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2024年7月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.579を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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2024/07/25
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第40回】「青色更正の理由附記に関する判例法理」-最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁の「原理論」及び「技術論」とその後の展開-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第40回】 「青色更正の理由附記に関する判例法理」 -最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁の「原理論」及び「技術論」とその後の展開-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 租税法律主義は法律に基づく課税を命じるが、憲法における適正手続の保障(13条、31条)の税法における具体化として課税の手続が適正なものであることを要請する。この要請を手続的保障原則(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)87頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【27】等参照)というが、これは課税処分の手続についても妥当する。 行政手続一般については、「告知・聴聞、文書閲覧、理由付記、処分基準の設定・公表がいわば適正手続四原則とでもいうべきものとして普遍化している」(塩野宏『行政法Ⅰ〔第6版〕行政法総論』(有斐閣・2015年)295頁。下線筆者)といわれているが、ただ、課税処分の手続については、「課税処分に対して弁明・聴聞等の手続を導入することは、手続の煩雑さと処分の大量性を考えるとあまり現実的とは思われない。これに対し理由附記は、より簡易な手続として課税処分に適用することが可能であり、かつ、唯一の手続保障として重要な役割を担うことが期待されるのである。」(久保茂樹「納税者の手続的権利と理由附記」芝池義一ほか編『租税行政と権利保護』(ミネルヴァ書房・1995年)137頁、150頁)といわれている。 わが国では、課税処分の理由附記は、他の行政手続に先駈けて、シャウプ勧告(昭和24年)に基づいて創設された青色申告制度において青色申告に対する更正(いわゆる青色更正)について定められた。青色更正の理由附記規定については、当初から、とりわけ昭和30年代初頭から、訓示規定説(税務当局)と効力規定説(学説や下級審裁判例の多く)との対立がみられたが(久保・前掲論文138頁、田部井彩「理由付記の趣旨に関する一考察-最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決をめぐって-」中央学院大学法学論叢31巻2号(2018年)63頁、68-82頁等参照)、この対立について「訓示規定なる文字を全然用いることなしに、訓示規定説に対し完全に止めをさした」(浦谷清「判批」民商法雑誌50巻1号(1954年)132頁、139頁)のが、最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁(以下「昭和38年[5月]最判」という)であった。この判決は次のとおり判示した。 昭和38年[5月]最判の上記判示については、前段を「原理論」として、後段(「ところで」以下)を「付記すべき理由の内容・程度・方法等、いわば理由付記の技術論」として整理し分析する見解(金子宏「青色申告の更正と理由付記」判時1230号(1987年)8頁)がみられるが、以下では、その見解にいう「原理論」と「技術論」の枠組みにおいて同最判とその後の判例の展開を検討することにする。   Ⅱ 青色更正の理由附記の「原理論」 1 「原理論」の内容 昭和38年[5月]最判の「原理論」は、「理由の付記を明確に行政手続の一環として位置づけ、それに関する瑕疵を、処分の内容的適否とは一応無関係に独立の取消原因として構成した点で、従来の一般的考え方を転換するもの」(金子・前掲論文8頁。下線筆者)として高く評価されているが、ここで処分の手続的瑕疵を「処分の内容的適否とは無関係に独立の取消原因」と断定せず、「一応」という留保付で述べているのはなぜかという点について検討しておく必要があるように思われる。つまり、「行政処分(不服審査裁決を含む)の理由附記に関しては、理由附記が要求されていたのに当該処分の処分時にそれが十分に履践されなかったという事実そのものは、さかのぼって処分内容についての行政庁の実体的判断形成に影響を与えることはありえない。それにもかかわらず、判例上は、理由附記の不備は処分の取消事由たりうるとされている。」(小早川光郎「手続瑕疵による取消し」法学教室156号(1993年)94頁、95頁)という正当な指摘がされているところ、そのような指摘に鑑みると、処分の手続的瑕疵とその内容的・実体的適否とを結びつける論理を明らかにしておく必要があるように思われるのである。この点については、「理由付記の不備という違法が、取消事由に当たるかどうかになると、答は、そうストレートに出てこない。」(塩野宏「理由のない行政処分はない-理由付記の機能-」室井力=塩野宏編『行政法を学ぶ1』(有斐閣・1978年)254頁、257頁)と説かれるところである。 以下では、昭和38年[5月]最判の「原理論」の内容を、①「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制する」趣旨と②「処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える」趣旨とに区分して、①を「処分適正化機能」、②を「争点明確化機能」と呼ぶ用語法(金子・前掲論文8頁。同・前掲書977-978頁も同じ)に従い(前掲拙著【148】参照)、まず、①について、処分の手続的瑕疵とその内容的・実体的適否とを結びつける論理を検討しておくことにする。 2 処分適正化機能 処分の手続的瑕疵とその内容的・実体的適否とを結びつける論理については、下記の見解(小早川・前掲論文96頁)の説くところが説得力があるように思われる。なお、下記の見解が「慎重・合理性」(昭和38年[5月]最判)ではなく「慎重公正」という表現を用いたのは、青色申告承認取消処分の理由附記に関する最判昭和49年4月25日民集28巻3号405頁の判示(「取消事由の有無についての処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制する」)を念頭に置いたものと考えられる(小早川・前掲論文96頁参照)。 この見解にいう「割切り」や「推定」は、「問題は何が正しい決定であるかであって、基本的には、正しい手続によってのみ正しい決定が生み出されるという前提に立つべきであろう。」(塩野・前掲書347頁。下線筆者)と説かれる場合におけるその「前提」に立つものと解される。その「前提」は、「本当に恣意があったり、慎重さを欠いていたりしているかどうかは、単に、理由付記を欠いていたという一事でなく、多面的に審理すべきだ、という反論」(塩野・前掲論文258頁)に対する「割切り」や「推定」による対応のために、設定されたものと解することができよう。 前記の見解は、前記引用部分に続けて、次のとおり述べている(小早川・前掲論文96頁。下線筆者)。 