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《速報解説》 証券取引等監視委員会、令和3事務年度版の「開示検査事例集」を公表~不正会計の実態等を解説したコラムの一層の充実など図る~

 《速報解説》 証券取引等監視委員会、令和3事務年度版の「開示検査事例集」を公表 ~不正会計の実態等を解説したコラムの一層の充実など図る~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   証券取引等監視委員会事務局は、このほど、「開示検査事例集(令和3事務年度)」(以下「事例集」と略称する)を公表した。 令和3事務年度版の「開示検査事例集」では、新たに、令和3年7月から本年6月までの間に開示検査を終了し、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った事例についても、概要が紹介されている。また、平成30年9月公表の事例集から掲載が始まった「監視委コラム」についても、充実が図られており、不正会計の実態等について解説されているのが特徴である。 本稿では、公表された事例集のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われる、ⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。とりわけ、「Ⅲ 最新の課徴金納付命令勧告事例」については、「最近1年間に課徴金納付命令勧告を行った最新の事例をまとめて掲載し、開示規制違反の内容、その背景・原因やその是正策の概要」がまとめられている(「証券取引等監視委員会からのメッセージ」より引用)ため、本稿の解説もこの事例を中心としたい。   Ⅰ 最近の開示検査の取組み 事例集「Ⅰ 最近の開示検査の取組み」の冒頭で、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)は、以下のように述べており、この記述は、平成30年9月公表の事例集からほぼ同様の文章となっている。 そのうえで、監視委の取組みついて、以下の3項目を挙げている。 なお、この3項目の取組みについても、平成30年9月公表の事例集以来その内容を踏襲している。   Ⅱ 最近の開示検査の実績とその内容 令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)に、監視委が行った開示検査は20件で、前年実績(23件)を下回っている。そのうち、検査終了件数は11件(前事務年度実績は16件)であり、課徴金納付命令勧告が8件(前事務年度実績は9件)となっている。 監視委によれば、令和3事務年度の開示検査の特徴は次の4点である。 監視委は、これらの課徴金納付命令勧告を行った事案において認められた開示規制違反に至った背景・原因の例を、次のように列挙している。   Ⅲ 最新の課徴金納付命令勧告事例 事例集に記載された「最新の課徴金納付命令勧告事例」8件については、下表のとおりである。なお、事例集では、会社名は公表されていないため、本表では、監視委の報道資料をもとに会社名を記している。 【課徴金納付命令勧告事例】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (注) 赤字は、本誌連載「会計不正調査報告書を読む」で取り上げた事例。 最後に平成30年9月公表の事例集から記載されている「監視委コラム」について、タイトルを引用して本稿を締め括りたい。令和3事務年度版では、昨年公表の事例集にはなかった1つのコラムが新たに追加され、タイトルも3件変更されている(うち1件は内容も大幅に変更)。 (赤字表記はタイトルが変更されたもの、は新たに追加されたもの) (了) ↓お勧め連載記事↓

#米澤 勝
2022/09/13

令和元年度(平成31年度)税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和元年度(平成31年度)税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和元年度(平成31年度)税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/09

