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税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第19回】「税務で「ゼロ評価」される土地に鑑定ではなぜ価値がつくのか」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第19回】 「税務で「ゼロ評価」される土地に鑑定ではなぜ価値がつくのか」   不動産鑑定士 黒沢 泰     1 はじめに~賃借権と使用借権の相違 税理士の皆様は十分にご承知のことと思いますが、最初にこの2つの権利の根本的な相違を述べておきます。 使用借権とは、使用貸借契約(無償)に基づき他人の物を使用収益することのできる権利です(民法第593条、下線は筆者によります)。 次に、賃貸借とは、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生じます(民法第601条)。 このように、賃貸借と使用貸借の基本的な相違は、使用収益の対価が有償か無償かという点にあります。このような性格から派生し、使用借権の場合、建物所有を目的とする契約であっても借地借家法の適用がなく、しかも存続期間は借主一代限りのものであって(=借主の死亡によって消滅します)相続の対象ともならず、譲渡性も認められていません。この他にも、いくつもの相違点があります。   2 相続税の財産評価では 税理士の皆様はお得意の分野だと思いますが、相続税の財産評価では使用借権の価額は評価しないものとして扱われていることは周知のことと思います(国税庁ホームページ掲載の「質疑応答事例(宅地の評価単位-使用貸借)」のなかにこの趣旨が記載されています)。 また、以下は個別通達「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年11月1日付直資2-189)の一部を抜粋したものです。ここにおいても使用借権の価額は評価しない旨述べられています(下線は筆者によります)。 税務においてこのような取扱いがなされるのは、使用借権が(親子・親族間のような)相互の信頼と恩恵を基に成立し、他人には譲渡できず、契約期間が満了しても法定更新の制度はなく、借主の死亡により効力を失うといった脆弱な権利であることによるものと推察されます。税務に携わる方々からすれば、このような考え方はきわめて合理的であり、一理あるといえるでしょう。   3 判例や鑑定評価では 税務において合理的な内容でも、税務を離れた日常生活や争いごとの生ずる世界では、その常識がそのまま通用しなくなることがあります。それは、例えば次の例をみても明らかなことです。 (1) 最高裁平成6年10月11日判決(集民第173号133頁) 本件事案は、土地を使用貸借で借りた人がその上に建物を建築し、これを他の人に賃貸していたところ、借家人の失火により建物が消失したケースです。建物の賃貸人は、借家人に対して建物本体の価格に相当する額だけでなく、使用借権の価値に相当する額(=土地使用に係る経済的利益に相当する額)を請求したところ、借家人がこれを受け容れなかったことから争いとなりました。 最高裁は建物の賃貸人の主張を認め、賃貸人は借家人に対し、当該建物の焼失による損害として、焼失時の建物の本体の価格と土地使用に係る経済的利益に相当する額とを請求することができる旨判示しています。 なお、当該判決の背景にある考え方は次の判決文(原文のまま)にも垣間見られます。 なお、当該判決では、借地権割合の3分の1にほぼ近い割合(更地価格の5%)をもって使用借権の価値を認定しています。 (2) 鑑定評価では 鑑定評価においても、次の理由により使用借権にもある程度の価値を認めていることが多いといえます。 〈使用借権に価値を認める理由〉 その際の参考指針として、公共用地の取得に伴う損失補償基準(いわゆる用対連基準)の考え方がしばしば引き合いに出されます。この基準では、使用借権の割合は借地権割合の3分の1程度を標準とするものとされています。 また、現実面に目を向けた場合、使用貸借契約により建物所有を目的として土地を貸し渡した貸主が、契約期間内に売却や自己使用等の必要により明渡しを求める場合、使用借権の消滅のため、金銭の授受を行っている例が多いといえます(その意味で、補償的な側面も有しています)。 以上の点を考慮すれば、使用借権といえどもある程度の経済的な価値を認めざるを得ないのが実情です。   4 まとめ 使用借権においても、借主は定められた期限が到来するまで使用貸借の目的物を無償で使用収益できるという経済的利益が存します。鑑定評価ではこれを根拠に経済的価値を認めて評価しているのが一般的です。税務の見方と鑑定評価の見方の相違がこのような面にも表れていることに留意が必要と思われます。 (了)

