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会計 税務・会計 解説 解説一覧

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第3回】「温室効果ガスの排出量はどのように算定するの?」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第3回】 「温室効果ガスの排出量はどのように算定するの?」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔PNパッケージ社の登場人物〕 *  *  * 温室効果ガス排出量の算定をする前提として、温室効果ガスによって地球が温まるしくみを知っておきましょう。 地球の表面は太陽からの光によって温められ、温められた地表からは宇宙空間に向かって赤外線が放出されます。 地球の大気には、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが少し含まれています。温室効果ガスは、赤外線を吸収し、再び放出する性質を持ちます。この性質によって、地表から宇宙空間に向かう赤外線の多くが熱として大気に蓄積され、再び地球の表面に戻ってくるのです。この戻ってきた赤外線が、地球の表面付近の大気を温めています。 地球が適温に保たれ、私たちが暮らせるのは、温室効果ガスのほどよい効果によるものです。地球のすぐ内側を回る金星の表面温度は、なんと約460℃(※1)。金星には厚い大気があり、その主成分は二酸化炭素であるため、温室効果が非常に強く働いていると言われています。 (※1) JAXA「あかつき特設サイト/金星の概要」 私たちの活動に伴い排出される温室効果ガスにより、地球でも温暖化が加速しているため、温室効果ガス排出量の削減が求められているのです。 *  *  * *  *  * 企業が温室効果ガス排出量を削減するためには、自社に関連した経済活動から生じる温室効果ガス排出量を算定・把握することが不可欠となります。温室効果ガス排出量を算定するしくみが、「炭素会計(カーボン・アカウンティング)」です。 経理部で扱う財務会計は、経済活動を「金額」という単位で表現するものです。一方、炭素会計は、経済活動によって生じる温室効果ガスを「二酸化炭素の重量」という単位で表現します。 *  *  * *  *  * 温室効果ガスの代表は二酸化炭素(CO2)ですが、ほかにも次のような温室効果ガスがあります(※2)。 (※2) 全国地球温暖化防止活動推進センター「温室効果ガスの特徴」 二酸化炭素と同じように温室効果を持つこれらのガスは、それぞれ温室効果の大きさが異なります。そこで、二酸化炭素に換算して統一的に表す方法がとられます。 二酸化炭素を基準にした場合に、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力を持つかを表す数値を「地球温暖化係数」と呼び、この係数を用いることで二酸化炭素相当量に換算が可能です。そこで、「二酸化炭素換算(CO2 equivalent)」の意味で、単位として「CO2e」「CO2eq」と表記されることもあります。 *  *  * (※3) 環境省「算定・報告・公表制度における算定⽅法・排出係数⼀覧」(2023年12月12日更新)における地球温暖化係数を利用。 *  *  * GHGプロトコルは、温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告のルールを開発し、利用促進を図るイニシアチブです(※4)。開発されたルールそのものもGHGプロトコルと呼ばれています。GHGプロトコルは、温室効果ガス排出量の算定・報告に関する国際的なデファクト・スタンダード(事実上の標準)になっています。 (※4) 1998年にWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議:World Business Council for Sustainable Development)とWRI(世界資源研究所:World Resources Institute)により共同設立。 環境省及び経済産業省は、GHGプロトコル「Scope3基準」等と整合する国内向けのガイドラインを公表しているので(※5)、実際の算定作業の際にはこれを参照するとよいでしょう。 (※5) 環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」 *  *  * *  *  * GHGプロトコルでは、「サプライチェーン排出量」という考え方がとられています。サプライチェーン排出量は、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量です。 *  *  * *  *  * 財務会計は、自社や自社グループの財政状態・経営成績などを適正に表示することを主な目的としています。 一方、温室効果ガス排出量を算定する大局的な目的は、社会全体での排出量を削減することにあります。