ここでは、青色更正の理由附記の処分適正化機能から、理由附記の不備を独立の取消事由とする論理を導き出した判断を、判例による(積極的)法形成として位置づけていることが注目される。昭和38年[5月]最判の「原理論」を(同最判の明示的参照の有無はともかく少なくとも内容的に)踏襲するその後の最高裁判決も最高裁判所民事判例集(民集)に登載されてきたのは、事案の違いに基づく「技術論」の違いによる面もあろうが、判例による法形成をより強固に確立するためであったのかもしれない。そのような最高裁判決としては、最判昭和38年12月27日民集17巻12号1871頁、最判昭和47年3月31日民集26巻2号319頁、最判昭和47年12月5日民集26巻10号1795頁、最判昭和51年3月8日民集30巻2号64頁、最判昭和54年4月19日民集33巻3号379頁、最判昭和60年4月23日民集39巻3号850頁が挙げられる。他の行政分野では、最判昭和60年1月22日民集39巻1号1頁、最判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁等を挙げることができよう。 3 争点明確化機能 他方、青色更正の理由附記の争点明確化機能については、次のような「ある種のジレンマ」が指摘されている(小早川・前掲論文96-97頁。塩野・前掲論文257-258頁も参照)。 また、争点明確化機能に相当するものと解される「不服申立便宜機能」(塩野・前掲書296頁参照)について次のような概括性が指摘されている(田部井・前掲論文84頁。なお、同93頁注(58)は「争訟回避機能」について相手方に対する「説得機能」(塩野・前掲論文256頁、同・前掲書296頁)とも重なる部分がある旨を指摘している)。 これらの指摘を踏まえると、争点明確化機能ないし不服申立便宜機能は、「裁判所(さらには、裁判所以外の各種審査機関)による行政処分の審査を充実させるには行政庁の理由附記義務を励行させることが望ましいとの政策的な考慮」(小早川・前掲論文297頁)に基づくものと解するのが相当であろう。 4 判例法理としての「原理論」の意味 以上の検討からすると、昭和38年[5月]最判の「原理論」において処分の手続的瑕疵とその内容的・実体的適否とを結びつける論理としては、処分適正化機能についてみられる「割切り」や「推定」が第一次的に重要な意味をもち、争点明確化機能についてみられる政策的な考慮は第二次的ないし補完的な意味をもつにとどまると考えられる(石井健吾「判解」最判解民事篇(昭和51年度)29頁、33頁も参照)。 判例によって形成された青色公正の理由附記に関する「原理論」の判例法理としての意味は、このように理解すべきであろう。   Ⅲ 青色更正の理由附記の「技術論」 1 「技術論」の内容 昭和38年[5月]最判は、「付記すべき理由の内容・程度・方法等、いわば理由付記の技術論」(金子・前掲論文8頁)について、「どの程度の記載をなすべきかは処分の性質と理由附記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」と判示した。 この判示は、一般論としては、異論のないところであろうが、しかし、そこには次のような「深刻な問題」(渡部吉隆「判解」最判解民事篇(昭和38年度)128頁、132頁)の解決が必要とされるのである。 この問題の解決を、昭和38年[5月]最判は、青色更正の理由附記規定について、「申告にかかる所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがない旨を納税者に保障したもの」という考え方に基づいて、図ったものと解される。 青色申告制度は、青色申告の承認を受けた納税者(青色申告者)に対して、一方では、一定の帳簿書類の備付け、当該帳簿書類への取引の記録及び当該帳簿書類の保存の義務(記帳義務)を課し、他方で、実体法上及び手続法上白色申告者には認められない特典を認める制度として、シャウプ勧告に基づいて創設されたが、昭和38年[5月]最判は、前記の考え方に基づいてこの制度を、より手続的保障原則に適合した制度として形成したものと解される。すなわち、青色更正の理由附記規定を単なる「特典」を認める規定として性格づけるのではなく、前記Ⅱで述べた「原理論」の立場(効力規定説)の延長線上で、しかも推計課税の禁止という意味での青色更正の制限とも相俟って、「法定の帳簿組織による正当な記載・・・・・・を無視して更正されることがない旨」の一種の手続的権利を保障する規定として形成したものと解されるのである。 このような法形成には、青色申告承認取消処分に対する審査決定の理由附記に関する最判昭和37年12月26日民集16巻12号2557頁(以下「昭和37年最判」という)の次の判示が影響を与えたのではないかと拝察される。 2 帳簿否認 ところで、昭和38年[5月]最判の前記判示にいう「帳簿の記載」については、それは「課税要件事実の認定」(金子・前掲論文9頁)の結果の記載であるが、その「課税要件事実の認定」は会計的事実の認定を意味するものと解される(前掲拙著【56】も参照)。会計的事実は、会計原則・基準に基づく手続・方法によって認定されるとはいえ、税法との関係でいえばその適用ないし税法的評価を受ける前のいわゆる「ナマの事実」であり、課税要件事実の認定としての会計的事実の認定も、証拠に基づいて行われる。 昭和38年[5月]最判が説示するような「申告にかかる所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである」場合には、課税要件事実の認定としての会計的事実の認定は、通常は、「法定の帳簿組織による正当な記載」という証拠により、行われることになろうが、ただ、「特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料」があるときに、その証拠資料により「その帳簿の記載を無視して更正」すること(いわゆる帳簿否認)が許されるのは、会計的事実の認定も事実認定である以上、当然のことである。 昭和38年[5月]最判は、このように事実認定として当然のことを前提にして、「付記すべき理由の内容・程度・方法等、いわば理由付記の技術論」(金子・前掲論文8頁)に関して、「特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して処分の具体的根拠を明らかにすることを必要とすると解するのが相当である」と判示したものと解される。 この判示については、後でみる本件青色更正の理由附記に関する判示と合わせて、「この判旨について留意すべきことは、それが、前叙のごとき具体的事案に対し、法45条2項の要求する必要最低限度の理由を、消極的に、判示したにとどまり、積極的に同条項の理由記載に関する一般的基準を示したものではない、ということである。」(渡部・前掲「判解」132頁)との指摘がされているが、しかし、少なくとも前記の判示についていえば、帳簿否認に関する一般的基準を示したものと解すべきであるように思われる。その意味で、やはり、「租税実務の上に与える影響は大きい」(渡部・前掲「判解」132頁)というのが当時の状況であったものと考えられる。「判決のこの部分は、すこし大げさな表現かもしれないが、当時、税務行政の担当者に大きな衝撃を与えたように思われる。」(金子・前掲論文8頁)といわれるところである。 昭和38年[5月]最判は、上記の「技術論」に基づき、本件青色更正に附記された「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」という理由について、次のとおり判示して、理由附記の要件充足を認めなかった。 なお、上記の判示から明らかなように、昭和38年[5月]最判によれば、青色更正の理由は「[更正通知書の]記載自体から納税者がこれを知る」ことができるものでなければならないとされている。