《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等を踏まえ「グループ通算制度に関するQ&A」を改訂 ~移行時の手続等に係る14問を新設~ 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 令和3年6月28日に、国税庁「グループ通算制度に関するQ&A」が改訂された。 この「グループ通算制度に関するQ&A」は、通算制度に係る税務上の取扱いを図表や計算例を用いQ&A形式で解説したもの。今回、令和3年度の税制改正等を踏まえた既存のQ&A(9問)の改訂が行われるとともに、実務家が気になる新たなQ&A(14問)の追加が行われている(全65問→全79問)。 以下では新設・改訂されたQ&Aのポイントを紹介する。 上記に紹介した以外にも、次のQ&Aが追加されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 国税庁、令和3年度税制改正等に係る「法人税基本通達等の一部改正」を公表 ~税制改正の他、改正会社法に係る見直しも~ Profession Journal編集部 国税庁はこのほど「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、法人税基本通達及び租税特別措置法関係通達(法人税編)関係の他、連結納税制度やグループ通算制度関係の通達改正を行った。 今回の改正通達では、措置法通達において「第66条の2の2《株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例》関係:措通66の2の2-1~3」が新設されるなど令和3年度税制改正を受けた見直しが行われているが、6月16日に公布された改正産業競争力強化法は税制関連の規定の施行日が未定のため、認定等手続を同法に依るDX投資促進税制(措法42の12の7、68の15の7)や認定事業適応法人に対する欠損金の繰越控除の特例(措法66の11の4、68の96の2)、中小企業事業再編投資損失準備金制度(措法55の2、68の44)等に係る項目の新設等は行われていない。 また本年3月1日に施行された改正会社法及び関連規定を受け、役員の将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式又は譲渡制限付新株予約権が交付される給与であって、役務提供を受ける法人においてその期間の報酬費用として損金経理が行われるようなものは、その役員において所得税法上の退職手当等に該当するものであっても、退職給与には該当しないことを明確化する規定(法基通9-2-27の2)が新設されるなどしている。 なお税制改正大綱には記載されていない事項だが、中小企業向けの各投資減税措置において、これまで研究開発税制(措法42の4)と中小企業投資促進税制(措法42の6)に分かれていた「中小企業者」の定義規定が前者に統一されたことによる規定の削除等が行われている。 (※) 令和3年度税制改正前は、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)や被災代替資産等の特別償却(措法43の3)、特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法44の2)については、適用対象となる中小企業者の定義を中小企業投資促進税制(措法42の6①)の規定に依っていたが、すべて研究開発税制(措法42の4⑧七)の規定に依拠する形となっている。 (了)
《速報解説》 金融庁が「企業内容等開示ガイドライン」の改正案を公表 ~第三者割当に係る有価証券届出書の重点審査対象・要領の更なる明確化を図る~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年6月30日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、第三者割当に係る有価証券届出書について、重点的に行う審査対象や審査要領を、より一層明確化するものである。 意見募集期間は2021年7月30日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 重点的に行う審査対象の明確化 次の改正を行う。 2 審査要領の明確化 次の改正を行う。 Ⅲ 適用時期等 パブリックコメント終了後、速やかに適用する予定である。 (了)
《速報解説》 国税庁、令和3年分の路線価を公表 ~コロナ禍を背景に全国平均路線価は6年ぶりに下落~ Profession Journal編集部 7月1日付で国税庁は相続税や贈与税の算定基準となる令和3年分の路線価を公表した。 コロナ禍を背景に全国平均路線価は対前年比0.5%の下落となり、6年連続の上昇とはならなかった。 なお、昨年分の路線価は、公表はコロナ禍の7月1日だったが、コロナ禍前である2020年1月1日を評価時点としていたため、その影響は反映されていなかった。そのため今般公表された令和3年分の路線価(2021年1月1日評価時点)がコロナ禍による全国的な影響を反映した最初の路線価となる。 〇昨年までのインバウンド需要が低迷 令和3年分の路線価では、これまで上昇を牽引してきたインバウンド(訪日外国客)需要がコロナ禍により大きく減退したため、インバウンド需要に支えられていた観光地等を中心に大きな下げ幅を記録している。既報の通り、補正率が今年4月に公表された大阪府の心斎橋2丁目は、インバウンド需要の急激な落ち込みを要因に前年から26.4%の下落となっているほか、東京都台東区浅草1丁目でも11.9%の下落と下げ幅が大きい。 