#No. 428(掲載号)
#黒沢 泰
2021/07/15

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第19回】「地面師事件とコンプライアンス体制の充実(下)」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第19回】 「地面師事件とコンプライアンス体制の充実(下)」   弁護士 原 正雄   前回に続き、地面師事件においてコンプライアンスの観点から参考となる論点をピックアップし、解説を行う。 1 専門家からの助言 (1) 司法書士からの助言 本件不動産の売買契約の成立から数日後、東京マンション事業部は、司法書士からメールで本件不動産について仮登記手続が完了した旨の報告を受けた。同メールには「提出書類に不備はないことを法務局が判断したことになるが、形式的審査の結果にすぎないので、本人性を疑う場合にはより踏み込んだ調査をする必要がある」旨が記載されていた。 (2) 内容証明郵便 2017年5月、S社に、本件不動産の所有者X氏の名義で4通の内容証明郵便が届いた。「自身(X氏)は長期間入院中で面会謝絶であって売買契約には立ち会えず、売買契約は締結していない。仮登記の申請に用いられた印鑑は偽造である。よって、本件不動産の仮登記の抹消を求める」旨の内容であった。X氏の住所としては、空き家である本件不動産の住所が記載されているだけで、連絡先は不明であった。これらはX氏の弟が出状した書面であった。 内容証明郵便は、法務部からマンション事業本部と東京マンション事業部に共有されたが、不動産部には共有されなかった。 (3) 弁護士からの助言 上記を受けて、法務部は東京マンション事業部に「騙されている可能性がある」と指摘した。東京マンション事業部は、本人確認済みと回答しつつ、本人確認を改めて行うことを検討した。 東京マンション事業部は、弁護士から「X氏の昔からの知人などへの写真による本人確認や、建物の内覧を実施すべき。また、以下の資料を集めるべき」旨の助言を受けた。 (4) 司法書士からの再度の助言 上記4通の内容証明郵便うち3通は、本件不動産に仮登記を設定した司法書士にも送付されていた。 同司法書士は、内容証明郵便が自ら宛に送付されたことに驚いた。登記を申請したのが誰かを知ることができるのは、原則として所有者本人に限られるためであった。同司法書士は、真の所有者が内容証明郵便の作成に関与している可能性があると考えた。そこで、東京マンション事業部の営業次長に、「X氏に会って事実確認した方がよい」と助言した。 (5) マンション事業本部と東京マンション事業部の対応 しかし、マンション事業本部と東京マンション事業部は、内容証明郵便を本件不動産取引の妨害を目的とする嫌がらせと整理してしまった。仮登記を申請した司法書士が誰かを知っていたのは、X氏の身近な人物が内容証明郵便の発信人であることが理由と考えた。そのうえで、詳細な本人確認はX氏からの不興を買うおそれがあるとして、弁護士からの助言に基づく本人確認は実施しないと決めてしまった。 (6) 社長からの指示と、それに基づく協議 社長は、上記についてマンション事業本部長から電話で報告を受け、「法務部長によく相談して対応するように」と指示をした。 社長は、そのうえで法務部長に電話をし「本部長から連絡がいく」旨を伝え、あわせて「顧問弁護士ともよく相談し、問題のないよう進めるように」と指示をした。 2017年5月22日、マンション事業本部と東京マンション事業部が法務部長と協議した。マンション事業本部長は、内容証明郵便等について「今回の契約を快く思っていない人物が取引を妨害する目的で行っているのであろう」との見解を示した。 なお、この時点までに弁護士からの上記(3)の助言や司法書士からの上記(4)の助言が法務部にも共有されていたのかについては、定かではない。 (7) 支払期日の前倒し そうした中、マンション事業本部と東京マンション事業部は、本件不動産の決済日を約2ヶ月前倒しして6月1日に変更することを決定した。取引の妨害行為に対抗することが目的であった。この決定は、法務部の同意を得たうえで、不動産部に説明がなされた。決済日を前倒しすることは、H氏と偽X側にも伝えられた。 マンション事業本部長は、海外出張中の社長に、ブローカーの相関図を記した書面を送付した。そのうえで、5月30日、帰国直後の社長の車に同乗し、「不動産部、法務部、弁護士と協議した結果、妨害行為を排除するため、残代金の決済を6月1日に前倒しする方針である」と説明した。あわせて、弁護士や法務部も了解していると伝えた。 社長は、法務部長に電話し、決済日の前倒しに問題はないか問い合わせた。これに対して法務部長は「問題ない」と回答した。 (8) 評価 ① マンション事業本部と東京マンション事業部の対応について 本件では、弁護士と司法書士から、極めて的確な助言がなされている。こうした専門家からの助言が関係各部署に適切に共有され、そのうえで関係各部署が集まって会議を開催していれば、本人確認をより徹底すべきとの意見が出ていた可能性も十分に考えられる。 