このことは、上記最判の後これを「先例」(田中真次「判解」最判解民事篇(昭和38年度)445頁)として同じく帳簿否認の場合における理由附記の不備を認めた最判昭和38年12月27日民集17巻12号1871頁(以下「昭和38年[12月]最判」という)の下記の判示(下線筆者)と同じ趣旨であると解される(なお、昭和37年最判の同様の判示との関係については渡部・前掲「判解」131頁参照)。 上記の判示のうち下線部からすると、昭和38年[5月]最判が青色更正の理由について「[更正通知書の]記載自体から納税者がこれを知る」ことができるものでなければならないとしたのは、同最判が「原理論」としての判例法理の意味について、前記Ⅱの4で述べたように、処分適正化機能を第一次的機能として捉えていることの現れであると考えられる。 3 評価否認 ところで、昭和38年[5月]最判及び昭和38年[12月]最判が示された後「技術論」に関して残された問題について、次の指摘がされていた(佐藤繁「判解」最判解民事篇(昭和47年度)370頁、375頁)。 この残されていた問題は、その後、別の調査官解説で次のように整理された(石井健吾「判解」最判解民事篇(昭和51年度)29頁、33-34頁。下線筆者。濵野惺「判解」最判解民事篇(昭和60年度)168頁、174頁も同旨)。 前者の場合は「帳簿否認」、後者の場合は「評価否認」とそれぞれ呼ばれるが、この2つの場合における「技術論」について学説及び下級審裁判例において異なる立場が説かれてきた(詳しくは村井正=占部裕典「青色申告の法理」小川英明=松沢智編『裁判実務大系〔第20巻〕租税争訟法』(青林書院・1988年)73頁、75-77頁参照)。そのような状況の下で、最判昭和60年4月23日民集39巻3号850頁(以下「昭和60年最判」という)は評価否認の場合について理由附記の程度に関する一般的基準を次のとおり判示した(下線筆者)。 その上で、昭和60年最判は、本件青色更正に附記された「一、減価償却費の償却超過額・・・・・・36万8,036円。48年6月取得の冷暖房設備について機械として特別償却していますが、内容を検討した結果、建物附属設備と認められ、特別償却の適用はありませんので、次の計算による償却超過額は損金の額に算入されません。(種類)冷暖房設備(償却限度額)17万3,319円(貴社計算の償却費額)54万1,355円(差引償却超過額)36万8,036円」という理由について、次のとおり判示して理由附記の要件充足を認めた(下線筆者)。 以上の判示からすると、昭和60年最判は、「更正の根拠を前記の更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するもの」という理由附記の程度に関する一般的基準を、「本件更正における上告人[=課税庁]の判断過程を省略することなしに記載したもの」として具体化した上で、そのように具体化した基準に基づき、その記載によって「[課税庁が]本件更正における自己の判断過程を逐一検証することができる」ことができれば、理由附記の要件充足が認められるとしたものと解される。 ここで注目すべきは、本件更正における課税庁の判断過程が「冷房機」に対する税法上の性質(属性)決定という税法的評価を前提としているということである。つまり、「冷房機」に対する税法的評価は、税法の解釈適用に関する法的三段論法(税法的三段論法)において租税法律主義の下で事実認定と峻別・遮断すべき税法的評価であり、一般に「法に依拠した判断」(広中俊雄『新版民法綱要 第一巻 総論』(創文社・2006年)42頁)として位置づけられるべき作用に属するものである(筆者がこれを「狭義の税法的判断」と呼ぶことについては第25回のⅡ1参照。関連して、拙著『税法基本判例Ⅰ』(清文社・2023年)280頁【後記】も参照)。 このように考えてくると、昭和60年最判は、評価否認による青色更正について事実認定(会計的事実の認定)の側面ではなく税法的評価(狭義の税法的判断)の側面に着目して、理由附記の程度に関する「技術論」を展開したものといえよう。そうであるが故に、昭和60年最判が青色更正の理由附記の程度について示した前記の一般的基準は、不服審査決定の理由附記について昭和37年最判が示した「その理由としては、請求人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明かにしなければならない。」という基準(昭和38年[5月]最判も不服審査決定の理由附記について同様の基準を判示している)と類似したものとなるのであろう。いずれにおいても狭義の税法的判断が問題になるのである。 ところで、昭和60年最判が示された後の学説の状況について、「後者の評価否認による更正は、青色申告者における帳簿書類等の備付け、記録又は保存を重視する法人税法の趣旨・目的を害するものではないから、当該更正に係る理由付記の程度は、帳簿否認による更正におけるよりも軽減されていると評価する見解が多かった。」(岩﨑政明「判批」税研178号(2014年)272頁、274頁)と指摘されることがあるが、しかし、事実認定(会計的事実の認定)と認定事実に対する税法的評価(狭義の税法的判断)とは論理的にも法的にも次元を異にする作用であるから、両者を理由附記の程度に関して比較することに意味があるとは考えられない。 昭和60年最判が理由附記の不備を認めなかったことから、上記指摘の中の見解にいう「当該更正に係る理由付記の程度は、帳簿否認による更正におけるよりも軽減されていると評価する」向きもあるかもしれないが、しかし、青色更正に係る判断過程の記載が一切ないような場合には、同最判が示した前記の一般的基準によって理由附記の不備が認められる。このことを大阪高判平成25年1月18日判時2203号25頁は次のとおり判示した。   Ⅳ おわりに 今回は、冒頭に引用した昭和38年[5月]最判の判示を「原理論」と「技術論」に整理しその枠組みにおいて同最判とその後の判例の展開を検討した。 昭和38年[5月]最判が示した「原理論」とりわけ処分適正化機能は、判例による法形成として確立され、税法における適正手続の保障(手続的保障原則)に寄与し、更に一般化され行政手続法(平成5年法律第88号)における理由の提示(8条、14条)の法定に帰結したといえよう。 他方、「技術論」は、昭和60年最判と相俟って、理由附記の程度が帳簿否認による更正と評価否認による更正という枠組みにおいて判断されることになったが、その枠組みそれ自体は事実認定(会計的事実の認定)と認定事実に対する税法的評価(狭義の税法的判断)との区分に基づくものではあるものの、その枠組みにおける判断については「原理論」との関係を常に意識しておくべきであろう。この点について、次の考え方(金子・前掲論文9頁)は正鵠を射たものである。 この考え方に立脚して考えると、帳簿否認の場合における「特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して処分の具体的根拠を明らかにすること」(昭和38年[5月]最判)と、評価否認の場合における「本件更正における上告人の判断過程を省略することなしに記載したものということ」(昭和60年最判)とは、「処分の具体的根拠を明らかにする」(昭和38年[5月]最判)ないし「更正の根拠を前記の更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示する」(昭和60年最判)という目的を達成するための方法論の違いにとどまるように思われる。いずれの方法論も「課税要件事実の認定から課税標準の算定までの論理の道筋」(前記の考え方)を示すためのものであるといえよう。 なお、平成23年度[11月]税制改正によって、行政手続法上の理由の提示規定が課税処分等に係る行政手続法の適用除外から除外され(税通74条の14第1項括弧書)、青色更正以外の課税処分(青色申告者に対する決定及び白色申告者に対する課税処分)についても、さらには課税処分以外の行政処分(徴収処分、附帯税賦課決定処分等)についても、理由附記(提示)が義務づけられることになった。もっとも、納税申告書の提出の有無、記帳義務の程度、各処分を定める規定の趣旨・目的等を考慮すると、青色更正以外の行政処分に係る理由附記(提示)については、「原理論」の点はともかく、「技術論」の点では、青色更正の理由附記の場合とは異なる方法論の検討が必要であるように思われる(この点については、佐藤英明「行政手続法により課税処分に求められる理由附記の程度」税務事例研究144号(2015年)19頁、金子宏「青色申告に対する更正の理由付記」税研191号(2017年)16頁等参照)。 (了)
