の錯誤等によって無効となった場合は、不動産の移転行為そのものが実質法上なかったこととされる結果、不動産取得税の課税客体である不動産の取得も存在しない。」(前川ほか・前掲書390頁)として不動産取得税の課税をしないものとするのに対して、「契約が意思表示の瑕疵、詐害行為等により取り消された場合は、当該取消しにより、所有権取得の効果は遡及的に消滅することになるが、税法の観点からは、たとえ一時的にではあっても、買主等が所有権を取得したという事実は消えない。」(同391頁)として不動産取得税の課税をするものとしてきたのである。この見解は、内容的には、「経過的事実」論に基づくものであると解される。 もっとも、課税実務には、『昭和36年答申別冊』の前記引用文の第1破線下線部の「意見」も根強かったように思われる。課税実務関係者の中には、取消しの場合を「①意思表示の瑕疵による取消」と「②特別な取消権による取消」とに区分し、前者については、上記の「意見」と同様、「取消が行われれば、その時点で無効の場合と同じになり、取消が行われる前に不動産取得税が賦課されていれば、その賦課処分を取り消し、既に納付された税額は還付しなければならない。」(石田・前掲「逐条解説」70頁)と説き、他方、後者については、「これらの[詐害行為取消権、書面によらない贈与の取消、夫婦間の契約の取消等の]特別な取消権は、①の意思表示の瑕疵に基づく取消と異なり、債務者の一般財産の保全のためやそれぞれの契約の特殊性に基づき認められているものであり、それらの取消がなされるまでは、当初の契約により完全に所有権は移転しているものである。従つて、取消がなされても当初の所有権の移転については当然課税すべきものである」(同71-72頁)と説く者もいたのである。 これに対して、学説では、「所有権移転の基因となる行為に無効又は取消原因たる瑕疵があって、無効が確定し又は取消された場合には、『取得』の効果が失われるという説が有力である。」(碓井光明「不動産取得税における『不動産』及びその『取得』の意義(三)」自治研究65巻9号(1989年)13頁、20頁)といわれていた。 以上のような議論状況の下で、詐害行為取消最判は、土地の売買契約が詐害行為として取り消された場合における当該契約に基づく土地の取得について、次のとおり判示して(下線筆者)、「経過的事実」論により、特別土地保有税の課税を維持した。 この判決は、「取得の原因となった法律行為が取消し、解除等により覆されたかどうかにかかわりなく」と説示していることからすると、「経過的事実」論を詐害行為取消の場合においてだけでなく広く取消しの場合や解除の場合においても展開するものであり、従来の議論状況を総括し、瑕疵ある法律行為等の課税上の取扱いの問題について最高裁の立場を明確にしたものと評価することができよう。 なお、詐害行為取消最判は、特別土地保有税のうち土地(の所有)に対するものを「財産税」と性格づけながら、流通税における「経過的事実」論の適用について「土地の所有についても同様に解するのが相当である」と判示しているが、これは「経過的事実」論の射程を超える判断であり妥当でないと考えられる。   Ⅳ おわりに 今回は、流通税の領域において展開されてきた「経過的事実」論の意義及び射程について、主に判例分析を通じて、それが流通税の課税要件事実の認定に関する法的形式主義に基づくものであることを明らかにした。 「経過的事実」論については、その事実の不明確さ等が批判されることがあるが(碓井・前掲論文18-19頁、今村・前掲「判批」174頁、山田二郎「判批」判例自治239号(2003年)112頁、115頁等参照)、ただ、そのような批判は、第一次的には、立法者が不動産取得税や特別土地保有税(取得分)について、流通税の観念を前提として、その課税客体を不動産・土地の「取得」として定めた際の立法裁量に向けられるべきである。 立法者はその裁量の範囲内で、それらの税の課税根拠となる担税力を、理論的には経済的概念である担税力の指標として適切とは言い難い「権利の取得・移転をはじめとする各種の経済取引またはその表現たる行為」(金子・前掲書868頁)に、認めたが故に、行政や裁判所は、それらの税の課税上、「強度に形式を尊重するという特殊性」(『昭和36年答申別冊』の前記引用文の第1実線下線部)を考慮した事実認定基準を設定しなければならなかったのであるが、それが、他の税目にはみられないような、所有権移転の形式に着目した経過的事実を認定基準とするものに帰結したのである。 (了)

