贈与実務の頻出論点
【第1回】
「税務署に否認されない贈与の方法」
税理士法人チェスター
Q
クライアントに生前贈与による生前対策をアドバイスしようと考えていますが、税務署に否認されない贈与の方法を教えてください。
A
贈与は契約ですので贈与者と受贈者双方の合意が必要となります。贈与成立の証拠を贈与契約書等の書面により保存しておいたほうがいいでしょう。
解 説
生前贈与は計画的にやれば相続税対策として有効ですが、誤った方法で贈与をした場合には、税務署から指摘をされ、名義預金として相続財産に含めなければならない場合もあるため、注意が必要です。名義預金と認定されるということは贈与が成立していないといわれることと同義です。
贈与の成立を適正に立証するために、下記に重要なポイントをまとめます。
[1] 贈与契約書の作成
民法上、贈与契約は口頭でも成立しますが、口頭の贈与契約は取消しができるため、贈与契約書を作成し、贈与契約の内容を明確に書面で記録しておくことがいいでしょう。
[2] 贈与契約の実行
贈与契約書を作成しただけで、贈与を実際に行わなければ、贈与が成立したとはいえません。よって、作成した贈与契約書に基づき必ず贈与を実行してください。また、贈与の実行は現金ではなく、できるだけ客観的な記録が残る預金を通して行うべきでしょう。
[3] 贈与後の管理支配
受贈者は、贈与を受けた預貯金等を実質的に管理支配する必要があります。すなわち、受贈者の意思で自由に使える状態になければ贈与が成立したとはいえません。たまに親が子どもに内緒で子ども名義の預金通帳を作成しているケースが見受けられますが、これでは贈与の成立を立証することは困難です。
よって、問題なく贈与を成立させる方法のひとつとして、受贈者の普段使っている預金口座に振り込むことが考えられます。
[4] 贈与税の申告
贈与税の基礎控除額である110万円を超える贈与をし、贈与税の確定申告をすることも贈与を立証するために有効です。
例えば、120万円の贈与であれば贈与税は1万円ですむため、比較的低コストで行うことが可能です。
(了)