プロフェッションジャーナル No.485が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年9月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.485を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第111回】「節税商品取引を巡る法律問題(その5)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第111回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その5)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅳ 説明義務者の適格性―説明者の専門的知識の欠如 金融機関や保険会社の販売担当者などの非税理士が、「課税上の取扱いに係る説明義務」を履行するに相応しい者であるか、すなわち節税商品取引に係る説明義務者としての適格性を有しているかについては、①税務の専門的知識の欠如という問題と、②非税理士が課税上の取扱いに係る説明を行うことによる税理士法抵触という問題が立ちはだかる。 1 問題点の所在 節税商品取引において説明義務を履行するのは、節税商品の販売者である金融機関や保険会社の一般職員であることが多いが、これらの者は、一般的に税務に精通しているとは限らないことから、節税商品の販売に当たって税務上の専門的知識の習得が必要となる。 節税商品は、専門的な税務上の仕組みを利用して商品開発されていることが多い。そのことから、節税商品取引に係る課税上の取扱いは一般的金融商品取引のそれよりも複雑であることが多い。そのため、基礎的な税務知識さえも有していない金融機関や保険会社の一般職員が、節税商品の販売のために専門的な税務上の知識を習得し、これを更に一般の投資者に対して噛み砕いて説明することは、相当な困難性を伴っているといえよう(※1)。 (※1) 酒井克彦「節税商品勧誘者の保持すべき専門的知識と注意義務(上)・(下)―節税商品過誤訴訟を素材として―」税理47巻8号199頁(2004)、同47巻9号194頁(2004)参照。 ここでは、販売者の専門的知識が欠如していることに基因する注意義務違反が節税商品過誤訴訟でどのように問われているのかといった分析を通じて、販売者に求められる注意義務について若干の検討を加えることとする。なお、販売者の専門的知識の欠如が原因で損害を被ったとする投資者により提起された節税商品過誤訴訟である米国財務省証券事件東京地裁平成7年10月16日判決(判タ912号209頁:①事件)及び等価交換によるマンション建設勧誘事件東京高裁平成10年4月22日判決(判時1646号71頁:②事件)を素材に検討することとしたい。 2 販売者の専門的知識の欠如が問題とされた事例 (1) 米国財務省証券事件(①事件) イ 事案の概要 資産家である米国非居住者A(89歳日本人女性)の養子となっていた米国居住者X(原告。会社経営を行う日本人でAの孫)は、祖母かつ養母であるAの死亡による多額の相続税を心配していた。そこで、Xは、米国に本店を置く外資系銀行であるY1社(被告)従業員に対し、Aが高齢であり健康状態も悪く死亡の可能性が高いと説明した上で、相続対策について相談したところ、同人から、Aが投資目的で米国財務省証券を取得した上で、その存命中に米国居住者であるXに当該証券を生前贈与すれば、日米両国のいずれにおいても課税されないため、何らの税負担も負わないまま財産を相続できるとの節税対策の説明を受けた。 また、Aが長期の米国財務省証券を購入して即時にXに贈与すると、日本の税務当局からかかる証券の購入・譲渡を現金贈与に対する贈与税の租税回避行為と認定されるおそれがあるため、Y1社従業員は、Xに対して、Aが購入する前記証券は満期が183日未満の短期の米国財務省証券とし、何回かにわたって購入した方がよいと説明した。 Xは、かかる節税対策を実行することとし、Aを代理し、東京に本店を置く信託銀行であるY2社(被告)との間で、米国財務省証券の取得及びその後の贈与、証券の運用を実施する投資顧問契約を締結した。その後、Aは、かかる契約に基づいてY1社らグループの訴外証券会社から満期183日未満の米国財務省証券を購入した。 その後、前記証券をXに贈与する前にAは死亡した。ところが、連邦遺産税の免税対象となるのは、183日を超えて満期となる証券のみであり、Aが購入した証券に対して連邦遺産税が課されることとなった。更に、Xの実母は存命であり、XはAの孫であったため、証券の相続については直接移転が生じたと米国当局に認定され、世代省略譲渡税(generation skipping transfer tax.以下「GST税」という。)が課税されることが明らかになり、Xはこれらの各税合計4億円強の納税を余儀なくされた。 そこで、Xは、Y1社に対し、Y1社としては、Xに節税対策の勧誘を行い一定の社会的接触関係を形成したことに基づく信義則又は銀行の高度な注意義務が課されると主張して訴訟を提起した。すなわち、Xは、容易に調査できたGST税の存在や満期が183日を超える財務省証券を購入すれば連邦遺産税が課税されないことを説明する義務をY1社は負っていたにも拘らずこれを履行しなかったとして、Y1社に対し、説明義務違反及び銀行法違反による不法行為に基づく損害賠償を請求した。 また、Y2社に対しては、主位的に、同社と締結した本件投資顧問契約は、節税のアドバイスを目的とするタックスアドバイザー契約あるいはそれを含んだ契約であるとして、説明義務違反による債務不履行解除及び債務不履行に基づく損害賠償を請求した。また、予備的に投資顧問業法上の投資顧問契約であったとして、説明義務違反及び投資顧問業法違反による不法行為に基づく損害賠償を請求した。 東京地裁は、「Y1社及びその従業員らが、Xの右申入れを受けて承諾したのは、生前贈与を前提とする本件節税対策の説明の限度にとどまるものと認められる。」と認定し、「したがって、X主張の信義則等を考慮しても、同Y1社の説明義務が生前贈与を前提とする事項についてのみ生じると解さざるを得ず、贈与前に相続が発生した場合の相続税対策まで依頼を受けたものとは認められない以上、贈与前に相続が発生した場合をも想定して米国連邦遺産税やGST税に関する説明までなす注意義務を負っていたものと認めることはできない」と判示した。 更に、Y2社の債務不履行ないし不法行為責任については、「本件節税対策の説明を受けた後に、本件投資顧問契約を締結していることをも考慮すると、同契約は、X主張のようなタックスアドバイザー契約又はこれを含むものとは認められないうえ、投資顧問業法上の投資顧問契約とも認められない」として、Y2社の債務不履行ないし不法行為責任の主張は失当であると判示した。 ロ 節税商品販売者に要請される説明義務 本件節税商品は節税のための包括的商品であり、いくつかの取引が結合されてはじめて商品性を有するものである。つまり商品構造としては、米国非居住者が投資目的で米国財務省証券を取得した上、米国居住者に贈与した場合、日米両国いずれにおいても贈与税が課税されないという両国の税制度の相違を巧みに利用して、将来の相続開始時の相続財産を圧縮することができるというものである。したがって、当該商品の仕組みに関する説明においては、次のように日本の贈与税及び相続税並びに米国における贈与税の取扱いについても触れる必要があると考えられる。 節税商品として勧誘する際に、これらのことは商品説明若しくは投資判断に重要な影響を及ぼすリスクとして説明すべきであったと考えられる。 ハ 米国税法に精通しない者による同法を活用した節税商品の説明 上記のように、本件節税商品は、日米両国の税制の相違を利用したものであるため、販売者が商品説明を行うに当たって、米国の税法に関する知識を必要としていたことはいうまでもない。 本件について、中里実教授は、「日本の相続税・贈与税逃れを商品の販売の際に強調しながら、しかも、かなり高齢の者が当該商品を購入することを知りながら、販売担当者は、米国連邦遺産税等に関する十分な知識を有していなかった点が裁判所により認定されているという点を考慮すると、状況によっては、本件判決と逆の結論も十分に出される可能性のあった事案である」と評される (※2)。 (※2) 中里実『タックス・シェルター』283頁(有斐閣2002)。 