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《速報解説》 公認会計士・監査審査会が「監査事務所検査結果事例集(令和7事務年度版)」を公表~循環取引及びサイバーセキュリティリスクへの対応を掲載~

《速報解説》 公認会計士・監査審査会が 「監査事務所検査結果事例集(令和7事務年度版)」を公表 ~循環取引及びサイバーセキュリティリスクへの対応を掲載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年7月7日、公認会計士・監査審査会は、「監査事務所検査結果事例集(令和7事務年度版)」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 事例集は、公認会計士・監査審査会が行う監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたものであり、基本的に、監査事務所に関する内容である。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取締役、監査役等、投資者等による活用を期待 事例集では、上場会社等の取締役・監査役等や投資者等に対する監査に関する参考情報の提示という観点から、審査会検査で確認された幅広い指摘事例をできるだけ分かりやすく記載している。 そのほか、監査事務所の改善取組などにおいて評価できる取組例も取り入れているので、会計監査人の適切な評価のために、是非参考にしていただきたいとのことである。   Ⅲ 個別業務における「問題となった事例」 事例集は、次のような事例について述べている。 (了)
#阿部 光成
2025/07/11
New お知らせ 相続税・贈与税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 国税庁が事業承継税制の特例措置に係る質疑応答事例を5年ぶりに更新~令和3年度から令和7年度の税制改正等に伴い全14問を改訂~

《速報解説》 国税庁が事業承継税制の特例措置に係る質疑応答事例を5年ぶりに更新 ~令和3年度から令和7年度の税制改正等に伴い全14問を改訂~   Profession Journal編集部   国税庁は、令和7年7月7日付けで事業承継税制の特例措置(非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例措置)に関する質疑応答事例を更新した。 この質疑応答事例は、事業承継税制の特例措置が平成30年度税制改正により創設後はじめて公表されたあと、令和2年にも更新が行われた。今回は前回の公表から5年ぶりに更新が行われ、令和3年度から令和7年度までの税制改正等を反映した内容となっている。 なお、改訂が行われた設問(全14問)は下記の通り。 事業承継税制の特例措置に関しては、令和6年度税制改正では特例承継計画の提出期限が延長され、令和7年度税制改正では役員就任要件等の見直しが行われたものの、事業承継税制の特例措置の適用期限自体は延長されておらず(※)、今後も延長はされない見込みとなっている。 (※) 法人版事業承継税制の特例措置の適用期限は令和9年12月31日、個人版事業承継税制の適用期限は令和10年12月31日。 (了)
#Profession Journal 編集部
2025/07/11
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プロフェッションジャーナル No.626が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年7月10日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.626を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2025/07/10
New 法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

令和7年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第2回】

令和7年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第2回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   2 グループ通算制度における取扱い 通算法人の法人税率については、改正後は以下の取扱いとなる。下線部分が改正されている。 (1) 通算法人の法人税率 (2) 通算親法人が協同組合等である場合の法人税率 (3) 通算親法人である協同組合等が特定の協同組合等に該当する場合の法人税率 (4) 通算親法人である特定医療法人に対して適用される法人税率 (5) 適用時期 上記(1)~(4)の改正は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(令7改所法等附39)。 ただし、通算子法人については、通算子法人の令和7年4月1日以後に開始する事業年度のうち通算親法人の同日前に開始した事業年度の期間内に開始する事業年度(経過事業年度)については、改正前の取扱いが適用される(令7改所法等附39)。 つまり、通算法人については、通算親法人の事業年度が、令和7年4月1日以後に開始する事業年度に該当する場合に、改正後の取扱いが適用されることとなる。 この場合、令和7年4月1日以後に加入した通算子法人が通算親法人の事業年度終了の日以前に離脱する場合であっても、その加入日が通算親法人の令和7年4月1日前に開始した事業年度の期間内にある場合は、加入日から離脱日の前日までの期間を事業年度とした通算法人としての単体申告は、改正前の法人税率の取扱いが適用されることとなる(注)。 (注) 例えば、通算子法人の加入日が令和7年5月1日、離脱日が令和7年12月1日とした場合の令和7年5月1日から令和7年11月30日の期間の事業年度(通算法人としての単体申告)について、通算親法人の決算期が3月である場合は改正後の法人税率の取扱いが適用され、通算親法人の決算期が12月である場合は改正前の法人税率の取扱いが適用される。   (続く)
#626(掲載号)
#足立 好幸
2025/07/10
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第56回】「従業員持株会から発行法人が株式を取得した場合の留意点」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第56回】 「従業員持株会から発行法人が株式を取得した場合の留意点」   税理士 柴田 健次   Q 【第55回】の事例では、従業員持株会から同族株主が配当還元価額で株式を取得した場合には、時価と対価との差額に対して贈与税の課税がされることになるとのことでしたが、株式の取得者が同族株主ではなく、発行法人である場合には資本取引等に該当するため、贈与税の課税関係は発生しないという認識でよいのでしょうか。 前提状況は、株式の取得者以外は【第55回】と同様で、甲は将来的にA社を解散又はM&AによりA社株式の売却も検討しています。従業員持株会を解散した後にその清算手続きにおいて令和6年12月1日に従業員持株会の株式は、発行法人であるA社に配当還元価額である50,000円で譲渡されたものとします。 ■A社株式の所有状況の推移 (※1) 普通株式、1株につき1議決権 (※2) 配当優先無議決権株式 令和6年12月1日時点における自己株式取得前の普通株式に係る第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」及び第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、それぞれ下記の通りとなります。 