自社だけの排出量を削減すればそれでよいというわけではないため、ビジネスの流れ全体から発生する排出量を広い範囲で算定するしくみが示されているのです。このしくみによって、排出量の実質的な削減が促されることにつながると考えられます。 サプライチェーン排出量は、排出源などに基づき、「Scope1」・「Scope2」・「Scope3」の3つに区分けされます。 Scope1は、燃料の使用や製品の製造などを通じて、自社が「直接」排出する温室効果ガスを指します。Scope2は、他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、自社が「間接的に」排出する温室効果ガスです。 一方、Scope1・Scope2以外の間接排出は、Scope3に該当します。 *  *  * *  *  * Q 温室効果ガスの排出量はどのように算定するの? A 自社の事業活動に関連して生じる温室効果ガス排出量の算定には、単位として二酸化炭素の重量を用います。 温室効果ガス排出量の算定・報告に関する具体的なしくみとしては、事実上の国際標準であるGHGプロトコルが広く利用されています。温室効果ガスのサプライチェーン排出量は、Scope1・Scope2・Scope3に区分けして算定します。 (了)
#574(掲載号)
#石王丸 香菜子
2024/06/20
労務・法務・経営 法務

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第54回】「対象不動産の確定後に実施する様々な役所調査」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第54回】 「対象不動産の確定後に実施する様々な役所調査」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回は、対象不動産の「確定」と「確認」の意義について述べましたが、今回は、対象不動産を確定した後に不動産鑑定士が実施する様々な役所調査について、その概要を述べていきます。 役所調査は不動産の価格(賃料)を求める上で欠かすことのできないものであり、その主な目的は、行政上の様々な規制(秩序的な街づくりを行うための土地利用規制や建築規制等)が対象不動産の価格(賃料)に与える影響度を把握することにあります。 調査の対象は、対象不動産が都市計画法や建築基準法等の規制をどのように受けるのかという点から始まり、土壌汚染対策法や文化財保護法による規制等まで及びます。それだけでなく、自治体の条例により都市計画法や建築基準法の規制が一部緩和(あるいは強化)されたり、自治体独自の利用規制が設けられたりしているケースもあります。 不動産鑑定士が鑑定評価額を求める前に実施しているこのような調査のイメージは、鑑定評価の依頼者(又は鑑定評価書の読み手)にはなかなか伝わってきません。役所調査は鑑定評価の背後に潜んでいる地道な作業ですが、鑑定評価の基本中の基本であり、すべての原点ともいうべきものです。   2 役所調査の概要 以下、対象不動産の確定に必要な資料(登記事項証明書、公図、建物図面等)の収集は終了しているという前提で解説を進めます。 その後に実施する役所調査ですが、具体的には以下の項目に区分されます。 それぞれのイメージを要約すれば以下のとおりです。   3 市区町村役場での土地利用規制に係る調査 (1) 都市計画区域、用途地域等 最初に、対象不動産が都市計画区域内にあるか(都市部の土地はほとんどがこの区域内にあります)、都市計画区域内にある場合には市街化区域内か(都市部にあればその多くはこの区域内にあります)、市街化調整区域内か、そのどちらにも属さない区域(いわゆる非線引都市計画区域)内にあるかを確認します。 次に、対象不動産が市街化区域内に所在する場合、その場所がどのような用途地域に指定されているかを確認します(例えば、その場所が第1種低層住居専用地域に指定されていれば、そこで建築が認められる建物は戸建住宅が主体となります。また、第1種中高層住居専用地域に指定されていれば中高層の共同住宅(マンション)が主体となります)。 用途地域にはこれらのほか、第2種低層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域があり(全部で13種類)、街づくりの観点から用途地域ごとに建築可能な建物の用途が規制されています。 このほかにも、特別用途地区、高度地区、高度利用地区、地区計画等の指定の有無も調査しますが、詳細は割愛させていただきます。 (2) 建蔽率、容積率 建蔽ぺい率とは、建築物の建築面積(大まかには1階部分の床面積)の敷地面積に対する割合を指し、容積率とは建築物の延べ面積(各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合を指します。 これらの割合は都市計画において用途地域ごとに指定されており、特に第1種中高層住居専用地域のようにマンションが多く立ち並ぶ地域や商業地域等では、容積率のいかんは建築可能な床面積の大小に影響を及ぼし、結果として土地価格の水準にも影響を及ぼすため、特に重要となります。 