もっとも、販売者が十分な専門的知識を有していないことのみによって、勧誘の違法性が根拠付けられるものではなく、十分な専門的知識を有しない者の行う説明が投資者の意思形成にどのような影響を与えるかが問題とされると考えるのが正当であろう。 十分な専門的知識を有しない販売者による説明では、誤った情報が提供されることや提供されるべき情報が提供されないことがあり、このことが投資者の自己決定権の侵害へと繋がり得る。損害賠償責任が肯定されるためには、自己決定権の侵害があり、その自己決定権侵害に起因して財産的損害が生じたという因果関係が認められる必要がある。 この点、販売者によって払われた注意の水準が問題となるのであって、販売者に十分な専門的知識があったか否かは勧誘の違法性判断においては問題となり得ないとの反論も考えられるが、本件の場合、販売者が短期証券に係る遺産税やGST税についての専門的知識を有していないがためにこれらについての説明がなされず、結果的に投資者に不測の税負担が課されることとなったと評価し得るのではなかろうか。 十分な専門的知識を有する者による適正な説明が行われていたならばなされなかったであろう投資行動に起因して本来納付する必要のないGST税の負担が生じたことに鑑みると、本件判決と逆の結論も十分に出される可能性のあった事案であるとの中里教授の見解に左袒したい。 (2) 等価交換によるマンション建設勧誘事件(②事件) イ 事案の概要 土木建築工事の設計施工請負業を営むY(被告)は川崎市内に土地を所有するX1(原告)とX2(原告)に対して、節税策として等価交換によるマンションの建設を勧誘した。そこでXらは、昭和62年3月、Yとの間で、Xらの所有する土地に、いわゆる等価交換方式により、譲渡所得に係る所得税等が課されない形でマンションを建築する旨の業務委託契約を締結した。当該契約にも関わらず、Yは課税関係に配慮しないでマンションを建築したため、Xらは租税特別措置法37条の5(当時)の課税の特例の適用を受けられなくなり、多額の所得税及び地方税の納税を余儀なくされた。そこで、XらはYに対し、債務不履行に基づく損害賠償として、納税額相当額と遅延損害金の支払を求め、訴訟を提起した。 第一審は、XとYらとの間で、いわゆる等価交換方式により譲渡所得に係る所得税等が課税されない形でのマンションを建築する旨の業務委託契約が成立したとは認められないとして、請求を棄却した。 Xらは控訴し、予備的請求として、Yの担当者Aは、Xらに対し、Xらの所有土地上にマンションを建築し、これを他に譲渡した場合にも、租税特別措置法に定める特例の適用があり、譲渡した土地の価格以上の資産を取得しない限り等価交換に当たるから課税はされない旨の誤った説明をし、その旨誤信したXらにマンションの建築を締結させたものであるから、契約締結上の過失があるなどと追加的な主張をした。 東京高裁は、譲渡所得に係る所得税等が課税されない形でマンションを建築する旨の業務委託契約については、原審を支持したが、予備的主張については、「元々Xらにいわゆる等価交換方式によるマンション建設の話を持ちかけたのはYであり、Yの営業担当者は、等価交換方式によれば、マンションの建設に伴う課税は全くされないか、又は、特段の用意が必要な多額の税負担が生じることはないと判断し、Xらに対してその旨説明していたのであるから、Yの営業担当者は、マンション等の大手建設業者の従業員として、等価交換方式によるマンションの建設方式について正しい知識を持ち、十分な理解をした上、Xらに対し誤解を招くことがないよう正しく説明すべきであったことはもちろん、ディベロッパーが見つかった後も、Xらに多額の税負担が生じることのないように、Xら及びディベロッパーとの間で、綿密な打合せ・調整を図り、工夫をするなどすべき注意義務があったものというべきである。」と判示した。 その上で、同高裁は、Yの担当者の注意義務違反を認め、「Yには、この点において契約締結上の過失及び契約履行段階における過失があったものといわなければならない。そして、Xらは、Yの担当者の前記説明を信頼してYとの間に本件マンションの建設工事請負契約を締結し・・・たのであるから、YはXらに対し、不法行為に基づき、これらの過失によってXらに生じた損害を賠償すべき義務がある。」と判示し、不法行為に基づく損害賠償責任を肯認した。 ロ 専門的知識を保持しない説明義務者による説明 本件高裁判決は、販売者の注意義務違反を認めたものである。同高裁は、「Yの営業担当者は、マンション等の大手建設業者の従業員として、等価交換方式によるマンションの建設方式について正しい知識を持ち、十分な理解をした上、Xらに対し誤解を招くことがないよう正しく説明すべきであった〔下線筆者〕」として説明のための正しい知識を有すること及びその理解を十分にすべきであったことを判示している。 更に、それにもかかわらず、「Yの担当者は、・・・等価交換方式に関する租税特別措置法の規定を『土地等を譲渡した者が、譲渡した土地等の価格以下の資産を取得すれば税金はかからないが、それを超える資産を取得した場合には、その差額について税金がかかる。』と誤った理解をしていたのであり、その誤解を前提にした上、Xらに対しその旨誤った説明を」していたとしている。 この東京高裁判決の「正しい知識を持ち、十分な理解をした上」という説明義務者の態度の問題についての判示を、どのように評価すべきであろうか。「多額の税負担が生じることのないように・・・綿密な打合せ・調整を図り、工夫をするなどすべき注意義務があった」と判示されていることからみても、契約者死亡の場合にどうなるかという点についてそれ以上の調査を行わなかったという上記①事件における販売者の問題と同様、説明義務者としての知識レベルの問題に止まらず、説明義務者としての注意義務全般の問題として捉える必要がありそうである。 また、説明義務との関係では、適切な説明が履行されたかどうかのみを判断すべきであろうが、そもそも専門的知識の習得のない者による説明が、投資者の判断に適正な情報を提供することは考えづらい。そのことから、説明義務の履行が適正になされたかどうかの判断においても、販売者の専門的知識の保持が問題にされる余地があると考えられる。 3 節税商品販売者の専門的知識の欠如 ②事件東京高裁判決の「正しい知識を持ち、十分な理解をした上」という説明義務者の態度の問題についての判示を、どのように評価すべきであろうか。契約者死亡の場合にどうなるかという点についてそれ以上の調査を行わなかったという①事件における節税商品勧誘者の問題と同様、説明義務者としての知識レベルの問題に止まらず、説明義務者としての注意義務全般の問題として捉える必要がありそうである。 更に、このような問題は、その他の節税商品過誤訴訟においてもみられるところである。 上村達男教授は、「金融機関は、何よりも販売しようとする金融商品のマーケットを知り尽くすことが求められる。開発されたばかりの新商品・リスクの高い商品・価格形成への信頼度・顧客の習熟度・・・すべてを知り尽くしてそのマーケットに最もふさわしい説明・勧誘をまずは行う。投資家の責任はその次にやってくる。」と主張される (※3)。 (※3) 上村達男「どこまでが利用者の自己責任か」金融ジャーナル39巻3号30頁(1998)。 4 節税商品取引における税理士の役割 このように考えると、独立した公正な立場から節税商品について厳格に法律を適用し、課税上の取扱いを判断しこれを専門的知識に基づいて個別具体的に説明することができるのは、現行制度上、税理士以外にはないと考えられる。 また、税理士が節税商品の課税上の取扱いに係る説明を行うに当たっては、税務当局の見解を確認すべき調査義務(調査照会義務)があるといわれることがある。このような場合、国税庁の実施する文書回答手続の利用が考えられるが、納税者本人のほか、これを行い得る代理人は税理士に限定されている。これは、文書回答手続が個別性の強い取引等に係る照会を対象としており、事前照会者の詳細な見解が要求されているところ、代理人がこれらの資料を作成する場合には税理士法に定める税務相談に当たる可能性が高く、税理士以外の者がこれを行うとした場合に税理士法に抵触するおそれがあることから、申請を行い得る代理人を税理士に限定しているのである。 そうであるとすると、節税商品の課税上の取扱いについて、税務当局の見解を確認することができるのは、納税者本人か納税者から委嘱を受けた税理士しかいないことになるのである。ただし、あくまでも照会を行い得るのは、納税者の代理人としての税理士に限定されることになろう。 (続く)