A社の会社規模区分は、中会社の大に該当しますので、甲の自己株式取得前の1株当たりの相続税評価額は、下記の通りとなります。 A 甲は相続税法9条により対価を支払わずに利益を受けたことになりますので、贈与税が課税されることになると考えられます。  ◆  ◆  ◆ 1 発行法人に株式を売却した場合の課税関係 (1) 売主の課税関係 非上場株式を発行法人に売却した場合には、みなし配当課税(所法25①)、みなし配当課税の特例(措法9の7)、みなし譲渡課税(所法59①)、相続税の取得費加算の特例(措法39)の適用の有無を判断する必要があります。本問の場合には、相続で非上場株式を譲渡しているわけではありませんので、みなし配当課税の特例や相続税の取得費加算の特例は考える必要はありません。 個人から法人に非上場株式を著しく低い価額で譲渡した場合(時価の1/2未満の対価の額により譲渡した場合)にはみなし譲渡の適用があります(所法59①、所令169)が、みなし譲渡の場合には譲渡前の株主状況に基づき判定します。そして、従業員持株会の組合員は議決権割合が0%となりますので、特例的評価方式が適用される株主に該当します。したがって、配当還元価額(50,000円)での譲渡は、適正な時価で譲渡されたものとなりますので、みなし譲渡の適用はありません。 また、交付金銭等の額(1株当たりの交付金銭等の額は50,000円)からその株式に対応する資本金等の額(1株当たりの資本金等の額は50,000円)を控除した部分についてはみなし配当の金額とされます(所法25①)が、本問の場合にはみなし配当金額は生じません。 また、交付金銭等の額からみなし配当の金額(0円)を控除した部分については、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされます(措法37の10③)が、株式の取得費(1株当たり50,000円)と同額であるため、譲渡所得の課税関係も生じません。 (2) 発行法人の課税関係 自己株式を無償や低額で取得した場合に、取得時の時価と実際の取得価額との差額について受贈益を認識すべきという考え方も一部にありますが、平成18年度税制改正後の法人税法は、自己株式を有価証券としては認識せず、自己株式の取得を資本等取引としているため、原則として発行法人に益金は生じません(法法22②③④⑤)。 本問の場合には、みなし配当も生じていないため、配当所得の源泉徴収をする必要もありません。 (3) 発行法人の株主の課税関係 著しく低い価額で発行法人に資産を譲渡したことにより、発行法人の株主は、株式の価値が増加しますので、その価値増加部分について譲渡をした者からその株主に対して贈与税が課税されます(相法9、相基通9-2)。 ところで、相続税基本通達9-2(4)においては、「会社に対して時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合」にみなし贈与に該当する旨が定められていますが、本問の場合には、売主は時価相当の配当還元価額で譲渡していますので、みなし贈与の課税がされるかどうかについて疑問が残ります。 平成26年10月29日の東京地裁判決(TAINSコード:Z264-12556)は、自己株式の取得の事例ではなく、著しく低い価額で株式を購入した発行法人以外の同族法人の株主についてみなし贈与が適用された事例ですが、相続税法9条について下記のとおり判示されています(下線は筆者)。 上記判示における「贈与があったのと同様の経済的利益の移転の事実」とは、「利益を受けた者」と「利益を受けさせた者」があることが前提であると考えられますが、本問の場合には、売主の立場からすると適正な対価で譲渡をしていますので、売主は利益を喪失しているわけではなく、経済的利益の移転を観念することはできないといえます。 したがって、原則的には、適正な時価で譲渡が行われた場合には、相続税法9条によるみなし贈与の規定は発動しないものと考えられます。しかしながら、本問の場合のように、将来的に法人を解散又はM&Aをするために、株式の集約がされているため、甲が経済的利益を享受したことは明白であり、かつ、直接従業員持株会から配当還元価額で購入した場合には、相続税法7条の規定によりみなし贈与課税がされますので、みなし贈与課税を免れることは税負担の公平の見地からも許容されるべきではないと考えられます。 例えば、自己株式の取得が一時的なもので、その後、速やかに自己株式の処分を行い、240株を特例的評価方式が適用される第三者が同額(1株50,000円)で取得した場合には甲は経済的利益を何ら享受していませんので、贈与税の課税関係は生じないと考えられます。一方で、自己株式をA社が長期的に保有することが前提である場合や自己株式の消却を行う場合には甲は経済的利益を享受したとして贈与税の課税がされるべきと考えられます。 本問の場合には、【第55回】の贈与税課税とのバランスも考慮し、みなし贈与課税がされるべきと考えられます。 ◎甲のみなし贈与税課税の計算 甲はA社が自己株式を取得したことで、所有していた株式の価値が増加したことになります。したがって、贈与を受けた金額は、自己株式取得後の甲の普通株式に係るA社株式の相続税評価額と自己株式取得前の甲の普通株式に係るA社株式の相続税評価額の差額となります。あくまでも贈与税課税の計算となりますので、A社株式の相続税評価額を基に計算します。 自己株式の取得後の普通株式に係るA社株式の相続税評価額の計算は、下記の点について留意する必要があります。 実際の第4表及び第5表は、下記の通りとなります。   2 贈与を受けたものとみなされる金額 甲の贈与を受けた金額は、自己株式取得後の普通株式に係る甲のA社株式の相続税評価額と自己株式取得前の普通株式に係る甲のA社株式の相続税評価額の差額となり、下記の通り計算されます。 なお、【第55回】の事例の場合には、甲の配偶者は著しく低い価額で株式を譲り受けたとして、時価(40,418,400円)と取得対価(12,000,000円)との差額に対して贈与税の課税がされることになり、贈与金額は本問と異なります。 これは甲の配偶者は配当優先無議決権株式を取得していますので、類似業種比準価額の計算における1株当たりの配当金額は普通株式よりも高く算定がなされていること及び相続税法7条は直接的に贈与を受けたものであるのに対して、相続税法9条は間接的に贈与を受けているに過ぎないためです。   ☆実務上のポイント☆ 従業員持株会から発行法人が株式を取得した場合には、相続税法9条におけるみなし贈与課税の問題が生じます。従業員持株会を組成する際には、出口の課税関係が最も問題になり得ますので、前回(第55回)及び今回の贈与税課税の問題を確認してから組成するようにしましょう。 (了)
#626(掲載号)
#柴田 健次
2025/07/10
New 消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第11回】「国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第11回】 「国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題」   税理士 石川 幸恵   【Q】 令和7年4月に導入されたプラットフォーム課税は、海外事業者によるゲームやアプリの提供など消費者向け電気通信利用役務の提供を対象としたものです。 ところで、近年は海外発のECサイトによる衣料品などの販売も盛んに行われていますが、こうした国外事業者が関わる物品の販売に関して消費税法上の問題はないのでしょうか。 【A】 政府税制調査会の「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」の資料では、国外事業者が関わる物品販売について、次の2つの課題が示されています。 課題1:国外事業者による無申告 (※) 内閣府「第1回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(2024年11月13日)」の「財務省説明資料[税務手続きのデジタル化]」20頁より抜粋 このような販売方法は「フルフィルメントサービス」と呼ばれます。