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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第193回】株式会社エスポア「第三者委員会調査報告書(公表版)(2026年9月15日付)」
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第193回】 株式会社エスポア 「第三者委員会調査報告書(公表版)(2026年9月15日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【株式会社エスポア第三者委員会による調査の概要】 【株式会社エスポアの概要】 株式会社エスポア(以下、「エスポア」と略称する)は、1972年9月、鋳造物の販売を目的として「前川産業株式会社」の商号で設立され、1998年9月、株式会社ゲオの完全子会社となって「株式会社ゲオ企画」に商号を変更。2005年4月、ゲオグループによる不動産事業を承継するとともに、商号を「株式会社ゲオエステート」に変更し、不動産開発及び不動産販売を中心とする事業を本格的に開始した。2008年3月には名古屋証券取引所セントレックス市場に株式を上場。2011年3月にゲオグループから離脱し、2012年8月、現在の商号に変更した。 エスポアは、不動産コーディネート&マネジメントに特化した企画開発・販売事業(2026年2月期有価証券報告書)を行っており、連結子会社として株式会社リユニオンを有している。売上高556百万円、経常利益15百万円、資本金1,018百万円。従業員数2人(いずれも2026年2月期実績)。2025年2月期は債務超過状態であった。本店所在地は東京都渋谷区。名古屋証券取引所ネクスト市場に上場(2026年10月17日付で上場廃止)。 会計監査人は、2025年2月期決算(2025年5月28日開催の定時株主総会終了)までは海南監査法人、その後、監査法人アリアが会計監査人に就任したが、2026年5月26日に辞任届を出している。 【第三者委員会による調査報告書の概要】 1 第三者委員会設置の経緯 エスポアは、2026年2月期の決算において、2026年4月24日、監査法人アリアから、会社法第436条第2項第1号及び会社法第444条第4項の規定に基づく監査について監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領するとともに、同年5月27日、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく連結財務諸表及び財務諸表等に対しても監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領した。 また、エスポアは、監査法人アリアから、2026年5月27日開催の第54期定時株主総会終結をもって、任期満了により会計監査人を辞任したい旨の辞任届を受領した。 エスポアは、同年6月11日、株主・投資家をはじめとするステークホルダーに対する説明責任を果たすとともに、事態の真相究明、原因分析及び実効性のある再発防止策の策定を行うために、高い専門性、中立性及び公正性を担保するため、高潔な人格と豊富な専門的知見を有し、かつ利害関係のない経営陣から完全に独立した客観的かつ公正な調査が不可欠であると判断し、独自の「第三者委員会」を設置することを取締役会で決議した。 その後、6月11日に設置した第三者委員会の委員の一部について、その中立性・独立性について検討を要することとなったことから、第三者委員会による調査を一時中断し、外形的にも一抹の疑念の介在する余地の無い、エスポアと利害関係のない経営陣から完全に独立した公正かつ客観的な調査の実施が不可欠であると判断し、同年7月10日の取締役会決議により、エスポアとは利害関係を有しない外部の弁護士、公認会計士及び税理士によって構成される当委員会を設置した。新たな委員構成による第三者委員会を設置した。 2 監査法人アリアが意見不表明とした理由 エスポアが、2026年5月27日にリリースした「2026年2月期有価証券報告書に係る監査報告書の意見不表明及び内部統制監査報告書の意見不表明に関するお知らせ」から、監査法人アリアによる「意見不表明の根拠」を引用しておきたい。 3 第三者委員会による調査結果――本件取引①「不動産コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、売主であるO社所有の宅地について、買主であるN社への紹介、価格交渉への関与、隣地取得に関する検討支援等の不動産コンサルティング業務を提供したとして、報酬1億2,100万円(消費税込)を受領した取引。エスポアの担当者は事業本部長の肩書きを有するg氏。2025年7月10日、O社を売主、N社東京本店を買主、U社を仲介として、本件物件について、売買代金を20億円とする売買契約が締結されたが、エスポアは、当事者としても仲介業者としても記載されていない。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引①のエスポアの業務実態の存在を積極的に裏付ける事情として、O社とエスポアとの間の契約書が存在すること、入出金記録によりO社からエスポアへの金銭の交付が裏付けられていること、当事者(g氏・O社)双方の供述が概ね一致していることに尽きるとまとめている。 一方、エスポアの業務実態の実在性に関する消極事実として、まず、N社ad氏に対する、電話による事実確認において、同氏は、本件取引①は2025年2月頃から仲介業者であるU社を通じて開始されたものであり、エスポアという会社は第三者委員会からの連絡により初めて知り、g氏についても全く知らないと回答したことを挙げている。さらに、g氏の説明が事実と食い違うことを検証したうえで、売買価格は当初から売主が希望する20億円とされ、その妥当性はN社自身の設計部門が作成した企画図に基づいて検討されたものであって、その一連の過程においてエスポア及びg氏はいずれも認識されていないことから、N社という新規ルートの紹介及び各種資料の作成支援については、単にこれを裏付ける客観的資料が存在しないというにとどまらず、こうした役務が本件売買の成立及び価格の形成に対して寄与する余地はないとまとめている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、不動産コンサルティング報酬の対価となる各役務について、実在性が認められないと結論づけ、現在の証拠状況並びにg氏及びO社の説明を前提とすると、本件取引①について、その取引の実在性が認められないと判断し、2026年2月期に計上した売上高報酬1億2,100万円(消費税込)を取り消すべきであるとしている。 4 第三者委員会による調査結果――本件取引②「不動産コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、商業施設及び土地の所有者であるG社との間で締結した不動産コンサルティング業務委託契約に係るもので、買主候補であったP社の信用性や資金力等についての情報提供を行うとともに、決済延期に伴いP社の購入意思を確認し、資金調達状況等に関する情報提供等を行っている。コンサルティングの報酬金額は5,000万円(消費税込)であった。