一部、コロナ禍に伴う移住の需要や再開発の影響によって上昇が見られる地域もあったが、全国的な下落傾向をおさえるほどではなく、全国平均路線価は対前年比0.5%の下落となった。 なお、今年も地点別の路線価の最高額となったのは、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前だったが、1平方メートル当たり4,272万円となり、対前年比7.0%の下落。36年連続の全国価格トップではあるが、9年振りの下落を記録している。 〇昨年と同様に地価変動補正率公表の可能性も 上述のとおり令和3年分の路線価については2021年1月1日を評価時点としているため、以降のコロナ禍に伴う緊急事態宣言による影響等は当然ながら反映されていない。 そのため、昨年と同様に広範な地域で大幅な地価下落があった場合などには、路線価と地価に大きな乖離が生じ、適正な課税を阻害することになりかねない。 昨年はこの点につき、国税庁は、コロナ禍を受けた地価下落により路線価の補正が必要な地域及び地価変動補正率を年の中途で公表し、申告期限の延長等といった対応を行ったが、今年も同様の対応を検討しているとの報道もある。 昨年と同様、観光地や繁華街などコロナ禍の影響が大きいとみられる地域については、現状の路線価では適正な相続税、贈与税の算出が難しい場合もあるため、今後の国税庁からのアナウンス含め関係する最新情報に注視したい。 ちなみに、各国税局がそれぞれ令和3年分の国税局管内各税務署の最高路線価を以下のとおり公表している。 〈各局が公表した最高路線価(別表)のページ〉 (了)
《速報解説》 税務調査等で提出を求められた資料がe-Taxで提出可能に ~納税者の利便性向上等に向け、令和4年1月からを予定~ Profession Journal編集部 6月25日付でe-Taxホームページのお知らせが更新され、令和4年1月より税務調査等で提出を求められた資料が、e-Taxによるオンライン提出を可能とすることが公表された。 これまで税務調査等で調査担当者等から資料の提出を求められた際は、郵送もしくは税務署等へ行き、対面での提出をするほかなかったが、令和4年1月からはe-Taxによるオンライン提出が認められることとなった(ただし、e-Taxでの送信の際には電子証明書が必要)。 これにより、資料の印刷、郵送の準備、税務署等への訪問といった手間が解消され、納税者の利便性が向上するとともに税務調査等の効率化も期待されるとしている。 なお、e-Taxを通じてオンライン上で提出できるデータ形式はPDF形式のみで、1送信当たり最大136ファイル、合計で最大8MBの上限を予定。また追加送信も可能となる見込みだ。利用するためには、事前にe-Taxの利用者識別番号の取得が必要だが、税理士等を通じた代理送信も可能とされている。 現状では税務調査等以外の時の利用は想定されておらず、税務調査等の際に提出を求められた資料のみが対象となる。 ちなみに、これによって既存の郵送や対面での提出をなくすものではなく、また、税務調査等の状況や提出する資料の内容によっては、オンライン上での提出が認められず、郵送や対面による提出が必要な場合もあるようだ。 なお、より詳細な内容については令和3年12月頃にe-Taxホームページにてお知らせを予定しているとのこと。今後の情報に注視したい。 (了)
2021年7月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.426を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.102- 「米国の富裕層増税、所得税か富裕税か」 東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹 米国では、非営利団体のプロパブリカが、IRS(内国歳入庁)から納税記録を非公式に入手し、次のようなタイトルで、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏ら富裕層が、莫大な資産に比べて所得税をほとんど払っていないことを公表した。 “The Secret IRS Files: Trove of Never-Before-Seen Records Reveal How the Wealthiest Avoid Income Tax” 米国(そして多くの先進諸国)では、資産保有に直接課税する富裕税は導入されておらず、彼らが保有する資産に対して税を払っていないことは、税制上なんら問題はない。 しかしこの事実は、米国民の公平感を逆なでし、民主党左派から、バイデン大統領の提案している富裕層の所得税(キャピタルゲイン)増税案では不十分だ、富裕税を導入すべきだという議論が生じている。 この議論は、今後のわが国税制を考えていく上で示唆に富むため、以下で紹介したい。 * * * バイデン大統領は4月に、10年間で1.8兆ドル(約200兆円)の歳出規模の「米国家族計画」を公表、その財源は、所得税最高税率の引上げ(37%から39.6%へ)や、世帯所得100万ドル(約1億1,000万円)超に対するキャピタルゲイン増税(20%から39.6%へ)などによる増収であり、10年間で1.5兆ドル(約170兆円)を充てるとしている。 この件について6月にはイエレン財務長官の公聴会が行われ、この中で民主党左派で予備選挙(プライマリー)に立候補し富裕税を主張したウォーレン上院議員は、富裕層の所得税を強化しても格差是正には効果がないことや、純資産が5,000万ドルを超える個人には2%、10億ドルを超える場合は3%の課税を適用する累進富裕税導入の必要性をあらためて主張した。 なぜキャピタルゲイン・資産所得への増税では格差是正効果がないのか。