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消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第24回】「設備投資をした場合の3割特例の適用関係」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第24回】 「設備投資をした場合の3割特例の適用関係」   税理士 石川 幸恵   【Q】 令和8年10月に個人事業で金属加工業を始めます。インボイス発行事業者の登録も受けます。 税込440万円の中古のレーザー加工機を購入しますので、令和8年分は一般課税により消費税の申告をする予定です。令和9年、10年はどのような申告になるのでしょうか。 【A】 令和9年、10年については、一定の要件を満たせば3割特例の適用を受けることができます。 3割特例とは、令和9年、10年について個人事業者限定で設けられた経過措置です。インボイス制度の導入に伴う2割特例は令和8年9月30日までの日の属する課税期間をもって終了しますが、個人事業者については事務負担に配慮し、さらに2年間、経過措置が続くことになります。 質問者の方は、令和9年については令和8年10月開業であるため、基準期間(令和7年)における課税売上高及び特定期間における課税売上高(令和8年1月~6月)はゼロと考えられますので、3割特例の適用を受けることができます。 令和10年は基準期間(令和8年)の課税売上高が1,000万円以下であり、かつ特定期間(令和9年1月~6月)の課税売上高又は給与等支払額の合計額のいずれかが1,000万円以下であれば、3割特例の適用を受けることができます。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ (1) 3割特例とは 令和8年度税制改正において、3割特例が設けられた。3割特例とは、個人事業者であるインボイス発行事業者の令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間において、免税事業者がインボイス発行事業者となる場合に適用がある。 納付税額の計算において控除する金額を、その課税期間における課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の合計額を控除した残額に、7割を乗じた額とすることができる経過措置である(インボイスQ&A問114-2)。   (2) インボイス発行事業者の登録により課税事業者となった場合 質問者は、インボイス発行事業者の登録を受けたことにより課税事業者となっており、課税事業者選択届出書は提出していない。 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受ける場合には、登録希望日から課税事業者となる経過措置が設けられており、登録にあたって課税事業者選択届出書を提出する必要はない(インボイスQ&A問7)。また、新規開業の場合には、登録申請書に課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載することにより、課税期間の初日に登録を受けたものとみなされる(インボイスQ&A問11)。 この場合には、令和8年分について一般課税により申告し、調整対象固定資産であるレーザー加工機について仕入税額控除の適用を受けても、次の(3)の制限は受けない。   (3) 調整対象固定資産の仕入れ等により3割特例が適用できないケース 調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合には、課税事業者選択届出書の提出の有無によって、3割特例の適用が制限されることがある。質問者がインボイス発行事業者の登録に加えて、令和8年中に開業初年度から適用されるように課税事業者選択届出書を提出し、一般課税により消費税の申告をした場合には、レーザー加工機の仕入れ等の日の属する課税期間の初日(令和8年1月1日)から原則として3年間(令和10年まで)は免税事業者となることはできず、簡易課税の適用を受けることもできない。また、この3年間は3割特例の適用も受けられない(インボイスQ&A問115-2)。   (4) 高額特定資産を購入した場合の3割特例の適用 質問者が中古のレーザー加工機ではなく、税込1,100万円の新品のレーザー加工機を購入した場合、レーザー加工機は高額特定資産に該当する。高額特定資産の仕入れ等を行い、一般課税により申告した場合は、課税事業者選択届出書を提出していなくても令和9年、10年は一般課税により申告することとなり、3割特例の適用を受けることはできない(インボイスQ&A問115-2)。   (5) そのほかに3割特例の適用に影響を及ぼす要因 相続があった場合の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間については、原則として、3割特例の適用を受けることができない。 ただし、相続のあった課税期間については、相続日以前にインボイス発行事業者の登録を受けている場合には、消費税法第10条第1項の規定により納税義務が免除されない場合であっても、相続人自身の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であるなど他の要件を満たせば、3割特例の適用を受けることができる(インボイスQ&A問115-2、28年改正法附則51の3①)。   (了)
#685(掲載号)
#石川 幸恵
2026/09/10
国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第4回】「駐在員事務所がPEに変わるとき」-活動内容の変化から考える課税権の境界線-