この場合、販売時点で商品が国内に所在しているため、「国内における資産の譲渡」として消費税の課税対象となります。また、商品の所有権は国外事業者にあるので、国外事業者に納税義務が生じます。しかしながら、5,000億円から1兆円程度の無申告が生じている恐れが指摘されています。 課題2:少額貨物に係る国内事業者との競争上の不均衡 (※) 内閣府「第1回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(2024年11月13日)」の「財務省説明資料[税務手続きのデジタル化]」20頁より抜粋 このケースは消費者が輸入者として税関に申告(実務的には通関業者が代理して申告。通関時の関税や消費税等は宅配業者に代引きで支払うケースなどがあります)を行いますが、課税価格が1万円以下であれば消費税及び関税が免除されます(関税定率法14⑱、輸徴法13①)。 その結果、消費税等を納めたうえで国内で取引を行う小売業者等と競争上の不均衡が生じています。 令和7年度与党税制改正大綱においても、国境を越えたEC取引の拡大について次のような課題が指摘されました。専門家会合での議論も踏まえ、次年度の税制改正において何らかの対応が講じられる可能性は十分に考えられます。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 国境を越えたEC取引の課税関係には、フルフィルメントサービスを利用した取引と海外事業者からの直送のそれぞれにおいて課題がある。3回にわたる専門家会合の議論の中でEUや豪州等の取組みが比較・検討され、日本で採用するのであれば豪州の方式が現実的との意見が多かったが、現時点で制度化されるかどうかの見通しは明らかにされていない。 本稿では、専門家会合の資料で紹介されたEUや豪州等での方式を確認したい。   1 諸外国の対応状況 (1) フルフィルメントサービス ① EU EUは2021年7月より、EU域外の事業者がプラットフォーム等を介して域内の倉庫から域内消費者に行う物品の販売については、プラットフォーム事業者が販売したものとみなしてプラットフォーム事業者に納税義務が生じる方式が取られている(下図参照)。 (※) 内閣府「第1回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(2024年11月13日)」の「財務省説明資料[税務手続きのデジタル化]」21頁より抜粋 ② 米国 米国の多くの州における「小売売上税」においてEUと同様の仕組みが導入されている。 (2) 少額貨物 ① EU EUでは少額輸入免税制度自体が廃止され、金額の多少にかかわらずVATが課税される。 徴収方法としては、消費者に納税義務がある直送取引であってもEC事業者やプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度が導入されている。具体的には、2021年7月より、150ユーロ(2025年6月末時点で約25,500円)以下の少額貨物であっても、税務当局に登録をしたEC事業者やプラットフォーム事業者が消費者からVATを徴収し税務当局に納付する仕組みである。 上記(1)はフルフィルメントサービスを利用した場合に、納税義務が国外事業者からプラットフォーム事業者に転換する制度であったが、フルフィルメントサービスを利用しない直送取引では消費者からEC事業者やプラットフォーム事業者に納税義務が転換されるという違いがある。 なお、この登録は任意であるため、登録を受けていないEC事業者やプラットフォーム事業者経由で購入した場合には、消費者が納税義務を負うこととなる。 ② 豪州 EUと同様、EC事業者やプラットフォーム事業者が税務当局に登録を行ったうえで、物品サービス税(GST。おおむね日本の消費税に相当)の納税義務を課している。 EUと異なるのは一定規模以上のEC事業者やプラットフォーム事業者に登録が義務付けられている点と、登録義務のない事業者を通じて購入した場合には少額免税が適用される点である。少額免税となるのは1,000豪ドル(2025年6月末時点で約94,500円)である。 ③ 日本の特殊性 海外で小売取引され、輸入者の個人的な使用に供される貨物(携帯品や通販貨物)については、課税価格を「海外小売価格×0.6」で算出する「課税価格決定の特例」が適用されるため、実体上、16,666円(16,666×0.6≒10,000円)が免税上限額となる。   2 専門家会合における方向性 第3回の専門家会合の記者会見議事録によれば、2回にわたる集中的な議論を踏まえ、第3回では1つの区切りとして、次のように意見が取りまとめられたとされている。 これらの論点が次年度以降の税制改正にどのような形で反映されるかが注目される。 (了)
#626(掲載号)
#石川 幸恵
2025/07/10
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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第71回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第71回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   (2) BTCからWBTCへのラップ トークンをラップする方法は多様であるが、理解を深めるために、BTCをWBTCに変換する仕組みや方法を確認する。 WBTCとは、BTCに1対1で裏付けされているイーサリアムブロックチェーン上のERC-20トークンである。ただし、必ずしも常に完全なる1対1の価格比で取引されているわけではない。 WBTCは、ユーザーのBTCに対する元々の経済的エクスポージャーを失わせたり、変化させたりすることなく、イーサリアムブロックチェーン上で利用できるようにするものであるとされる(NYSBA, Report on Cryptocurrency and Other Fungible Digital Assets, Report No.1461, at 38(2022))。 以下、BTCからWBTCへのラッピングの仕組み・手順を確認する(NYSBA・前掲レポート37~38頁、Kyber Network et al., Wrapped Tokens: A Multi-institutional Framework for Tokenizing Any Asset, Whitepaper V0.2(2019)、WBTC network HP)。 ユーザー(カスタマーズ)は、トークンの保管者・管理者であるカストディアン(他人のためにトークンを管理する者)が行う新しいラップドトークンのミント(発行)とそのバーン(燃焼)(※)のプロセスを開始する管理人であるマーチャントを通じて、いつでも保有するBTCをWBTCに変換するよう依頼できる。 (※) 通常、誰も送付されたトークンを動かすことができないようなアドレスに送付すること (出典) Kyber Network et al., Wrapped Tokens: A Multi-institutional Framework for Tokenizing Any Asset, Whitepaper V0.2(2019)の5頁の図を基に筆者作成 これを受けて、マーチャントはカストディアンに対して、変換するBTCと同数のWBTCをミントするよう依頼する。 カストディアンはBTCを受け取って保管し、マーチャントに対してWBTCを発行する。 このWBTCがマーチャントからユーザーに送金される。 ユーザーはWBTCを自由に処分できる。ユーザーは、上記と逆の手順で、マーチャントを通じて、WBTCをBTCにアンラップすることができる。この場合、そのWBTCはバーンされる。 WBTCは、カストディアンの分別管理されたウォレットに保管されているBTCによって1対1で裏付けされており、四半期ごとに外部の第三者による監査が実施されるほか、いつでも公に検証されるものであると説明されている。 