そのうえで上記弁護士の助言に基づく本人確認を実施していれば、Xが偽物であることに気づいた可能性もゼロではない。現に、S社は、売買代金を騙し取られた後、本件不動産の近隣住民らに偽Xの写真を見せて「写真の人物はX氏本人ではない」との回答を得ている。 ただ、本件ではそうした会議は開催されていない。法務部長との協議が一度実施されただけである。その協議でも、X氏の本人性が大きく問題になった形跡はない。 そうである以上、当時の状況においてはマンション事業本部と東京マンション事業部の判断そのものはやむを得なかったとも解し得る。内容証明が単なる嫌がらせであるとの考えも、十分に成り立ち得たからである。本件不動産を購入しようとする競合も多数存在する状況で、妨害行為を避けるために支払期日を前倒しするという判断も、全く理解できないわけではない。 ② 社長の対応について では、この時点での社長の対応は問題になり得るだろうか。 この点、社長は関係各部署を集めての会議の開催までの指示はしていないものの、マンション事業本部長に対して、法務部長との協議を指示している。また、法務部長にも連絡し、マンション事業本部長との協議を指示している。両者は、社長の指示通り協議を行っている。また、決済日の前倒しについても、社長が自ら法務部長に連絡し、問題がない旨の回答を得ている。 よって、この時点の社長の対応に問題があったとまでは言い難い。   2 残代金49億819万3,309円の支払い (1) 直前の本人確認 2017年5月19日、本件不動産の内覧が実施された。内覧において偽Xが建物の間取りを間違えれば本人性に重大な疑義が生じるという意味で、重要な機会であった。しかし、偽Xは現地に現れず、代わりに弁護士が来ただけであった。同弁護士は、玄関ではなく勝手口のカギを開けて、建物内部を案内した。 2017年5月23日、偽Xら地面師グループ、H氏らと、マンション事業本部長、東京マンション事業部の営業次長らが面談した。その際、マンション事業本部長は、偽Xに対して、内容証明郵便について質問をした。偽Xは「内容証明郵便等は自分が作成したものではない」と説明し、その旨の確約書に署名押印をした。 2017年5月31日、偽Xら地面師グループ、H氏らと、マンション事業本部長、東京マンション事業部の営業次長ら、司法書士による最終の打合せが行われた。この打合せで、パスポート、国民健康保険被保険者証、印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票、除籍謄本、納税証明書3通、固定資産評価証明書などの確認がなされた。パスポートについては、紫外線ブラックライトを照射して隠しロゴや隠し写真などを確認する調査も実施されたが、問題は発見されなかった。 この際、偽Xは、本件不動産の権利証を持参しなかった。内縁の夫と喧嘩をしていて権利証を取りに行けない、との説明であった。そのため、偽X側の弁護士が作成する本人確認情報で登記申請を行うということになった。本人確認情報を作成する際、偽Xが自身の誕生日を忘れたと言ってパスポートを確認したり、干支を間違えたりするなど、本人性に疑義を持つべき事情が見られた。しかし、こうした情報が問題視されることはなかった。 (2) 所有権移転登記申請の受付と、残代金の支払い 2017年6月1日、S社の会議室に、偽Xら地面師グループ、H氏らと、マンション事業本部長、東京マンション事業部の営業次長らが、残代金の決済のために集まった。 その際、本件不動産で待機していた東京マンション事業部の担当者から「建物の中に電気がついており、また、建物の勝手口に釘止めが打たれている」との電話があった。さらにその後に「通報があったため、警察への任意同行を求められている」との電話があった。 しかし、マンション事業本部長、東京マンション事業部の営業次長らは「通報は本件取引への妨害行為の一環であろう」との結論になり、残代金の決済手続を続行した。 その後、法務局に行っていた司法書士から「所有権移転登記申請が受け付けられた」との報告がなされた。S社は、H氏に49億819万3,309円を8通の預金小切手で支払った。H氏はそのうち6通(44億5,790万1,309円分)を偽Xに渡した。 (3) 登記申請の却下 その後、法務局は、本件不動産の所有権移転登記申請を却下した。X氏の親族が不正登記防止申出をしていたために慎重な審査を実施し、国民健康保険被保険者証の写しが偽造であると把握したため、とのことであった。 S社は、偽Xら地面師グループに連絡を取ろうとしたが、もはや連絡はつかなかった。 (4) 評価 内容証明郵便など様々な情報が飛び交っている状況では、一度立ち止まって慎重に判断するのが本来であった。にもかかわらず、内覧の際の本人確認ができなかったことを問題視せずに進んでしまった。また、偽Xが誕生日や干支を正しく言えないなどの事情もあった。さらに、50億円近い金額を銀行振込ではなく預金小切手で支払うのも不自然であった。その他、多くの不審な事情があった。