エスポアの担当者は事業本部長の肩書きを有するg氏である。 2025年10月31日、G社とP社は売買代金を27億円、決済日を同年11月28日とする売買契約を締結し、契約締結時にG社はP社から手付金2億円を受領し、さらに、同年11月27日、P社からG社に残代金が支払われ、売買に係る決済が完了した。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引②のエスポアの業務実態の存在を積極的に裏付ける事情として、①コンサルティング業務の対象となったG社とP社間の売買契約が実在すること、②P社の担当社員が、g氏と売買代金の増額2億円分に関して話した記憶があり、g氏についてG社側で動いている人物であるとの認識を有していた旨を述べていること、③2025年9月10日及び翌11日、2026年1月14日に実施されたZoom会議の文字起こしに、本件取引②に関する具体的な発言が記録されていること、④2026年1月20日、同年2月9日及び翌10日のLINEトーク履歴に、本件取引②の報酬額及び契約書に関するやり取りが残されていること、⑤G社が本件取引②に係る報酬5,000万円全額をエスポアに対して現実に支払っていることが認められ、これらの事情は、本件取引②に係る役務内容についてのエスポア及びG社の供述とも概ね整合するとまとめている。 一方で、第三者委員会は、監査法人アリアが監査時点で必要かつ十分な監査証拠を取得できなかったとの判断自体は、その時点で提出された資料の状況に照らして理解できるとしたうえで、第三者委員会による調査で収集した資料及び供述を総合すれば、エスポアが実際に一定の役務を提供したことを裏付ける事情が認められ、本件取引②の成立経緯及び役務提供の具体的な時期等には不明確な点が残るものの、これらの事情を踏まえても、上記認定を覆すに足りる事情があるとは認められないとまとめている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、本件取引②について、監査手続上その実在性を確認するための資料が十分に整備されていなかったという問題は認められるものの、追加的に確認した資料及び関係者供述を総合すれば、本件物件の売却に係るコンサルティング業務は実際に履行されたものと認定するのが相当であり、本件取引②が架空取引又は実体を伴わない取引であったと認めるに足りる事情はないと判断するとしている。 5 第三者委員会による調査結果――本件取引③「蓄電池事業コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、I社に対し、某県内の系統用蓄電池事業に係る2案件について、デューデリジェンス資料の提供、案件保有者の紹介その他のコンサルティング業務を提供したとして、報酬合計2,200万円(消費税込)を計上した取引に関するものである。 エスポアの説明によれば、エスポアは、当初、本件案件1を自ら取得した上で第三者に転売することを予定し、既に各案件についてデューデリジェンスを実施するとともに、転売先の検討等を進めていたものの、その後、資金繰り上の事情から自ら取得することを断念したことから、I社に対し、これまでに取得・整理したデューデリジェンス資料を提供するとともに、本件案件1の案件保有者を紹介することとし、その対価として1案件当たり1000万円(消費税別)、合計2,000万円(消費税別)とする業務委託契約を締結したとのことである。エスポアの担当者は、鈴木魁太代表取締役社長(報告書上の表記は「a氏」。以下「鈴木代表取締役」と略称する)である。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引③については、①契約対象となった土地が実在し、当該土地に関するAL社からの接続検討に関する文書が存在すること、②当該案件に対応するデューデリジェンス資料が現に存在し、I社がこれを保有していること、③I社が本件取引③に係る消費税込み報酬全額と同額の2,200万円を現実に支払っていることが認められ、これらの事情は、本件取引③に係る役務内容についてのエスポア及びI社の供述とも概ね整合するうえ、鈴木代表取締役及びy氏(I社取締役・企画部長)の供述は、2026年2月24日にエスポアの設定によりI社と案件保有者との面談が実施され、デューデリジェンス資料を基に案件内容の説明及び質疑応答が行われたという点で一致しているとまとめている。 ただし、第三者委員会は、本件取引③の完了時期について、期末に2,000万円という多額の収益を計上しているにもかかわらず、エスポアが主張する同年2月中のデューデリジェンス資料の引渡しについて、その事実及び時期を直接裏付ける電子メール、郵送記録、受領書その他の客観的資料は一切確認されていないと指摘した。そのうえで、デューデリジェンス資料が2月中には提供されていなかった可能性をうかがわせる事情として、I社が本件取引③の契約金額全額をエスポアに支払ったのは、本件取引③に係る契約書の締結日から1か月以上も経過した2026年4月6日であり、この日は、エスポアからI社に対し「案件ファイル」が郵送された日と同日であることから、契約書記載の支払期日を経過した後、デューデリジェンス資料又はこれに関連する案件資料の授受が行われたと思われる日に報酬の支払がなされていることになり、デューデリジェンス資料の提供時期を同年4月6日から9日までの間とすることとも整合的と考えられるとしている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、デューデリジェンス資料の提供が本件取引③における主要な役務の一つとして予定されていたことからすれば、本件取引③に係る役務が2026年2月中に全て完了していたと認定することはできず、少なくともデューデリジェンス資料の提供に係る役務については、同年4月6日から9日までの間に履行が完了したものと認めるのが相当であると判断して、2026年2月期における営業外収益への計上を否定する結論を導いている。 6 発生原因の分析(調査報告書123頁以下) 第三者委員会は、発生原因について、「総論」「根本原因」及び「直接的原因」に分けて論じている。まず、「総論」では、第三者委員会が調査の対象として3件の取引について、次のように概説している。 次いで、第三者委員会は「根本原因」とした3項目は次のとおりである。 原因分析のなかで、第三者委員会が繰り返し言及するのは、エスポア事業本部長の肩書きを有する「g氏」の存在である。上記に引用した総論部分、根本原因の「地位・権限の不明確な者による事業の運営及び統制の不備」はいずれも、「g氏」に関するものであり、さらに、重要性が最も高い「直接的原因①」でも、次のように評価している。 また、代表取締役である鈴木氏についても、第三者委員会は「直接的原因⑥」として、次のように評価している。 第三者委員会による直接的原因の指摘は、上記を含めて11項目にわたっている。 7 再発防止策の提言(調査報告書132頁以下) 第三者委員会は、再発防止策として次の10項目を提言している。 エスポアの2026年2月期有価証券報告書によれば、従業員2名と契約社員2名が管理部門に所属しているが、この人員で、第三者委員会による再発防止策の提言を実現することは、事実上不可能であろう。なお、調査報告書から、エスポアの従業員2名は、内部監査室長のh氏と経理担当のi氏であると考えられる。 