#No. 485(掲載号)
#酒井 克彦
2022/09/08

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第18回】「商品を返品した場合の適格返還請求書の取扱い」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第18回】 「商品を返品した場合の適格返還請求書の取扱い」   税理士 石川 幸恵   【Q】 商品の返品については、買い手が返品伝票を記入して商品と一緒に返送します。この返品伝票を適格返還請求書として扱うことはできますか。 〔ポイント〕 (1) 適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています。 (2) 買い手が作成する返品伝票に適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、売り手が改めて適格返還請求書を交付する必要はないと考えられます。 *  *  * 【A】 (1) 適格返還請求書の交付義務 適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています(新消法57の4③、インボイスQ&A問28) 適格返還請求書も、適格請求書と同様に保存義務があります(新消令70の13①)。   (2) 適格返還請求書の記載事項 適格返還請求書の記載事項は次のとおりです(インボイスQ&A問58)   (3) 買い手が作成する返品伝票 国税庁のインボイスQ&Aでは買い手が作成する返品伝票について触れられていませんが、販売奨励金の支払いに関し、 としています(インボイスQ&A問61。カッコ書きの買い手、売り手は筆者による補足)。 返品伝票も買い手が作成する奨励金請求書と同様と考えられますので、下図のように適格返還請求書の記載事項を満たす返品伝票を買い手が作成して、商品とともに送付することで、この返品伝票を適格返還請求書として扱うことが可能と考えられます。 (※) 売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日は、月単位の記載も認められています(インボイスQ&A問59)(記載事項②の注)。   (了)