それだけでなく、前面道路の幅員のいかんにより、実際に使用可能な容積率の方が都市計画で指定された容積率よりも少なくなるケースがあるため、(後掲のとおり)道路に関する調査も不可欠とされてきます(道路幅員と容積率の関係は【第27回】で詳細な解説を行っているため割愛させていただきます)。 (3) 防火地域又は準防火地域の指定の有無 これらは都市計画で指定されますが、指定されている場合には建築基準法の規定により、(階数や規模等により)建築物の構造を耐火建築物等の延焼防止の性能を有するものとしなければならない等の制限が課されます。 (4) その他 対象地の用途(利用状況)に応じて、農地法や森林法による規制、自然公園法による規制、土地区画整理法による規制、いわゆる土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域(土砂災害特別警戒区域)の指定の有無、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づく急傾斜地崩壊危険区域の指定の有無、河川法による規制、港湾法による規制、宅地造成及び特定盛土等規制法等も調査対象となってきます。 また、都道府県(政令指定都市)ごとに定められている建築安全条例や宅地開発指導要綱等の確認も必要となります。   4 対象不動産が接している道路の幅員や性格に関する調査 都市計画区域内の建築物の敷地は道路(原則:幅員4m以上)に2m以上接していなければならないとされ、この場合の道路とは建築基準法における一定の要件を満たすことが必要となります(その詳細も【第27回】で述べたため、ここでは割愛させていただきます)。   5 対象地が土壌汚染対策法に基づく区域指定を受けているか否かの調査 土壌汚染対策法に基づいて指定される区域には、「要措置区域」と「形質変更時要届出区域」とがあり、不動産鑑定士は都道府県の環境関係の窓口で指定の有無を確認しています。 なお、「要措置区域」とは、土壌汚染調査の結果、(ア)当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合せず、(イ)人の健康に係る被害が生じる等のおそれがある土地を対象として指定されるものです(この区域では土地の形質変更が禁止されます)。 また、「形質変更時要届出区域」は、上記(ア)に該当するが、(イ)には該当しない土地を対象として指定されます(この区域では、土地の形質変更に当たっては事前に(=14日前までに)都道府県知事に届出が必要となります)。   6 対象地が埋蔵文化財包蔵地の指定を受けているか否かの調査 文化財保護法では、埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を「周知の埋蔵文化財包蔵地」と呼んでいますが、対象地がこれに指定されており、そこで土木工事等を行う場合、事前に(=60日前までに)文化庁長官に発掘届を提出しなければならないこととされています。そして、土地所有者(開発事業者)から発掘届が提出された場合、試掘や確認調査が行われますが、その結果、地中に遺構や遺物ありと判定されれば教育委員会との間で埋蔵文化財の保存についての協議が行われることとなります。 これらをはじめ、埋蔵文化財包蔵地の指定を受けている土地については利用上の制約を受けるケースがあるため、その指定の有無は欠かせない調査事項です。   7 その他 以上述べた項目のほかに、対象建物内にPCB(=ポリ塩化ビフェニル)廃棄物が保管されているか否かの調査も都道府県の環境関係の窓口にて行っています。 PCB廃棄物を保管する事業者は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(略称:PCB特別措置法)に基づき、その保管状況について都道府県知事に届出が必要とされており、都道府県の窓口では届出がなされているものについて台帳を作成していることから、不動産鑑定士はこれを閲覧の上、確認を行っています。   8 まとめ 冒頭に述べたように、不動産鑑定士が相応の時間を費やして事前に役所調査を行っているということは依頼者の目に届かないものです。しかし、この段階で誤りがあった場合、それが鑑定評価額の誤りに直結する危険性が大きく潜んでいるため、調査には細心の注意を払っていることはいうまでもありません。 (了)
#574(掲載号)
#黒沢 泰
2024/06/20
労務・法務・経営 法務

《税理士のための》登記情報分析術 【第13回】「登記事項等に関する改正」~法人識別事項の登記事項化~

