件すべての結果を表示
労務・法務・経営
経営
『デジタルフォレンジックス』を使った企業不正の発見事例 【第2回】「情報漏洩調査に使われるデジタルフォレンジックス」
『デジタルフォレンジックス』を使った 企業不正の発見事例 【第2回】 「情報漏洩調査に使われるデジタルフォレンジックス」 PwCアドバイザリー合同会社 シニアマネージャー 池田 雄一 1 はじめに 第2回では「情報漏洩調査に使われるデジタルフォレンジックス」ということで、情報漏洩調査にデジタルフォレンジックスがどのように使われるのか、事例を交えながら紹介していく。 単に情報漏洩といっても漏洩のタイプは幾つにも分かれている。一般的には、誤操作、管理ミス、紛失や置き忘れによって発生する事故としての情報漏洩がインシデントの大半を占めているといわれている。一方で、企業にとってダメージの大きい第三者による盗難、会社関係者による不正な持ち出し、不正アクセスなどの意図的に引き起こされた情報漏洩については、上記の事故として発生している漏洩事案と比較すると少ないといわれている。 2015年に不正競争防止法が改正され「営業秘密の保護強化」が組み込まれたことで、企業の抱える情報資産の保護を積極的に行うことが可能となった。言い換えれば、営業秘密の意図的な漏洩者に対して企業側が断固とした措置を講じることが可能となった。改正前は、不正競争防止法を適用するための条件が限定的であり、かつそれを立証することも極めて困難だった。しかし改正後は、米国、英国などを含む欧米諸国が既に導入しているように、「内部者による営業秘密の不正な入手行為自体に対しても刑事罰をもって対処」することが可能となった。 本稿では、外部からのサイバー攻撃などの不正アクセスやマルウェアなどによる漏洩ではなく、従業員を含む会社関係者(内部者)による情報の不正な持ち出しに対して実施するデジタルフォレンジック調査に焦点を当てる。 先の連載における【第6回】「デジタルフォレンジックスの現場」~調査編①~ でも紹介したが、情報漏洩調査に用いられるアプローチは「理系的アプローチ」であり、特に「コンピュータフォレンジックス」の手法を用いた調査が行われる。 2 情報漏洩の起こる背景 具体的な調査について解説する前に、情報漏洩調査が起こる背景について触れておきたい。 筆者が現在までにデジタルフォレンジック調査を行った不正な情報の持ち出しによる情報漏洩事案において、情報漏洩の背景と関わった内部者の動機は大きく2つに分かれる。 (1) 勤務先に対する怨恨による情報の意図的漏洩 従業員を含む内部者による意図的な情報漏洩の背景には、勤務先への不満が関係していることが少なからず見られる。人間関係のもつれ、セクハラ、パワハラ、他社との合併などにより閑職に追いやられるなどの理由から勤務先に対する不満を募らせ、金銭目的で情報を漏洩するのではなく、「勤務先に対する仕返し」としてダメージを与える目的で情報の漏洩を行うものである。 この類の情報漏洩においては必ずしも営業秘密が漏洩の対象となるわけではなく、多くの場合、表には出ない社内の内部事情がインターネットの掲示板に書き込まれたり、雑誌などのメディア媒体に持ち込まれる。情報の真偽はともかく、インターネットへの掲載もしくは雑誌の記事にされることで不特定多数の人の目に触れ、企業イメージが傷つくなどの風評被害を受けることになる。 また、営業秘密である大量な技術情報を含むメディア媒体を競合先に送付した極端な漏洩ケースも過去にあったが、あまりにも大胆な行為だったためメディア媒体を受領した競合先からの連絡で発覚し調査へと発展した。 (2) 転職時における営業秘密の不正な持ち出し 内部者による意図的な情報の持ち出しで最も多いのが、転職時における営業秘密の持ち出しと言われている。 会社として不正な情報の持ち出しを検知できるような対策を取っていない限り、どの程度の情報が持ち出されているかを把握できる術もなく、会社側はこれを知らずに見過ごしている危機的な状況にあると考えられる。 最近では、USBメモリなどの外部記録媒体の使用をシステム的に制限していたり、添付ファイルのついた電子メールをチェックする仕組みを設けている会社が増加しているのも事実ではあるが、印刷物の持ち出しについてチェック機能を設けている会社は極めて少ない。統計的にも、足がつきにくい紙媒体による営業秘密の持ち出しが最も多いと言われている。 具体的には、営業担当が転職先に顧客リストを持ち出すことや、エンジニアが自ら開発に関わった設計情報などを含む技術情報を持ち出すことも典型例である。産業スパイ行為に対するデジタルフォレンジック調査については別の回に取り上げるが、外国企業による日本人エンジニアの引き抜きにおいては、営業秘密の不正な持ち出しが行われた例が数多くみられる。 3 情報漏洩に対するデジタルフォレンジック調査 情報漏洩に対するデジタルフォレンジック調査は、「電子ファイルを伴う営業秘密の不正な持ち出し」と、「電子ファイルを伴わない情報の漏洩」の2つの視点から解説する。 (1) 電子ファイルを伴う営業秘密の不正な持ち出し 営業秘密の不正の持ち出しがあったことを企業側で検知できるのは、従業員のコンピュータ上のアクティビティを監視可能なシステムを導入している場合か、退職の意思を示した従業員のコンピュータを積極的に調査した場合に限られる。 競合先が自社の製品に酷似した製品を販売し始めたことが判明した段階では、既に技術情報が漏洩しており、漏洩に使用されたコンピュータも処分済みで、調査自体が不可能な場合がほとんどである。 漏洩者がほぼ特定されていると仮定した場合、コンピュータから営業秘密の不正な持ち出しが行われた際の調査においてまず着目するのは、漏洩経路(下記を参照)を考えることである。会社の導入しているセキュリティ対策によっては漏洩経路がある程度絞られるが、セキュリティ対策が施されていないネットワーク環境やコンピュータを使用している場合、あらゆる可能性を探る必要がある。 