公開日: 2024/10/24 (掲載号:No.591)
文字サイズ

〈2024年11月施行〉フリーランス法のポイント 【前編】「フリーランス法の概要と下請法・労働関係法令との相違点」

筆者: 木下 雅之

〈2024年11月施行〉

フリーランス法のポイント

【前編】

「フリーランス法の概要と下請法・労働関係法令との相違点」

 

弁護士法人東町法律事務所
弁護士 木下 雅之

 

1 はじめに

近年、働き方の多様化が進展し、フリーランスという働き方が普及している中で、フリーランスが発注者から一方的に契約を打ち切られたり、支払期日までに報酬が支払われなかったり、発注者からハラスメントを受けたりする等のトラブルが多く発生している。

このようなフリーランスの取引上のトラブルについては、独占禁止法(優越的地位の濫用規制)や下請法の適用による解決も考えられるが、競争秩序維持という公益保護を目的とする独占禁止法や資本金区分などにより適用対象が限定された下請法による規制には限界があり、フリーランスとの取引の適正化を図ることには困難が伴うことも多い。

また、フリーランスの就業環境に関するトラブルについては、労働関係法令の適用による解決も考えられるが、労働法上の規制による画一的な保護は、使用者の指揮命令に拘束されない多様で柔軟な働き方を選好したフリーランスにとって、かえってそのような多様で柔軟な働き方を阻害し得る側面があることに留意しなければならない。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「法」または「フリーランス法」という)は、こうした状況を踏まえ、フリーランスが当事者となる取引を包括的・実効的に規律する新法として制定された法律であり、2024年11月1日に施行される。

フリーランス法は、「個人」として業務委託を受けるフリーランスと、「組織」として業務委託を行う発注事業者との間に交渉力や情報収集力の格差が生じやすいことを踏まえて、「取引の適正化」(第2章)と「就業環境の整備」(第3章)を2本柱として制定されており、競争法(独占禁止法・下請法)と労働法の両面の規律を併せ持つ内容となっているが、一方で、発注事業者に対する過度な規制によりフリーランスへの発注控えが起こっては本末転倒であるから、発注事業者の過度な負担とならないような配慮がなされている点も本法の特徴の1つといえる。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

〈2024年11月施行〉

フリーランス法のポイント

【前編】

「フリーランス法の概要と下請法・労働関係法令との相違点」

 

弁護士法人東町法律事務所
弁護士 木下 雅之

 

1 はじめに

近年、働き方の多様化が進展し、フリーランスという働き方が普及している中で、フリーランスが発注者から一方的に契約を打ち切られたり、支払期日までに報酬が支払われなかったり、発注者からハラスメントを受けたりする等のトラブルが多く発生している。

このようなフリーランスの取引上のトラブルについては、独占禁止法(優越的地位の濫用規制)や下請法の適用による解決も考えられるが、競争秩序維持という公益保護を目的とする独占禁止法や資本金区分などにより適用対象が限定された下請法による規制には限界があり、フリーランスとの取引の適正化を図ることには困難が伴うことも多い。

また、フリーランスの就業環境に関するトラブルについては、労働関係法令の適用による解決も考えられるが、労働法上の規制による画一的な保護は、使用者の指揮命令に拘束されない多様で柔軟な働き方を選好したフリーランスにとって、かえってそのような多様で柔軟な働き方を阻害し得る側面があることに留意しなければならない。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「法」または「フリーランス法」という)は、こうした状況を踏まえ、フリーランスが当事者となる取引を包括的・実効的に規律する新法として制定された法律であり、2024年11月1日に施行される。

フリーランス法は、「個人」として業務委託を受けるフリーランスと、「組織」として業務委託を行う発注事業者との間に交渉力や情報収集力の格差が生じやすいことを踏まえて、「取引の適正化」(第2章)と「就業環境の整備」(第3章)を2本柱として制定されており、競争法(独占禁止法・下請法)と労働法の両面の規律を併せ持つ内容となっているが、一方で、発注事業者に対する過度な規制によりフリーランスへの発注控えが起こっては本末転倒であるから、発注事業者の過度な負担とならないような配慮がなされている点も本法の特徴の1つといえる。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

〈2024年11月施行〉

フリーランス法のポイント

筆者紹介

木下 雅之

(きのした・まさゆき)

弁護士
弁護士法人東町法律事務所(東京事務所所属)

上場企業及び中小企業等の法律顧問として、会社法、労働法、独占禁止法など、主に企業が日々直面する問題について助言と対応を行っている。

【略歴】
大阪府出身
2004年  早稲田大学法学部卒業
2006年  関西学院大学大学院司法研究科(ロースクール)修了、司法試験合格
2007年  司法修習修了、弁護士登録、東町法律事務所入所
2009年  兵庫県立大学大学院会計研究科 非常勤講師(金融商品取引法・会社法)
2016年~2020年 立正大学法学部 非常勤講師(商法応用演習)
2018年  弁護士法人東町法律事務所パートナー弁護士

関連書籍

#