#No. 485(掲載号)
#石川 幸恵
2022/09/08

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (6) 資産調整勘定等対応金額を0とする事由 資産調整勘定等対応金額(100%分)は、通算完全支配関係発生日からその通算終了事由が生じた時の直前までの間に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には0となる。 また、対象株式の取得時の資産調整勘定対応金額等(取得割合分)は、その取得の時から通算完全支配関係発生日の前日までの間に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合は、0となる。 ここで、「非適格合併等」とは、資産調整勘定等が計上される法人税法第62条の8第1項(法人税法施行令第123条の10第1項)に規定する「非適格合併及び非適格分割等」をいう。非適格分割等とは、非適格分割、非適格現物出資、事業譲渡のうち、分割法人、現物出資法人、譲渡法人のその非適格分割等の直前において行う事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が分割承継法人、被現物出資法人、譲受法人に移転をするものをいう。「被合併法人等」とは、資産調整勘定等が計上される法人税法第62条の8第1項(法人税法施行令第123条の10第2項)に規定する被合併法人、分割法人、現物出資法人、譲渡法人をいう。 〈図表13〉 通算完全支配関係発生日以後に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 〈図表14〉 取得時から通算完全支配関係発生日の前日までに離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これは、その通算終了事由が生じた時の直前までに離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合、その離脱法人ではその通算終了事由が生じた時の直前までに既に資産調整勘定等が計上されており(0の場合を含む)、離脱直前の簿価純資産価額にはその資産調整勘定等が含まれていることから、二重加算にならないように、その非適格合併等の直前までに生じている資産調整勘定等対応金額又は資産調整勘定対応金額等を0とする趣旨の取扱いであると考えられる。 しかし、例えば、グループ内で、通算子法人が事業譲渡を行った場合、その譲渡される事業について資産調整勘定が計上されない場合には、その事業譲渡がどんなに小規模なものであっても、その譲渡法人である通算子法人(将来の離脱法人)の株式に係る投資簿価修正にあたって、その事業譲渡の直前までに発生している資産調整勘定等対応金額又は資産調整勘定対応金額等が加算されないこととなってしまう。 これは、連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算子法人(移行通算子法人)が連結納税制度の適用期間中に自社を被合併法人等とする非適格合併等が行われていた場合も同様の取扱いとなる。 そのため、通算子法人における非適格合併、非適格分割、非適格現物出資、事業譲渡を行う場合(又は行っている場合)、規模の大小やその時に計上された資産調整勘定の大小に関係なく、将来の離脱時にプレミアム相当額が損金に算入されないという問題が生じることとなる。 この点で納税者の立場からは大変厳しい取扱いとなっており、組織再編成を頻繁に行う通算グループでは実質的に加算措置が機能しないケースや知らないうちにプレミアム相当額が消滅しているケースが実務上生じると思われる。 つまり、結果的に、この取扱いがグループ内の組織再編成の支障になると思われる。   (了)