#No. 488(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/09/29

これからの国際税務 【第33回】「グローバルミニマム税の国内立法化の動向」

これからの国際税務 【第33回】 「グローバルミニマム税の国内立法化の動向」   千葉商科大学大学院 客員教授 青山 慶二   1 G20/OECDでの実施枠組みの検討 軽課税国に所在する子会社等の税負担が、国際的に合意された最低税率(15%)に達するまで、親会社の所在する国において課税する所得合算ルールを中核とする「グローバルミニマム税」については、2021年10月のG20/OECDでの合意を受けて、国内法立法のガイダンスとなるモデルルール(2021年12月)及びその内容を解説するモデルルールコメンタリー(2022年3月)がOECD/IFにより公表され、現在は、執行面のルール等に関する「実施枠組み」の策定作業が行われている状況にある。 合意に基づく詳細設計が明らかになったことを受け、2022年中の国内法導入、2023年の施行という合意スケジュールに沿って、各国における国内法制化の動きが始まっており(注1)、我が国も、昨年の与党税制改正大綱で合意に沿った国内法整備を公約した。 (注1) EU及び米国における動向については、本連載の第32回で紹介している。なお、EUや英国は、目下のところ施行開始時期を2023年12月31日とする方向で法案を作成している。 本稿では、年末の令和5年度税制改正案の内容となると予測されるグローバルミニマム税の国内法制化について、9月1日に経済産業省研究会が公表した報告書「最低税率課税制度及び外国子会社合算税制のあり方について」(注2)を紹介し、国内法制化に際しての主要課題等を検討するものである。 (注2) 同報告書では、国際合意に係る新税制を「最低税率課税制度」と呼称しているが、本稿では従来からの呼称である「グローバルミニマム税(GloBE税制)」を使用する。   2 経済産業省研究会の報告 (1) 研究会の目的 グローバル化の下で、外国の多国籍企業との間で厳しい競争条件下にある我が国企業を支援する観点も踏まえて、当研究会は、米国、EU、英国での対応状況を踏まえて、グローバルミニマム税の我が国における円滑な制度導入のための論点整理を行うとともに、日本企業に過度な負担を負わさないように既存のCFC税制との関係整理及び簡素化を検討している。 なお、当研究会は、グローバルミニマム税については、合意による制度の枠組みが決定していることもあり、簡素化・明確化の議論に集中した提言にとどまっているのに対し、これと制度趣旨が重なり、最近の諸改正で過度に複雑化してきたと指摘されているCFC税制については、重複回避の必要性から、抜本的なCFC税制改革が可能ではないかとの視点に立って、令和5年度税制改正の案を検討している。 (2) グローバルミニマム税の議論状況の確認と課題の提示 最終合意に沿って、グローバルミニマム税を構成する2つのルール(所得合算ルールと軽課税所得ルール、両者を合わせてGloBEルールと呼ぶ)について必要な国内法改正を2022年に提案するとの政府方針を踏まえ、かつ、モデルルールで許容されることが明らかになった「適格国内ミニマム税」(注3)への対応も含めて、本報告書は以下の論点を抽出している。 (注3) 適格国内ミニマム税は、自国に所在する事業全体の実効税率が15%未満の場合に、他国において上乗せ課税されるのを防ぐため、各国が導入できる制度である。 ① 制度の簡素化 GloBEルールについての簡素化要請は、産業界から、課税要件の各構成要素ごとに要望されているが、特に力点が置かれているのは、子会社群についての国別の実効税率計算の簡素化である。