【調査報告書の特徴】 2期連続の債務超過による上場廃止を回避するため、当初、エスポア社内では2億円の資本調達が検討されていたという。債務超過を回避するために、2026年2月期末に、不動産コンサルティングなどで、約175百万円の収益を計上するが、監査法人アリアによる会計監査で問題となり、エスポアは、「意見不表明」の監査報告書を受け取るとともに、会計監査人の辞任という事態に直面する。「意見不表明」の公表を受けて、名古屋証券取引所は、エスポア株式を「監理銘柄(確認中)」に指定。エスポアは、第三者委員会の設置を取締役会で決議するが、その後も紆余曲折があり、設置を決議してから3か月以上も経過して、ようやく、調査報告書を受領し、公表する。一方、エスポアが上場している名古屋証券取引所は、調査報告書の公表と同日、エスポア株式の上場廃止を決めた。第三者委員会による調査の結果、2期連続の債務超過が確定したとはいえ、2026年2月期の決算を修正する前の段階での上場廃止もまた、異例の措置と言えよう。 1 役務提供の実態がないコンサルティング料はなぜ支払われたのか 第三者委員会は、エスポアが売上に計上したコンサルティング料110百万円(消費税込で121百万円)について、役務提供の実態が確認できないとして、売上計上を取り消す修正が必要であると結論づけた。結論自体は第三者委員会が認定した事実に基づく判断であり、異論はない。問題は、このコンサルティング料が、O社から、2026年2月27日に30百万円、残額91百万円が4月8日に実際に支払われていることである。第三者委員会は、問題となった3つの取引に係る入金がエスポアの2026年2月期の債務超過を解消するためであった場合には、取引先であるO社、G社及びI社に対し、同額を迂回して返金する可能性も疑われるとして、これらの社を含む外部取引先18社に対して協力を求めて調査を行ったが、「協力拒否」1社、「未回答」4社のほか、13社については迂回返金を覚知できなかったとしている。ただ、公表された調査結果では、O社がどのような回答を行ったかは明らかではない。 なお、エスポアの2026年2月期有価証券報告書17頁には、主要な販売先が記載されており、株式会社サンライズに対する販売実績が110,000千円と明示されていることから、報告書における「O社」は、株式会社サンライズであることが推察できる。 なぜ、同社が、エスポアに対して総額121百万円を支払ったのかという謎は、第三者委員会による調査では解明できなかったようである。 2 エスポアの取締役会・監査役会の構成 エスポアの取締役会と監査役会の構成は次のとおりである。 役職名 氏名 担務 など 就任時期 資格その他 代表取締役 鈴木魁太 社長 2025年4月 取締役 勝又英博 2025年4月 取締役 山本健司 経営管理本部長 2025年5月 2026年5月末日辞任 取締役 宮下弘充 社外取締役 2025年5月 常勤監査役 日向健太 社外監査役 2022年5月 公認会計士・税理士 監査役 宮本武明 社外監査役 2022年5月 弁護士 監査役 杉浦亮次 社外監査役 2025年5月 税理士 鈴木代表取締役及び勝又取締役は、2025年4月17日開催の臨時株主総会において、株主であるJPIW合同会社による提案が承認可決されたことにより、就任したものである。なお、同臨時株主総会では、上田真由美氏及び吉川元宏氏も取締役(社外)に就任しているが、両氏は、2025年5月28日開催の定時株主総会をもって、取締役を退任している。 3 名古屋証券取引所による上場廃止及び整理銘柄指定 名古屋証券取引所は、2026年9月16日、エスポア株式について、10月17日付で上場廃止を決定して、整理銘柄指定をすることを公表した。上場廃止の理由としては、「上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において「意見の表明をしない」等の旨が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認める場合に該当するため(有価証券上場規程第601条第8号)と説明したうえで、理由の詳細を次のように公表している。 (了)
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【新基準対応版】〈一から学ぶ〉リースの会計と税務 【第7回】「借手の会計処理」~短期リース、少額リース~
【新基準対応版】 〈一から学ぶ〉 リースの会計と税務 【第7回】 「借手の会計処理」 ~短期リース、少額リース~ 公認会計士・税理士 喜多 弘美 【第5回】・【第6回】では、借手の会計処理について、原則的な処理を整理しました。今回は、借手の会計処理でも、使用権資産・リース負債を計上しないことができる「短期リース」「少額リース」について見ていきます。 1 原則的な会計処理のおさらい まず、原則的な会計処理を簡単に振り返りましょう。借手は原則として、次の会計処理を行います。 ただ、規模が大きな会社では、リースが数百件に及ぶこともあります。そのため、すべてのリースについて、同じように会計処理を行うと、会社の事務負担はとても大きくなってしまうでしょう。 そこで、一定の要件を満たすリースは、使用権資産とリース負債を計上しない簡便的な取扱いが認められています。 それが、「短期リース」と「少額リース」です。 2 短期リースの会計処理 「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(適用指針第4項(2))。 つまり、以下2つの条件をどちらも満たす場合、「短期リース」と判定されることになります。 短期リースに該当する場合、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます(適用指針第20項)。 注意したいポイントとしては、短期リースに該当するかの判断基準が、契約書上の「契約期間」ではなく、「借手のリース期間」となっている点です。【第4回】でもお伝えしたように、借手のリース期間は、契約書に記載された契約期間と必ずしも同じになるとは限りません。 たとえば、契約期間が6ヶ月でも、延長オプションを使うことが合理的に確実なら、延長する期間も含めて、借手のリース期間を決定することになります。その結果、借手のリース期間が12か月を超える場合は、短期リースには該当しません。そのため、契約書上の契約期間だけで判断しないように注意が必要です。 また、「購入オプション」とは、借手がリース対象の物件を購入することができる権利のことです。借手のリース期間が12か月以内でも、購入オプションが含まれている場合は、短期リースには該当しないことになります。 3 少額リースの会計処理 少額リースとは、次の(1)と(2)のいずれかを満たすリースをいいます(適用指針第22項)。 上記に該当する場合、短期リースと同じように、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって、原則として定額法により費用計上することができます(適用指針第22項)。 次にそれぞれの条件について、具体的に見ていきましょう。 (1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース 通常の固定資産の取得でも、購入時に費用処理される少額のものは、重要性が乏しい場合が多いです。