#579(掲載号)
#谷口 勢津夫
2024/07/25
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令和6年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】

令和6年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   Ⅱ 特定税額控除規定の不適用措置の見直し 1 改正の概要 大企業につき研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定(特定税額控除規定)を適用できないこととする措置について、資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合及び前事業年度の所得の金額が0を超える一定の場合のいずれにも該当する場合における要件の上乗せ措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(新措法42の13⑤⑦)。 この改正は、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(令6改所法等附1、38、46②)。 (※) 「令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について(令和5年12月)」9頁 2 グループ通算制度における取扱い 特定税額控除規定の不適用措置の見直しについて、グループ通算制度における取扱いは以下のとおりとなる。下線部分が改正されている。 (1) 特定税額控除規定の不適用措置(個社判定) 法人(中小企業者(適用除外事業者又は通算適用除外事業者に該当するものを除く)又は農業協同組合等を除く)が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度(対象年度)において、次の特定税額控除規定の適用を受けようとする場合において、その対象年度において次の要件のいずれにも該当しないときは、その対象年度においては、次の特定税額控除規定を適用できない(新措法42の13⑤⑥、42の12の5⑤一・四・五)。 [個社判定による不適用措置の対象となる特定税額控除規定] [特定税額控除規定の適用可否の判定要件(個社判定)] いずれかの要件に該当する場合に、特定税額控除規定を適用することができる。 (2) 通算特定税額控除規定(試験研究費の税額控除規定)の不適用措置(全体判定) 通算法人(中小企業者(適用除外事業者(通算加入適用除外事業者を除く)又は通算適用除外事業者に該当するものを除く)又は中小通算農業協同組合等を除く)が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度(対象年度)において、通算特定税額控除規定の適用を受けようとする場合において、その対象年度において次の要件のいずれにも該当しないときは、その対象年度においては、次の通算特定税額控除規定を適用できない(新措法42の13⑤⑦⑧、42の12の5⑤四・五)。 [全体判定による不適用措置の対象となる通算特定税額控除規定] [通算特定税額控除規定の適用可否の判定要件(全体判定)] いずれかの要件に該当する場合に、通算特定税額控除規定を適用することができる。 ここで、「各通算法人」とは、その通算法人及びその通算法人の対象年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人となる。 また、通算子法人の対象年度は、通算親法人の対象年度終了の日に終了するその通算子法人の事業年度とする。 つまり、通算グループを一体として税額控除限度額を計算する一般試験研究費の税額控除制度及び特別試験研究費の税額控除制度の適用対象事業年度に合わせて、不適用措置(全体判定)の適用を行うこととなる。 (3) 通算法人の改正法の適用事業年度(対象年度)について [誤りやすい事例]   (続く)
#579(掲載号)
#足立 好幸
2024/07/25
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学会(学術団体)の税務Q&A 【第7回】「学会誌と棚卸資産(法人税)」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第7回】 「学会誌と棚卸資産(法人税)」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 1 原則的な処理 費用収益対応の原則の観点からは、決算時に期末在庫の棚卸を行い、会計上、棚卸資産を計上する必要がある。また、法人税の観点から考えても、本来計上すべき棚卸資産を計上していないと、その分だけ原価が過大計上され、不当に課税所得を圧縮することになるため、適切に棚卸資産を計上する必要がある。そのため、会計的な観点からも、税務的な観点からも、原則的には棚卸資産の計上が必要といえる。   2 無償配布を前提としている学会誌の取扱い 期末在庫に関する原則的な処理は上記の通りであるが、その一方で、基本的に会員に対して無償配布を前提としている学会誌について、原則通り棚卸資産を計上するのが必須か否かという点がある。 まず、無償配布を前提としている学会誌について、無償配布の部分だけを考えれば、費用収益対応の原則を考える必要はない。なぜなら、そもそも無償配布であれば、収益が計上されないからである。また、法人税の観点から考えた場合、そもそも無償配布部分については、法人税法上の収益事業に該当していないため、原価が損金に算入されることはない。そのため、仮に棚卸資産を計上していなかったとしても、法人税のリスクはないといえる。   3 有償頒布と学会誌の取扱い (1) 刊行年度の処理 有償頒布を前提とした出版物に関しては、原則通り、会計的な観点からも税務的な観点からも棚卸資産の計上が必要である。 他方で、一部のみを有償頒布する学会誌に関して、棚卸資産の計上は必須ではないと考える。なぜなら、会員に対して無償配布を前提としている学会誌において、翌年度以降、バックナンバーとして会員以外に有償頒布する件数は非常に少ないのが一般的であり、その数を予測することも難しく、重要性の観点から棚卸資産を計上する必要性が乏しいといえるからである。 また、仮に学会誌に関して棚卸資産を計上しなかったとしても、税務リスクはないと考える。なぜなら、学会誌の有償頒布に関して、収益事業の原価を計算する場合、1冊当たりの制作原価×有償頒布数で原価を計算することになるが、有償頒布以外の部分(無償配布部分+期末在庫分)は、すべて収益事業以外の原価として集計されるからである。すなわち、期末在庫に係る原価部分は、そもそも法人税の計算上の損金として計上されていないため、否認されるリスクもないといえる。 〈学会誌制作原価の会計・税務処理〉 なお、上記は、学会誌の有償頒布部分が法人税法上の収益事業に該当するケースを前提としているが、たとえば、公益法人の学会が、公益目的事業の一環として学会誌の刊行を行っている場合、たとえ有償頒布部分が出版業に該当したとしても、収益事業から除外されることになる(法令5②一)。