ウォーレン議員のブレーンであるエマニュエル・サエズ氏とガブリエル・ズックマン氏(いずれもUCバークレー教授)の著書である『つくられた格差』(山田美明訳,光文社,2020)から要旨を筆者なりに要約すると、以下のとおりだ。 一般的に考えてみよう。毎年3%の収益を生み出す資産があるとして、そこに40%の所得税をかけても、彼らの富は毎年1.8%増え続ける(3%×(1-0.4))ことになる。キャピタルゲイン課税強化では、資産格差の是正にはつながらないといえよう。 * * * 富裕税のデメリットとして、資本の国外逃避、資産評価の困難性、納税のキャッシュフローがないことの3つが挙げられるが、これに対して彼らは以下のように答える。 このような議論の背景にあるのは、資産保有額上位0.1%の世帯が、全世帯の保有株式の17%を保有し、上位1%の富裕層が全米総資産の4割を保有するという米国の巨大な資産格差と、権力と結びつき世論形成に大きな影響を与える富裕層の存在だ。 わが国にはそこまでの資産格差はないが、株式報酬やストックオプションの拡大など米国型グリーディー資本主義は拡大しつつある。まずは、所得税の累進機能を低下させている金融所得への分離課税の見直しから議論を始めていく必要がありそうだ。 (了)
令和3年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】 「DX投資促進税制の創設」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 [2] DX投資促進税制の創設 連結納税制度においても、デジタル技術を活用した企業変革を進める観点から、「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による企業変革に向けた投資について、税額控除又は特別償却ができる措置が創設されている(2年間の時限措置)。 連結納税制度におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制は、各連結法人を計算単位として税額控除額が計算され、各連結法人の税額控除額の合計額を連結法人税額から控除し、各連結法人の税額控除額が個別帰属額となる。 具体的には以下の取扱いとなる(新措法68の15の7①②④⑤)。 以上のとおり、税額控除の限度となる法人税額基準額について、連結グループ全体の連結法人税額を考慮すること、住民税の課税標準からの控除について、連結親法人が中小企業者(適用除外事業者を除く)に該当するかで判断することを除いて、単体納税制度と同様の取扱い(新措法42の12の7①②④⑤、新措令27の12の7①②)となる。 また、DX投資促進税制は、次に掲げる連結法人について適用できない(新措法68の15の7⑧)。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例31】 「法人の破産手続きと破産債権に関する貸倒れの時期」 国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、中部地方において工作機械製造業を営む株式会社A(3月決算法人)で財務・経理部長を務めております。わが社の主要な取引先である自動車業界及び自動車部品業界は、わが国の製造業の中でもいわゆる「勝ち組」とされてきましたが、最近は将来の自動車に対する環境規制に関するグローバルスタンダードが、わが国企業が得意とする「ハイブリッド方式」や「水素エンジン」ではなく、欧米企業が注力している「電気自動車(EV車)」となる見込みで、そうなると自動車本体はもちろんのこと、エンジンをはじめとする自動車部品を製造しているわが国企業への影響は絶大なものとなり、業界の将来を考えると、正直いって頭が痛いところです。 そのような中、現在自動車部品メーカーの間では、様々な形の業務提携や事業再編が進行中であり、取引先の中には経営状況が悪化して事業の継続が困難となっている会社も現れております。残念ながら、わが社の取引先の中にもコロナ禍の前から急速に財務状態が悪くなり、経営破綻する企業が出てきております。当該企業(株式会社B)は3年ほど前に経営破綻し、管轄する地方裁判所から破産宣告を受けましたが、当社は、それまで再三にわたりコンタクトを取り1円でも多く売掛債権を支払うよう迫ってきたB社の元代表取締役との音信が不通となり、最早債権回収の手段は尽きたことを根拠に、2020(令和2)年2月に取締役会を開催し、B社に対する売掛債権38,000,000円につき、回収不能になったとして貸倒処理すべき旨を決議しました。そのため、当社は2020(令和2)年3月期に、当該売掛債権38,000,000円全額について貸倒損失として損金経理を行い、損金の額に算入しております。 ところが、先日受けた税務調査で調査官は、当社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、本件の場合は官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点(2019(平成31)年3月4日)であるとして、当該売掛債権に係る貸倒損失は2019(平成31)年3月期に計上すべきといってきました。これは、当社の債権回収に係る努力を全く評価しない暴論であると考えるのですが、それでも調査官の主張に従うべきでしょうか、教えてください。 なお、本件に関し、取引先B社の経営破綻とA社の貸倒処理に関する時系列を示すと以下の通りとなっており、A社の2019(平成31)年3月期は、38,000,000円の貸倒損失計上前は、10,000,000円程度の黒字、2020(令和2)年3月期は1億円超の黒字決算となっております。 