国別実効税率は、CFC税制などの従来の制度が基礎をおいてきた企業別の租税負担割合計算とは異なる仕組みのため、適用対象となる大規模多国籍企業(連結年間総収入7.5億ユーロ以上)にとっても、新規の煩雑な追加事務を要し、負担が重いとされてきた。 特定の要件に該当する場合には、15%の実効税率の計算を不要とする「簡素化オプション」を認めるとする合意はあったものの、その内容は、モデルルールでは明らかにされず、執行枠組みの検討過程で確定するとされ、現在未確定の状況にある。報告書は、この点について、次の3点の要望を取りまとめた。 ② 制度の明確化 GloBEルールの中で国内法制化のために更なる明確化が必要な分野として、以下の3点を指摘している。 ③ 導入の時期 日本企業の競争相手先の居住地国におけるGloBEルールの導入時期に配慮した、早期の国内法制化を求めている。そのうえで、グローバルミニマム税の申告納付は、GloBE情報申告書の提出後に行う順序とすべきとしている。 ④ 外国の適格国内ミニマム税のモニタリング モデルルールで適格国内ミニマム税が上積み税額算定で斟酌されることが明らかになったため、今後同制度が多くの国で採用が見込まれるとし、我が国立法化に際してその動向のモニタリングの重要性を指摘している。同制度は、GloBEルールが当初予定していた親会社所在地国での追加税収を削減するものであるため、適格性の判断が適正かをチェックする必要性と、更にはそのためにGloBE情報申告書に追加する事務負担がないように、外国税制をモニタリングすべきとしている。 (3) 我が国CFC税制の現状と見直しの必要性 BEPS防止に加えて法人税引下げ競争に終止符を打つという目的のGloBE税制と、実質活動を伴わない外国子会社を利用した租税回避防止を目的とするCFC税制は、目的の違いはあるものの、親会社所在地国で追加的課税を行う点で共通した仕組みを持っている。 そのことを踏まえて、研究会の検討の出発点は、現行CFC税制の遵守手続複雑化の中で、立法趣旨の類似したGloBE税制が導入された場合の事務負担軽減の視点(CFC税制簡素化の視点)であったが、併せて、経済活動基準の構成(CFC税制の適用除外を画する仕組み)がグローバルビジネスの実態から乖離しているとの産業界からの問題提起にも応える視点(CFC税制適正化の視点)でも検討が行われた。 その結果、報告書が指摘したCFC税制の検討課題及びその検討の方向性は、以下のとおりである。 ① 簡素化の視点からの課題 ② 簡素化・適正化の双方の観点からの課題 各経済活動基準が、企業のビジネス実態の変化に即しておらず、かつ、判定のための事務負担も煩雑との指摘であり、この機会に適正化も図るべきとの指摘である。 (4) CFC税制の論点と今後の対応 ① 上記4つの課題についての対応策の検討 上記の4点の課題に対し、報告書では、見直しの方向性について詳細に検討した結果、下表のとおり見直しの処方箋を提言している。 〔研究会の提示する見直しの方向性〕 ② その他 報告書では議論されたものの、答えが出ないまま検討が持ち越されたCFC税制改正の課題項目がいくつかある。そのうち、最も重要と思われるGloBE税制が適用されない企業(連結年間総収入金額7.5億ユーロ未満)への上記のCFC税制改正案の適用の可否については、賛否両論が紹介されている。 中小企業にも、CFC税制改革の中でGloBE税制との併存を斟酌した簡素化・適正化の利益を与えるべきかの議論は、第1の柱で取り上げられる利益Bの適用範囲とも関係する問題であり、国際ルールと国内法の間で今後調整の如何が議論される可能性があると思われる。 (了)