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第4回】 「駐在員事務所がPEに変わるとき」 -活動内容の変化から考える課税権の境界線- 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 吉本 壮介 Q 顧問先である日本の機械メーカーは、海外での市場調査のため数年前に海外に駐在員事務所を設置しました。当初は情報収集がメインだったのですが、少しずつ引合いも増え、最近では、現地顧客からの要請を受け、駐在員が機械の点検や簡易なメンテナンスなども行うようになり、徐々に役割が拡大してきております。保守契約の締結、請求、代金回収はすべて日本本社で行っており、支店登記などは今もしておりません。駐在員事務所のままであれば、進出先国で法人税の申告は不要と考えてよいでしょうか。 A 駐在員事務所という形式であっても、法人税の申告が不要になるとは限りません。国際税務では、外国企業が進出先にPE(Permanent Establishment:恒久的施設)を有するかどうかが、その国に事業所得に対する課税権が生じるかを判断する重要な基準となります。当初、市場調査や情報収集などの準備的・補助的な活動にとどまっていたとしても、その後、販売済みの機械の点検、保守、修理など、日本法人の本来の事業の一部を行うようになった場合には、PEに該当する可能性が高まります。重要なのは、駐在員事務所の名称や支店登記の有無だけではなく、今、現地で実際にどのような活動を行っているかが判断のポイントになります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ 1 PEとは何か -事業所得課税の境界線- 【第1回】で解説したとおり、国際税務では、一つの所得に対して複数の国が課税権を主張する場面において一定の調整機能をもちます。 日本法人が海外で事業を行った場合、日本は居住地国としてその法人の全世界所得に課税しようとし、進出先国は、自国内で行われた事業活動から生じた所得に対して、源泉地国として課税しようとする場面が出てきます。 そこで、租税条約では、一般に、企業の事業所得について、進出先国にPEがあり、そのPEに所得が帰属する場合には、進出先国に課税権を認めるという考え方が採られています。いわゆる「PEなくして課税なし」という国際税務の原則です。 ただし、この原則は、企業の事業所得について定めたものであり、配当、利子、使用料などはPEがなくとも租税条約の別の規定により源泉地国課税の対象となることがあります。 よって、PEとは、外国企業が現地でどの程度の活動を行えば、その国に事業所得への課税権を認めるのか、その境界線を定める仕組みと考えると理解しやすいでしょう。   2 駐在員事務所ならPEにならないのか -名称ではなく、実際の活動内容で判断- 駐在員事務所は、海外進出の初期段階において、市場調査、情報収集、広告宣伝、本社との連絡調整などを行うために設置されるものです。 これらの活動が、日本法人が将来的に現地で事業を開始するための、準備的な活動や後方から支援する補助的な活動に留まる限り、租税条約上、PEに該当しないと整理されることが一般的です。 しかし、駐在員事務所という名称を使用していれば、PEにならないということではありません。 設置当初は情報収集のみでも、その後、顧客対応、点検、保守、修理などへと活動範囲が拡大し、日本法人の本来の事業を現地拠点を介して継続的に行うようになれば、税務上の位置付けも変わる可能性があります。   3 PEの主な類型 -法的な分類と実務上の着眼点- PEの具体的な定義は、進出先国の国内法及び日本との租税条約によって異なってきます。 参考として、日本の国内法ではPEは主に次の3つに区分されています(法法2十二の十九、法令4の4)。 これらは、一般的に、事業所PE、建設PE、代理人PEなどと呼ばれたりします。 また、租税条約によっては、企業が使用人等を通じて進出先国で一定期間を超えて役務提供をした場合、サービスPEが生じる旨を定めていることもあります。 実務上、PEリスクを考慮するときには、以下のとおり、3つの視点から確認するとよいでしょう。 【PEリスクを判断する3つのポイント】   4 設例におけるPEの判定 -駐在員事務所の活動の変遷を踏まえて- では、設例を確認してみましょう。 現地には、日本法人が数年間にわたって継続的に使用している駐在員事務所があります。よって、日本法人が継続して利用する一定の活動拠点が存在しています。 そこに駐在員が常駐し、点検やメンテナンスなど、一度限りの偶発的対応ではなく、顧客からの要請に応じて反復して行われるようになっています。 当初の単なる情報収集から活動範囲が拡大し、現在では駐在員が、販売済みの機械について点検やメンテナンスを行っています。 機械メーカーにとって、販売した製品に対する保守やメンテナンスは、単なる情報収集や本社との連絡調整を超え、日本法人の本来の事業を構成する活動の一部と捉えることができることから、進出先国の国内法及び租税条約の内容によりますが、設例の駐在員事務所は、日本法人が保守・メンテナンス業務を行う事業拠点として、事業所PEに該当するリスクが高いものと考えられます。   5 まとめ PEは、事務所の名称や支店登記の有無だけでなく、現地で実際に行っている活動そのものにスポットを当てて判断されます。 当初から活動範囲が拡大している場合、事業活動に該当するか注意が必要です。 また、リスク判定には、「場所」「期間」「人」の3つの要素に着目して、事業活動に該当しないかという視点が求められるものと考えられます。 次回も引き続きPEに関するテーマを取り上げる予定です。 駐在員事務所のPEチェックリスト ☑ 駐在員事務所の現在の活動内容を具体的に把握しているか ☑ 設置当初に予定していた活動から変化はないか ☑ 継続的に利用する事務所や現場などの場所はあるか ☑ 顧客対応はどの範囲で行われているか ☑ 営業、保守、修理などの事業活動を反復継続して行っていないか ☑ 現地で価格や契約条件などの交渉を行っていないか ☑ 駐在員の業務報告書などの記載と実際の業務内容に齟齬はないか ☑ 活動期間などについて、出張記録、作業報告書に照らして問題はないか ☑ 進出先国のPEの定義、租税条約を確認したか ☑ 現地法上、活動内容によって支店登録や営業許可などが必要となっていないか (了)
#685(掲載号)