そのため、会社が一定の金額以下の減価償却資産について、購入時に費用処理する方法を採用している場合、その基準額以下のリースについても、簡便的な取扱いが認められています。 たとえば、10万円未満の減価償却資産を購入時に費用処理している会社の場合、借手のリース料が10万円未満のリースについても、使用権資産とリース負債を計上しないことができます。ただし、ここでいう「基準額」とは、それぞれの会社が会計方針として設定している会計上の基準額のことです。すべての会社に同じ基準額が適用されるわけではないことに注意しましょう。 (2) 次の①又は②を満たすリース 日本でのリースは、事務機器等の比較的少額なリース資産に利用されることが多く、一定金額以下のリースについては簡便的な処理が認められています。①②それぞれの条件を確認しましょう。 ① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース(1契約当たりのリース料が300万円以下) 改正前のリース会計基準では、企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースについて、簡便的な処理を認めていました。 新しいリース会計基準でも、この取扱いが引き継がれています。これまで、この簡便的な取扱いを適用してきた会社では、新しいリース基準に対応するための追加的な事務負担を増やさずにすむようにするためです。 また、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として「借手のリース期間」となります。ただし、これに代えて、契約書に定められた「契約期間」とすることも認められています(適用指針第23項)。これも、借手のリース期間を見積もる事務負担を減らすための取扱いです。 ② 新品時の原資産の価値が少額(5千米ドル程度以下)であるリース もう1つは、リースの対象となる物件について、新品時の価値が少額かどうかによって判断する方法です。これは、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)との整合性を図るために設けられた取扱いになります。 IFRSでは、新品時の価値がおよそ5千米ドル以下の原資産を念頭に置いて、少額リースの簡便的な取扱いが認められました。リース料の総額ではなく、物件そのものの新品時の価値で判断するということで、リース1件ごとに簡便的な取扱いを選択適用することができます。 IFRSを任意適用している会社では、この会計処理を採用すると、IFRSを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となり、これも事務負担の軽減につながるでしょう。 (2)①リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースと、(2)②新品時の原資産の価値が少額であるリースは、いずれかを会計方針として選択し、継続して適用することになります(適用指針第22項)。そのため、会社の事務負担を減らすために、IFRSを任意適用している会社は(2)②を、一方、日本基準を適用している会社は(2)①を選択適用することが考えられます。 なお、前回は、リース負債に係る支払利息についても、簡便的な方法が認められていることをお伝えしましたが、判断基準は使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合でした。今回の少額リースでは個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合となり、状況が異なるので注意しましょう。 * * * 最後に、今回の内容をまとめると、次のようになります。 (了)
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税理士事務所の労務管理Q&A 【第34回】「カスタマーハラスメントの防止対策」
税理士事務所の労務管理Q&A 【第34回】 「カスタマーハラスメントの防止対策」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 職場におけるカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」という)が増加し、社会問題にもなっています。これを受け、労働施策総合推進法が改正され、令和8年10月1日から、企業等にはカスハラ防止のため、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。今回はカスハラ防止対策について解説します。 * * 解 説 * * 1 カスハラとは カスハラとは、顧客や取引先から労働者に対して行われる、著しい迷惑行為や理不尽な苦情・クレームのことで、 の3つの要素をすべて満たすものをいいます。 2 著しい迷惑行為の事例 「著しい迷惑行為」としては、次のような例があげられます。 3 事業主が雇用管理上講ずべき措置義務 カスハラを防止するため、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し、雇用管理上講ずべき措置として、その内容が厚生労働大臣による指針で示されています。 〈カスハラ防止のために講ずべき措置〉 〈具体的な取組み内容〉 4 カスハラ対策を講ずるときの留意点 カスハラ対策を講ずる際には、消費者の権利等を阻害しないものでなければならず、 障害者差別解消法の合理的配慮の提供義務を遵守する必要があります。 また、事務所の労働者が取引先等の労働者に対してカスタマーハラスメントを行った場合、その取引先等の事業主が講じる事実確認等の措置の実施に関して必要な協力が求められた際は、事務所はこれに応じるよう努めるものとされています。 5 カスハラ防止に関する規程の整備 カスハラ防止に関しては、就業規則に規定しておくことが望ましいです。下記の規程例を参考に事務所の実態に即した規程を作成してください。 ◎カスタマーハラスメントの防止規程例の一部 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例120】株式会社ツインバード「株式会社ジャパネットホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する反対の意見表明のお知らせ」(2026.8.31)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例120】 株式会社ツインバード 「株式会社ジャパネットホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する反対の意見表明のお知らせ」 (2026.8.31) 公認会計士/開志創造大学大学院事業創造研究科教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社ツインバード(以下「ツインバード」という)が2026年8月31日に開示した「株式会社ジャパネットホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する反対の意見表明のお知らせ」である。 