#No. 485(掲載号)
#足立 好幸
2022/09/08

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第86回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第86回】 (最終回)   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     〈Q12〉 収益の計上額と金銭債権の貸倒れの見込み 売主であるA社は、B社にA社の商品を販売した際、B社の財政状況が悪化していることを把握していた。A社は、この取引に係る収益を計上する際にその貸倒れ見込み額を収益の額から減額して計上することは認められるか。 〈A12〉 収益を計上する際にその貸倒れ見込み額を収益の額から減額して計上することは認められない。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 資産の販売等に係る収益の額として、法人税法22条の2第1項又は第2項の規定により、益金の額に算入する金額は、別段の定め(法人税法22条4項を除く)があるものを除き、その販売や譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額である(法法22の2④)。 この場合の引渡しの時における価額又は通常得べき対価の額は、資産の販売等につき次の事実が生じる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額である(法法22条の2⑤)。 ところで、収益認識会計基準によれば、契約において、顧客と約束した対価に変動する可能性のある部分(変動対価)が含まれる場合には、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もることになる。契約上の対価の金額をそのまま収益の額(取引価格)とするのではなく、値引きやリベートの取決め、返品権の存在などを織り込んで算定することになる(基準8、17(3)、50、指針23等)。 場合によっては貸倒れの見込みも考慮し、貸倒れの可能性がある部分を収益として計上しないというのであれば(指針設例2参照)、法人税法の立場からするとドラスティックな印象を受ける。 ただし、収益認識会計基準は、企業が顧客から「受け取る」と見込んでいる金額で収益を認識するのではなく「権利を得る」と見込む対価の額で認識する(基準8、16、47)ものである。IFRSの「結論の根拠」の説明も参考にするならば、かかる対価の額に顧客の信用リスク(債務不履行リスク)を反映させるものではないようである。企業が顧客から回収できないおそれのある金額についての調整を反映しないという意味において、総額で収益を認識するということである(IFRS/BC259~261)。 ただし、対価の回収可能性を評価するに当たって、企業が顧客に価格の引下げを提供する又は黙示的に価格を譲歩する可能性があるため、対価に変動性があると考えられる場合には、企業が権利を得ることとなる対価の額は契約に記載される価格よりも低くなることがありうる(企業会計基準委員会事務局・公益財団法人財務会計基準機構編『詳解 収益認識会計基準』22頁(中央経済社2020)、秋葉賢一ほか「新会計基準・改正税法から読み解く収益認識の実務論点」企業会計70巻8号30頁、IFRS/BC190~194参照)。 この意味で貸倒れの可能性も間接的には考慮事項になりうるようである(指針設例2参照)。 なお、収益認識会計基準における収益認識のための5つのステップのうち(本連載第1回)、ステップ1「契約の識別」では、「顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと」などの要件を満たす顧客との契約を識別するところ、「当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する」こととされている(基準19、118)。 見積もられた変動対価の額の全てが直ちに収益から減額されるわけではないことにも注意が必要である。見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることになり(基準54)、それ以外の部分を取引価格に含めない、言い換えれば、収益の額から減額することになる。 いずれにしても、法人税法の立場からすれば、取引価格の算定に見積りの要素が入ると、同様の取引であっても個々の企業によって収益の額が異なることにつながり、ひいては課税の公平に反するのではないかという懸念が生じる。企業が顧客に価格の引下げを提供する又は黙示的に価格を譲歩する可能性があるという理由で収益の計上額を減額することも、法人税法としては受け入れ難いであろう。 少なくとも、流出するものの時価に焦点を当てて収益を計上するのが法人税法の考え方であると理解する場合には(本連載第45回)、直接的であるにせよ、間接的であるにせよ、貸倒れや返品の見込みの影響を考慮してその分を収益の額(取引価格)から減額するような処理も直ちには認め難いであろう。 結局、貸倒れの見込みについて、法人税法においては、基本的に貸倒引当金(法法52)の問題として捉えられることになり、収益の計上額を減額する要素として考慮されることはないと考える(泉絢也「法人税法と収益認識会計基準(2)-法人税法22条の2第4項の『価額』・『通常得べき対価の額』-」千葉商大紀要58巻3号87頁以下参照」)。   連載の終了に当たって 本連載では、収益認識会計基準の公表を契機として創設された法人税法22条の2及び関係する通達の内容や疑問点を中心に考察を行ってきた。管見の限り、法人税法22条の2や関係する通達をめぐって、実務上、多くの混乱が起きているというわけでもなく、納税者と課税庁との対立や学説間の対立などが頻発しているというわけでもないようである。むしろ、不気味なほど静かであるといってもよい。 なるべく従前の取扱いと変わらないように配慮するという立法的試みが功を奏したのか、関係する通達が整備されていたことに起因するのか、その理由は必ずしも明らかではない。 もっとも、本連載でたびたび指摘してきたように、関係法令を読んでもその規定内容がはっきりと理解できない部分も少なくない。また、関係する通達の内容を見る限り、その法的根拠に疑問を提起せざるを得ないものも存在する。 よって、今後、申告実務、課税実務及び争訟実務において、法人税法22条の2及び関係する通達をめぐって様々な紛争が生じる可能性は十分にある。 本連載は、法人税法22条の2及び関係する通達の基本的な内容や基底にある考え方を理解するために有用であるほか、上記のような紛争を解決する場面においても有益な知見や情報を提供するものであると考える。本連載における考察が申告納税主義の理念の実現にいくばくかでも寄与することを期待したい。 (連載了)