#No. 488(掲載号)
#青山 慶二
2022/09/29

〔令和4年度税制改正〕財産債務調書・国外財産調書制度の見直し

〔令和4年度税制改正〕 財産債務調書・国外財産調書制度の見直し   税理士法人トゥモローズ 代表社員 税理士 大塚 英司   令和4年度税制改正案に盛り込まれた「財産債務調書制度等の見直し」案について、去る3⽉22⽇の国会において可決・成⽴し、令和5年分以後の財産債務調書等より適用がされていく。 また、7月6日には、国税庁から「財産債務調書制度等の見直しについて」のチラシが公開され、改正前後の取扱いについて周知が行われている。   1 改正の背景 所得が2,000万円以下の納税者については、仮に高額資産を所有していたとしても従前までは財産債務調書の提出義務がなく、課税庁側としても納税者の資産状況等を適切に把握できているとは言い難い状況であった。 そこで、財産債務調書の提出期限を後ろ倒しにすることや記載内容を省略・簡便化するなどの提出義務者の事務負担の軽減を図る一方で、財産債務調書の提出義務者の範囲の拡充が行われた。 また、国外財産調書についても、提出期限、宥恕措置、一部記載事項の見直しが同様に行われている。   2 改正の内容 (1) 10億円以上の資産保有者も提出義務者となる 令和5年分以降、財産債務調書の提出義務者の拡充として、所得がない者でも所有する財産合計額が10億円以上ある場合には財産債務調書の提出が必要となった。 (2) 提出期限は翌年6月30日に後ろ倒し 令和5年分以降、提出義務者の事務負担の軽減を図るため、財産債務調書等の提出期限はその年の翌年の6月30日へ後ろ倒しとなった(国外財産調書も同様)。 (3) 財産債務調書への記載を簡略化できる範囲が拡充した 令和5年分以降、捕捉困難な家庭用財産について、財産債務調書への記載を省略できる基準額が300万円未満となった。 また、件数や総額での記載ができる財産債務の範囲や記載の一部省略ができる預貯金の取扱いについても以下のとおり拡充となっている。 ① 所在別に区分することなく、件数及び総額で記載することのできる範囲 ② 記載を省略することのできる範囲 ③ 新たに記載を一部省略することができるもの ④ 資産ごとに区分して記載することなく、総額で記載することができるもの(国外財産調書も同様) (4) 提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し 令和6年1月1日以後に提出される財産債務調書等について、期限後に提出された場合における過少申告加算税等の特例に対する宥恕措置が見直された(国外財産調書も同様)。   3 適⽤時期 上述の改正については、基本的には令和5年分(提出期限令和6年6月30日)の財産債務調書等から適用され、「(4) 提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し」についてのみ令和6年1月1日以後提出分からの適用となる。 なお、令和4年分以前の財産債務調書は、従前どおりの提出義務、期限、範囲となっているのでご留意いただきたい。 (了)