筆者が今までに行った営業秘密の不正な持ち出しに関するデジタルフォレンジック調査では、大量なデータが記録できる外部記録装置が使用されていることが多く見られた。外部記録装置を使用した情報の持ち出しの場合、データのコピーが行われた明らかな記録がコンピュータ上に残ると思われがちであるが、そのような情報を残すためのセキュリティシステムを入れていない限り、どのようなデータが、いつ、どの媒体にコピーされたかという情報は残らない。 しかしながら、コンピュータ上に残る外部記録装置が接続された日時、大量のファイルが一度にコピーまたは消去された際に書き換えらえる最終アクセス日時、外部記録装置に保存されているファイルにアクセスした際に生成されるファイルパスなどの断片的な情報を組み合わせることで、データの持ち出しの可能性の確認を行う。 接続された外部記録装置が会社承認のものではなく個人所有のものであれば、情報の不正持ち出しの疑いがかかった対象者に対して外部記録装置の提出を求めるとともに、場合によっては自宅のコンピュータの提出も求めることもある。 本人の同意なしには不可能な調査ではあるが、これによって営業秘密の不正な持ち出しとその利用を防ぎ、持ち出しを行った従業員に対して法的アクションを取ることを可能とする。 (2) 電子ファイルを伴わない情報の漏洩 内部情報のインターネットへの書き込みやメディアへのリークに関してもデジタルフォレンジック調査を行うことは可能であるが、漏洩者の特定ができる可能性は高くはない。 まず、漏洩を行った可能性のある従業員を「プロファイリング」により絞り込む。「プロファイリング」は、漏洩された特定情報にアクセス可能な従業員のリスト、漏洩の動機に繋がるような人事的状況に置かれている従業員、問題行動の多い従業員などの条件に当てはめることで、調査対象者の絞り込みを行う。ある程度、調査対象とする従業員を絞り込んだ段階でデジタルフォレンジック調査実施の判断を行う。 インターネット掲示板に内部情報の書き込みを行うのに使用したコンピュータが会社支給のものであれば、特定のウェブサイトへのアクセス履歴などを調査することで証拠をつかむことは比較的容易である。しかし、個人のスマートフォンが使用されている場合には、デジタルフォレンジック調査を行ったとしても決定的な証拠をつかむことのできる可能性は極めて低い。 また、メディアなどへの漏洩については、特に情報を受領する側のメディアも非常に慎重なことから、足がつかない口頭による情報の伝達である場合が多く、デジタルフォレンジック調査までに至る可能性は上記と同様に低い。 上記のような電子ファイルを伴わない情報漏洩調査において、デジタルフォレンジック調査が効果を発揮するのは、漏洩者が会社支給のコンピュータを使用して漏洩行為を行うなどの「ミス」を特定することである。 4 終わりに 内部情報の漏洩による風評被害であれば時間の経過と共にリカバリーも可能であるが、従業員による営業秘密の不正な持ち出しによって競合先に技術情報が漏洩し、これを使用された場合の金銭的被害は計り知れないものである。 このような状況を防ぐためにも、企業としてセキュリティシステムまたは監視システムなどの導入により従業員のコンピュータ上のアクティビティを監視できる状況にしておくことが望ましいが、高額なシステムを導入しなくとも、営業秘密にアクセスが可能なポジションに就いていた従業員の退職時にデジタルフォレンジック調査を行って、営業秘密の不正な持ち出しの有無を確認するプロセスを導入することにより、漏洩を水際で阻止することも可能となる。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
監査
税務・会計
財務諸表監査
速報解説一覧
《速報解説》 「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」が確定~特別目的の監査の枠組みによる見直し~
《速報解説》 「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」が確定 ~特別目的の監査の枠組みによる見直し~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月25日、日本公認会計士協会は次のものを公表した。 これにより、平成27年12月25日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 また、これらの公表に際して、「「業種別委員会実務指針『年金基金に対する監査に関する実務指針』」(公開草案)及び「業種別委員会研究報告第10 号『年金基金に対する監査に関する研究報告』の改正について」(公開草案)に対するコメントの概要及び対応について」が公表されている。 今回の改正等は、平成26年2月における監査基準の改訂などに対応して、特別目的の監査の枠組みに照らして、見直したものである。 上記①及び②は、「年金基金に対する監査に関する研究報告」(業種別委員会研究報告第10号)のうち、監査上の留意事項に当たるものを基礎として実務指針を策定し、当該実務指針に含まれない年金基金の制度及び業務に関する事項については、監査実施上、年金基金及び基金環境の理解に資するものであるため、その記載内容を見直し研究報告を改正している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針 1 適用範囲 企業の退職給付制度のうち、企業から独立した法人として年金資産の管理運用を行う「厚生年金基金」及び「企業年金基金」(以下「年金基金」という)の財務諸表に対する監査を対象としている(1項)。 2 適用される財務報告の枠組みの受入可能性 このため、理事者が適用する財務報告の枠組みに基づいて作成された財務諸表に対して監査を実施する場合の詳細な対応が記載されている(23項~25項)。 