〇 取引先の経営破綻と貸倒処理の時系列 【A】 法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、当該決定等によりA社が破産法人(B社)に対して有する金銭債権もその全額が滅失したと解するのが妥当といえます。 したがって、本件の場合、A社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、遅くとも官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点であると考えられることから、当該売掛債権に係る貸倒損失は、2020(令和2)年3月期ではなく2019(平成31)年3月期に計上すべきといえます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法律上の貸倒れに係る損失 法人の有する金銭債権に関する法律上の貸倒れには、大きく分けて、法的整理手続きに基づくものと、関係者の協議に基づくものとがある。このうち前者には、さらに以下の3種類の方法(及び破産)があり(※1)、法人税基本通達9-6-1によれば、それぞれ以下の事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入するものとされている。 (※1) 当該3種類の手続き及び破産は、さらに清算型(破産及び特別清算)及び再生型(民事再生及び会社更生)に分類できる。伊藤眞『破産法・民事再生法(第4版)』(有斐閣・2018年)29頁。 (2) 破産手続きと事実上の貸倒れ 一方で、同じ法的枠組みであっても、破産手続きの場合における貸倒損失の計上については注意を要する。すなわち、法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく(※2)、裁判所の終結決定があったとしても、法律的には債権が消滅したとはいえない。 (※2) 個人である債務者(破産者)については、破産手続開始申立てがあった日から破産手続開始決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に、破産裁判所に対して、免責許可の申立てをすることができる(破産法248①)。 しかし、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、それに基づき当該法人の登記が閉鎖されることとなるため、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することから(※3)、破産法人にもはや分配可能利益は存在しないのは明らかといえる。したがって、この決定がなされた時点で、その全額が回収できないことが明らかになったといえることから、その事業年度において貸倒れとして損金経理をすることにより、その全額が損金に算入されることとなる(法基通9-6-2)。 (※3) 法人格の消滅に伴って、法人の債務負担が消滅する。伊藤前掲(※1)書752、762頁参照。 また、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であり(会規5④)、企業の利益水準に合わせてそのタイミングを操作するという方法は、公正妥当な会計処理の基準から逸脱しているといわざるを得ないであろう。 (3) 破産債権に係る貸倒れの時期が争われた事例 上記(2)で見た通り、破産債権に係る貸倒れの時期の判断は必ずしも容易ではないが、その判断基準として参考になりそうな裁決事例(国税不服審判所平成20年6月26日裁決・TAINSコード:J75-3-21)があるので、以下で見ていきたい。 ① 事案の概要 本件は、製品製造業を営む同族会社である審査請求人(D社)が、売掛債権の全額が回収できなくなったとして損金の額に算入した貸倒損失の金額及び消費税の課税標準額に対する消費税額から控除した貸倒れに係る消費税額について、原処分庁が、当該売掛債権の全額につき回収ができないことが明らかになったのは当事業年度(平成17年10月1日~平成18年9月30日)より前の事業年度であるから、当事業年度の損金の額には算入できないなどとして行った法人税並びに消費税及び地方消費税の更正処分等に対し、請求人は、当該売掛債権の全額回収ができないことが明らかとなったのは当事業年度であるとして、同処分の一部の取消しを求めた事案である。 本件は破産債権に係る貸倒れの時期が問題となった事案であるが、その経緯は以下の通りである。 上記事実関係に基づき、本件破産事件と貸倒処理に関する時系列を示すと以下の通りとなる。 〇 本件破産事件と貸倒処理の時系列 なお、官報において、本件破産事件の破産を終結する旨公告されているタイミング(平成11年6月)と、取締役会において、F社に対する売掛債権16,231,609円(税抜金額)が回収不能となったとして、本件事業年度(平成17年10月1日~平成18年9月30日)において貸倒処理することが承認されたタイミング(平成18年9月15日)との間に相当の期間があるが、その理由について請求人(D社)は、以下のような経緯があった旨審判所に文書を提出している。 ② 事案の争点 請求人のF社に対する売掛債権が全額回収できないことが明らかとなった日はいつか。 ③ 審判所の判断 ④ 本事案から学ぶこと 法人の法的整理手続きには、会社更生法・民事再生法・会社法(特別清算)に基づくものと、破産法に基づくものとがある。ここで留意すべきは、破産法に基づく場合、会社更生法等とは異なり、債権の切捨て(免責)という概念(※4)がないため、裁判所の終結決定があったとしても、法律的には債権は消滅しないという点である。