#No. 488(掲載号)
#大塚 英司
2022/09/29

〈令和4年度税制改正の解説〉完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直し 【第2回】

〈令和4年度税制改正の解説〉 完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直し 【第2回】   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   ←(前回)   【第1回】では、完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直しに関する改正の背景及び創設された特例措置の内容について解説した。 今回の【第2回】では、完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置の具体例、その他の措置と施行日前後(経過措置)の取扱いについて確認する。   4 具体例 (1) 個人による完全支配関係がある場合 〔前提〕 ① 受取配当等の益金不算入制度 受取配当等の益金不算入制度における完全子法人株式等は、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等をいい、完全支配関係は法人による完全支配関係に限定されておらず、個人による完全支配関係がある場合も含まれるため、B社及びC社がD社から受ける配当については完全子法人株式等からの配当に該当し、全額益金不算入となる。 ② 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置 特例措置では、完全子法人株式等に該当する株式等に係る配当等が適用対象とされているため、B社及びC社がD社から受ける配当については所得税が課されず、源泉徴収義務の対象から除外される。 (2) 計算期間の中途において株式を取得した場合 〔前提〕 ① 受取配当等の益金不算入制度 受取配当等の益金不算入制度における完全子法人株式等や関連法人株式等は配当計算期間中の継続保有が求められているため、基準日の2ヶ月前に100%保有することになったとしても、A社がB社から受ける配当はその他の株式等の配当に該当し、50%相当額が益金不算入となる。 ② 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置 特例措置では、基準日等において、その内国法人が保有する他の内国法人の株式の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等が適用対象とされているため、基準日にA社が100%保有するB社からの配当については所得税が課されず、源泉徴収義務の対象から除外される。 (3) 完全支配関係がある法人グループ全体の保有株式数等で関連法人株式等に該当する場合 〔前提〕 ① 受取配当等の益金不算入制度 受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等の保有割合の判定は、完全支配関係がある他の法人の保有株式数等を含めて判定することとなるため、A社とB社の保有割合を合算すると40%となり、3分の1を超えるため、A社及びB社がC社から受ける配当は関連法人株式等の配当に該当し、全額(控除負債利子を除く)が益金不算入となる。 ② 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置 特例措置では、基準日等において、その内国法人が保有する他の内国法人の株式の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等が適用対象とされており、基準日の単独の保有割合で判定するため、A社とB社の保有割合はともに3分の1に満たないことから特例措置の適用対象とはならず、A社及びB社がC社から受ける配当については源泉徴収を行う必要がある。 *  *  * 上記(2)における配当は、特例措置の対象となり源泉徴収が不要となるが、受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等には該当しない。 逆に、上記(3)における配当は、特例措置の対象とならず源泉徴収が必要となるが、受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等に該当する。 このように、全額益金不算入となる部分と特例措置で源泉徴収義務の対象外となる部分は必ずしも一致しない点に留意が必要である。   5 その他の措置 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置の対象となる配当等は、源泉徴収義務の対象から除外されるため、下記の制度の対象からも除外される。   6 施行日前後(経過措置)の取扱い 今回の特例措置は、一定の内国法人が令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用される(改正法附則6)。 したがって、源泉徴収義務についても、内国法人に対し令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用し、内国法人に対し同日前に支払うべき配当等については従前どおりの取扱いとなる(改正法附則8)。   7 今後の留意点 令和4年度税制改正大綱で、 と記載されていることから、令和5年度税制改正で何らかの見直しがなされる可能性もあるため、今後もその動向に注視する必要がある。   (連載了)