#吉本 壮介
2026/09/10
会計 四半期(中間) 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

期中会計基準を学ぶ 【第5回】「税金費用の会計処理」

期中会計基準を学ぶ 【第5回】 「税金費用の会計処理」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、税金費用の会計処理について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 税金費用 1 簡便的な取扱い 次のように簡便的な取扱いが規定されている(期中適用指針16項~18項)。 簡便的な取扱い 会計処理 (1) 年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い ① 法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という)については、期中会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づき、原則として年度決算と同様の方法により計算する(期中会計基準 16 項)。 ② 財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額の算出等において、簡便的な方法によることができる (例:納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を、重要なものに限定する方法)。 (2) 繰延税金資産の回収可能性の判断における簡便的な取扱い 経営環境等に著しい変化が生じていない場合における繰延税金資産の回収可能性の判断 重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境の著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができる。 経営環境等に著しい変化が生じた場合における繰延税金資産の回収可能性の判断 重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が生じ、又は、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化又は大幅な変動による影響を加味したものを使用することができる。   2 税引前期中純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する期中特有の会計処理 次のように規定されている(期中適用指針19項)。   3 見積実効税率の算定方法等 次のように規定されている(期中適用指針20項)。   4 重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理 次のように規定されている(期中適用指針22項)。   5 期中連結財務諸表における法人税等の会計処理 次のように規定されている(期中適用指針23項)。   6 期中連結財務諸表における未実現利益消去に係る税効果 次のように規定されている(期中適用指針24項)。 上記のほか、企業結合日に認識された繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の見直し、グループ通算制度を採用した場合における税引前期中純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法の適用の可否が規定されている(期中適用指針21項、25項)。   (了)
#685(掲載号)
#阿部 光成
2026/09/10
会計 税務・会計 解説 解説一覧

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2026年8月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年8月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年8月1日から8月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 ◎ 実務対応報告公開草案第74号(実務対応報告第45号の改正案)「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」等 (内容:第3号電子決済手段に関する会計上の性格について改めて検討を行い、また、第4号電子決済手段の会計上の取扱いについて検討したもの。意見募集期間は2026年10月19日まで)   Ⅲ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正 (内容:「監査事務所編」に関して、運用状況に関する事項を含め、着眼点及び判断基準の新設又は変更を行うなど) ② 「業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正」(公開草案) (内容:2025年3月11日公表の改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」、2025年6月23日公表の「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(経済産業省産業組織課・新たなモデルLPAの作成等のための有識者検討会)に対応するもの。意見募集期間は2026年9月18日まで) (了)
#685(掲載号)
#阿部 光成
2026/09/10
労働基準関係 労務 労務・法務・経営