そのため、そのような場合は、すべての原価が収益事業以外の原価となるため、そもそも有償頒布部分の原価を区別する必要はない。 (2) 翌年度以降の処理 棚卸資産を計上していない場合、仮に翌年度以降に有償頒布したとしても、有償頒布に対応する収益事業の原価を集計することができなくなる。なぜなら、刊行年度にすべて収益事業以外の原価として費用処理済みとなっているからである。 この点、期末において棚卸資産を計上していないものの、翌年度の有償頒布の際に、1冊当たりの制作原価×有償頒布数について、収益事業の原価として集計するような例も見受けられるが、本来、望ましくないと考える。なぜなら、会計上、費用計上していないにも関わらず、法人税の収益事業の計算上だけ、翌年度の原価として計上していることになるからである。そのため、仮に、翌年度以降の有償頒布部分について、収益事業の原価として計上しようとする場合は、原則通り、棚卸資産を計上する必要があるが、翌年度以降に有償頒布するようなケースが非常に少ない場合、どこまで原則的な処理をすべきかという点がある。 なお、上記(1)に記載の通り、公益法人の学会が公益目的事業の一環として学会誌の刊行を行っている場合は、そもそも有償頒布部分の原価を区別する必要がないため、棚卸資産を計上する必要性は乏しいと考える。   4 実務上の対応 学会誌は、年数回発行されるケースが多いため、仮に学会誌の在庫管理を行おうとする場合、相当程度の事務負担が生じることになるが、その一方で、学会事務局は少人数で運営しているケースが多く、学会誌について在庫管理を行うのが現実的ではないケースも多い。 棚卸資産を計上していない場合、翌年度以降の有償頒布について収益事業の原価として集計できなくなるが、通常、翌年度以降にバックナンバーとして有償頒布するようなケースは非常に少なく、その影響額は僅少である場合が多い。また、公益法人の学会が公益目的事業の一環として学会誌の刊行を行っているような場合は、そもそも収益事業の原価として集計する必要はない。 そのため、棚卸資産の計上は、原則的な処理といえるが、無償配布を前提としている学会誌の場合、重要性が乏しいため、実務上の対応として、棚卸資産を計上しないことも考えられる。   (了)
#579(掲載号)
#岡部 正義
2024/07/25
New 消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例136(消費税)】 「休眠会社再開に当たり、決算期を親会社と同じに変更したいとの相談を受けた際、免税事業者である期間が短くなるとの説明を怠ったため、変更により課税事業者となった期間の消費税額につき損害賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例136(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆基準期間(消法2①十四) 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(その前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間(※))をいう。 (※) 具体例(令和6年3月期の前々事業年度が1年未満の場合の基準期間の判定)       (了)
#579(掲載号)
#齋藤 和助
2024/07/25
New 税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第39回】「倍率方式で算定した相続税評価額は時価を上回るため違法であるという請求が認められなかった事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第39回】 「倍率方式で算定した相続税評価額は時価を上回るため違法であるという請求が認められなかった事例」   税理士 菅野 真美   相続税法22条において、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価と定められている。よって、「相続または贈与による財産の取得後に何らかの理由によってその価額が低落した場合も、課税価格に算入されるべき価額は、別段の定めがない限り、相続時または贈与時のその財産の時価である」(※)。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)734頁 この「時価」とは、客観的な交換価値と考えられるが、財産の時価は一種類とは限らない。納税者が自分に都合の良い時価で相続税の申告書を提出すると課税の公平が保たれず課税実務が混乱する。よって、原則的には、財産評価基本通達(以下「評価通達」という)の定めによって評価した価額が時価である(評価通達1《評価の原則》(2))。 しかし、評価通達に従って算定した価額が、相続時の時価を上回るような場合は、時価で評価すべきである。これは、評価通達の定める方法によるべきでない特別の事情がある場合と考えられるが、どのような場合であろうか。 今回は、倍率方式で宅地を評価した後に、相続税法22条に規定する時価を上回ることから申告した評価額の2分の1相当額にすべきであるとして更正の請求をしたが、認められなかったために審査請求をした事例を検討する。   ▷どのような事例か 納税者は、相続により市街化調整区域内にある3ヶ所の土地を取得した。2ヶ所の土地は、工場、物置、倉庫の敷地の用に供せられ、残りの土地は被相続人と納税者が共有する居宅の敷地として供せられた。 これらの土地は、登記上の地目は「田」であるが、固定資産税評価額は「宅地」として評価されていた。また、これらの土地の所在する地域は、相続税評価においても固定資産税評価額に倍率を乗ずる方式(倍率方式)で評価する指定があったことから、納税者は、倍率方式で相続税評価額を算定して申告した。 その後、納税者は小規模宅地等の減額について誤りがあったとして修正申告書を提出した。そして、土地の評価額について誤りがあるから評価額の2分の1相当額にすべきであるとした更正の請求をしたが、課税庁は、更正すべき理由がない旨の通知処分を行った。この処分に不服な納税者が審査請求したのが本事例である。   ▷争点 争点は、通達評価額は、相続税法22条に規定する時価を上回る違法があるか否かである。   ▷納税者はなぜ違法と主張したのか 納税者は、次のような理由から通達評価額は違法であると主張した。   ▷審判所はどのように判断したか 審判所は、主に以下の理由から、通達評価額は時価を上回る違法があるという納税者の請求を棄却した。 相続税法22条でいう「時価」は、客観的な交換価値であり、原則的には、評価通達の定める方法で算定すべきであり、評価通達の定める評価方法によるべきではない特別の事情がない限り、評価通達の定める方法によって評価するのが相当である。 以下、前述の納税者の主張から特別の事情があるかどうかを検討する。 ⇒ 固定資産税評価額の算定は、不動産鑑定士による市街化調整区域の市場の特性等を考慮した鑑定評価に基づき、線引き後宅地補正として建築制限等を考慮した減額修正が認められる。さらに、これらの土地は、市街化区域に隣接して主要地方道沿いの建物が連続して立ち並ぶ地域であり、登記上の地目が「田」であることから農地法関連の諸手続きに費用がかかるという意味での制限があるとしても、納税者の主張するような特別の事情に該当しない。 ⇒ 相続開始日に土地の上に建物が存在し、居宅や工場として利用されているということは、取壊し費用を土地の価額に反映すべき事情はない。建物の存在は、評価通達の定める評価方法によるべきではない特別の事情に該当しない。 ⇒ 納税者の主張する土地の時価の根拠となる査定額は、客観的な数値及び具体的な算定根拠が明らかではないから、そのような査定額をもって、相続開始日における土地の客観的な交換価値たる時価と認めることはできない。 *   *   * 相続税の評価は、相続時の現況で判断するため、相続の際に建物の取壊しが行われていないにもかかわらず将来のコストを見積もって減額することはできない。また、時価の根拠が業者に依頼した査定額では根拠として認められない。 更正の請求で評価減が認められるのはハードルが高いといわれているが、今回の事例は、評価通達を覆すレベルの知識に基づいた請求ではなかったことから請求が棄却されたと考える。 (了)