関連するオーダーブック、カストディアンやマーチャント等のBTC及びETHのウォレットアドレス、カストディアンが保有するBTCの総量及びネットワーク内のWBTCの総量が公開されている。 カストディアンが独自にトークンをミント又はバーンすることはできず、必ずユーザーから依頼を受けたマーチャントを挟むことになる一方、ユーザーはカストディアンと直接やり取りをすることはない。 BTCとWBTCの関係を理解することは有益であるが、ラップの仕組みには様々な方法があり、WBTCのモデルはその一例にすぎない。 (3) ラップは課税イベントか ア 課税イベントと捉える見解 ラップを課税イベントと捉える見解がある。 例えば、保守的な見方によれば、BTCからWBTCへの交換は、トークンを他のトークンと交換したことになるため、課税イベントに該当する可能性があるという(Ethan D. Trotz, Million Dollar Bash: A Nuanced Approach for Calculating Tax Liability for Participants in Decentralized Finance, 54 TEX. TECH L. REV. 575,598(2022))。 また、経済的実質がBTCを担保にWBTCを借り入れている取引の場合は交換時点で損益は発生しないという考え方を併記しつつ、BTCとWBTCでは、価格がほぼ同じになる性質とはいえ、それぞれ別のチャート(時価)が存在しており損益計算上は別の暗号資産として取り扱うと考えられるため、損益計算上も暗号資産同士の交換として扱われ、交換時にBTCの含み損益が課税の対象となる可能性が高いと解説するものがある(Aerial Partners「DeFi取引に必要な税金知識と損益計算方法を詳しく解説」Coinpost (2022.3.10)参照)。 もっとも、いずれの見解に対しても、暗号資産を含む異なる種類の「トークン同士の交換は課税イベントになる」というフレーズをひとり歩きさせているだけではないか、少なくとも法的根拠が必ずしも明らかではないのではないかという疑問を提起することが可能である。 以下に述べるとおり、本稿では、ラップについて、原トークンの処分権の移転を伴わず、取得したラップドトークンは処分権移転の対価ではなく、移転した原トークンの含み損益に係る課税イベントではないという見解を示す。アンラップも同様である。 ただし、原トークンとラップドトークンの交換がユーザー間で行われた場合には、通常、相互に処分権の移転が行われており、課税イベントになると考える。 (※) Napkin AIを利用して筆者作成   (了)
#626(掲載号)
#泉 絢也
2025/07/10
New 国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

国際課税レポート 【第16回】「G7緊急声明と国際課税制度の進路」~米国報復課税回避の先にあるもの~

国際課税レポート 【第16回】 「G7緊急声明と国際課税制度の進路」 ~米国報復課税回避の先にあるもの~   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団政策研究所主任研究員   トランプOne Big and Beautiful Bill Act (H.R.1)の成立 2025年7月4日、第2期トランプ政権における経済優先課題の実現に向けた「One Big and Beautiful Bill Act」(以下、本稿では便宜上「包括予算法」と呼ぶ)が、トランプ大統領の署名により成立した。 署名は、米国独立記念日の式典を兼ねたイベントの一環として、ホワイトハウス南庭に設けられた特設デスクで行われた。メラニア夫人を伴って登場したトランプ氏は、バルコニーで恒例の“トランプ・ダンス”を披露し、夫人もともに踊るなど、式典は終始、祝賀ムードに包まれていたと伝えられている。 議会承認及び大統領署名に至るプロセスは、票差こそ僅差だったが、進行は迅速だった。法案は2025年5月20日に下院歳入委員会に提出され、2日後の5月22日には賛成215、反対214のわずか1票差で下院を通過。その後、法案は上院に送られ、6月16日以降上院財政委員長が提示した修正案に基づいて審議が行われ、7月1日に賛成51、反対50で可決された(バンス副大統領が決定票を投じた)。さらに、7月3日には下院において上院修正案が賛成218、反対214で承認された。 包括予算法(パッケージ法)の概要については、本連載【第15回】で紹介しているので参照してほしい(ただし、上院修正案の内容は含まれていない)。 本稿では、最終的に採決された法案から削除された国際課税関連の条項、すなわち「外国の不公平な税制への対抗規定」(以下「第899条」とも呼ぶ)に焦点を当てる。 報復的と言われる規定の削除の背景にはドラマがあった。G7各国は、OECDの「グローバル・ミニマム課税(ピラー2)」を米国企業には適用しないことで合意し、米国はこれと引き換えに「対抗規定」を法案から削除するという“ディール”を成立させた。6月28日に緊急に発出された「グローバル・ミニマム課税に関するG7声明」により、欧州や日本の多国籍企業が米国において“報復的”な追加課税の対象となる事態は回避された。日本を含むG7が主導的な役割を果たし “緊急避難”が実現したことは前例のないことであり、大いに歓迎したい。 もっとも、国際課税をめぐる協議や、OECDにおける多国間の協調体制には、今後も試練が続くことが予想される。   外国の不公平な税制への報復的な「対抗規定」 国際課税に関する規定として、包括予算法(パッケージ法)は、内国歳入法に新たに第899条を追加することとしていた。この条項は、外国による「不公正な」課税措置に対抗するために導入されたものである。 具体的には、不公正な外国税として法律に列挙されたデジタル・サービス税やOECDのグローバル・ミニマム課税(特にUTPR)を米国企業に適用する国を対象に、その課税が継続される限り、かかる国の企業や個人に対して最大で20%(下院案)又は15%(上院修正案)までの追加課税を行うと定められていた。 (注) 詳細については、本連載【第15回】「外国の不公正な税制への対抗規定」を参照。 この規定が、5月末に下院で可決された法案に含まれていることが報道等で広く知られるようになると、米国に投資している外国企業の間に大きな衝撃が走った。6月9日の報道(Financial Times「Executives converge on Washington to halt Trump’s foreign investment tax」)によれば、世界の大手企業数十社の幹部が、この規定の成立に反対するためにワシントンを訪れる予定であったという。   トランプ政権のピラー2・国際課税に対するスタンス 2025年6月11日、下院歳入委員会が開催した公聴会において、ベッセント財務長官は5時間近くに及ぶ質疑応答に臨み、トランプ政権下における国際課税政策の基本的な立場を明確に述べた(質疑はジェイソン・スミス歳入委員長(共和党)、ロン・エステス議員(共和党)による)。 その発言内容を以下に抜粋する。 バイデン政権は(OECDの議論において)課税主権を他国に委ねたが、トランプ政権はそれを受け入れることはできない。本法案に盛り込まれた措置は、米国の財政主権を明確に主張するものである。 米国の税制は、ピラー2と呼ばれるOECDの制度と共存する(stand next to)形で存在する。 他の国々が自らの財政・課税主権を他国に委ねるのは自由だが、米国はそのような道を選ばない。 この法案の目的は、報復ではなく、あくまでも財源の確保である。 例えば、欧州のある国が米国企業に不当な課税を行い、米国の税収を奪うようなことがあれば、その責任は当該国の企業に及ぶ可能性がある。したがって、外国企業は自国政府に働きかけるべきである。外国企業がロビー活動を行うべき相手は米国政府ではなく、自国政府である。   