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第24回】「自殺を仄めかす従業員に対する退職勧奨の留意点」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第24回】 「自殺を仄めかす従業員に対する退職勧奨の留意点」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の従業員で精神障害を発症して休みがちな者がおり、人事担当者が定期的に面談を行っているのですが、最近、当該従業員が働くのがつらい、死んでしまいたい、などと自殺を仄めかすコメントをするようになりました。以前より、人事担当者から、当該従業員の性格からすると当社の社風にはあわないのではないかと聞いていましたので、当社を退職した方が当該従業員のためにも良いのではないかという話になり、当該従業員に退職勧奨をしようということになりました。 退職勧奨を実施するうえで注意すべきポイントがありましたら教えてください。 【Answer】 精神障害のある従業員に対する退職勧奨も直ちに違法となるものではありませんが、本人の自由な意思決定を妨げたり、当該従業員の精神状態をさらに悪化させたりしないよう、特に慎重な対応が必要です。例えば、メンタル不調の従業員(特に自殺を仄めかす従業員)に対する退職勧奨の注意点を産業医その他の専門家に相談したり、当該従業員の家族の協力を得たりしながら進めることが重要です。 また、精神障害やメンタルの状態のみを理由とせず、業務遂行への具体的な影響を確認し、必要な配慮や就業継続の可能性を検討することもポイントになります。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 従業員が精神障害を発症したり、メンタル不調に陥ったりした場合、(業務上の傷病に当たるかは措くとして)、仕事がその一因である場合が多い。そこで、本件のように、当該従業員にとっても仕事から離れたほうが良いのではないかということで、当該従業員に対して退職勧奨が行われることがある。この点、退職勧奨は、基本的に使用者が従業員に自発的な退職を促すものであるから、それ自体が違法というわけではなく、精神障害を発症した従業員に対してもこれを行うことが禁止されるわけではない。 しかし、労働者に対して、不当な心理的圧力を加えたり、名誉感情を不当に害するような言辞を用いることによって、その自由な退職意思の形成を妨げることは許されず、そのようなことがなされた退職勧奨は、違法なものとして不法行為を構成することになるため、注意が必要である。特に、メンタル不調を抱える従業員に対する退職勧奨は、当該従業員の精神状態をより悪化させ、最悪の場合には自殺に追い込んでしまうおそれがあるため、慎重に実施されなければならない。本人が自殺を仄めかす場合はなおさらである。 そこで、以下のとおり、自殺を仄めかす従業員への退職勧奨のポイントを説明する。   2 自殺を仄めかす従業員への退職勧奨のポイント (1) 産業医等の見解を受けたうえで進めること 当該従業員の精神状態に鑑みると、退職勧奨を行うこと自体が大きな精神的負担となり、症状を悪化させるおそれがある。そこで、メンタル不調の従業員(特に自殺を仄めかす従業員)に対する退職勧奨に伴う精神的負荷を軽減する方法等について産業医や精神科医等の専門家に相談のうえ、退職勧奨を実施することが望ましい。 (2) 家族を関与させる場合は原則として本人の同意を得ること 退職勧奨に伴う従業員の精神的ショックを和らげるため、従業員の家族を通じて退職勧奨を実施したり、退職勧奨の面談に従業員の家族を同席させたりすることが考えられる。厚労省・中央労働災害防止協会 労働者の自殺予防マニュアル作成検討委員会「職場における自殺の予防と対応」においても、自殺の予兆が見られる人への対応として、キーパーソン(本人が信頼を置いている人、一般的には家族や友人等)との連携といった対応が望まれるとされている(28~29頁)。 従業員の家族を通じて退職勧奨を行うなどするためには、従業員の精神的な障害やメンタルの状態について、従業員の家族に開示することになるが、従業員がこれらを家族に対して秘密にしていることも多い。従業員の健康情報を本人の同意なく家族に開示する場合、個人情報保護法違反及びプライバシー権の侵害になる可能性があるため、注意が必要である。 まず、個人情報保護法との関係では、個人情報の第三者提供に際しては、法定の例外事由に該当しない限り、本人の同意をあらかじめ得る必要があるが、本件のように、従業員が自殺を仄めかしているような場合には、同法27条1項2号の例外事由(生命・身体・財産保護のため必要で、本人同意を得ることが困難な場合)に該当する可能性が高いのではないかと思われる。現状を放置すれば当該従業員の生命・身体への危険が発生するおそれが十分にあると思われるし、家族への開示の同意を求めた場合、当該従業員が抵抗して更にメンタルの状態が悪化する可能性も否定できないためである。 よって、当該従業員の生命・身体のため必要で、本人同意を得ることが困難な場合に該当し、本人の同意なく当該従業員の現状を家族に開示することができる可能性が高いのではないかと思われる。 また、プライバシー権との関係では、従業員に精神障害が見られる場合、家族に状況を説明して治療を受けさせること自体は正当であると考えられている(豊田通商事件・名古屋地判平成9年7月16日)。 当該従業員の状態に鑑みると、当該従業員が適切な治療を受けられるよう家族に状況を説明することはプライバシー権の侵害に該当しない可能性が高いのではないかと思われる。 もっとも、念のため、産業医等から、自殺を仄めかす従業員を放置すれば、当該従業員の健康が害されるおそれがあるため家族に説明することが望ましいことや、家族への説明につき従業員本人に同意を求めると当該従業員のメンタルがより悪化するおそれがあるといった意見を得ておくことが望ましいと思われる。 (3) 障害のみを理由に退職勧奨を行っていると評価されないよう注意すべきであること 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」は、労働者の心の健康に関する情報を理由として退職勧奨を行ってはならないとしている(同資料10頁)。また、「障害者差別禁止指針(平成27年厚労省告示116号)」は、障害者であることを理由に退職勧奨を行うことは、障害者であることを理由とする差別に該当するとして、障害者雇用促進法35条違反になり得るとの見解を示している(同指針第3.10)。 裁判例においても、会社が、従業員が精神障害等級3級との認定を受け、通院して服薬治療を受けていることのみをもって、その病状の具体的内容・程度は勿論、主治医や産業医等専門家の知見を得るなどして医学的見地からの業務遂行に与える影響の検討を何ら加えることなく、退職勧奨に及んだと認定したうえで、会社に対して従業員への慰謝料の支払いを命じた事案がある(京都地判令和5年3月9日(中倉陸運事件))。 よって、本件従業員のように、精神障害を発症している者に対して退職勧奨を行う際には、上記を踏まえ、メンタルの状態のみを退職勧奨の理由とするのではなく、その業務遂行に与える影響等を検討したうえで実施すべきである。 (了)
