相続税の実務問答 【第59回】「相続時精算課税に係る贈与税相当額の還付申告の期限」
私は、平成16年に自分の会社を設立するために父から2,500万円の贈与を受けました。この際、相続時精算課税を選択し、2,500万円の特別控除を適用しましたので、贈与税の納付税額はありませんでした。また、平成20年に会社の運転資金に充てるため父から100万円の贈与を受けましたが、この贈与については、既に特別控除額を使い切っていましたので20万円の贈与税を納めることになりました。
平成28年2月1日に父が亡くなりましたが、遺産総額が相続税の基礎控除額以下であったため相続税の申告をしていません。
最近(令和3年5月)になって、平成20年分の贈与税相当額の還付を受けられることに気が付きました。まだ相続税の申告書の提出期限である平成28年12月1日から5年を過ぎていないので、今からこの還付を受けるための申告をすることができるでしょうか。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第29回】「海外居住者の相続税と国外転出時課税制度」
私Aは、製造業を営むX社(非上場会社)の社長です。X社の株式は私が40%、後継者の息子B(日本国籍)が60%を所有しています。Bは3年前からシンガポールにあるX社の子会社Y社へ出向しており、妻Cと長男D(いずれも日本国籍)と共にシンガポールで暮らしています。
Bが日本から出国する際には、私がBの納税管理人となり国外転出時課税の納税猶予の適用を受けました。
Bは今年帰国する予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で子会社の経営状況が悪化しており、その立て直しのため出向期間を延長することになりました。このような状況下で、万が一Bの相続が発生した場合に相続はどうなるのかが心配です。Bが海外居住中に相続が発生した場合の相続税の取扱いについてご教示ください。
街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第4回】「長屋等のつながっている建物における判断(後編)」~ケーススタディ~
父親所有の土地(面積200㎡)の上に、二世帯住宅があり、父母世帯と長男世帯がそれぞれ別個の独立部分に居住し、家賃や地代の支払はなしとします。父親が死亡した場合に土地と建物をすべて長男が相続し、相続税の申告期限まで居住し所有する時、小規模宅地等の特例はどのようになりますか。なお、母親は存命で長男は「家なき子」ではないとします。
街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第3回】「長屋等のつながっている建物における判断(前編)」~二世帯住宅の小規模宅地等の特例~
棟割長屋のうち1軒に父親が居住し、その家屋と土地を所有していましたが、その隣の1軒が空き家となったので、父親がその家屋と土地を購入し、平成27年に長男が入居しました。平成30年4月以降に父親が亡くなった時(母親が死亡し一人暮らしの時)は、その2軒の家屋と土地を長男が相続し相続税の申告期限までは所有し住み続ける予定です。この場合、上記長屋の敷地は、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例は受けられますか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例97(相続税)】 「申告期限前に貸付事業をやめてしまったため、「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなってしまった事例」
被相続人甲の相続税の申告につき、貸駐車場用地を貸付事業用宅地として「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下「小規模宅地等の特例」という)を適用して申告したが、申告期限まで事業継続しなければならない旨の説明をしなかったため、申告期限前に事業供用をやめてしまった。これにより、「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなってしまい、修正申告をすることになってしまった。
〔Q&Aで解消〕診療所における税務の疑問 【第5回】「認定医療法人制度を活用した相続税・贈与税の納税猶予の留意点」
【Q】
医療法人の出資持分に対する相続税についても納税猶予が適用できると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例95(相続税)】 「障害者控除不足分を兄弟姉妹の相続税から控除できたにもかかわらず、これを失念したまま申告してしまった事例」
平成X0年5月開始の相続税申告において、特別障害者である二男の障害者控除不足分3,500,000円を扶養義務者(兄弟姉妹)の相続税から控除できたにもかかわらず、これを失念したまま申告してしまった。これにより、兄弟姉妹の相続税額につき過大納付が発生したとして損害賠償請求を受けたものである。
相続税の実務問答 【第56回】「共同申告をしない相続人がいる場合」
父が令和2年6月に亡くなりました。父の相続人は、母、私、弟及び妹の4名です。
現在、遺産分割協議を行っているところであり、相続税の申告書の提出期限までに、各相続人が法定相続分どおりの割合で財産を取得することで協議がまとまりそうです。今後、相続税の申告の準備をしなければなりませんが、妹はこれまでの私たちの分割協議の進め方に不満を持っており、相続税については私たちとは別に申告したいと言っています。
私たちが提出する相続税の申告書に妹が取得する財産や妹の課税価格などの金額を記載することになると思いますが、そうした場合、妹も私たちと共に申告をしたことになってしまうのでしょうか。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第26回】「不動産法人化の視点と民事信託活用」
私A(55歳)は会社役員の傍ら、数棟の収益不動産を所有し賃貸経営をしています。不動産経営は順調ですが、会社からの給与所得と不動産所得を合計すると所得税率が最高税率となり、税負担が重いことが気になっています。
不動産法人化(法人を設立し、不動産を個人所有から法人所有へ移す)により税負担を抑えることができ、民事信託を活用することにより、さらにメリットもあるという話を聞きました。
なお、私には息子がいて不動産経営を承継してほしいという思いがあり、ノウハウ共有のため新築物件の管理を任せたいと考えています。
民事信託を活用した不動産の法人化はどのように進めれば良いでしょうか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例94(相続税)】 「特定事業用及び特定居住用宅地等に該当する借地権の計上を失念したため、結果として小規模宅地の選択誤りとなってしまった事例」
被相続人甲の相続税申告につき、特定事業用及び特定居住用宅地等に該当する借地権の計上を失念したため、不利な貸付事業用宅地に小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(以下、「小規模宅地等の特例」という)を適用してしまった。
相続財産である借地権を計上して、これに小規模宅地等の特例を適用していれば、相続税は低くできたとして、修正申告と計上漏れ借地権に小規模宅地等の特例を適用できた場合との差額につき損害賠償請求を受けたものである。