《税理士のための》 登記情報分析術 【第13回】 「登記事項等に関する改正」 ~法人識別事項の登記事項化~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   本連載【第12回】でも解説をしたが、いわゆる所有者不明土地問題や空き家問題に対応するために行われた民法等の一部改正により、不動産登記法等も改正され、令和6年4月1日から新しい登記事項が加わるなどの改正が行われた。今回は改正内容のうち、「法人識別事項の登記事項化」について解説を行う。   1 法人識別事項の登記事項化の意義 法人が所有権を取得する登記等を行う場合に、以下の「法人識別事項」が登記事項とされた(不動産登記法73条の2)。 ※なお、所有権の登記名義人が、国や地方公共団体又は相続財産法人である場合には、法人識別事項の登記を要しないものとされている。 所有者不明土地問題や空き家問題に対応するためには、問題となっている土地や建物の所有者に対して連絡が取れる状態にすることが必要である。 会社法人等番号が登記されていれば、商号が同一あるいは類似している法人が多数存在する場合でも、所有者である会社等を特定することができる。また、会社法人等番号を有しない外国法人等であっても、設立準拠法国や設立根拠法が分かれば、詳しく調査を行ったり、対応に必要となる手続について手がかりを掴んだりできるようになるなどの効果がある。 【会社法人等番号が登記された場合の登記記録例】 【設立準拠法国が登記された場合の登記記録例】 【設立根拠法が登記された場合の登記記録例】   2 法人識別事項の申出制度 令和6年4月1日以降に所有権を取得する登記や、商号や本店の所在場所の変更登記をする法人については、会社法人等番号等の法人識別事項を登記することとされている。 令和6年4月1日時点において、すでに不動産の所有権を取得している法人については、別途「法人識別事項の申出」制度が設けられており、法務局に対して法人識別事項の申出を行うことができる。申出にあたって登録免許税は非課税となる。 令和8年4月1日以降、会社法人等番号を持つ法人については、所有する不動産の登記記録に会社法人等番号が記録されていれば、会社の商号や本店の所在場所の変更登記を行った場合、登記官が職権で所有する不動産の商号や本店の所在場所の変更登記を行ってくれることも想定されており、申出を行うメリットがあるといえる。 (了)
#574(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/06/20
読み物 連載

《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第13回】「どんなとき役立つ? 生命保険の2つの役割」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第13回】 「どんなとき役立つ? 生命保険の2つの役割」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   〇保険に加入する意味 生命保険文化センターの2022年度「生活保障に関する調査」によると、日本人の約8割は生命保険に加入しているということです。この8割という数字は30歳代以降ずっと変わらず、70歳代以降においても、男性で72.5%、女性で78.8%と高い数字が維持されています。 よく日本人は保険好きと言われますが、そもそも保険とはなんのために加入するのでしょうか。おそらく多くの方は、口をそろえて「リスクに備えるためだよ」とおっしゃるでしょう。しかし、保険で備えるべきリスクとは、一体なんなのでしょうか。 保険会社のCMなどでは、「今は2人に1人ががんになる時代」といった言葉を聞くことがあります。「だから、がん保険で備えましょう」ということですが、保険に加入したからといって、がんにならないというわけではありません。「保険はお守り」などと言う方もいますが、保険で健康は守られません。 では、保険は実際にはどのような場面で役に立つのでしょうか。生命保険には、主に2つの役割があります。   〇経済的損失をカバーできる 生命保険の1つ目の役割は、経済的な損失をカバーすることです。例えば、がんの治療のために、しばらく会社を休職するとしましょう。多くの場合給与の支払いはなくなりますが、その代わり健康保険から傷病手当金が給付されます。金額は給与の3分の2で、最長1年半働けない期間をサポートします。 傷病手当金はありがたい制度ですが、それでも収入は減少します。そのうえで、医療費は高額療養費制度によって自己負担上限額があるとはいえ、一定額までの支払いが発生します。 つまり、病気になっても家族にはできるだけ普段通りの生活をさせてあげたいと思えば、収入の減額と支出の増額における経済的な損失を、保険で合理的にカバーする必要があります。これが保険の役割です。 「年を取ると病気になるリスクが高まりますよね」といって高齢者に保険を勧めるというのも、実は保険の役割から考えると合理的ではありません。なぜなら、年金生活者が病気になっても年金額は減額されませんし、医療費の自己負担割合も低いですから、支出が大幅に増えることもありません。つまり、経済的損失が小さいので、保険の必要性は低いのです。 経済的損失で考えると、子どもが小さい時に家計を支える親が亡くなるリスクはとても大きいと言えます。したがって、生命保険は万が一の時に遺族が安心して暮らせるように、大きな保険金額で契約するのが一般的です。 