こうしたことを考えると、少なくとも事後的に見る限り、なぜ支払いまで突き進んでしまったのかという疑問も生じる。 ただ、S社の担当者は、偽Xら地面師グループに完全に騙されていた。最終の本人確認でも最低限行うべき事柄は実施されており、軽率に過ぎるという批判は当たらない。この状況に至っては、詐欺に気づかなかったのもやむを得ないと考える。   3 本事件の全体についての評価 (1) 本件の原因 ① 関係各部署の対応 本件不動産は、東京都心近くの優良物件であるにもかかわらず、長年にわたって売りに出されることがなかったため、不動産業者の間で有名な物件であった。筆者も五反田に行った際、駅からすぐなのに森のような場所が現れ、今時こんな物件が残っているのかと驚いたことを覚えている。そのため、本事件を報道で初めて知ったときは、「怪しいと思うのが当然なのに、なぜ騙されてしまったのだろう」という印象を持った。 ただ、その後、様々な報道に接し、また、「総括検証報告書」を読んでみると、S社を騙した地面師グループが極めて巧妙であったことが分かった。S社の担当者のみならず、司法書士や法務局など関係者がことごとく騙されている。少なくとも各場面で見る限り、S社の担当者が騙されてしまったことはやむを得なかった。本件不動産は取引成立に強い意欲を燃やして当然の優良物件であった。所有者X氏の機嫌を損ねるような本人確認は余程のことがない限りできないと考えたのも、一応理解できる。 そうだとすると、次に問題になるのが「これは余程のことである」との意見が法務部や不動産部から出なかったことである。しかし、法務部や不動産部は本件取引の全体像について正しい情報を伝えられていない。そうした中で、断片的情報のみを根拠に取引にストップをかけることは難しい。各場面で見る限り、法務部や不動産部の対応もやむを得ないものであったと言わざるを得ない。 ② 仕組みの不存在 結局、本件で一番問題になるのは、取引の検討が始まった時点で、法務部や不動産部も集まって会議を開催することをせず、その後も関係各部署で情報が共有されて意見を述べる機会を与えるという仕組みが作られていなかったことである。 「総括検証報告書」は、再発防止策として、決裁プロセスにおける情報の共有と、経営会議制度の創設について述べている。同報告書も、関係各部署による会議が開催されていなかったことや情報共有が不十分であったことが本件の原因の1つであったと考えていたことが分かる。 (2) 本件の責任 関係各部署による会議が開催されていなかったことや情報共有が不十分であったことが原因だとすると、これは各部署の責任ではなく各部署の上に立って会社全体を統括する社長の責任とも解し得る。本件において「総括検証報告書」に先立って作成された社外役員らによる調査報告書が社長の責任を指摘したのは、その趣旨と解する。 ただ、S社においては、本件に限らず以前から、法務部や不動産部など関係各部署が集まって会議を開催し、その後も情報共有を徹底して意見交換し合うということは行われてこなかったようである。大変厳しく評価すれば、S社においては、本件以前からコンプライアンス体制が十分ではなかったとも言い得る。 そうだとすると、これは本件当時の社長に限らず、歴代の社長や取締役会にわたる問題である。「総括検証報告書」が、本件の責任を当時の社長のみに問うのは妥当ではなく、過去からの経営者共通の問題であると指摘したのは、その趣旨と解する。 結局、本件は、歴代の取締役会が十分なコンプライアンス体制を構築してこなかった中で、当時の社長がそのことを前提に行動した結果、業務執行において失敗をしてしまった事例と解する。その意味で、社外役員らが作成した調査報告書にも、「総括検証報告書」にも、相応の説得力があると解する。 (3) コンプライアンス体制の充実の重要性 仮に歴代の取締役会が十分なコンプライアンス体制を整えていても、本件の被害は防げなかったかもしれない。本件での地面師らの手法は、それほどまでに精巧であった。 しかしそれでも、十分なコンプライアンス体制が整えられており、それに従って当時の社長が意思決定をしていれば、たとえ被害が生じようとも、社長としては注意義務を尽くしたと評価できた。そうであれば、本件の被害を理由とする社長に対する代表訴訟は避けられた可能性があった。また、代表訴訟は避けられずとも、同訴訟での社長の反論はより容易になったはずである。 コンプライアンス体制の充実は、ともすれば自由な経営を縛るもので、売上の増大の妨げになると誤解されることがある。しかし、実際には、会社のためを思って果敢な決断をした取締役が結果責任を問われないようにするため、必要不可欠な仕組みである。コンプライアンス体制の充実に欠ける点があったために代表訴訟にまで発展してしまった本件は、その事実を如実に示している。 コンプライアンス体制が充実していればこそ、取締役は果敢な決断をすることができ、会社を発展させることができる。取締役が失敗を恐れず果敢な決断をし、会社をより発展させていくためにも、さらなるコンプライアンス体制の充実が必要である。 (了)