#685(掲載号)
#柳田 忍
2026/09/10
労務・法務・経営 法務

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第34回】「申立て書類について理解しよう(その3)」~親族の意見書、申立事情説明書について~

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第34回】 「申立て書類について理解しよう(その3)」 ~親族の意見書、申立事情説明書について~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 前回、前々回の解説で申立てに必要な多くの書類について理解ができましたが、他にはどのような書類があるのでしょうか。 【A】 前回は、本人や候補者の「戸籍謄本・住民票等」や、「本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書」、「親族関係図」について解説をしました。 今回は作成に少し手間が必要になる「親族の意見書」、「申立事情説明書」について解説を行います。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 親族の意見書 家庭裁判所が後見開始の審判等を行うべきか、成年後見人等の候補者が適任であるかを判断する材料にするために、下記のような親族の意見書を親族から取り付け提出します。様々な感情や利害関係が親族間には生じていることがあり、成年後見制度の利用に否定的な親族も存在することがあるため、慎重な対応が求められます。 基本的には住所がわかっている親族からは取り付けを行うことになりますが、親族が提出をしてくれない場合に、しつこく依頼をすることまでは必要ないと思われます。ただし、意見書の提出がされなかった親族については家庭裁判所から直接照会がされる可能性があるため、注意が必要です。電話番号等がわかっている場合には、電話で丁寧に趣旨を説明して協力してもらうことや、電話が難しい場合でもわかりやすい説明文を付けて意見書を郵送するなどの工夫が必要となります。 【親族の意見書】 (※) 裁判所ホームページから転載   2 申立事情説明書 申立事情説明書は、「本人の状況」や「申立ての事情」について記載をする書面です。かなり細かく本人の生活状況や健康状態等について記載をすることになりますが、第32回で解説した「本人情報シート」の情報と重なる部分もあります。主な記載事項としては次のものがあります。 (1) 本人の状況について ① 本人の生活場所 本人の生活の場所(自宅、親族宅または病院等の施設)、同居者の有無、最寄りの交通機関等について記載をします。また、転居の予定の有無等についても記載をします。 ② 本人の略歴 本人の学歴、職歴、結婚や出産等についてわかる範囲で記載をします。本人や親族からヒアリングができない場合には、不明となってしまうこともありますが、本人の歩んできた人生の輪郭を知ることができる貴重な情報源になります。 ③ 本人の病歴について 本人が患っている病名や通院歴等についてわかる範囲で記載をします。 ④ 福祉に関する認定の有無等について 介護認定を受けているかや、障害者手帳や療育手帳を有しているかなどについて記載をします。 ⑤ 本人の日常、社会生活の状況について 本人がいかなる支援が必要であるか等について記載をしますが、「本人情報シート」を提出する場合には記載が省略可能であるとされています。 (2) 申立ての事情について ① 成年後見制度の利用や任意後見契約の締結の有無 本人について成年後見制度を利用したことがあるかや任意後見契約の締結の有無について記載をします。 ② 本人への申立てについての伝達状況 本人に申立てを行うことを伝えているか否かについて記載をします。本人が認知症の悪化により説明をしても理解できない場合もありますが、その場合は理解できない旨を記載することになります。 ③ 本人の推定相続人について 本人の推定相続人の氏名、住所、後見開始制度の利用や成年後見人等の候補者について賛成しているか、反対しているかを以下のように記載することになります。 【推定相続人に関する記載例】 (※) 裁判所ホームページより転載(筆者が一部抜粋) 反対している人や親族の意見書を提出していない人がいる場合には、その人の氏名や理由を下記のような欄に具体的に書くように求められています。 (※) 裁判所ホームページより転載(筆者が一部抜粋) ④ 本人に関して相談をし又は援助を受けた福祉機関 地域包括支援センターや権利擁護センターなど、本人に関する相談や援助を受けた福祉機関がある場合には、該当するものを記載します。 ⑤ 成年後見人等の候補者が成年後見人等としてふさわしい理由 成年後見人等の候補者が成年後見人等としてふさわしい理由を記載します。例えば、日ごろから本人の財産を管理しているなどが理由として挙げられます。 ⑥ 家庭裁判所まで本人が来ることが可能であるか 家庭裁判所まで本人が来ることが可能であるかについて記載をします。健康上の理由で困難であることも多いですが、そのような場合は健康状態について記載をして、家庭裁判所に出向くことが困難であることを説明します。 ⑦ 本人に申立ての事情等をヒアリングする場合の留意点 家庭裁判所が本人から事情をヒアリングする場合の留意点について記載をします。例えば、入居している施設の連絡先や担当者、あるいは意思疎通が難しいなどの理由でヒアリングが困難と思われる場合はその旨を記載することになります。 (了)