#579(掲載号)
#菅野 真美
2024/07/25
New 国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第51回】「寄与度利益分割法の適用が認められた事例(地判平24.4.27、高判平25.3.28、最判平27.1.16)(その2)」~租税特別措置法66条の4第1項、2項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第51回】 「寄与度利益分割法の適用が認められた事例 (地判平24.4.27、高判平25.3.28、最判平27.1.16)(その2)」 ~租税特別措置法66条の4第1項、2項~   税理士 水野 正夫     3 検討 (1) 本件国外関連取引に寄与度利益分割法を用いたことの適法性【争点①】 寄与度利益分割法は、基本三法を用いることができない場合に限りこれを用いることができるところ、基本三法のうち、原告が再販売価格基準法の適用が可能であると主張したことに対して、本判決は、エクアドル政府による最低買取価格及び最低輸出価格の設定は、バナナ生産者からの買取価格及び輸出価格を上昇させる方向に作用する要因であることは明らかであり、エクアドル産バナナの輸入価格が上昇すれば、その分だけ原価の合計額が上昇し、売上総利益の額が減少することになるのであって、その割合である「通常の利益率」にも影響が及ぶことは明らかであり、また、エクアドル政府規制の有無という差異により生じる通常の利益率の差を調整することができないと判示した。 原告は、エクアドル政府規制について、フィリピン産バナナとエクアドル産バナナは競争関係にあるから、バナナの輸入業者による再販売価格は、市場価格である浜値にならざるを得なくなるのであって、原告のエクアドル産バナナの再販売価格にエクアドル政府規制の影響が及ぶ余地はないと主張している。 この点、仮に浜市場における特殊な構造があり、エクアドル政府規制の有無にかかわらず、浜値がフィリピン産バナナとエクアドル産バナナで市場価格が同一のものとなる現実があるとするならば、「通常の利益率」に影響を及ぼさず、また差異の調整も必要ないという結論もあり得たのではないかと思われるが、原告はそれを裏付ける客観的な分析・証拠資料などを用いて主張すべきだったものと思われる(※4)。 (※4) 政府規制と移転価格税制の関係についての先行研究について、例えば、国本健吾「価格規制・送金規制と移転価格税制-OECDおよび米国の議論を参考に-」『第43回日税研究賞入選論文集』(日本税務研究センター・2020年)9頁参照。 (2) 日本市場の特殊要因(エクアドル産バナナの価格下落)によるXの営業損失を分割対象利益に含めたことの違法性【争点②】 原告は、平成12年12月期及び平成13年12月期において原告が計上した営業損失は、バナナの輸入量が急増した後の需要の大幅な減少や競合品であるフィリピン産バナナの輸入量の急増等により日本市場におけるエクアドル産バナナの浜値が大幅に下落したこと及び顧客が原告との取引を減少させたことなどの当事者が支配できない日本市場の特殊要因により生じたものであるから、移転価格税制を適用するに当たり、これらの日本市場の特殊要因により生じた営業損失は、日本側の輸入業者である原告に帰属させる必要があると主張した。 これに対し、本判決は、そのような取扱いを定めた法令はなく、法令上はもちろん、通達上の根拠も欠くものであること、また、「この点を措くとしても、そもそも原告が主張するような市場における需給の増減や競合品との競争等による市場価格の変動やそれに伴う損益の発生は、市場主義経済の下では常に生じ得るものであるから、そのような損失をもって、直ちに市場の特殊要因により生じた損失とはいい難い」として、納税者の主張を排斥している。 原告の主張は、バナナの浜値が日本市場の特殊要因であることに力点が置かれているが、一方で、移転価格税制における機能・リスクの分析の観点からすれば、さらに踏み込んで、この損失は、ビジネス上当然に負っている市場リスクであるとの主張ができたのではなかろうか。移転価格税制においては、各関連当事者が負っている機能とリスクに応じてリターンを配分するべきであり、リスクが顕在化した場合には、そのリスクを負っているものが負担することが当然である。 寄与度利益分割法の適用の際、販管費がその機能を反映したと推測される要因に応じて利益が配分されることになるが、費用で利益を配分する場合には、寄与度利益分割法の計算構造上必ずしも市場リスクを反映するものとはなっていない。 したがって、明確に市場リスクを原告が負っていたことを主張し、立証できた場合には、日本市場の特殊要因により生じた営業損失は、原告に帰属すべきであるものと思われる。 実務的には、負っているリスクから生じた利益・損失については定量化して除外した上で、利益分割法を適用する事案もあるところ、本件の場合にも原告の主張の1つとして、その損失を合理的に定量化する試みがあってもよかったのではないかと思われる。 本判決は、「日本市場の特殊要因により生じた営業損失を日本側の輸入業者である原告に帰属させる必要があるとする点についても、通常の独立企業間の取引であれば、一方の市場における需給等の状況に大きな変化が生じたことにより、一方の当事者のみに多額の営業損失が生じるような場合、取引価格を改定し、取引量を減少させ又は取引自体を終了させるなどすることなく、従前の条件のままで漫然と取引を継続することは通常は考え難いから、その影響は少なからず他方の当事者にも及ぶものと考えられるところ、その損失を専ら日本側の輸入業者である原告に帰属させるべきとする合理的根拠も不明である」としているが、これに対しては、日本市場の特殊要因により生じた営業損失を国外関連者に帰属させる正当性が問われることになろう(※5)。さらに言えば、バナナの需給が日本市場において逆転して多額の利益が出た場合には、その市場リスクを負っている関連者がその利益を得ることになるが、機能に応じた寄与度利益分割では国外に所得が移転してしまう結果となってしまう弊害もあろう。 (※5) 原告が比較対象会社として主張する独立した第三者であるA社の平成12年12月期は原告と同じく売上総利益率がマイナスとなっており、日本市場の特殊要因によるものとも考えられる。 したがって、一般論としては、市場リスクから生じた利益・損失が利益に大きく影響しているのであれば、理論的には当該リスクから生じた利益・損失を定量化し利益の分割対象から除くことが独立企業間価格を算定する上で必要になる場合もあろう。 本件においては、機能・リスクの配分が国外関連者ゆえに契約書等で明確になっていなかったのではないかと推察されるが、契約書等を整備しリスクの配分を明確にしておく必要があったものと思われる。 (3) 分割要因としてX及びSが支出した販管費を用いたことの違法性【争点③】 原告は、寄与度利益分割法は、分割要因の選定次第では非常識又は不合理な結論を生じかねないことから、国外関連取引に当該分割要因を用いた寄与度利益分割法を適用した結果を反映した営業利益率や売上総利益率が同業他社の営業利益率や売上総利益率と著しく乖離していないかの検証等を行うことが不可欠であり、その結果が不合理なものとなっている場合には、当該寄与度利益分割法の適用は違法となるという主張を行った。 