#No. 428(掲載号)
#原 正雄
2021/07/15

《速報解説》 公認会計士・監査審査会が令和3事務年度版の「監査事務所検査結果事例集」を公表~新たに「新型コロナによる監査業務への影響と対応」と「監査結果の通知」の項目を追加~

《速報解説》 公認会計士・監査審査会が令和3事務年度版の 「監査事務所検査結果事例集」を公表 ~新たに「新型コロナによる監査業務への影響と対応」と「監査結果の通知」の項目を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021(令和3)年7月9日、公認会計士・監査審査会は「監査事務所検査結果事例集(令和3事務年度版)」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 「令和3年版 モニタリングレポート」及び「令和3事務年度 監査事務所等モニタリング基本計画」も公表されており、監査法人の状況などについて、会計専門家ではない一般の利用者にもわかりやすく説明がなされている。 事例集は、公認会計士・監査審査会が行う監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたものであり、基本的に、監査事務所に関する内容である。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取締役、監査役等、投資者等による活用を期待 事例集では、上場会社等の取締役・監査役等や投資者等に対する監査に関する参考情報の提示という観点から、最近の不正会計事案や会計監査人と監査役等との連携に関するものも含め、公認会計士・監査審査会で確認された指摘事例をできるだけ分かりやすく記載し、また、監査事務所の改善取組などにおいて評価できる取組例も取り入れているので、会計監査人の適切な評価のために、是非参考にしていただきたいと考えているとのことである。   Ⅲ 個別業務における「問題となった事例」 事例集は、次のような事例について述べている。 (了)

#No. 427(掲載号)
#阿部 光成
2021/07/13

《速報解説》 国税庁、 文書回答手続の事務運営指針の改正等を公表~事前照会等の範囲に係る要件の整理・合理化を行い、文書回答手続の利便性向上を図る~

《速報解説》 国税庁、 文書回答手続の事務運営指針の改正等を公表 ~~事前照会等の範囲に係る要件の整理・合理化を行い、文書回答手続の利便性向上を図る~   弁護士 下尾 裕   国税庁は、令和3年6月21日付けで(ホームページ掲載日は令和3年6月30日)、「「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正について(事務運営指針)」及び「「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正について(事務運営指針)」をそれぞれ公表した。 これら事務運営指針の改正は、文書回答手続の利便性を向上させるため、文書回答を行う対象となる事前照会等の範囲に係る要件を改めて整理又は合理化したものである。 各事務運営指針における主な変更箇所は以下のとおりであり、令和3年7月1日以後に受け付ける事前照会に対する文書回答手続等について適用される。   1 「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正 (1) 従前、文書回答が適切でないものの例示として列挙されていた以下の①~③を削除した上で、各事務運営指針で示されている事前照会の各要件、さらには、「事前照会の内容が次に掲げるような性質を有しないものであること」との要件における個別列挙事由(以下「個別列挙事由」という)のうち、いずれの事由との関係で問題となるのかの明確化がなされた。 (2) 「同族会社等の行為又は計算の否認等に関わる取引等、通常の経済取引としては不合理と認められるもの」及び「税の軽減を主要な目的とするもの」との個別列挙事由を削除し、代わりに、「実地確認や取引等関係者等への照会等による事実関係の認定を必要とするもの」との要件について、「(同族会社等の行為又は計算の否認等の認定を必要とするものを含む。)」との記載を追加した。 (3) 個別列挙事由において、「審査の途中において、照会の前提とする事実関係が合理的な理由なく変更されるもの」に追記される形で、「審査後において、当該事実関係を合理的な理由なく変更し再度照会するもの」が明示された。   2 「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正 当該事務運営指針における改正は上記1の(1)及び(2)と同様である。同業者団体等からの照会等においては、「審査の途中において、照会の前提とする事実関係が合理的な理由なく変更されるもの」が列挙されておらず、それ故(3)に該当する明示はなされていないが、これらは広くは「本手続による文書回答が適切でないと認められるもの」に含まれるものと解される。 *  *  * これら改正は「納税者利便の一層の向上の観点」からのものであると説明されている。例えば、今回の改正においては、上記1(2)のとおり、「通常の経済取引としては不合理と認められるもの」又は「税の軽減を主要な目的とするもの」との個別列挙事由を削除し、これらの事由を具体的に考慮する場面として想定される行為計算否認規定等の適用を前提とした記載に統合しており、経済取引の合理性又は税負担の軽減目的といった多分に評価を伴う事項が事前照会制度利用の過度の妨げにならないようにという一定の配慮を感じさせるものになっている。 私見では、これら事務運営指針の改正は、あくまで従前の文書回答制度の事務処理手続等を明確化したものに過ぎず、これらの取扱いを実質的に変更するものではないものと理解されるが、この点は、今後の運用を通して明らかになっていくことになる。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 427(掲載号)
#下尾 裕
2021/07/13