一方、子どもが成人し経済的に支える必要がなくなった場合、もはや生命保険の役割は終わったと言えるので、生命保険を解約する方も多いです。   〇相続対策に活用できる 生命保険の2つ目の役割は、相続対策です。生命保険を活用すれば、相続税を圧縮することや、指定した人に確実に財産を渡すことができます。 相続税には基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)がありますが、生命保険金については、基礎控除とは別に、一定額が非課税とされています。生命保険金の非課税限度額は、「500万円 × 法定相続人の数」という計算式で求めます。 生命保険金の非課税枠をうまく活用することで、相続税の負担を軽減することができます。以下の具体例で確認してみましょう。 〈相続税のかかる財産が1億円で、法定相続人が3人のケース〉 (※) 分かりやすくするため、数値を単純化しています。 当然ながら、課税対象が5,200万円になるのか、3,700万になるのかの違いは大きく、相続対策として保険は有効であることがご理解いただけると思います。 また、生命保険の保険金は、予め受取人を指定することができますから、被保険者死亡時には、その指定受取人に保険金が支払われます。これは受取人の固有の財産となりますので、スムーズにお金を渡せるというメリットがあります。 *  *  * 保険は身近な金融商品であり、経済的損失をカバーするという機能においては非常に優れた仕組みです。しかし、身近な存在だからこそ、その役割を理解せず、なんでもかんでも保険で対処しようという風潮があるのは否めません。ぜひ正しい知識を身に付け、保険を効果的に活用しましょう。 (了)
#574(掲載号)
#山中 伸枝
2024/06/20
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《速報解説》 「グループ監査における特別な考慮事項」の公表に伴い、会計士協会が「監査ツール(実務ガイダンス)」を見直す改正

《速報解説》 「グループ監査における特別な考慮事項」の公表に伴い、 会計士協会が「監査ツール(実務ガイダンス)」を見直す改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年6月13日付けで(ホームページ掲載日は2024年6月17日)、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正」を公表した。 これにより、2024年3月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 これは、監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 「《3.グループ監査における特別な考慮事項》」について、監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」を受けた記載に改正されている。 次の様式についても大きく変更されている。 (了)
#阿部 光成
2024/06/18
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《速報解説》 金融庁、「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表~GM課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いを受けて規定~

《速報解説》 金融庁、「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表 ~GM課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いを受けて規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年6月14日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたものである。 意見募集期間は2024年7月16日までである。   Ⅱ 主な改正内容 財務諸表等規則について次のように改正する(連結財務諸表規則も基本的に同様に改正する)。 財務諸表等規則ガイドライン及び連結財務諸表規則ガイドラインも改正する。   Ⅲ 施行日等 公布の日から施行する予定である(経過措置に注意)。 (了)
#阿部 光成
2024/06/18
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《速報解説》 国税庁、令和6年分の予定納税減額申請書に関し、定額減税の追加のみを理由とする申請書の簡易的な記載方法を示す