例えば、監査人は、年金基金の財務諸表の監査業務の契約条件の合意内容として、理事者が適用する財務報告の枠組みについて、代議員会等、財務諸表の特定の利用者の判断を誤らせないようにするため、財務諸表に追加的な開示を行うことについて理事が合意しない場合には、監査契約を締結できないことが述べられている(23項(1))。 3 年金基金の財務諸表に対する監査実施上の留意事項 年金基金の財務諸表に対する監査実施上の留意事項として、次の事項が記載されている。 4 適用時期等 平成28年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用する。 Ⅲ 年金基金の財務諸表に対する監査に関する研究報告 研究報告は、日本公認会計士協会の会員の実務の参考に資することを目的として、年金基金の制度(決算及び監査の制度を含む)及び業務に関する事項について取りまとめたものである(3項)。 研究報告は、独立した法人格がある「厚生年金基金」と「確定給付企業年金(基金型)」を対象として、解説している(8項)。 付録として次のものが示されている。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
税効果会計
税務・会計
財務会計
速報解説一覧
《速報解説》 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が改正~早期適用した企業に関する翌年度の比較情報の取扱いを明記~
《速報解説》 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が改正 ~早期適用した企業に関する翌年度の比較情報の取扱いを明記~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月28日、企業会計基準委員会は「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)を改正し、公表した。 適用指針第26号は、平成27年12月28日に公表されたばかりであるが、公表後、早期適用した企業に関する翌年度の比較情報の取扱いについて問い合わせがあったとのことである。 そこで、適用指針の公表時に企業会計基準委員会が意図していたことを確認するものであるので、公開草案の手続を経ずに適用指針第26号を改正するとのことである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 【改正前】 49項(2)については、平成28年2月24日に開催された企業会計基準委員会で次の2つの解釈があることについて審議されていた。 そこで、当該比較情報については、会計方針の変更として取り扱われる49項(3)①から③に該当する定めに限って、当該年度の期首に遡って適用することを、適用指針の公表時に当委員会は意図していたとのことから(124-2項)、次のように適用指針が改正された(アンダーライン部分が改正点)。 【改正後】 Ⅲ 適用時期等 平成28年に改正された本適用指針の適用時期は、平成27年12月に公表された適用指針と同様である(49-2項)。 (了) ↓関連記事↓
お知らせ
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 平成28年度税制改正法案が3月29日に参議院にて可決、成立~税効果会計の適用税率に関する31日公開予定記事を緊急公開~
《速報解説》 平成28年度税制改正法案が3月29日に参議院にて可決、成立 ~税効果会計の適用税率に関する31日公開予定記事を緊急公開~ Profession Journal編集部 平成28年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法等の一部を改正する等の法律案)(以下、改正税法)は衆議院での可決を経て参議院における審議が行われていたが、このたび3月29日付けで参議院本会議にて自民・公明両党などの賛成多数により可決、成立した。改正税法の施行日は原則4月1日とされており(附則第1条)、各政省令と合わせて3月31日に公布される見込み。 消費税率引上げの判断については現在政府の国際金融経済分析会合等で検討が行われているが、改正税法上では複数税率導入を含む平成29年4月1日からの10%引上げが規定されている。 平成28年度税制改正の主要な改正事項については〔こちら〕より、昨年末より公開した各速報解説を参照されたい。 (了)
会計
税効果会計
税務・会計
解説
解説一覧
財務会計
「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」を踏まえた平成28年度税制改正への対応 【第2回】「税制改正法案の成立を受けた設例解説」
「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」を踏まえた 平成28年度税制改正への対応 【第2回】 「税制改正法案の成立を受けた設例解説」 公認会計士・税理士 八代醍 和也 Ⅰ はじめに 本連載では前回、平成28年3月14日に企業会計基準委員会が公表した「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号、以下「本適用指針」という)について、従前の取扱いからの変更点(公布日基準から成立日基準への変更)を中心に解説した。 今回、平成28年3月29日に平成28年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法等の一部を改正する等の法律案)(以下、「改正税法」という)が参議院で可決、国会で成立したことを受け、本適用指針のさらなる理解に資するよう、その実際の取扱いについて、設例を用いた解説を行う。 