《速報解説》 金融庁、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表~時価基準の適用指針公表を受け、投資信託の時価算定等について規定~

《速報解説》 金融庁、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表 ~時価基準の適用指針公表を受け、投資信託の時価算定等について規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021(令和3)年7月7日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(2021年6月17日、改正企業会計基準適用指針第31号)の公表を受けたものであり、投資信託の時価の算定と貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価について規定するものである。 また、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(2021年1月28日、改正企業会計基準第5号)について、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」1条3項及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」1条3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準とする改正も行う。 意見募集期間は2021年8月6日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「金融商品に関する注記」(財務諸表等規則8条の6の2第3項~第5項)に、次の規定を設ける。 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」などや、関連する「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)」なども改正する。   Ⅲ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 経過措置が規定される予定であるので、実際の適用に際して注意する。 (了)

#No. 427(掲載号)
#阿部 光成
2021/07/08

《速報解説》 金融庁「金融所得課税の一体化に関する研究会」、デリバティブ取引への損益通算対象拡大に向けた論点整理を公表~時価評価課税の導入や届出制についても議論~

《速報解説》 金融庁「金融所得課税の一体化に関する研究会」、デリバティブ取引への損益通算対象拡大に向けた論点整理を公表 ~時価評価課税の導入や届出制についても議論~   Profession Journal編集部   デリバティブ取引を含む金融所得課税のさらなる一体化(損益通算対象の拡大)については、平成28年施行の特定公社債等に係る課税の見直し以降、与党大綱において「検討事項」とされてきたが、令和3年度税制改正の与党大綱では下記の通り、早急な検討を行う方針が示されていた。 これを受け金融庁では本年5月7日に「金融所得課税の一体化に関する研究会」を設置、同月10日より7月2日にかけて全3回の議論を行った。 その議論の結果として、同会は7月7日に「金融所得課税の一体化に関する研究会」論点整理を公表し、デリバティブ取引を含む金融所得課税の一体化の方向性や課題等を明らかにした。 論点整理ではまず、デリバティブ取引について、個人投資家にとっても、ヘッジや分散投資といった目的で行われることで、投資手段の幅を広げ、ひいては、現物投資の拡大とあいまって、家計による成長資金の供給の拡大と家計の資産形成につながっていくことが期待されるとして、そのための投資環境整備を進めていく必要があるとしている。 現行の税制では、居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、先物・オプション等のデリバティブ取引の差金等決済をした場合には、申告分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%(他に地方税5%))が適用されており、上場株式等の配当・譲渡所得及び特定公社債等の利子・譲渡所得との損益通算はできない。 論点整理では、個人投資家が行うデリバティブ取引には「市場デリバティブ取引」と「店頭デリバティブ取引」に分けられるが、市場デリバティブ取引については取引所での市場流動性を通じた価格・取引の透明性等が担保されていることなどから、まずは「有価証券市場デリバティブ取引」について損益通算の対象としていくことが適切としている。 一方、デリバティブ取引を損益通算の対象に含める場合に想定される租税回避として、上記の通り現行税制ではデリバティブ取引の差金等決済をした場合に課税関係が生じることから、デリバティブ取引の「売り」と「買い」を両建てし、損失があるポジションのみ実現損として損益通算する、いわゆる「ストラドル取引」を行うことで課税の繰延べが可能になると指摘。米国税制の時価評価課税(期末時点で決済されたものとして含み損益を認識させる制度)を導入することで、実現損だけでなく含み益に対しても課税されるため、ストラドル取引に対する有効な租税回避防止策になり得るとした。 この制度導入にあたっては、個人投資家の場合、余剰の現金を持っていないケースもあることから、デリバティブ取引の時価評価を事前に届け出た者のみ時価評価課税(損益通算)を認めるなどの意見が出た。届出制については反対意見もあり、「具体的な時価評価課税の方法については、当研究会で出された意見を踏まえつつ、恣意性の排除の他、政策上の観点、金融機関や税務当局の実務といった執行面についても考慮し、総合的に検討していくことが必要」との見解を示している。 その他論点整理では、特定口座の利用可能性や、個人投資家への影響(届出や確定申告など税務手続の煩雑化や、デリバティブ取引内での損益通算が認められなくなることなど)も整理されているが、損益通算の対象拡大により全体として得られるメリットが大きいとの見解も示されており、今夏以降、来年度の税制改正に向けた動向が注目される。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 427(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/07/08