2026年6月19日に株式会社ジャパネットホールディングス(以下「ジャパネット」という)は「株式会社ツインバード(証券コード:6897)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(以下「公開買付けの開始予定に関するお知らせ」という)を発表し(同社は非上場会社であるため、同社の発表資料はホームページに掲載)、ツインバードに対してTOB(株式公開買付け)を行う予定であるとしていた。今回の開示は、そのTOBに対して反対意見を表明するという内容である。 2 反対されたら実施しないTOBの予定を発表 ジャパネットによる「公開買付けの開始予定に関するお知らせ」には、「本公開買付けは、対象者取締役会の賛同なく実施されることはありません」と記載されている。相手側に反対されたら実施しないTOBの予定を発表するというのは珍しい。反対されたら実施しないというのであれば、通常、両社の話し合いにおいて決着し、表に出てこないはずである。ジャパネットは、なぜあえてこうした発表を行ったのだろうか。 ジャパネットによる「公開買付けの開始予定に関するお知らせ」には、ツインバードとのやり取りについて、次のような記載がある(「公開買付者」はジャパネット、「対象者」はツインバード)。 これに対して、ツインバードによる今回の開示には、次のような記載がある。 両社の間に少し食い違いはあるが、ツインバードは、ジャパネットの提案にまったく応じようとしていなかったようである。門前払いで、検討すらしてもらえない状況であったため、ジャパネットは、何とかツインバードに検討してもらえるように「公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を発表したのだと思われる。 3 ディスシナジーは回避不可能なものなのか? ツインバードは、今回の開示において、ジャパネットがツインバードを完全子会社化した場合、「資本関係の変化により生じ得る事業構造上のリスク」と「経営方針の相違により生じ得るリスク」が存在し、ツインバードの事業に重大なディスシナジーが生じ得るため、ジャパネットによるTOBに反対するとしている。 2つのリスクのうち、まず「資本関係の変化により生じ得る事業構造上のリスク」は、取引先の量販店が離反する可能性があるというものである。確かにそうしたリスクはあるかもしれないが、それは絶対的なもので、回避不可能なものなのだろうか。 ジャパネットは2026年9月2日に「株式会社ツインバードの2026年8月31日付『株式会社ジャパネットホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する反対の意見表明のお知らせ』を踏まえた当社見解のお知らせ」(以下「当社見解のお知らせ」という)を発表しているが、そこには次のような記載がある。 次に「経営方針の相違により生じ得るリスク」は、既存ユーザー(消費者)の離反のリスク、当社の成長領域であるB2B事業等が停滞するリスク、役職員の離反等に係るリスク、地域におけるサプライチェーン等の毀損のリスクというものである。これらも絶対的なもので、回避不可能なものなのだろうか。ジャパネットによる「当社見解のお知らせ」には、次のような記載がある。 なお、ツインバードは減収減益が続いており、2025年2月期と2026年2月期は2期連続最終赤字、2026年2月期は営業損失を計上している(2026年4月14日開示「2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)」)。また、2期連続で繰延税金資産を取り崩してもいる(2025年4月14日開示「繰延税金資産の取り崩し及び業績予想の修正に関するお知らせ」、2026年4月10日開示「特別損失の計上、繰延税金資産の取り崩し及び業績予想の修正、並びに役員報酬減額に関するお知らせ」)。同社の製品が売れなくなってきているなかで、現在の取引先である量販店や消費者が離反するリスクを懸念することは適切なのだろうか。 4 シナジーの客観的な検証は困難だが ツインバードは、今回の開示において、反対意見を表明する理由として、ジャパネットが主張するシナジーの実現可能性や効果を具体的に基礎づける根拠がないこともあげている。ジャパネットが主張するシナジーとしては、①チャネルミックスでの当社製品の販売拡大、②既存事業の製造移管、③ブランド力の飛躍的向上、④共同商品企画による商品開発力強化、⑤物流センター・コールセンターの統合及び業務効率化、⑥上場維持コスト及びバックオフィス業務負荷の低減、⑦B2B・B2Cの役割分担及び経営基盤の強化、があげられている。 それらのうち、「③ブランド力の飛躍的向上」については、「当社が構築してきた高付加価値ブランドとしての位置付けが毀損する可能性もございます」、「⑥上場維持コスト及びバックオフィス業務負荷の低減」については、「上場を維持し続けること」には「重要なメリットがある」、「ジャパネットのリソースを活用したバックオフィス業務のサポートに関しては、具体的な実施方法等も本取引後の協議事項とされているにとどまります」、「これらの削減効果は限定的又は中長期的な企業価値を毀損する可能性もある」として、反対意見表明の理由としているが、ほかについては、客観的に検証できないことを反対意見表明の理由としている。 「①チャネルミックスでの当社製品の販売拡大」については、「具体的な実現可能性及び当社の売上・利益への純増効果を現時点で客観的に検証することは困難」および「確実かつ大規模な売上高又は利益への貢献が見込まれることを客観的に確認することはできず」、「②既存事業の製造移管」については、「確実かつ大規模な売上高又は利益への貢献が見込まれることを客観的に確認することはできない」、「④共同商品企画による商品開発力強化」については、「当社の既存の商品開発力の向上にどの程度寄与するかは明らかではございません」、「⑤物流センター・コールセンターの統合及び業務効率化」については、「具体的な効果を検証することは困難」、「⑦B2B・B2Cの役割分担及び経営基盤の強化」については、「当社の既存の成長戦略を阻害することなく企業価値の向上につながるかについては不明」としている。 しかし、そもそも経営統合後のシナジーをすべて客観的に検証することは困難である。上述のディスシナジーが回避不可能であることの客観的検証が困難であることと同じである。確かにジャパネットは、ツインバードが求める情報のすべてを提供できていなかったのかもしれないが、逆にツインバードは、ジャパネットに対して、事前にジャパネットが検討するために必要な情報を提供できていたといえるのだろうか。 5 中期経営計画に説得力は ツインバードは、今回の開示と同じ2026年8月31日に「新 中期経営計画2026-2030の策定に関するお知らせ」を開示している。そして、今回の開示には、「本取引を実施せず、本中期経営計画に基づいて事業運営を継続することは、当社の企業価値向上に資するものであり、株主共同の利益の観点からも合理的であると判断しました」という記載がある(「本取引」は、TOBなど、ジャパネットがツインバードを完全子会社化することを目的とした一連の取引)。 しかし、その中期経営計画が上手くいくかは、シナジーと同様に不確実だろう。ツインバードは、2023年4月11日に「業績予想の修正に関するお知らせ」、2024年4月5日に「業績予想の修正に関するお知らせ」、2025年4月14日に「繰延税金資産の取り崩し及び業績予想の修正に関するお知らせ」、2026年4月10日に「特別損失の計上、繰延税金資産の取り崩し及び業績予想の修正、並びに役員報酬減額に関するお知らせ」と、実に4期連続で通期業績予想を下方修正している。