#685(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/09/10
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2026年改訂コーポレートガバナンス・コードのポイントと企業実務における対応 【前編】

PwC Japan有限責任監査法人 マネージャー 公認会計士 信田 裕介   本稿の概要 金融庁及び株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)が事務局を務める「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)」における議論を踏まえ、東証は2026年7月21日に有価証券上場規程を一部改正し、コーポレートガバナンス・コード2026年改訂版(以下「CGコード2026」という。)を同日付で施行している(※1、2)。2026年4月10日から5月15日のパブリック・コメント募集期間に、147の個人及び団体からコメントが寄せられ、改訂案の方向性に賛同する意見が多数みられた。CGコード2026は、2015年のCGコード策定後、2018年、2021年に続く3度目の改訂となるが、コードの構造そのものが大幅に再編されている点が、これまでの改訂と異なる。 (※1) 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)の公表について」(2026年7月21日) (※2) 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)」(2026年7月21日) 本稿では、今回の改訂の概要・背景等を前編として整理し、後編において企業実務における対応等を解説する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。 *   *   * 1 はじめに CGコードは、2015年の策定以降、2018年の第1次改訂、2021年の第2次改訂を経て、今般、3度目の改訂に至った。日本のコーポレートガバナンス改革は、2013年の「日本再興戦略」以来、成長戦略の一環として推進されてきたものであり、リスクの回避・抑制や不祥事の防止といった「守りのガバナンス」だけでなく、健全な企業家精神の発揮を促し、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る「攻めのガバナンス」の実現に主眼を置いている。2015年の適用開始から10年を経て一定の進捗がみられた一方、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家双方の取組みにおける改革の「実質化」が重要であるとの指摘がなされてきた。   2 改訂の背景 今回の改訂は、企業が中長期的な価値向上に向けた本質的な取組みに注力できるよう後押しする観点から行われたものである。すなわち、コード策定時のプリンシプルベースの精神に立ち返り、コード自体の「実質化」を狙いとして、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則の内容を抽象的かつ概念的なものに限定し、各原則の実効的な実施を支援する「解釈指針」を新設した。 背景には諸外国の動向もある。英・独等では、コード本体とは別に、拘束力を持たない「ガイダンス」や対応の具体例を示す層を設けることで、開示負担に配慮しつつ実質的な対応を促す例がみられる(※3)。今回新設された「解釈指針」は、日本のコードにこうした層を導入するものと位置づけられる。 (※3) 金融庁「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度第1回) 資料4事務局説明資料(金融庁)」10ページ   3 改訂の趣旨-プリンシプル化・スリム化と「解釈指針」の新設、コード構造の再編 今回の改訂の中核は、プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オア・エクスプレインの手法を採用する本コードの趣旨に立ち返り、上場会社が特に注力すべき点が明確になるよう、従前の補充原則を再整理した点にある。すなわち、従来の補充原則については、①ガバナンスの中核をなす箇所を原則へ格上げし、②具体的な例示や趣旨・背景は新設の「解釈指針」へ移管し、③コード内の他の箇所又は法令等と重複する箇所等は削除する、という方針で整理された。この結果、CGコード2026における規範は「基本原則」と「原則」から構成されるものとされ、従来の補充原則は廃止された。 こうした再整理により、コードの構成は次のとおり変化した。基本原則は、第5章「株主との対話」を第1章「株主の権利・平等性の確保、株主との対話」へ統合したことに伴い、5個から4個へと整理された。原則は、補充原則のうちガバナンスの中核となる箇所を格上げしたうえで、31個から26個へと再構成された。補充原則(47個)は、上記①〜③の方針に沿ってその内容を原則又は解釈指針に譲り、あるいは削除され、区分としては廃止された。あわせて、各原則の趣旨・背景やベストプラクティス・グッドプラクティスを示す「解釈指針」が、全ての基本原則及び一部の原則に付設される形で新設された。 ここで、コンプライ・オア・エクスプレインの対象範囲を確認しておきたい。CGコード2026において同手法の対象となるのは「基本原則」及び「原則」であり、新設された「解釈指針」はその対象に含まれない。この結果、同手法の対象となる原則の数は、コーポレートガバナンス・コード2021年版 (※4)(以下「CGコード2021」という。)の計83個(基本原則5個・原則31個・補充原則47個)から、計30個(基本原則4個・原則26個)へと、形式的には大きく絞り込まれた。もっとも、市場区分ごとの適用対象範囲は改訂前から変わっておらず、プライム市場・スタンダード市場の上場会社は「基本原則」と「原則」が、グロース市場の上場会社は「基本原則のみ」が適用対象となる(〈図表1〉)。