公開日: 2012/10/09 (掲載号:No.0 創刊準備1号)
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改正労働契約法 【① 改正のポイント】

筆者: 桑野 真浩

改正労働契約法

【① 改正のポイント】

社会保険労務士 桑野 真浩

「労働契約法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が平成24年8月10日に公布された。今回の改正では、有期労働契約について、下記の3つのルールを規定している。
なお、有期労働契約とは、1年契約、6ヶ月契約など期間の定めのある労働契約のことをいう。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となる。

そもそも、労働契約法とは……
(目的)
第1条
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

改正法の3つのルール

Ⅰ 無期労働契約への転換(労働契約法18条(改正法2条))
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールである。
※5年のカウントは、このルールの施行日以後に開始する有期労働契約が対象である。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めない。

Ⅱ 「雇止め法理」の法定化(労働契約法19条(改正法1条))
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールである。

Ⅲ 不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条(改正法2条))
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールである。

 施行期日

……平成24年8月10日(公布日)
Ⅰ及びⅢ……公布日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日
(平成24年10月1日時点では、政令が公布されていない。)

 罰則等の有無

違反した場合の罰則は設けられていない。労働審判や民事訴訟の対象となる。

 対象となる企業

対象となる企業は、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など有期労働契約で働く人がいる企業・職場である。
いわゆる正社員だけの企業・職場においては、今回の労働契約法の改正部分は、気にかける必要はないと思われる。

 まとめ

労働契約法においては、有期労働契約はあくまで「臨時的・一時的」なものとして扱われており、本来は不安定な有期労働契約を長期間継続、更新を重ねることは好ましくないとされる。
企業としては、一度、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などの仕事の在り方を見つめ直す良い機会にしたいものである。

次回は、これらの改正を受けた企業対応策について解説する。

【更新情報】
・10/26 上記赤字部分が、下記のとおり変更されました。
※「労働契約法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(官報号外第233号)による。

Ⅰ及びⅢ
……平成25年4月1日

(了)

【参考】厚生労働省ホームページ
労働契約法が改正されました

改正労働契約法

【① 改正のポイント】

社会保険労務士 桑野 真浩

「労働契約法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が平成24年8月10日に公布された。今回の改正では、有期労働契約について、下記の3つのルールを規定している。
なお、有期労働契約とは、1年契約、6ヶ月契約など期間の定めのある労働契約のことをいう。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となる。

そもそも、労働契約法とは……
(目的)
第1条
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

改正法の3つのルール

Ⅰ 無期労働契約への転換(労働契約法18条(改正法2条))
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールである。
※5年のカウントは、このルールの施行日以後に開始する有期労働契約が対象である。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めない。

Ⅱ 「雇止め法理」の法定化(労働契約法19条(改正法1条))
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールである。

Ⅲ 不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条(改正法2条))
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールである。

 施行期日

……平成24年8月10日(公布日)
Ⅰ及びⅢ……公布日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日
(平成24年10月1日時点では、政令が公布されていない。)

 罰則等の有無

違反した場合の罰則は設けられていない。労働審判や民事訴訟の対象となる。

 対象となる企業

対象となる企業は、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など有期労働契約で働く人がいる企業・職場である。
いわゆる正社員だけの企業・職場においては、今回の労働契約法の改正部分は、気にかける必要はないと思われる。

 まとめ

労働契約法においては、有期労働契約はあくまで「臨時的・一時的」なものとして扱われており、本来は不安定な有期労働契約を長期間継続、更新を重ねることは好ましくないとされる。
企業としては、一度、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などの仕事の在り方を見つめ直す良い機会にしたいものである。

次回は、これらの改正を受けた企業対応策について解説する。

【更新情報】
・10/26 上記赤字部分が、下記のとおり変更されました。
※「労働契約法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(官報号外第233号)による。

Ⅰ及びⅢ
……平成25年4月1日

(了)

【参考】厚生労働省ホームページ
労働契約法が改正されました

連載目次

「改正労働契約法」(全2回)

筆者紹介

桑野 真浩

(くわの・まさひろ)

社会保険労務士

1963年 大阪府生まれ。
1995年7月 社会保険労務士として独立開業。
社会保険労働保険や助成金申請の事務手続きのほか、就業規則の作成や労働コンプライアンス指導を中心に業務を行う。
最近では、事業承継やIPOの人事労務分野の支援についても活躍中。

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