#No. 488(掲載号)
#川瀬 裕太
2022/09/29

〔令和4年度税制改正における〕賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第3回】

〔令和4年度税制改正における〕 賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第3回】 (最終回)   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   ←(前回)   4 上乗せ控除のための要件 改正後の賃上げ促進税制においても、一定の要件を満たした場合に税額控除率の引上げ措置が設けられている。具体的には下表のとおりである(措法42の12の5①②)。 大企業向け制度については、改正前(人材確保等促進税制)は教育訓練費の要件のみが定められていたところ、改正後は賃上げの要件も追加されている。なお、教育訓練費の要件自体についての変更はない。 中小企業者等向けの制度については、改正前(所得拡大促進税制)では賃上げの要件を満たした上で教育訓練費の要件又は経営力向上の要件を満たすことが必要とされ、双方の要件を満たした場合に限り控除率の上乗せの適用を受けることができたが、改正後の制度では経営力向上の要件が廃止された。 また、改正後の制度(大企業向け、中小企業者等向け制度共通)では、双方の要件を満たさなければ上乗せ控除の適用を受けられないということではなく、それぞれの要件に対応して上乗せ控除率が定められている。このため、いずれかの要件を満たせばそれに対応する控除率の上乗せの適用を受けることができる。   5 その他の改正点 (1) 用語の定義 改正後の賃上げ促進税制で用いられている用語の定義について、改正前の制度から変更されているものはないものと理解してよい。「継続雇用者」の定義については、改正前は「特定税額控除規定の不適用措置」において規定されていたが、その内容がそのまま本税制にスライドする形で規定されている。 ただし、条文の組立て方の違いによるものと考えられるものとして「基準日」という単語の使い方が変更されている。「基準日」は、組織再編成が行われた場合において比較雇用者給与等支給額及び比較教育訓練費の額について一定の調整が必要な局面で用いられる概念であり、その内容は2種類ある。1つは比較雇用者給与等支給額の調整計算に用いられるもの(給与等基準日)、もう1つは比較教育訓練費等の額の調整計算に用いられるもの(教育訓練費基準日)である。 現行の条文上は、教育訓練費基準日のことを単に「基準日」と称し(措令27の12の5⑰)、これとは別に「給与等基準日」の定めが置かれている(同⑲)。これに対して令和3年度までは、給与等基準日のことを単に「基準日」と称し(R3措令27の12の5⑫)、別途「教育訓練費基準日」の定めが置かれていた(R3同⑮)。実質的な内容に変更はないものの、用法が変更されているので留意されたい。 (2) グループ通算制度における取扱い 連結納税制度を適用する法人が改正前の制度(人材確保等促進税制・所得拡大促進税制)を適用する場合、グループ全体で適用要件を判断するとともに、税額控除可能額もグループ全体で計算することとされていた。 これに対して、グループ通算制度を適用する法人(通算法人)において改正後の制度(賃上げ促進税制)を適用する場合には、通算法人ごとに適用可否を判断し、本税制を適用することとされている。 また中小企業判定についても、通算法人にあっては、通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が中小企業者に該当しない場合には、その通算グループ内の法人のすべてが中小企業者に該当しないものとされている(措令27の4㉕三)。 かつての連結納税制度では、連結親法人が中小企業者に該当する場合に限り、その連結親法人及び連結子法人(資本金の額等が1億円以下のものに限る)について中小連結法人として取り扱われていたが(R3措令39の39⑳)、グループ通算制度では通算親法人が中小企業者に該当するだけでは足りず、グループ内のすべての通算法人が中小企業者の要件を満たす必要がある。 さらに、通算グループ内の法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、その通算グループ内の法人のすべてが適用除外事業者として取り扱われることとなる(通算適用除外事業者。措法42の4⑲八の二)。 (3) 地方税の取扱い 中小企業者等の法人住民税(法人税割)の計算上、課税標準となる法人税額は本税制適用後の金額を用いることとされており、税額控除の影響は法人住民税にも及ぶ点には変更がない。 また、法人事業税(外形標準課税・付加価値割)の計算上、改正後の本税制の適用要件を満たす場合には、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を付加価値額から控除するという取扱いにも変更はない。 (連載了)

#No. 488(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2022/09/29

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第9回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第9回】 (最終回)   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   3 連結納税制度からグループ通算制度へ移行した場合の投資簿価修正の取扱い (1) 移行通算子法人の株式に係る投資簿価修正の適用関係 連結納税制度からグループ通算制度へ移行した通算子法人(移行通算子法人)が、通算グループから離脱する場合又はグループ通算制度が取りやめとなる場合、その株主である通算法人において、その通算終了事由が生じるその移行通算子法人の株式の通算終了直前の帳簿価額をその移行通算子法人の通算終了直前の簿価純資産価額(加算措置を適用する場合は資産調整勘定等対応金額を加算した金額)とする。 つまり、移行通算子法人については、連結納税制度の投資簿価修正は適用されず、原則どおり、グループ通算制度の投資簿価修正が適用される。 ただし、グループ通算制度への移行初日(令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始の日)に通算グループから離脱した法人又はグループ通算制度が取りやめとなった法人については、その連結完全支配関係がなくなったことをもって連結納税制度の投資簿価修正が適用されることとなる(令2改法令附4⑥)。 (2) 移行通算子法人の投資簿価修正の加算措置に関する取扱い 連結納税制度からグループ通算制度へ移行した通算子法人(移行通算子法人)の株式については、グループ通算制度の投資簿価修正が適用されるが、資産調整勘定等対応金額の加算措置については、移行前の連結納税制度の適用をグループ通算制度の適用とみなして、移行通算子法人以外の通算子法人と同様に資産調整勘定等対応金額が計算される。 具体的には、移行通算子法人の株式について、資産調整勘定等対応金額の加算措置を適用する場合、次の経過措置が設けられている(令4改法令附6、令4改法規附2)。 [移行通算子法人の株式に係る投資簿価修正の加算措置に関する経過措置]   (連載了)