#No. 485(掲載号)
#泉 絢也
2022/09/08

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第45回】「遺言書の効力と遺産分割協議、遺留分における留意点」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第45回】 「遺言書の効力と遺産分割協議、遺留分における留意点」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 税理士 佐藤 達夫   相談内容 私はX社(製造業)の社長で、X社を30歳で起業し、X社の事業の拡大に努めてきました。5年前に、長男を後継者として指名し、X社のすべての株式を相続時精算課税制度を活用して贈与するとともに、社長を長男に譲りました。現在は、相談役として社長である長男のサポートを行っています。 私も70歳になったため、所有している財産の承継を考えており、遺言書の作成を検討しています。遺産分割にあたって、遺言書の作成の有無などにより、どのように遺産分割へ影響するか懸念しているのですが、留意事項がありましたらご教示ください。 私の親族関係、財産の内容は、次のとおりです。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 遺言書の有無による各人の相続財産への影響 過去に長男への多額の生前贈与(特別受益)があることを考慮すると、遺言書の有無や特別受益の持戻し免除の有無により、相続人間で相続する財産の額が変わる可能性があります。 仮に、遺言書により、長男へ自宅(土地・建物)、長女へ現金預金を相続させると定めた場合には、長男・長女の相続財産や相続税額は、次のとおりとなります。 (注1) 遺留分侵害額の判定 ・遺留分算定の基礎となる財産:200,000千円(相続財産)+200,000千円(生前贈与財産)(注2)=400,000千円 ・遺留分額:400,000千円×1/4(1/2×1/2)=100,000千円 ・遺留分侵害額:100,000千円-100,000千円(長女の相続財産)=0円 ➡ 遺留分の侵害なし (注2) 生前贈与財産は、原則として相続開始前10年間にされた贈与で特別受益に該当するものに限ります(例外については後記[3]の(注1)をご参照ください)。 (注3) 長男の具体的相続分 ・みなし相続財産:(200,000千円(相続財産)+200,000千円(贈与財産))×1/2=200,000千円 ・長男の具体的相続分:200,000千円-200,000千円(特別受益の持戻し(注4))=0円 (注4) 長男が過去に贈与により取得した財産は、特別受益として相続開始時の価額により持戻しがされます。   [2] 遺産分割・特別受益・持戻し免除について 相続財産は、遺言書がある場合には、遺言書に基づいて相続人又は受遺者に承継されます。そのため、遺言書により特定の相続人に承継させることを定めた財産は、原則として遺産分割協議の対象外とされています。ただし、そうした財産であっても、相続人全員の同意があれば、遺言書の定めによらず、相続人間の協議により遺産分割の対象とすることも可能です。 相続人間の協議により遺産分割が成立しない場合には、家庭裁判所へ遺産分割の調停を求めることができます。この調停では、共同相続人間の公平を図るため、次のとおり、みなし相続財産を算出し、各相続人の具体的な相続分を算出します(民法903条1項)。 なお、この生前贈与は、特別受益として婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本としての贈与に該当するものに限られます。また、その価額は、生前贈与財産が相続開始時においてなお原状のままであるものとみなした価額になります(民法904条)。つまり、相続開始時点の価額になります。 また、みなし相続財産の計算には、過去の生前贈与(特別受益)を相続財産に足し戻す(持ち戻す)こととされていますが、被相続人の意思により、持ち戻すことを免除することも可能です(民法903条3項)。この持戻し免除の制度は、特定の相続人に多くの財産を残してあげたいという被相続人の意思を尊重するという趣旨によります。 持戻し免除の意思表示は上記のとおり各相続人の具体的相続分の算出において適用されますが、遺留分の算出においては、持戻し免除の意思表示は考慮されません。   [3] 遺留分制度について 遺留分制度は、被相続人の有していた相続財産について、一定の相続人に一定割合を承継することを保障する制度です(民法1042条~1049条)。なお、遺言書があった場合においても、相続人から遺留分の権利を奪うことはできません。 (1) 遺留分権利者 兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属) (2) 遺留分の割合 ① 総体的遺留分 ② 個別的遺留分 相続人ごとに、上記①総体的遺留分の割合に法定相続分を乗じた割合 (3) 遺留分侵害額の算定方法 (注1) 具体的には、たとえば、次のような贈与が含まれます。 ・相続人以外の第三者に対し、相続開始前1年間にされた贈与 ・相続人に対し、相続開始前10年間にされた贈与(特別受益に当たるものに限る) ※ただし、贈与の双方の当事者が他の相続人に損害を加えることを知って贈与をされた場合には、1年間・10年間にそれぞれ限定されません。 (注2) 特別受益(生前贈与)の価額は、生前贈与財産が相続開始時においてなお原状のままであるものとみなした価額になります(民法904条)。   [4] 結論 ご相談の事例では、ご長男に承継される相続財産は、遺言書の有無によって大きく変わります。事業の承継者であるご長男へ特定の財産を承継させたい場合には、遺言書の作成や特別受益の持戻し免除の意思表示をするとともに、ご生前に長男・長女へ財産承継のお考えの趣旨をお伝えし、長男・長女のご理解を得ておくことが重要です。 遺言書は、弁護士等の法律の専門家と相談のうえ、作成されることをお勧めします。   (了)

#No. 485(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2022/09/08

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第79回】「千代田区宅地評価額事件」~最判平成15年6月26日(民集57巻6号723頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第79回】 「千代田区宅地評価額事件」 ~最判平成15年6月26日(民集57巻6号723頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 485(掲載号)
#菊田 雅裕
2022/09/08

〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第17回】「審査請求事件に係る国税不服審判所の内部事務」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第17回】 「審査請求事件に係る国税不服審判所の内部事務」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 議決までの手続 (1) 事件検討表の作成 審査請求書が提出されて、形式審査の結果、却下事件ではないと判断された場合には、担当審判官等の指定決裁を経て実質審理の段階に入る。 まず、担当審判官は、審査請求書や原処分庁から徴求した原処分関係資料を基に、以下の諸点(国税不服審判所支部によって多少異なる)をまとめた「事件検討表」を作成することで事案の概要を把握する。 (2) 当初合議の開催 事件進行の初期の段階で、担当審判官・参加審判官2名からなる合議体(審判官・副審判官)による当初合議を開催して、職権調査方針、主張整理のための求釈明事項や証拠収集のための質問事項の協議などを行う。 当初合議に限らず、合議の場には、合議体のほか、担当審判官を補佐する分担者(審査官)が出席するほか、法規審査担当審判官・法規審査担当者(副審判官又は審査官)がオブザーバー参加することが多い。 また、国税不服審判所支部によっては、合議体に弁護士の民間出身審判官がいない場合には、審判部に所属する弁護士出身審判官がオブザーバー参加して意見を述べることもある。 合議における議決権はあくまで合議体の3名にしか存しないが、実際には、数名のオブザーバーが合議に参加して意見を述べることから、合議の場の雰囲気としては、合議体とオブザーバーに明確な発言権の相違はないことが多い。 そして、合議体と法規審査部門で処理方針に違いがあっても、議決の前の段階から法規審査部門の関与があることによって、比較的早期に処理方針の統一が図られることが多いようである。 (3) 職権調査 原処分庁である税務署(又は国税局の担当部署)に臨場して税務調査時の収集資料を確認することはほとんどの事件で必須の手続となるほか、必要に応じて、関係人に対する質問調査、現地視察、関連する裁判の傍聴などを行う。 また、多くのケースで請求人面談が行われ、主張と審査請求人が知り得る事実関係の確認を行う。 (4) 中間合議・事件検討会・未済事件説明会 国税不服審判所支部によって会議体の名称や運用が異なることがあるが、筆者が所属していた当時の大阪支部は、 によって、国税不服審判所の判断形成が行われていた。 (5) 審理手続終結合議・最終合議 国税不服審判所としての結論(主文と理由の骨子)が固まった時点で、訴訟でいう結審に当たる審理手続終結のための手続に入り、合議体としての結論であり裁決書原案となる「議決書」の文言修正や数字のチェックを行うための最終合議が開催される。 支部によっては、この段階で支部所長に対して報告する機会が設けられる(大阪支部では、所長室において、担当審判官が所長の目の前に着座して議決書の報告を行う慣行があった)。 そして、議決書に担当審判官と参加審判官が署名押印の上、「議決報告書兼裁決決議書」とともに主張書面・証拠書類等の一件書類が法規審査部門に回付される。   2 議決後の手続 (1) 法規審査 法規審査担当者は議決の前から合議にオブザーバー参加しており、議決内容(主文と理由の骨子)を把握しているのが通常であるが、改めて以下の視点から審査が行われる。 特に、基幹支部といわれる東京・大阪・名古屋・関東信越・広島の各支部においては、裁判官又は検察官出身の審判官が法務省から出向しており、その者を経由して審査される。 また、他の支部においても、必要に応じて本部のリーガル担当審判官(検察官出身)や税目別の審判官と連携の上で文書審査が行われる。 (2) 本部が関与する事件 原則として、各々の審査請求事件は、場所的に管轄する国税不服審判所支部に係属して、その支部所長(首席審判官)が決裁するため、支部の中で審理手続は完結する。 しかし、法令解釈の全国統一性などの行政不服審査ならではの要請もあり、例えば以下のような事件については、本部が主体的に関与することや、処理方針の決定につき本部の了解を必要とする。 (3) 裁決 法規審査を経た裁決書案は、部長審判官(沖縄支部は管理担当審判官)・次席審判官(東京・大阪・名古屋のみに配置)を経て、本部所長から裁決権が委任されている支部所長(首席審判官)が決裁する。 支部所長の属性(出身)や個性、支部の規模にもよるだろうが、筆者の経験の限りでは、報告だけ受けて決裁印を押印するといった形式的な関与ではなく、熟読の上、細部にわたり字句修正を行ったり、証拠に遡って事実関係を確認したりと、一般的なイメージよりも関与の度合いが深かった印象がある(大阪支部の所長が裁判官出身者であるからかもしれない)。   3 裁決後の手続 (1) 裁決番号 各裁決は、例えば「大裁(諸)令3第10号・令和3年10月1日裁決」と記載されるが、この例では、「令和3年10月1日に大阪支部所長が決裁した令和3事務年度の(令和3年7月1日以後)10番目に発出された、所得税・法人税以外の税目(相続税・贈与税・消費税・登録免許税など)の裁決」であることが表現されている。 (2) 合議体・法規審査・管理課による最終チェック 主文(「棄却」「取消し」といった結論)が変わらないとしても(変わるようであれば合議体に差戻しになる)、法規審査や所長決裁時に理由の記載の字句修正が入ることがある。 そのような場合を含めて、 などについて、改めて全般的に各方面からのチェックが入る。 (3) 裁決書の発送 裁決書原本は国税不服審判所に保管され、管理課管理係の審査官がその謄本(全部コピー)に「裁決書原本に相違ない」旨の支部首席審判官の証明印を付して、配達証明郵便により審査請求人と原処分庁の双方に発送する。 国税不服審判所は、審査請求書を受領してから裁決書を発送するまでの期間を1年以内に済ませる事件の割合を全体の95%以上とする業績目標を設定し、その達成状況を毎年度公表しているが、1年を経過する日(内部ではこれを「誕生日」と例えることがある)が迫っていると、法規審査担当者や管理係の審査官などの一連の手続の後工程を担う者は、期限管理に迫られることになる。 実際に、筆者が代理人を務めた事件において、12月23日に審査請求書を提出し、裁決書が送達されたのが翌年12月23日(裁決日は12月17日)だったことがある。 (4) 審理手続終結通知から裁決書発送までの期間 審理手続終結通知を受領すると、意見書の提出、口頭意見陳述の申立て、証拠書類の提出、閲覧請求などをすることができなくなる。 それが故に、通知を受領すると「もうすぐ裁決書が届くのだろう」という期待を抱くことも理解できる。 国税不服審判所としては、審理手続の終結から裁決書発送までの期間をおおむね2ヶ月以内に収め、その間に「議決・法規審査・裁決・裁決書チェック・裁決書謄本発送」の各手続を行うことになる。 (了)

#No. 485(掲載号)
#大橋 誠一
2022/09/08
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