少なくとも現時点では、そうした会社の経営計画に説得力があるとはいえないだろう。 なお、経営トップ主導で無理な計画を押し進めようとすると、不正会計発生のリスクが高まることになる。そうならなければいいのだが。 6 反対ありき ジャパネットとの話し合いに応じようとしなかったツインバードの当初の態度と、反対意見の内容からすると、ツインバードとしては、最初から反対ありきだったように思われる。確かにジャパネット側の情報提供不足があったのかもしれないが、提供されていたら、変わったのだろうか。そもそもツインバードからジャパネットに対して必要な情報が提供されていたとはいい難いし、ジャパネットがツインバードにどんなに情報を提供しても、「具体性がない」などと切り捨てられていたのではないだろうか。 ツインバードは、同社の社外取締役で構成される特別委員会を設置し、同委員会は、同社に対して、ジャパネットによるTOBについて反対の答申を行っている。しかし、第三者委員会とは異なり、社外取締役といえども、ツインバードの意向から本当に独立して意見を述べていると信じることは困難である。ツインバードは「独立性に問題がないことを確認した」としているが、何を確認したのかは不明である。また、「独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関」と「独立したリーガル・アドバイザー」も選任したとしているが、その「独立」は、同社とこれまで取引等がなかっただけで、同社の意向から独立しているという意味ではないだろう。 ツインバードの第64期有価証券報告書の「沿革」によると、同社は1962年に野水電化株式会社として設立されているが、同社の現在の代表取締役は野水重明氏(以下「野水氏」という)である。同社は同氏の祖父が設立した会社であり、同氏は三代目にあたる(同有価証券報告書の「大株主の状況」によると、野水氏が代表を務める会社、野水姓の方、ツインバード従業員持株会によって、同社の株式の20%以上が保有されている)。野水氏にとって、同社は親から受け継いだ自分の会社であり、他者のものになるなどあり得ないのだろう。そうであるならば、最初から、同じ同族企業であるジャパネットに対して、その思いを率直に伝えておくべきだったのではないだろうか。そうしておけば、今回のような事態にはならなかったのではないだろうか。 今回のツインバードによる一連の対応と最終的な選択は、同社にプラスにはならないように思われる。同社は、「上場を維持し続けること」には「重要なメリットがある」としているが、今後、大変な困難が待ち受けているだろう。中期経営計画を達成し、業績を向上させて、株価も、ジャパネットが提示した買付価格以上にできるのだろうか。今回の件でアクティビストの目にとまってしまったかもしれないが、彼らはジャパネットのように紳士的ではない。後悔することにならなければいいのだが。 (了)
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書く論 【第10回】「じっと編集者を見る」
〈執筆:編集X〉 書く論 第10回 「じっと編集者を見る」 今回のお話、同業者の方々にはお聞き苦しい点がありますことをお許しください。 最初に結論から申し上げますと、すでに原稿を書かれている方も含め、著者の方々は 「編集者にはアタリ・ハズレがある」 という事実を受け止めていただきたいと思います。 ただしそれは、「その方にとっての」アタリ・ハズレであるということです。 要は「ご自身と合う・合わない」ともいえます。 執筆経験の浅い著者の方は、企画から原稿執筆、校正、書籍などの成果物が出来上がるまで、様々な場面で編集者に頼ることが多いでしょう。その編集者が何となく自分に合わないというのは、けっこうなストレスだと思います。ただ、著作歴のある方を除いて、なかなか著者の方から版元に対して「担当を変えてほしい」とは言いづらい。 そういう問題について、いくつかのアドバイスをお伝えします。 ポイントは「編集者のことを知る」です。 編集者の仕事を簡単にご説明すると、「ミルフィーユのように積み重なった、膨大な数の雑務」だと思います。 例えば、1冊の書籍を発刊するには、著者と編集者のほかに、印刷会社(営業担当者・現場担当者)、デザイナー、イラストレータ、カメラマン、編集部(上長)、編集部以外(営業担当者・経理担当者)、場合によってはクライアントなど、複数の人物が関わります。 そして一般的に、それら関係者とすべて接点があるのは編集者だけです。 つまり編集者は、これら複数の人間関係の蝶番(ちょうつがい)のような立場にあり、著者を中心とした円の中で、四方八方に飛びまわり、連絡・交渉を重ねていく。そのため、常にバタバタとしていて、細かい仕事をたくさん抱えています。 そのような仕事をしている編集者も、当然ながらヒトであり、それぞれ性格が異なります。ドラマなどでよくある、熱血漢、コミュニケーション能力が高い、センスが良い、お酒が好き、オタク気質といったイメージではない編集者もたくさんいます。逆に世間のイメージ通りの編集者の方が少ないくらいです。 余談ですが、かつてドラマにもなった編集者が主人公のマンガで、一見ひどい性格のような編集者が、実は過去の辛い経験から確実に売上実績を上げ出版という事業を下支えしている事実があることを読んだとき、リアル過ぎて編集Xは鳥肌が立ちました。本当に編集者も多種多様なのです。 次に忘れられがちなのは、フリーランスでない限り、編集者は会社員であるということです。いくら著者の方と編集者が意気投合し「この方向で行こう」と考えても、会社がGOを出さなければ、(少なくともその版元では)その案は実現しません。もちろん編集者としてはその案が実現するよう著者の方の見えない場面も含め様々な取組みを行うのですが、NOと言われてしまえばその判断に従うしかない。 その結果、やむを得ず両者の信頼関係が崩れることもあるのですが、個人的にはぜひ、編集者も会社員であることを知っておいていただきたいと思います。 また、編集者にも技術職のような側面があり、知識や経験によって出来上がる書籍の良し悪しが変わります。そしてそれは、その編集者がどのような努力を行ってきたかが如実に表れます。 ここまでお伝えしてきた通り、もともとの性格、経験年数、知識などによって100人いれば100タイプの編集者が存在する中で、その著者の方にとって合う・合わないがあるのも当然だと、お分かりいただけたでしょうか。 そして、もしご自身と合う編集者が見つかった場合、その関係は編集者が会社員としての立場を終えるまで、あるいはその後も長く続くことがあります。お互いの言いたいことや能力の過不足まで把握しつくしているので、ストレスを感じることも少ないでしょう。 一方で、どうしても合わない編集者と仕事を続けなければいけない状況になったら、どうすればよいでしょうか。 以下、かなり私見が含まれます。 まず、その版元の管理職に相談してみるのが一案です。具体的にどのようなサポートができる編集者がよいのかを伝えれば、対応してもらえるかもしれません。ただその結果、著者からの指名の多い編集者が担当に就くことになった場合、編集側のキャパの関係で出版まで時間がかかってしまうリスクはあります。 あるいは、思いきって版元を変えるのもよいと思います。同じ出版社とはいえ、そこにも性格(事業形態)の違いはありますので、編集者だけでなく環境も大きく変えることで、ストレスも無くなり希望したとおりの書籍が発刊できるかもしれません。 