これに対し、本判決は「措置法及び措置法施行令その他関係法令を見ても、寄与度利益分割法について、原告が主張するような同業他社の営業利益率等と比較して検証することを義務付け、その結果が同業他社の営業利益率等と乖離している場合には、当該寄与度利益分割法の適用が違法となる旨を定めた規定は見出すことはできない。そもそも寄与度利益分割法は、同業他社の営業利益率や売上総利益率を用いることなく、国外関連取引に係る所得が当該法人と国外関連者がその発生に寄与した相対的な程度に応じて帰属するものとして計算した金額をもって独立企業間価格とする方法であって、基本三法を用いることができない場合、すなわち、適切な比較対象取引が存在しない場合に限り用いることができる方法であるから、寄与度利益分割法を適用した結果を反映した営業利益率等について、適切な比較対象取引とはいえない同業他社の営業利益率等と比較し、これを上回っていたからといって、直ちにその分割要因が不適切であるとはいえない」として納税者の主張を排斥している。 しかしながら、原告のいうとおり、利益分割法の適用結果は、概して独立企業間価格から乖離することがあり、常識的なビジネスの感覚からかけ離れることも実務上は多々あることである。本判決が、法令にその結果を検証する規定がないため利益分割法を形式的に適用し検証する必要が全くないという意味であれば、疑問が大いに残る。 ただし、本判決は、「上記の点を措くとしても」とし、実際に原告の売上総利益率、A社の売上総利益率を用いて算出した本件国外関連取引に係る所得移転額は、5事業年度で50億円4,300万円になるところ、本件各更正処分における所得移転額は39億9,226万円であって、これを下回るものであるから、「本件更正処分後の原告の売上総利益率がA社の売上総利益率と比較して、著しく不合理なものであるとはいえない」として、利益分割法の適用結果を検証した上で、納税者の主張を排斥している。 ※所得移転額=(原告の売上原価-(原告の売上ー原告の売上×A社の売上総利益率)) したがって、本判決は、利益分割法の適用結果を検証することを単に規定がないことのみを理由に、利益分割法の適用結果を検証する必要性を否定しているのではないと読むべきであろう。すなわち、利益分割法の適用結果の検証を行った結果、その結果が不合理であると認められる場合には、その利益分割法の適用結果が違法ないしはその計算が修正される余地を残しているものと理解しておきたい。 この点は実務上も極めて重要な論点である。移転価格税制の適用は個別性が強く、各事案について、機能・リスク・無形資産等の分析を行った上で、経済的合理性を念頭に置きながら移転価格税制を適用すべきものである。課税庁は常に形式的な判断に陥らないよう実態に配慮しながら執行を行うことが求められるのは当然であり、これには利益分割法の適用の結果の妥当性への配慮も含まれると理解すべきである。 この点、本件においては、納税者がA社の売上総利益率を比較対象とした再販売価格基準法を主張に沿った形で検証している点においてその判断に説得性を持ったものと評価できる。その意味で、本判決は利益分割法の適用結果の合理性を検証している点が先例として評価されるべきであろう。   4 おわりに 本件は、独立企業間価格算定方法の選定において基本三法が優先されていた当時の判例ではあるが、現行法においても最適な独立企業間価格算定方法を選定する際の立証責任があるため、本件の判断の枠組みは意義を持つものと思われる(※6)。判決は、基本三法優先の当時の法令を前提として、利益分割法の適用を支持する際、原告の主張する再販売価格基準法の適用結果についても「利益分割法の適用結果の検証」という形で引用し検証している点について、緻密で説得力のある判断となっている点について意義があるものといえよう。 (※6) 宮本・前掲(※2)170頁も同旨。 実務的な観点からは、基本三法が適用できないと判断される場合に、利益分割法の適用結果を形式的に当てはめ、どのような結果になろうともそれを検証せずに適用するという運用は、結果として課税庁と納税者との紛争を増加させ、移転価格税制の適切な発展を阻害することになろう。現行法では基本三法の優先が廃止され、最も適切な方法を選定することになっているが、課税庁は形式的な判断に陥らず、真の独立企業間価格にできるだけ近づける結果となるよう多角的に分析し移転価格税制を運用することが求められよう。 (了)
#579(掲載号)
#水野 正夫
2024/07/25
New 会計 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計 開示関係

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第4回】

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第4回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   今回は、有価証券報告書のうち、第一部【企業情報】第2【事業の状況】3【事業等のリスク】から6【研究開発活動】までの作成実務ポイントについて解説する。 なお、本解説では2024年3月期の有価証券報告書(連結あり/特例財務諸表提出会社/日本基準)に原則、適用される法令等に基づき解説している。   1 【事業等のリスク】の作成実務ポイント 「事業等のリスク」では、当連結会計年度末における事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(経営成績等)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(連結会社の経営成績等の状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項)について、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合の連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策など、具体的に記載する。 【事例:イーレックス(株)2024年3月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析】の作成実務ポイント 「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析」では、当連結会計年度末における事業の状況、経理の状況等に関して投資者が適正な判断を行うことができるよう、経営成績等の状況の概要を記載した上で、経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容を、具体的に、かつ、分かりやすく記載する。 大きく、「(1)経営成績等の状況の概要」と「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に分けて記載することが考えられる。 (1)経営成績等の状況の概要 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 【事例:(株)SHIFT  2023年8月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   3 【経営上の重要な契約等】の作成実務ポイント 「経営上の重要な契約等」では、連結会社において事業の全部若しくは主要な部分の賃貸借又は経営の委任、他人と事業上の損益全部を共通にする契約、技術援助契約その他の重要な契約を締結している場合には、その概要を記載する。 【事例:(株)ジェイック 2024年1月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   4 【研究開発活動】の作成実務ポイント 「研究開発活動」では、当連結会計年度における研究開発活動の状況(例えば、研究の目的、主要課題、研究成果、研究体制等)及び研究開発費の金額を、セグメント情報に関連付けて記載する。 【事例:イフジ産業(株) 2024年3月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (了)