なお、文中の意見に関する部分は、筆者の私見であることを申し添える。 Ⅱ 改正税法における税率の改正点 まずは、改正税法における税率の改正点について確認する。 【表1】 法人税の税率の改正 【表2】 法人事業税の税率の改正(平成28年4月1日以後開始事業年度より適用) (※1) 所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率であり、当該税率の制限税率が標準税率の2倍(改正前:1.2倍)に引き上げられている。 (※2) 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。 (※3) この法人事業税の税率の改正に伴い、負担変動を緩和するための所要の軽減措置が設けられている。 【表3】 地方法人特別税の税率の改正(平成28年4月1日以後開始事業年度より適用) 【表4】 法人住民税法人税割の税率の改正(平成29年4月1日以後開始事業年度より適用) 【表5】 地方法人税の税率の改正(平成29年4月1日以後開始事業年度より適用) Ⅲ 設例による法定実効税率の算定 ここまで解説してきた内容を踏まえて、以下、代表的な3つのケースにおける法定実効税率の算定方法について、設例を用いて解説したい。 なおここで、住民税等の取扱いについてまとめた前回掲載の表を再掲しておく。 ※再掲図※ 住民税等の取扱い(3月末決算会社を想定) (※1) 標準税率又は超過税率による税率 (※2) 改正地方税法に規定された税率 (※3) 改正地方税法の標準税率に、改正前の条例の超過課税の税率が改正前地方税法の標準税率を超える差分を調整 〈設例1〉 標準税率のケース (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は標準税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表6】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (2) 法定実効税率の算定 上記税率に基づいて、以下の計算式により、各事業年度の法定実効税率を計算する。 計算結果は以下の通り。 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈設例2〉 超過課税の税率によるケース(その1) 改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立している場合 (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は超過課税の税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表7】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (2) 法定実効税率の算定 上記税率に基づいて、前述の計算式により、各事業年度の法定実効税率を計算すると、以下のようになる。 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈設例3〉 超過課税の税率によるケース(その2) 改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合 (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は超過税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 改正地方税法等は成立済みで、平成28年4月1日以後開始事業年度の事業税(所得割)の標準税率は改正済みである。 ④ 平成28年4月1日以後開始事業年度の超過課税による税率を定めた改正条例は決算日(平成28年3月31日)で未成立。 ⑤ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表8】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 改正地方税法等に規定されている。 (※3) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (※4) 改正地方税法等を受けた改正条例が決算日(平成28年3月31日)において成立していないため未定。 (2) 法定実効税率の算定 ① 平成28年4月1日以後開始事業年度における事業税(所得割)の超過課税の税率の算定 会社所在地の地方公共団体において事業税(所得割)について超過課税による税率が採用されており、かつ、決算日において改正地方税法等が成立し、これを受けた改正条例が成立していない場合の、税効果会計の適用にあたっての事業税(所得割)の税率の算定方法について、本適用指針はその第8項において次の2つの方法を例示している。 (※) 上記の結果として得られた税率が、改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は、当該制限税率とする。 【表8】を前提として超過課税の税率を算定すると、以下のようになる。 〈選択肢①〉の方法による場合:0.7%+(3.4%-3.1%)=1.0% 〈選択肢②〉の方法による場合:0.7%×(3.4%÷3.1%)=0.8% ② 法定実効税率の算定 【表8】及び①の結果に基づき法定実効税率を計算すると、以下のようになる。 〈選択肢①〉の方法による場合 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈選択肢②〉の方法による場合 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 (連載了)