ここで、よく出版界隈では「著者を囲い込む」ことが謳われますが、個人的には書き手の方たちには、いろんな版元で経験を積んでいただきたいと考えています。その結果、自分たちからその著者が離れてしまったとしたら、それは編集者(≒版元)の責任でしかありません。 ここで、編集者を変える行動を移す前に、ご対応いただきたいことがあります。それは本当に合わない(思ったことをやってくれない)編集者かどうか、一度よく見てみるということです。 例えば、口数が少なくコミュニケーションが苦手そうな編集者であっても、内容のチェックは完璧で、見えないところで細かいレイアウトや文字バランスの調整、的確なデザインの指示を行っているかもしれません。また、知識が不足しているように見え不安を感じるような編集者が、実は交渉力に長け著者のアイデアを確実に実現できるよう社内外を説得してまわっているかもしれません。 そういった、編集者が対応している点をよく確認されたうえで、判断されるのがよいように思います。 ちなみに、編集者に対してドラマで登場するような編集者のイメージを押しつけたり、他の編集者と比べた発言をされたりするのは、ぜひお控えください。彼ら彼女らのモチベーションを著しく落とすことになり、先に述べたミルフィーユのように重なった雑務が崩れやすくなると、望むべき書籍の発刊が危うくなってしまいます。 最後に、もし今後、執筆の経験を積まれ、まだ経験の浅い編集者と一緒にお仕事をするようになったら、その人物が努力を惜しまない人であれば、時にはチャレンジングな提案も受け入れていただくなど、温かく見守っていただきたい。そこで受け入れてもらえた経験は、その編集者が成長することで、その著者だけでなく、これから書き始める方々にも恩恵があると思います。 (注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)> (つづく)
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《編集部レポート》 第52回日税連公開研究討論会が神戸で開催される
《編集部レポート》 第52回日税連公開研究討論会が神戸で開催される Profession Journal 編集部 2026年10月16日(金)、日本税理士会連合会(太田直樹会長)は、第52回日税連公開研究討論会を神戸で開催した。 本年も会場での開催と同時にライブ配信も行うことで、遠方からも視聴可能なハイブリッド形式となった。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。 第52回となる今回は、北陸税理士会、近畿税理士会による合同開催となった。 まず、北陸税理士会が担当した第1部「税理士の持続可能性と地方創生―創業と事業承継を中心に」では、第1幕として、福井県グループが「税理士の事業承継を巡る課題」、第2幕として、石川県グループが「損害賠償責任」、第3幕として、富山県グループが「所属税理士の働き方の多様性と地方創生」について、再現ドラマやアニメーションなども交えながら発表が行われた。 第2部の近畿税理士会「われわれは租税回避とどう向き合うべきか」では、ライブアンケートも活用しながら、①アンケートから見た租税回避に関する分析や財務省主税局・国税庁・リース会社インタビュー報告が行われ、②個別事案における事実の見方・捉え方、③「伝家の宝刀」行為計算否認規定への税理士の向き合い方、そして、④租税回避とどう向き合うべきかについて、発表と白熱した議論がそれぞれ展開された。 研究発表後は田中治大阪府立大学名誉教授、谷口勢津夫大阪学院大学法学部教授・大阪大学名誉教授より、それぞれ講評がなされた。 当日は全国から税理士が集い、研究発表の成果に耳を傾けた。また、来賓として齋藤元彦兵庫県知事、岩元達弘大阪国税局長が来場、祝辞を述べられた。 (北陸会の発表の様子) (近畿会の発表の様子) (了)
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《速報解説》ASBJが「金融商品に関する会計基準」等を改正~「予想信用損失モデル」を日本基準においても導入~
《速報解説》 ASBJが「金融商品に関する会計基準」等を改正 ~「予想信用損失モデル」を日本基準においても導入~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年10月16日、企業会計基準委員会は、「金融商品に関する会計基準」(改正企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)等を公表した。これにより、2025年10月29日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、IFRS第9号「金融商品」の予想信用損失モデルを基礎として、金融資産の減損に予想信用損失モデルを導入するものである。 企業会計基準公開草案第89号「金融商品に関する会計基準(案)」等に対する主なコメントの概要とその対応も公表されており、全体で400ページに及ぶものとなっている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 債権、満期保有目的の債券 金融商品会計基準14項、16項では、次のように規定する。 Ⅲ 予想信用損失、貸付金代替性私募債 予想信用損失とは、信用損失を確率加重したものをいう(金融商品会計基準(注5-2))。 信用損失とは、企業に支払われるべきすべての契約上のキャッシュ・フローと、企業が受け取ると見込んでいるすべてのキャッシュ・フローとの差額(すなわち、すべてのキャッシュ・フローの不足額)を現在価値に割り引いたものをいう。 貸付金代替性私募債とは、貸付金の代替として銀行が引き受けて保有する私募債をいう(金融商品会計基準(注5-3))。 Ⅳ 金融保証契約 金融保証契約の規定を新設する(金融商品会計基準26―2項)。 金融保証契約とは、特定の債務者が金銭債務の当初又は変更後の条件に従って期日の到来時に所定の支払を行わないことにより契約保有者に発生する損失等を補償するために、当該保有者に対して所定の支払を行うことを契約発行者に要求する契約をいう。ただし、デリバティブに該当するものは除く(金融商品会計基準(注8-2))。 Ⅴ 予想信用損失の算定方法 予想信用損失の算定にあたっては、期末において、債権、満期保有目的の債券、金融保証契約及び貸出コミットメント等(「債権等」という)の発生の認識以降におけるデフォルト発生リスクの変動に基づいて債権等に係る信用リスクが著しく増大しているかどうか判定する(金融商品会計基準27項)。 予想信用損失は、以下を反映する方法により算定する(金融商品会計基準27-2項)。 「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いに関する適用指針」(企業会計基準適用指針第36号。以下「予想信用損失適用指針」という)において、詳細な規定及び設例が設けられている。 一般事業会社の通常の営業取引から生じる受取手形及び売掛金等、並びにリースにより生じた債権については、IFRS第9号において定められている営業債権、契約資産及びリース債権についての単純化したアプローチに関する定めを取り入れる。 Ⅵ 注記事項 信用リスクに関する情報として、次の事項を注記する(予想信用損失適用指針71項)。 予想信用損失適用指針では開示例が示されている。 Ⅶ 補足文書 「<補足文書>金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いについて」において、実務に資するように、信用リスクの著しい増大に関する判定、簡素化された予想信用損失の算定方法における信用リスクの著しい増大に関する判定などについて記載している。 Ⅷ 適用時期等 2030年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 上記にかかわらず、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。この場合には、同時に公表又は改正された一連の会計基準等についても同時に適用する必要がある。 経過措置に注意する。 (了)