米国議会を動かした「G7声明」 以下の表は、「外国の不公正な税制への対抗措置」(内国歳入法第899条)をめぐる動向を時系列でまとめたものである。 【表】対抗規定(第899条)をめぐる主な動き このように、緊急に出された「G7声明」とそれを受けた米国財務省・議会指導部のスピーディな調整は、最終的に「報復規定(第899条)」の削除という結果を導いた。関係者の手腕には注目しておくべきだろう。   米国の完全な適用除外 G7声明は、米国にはミニマム課税ルール(GILTI)があることを踏まえた「共存システム(a side-by-side system)」を掲げているが、これはレトリックであろう。実質的には米国企業をピラー2の適用除外とすると明言している。 「共存システムでは、米国親会社グループの、米国内利益及び米国外利益の双方について、 軽課税所得ルール(UTPR)及び所得合算ルール(IIR)から完全に免除する」。 一方で、世界で最多数の多国籍企業を擁する米国がピラー2の実施に参加しないばかりか、UTPRを導入する国に対して報復的措置を講じる内容の国内法(内国歳入法第899条)を制定しようとしていたことは、わが国等が導入したグローバル・ミニマム課税を基礎付ける国際合意の正当性そのものに疑念を生じさせかねない状況だった。 しかし、今回のG7声明において米国を含む主要国が、OECDピラー2の米国多国籍企業への課税をめぐって共通認識に達したことにより、こうした緊張は和らいだといえる。   実施のための技術的な制度整備はこれから G7声明では、「共存システム」の実現に向けた作業は、ピラー2全体の簡素化作業と並行して進められる旨が明記されている。これは、今回の合意によりピラー2のさらなる制度整備が必要となることを認めたものである。 その結果、すでにピラー2の制度を導入済みの国々(日本を含む)においても、国内法の見直しや追加的な立法作業が必要になる可能性が高い。とりわけ、米国との制度的整合性や適用除外を前提とした新たな枠組みに対応するため、制度の創設的な調整は避けられないとみられる。   ピンチをチャンスに:大幅な簡素化を検討する契機とすべき G7声明が示すように、制度整備はピラー2全体の簡素化作業と一体で行うことが想定されている。 特に焦点となるのが、実効税率の計算方法である。現行のOECDピラー2は「国別実効税率」の算定を求めているが、米国のミニマム課税ルールであるGILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)は、国別ではなく外国子会社全体を通じた計算方法(Global Blending)による平均ベースでの課税を採用しており、両者には明確な制度的差異がある。国別計算は制度を著しく複雑化しており、多国籍企業・税務当局の事務負担の大きな要因となっている。 この「国別実効税率の計算」や「UTPR」は、本来、アイルランド(EU域内のタックスヘイブン)や、GILTI制度を有する米国のような国々に対して、ピラー2に準拠した国内法の整備を促す制度的圧力として機能させることを意図して設計された側面があると推察される。 というのも、これらの国がピラー2を導入しない場合、他国がそれらの国の税負担の低い多国籍企業に課税することが可能となり、結果的に自国企業に不利益が及ぶおそれがある(今回の米議会の反応はそれを実証している)。このような経済的不均衡を回避し、各国のピラー2への参加を促す仕組みとして、国別実効税率の計算やUTPRが導入されたと考えられる。 しかし、米国がピラー2から完全に適用除外される方針が、G7合意によって明確にされた現在、こうした制度設計は、そもそもの導入目的を喪失している可能性がある。   EU指令の改定は可能なのか 2022年12月に採択されたEU理事会指令に基づき、EU加盟国はUTPRの導入を義務付けられており、2025年1月から適用されている。このEU指令は、OECDによるピラー2ルールの履行を目的とするものである。EUにおける税制関連の決定には加盟27ヶ国すべての同意(全会一致)が必要であり、2022年の合意も紆余曲折を経て何とか達成されたものである。一度採択された指令を見直すには大きな政治的困難を伴うと言われてきている。 今回のG7合意に対して、G7に参加していないEU加盟国(例:ポーランド、ハンガリーなど)がどのように受け止めているかは、現時点では明らかではなく、EUがスムーズに指令を変更できるのか今後の見通しも不透明である。   OECDの枠組みにおける緊張と今後の課題 米議会事務局は、ピラー2の実施により米国は10年間で最大1,200億ドルもの税収を失うと推計している。この懸念に基づき、議会(共和党)は内国歳入法第899条案(対抗規定)を提出した。 ベッセント財務長官の言葉を借りれば、第899条はあくまで「財源確保のための財務法案であり、報復法案ではない」とされる。しかし、国際合意(OECDピラー2)に基づいて制度(UTPR)を導入した各国に対し、追加的な上乗せ課税を行う内容であることから、課税対象とされる外国の企業から見れば合理性を欠き、一般的には「報復条項」と受け取られている。 また、この報復課税の回避を目的として、国際合意の内容を修正し、米国企業にはピラー2を適用しないという措置が講じられたことは、米国に「屈した」との印象を与えかねない。 とりわけ、OECDの包摂的枠組み(Inclusive Framework)のメンバーである国や、G7以外の欧州諸国の中には、今回のG7合意に対して困惑を示している国もある可能性がある。そうした中で、OECDのマティアス・コーマン事務総長が早々にG7声明を歓迎する声明を発表したことにより、OECD以外の国々が異論を表明しにくくなった可能性もある。OECD事務総長の対応は、やや早すぎたという見方もあり得るだろう。   おわりに 今回の内国歳入法第899条の削除に至る経緯については、外部から見ている限りでは不明な点も多い。とはいえ、6月26日の時点で、ベッセント財務長官は、G7声明が28日に正式合意に至る前(おそらくG7各国との折衝段階)に、同条を法案から削除することについて、下院歳入委員会委員長及び上院財政委員長の了解を得ていた。その迅速な判断と政治的調整手腕は注目に値する。 本稿で指摘したとおり、現在のピラー2制度には、より多くの国の参加を促す仕組み──たとえば「国別実効税率の算定」や「UTPR」など──が組み込まれている。しかし、世界最多の多国籍企業を抱える米国をピラー2の適用対象から除外するというG7合意を国際社会が受け入れるのであれば、こうした制度要素の必要性については再検討すべきではないか。これらの規定の導入を主導したと推察されるEUやOECDのテクノクラートたちは、この状況をどのように捉えているのだろうか。 そして、再検討にあたっては、制度の執行に伴う事務負担の軽減、すなわち大幅な簡素化を念頭に置くべきである。仮に、ピラー2の制度運用が、国内法のみで完結する米国のGILTI制度と比べて著しく煩雑であるならば、競争条件の公平が損なわれることになりかねない。 今回の措置は、“緊急避難”としては大成功だった。しかし、今後、真に問われるのは、国際協調と米国の財政主権とのバランスをいかにとるかという難題である。また、G7声明は、欧州等が導入したデジタルサービス税はカバーしておらず、不公正な税と主張する米国との間で問題として残っている。その意味で、本当の試練はこれから始まるのかもしれない。 もっとも、政権と議会のスタンスが一致しているという事実は、今後、安定的な国際課税制度を米国とともに構築していくうえで、確かな支えとなるに違いない。 (了)
#626(掲載号)
#岡 直樹
2025/07/10