#579(掲載号)
#西田 友洋
2024/07/25
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開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A 【第25回】「その他の注記②」-減損損失に関する注記-

開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第25回】 「その他の注記②」 -減損損失に関する注記-   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   Question 当社は連結計算書類の作成義務のある会社です。連結注記表及び個別注記表における減損損失に関する注記について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 連結注記表及び個別注記表において、減損損失に関する注記は必ず記載しなければならない項目ではなく、その重要性を勘案して、企業集団の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要と判断した場合に注記することになります。 注記する内容は、会計基準で定められている注記事項や有価証券報告書で開示が求められる事項を参考に検討することが一般的です。 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)によれば、連結注記表、個別注記表どちらも減損損失に関する注記について具体的な記載例は示されておらず、次のような記載上の注意が示されています。 【連結注記表】 【個別注記表】   2 注記事項の解説 (1) その他の注記(減損損失に関する注記)の全体像 連結計算書類の作成義務のある会社を前提とした場合、連結注記表・個別注記表で記載すべき減損損失に関する注記事項の定めは会社計算規則にはなく、次のようなその他の注記として包括的に定められています(会社計算規則第116条)。 (2) 注記事項の解説 減損損失に関する注記は、会社計算規則上、必ずしも記載が求められているものではなく、財産又は損益の状態を正確に判断するために必要と企業が判断した場合に注記することになります。 減損損失に関する注記を記載する場合、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」第58項で定める以下の項目を参考に注記することが実務的には多いです。 それでは、実際の注記を見ていきましょう。 [株式会社ディスコ 2024年3月期 連結注記表] ※株式会社ディスコ「第85回定時株主総会その他の電子提供措置事項(交付書面省略事項)」12頁より抜粋。 [イリソ電子工業株式会社 2024年3月期 連結注記表] ※イリソ電子工業株式会社「第58回定時株主総会招集ご通知」47頁より抜粋。 *  *  * 次回の第26回は、「その他の注記(企業結合・事業分離に関する注記)」をテーマに解説します。   (了)
#579(掲載号)
#竹本 泰明
2024/07/25
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〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第22回】「所有権の登記名義人の旧氏併記及びローマ字氏名併記」

〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第22回】 (最終回) 「所有権の登記名義人の旧氏併記及びローマ字氏名併記」   司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行    【Q】 所有権の登記名義人の旧氏併記及び所有権の登記名義人のローマ字氏名併記に関する詳細が、不動産登記規則及び通達の公布等によって明らかになったと聞きました。この内容について教えてください。 【A】 以下の点が明らかになった。 -《解説》- 1 はじめに 相続実務に直接的には関係しなかったので、本連載の中では、所有権の登記名義人の旧氏併記及び所有権の登記名義人のローマ字氏名併記の改正点について今まで解説をしてこなかった。しかし、相続人申告登記制度の詳細が明らかになった不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)で、所有権の登記名義人の旧氏併記及び所有権の登記名義人のローマ字氏名併記についても明らかになった。そこで、同じ不動産登記規則の改正を解説してきた都合上、今回の解説対象とした。   2 所有権の登記名義人の旧氏併記の取扱い 社会において旧姓を使用しながら活動する人が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくする必要がある。この点、既に住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記ができる以上、当然の流れとして不動産登記にも導入された。後に紹介するローマ字氏名併記の申出と異なり、こちらは任意的な申出に留まる。 また、旧氏併記に係る申出は、登録免許税を要しない。 詳細は下記法務省のホームページを参照してほしい。   3 所有権の登記名義人の旧氏併記に関する登記簿の記録例 所有権の移転の登記と同時に旧氏を併記する場合の登記記録例は、以下のとおりである。 〈登記名義人の旧氏を併記する場合〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (※) 「(登記太郎)」が旧氏併記部分である。   4 所有権の登記名義人のローマ字氏名併記の取扱い 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際に、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要がある。先に紹介した旧氏併記の申出と異なり、こちらは義務的な申出である。 ローマ字氏名併記に係る申出は、登録免許税を要しない。   5 所有権の登記名義人のローマ字氏名併記に関する登記簿の記録例 所有権の保存の登記と同時にローマ字氏名を併記する場合の登記記録例は、以下のとおりである。 〈登記上の氏名が片仮名表記の場合〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 〈登記上の氏名が漢字表記の場合〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 漢字圏の外国人が所有権の登記名義人である場合には、記録上の氏名については、従前の取扱いと同様、日本語の漢字表記により表示できる氏名とし、これにローマ字氏名を併記することになる。 なお、特別永住者等の在日外国人の方が通称を使用して不動産登記の所有者となるケースで、通称名を氏名として記録する場合や、既に通称名を氏名として記録されている場合には、ローマ字氏名の併記をすることができない。 (※) 上記は、法務省の内部資料(ローマ字氏名・旧氏併記に関する質疑事項集)の中で明らかにされている。 (連載了)
#579(掲載号)
#松井 知行
2024/07/25
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