 《速報解説》 国税庁、令和6年分の予定納税減額申請書に関し、 定額減税の追加のみを理由とする申請書の簡易的な記載方法を示す   Profession Journal 編集部   国税庁は6月11日に「令和6年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」及び「令和6年分所得税の予定納税における定額減税の取扱いについて」を公表した。 予定納税の対象となる事業所得者や不動産所得者等の個人事業主(予定納税基準額15万円以上)は、既報のとおり定額減税によって、令和6年分の予定納税額は、第1期分から本人分の定額減税の控除額(3万円)が差し引かれる。 また、同一生計配偶者や扶養親族1人につき3万円の定額減税の控除額を予定納税額から差し引く場合は、所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続を行う必要がある(令和6年分の合計所得金額の見積額が1,805万円以下の居住者に限る)。 この際、定額減税の追加のみを理由とする減額申請については、簡易的な記載が認められており、今回公表された国税庁リーフレット「令和6年分所得税の予定納税における定額減税の取扱いについて」では、簡易的な記載方法とした減額申請書の記載例が下記のとおり示されている。 (※) 国税庁ホームページ「令和6年分所得税の予定納税における定額減税の取扱いについて」から抜粋 なお、7月の減額申請については、基準日を令和6年6月30日とし、申請書の提出期間は同年7月1日(月)から7月31日(水)まで、11月の減額申請については、基準日を令和6年10月31日とし、申請書の提出期間は同年11月1日(金)から11月15日(金)とされている。 (了)
#Profession Journal 編集部
2024/06/17
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《速報解説》 令和6年能登半島地震に係る国税の申告・納付等の延長期限は一部地域を除き、令和6年7月31日

 《速報解説》 令和6年能登半島地震に係る国税の申告・納付等の延長期限は 一部地域を除き、令和6年7月31日   Profession Journal編集部   既報のとおり、国税庁は、令和6年能登半島地震の発生を受け、石川県及び富山県に納税地のある個人・法人を対象とした令和6年1月1日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を延長する措置を公表していた。 具体的な延長期限については被災者の状況に十分配慮しつつ検討するとしていたところ、本日付の官報(令和6年6月14日(本紙第1243号))にて次に掲げる地域(指定地域のうち石川県七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋郡志賀町、鳳珠郡穴水町及び鳳珠郡能登町を除いた地域)に納税地がある個人・法人については、令和6年7月31日を期限とする旨が告示された。 ただし、令和6年能登半島地震の影響により期日までに申告・納付等ができない場合には、所轄税務署長に申請して承認を受けることにより、引き続き期限延長措置を受けることは可能とされ、また、申告は可能であっても、令和6年能登半島地震により財産に相当な損失を受けた場合や、国税を一時に納付することが困難な場合、所轄税務署長に申請することにより、原則として1年以内の範囲で、納税の猶予を受けることができるとされている。 なお、上記のとおり今回対象とならなかった地域(石川県七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋郡志賀町、鳳珠郡穴水町又は鳳珠郡能登町)に納税地がある個人・法人の申告・納付等の延長期限は、今後、被災者の状況にも十分配慮して検討するとしている。 (了)
#Profession Journal 編集部
2024/06/14
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.573が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年6月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.573を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2024/06/13
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第132回】「消費税法上の実質行為者課税の原則(その5)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第132回】 「消費税法上の実質行為者課税の原則(その5)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦     Ⅳ 所得課税法における実質課税の原則との径庭(承前) 4 本件判決(承前) これまで見てきたとおり、所得税法や法人税法における実質所得者課税の原則の建付けは、原則を法律的帰属説により捉え、例外的に、信託税制を経済的帰属説によって説明するという構図であった。 