#No. 488(掲載号)
#足立 好幸
2022/09/29

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第53回】「二世帯住宅である建物(区分登記あり)に配偶者居住権を設定した場合の特定居住用宅地等の特例の適用」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第53回】 「二世帯住宅である建物(区分登記あり)に配偶者居住権を設定した場合の特定居住用宅地等の特例の適用」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年9月23日)は、下記の土地及び建物を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、1階部分は甲と甲の配偶者である乙が居住の用に供し、2階部分は長女である丙家族が居住の用に供しています。1階と2階で区分登記がされており、建物の各階ごとに玄関があります。また、甲は丙から賃料は収受していませんでした(区分登記の有無以外は、前回の設問と同じ前提条件となります)。 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた1階部分の建物については、乙が配偶者居住権を取得し、丙が所有権を取得、2階部分の建物及び土地の所有権については丙が取得した場合には、乙及び丙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 相続人は乙と丙の2人です。丙は甲と生計を別にしており、相続後は引き続き2階に居住しています。 (※) 配偶者居住権の存続年数に応じた複利現価率 [A] 乙は取得した1階部分に係る敷地利用権の面積108㎡について、小規模宅地等に係る特定居住用宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができます。丙は特例対象者ではありませんので、特例の適用を受けることはできません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 配偶者居住権等が及ぶ範囲 配偶者居住権が設定された場合には、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得することになります。居住建物の全部というのは、配偶者が相続開始の時に居住していた建物の全部という意味ですが、区分登記されている場合には、建物ごとに登記を行いますので、本問の場合には、1階部分のみが配偶者居住権の設定対象となります(民法1028)。 区分登記がされている2階部分については、配偶者が相続開始の時に居住していた建物には該当しませんので、配偶者居住権の設定の対象とはなりません。 したがって、配偶者居住権及び敷地利用権の及ぶ範囲をまとめると下記のとおりとなります。   2 特定居住用宅地等の特例の適否 区分登記がされている場合の小規模宅地等の特例の適否については、本連載【第28回】で解説しています。特例の判定にあたっては、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 〔被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか〕 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。 したがって、区分登記がされている場合には、1階部分については、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、2階部分については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当しないことになります。 〔取得者の要件〕 乙は配偶者で要件はありませんので、特例対象者となります。 丙は生計一親族ではありませんので、同居親族の要件又は別居親族の要件を満たしているかを確認することになります。 同居親族の要件及び別居親族の要件は、下記のとおりとなります。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 丙は、上記(1)に記載されている「被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物に居住していた者」に該当しないため、同居親族の要件は満たさないことになります。 また、別居親族の要件に該当するかどうかですが、上記(2)の④に記載されている「相続開始前3年以内に日本国内にある当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと」が問題となります。 被相続人は、三親等内の親族ですので、相続開始前3年以内に被相続人の所有する家屋に居住したことがある場合には、要件を満たさないことになります。ただし、括弧書きにおいて「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く」とされていますので、本問の場合にこれに該当するか否かを検討することになります。 法令や通達等において「被相続人の居住の用に供されていた家屋」の範囲を定めたものはありませんが、租税特別措置法関係通達69の4-21(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲)においては、下記のとおり記載されています。 租税特別措置法関係通達69の4-21(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲) 上記の通達に記載されているとおり、一棟の建物で構造上区分されているときは、被相続人が居住していたその独立部分を被相続人の居住の用に供されていた家屋に該当するとしています。あくまでも上記の通達は、(2)の③の要件の判定をする際の取扱いですが、上記(2)の④の要件を判定する際にも同様に考えて問題ないかと思います。 したがって、丙は「被相続人の居住の用に供されていた家屋」に居住していたとは認められず、特例を受けることはできないことになります。 上記により特例対象宅地等の適否は、下記のとおりとなります。   3 利用区分ごとの相続税評価額の算定と面積の計算 本問の場合には、1階部分について敷地利用権と敷地所有権がありますので、計算手順としてステップ❶で2階部分と1階部分に区分して計算し、ステップ❷で敷地利用権と敷地所有権に区分して計算することになります。 ステップ❶ 土地の相続税評価額について2階部分と1階部分に区分します。 ・2階部分の土地の相続税評価額 ・1階部分の土地の相続税評価額 ステップ❷ 1階部分について敷地利用権及び敷地所有権に区分し、相続税評価額と面積を計算します。 ・1階部分の敷地利用権の相続税評価額 ・1階部分の敷地所有権の相続税評価額 ・1階部分の敷地利用権の面積 ・1階部分の敷地所有権の面積   4 本問の場合の選択特例対象宅地等の面積 乙が取得した1階部分の敷地利用権の面積108㎡となります。   5 区分登記の有無の取扱いの比較 区分登記の有無の取扱いについて【第52回】と【第53回】(本稿)を整理すると、下記のとおりとなります。 ★実務上のポイント★ 区分登記の有無における配偶者居住権が及ぶ範囲と特定居住用宅地等の特例の適否を整理しておきましょう。   (了)