プロフェッションジャーナル No.427が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年7月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.427を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/07/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第97回】「節税義務なるものの正体(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第97回】 「節税義務なるものの正体(その3)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅲ 税理士の商法上の商人該当性 1 商人と商行為 契約関係を前提として、税理士に節税が期待されるとした場合、一般の商人を一方当事者とする性質の役務提供行為がかかる契約に包摂されているものとみるべきなのであろうか。すなわち、ここでは、税理士の商法上の商人該当性を検討してみたい。 商法4条《定義》によると、「商人」とは、固有の商人と擬制商人に分けられるが(商法4)、「固有の商人」とは、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」であり、「擬制商人」とは、「商行為を行うことを業としないが、店舗その他これに類する設備によって物品の販売を業とする者などで商人とみなされる者」をいう。 税理士は、「物品を販売することを業とする者」には該当しないため、「固有の商人」該当性を考える必要があろう。 そこで、「商行為」の意味するところが明らかにされねばならないが、商法上の商行為には、同法501条が規定する「絶対的商行為」と同法502条が規定する「営業的商行為」、そして、同法503条が規定する「附属的商行為」がある。これらの商行為は以下のとおりである。 ここに示された商行為を業とする者を「固有の商人」という。 ここで、附属的商行為は、そもそも「商人」が行う補助的な商行為をいうとされていることから、先決事項として「商人」該当性が肯定されなければならない。そのため、附属的商行為該当性の検討は後に回すことにしよう。 解釈の手順とすれば、税理士業が「商行為」に当たるか否かについては、税理士業が「絶対的商行為」あるいは「営業的商行為」のいずれかに該当するか否かという論点がまず整理されなければならない問題となる。 この点、商法501条に規定する「絶対的商行為」とは、次のような行為であり、行為自体に営利的性質が付着していることから、継続的な行為ではなく単発の行為であったとしても、これらに該当すれば、当然に商行為とされるものをいう。 これらの行為は税理士が行う行為とはいえまい。 では、次に、商法502条にいう営業的商行為はどうであろうか。 これら13種類の営業的商行為のいずれにも、税理士業は含まれないと解されよう。そうであるとすると、税理士は「固有の商人」に該当しないことになる。前述したとおり、「擬制商人」にも該当しないと解されるため、税理士はいずれの商人にも当たらないことになる。すると、「附属的商行為」該当性も否定されるため、結論的には、税理士は「商人」ではないし、税理士業は「商行為」に該当しないことになる。 (※) ちなみに、国税庁の解釈によれば、印紙税法上の「営業者」は、商法の規定による「商人」と「商行為」を基礎に理解されている。そうであれば、税理士は、印紙税法上の「営業者」にも該当しないことになる。「商人」が営利を目的として同種の行為を反復継続する場合には「営業」に該当することになる。 2 まとめ このように、税理士は商人ではなく、税理士業は商行為でないのである。 契約関係を前提に税理士に節税が期待されていることは前記のとおりであるが、税理士が商人でないとすると、一般の商人を一方当事者とする性質の役務提供行為がかかる契約に包摂されているものとみることは妥当ではないように思われるのである。 商人に該当しないことは単に商法の規定の適用を受けないという意味にとどまりそれ以上の意味を有するものではないとの声もあろう。しかしながら、他方で、通常の営業活動の一環として期待される信認義務などとは距離を置いた契約がそこに所在すると考えるべきではなかろうか。 税理士に対し過度の節税を期待することは、税理士法1条《税理士の使命》において「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定されていることからしても限界があるというべきであり、これまでの節税義務や節税措置義務を肯定してきた裁判例では、総じて、税理士の使命論的視角が欠落してはいなかったであろうか。 議論のあるところではあるが、ともすると、本連載(その1、その2)で提示した判決の理解などを根拠に税理士にアグレッシブな節税要求がなされるとすると、本来の税理士のあるべき立ち位置までもが脅かされるように思われるのである。そのように考えると、信認義務のようなものが税理士に課されていると考えるべきではなく、単に依頼者の期待に応えるべき注意のレベルを論じたものが「節税措置義務」と称されているものというべきではなかろうか。それは、いわば、税理士に課されている「適正申告義務」の枠内での議論であると位置づけられるべきであろう。 節税義務や節税措置義務の判決がその射程に関する意識を欠いたところで一人歩きすることは、税理士のあるべき姿という点からみて、若干の不安を覚えるところである。 (了)