これらの法律において、所得税法12条と13条、法人税法11条と12条は、いずれも「第4章 所得の帰属に関する通則」と位置付けられているのである。 そして、所得税法12条及び法人税法11条が法律的帰属説を採用し、所得税法13条及び法人税法12条がその例外として経済的帰属説を採用する関係にあると解されてきた。 これに対して、消費税法はどのような整理であろうか。消費税法13条と14条は何らかの同一の章として括られているわけではないのである。所得税法や法人税法が「所得の帰属に関する通則」と位置付けていたのとは異なる整理といえよう。 このことからも、消費税法13条と同法14条を同じ実質行為者課税の原則と一括りにすること自体に躊躇を覚えるところであり、同法13条が実質的な譲渡等を行う行為者を認定する規定であるのに対して、同法14条は実質的に譲渡等を行う行為者の規定ではなく、単なる「みなし規定」であると整理すべきであるように思われるのである。すなわち、実質行為者の規定としての消費税法13条は自己完結的な規定であるというべきではなかろうか。 そして、そのことは一般的な法律の適用における実質性重視の考え方と幾分も異なるところがないのであるから、法律的帰属説における創設規定説を採用する余地はないというべきであろう。したがって、本件判決は、確認規定説に立ちながらも、消費税法13条の要件を重視する考え方を採用しているとみるべきであると思われるところ、確認規定説においてはダイレクトに文理解釈を重視するべきという結論は当然の事理ではないと思われるのである。   Ⅴ 問屋と相手方との間の法律効果 本件判決は、「問屋と相手方との間の売買契約に係る経済的利益は問屋ではなく委託者に帰属するものであり、XがA場において行っている牛枝肉取引においても、Xがこれにより得る経済的利益はXが委託者(出荷者)から収受する委託手数料(卸売金額の100分の3.5)であって、当該売買契約に係る売買代金のうち、かかる委託手数料や諸費用等を控除した金額(せり売等に係る価格に数量を乗じて得た額の合計額に100分の105を乗じて得た額から委託手数料及び委託者の負担となる費用の額を控除した金額)は、売買仕切金として、Xから委託者(出荷者)に支払われる」とし、「このことからすれば、A場においてXが問屋として行う牛枝肉取引による牛枝肉の譲渡に係る対価を享受するのはXではなく委託者(出荷者)であるといえそうであるが、・・・資産の譲渡等を行った者の実質判定はその法的実質によるべきものであるところ、・・・牛枝肉取引の法的実質として、法律上資産(牛枝肉)の譲渡等を行ったとみられる者すなわち問屋であるXが、単なる名義人にすぎず、当該資産(牛枝肉)の譲渡等を行ったものではないということはできないものと解するのが相当である。」とする。 実質的に名義人であるか否かということが重要なのではなく、Xと委託者のいずれが法律的な意味での経済的利益の享受者かということを明らかにすることが求められるのではなかろうか。 ここでは、経済的利益の享受者を判定するに当たって、法律的に経済的利益を享受する権利を有する者が誰かという点に関心を置く必要があるのではなかろうか。 けだし、経済的帰属説とは経済的利益を享受した人が誰であるのかという現実的な観点から実質的な行為者を観察するのに対して、法律的帰属説とは、経済的利益を享受する権利を有する人が誰であるのかというあるべき姿を模索する観点から実質的な行為者を観察する規定であるからである。 そもそも、消費税法13条は確認的規定であるのであるから、同条が「法律上の名義人」という表現を採用しているからといって、そこにいう「名義人」という概念に縛られる必要などないのではなかろうか。ことさらに「名義人」該当性を論じる意味はなく、実質的に経済的利益を享受する権利を有する者を法律的に眺めればよいはずである。 本件判決が示すとおり、問屋は、問屋自身が権利義務の主体となって、経済的利益を他人に帰属させて物品の販売又は買入を行うことを業とするものであって、当該物品の販売ないし買入という売買契約に係る問屋と相手方との関係(外部関係)は、問屋が当該売買契約の当事者、すなわち権利義務の主体となるものであり、一方、問屋と委託者との関係(内部関係)は、委託関係となる。 そして、問屋と相手方(外部の取引先)との間の売買契約に係る経済的利益は、法的にみれば、問屋ではなく委託者に帰属すると解されるのではなかろうか。 すなわち、別言すれば、法律効果の帰属を考えると、売買契約などの外部関係における法律効果はそのまま委託者に帰属するとする立論もあり得るのではなかろうか。 もっとも、委託者と受託者である問屋との委託契約内容の本旨から離れた行為をした場合の当該法律効果は委託者には及ばないことも事実であるから、本件事案における法律効果が権限踰越等のために委託者に帰属しないものであるという例外的な場合を除けば委託者の譲渡行為とみるべきであったようにも思われるのである。 (了)
#573(掲載号)
#酒井 克彦
2024/06/13

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