お知らせ
法人税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 複数年度にまたがる工事に係る補助金の経理処理及び圧縮記帳の取扱いについて、東京国税局が文書回答事例を公表
《速報解説》 複数年度にまたがる工事に係る補助金の 経理処理及び圧縮記帳の取扱いについて 東京国税局が文書回答事例を公表 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 東京国税局が平成28年3月3日付で回答を行った事前照会が、同月18日に国税庁HPにおいて公開された。 照会した当事者は、鉄道事業を営む法人であり、複数年度にまたがって鉄道工事を行うとともに補助金を受け取る場合の、経理処理及び圧縮記帳の取扱いについて、事前照会を行ったものである。 この事前照会に対して、回答者である東京国税局審理課長は、「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」との回答を示した。 照会内容は以下のとおりである。 1 事案の概要 照会当事者は、独立行政法人A機構及びB市から補助金の交付を受けて、鉄道駅等の改良工事事業を予定している。 補助金の特徴としては、次の4点が挙げられる。 しかし、このような場合における国庫補助金等や固定資産の税務上の取扱いについては明文上明らかではないことから、事前照会に至ったものである。 【図:工事の進捗報告と補助金交付の流れ】 2 経理処理 こうした補助金事業について、照会当事者の質問の趣旨は以下のとおりである。 そのうえで、具体的な経理処理として、次のように説明している。 (1) 補助金受領時 (2) 工事代金支払時 (3) 期末建設仮勘定振替時 (4) 固定資産取得時(本件工事完了後) 3 理由 照会当事者は、上記2のような経理処理の理由を次のように説明している。 ここで、法人税法の規定を確認しておくと、第42条では、国庫補助金の交付を受けた事業年度において資産を取得し、その返還を要しないことが確定した場合の圧縮記帳の定めであり、一方、第43条では、その事業年度の終了の日までに、国庫補助金の返還を要しないことが確定しない場合の圧縮記帳の定めであることから、「国庫補助金などの交付を受けた事業年度に資産の取得ができず」、かつ、「国庫補助金等の返還を要しないことが確定している」照会当事者にとっては、明文上、規定が明らかではない、ということである。 とはいえ、国庫補助金等の圧縮記帳の制度の趣旨からすれば、こうした複数年度にわたり補助金を受け取り、その後、引渡しを受けた資産の取得に際して圧縮記帳を行うことを妨げるものでないことは、照会当事者の理由のとおりであろう。 そして、照会当事者は、以下のように結論づけ、事前照会を受けた東京国税局審理課長もこれを是認した。 4 他の事案への適用可能性 本件事前照会は、鉄道事業者に係る国庫補助金等に対するものであるが、同様に複数の事業年度にわたり工事・整備が行われることが予定されている事業についても、同様の考え方が適用できるものと思料する。 複数年度にまたがる工事等を受注した法人が、単年度の予算に縛られる国や地方公共団体等から、工事等の進捗に応じて補助金・助成金を取得した場合における経理処理、課税関係を明らかにした事前照会に対する回答であり、実務において参考となるのではないだろうか。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
税効果会計
税務・会計
財務会計
速報解説一覧
《速報解説》 「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」等が改正~「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」及び「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」に対応~
《速報解説》 「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」等が改正 ~「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」及び 「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」に対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月25日、日本公認会計士協会は次の実務指針等の改正を公表した。 これは、企業会計基準委員会から公表された「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「回収可能性適用指針」という)及び「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号。以下「税率適用指針」という)に対応するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである(「結論の背景」及び「設例」も改正)。 Ⅲ 適用時期等 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
制度会計
税務・会計
財務会計
速報解説一覧
《速報解説》 金融庁より「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期版)」及び「有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降)」が公表~退職給付及びセグメント情報等に関する『適切ではない事例』を紹介~