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《速報解説》 会計士協会、「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正を公表~用語の一般性、有限責任事業組合(LLP)との区別のため「有責組合」を「LPS」に変更~
《速報解説》 会計士協会、「投資事業有限責任組合における 会計上及び監査上の取扱い」の改正を公表 ~用語の一般性、有限責任事業組合(LLP)との区別のため「有責組合」を「LPS」に変更~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年10月7日付けで(ホームページ掲載日は2026年10月16日)、日本公認会計士協会は、「業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正」を公表した。これにより、2026年8月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、2025年3月11日公表の改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」、2025年6月23日公表の「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(経済産業省 新たなモデルLPAの作成等のための有識者検討会)に対応するものである。 公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 用語の一般性や有限責任事業組合(LLP)と区別するため「有責組合」を「LPS」に変更している。 改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」では、特定の要件を満たした場合に、組合員はその出資する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることが認められている。 また、「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」が公表され、その25条4項では、「無限責任組合員は、本組合が保有する投資証券等の評価を、[時価/IFRS会計基準で定める公正価値/米国において一般に公正妥当と認められる会計基準で定める公正価値/International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelinesで定める公正価値測定のガイドラインに準拠した方法]を用いて実施するものとする」と記載されている。 上記を受けて、次のように改正する。 監査報告書の文例なども改正する。 Ⅲ 適用時期等 2027年1月1日以後開始する事業年度又は会計期間に係る監査から適用する。 ただし、2026年12月31日以後終了する事業年度又は会計期間に係る監査から適用することを妨げない。 適用初年度の取扱いに注意する。 (了)
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《速報解説》 金融庁が監査基準の改訂案を公表~継続企業の前提及び不正に関する監査基準等のあり方を検討~
《速報解説》 金融庁が監査基準の改訂案を公表 ~継続企業の前提及び不正に関する監査基準等のあり方を検討~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026(令和8)年10月16日、企業会計審議会監査部会は、「監査基準の改訂について(公開草案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、継続企業の前提及び不正に関する監査基準等のあり方について検討したものである。 意見募集期間は2026年11月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 継続企業の前提 次のように改正する(アンダーラインが改正箇所)。 Ⅲ 不正対応 我が国の監査基準等において、国際監査基準に先駆けて、改訂された不正に係る国際監査基準で新たに設けられた不正又は不正の疑いが識別された場合の対応等を取り入れていることから、監査基準等の改訂は行わない。 Ⅳ 実施時期等 改訂監査基準は、2028(令和10)年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する。 (了)
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《速報解説》 会計士協会、「デジタル監査証拠に関する研究文書」を公表~スキャナ保存、電子契約からブロックチェーンまで8項目の事例と留意事項~
《速報解説》 会計士協会、「デジタル監査証拠に関する研究文書」を公表 ~スキャナ保存、電子契約からブロックチェーンまで8項目の事例と留意事項 ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年10月7日付で(ホームページ掲載日は2026年10月13日)、日本公認会計士協会は、「デジタル監査証拠に関する研究文書」(テクノロジー委員会研究文書第15号)を公表した。 これは、デジタル化の進む企業の業務には、財務報告に関連する内部統制も含まれることが想定され、財務諸表監査、内部統制監査への影響が併せて想定されることから、デジタル化された監査証拠に関連する具体的な事例等を示すものである。 なお、「電子的監査証拠に係る研究文書」(監査基準報告書500研究文書第1号)は廃止されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 研究文書は、デジタル監査証拠を、「監査人がデジタル情報に対し監査手続を適用した情報」と定義している(Ⅱ、1)。 デジタル情報には、請求書など証憑書類といった物質的な情報をPDFなどのデジタル形式に変換したものから、ワークフローシステム内の情報といった個別の業務・製造プロセスをデジタル化したものが考えられる(Ⅱ、1)。 デジタル情報の特性として、一般的に改竄が容易であることを記載している(Ⅱ、2)。 次の事項について、事例、留意すべき事項、参照すべき基準(実務指針、研究報告等を含む)などについて記載している。 (了)