#No. 427(掲載号)
#酒井 克彦
2021/07/08

金融・投資商品の税務Q&A 【Q65】「平成27年以前の割引債類似の公社債の譲渡による譲渡所得に係る取扱い」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q65】 「平成27年以前の割引債類似の公社債の譲渡による譲渡所得に係る取扱い」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 平成25年の金融所得課税の一体化に係る改正前の取扱い 従前、公社債等の譲渡による所得は、経過利子を反映したものであるとして、原則として、所得税は課されないこととされていましたが、一定の割引債等については例外的に総合課税の対象とされていました。さらに、この総合課税の対象となる公社債について譲渡損失が生じた場合には、他の所得との損益通算が認められていました。 〈総合課税の対象となる割引債等〉 また、上記②の割引債類似の公社債は、下記のものが該当することとされていました。 なお、上記の取扱いは、平成25年度税制改正における金融所得課税の一体化の導入により廃止され、平成27年12月31日までの適用とされていました。   2 東京地裁の判決を受けた、平成27年12月31日以前の割引債類似の公社債の譲渡による譲渡所得に係る対応 (1) 東京地裁における判決 東京地裁において、債券の利子の利率が一定の時期における一定の基準(為替レートなど)により変動する債券について、上記1の(エ)に記載した150%基準に該当するか否かが争われ、「150%基準にいう利率の『最も高いもの』及び『最も低いもの』に当たるのは、債券の発行条件に照らし、その発行期間においてとり得るものとされている上限利率及び下限利率であり、このような上限利率を下限利率で除して計算した割合が150%以上となる場合(下限利率が0%である場合を含む。)には、その債券は、その発行時の現況に照らして150%基準を満たす現実的可能性がおよそないと認められるような特段の事情がない限り、150%基準を充足する」と判示されました(令和3年5月20日判決)。 (2) 国税庁による取扱いの公表 国税庁では、この150%基準の判定について、これまで、「発行時点において、発行条件に定められた各利払期間の利子の利率により、その公社債の各利払期間の利子の利率のうち最も高いものを最も低いもので除して計算した割合が150%以上になることが必然であるもの」として取り扱っていましたが、上記(1)の判決を受けて、これを変更することを公表しました。 国税庁が公表した取扱いの変更によると、150%基準に該当するか否かについては、判決に則して、「債券の発行条件に照らし、その発行期間においてとり得るものとされている上限利率及び下限利率を基に、その発行時の現況に照らして150%基準を満たす現実的可能性がおよそないと認められるような特段の事情がない限り、150%基準を充足するか否か」により判断することとされます。 この変更は過去に遡って適用されますので、平成27年分以前の所得税の確定申告において、割引債類似の公社債に該当しないものとして取り扱った税額計算に異動が生じることにより、所得税が過大納付となっている場合には、国税通則法の規定に基づき、その申告書の提出日から5年以内に所轄の税務署長に更正の請求をすることにより、所得税の還付を受けることが可能とされています。 なお、実際に更正の請求が可能かどうかについては、個別の状況に合わせて検討が必要です。   3 金融所得課税一体化後の取扱い 金融所得課税の一体化適用後(平成28年以降)は、公社債の譲渡による所得は、株式と同様に、株式等に係る譲渡所得等の対象となります。 (了)

#No. 427(掲載号)
#西川 真由美
2021/07/08

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第37回】「離婚に伴う財産分与とその譲渡損失」-特殊関係者に対する譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第37回】 「離婚に伴う財産分与とその譲渡損失」 -特殊関係者に対する譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)は、離婚に伴い、7年前から家族で居住の用に供してきた居住用家屋とその敷地をY(妻)に財産分与しました。 その際、Yが長女Zを養育し、Xは、Yに対しZの養育費として毎月20万円を交付することで合意しました。Yには他に収入がなく、Yは、Xから受け取る養育費によりZと共に暮らしています。 Xが分与する土地は、現在、取得価額以下に値下がりし、時価を基にして譲渡所得を計算すると譲渡損失が発生しました。 他の適用要件を満たしている場合に、Xは当該譲渡損失について「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A Xは、「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」には、譲渡した資産の譲受者が、特殊関係にある親族などに該当する場合の適用除外規定(【Q29】の解説を参照)が定められています(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②・③)。 本事例の場合、財産分与による資産の譲渡は、離婚後における譲渡であることから、XからYへの譲渡は配偶者に対する譲渡(措法41の5⑦一、措令26の7③一)には該当しません。 また、Yは、Xから交付を受けるZの養育費により生計を維持していますが、離婚に伴う財産分与、損害賠償その他これらに類するものとして受ける金銭により生計を維持していることから、租税特別措置法施行令第26条の7第3項4号に掲げる者にも該当しません(措通31の3-23(「個人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの」の意義)後段、措通41の5-18(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用)。 したがって、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます。 なお、分与者に対しては、分与した土地家屋の時価を基にして譲渡所得課税が行われ、つまり、その譲渡価額については実勢価額(通常の取引価額)に基づき計算されます。 おって、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 427(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/07/08
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