《速報解説》 金融庁より「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期版)」及び「有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降)」が公表 ~退職給付及びセグメント情報等に関する『適切ではない事例』を紹介~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月25日、金融庁は次のものを公表した。 平成28年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たっては、これらに記載されている事項に特に注意し、適切に作成する必要があると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期以降)」では以下の事項が述べられており、有価証券報告書の作成に際して注意が必要である。 1 新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意事項 平成28年3月期に新たに適用となる開示制度のうち、主なものは「企業結合に関する会計基準」等の公表を踏まえた連結財務諸表規則等の改正である(平成26 年3月28日公布)。 2 平成27年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項 現在、実施中である平成27年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査及び情報等活用審査)に関して、現在までに把握された事象を踏まえた留意すべき点として、次の事項を述べている(「別紙2」参照)。 平成27年3月期以降の重点テーマは、以下のとおりである。 ここでは、「審査結果」において確認された事例について、「適切ではない事例」として紹介する。また、「別紙2」では「留意すべき事項」として具体的な財務諸表等規則などの根拠規定が紹介されているので、実際に有価証券報告書を作成する際にお読みいただきたい。 Ⅲ 有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降) 平成28年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューについては、次の内容で実施するとのことである。 1 法令改正関係審査 平成25年9月に公表された「企業結合に関する会計基準」等を踏まえて改正された連結財務諸表規則等に基づき適切な記載がなされているかどうかについて審査する。 「調査票」が添付されており、有価証券報告書の提出日後、所管の財務局等に提出することになる。 2 重点テーマ審査 重点テーマ審査は、特定の重点テーマに着目して審査対象となる会社を抽出し、当該会社に対して所管の財務局等が個別の質問事項を送付し、回答を受けることで(ヒアリングを行うこともある)、より深度ある審査を実施するものである。 平成28年3月期以降の重点テーマは、以下のとおりである。 3 情報等活用審査 上記の重点テーマに該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して、所管の財務局等から、個別の質問事項が送付されることがある。 「平成27年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査及び情報等活用審査)を踏まえた留意すべき事項」(別紙2)では、財務局等からの質問状には、次の観点も反映していると述べられており、本3月期の有価証券報告書の作成に際しても、下記の観点を十分に考慮し、開示の要否を判断すべきものと解される。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
監査
税務・会計
速報解説一覧
《速報解説》 「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上」が公表~大手監査法人を中心とした検査に対する問題意識と今後の対応をとりまとめ~
《速報解説》 「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上」が公表 ~大手監査法人を中心とした検査に対する問題意識と今後の対応をとりまとめ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月24日、公認会計士・監査審査会は「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上~大規模監査法人を中心に~」を公表した。 これは、上場大企業において不正会計事案が発生するなどしていることから、検査の実効性の一層の向上を図ることを目的として、これまでの検査内容及び手法等について検討したものである。 「資料」として「審査会検査実施状況調査会議 調査結果報告について」があり、新日本有限責任監査法人に対して実施した検査(平成23事務年度と平成25事務年度の検査)の適切性について述べられている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 大手監査法人に対する検査 1 大手監査法人の監査状況 新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた監査法人で、①全上場会社の73%を監査し、②上場時価総額全体の92%を占めている(平成27年4月末時点)。 「平成27年度監査事務所等モニタリング基本計画」における大手監査法人に対する検査では、次の事項を検査することとなっている。 2 今後の対応 公認会計士・監査審査会の今後の対応として、次のことが述べられている。 (了)