なお、原則26個のうち、原則1-2(株主総会における権利行使)、原則4-7(任意の仕組みの活用)、原則4-10(独立社外取締役の数の確保)の3つには、CGコード2021において補充原則として定められていた内容と同様に、引き続きプライム市場上場会社にのみ適用される内容が盛り込まれている(〈図表2〉)。プライム市場上場会社は、この点も踏まえた対応が求められる。 (※4) 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)」(2021年6月11日) あわせて、コードの趣旨・精神を再周知する観点から、本コードの目的やプリンシプルベース・アプローチ、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方を整理した記載が置かれ、原則をコンプライする場合・しない場合のいずれであっても、その取組みを丁寧に説明することが投資家との建設的な対話に資することが明確化された。 〈図表1〉市場区分ごとのコンプライ・オア・エクスプレインの適用範囲 (注) 「〇」はコンプライ・オア・エクスプレインの対象を意味する。また、CGコード2026で新設された解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないが、原則の実施等を検討するにあたり、参照することが期待されている。 (出所) 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2025年7月版)」、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」、東京証券取引所「コーポレートガバナンス報告書の更新について(2026年7月21日更新)」より筆者作成 〈図表2〉CGコード2026におけるプライム市場上場会社向けの原則 原則1-2 株主総会における権利行使 プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とする等、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を行うべきである。 原則4-7 任意の仕組みの活用 プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。 原則4-10 独立社外取締役の数の確保 プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきである。 支配株主を有するプライム市場上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも過半数選任すべきである。 また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。 (出所) 東京証券取引所「コーポレートガバナンス報告書の更新について(2026年7月21日更新)」より筆者作成   4 改訂内容の概要 CGコード2026の趣旨等を記載した「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」を踏まえると、今回の改訂における原則・解釈指針の主な改訂内容として、次の3つが挙げられる。 【後編】では、これらの改訂がコンプライ・オア・エクスプレインの対象範囲に与える影響を整理したうえで、パブリック・コメントの「意見に対する考え方」で示された解釈を手がかりに、企業実務上の対応の要点を解説する。   (【後編】に続く)
#685(掲載号)
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2026/09/10
読み物 連載

PJ Bookmark-September 2026- 「その「食」の一皿、税務ではどう扱いますか?」

B PJ Bookmark ── September 2026 ── ◇ その「食」の一皿、 税務ではどう扱いますか? 暑さがやわらぎ、食べものがいっそうおいしく感じられる季節になりました。 会食や接待の機会も、これから増えてくる頃かもしれません。「食」にまつわる税務は、一見どれも見慣れた論点ばかりです。 ところが、その一つひとつに踏み込んでみると、「継続的な取引関係とはどこまでを指すのか」「椅子が一脚あれば外食なのか」「福利厚生費と交際費を分けるものは何か」といった、決着したようでいて実は揺れ続けている問いが顔を出します。 今回は「食」を切り口に、当たり前の裏側にある論点を分野横断で5本ご紹介します。   〇 一皿の「食」をめぐって、実務ではどこを見ているか   まず取り上げるのは、交際費の判断です。会食費が交際費に当たるかどうか、その支出をどこまで裏付けられれば認められるのか・・・比較的新しい裁判例をもとに、判定の実際をたどるところから始めます →1本目。 税務 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例68】「法人の支出する飲食費等のうち交際費等に該当するものの判断基準」 執筆:拓殖大学商学部教授・税理士 安部和彦 取引先との会食費を交際費として処理する。実務では当たり前のように行われていることですが、いざ税務調査でその一つひとつを問われると、案外もろいものかもしれません。この記事は、代表者名義のクレジットカードで支払った飲食代の交際費該当性が争われた比較的新しい裁判例(東京地裁令和5年5月12日判決)をもとに、支出を4類型に分けて「どこまでが認められ、どこからが認められないのか」を丁寧にたどっています。特に、日時・相手方・場所の裏付けをどこまで求められるのかという点は、日々の記帳指導にもそのまま活きてくるように思います。「継続的な取引関係があり、互いに業務を発注し合う間柄」であれば、多少プライベートな色合いがあっても交際費と認められうる・・・その判断の呼吸をつかむのに、格好の一本ではないでしょうか。 この記事を読む 同じ飲食費でも、社内での飲食となると論点が変わります。