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第171回】株式会社エイチ・アイ・エス「特別調査委員会調査報告書(2025年3月21日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第171回】 株式会社エイチ・アイ・エス 「特別調査委員会調査報告書(2025年3月21日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【株式会社エイチ・アイ・エス特別調査委員会の概要】   【株式会社エイチ・アイ・エスの概要】 株式会社エイチ・アイ・エス(以下「HIS」と略称する)は、1980(昭和55)年12月19日設立。設立時の社名は株式会社インターナショナルツアー。1990(平成2)年、現社名に変更。 旅行事業を中心に、ホテル事業、地方創生事業、保険事業などの旅行関連事業を主たる事業とする。国内外に子会社170社、関連会社16社を有する。売上高251,866百万円、経常利益1,466百万円、資本金100百万円。従業員数は10,131名(いずれも訂正前の2023年10月期連結実績)。本店所在地は東京都港区。 会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ東京事務所(以下「監査法人トーマツ」と略称する)。東京証券取引所プライム市場上場。 最初に雇用調整助成金の不正受給の疑いが発覚した株式会社ナンバーワントラベル渋谷(以下「ナンバーワン」と略称する)は、1990(平成2)年9月18日、HISによって設立。旅行事業を営み、資本金10百万円、従業員数8名、本店所在地は東京都大田区。   【特別調査委員会による調査報告書の概要】 1 雇用調整助成金と不正受給・不適正受給 特別調査委員会の定義は次のとおりである。 雇用調整助成金(以下「雇調金」と略称する)は、雇用保険法62条1項1号、同条2項、雇用保険法施行規則102条の2、同102条の3(並びに雇用関係助成金支給要領及び雇用調整助成金支給要領)に基づき、その雇用する労働者について休業若しくは教育訓練又は出向により雇用調整を行う事業主に対して支払われる助成金である。このうち「休業」については、労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるもの(又はコロナ特例により緩和された条件を満たす短時間休業)が助成金の支給対象となる(以下、支給対象となる休業日を「特別休業日」という)。なお、2020年4月1日から2022年11月30日までの緊急対応期間及び2022年12月1日から2023年3月31日までの経過措置期間においては、雇用調整助成金支給要領中に、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う事業活動の縮小に係る特例及び新型コロナウイルス感染症の影響に伴う事業活動の縮小に係る特例(これらを総称して「コロナ特例」という)が設けられ、その支給要件等が一定程度緩和されていた。 緊急雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、経済上の理由により急激な事業活動の縮小を余儀なくされた場合等における失業の予防その他雇用の安定を図るため、その雇用する労働者(週の所定労働時間が20時間未満のため雇用保険被保険者ではない労働者に限る)について休業により雇用調整を行う事業主に対して助成を行うものである。 「不正受給」については、雇用関係助成金支給要領において、事業主等が「偽りその他不正の行為」「により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること」をいうものと定められ、かつ、「偽りその他の不正行為」には、刑法上犯罪を構成するに至らない場合であっても、故意に支給申請書に虚偽の記載を行い又は偽りの証明を行うことなどが含まれるとされる。同要領においては、不正受給に該当する場合、当該事業主に支給された助成金の全額(又は一部)にその2割に相当する額等を加えた金額の返還が求められるものとされる。なお、事業主等の代表者のほか、事業主等の役員、従業員、代理人その他当該事業主等の支給申請、申請書類の作成に関わった者が、偽りその他不正の行為をした場合にも、当該事業主等が不正の行為をしたものとみなされる。 他方、上記のような偽りその他不正の行為によらず要件に適合しない助成金の支給を受けた場合には、いわゆる不適正受給として、その態様により支給すべき額を超えて支払われた金額又は受給額の全額の返還が求められるものとされる。 2 特別調査委員会設置の経緯 (1) ナンバーワンにおける不正受給の疑義の発覚 HISの連結子会社であるナンバーワンは、2024年2月頃、東京労働局から、2020年4月から2023年3月までの期間分として受給していた雇調金の受給の適否に関して調査をする可能性がある旨の一報を受けた。ナンバーワンは、2024年4月8日に東京労働局が来訪して以降、東京労働局による調査に対応していた。HISは、ナンバーワンから、東京労働局による調査への対応状況につき随時報告を受けていたものの、ナンバーワンからは、あくまで意図的な不正ではないとの報告を受けていたため、HISは、当初、ナンバーワンにおいて意図的な不正受給が行われていた事実を認識していなかった。 ところが、同年10月17日、ナンバーワンの当時の代表取締役及び取締役が東京労働局に呼び出された際、東京労働局から、質問や疑問点が記載された書面(質問書)の交付を受けたうえ、書面で回答するよう求められた。HISは、その直後にナンバーワンから質問書の共有を受けたことにより、東京労働局がナンバーワンにおける雇調金の申請及び受給につき不正受給に該当するとの疑義を抱いている可能性があることを認識した。 HISにおいて、ナンバーワンの代表取締役及び取締役に対し、事実関係の聴取を行ったところ、同年11月1日、ナンバーワンの取締役が、雇調金を申請するために実際の勤務実態と異なる内容虚偽の申請用タイムカードを作成していたことを申告した。これにより、HISは、ナンバーワンにおける雇調金の不正受給の事実を認識した。 HISは、ナンバーワンに対し、不正受給に該当する事実があったことを認めて東京労働局に謝罪するとともに、受給した雇調金全額の返還を申し出るよう指示した。 (2) HISにおける不適正受給の疑義の発覚 HISは、2020年3月から2023年3月までの期間分の雇調金等を受給していた。 2024年4月23日、HISの会計監査人である監査法人トーマツに対し、HISにおいて勤務実態がある日を特別休業日として雇調金等を受給していたケースがあり、申請責任者であった人事本部長及びその管掌役員(以下「申請責任者」という)が意図的にこのようなケースの実態調査をしていなかった旨の通報があった。 HISは、監査法人トーマツから当該通報について情報共有を受け、同年4月26日、社内調査チームを組成し、同日から同年6月24日頃にかけて、HISの顧問弁護士である労働法を専門とする法律事務所に相談しながら初期的な社内調査を実施した(以下「初期調査」という)。 その結果、申請責任者らが雇調金等の不正又は不適正受給に関与した事実は認められなかった一方で、HISが雇調金を受給していた特別休業日の一部において、一定程度就業があったことが判明した。 そこで、HISは、同年6月24日に東京労働局助成金事務センターを訪問し、不適正受給と判断した金額(約5,600万円)の返還を申し出た。その後、東京労働局から、HISによる初期調査に問題点があり、その結果に依拠して不適正な受給か否かの判断及び返還すべき金額の算定はできないこと、適正な受給と不適正な受給を峻別するために、特別休業日における就労の有無を判断できる客観的なデータの取得及びその精査が必須であり、仮にこうしたデータの取得及び精査が不可能である場合には、雇調金等の申請の前提としての勤怠管理が実施できていないものとして、受給額の全額の返還を求める可能性があるとの指摘を受けた。 これを受け、HISは、新たにアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業所属の弁護士に相談を行いつつ、特別休業日における就労状況を示す客観的データの取得及び精査に着手し、客観的データの精査を実施した結果、HISが雇調金等の受給対象とした特別休業日のうち、約20%超の特別休業日には従業員の就労があったと判断せざるを得ないこと、また、HISが時間単位ではなく営業日単位で雇調金等の受給を行っていたことから、たとえ短時間の就労と考えられる内容であったとしても、就労が認められた特別休業日に関しては受給した金額の全額を返還すべきとの判断に至り、HISが初期調査の際に想定していた返還額よりも相当に多額の返還を行わざるを得ない実態が明らかとなった。 (3) 特別調査委員会の設置 HISは、2024年11月以降、HIS及びHISグループ子会社における雇調金等の受給実態の解明(すなわち、HISグループ子会社における不正又は不適正受給の有無及びその範囲についての調査)に加え、その背景に HISグループ子会社全体におけるガバナンス上の問題点がないかの検証等も含めた原因分析及び再発防止策の提言を受ける必要があると考えたことから、11月13日、専門性・客観性を確保した外部専門家であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業所属の弁護士に、また、同月29日、株式会社KPMG FAS所属の公認会計士等に対し、HIS及びナンバーワンにおける社内調査をそれぞれ委嘱した。 HISは、社内調査によって HIS及びナンバーワンにおける事案の概要が判明 してきたものの、全容解明の必要性やHISグループ子会社における同種又は類似事案の有無の確認の必要性が高まったことから、さらに徹底して網羅的な調査を行うため、12月13日、従前から上述の疑義及びその類似事象に関するアドバイスやデータ分析を依頼していたアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業所属の弁護士及び株式会社KPMG FASの公認会計士を委員とした特別調査委員会を組成し、「2 調査の目的」に定める本件調査事項を委嘱した。 3 特別調査委員会による調査結果の概要 4 特別調査委員会が認定した事実関係 (1) HISにおける雇調金等の不適正受給 特別調査委員会の調査の結果、HIS従業員が特別休業日に何らかの業務を行っていたものの、出勤を記録しなかったと推定される日が合計413,439日(全特別休業日中23.8%)あり、業務を行ったにもかかわらず勤務を記録していない事象は、HISの特定の部門に限ったものではなく、HIS全体で生じていたことが判明した。 特別調査委員会は、HISの雇調金等の申請責任者は、勤怠記録が勤務実態と一致しないことを認識せずに、当該勤怠記録に基づき、雇調金等を申請していたため、雇調金等の不適正受給が生じていたと認定するとともに、HISの役員及び従業員が、申請責任者に対し、勤務実態と異なる日数で申請するよう指示した事実や、HISの役員又は上席者が、従業員に対し、特別休業日に実施した業務に関し、勤怠記録への記録を行わないよう指導し、又は、勤怠記録への記録を妨げるような事実は、確認できなかったとしている。 なお、HISは、2025年1月22日、東京労働局から、雇用調整助成金支給決定取消及び返還通知書並びに緊急雇用安定助成金支給決定取消及び返還通知書を受領し、受給した雇調金等の一部である62億5,647万1,047円(受給総額の約26%)の返還を求められ、同年3月19日までに返還している。 (2) ナンバーワンにおける雇調金の不正受給 特別調査委員会は、ナンバーワンにおける雇調金の不正受給については、同社代表取締役社長、取締役及び営業部門の管理職の3名が話し合いのうえ、2020年6月から2022年12月15日までの間、雇調金の申請のため、ナンバーワンの従業員が出退勤時に打刻していたタイムカードとは別に、ナンバーワンの従業員が実際に勤務した日よりも少ない勤務日数を記録したタイムカード(申請用タイムカード)を作成したうえで、申請用タイムカードを用いて雇調金を申請し、総額1億970万9,914円を不正に受給したものであり、経理担当者は、実際のタイムカードを管理していた立場であったため、実際の勤務日よりも少ない勤務日を記した申請用タイムカードに基づき雇調金を受給することは、不正であることを認識していたとしている。 なお、ナンバーワンは、2025年1月24日、東京労働局から雇用調整助成金支給決定取消及び返還通知書を受領し、実際には就労した日に、休業したとする虚偽の申請書類を作成し、雇調金を受給したものとして、雇調金の受給額合計1億970万9,914円に違約金(2,194万1,982円)及び延滞金(支給を受けた翌日から納付の日まで年3%の割合で計算される額)を加算した総額1億4,254万5,890円を納付することを求められ、同年1月31日にその全額を納付している。 (3) クルーズプラネットにおける雇調金等の不正受給 特別調査委員会は、調査の結果、クルーズプラネットの代表取締役社長が、各事業所の実態を無視して、トップダウンで各事業所の月ごとの特別休業日の日数を指定し、特別休業日であることを認識しながら、従業員に業務対応を指示したばかりか、特別休業日中に業務をする予定と報告した従業員に対して、制止し、又は勤怠記録をつけるよう指示することなく業務を進めるよう指示していた。 また、社長は、自らの指示で、従業員に特別休業日中のFAMツアー(観光誘致を目的として、旅行会社やメディア、インフルエンサーを招待し、現地での旅行を体験させるモニターツアーの一種)に参加させていた事実を認定した。 そのうえで、社長は雇調金申請時の最終承認者であったこと、社長により各事業所の特別休業日の日数が指定され、他の従業員は特別休業日の日数を遵守せざるを得ない状況であったこと、また、社長自ら従業員に対する特別休業日中の業務を指示し、その指示に基づいて従業員が特別休業日中に業務を行ったことを認識しつつ、その日についても勤怠記録を修正させるなどの対応を行っていなかったことを踏まえると、就労のあった特別休業日も雇調金の申請対象となっていることを認識していたといわざるを得ないことから、社長には過大な雇調金の受給について故意があったと認められると認定し、クルーズプラネットにおける雇調金等の受給は、不正受給であったという判断を示した。 (4) 欧州エキスプレスにおける雇調金等の不正受給 特別調査委員会は、欧州エキスプレスについて、遅くとも2020年9月以降、特別休業日中の勤務時間を積算して7.45時間になれば特別休業日を1日出勤日に変更し、それに満たない場合には短時間の業務を出勤としてカウントしないという独自の運用が行われており、そのため、雇調金の申請時に特別休業日としてカウントされている日であっても、実際には従業員が業務を行っていた場合が含まれていたという事実を認定した。こうした運用は申請担当者が自らの判断で行っており、社長も、これを認識していたものの、申請担当者の見解に疑問を持っていなかった。 特別調査委員会は、申請担当者には、少なくとも、短時間であっても就労があった日を特別休業日として全日分の雇調金を受給することの認識はあったと考えられ、過大な雇調金の受給につき故意があったと認められることから、欧州エキスプレスにおける上述の運用に基づく雇調金等の受給は、不正受給であったと認定した。 その一方、欧州エキスプレスにおける不正受給は、申請担当者における雇調金制度の理解不足から誤った処理がなされたものといえ、クルーズプラネットと異なり、社長を含む取締役等の役員から、特別休業日に就労するよう指示し、又は就労状況につき事実と異なる申告をするよう指示をしたといった事実関係は認められないため、雇調金の不正受給にとどまり、経営者不正があったとはいえないという判断を示した。 (5) その他の HISグループ子会社における雇調金等の不適正受給 特別調査委員会は、その他のグループ子会社の雇調金等の不適切受給について、特別休業日中に、勤怠記録に就労した旨の記録をせずに就労した従業員は複数存在するものの、いずれも、上長から特別休業日中に就労するよう明示的に指示を受けたものではなく、また、勤怠記録に就労した旨の記録をしなかったのも、自己判断によるものであり、この点に関しても上長からの指示を裏付ける事実関係は見当たらなかったことから、これらの子会社については、不正受給を窺わせる兆候はなく、不適正受給にとどまるものと認定した。 