#No. 488(掲載号)
#柴田 健次
2022/09/29

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《収益・費用の計上-収益認識》編 【第2回】「割戻しを見込む販売(変動対価)」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《収益・費用の計上-収益認識》編 【第2回】 「割戻しを見込む販売(変動対価)」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 平成30年3月に「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」とします)が公表され、上場企業や会社法上の大会社等公認会計士又は監査法人の監査を受ける会社を対象に、令和3年4月1日以降開始する事業年度から強制適用されています。これを受けて、平成30年度税制改正において法人税法等の改正も行われました。 しかし、中小企業は、収益認識について、従来どおりの会計処理を継続できることとなりました。今回の『収益認識』編では、中小企業に適用義務化されなかった収益認識会計基準や平成30年度税制改正後の法人税等の取扱いによる会計処理をご紹介します。それらの中から今回は、「割戻しを見込む販売」を取り上げます。 【設例2】 当社(生活用品製造業。3月31日決算)は、新製品Nの販売について、卸売問屋U社と2年間の販売数量に基づく割戻しを単価に反映するように、当社からU社への販売単価設定の契約を締結し、取引を始めました。 この契約上販売単価(税抜)は、当社からU社への販売数量が、0個から20,000個までは@500円/個。20,001個から40,000個までは@450円/個。40,001個以上は@400円/個とされました。 当社は、U社への販売数量を2年間で40,000個と予測していました。 2年間の販売実績は、当社からU社へ、X4年4月4日に20,000個、X5年4月3日に20,000個販売しました。 消費税率10%   1 収益認識会計基準を適用した場合の当社の仕訳 当社の仕訳は、収益認識会計基準によった場合、次のとおりです。 〈X4年4月4日:販売時〉 〈X5年4月3日:再販売時〉 以上(2)及び(3)により、会計処理は、上記1の仕訳のとおりです。   2 収益認識会計基準により会計処理した場合の法人税法上の取扱い 収益認識会計基準の公表を受けて、平成30年度税制改正において法人税法等の改正も行われ、商品販売に係る契約の対価について、変動する可能性がある金額(変動対価)がある場合の収益計上についても、次の①から③の要件のすべてを満たせば、法人税法上も上記1の会計処理のとおりとされました(法基通2-1-1の11)。   3 収益認識会計基準により会計処理した場合の消費税法上の取扱い 収益認識会計基準の公表を受けて、法人税法等の改正は行われたものの、消費税法の改正はありませんでした。したがって、収益認識会計基準の会計処理ではなく、それ以前の従来どおりの会計処理に合わせた仮受消費税の処理となります。 この設問の場合、上記1の仕訳のとおり、X4年4月4日の販売時には、契約上の販売単価は@500円/個なので、販売金額は10,000,000円(=20,000個×@500円/個、税抜)の消費税率10%を乗じた1,000,000円を仮受消費税処理し、X5年4月3日の販売時には、契約上の販売単価は@450円/個なので、販売金額は9,000,000円(=20,000個×@450円/個、税抜)の消費税率10%を乗じた900,000円を仮受消費税処理します。   (了)

#No. 488(掲載号)
#前原 啓二
2022/09/29
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