ここでは古い裁判例を通じて、福利厚生費との区分がどう判断されたのかを読み解きます →2本目。 税務 理由付記の不備をめぐる事例研究 【第14回】「交際費と福利厚生費」~福利厚生費ではなく交際費等に該当すると判断した理由は?~ 執筆:東洋大学法学部教授 泉 絢也 社内の飲食費が「福利厚生費」なのか「交際費」なのか。一部の役員・従業員が社外のバーや小料理店で飲んだ費用の扱いをめぐって争われた、少し古い裁判例(東京地裁昭和56年4月15日判決)を取り上げた記事です。もっとも、この記事の主眼は費目の区分そのものよりも、更正処分の「理由付記」がどこまで書かれていれば足りるのか、という手続的な論点にあります。福利厚生費と交際費の線引きは総合判断によるほかない難しい問題ですが、だからこそ課税庁がどんな根拠を示せば処分が有効となるのか・・・その骨格を読み解くことは、こちら側が反論を組み立てるうえでも参考になりそうです。「専ら従業員の慰安のため」という除外要件の意味を改めて考えさせられる一本です。 この記事を読む 消費税に目を移せば、「食」は軽減税率という難所と隣り合わせです。持ち帰りと店内飲食の判定をめぐる素朴な疑問を、少し立ち止まって考えてみます →3本目。 税務 山本守之の法人税"一刀両断" 【第58回】「なぜ休憩スペースがあると外食扱いとなるのか」-軽減税率の判定をめぐる疑問- 執筆:税理士 山本守之 軽減税率が導入されて数年が経ち、8%と10%の使い分けもすっかり日常の風景になりました。それでも、「持ち帰りか、店内飲食か」の判定は今なお悩ましい場面が残っているのではないでしょうか。この記事は、スーパーの休憩スペースやイートインをめぐる国税庁Q&Aを引きながら、「椅子やテーブルがあれば外食」という線引きに素朴な疑問を投げかけています。フランスの取扱いとの対比も交えた問題提起は、制度の理屈を改めて考え直すきっかけになりそうです。実務の確認というより、「そもそもなぜこうなっているのか」を立ち止まって味わう読み物として、食欲の秋にふさわしい一本かもしれません。(掲載は2019年で、施行直前の視点である点はご留意ください。) この記事を読む 視点を提供する側に転じると、業種そのものにも固有の論点が見えてきます。ホテル・レストラン業に潜む会計不正のリスクを整理した記事を取り上げます →4本目。 会計 〈業種別〉会計不正の傾向と防止策 【第4回】「ホテルレストラン業」 執筆:公認会計士・税理士 中谷敏久 「食」を提供する側に視点を移すとどうでしょうか。この記事は、宿泊・レストラン・宴会婚礼といった部門を抱えるホテルレストラン業を取り上げ、部門ごとに起こりやすい不正のパターンを整理しています。現金の取扱頻度が高く、高級食材やワインといった換金性のある物品が身近にある・・・こうした業種特有の環境が、どんな不正の温床になりうるのか。滞在未収金やダミービルの悪用、厨房からの食材持ち出し、購買部門でのキックバックなど、具体的な手口と防止策が並びます。飲食業の顧問先をお持ちの方には、内部統制を見直す際のチェックリストとして役立つ場面があるように思います。 この記事を読む 最後は少し肩の力を抜いて、「食」が生み出す経済の大きさと、その裏側にある食品ロスの問題を、経済効果の視点から眺めてみます →5本目。 読み物 プラス思考の経済効果 【第24回】「2024年の恵方巻き等の経済効果と食品ロス」 執筆:関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本勝浩 締めくくりは、少し視野を広げた一本です。節分の恵方巻きが、たった1日で300億円を超える売上を生み出す・・・その経済波及効果を試算しつつ、裏側で生じる食品ロスの金額にも光を当てた記事です。数字の大きさそのものに圧倒されて読んでいて面白いのですが、それ以上に、食を扱う商売の華やかさと、廃棄という現実が背中合わせであることを考えさせられます。税務・会計の話からは少し離れますが、「食」というテーマの奥行きを感じていただける、秋の夜長にちょうどよい読み物ではないでしょうか。 この記事を読む Afterword 今回は「食」を切り口に5本の記事をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。交際費の判断、軽減税率、飲食業の会計、そして食の経済・・・ひとつのテーマでも、分野をまたぐとこれだけ違った顔を見せてくれるのだと、あらためて感じました。 最後にご紹介した宮本勝浩名誉教授の連載「プラス思考の経済効果」は書籍化もされています。様々な社会現象によって生まれる「経済効果」とは、どのようなものであるかという基礎をわかりやすく解説するとともに、経済効果の事例をたくさん紹介しています。秋の夜長の読書の1冊にいかがでしょうか。 Profession Journal (了)
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令和8年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

  令和8年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和8年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
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プロフェッションジャーナル No.684が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年9月3日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.684を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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2026/09/03
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