5 原因分析(調査報告書21ページ以下) 特別調査委員会は、原因分析にあたり、まず、HIS及びHISグループ子会社を取り巻く環境について、次のように分析している。すなわち、HIS及びHISグループ子会社が雇調金等を受給していた期間は、コロナ禍により、国内外を問わず、感染拡大を食い止めるべく人々の外出が厳しく制限されたため、観光業や旅行業を営む会社やその関連企業の業績への影響は大きく、HIS及びHISグループ子会社のいずれにおいても業績の悪化を免れず、各社の財務状況は大きく悪化し、また、コロナ禍中に退職する従業員が後を絶たず、特に、人事部門では、休業や出向といった通常時とは異なる対応を余儀なくされたことから業務の負担が増加していたところに、人事部門の従業員が退職に至るケースも少なくなかったため、一層混乱が広がっており、雇調金等の申請の前提となる勤怠記録の正確性まで十分な管理が行き届かない状況となっていたのみならず、経営陣も、当該状況を把握することができておらず、十分な人的リソースを人事部門に充てるといった適切な対応を取るには至らなかったと分析している。 さらに、特別調査委員会は、HISが、Go Toトラベル不正受給問題の発生を受けて行っていた再発防止に向けた改善措置について、(1)コンプライアンス意識の改革、(2)各社取締役会による監督機能の強化、(3)親会社による子会社管理の強化、(4)内部監査の強化、(5)不祥事の早期発見のための取組み、(6)その他の再発防止に向けた改善措置(IT統制について)のうち、(1)から(5)までは、本件事案に対する再発防止策とも関連し得る内容であったと評価できるものの、HISは、2024年に至るまで本件事案の疑義を発見することができなかったため、その理由について次のように分析及び見解をまとめている。 そのうえで、特別調査委員会は、雇調金等の不正・不適切受給に関する問題点について、HIS及びそのグループ子会社ごとに原因を分析している。 (1) HISにおける問題点 特別調査委員会は、HISにおける問題点を「雇調金等の不適正受給」と「グループガバナンス」とに分けて、次のように分析している。 (2) HISグループ子会社における問題点 特別調査委員会は、HISグループ子会社における問題点を、共通する問題点と個別の子会社における問題点とに分けて、次のように分析している。 6 再発防止策の提言(調査報告書29ページ以下) 特別調査委員会は、再発防止策について、HIS、HISグループ子会社に分けて論じたうえで、さらに子会社については、子会社共通事項と不正受給が認められた3社とを分けて提言を行っているので、それぞれの内容について確認したい。 (1) HISに対する再発防止策 (2) HISグループ子会社に対する再発防止策   【調査報告書の特徴】 新型コロナウイルスによるパンデミックで業績が大幅に悪化した旅行業界各社は、政府のGo Toトラベル事業による支援を受けることになったが、HISでは連結子会社2社が、不正に給付金を受給していたことが発覚して返還している(※1)。HISは、Go To給付金の不正受給に対する再発防止策を公表(※2)し、ガバナンスの改善状況についても、繰り返し適時開示を行ってきた。そうした中で、連結子会社の1社が、東京労働局から雇用調整助成金の不正受給を指摘される。HISは、グループ全体で284億円もの雇用調整助成金を受給しており、さらに、会計監査人に対して雇用調整助成金の不正受給に関する通報があったことからも、雇用調整助成金の申請が適正に行われていたかどうかの調査対象を、受給を受けた全社に拡大して調査を実施することになる。 (※1) 「当社連結子会社における取引に関する調査委員会からの調査報告について」 (※2) 「Go Toトラベル不正受給問題に関するガバナンス改善について」 1 雇用調整助成金の不正受給 東京商工リサーチが、2025年3月21日に公表した「第11回雇用調整助成金不正受給企業調査」によると、雇用調整助成金等の不正受給件数は、2020年4月からの累計1,620件、530億352万円であったことが、全国の労働局によって公表されているとのことである。不正受給が公表された企業のうち、倒産が確認できた企業は92社であり、そのうち56件は、公表日当日又は公表後に倒産しており、不正受給発覚時には経営破綻しており、不正受給金額の返還は難しくなっていることも、同記事は伝えている。 2 関係者の処分 HISは、特別調査委員会による調査が進行中の2025年1月27日、「当社連結子会社における雇用調整助成金の不正受給について(続報)」をリリースして、ナンバーワン代表取締役社長であったRANJAN KUMAR DASDEB氏が、HISからの辞任勧告を受けて、2024年12月26日付で辞任していたことを公表するとともに、同氏及び取締役1名の月額報酬を50%減額する処分とともに、ナンバーワンにおける雇用調整助成金不正受給によるHISの連結決算への影響は軽微であることを公表した。 その後、HISは、3月31日にHIS関係役員、4月18日に連結子会社の関係役員の処分をそれぞれ公表しているが、いずれも月額報酬の一部減額の処分となっている。 3 HISによる再発防止策 HISが、3月31日にリリースした「再発防止策の策定に関するお知らせ」では、特別調査委員会の提言にしたがって、次のとおり、再発防止策が公表されている。 (了)
#626(掲載号)
#米澤 勝
2025/07/10
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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2025年6月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2025年6月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年6月1日から6月30日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 〇 会計制度委員会研究報告第18号「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」) (内容:補助金等に関する会計処理及び開示について研究したもの。日本公認会計士協会)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等 (内容:「金融商品会計に関する実務指針」(改正移管指針第9号)、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等の修正を公表したこと等を受けたもの。意見募集期間は2025年7月7日まで) ② 「特定目的信託財産の計算に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第62号) (内容:「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等を受けたもの)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正 (内容:倫理規則改正に伴う記載の変更など) ② 「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正 (内容:監査ファイルの最終的な整理期間中の改竄防止策に関する改正など) ③ 「倫理規則」の改正(定期総会に付議する予定の改正案の公表) (内容:タックス・プランニング業務及び関連業務に関して改正するもの)   Ⅴ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 改定版「監査役監査実施要領」 (内容:2024年4月の金融商品取引法における四半期開示制度の改正などの各種制度改正を反映したもの) (了)
#626(掲載号)
#阿部 光成
2025/07/10

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