そうなると、破産法に基づく破産手続きの場合、債権の消滅をどの時点で認識し、貸倒処理を行い損金算入するのかが問題となり得る。 (※4) 例えば民事再生法の場合、再生計画の認可決定が確定したことにより、再生債務者は、原則としてすべての再生債権について免責となる(民事再生法178①)。 上記の裁決事例ではこの点が明確化されている。すなわち、「裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に分配可能な財産はないのであり、当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権もその全額が滅失したとするのが相当であると解され、この時点が破産債権者にとって貸倒れの時点と考えられる」として、破産手続きの終結決定があった時点で貸倒損失が発生したとしている。 実務的には、裁判所は終結決定があったときには、直ちにその旨を公告し、破産者に通知しなければならない、とされている(破産法220②)。また、当該破産手続きの終結決定があった旨の公告によって、破産手続き終結の効果が生じる(※5)。したがって、仮に当該公告があった後において、債権者が売掛債権の回収を図ろうと様々な努力を行っていたとしても、それによって貸倒損失が発生した時期を遅らせることができるわけではないのである。これは、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であるということからもいえるのであり(会規5④)、企業の利益水準に合わせてそのタイミングを操作するという方法は、公正妥当な会計処理の基準から逸脱しているといわざるを得ないであろう。 (※5) 伊藤前掲(※1)書750頁。 (4) 本件へのあてはめ 法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、当該決定等によりA社が破産法人(B社)に対して有する金銭債権もその全額が滅失したと解するのが妥当といえる。 したがって、本件の場合、A社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、遅くとも官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点であると考えられることから、当該売掛債権に係る貸倒損失は(黒字決算の)2020(令和2)年3月期ではなく(赤字決算の)2019(平成31)年3月期に計上すべきである。これは、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であるということからもいえる。 (了)
〔Q&Aで解消〕 診療所における税務の疑問 【第7回】 「中小企業経営強化税制等の特例措置適用の可否と実務上の注意点」 税理士法人赤津総合会計 税理士・医業経営コンサルタント 赤津 剛史 【Q1】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制に定める特別償却(即時償却)を適用できるのでしょうか。 【A1】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制の適用要件に該当しないため、同税制の適用を受けることができません。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項において、中小企業経営強化税制の前提となる経営力向上設備等の要件が定められています。その中で、器具備品については、括弧書きにおいて「医療機器にあっては医療保健業を行う事業者が取得又は製作をするものを除く。」と規定されています。 したがって、医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制に定める特別償却(即時償却)の適用を受けることはできません。 【Q2】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業投資促進税制に定める特別償却(いわゆる中小企業等の機械等の特別償却)を適用できるのでしょうか。 【A2】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業投資促進税制に定める「機械及び装置」に該当しません。したがって、中小企業投資促進税制に定める特別償却の適用を受けることはできません。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 医療機器は「器具及び備品」に該当し、「機械及び装置」には該当しないため、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除の規定の適用はありません。 本制度の対象資産は次のとおりとされています。 医療機器は、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「8 医療機器」に該当し、「機械及び装置」には該当しません。また、上記に掲げる資産のいずれにも該当しないため、この規定の適用はありません。 ◆◇実務における注意点◇◆ 医療法人に適用される税務上の取扱いは、一般の会社と取扱いが異なるものが少なくありません。一般の会社と平行して、医療法人の業務を行っていると、ついつい同じ要件と思い込んでしまうことがあります。 特に今回の事例のような特例措置の適用にあたっては、先入観を持たず、条文に立ち戻り、適用要件を1つ1つ丁寧に確認していくという当たり前のことをきちんと実行していくことが、ミスを防ぐために重要なこととなります。 (了)