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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第143回】企業結合会計⑪「逆取得」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第143回】 企業結合会計⑪ 「逆取得」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉 〈会計処理〉 1 A社の個別財務諸表上の会計処理 (※2) 600(B社資本金)+1,300(B社繰越利益剰余金) 2 連結財務諸表上の会計処理 (※3) 取得原価の配分額:企業結合日におけるA社諸資産の時価1,300 (※4) のれん:取得原価1,600-取得原価の配分額1,300 (※5) 株式交換が逆取得となる場合の取得の対価となる財の時価は、A社株主が株式交換後のA社に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のB社株式を、B社が交付したものとみなして算定します。 (※6) 1,300(A社諸資産の時価)+2,000(B社諸資産の帳簿価額) (※7) 株式交換完全子会社B社(取得企業)の株式交換日の前日の財務諸表の金額を計上するため、いったん、資本金600、繰越利益剰余金1,300、その他有価証券評価差額金100としますが、資本金については株式交換完全親会社A社(被取得企業)の資本金300とし、差額の300(=B社資本金600-A社資本金300)は資本剰余金へ振り替えます。 (※8) 増加すべき株主資本1,600+(B社資本金600-A社資本金300)   〈会計処理の解説〉 株式交換が行われた場合に、株式交換完全子会社が取得企業となり、株式交換完全親会社が被取得企業となるケースは逆取得に該当します。 本事例においては、上図の通りA社は株式交換完全親会社であるものの、株式交換を行った結果、議決権の過半数をB社(株式交換完全子会社)の旧株主であるX社に取得されています。 よって、B社が取得企業となり、A社が被取得企業となるため、当該株式交換は逆取得に該当します。 個別財務諸表上の会計処理において、A社が取得するB社株式の取得原価は、株式交換日の前日におけるB社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定します(事業分離等会計基準36項、結合分離適用指針118項)。 企業結合の対価として、A社は新株を発行しているため、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理します。なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定します。また、増加すべき株主資本の額は、B社の取得原価に準じて算定します(結合分離適用指針117-2項、118項)。 連結財務諸表上の会計処理において、B社はA社を被取得企業としてパーチェス法を適用します。具体的には、株式交換日の前日におけるB社の個別財務諸表上の金額に、次の手順により算定された金額を加算します(結合分離適用指針119項)。   (了)

#No. 288(掲載号)
#渡邉 徹
2018/10/04

空き家をめぐる法律問題 【事例7】「空き家を『相続させる』旨の遺言と放棄の可否」

空き家をめぐる法律問題 【事例7】 「空き家を『相続させる』旨の遺言と放棄の可否」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 父の遺品を整理していたところ、遺言書が見つかりました。遺言書には、長男である私に実家を相続させると記載されていました。父は、死亡するまでの数年間、施設で生活をしておりましたので、実家は空き家の状態となっていました。 父の相続人は私と弟ですが、私は遠方に居住しており、築年数も古い空き家を相続したくありません。弟も実家は要らないと以前言っているのを聞きました。私は、実家を除く現預金などの他の相続財産については相続したいのですが、どうすればよいでしょうか。   1 はじめに 相続が発生した場合、被相続人の遺言がなければ、共同相続人間で遺産分割協議をして、その帰属などを決めていくことになるが、被相続人が遺言を作成している場合は、基本的には、遺言に沿って相続手続を進めていくことになる。ただし、遺言の内容が相続人の希望に反する内容である場合には、相続発生後に、共同相続人間で争いになることが少なからずある。 そこで、今回は、実務上多用されている「相続させる」旨の遺言で空き家が指定された場合の問題について検討することとしたい。   2 特定の財産を「相続させる」旨の遺言について 特定の財産を「相続させる」旨の遺言の法的性質については、様々な見解が主張されていたが、現時点においては、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈と解するべき特段の事情ない限り、遺産分割方法の指定であると解されている(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁。以下「平成3年判決」という)。 通常の遺産分割方法(現物分割、換価分割、代償分割など)の指定の場合、相続が開始されたとしても、それのみで権利の移転効は生じないため、当該相続財産の帰属を決めるためには、遺産分割協議を要する。これに対して、相続させる旨の遺言の場合は、相続による承継を当該受益相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要することなく、当該相続財産は、被相続人の死亡の時に直ちに受益相続人に相続により承継されることになる(平成3年判決参照)。 つまり、「相続させる」旨の遺言がある場合には、その対象となった財産は、遺産分割協議の対象から除外されることを意味する。   3 遺言の利益の放棄の可否 では、「相続させる」旨の遺言がある場合に、その対象となった財産の相続を希望しない相続人は、遺言の利益を放棄することができるだろうか。なお、ここでいう「遺言の利益の放棄」とは、遺言の対象となった相続財産を遺産分割協議の対象に戻すことを意味しており、初めから相続人とならなかったものとみなされる相続放棄とは異なることに留意されたい。 まず、平成3年判決の判示するように、「相続させる」旨の遺言に、相続による承継を当該受益相続人の意思表示にかからせた特段の事情がある場合には、当該受益相続人は、相続による承継をしない旨意思表示をして、当該財産を遺産分割協議の対象に含めることができる。この場合には、他の共同相続人にその旨の意思表示をすることが必要となる。 問題は、上記のような特段の事情がない場合である。この問題に関して、遺贈の場合には放棄(民法第986条)が認められていることや、権利の放棄は原則として自由であることなどを理由に、民法第986条に準じて遺言の利益を放棄することを認める見解もある。しかしながら、裁判例においては、遺言の利益の放棄を認めない旨判断されている。 この問題を取り扱った裁判例として、東京高判平成21年12月18日判タ1330-203がある。東京高判の事案は、遺産分割審判の審理中に、不動産を「相続させる」旨の遺言の受益相続人が遺言の利益を放棄する旨主張したというものであるが、東京高判は、遺言の利益を放棄する旨を主張するだけでは、当該不動産は遺産分割の対象となるものではない旨判断している。 このことは、相続させる旨の遺言の受益相続人が、対象となった相続財産の承継を希望しない場合には、たとえ他の相続財産の相続を希望していたとしても、これを諦めて相続放棄するか否かの選択を迫られることを意味する。 もっとも、相続させる旨の遺言がある場合であっても、共同相続人全員の合意で、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行うことまで否定されてはいない。 この場合には、平成3年判決によれば、受益相続人は、相続開始と同時に対象財産の権利を取得することになることから、法的には、受益相続人が遺言によって一旦取得した対象財産を、他の共同相続人の取得すべき遺産と交換したり贈与したりして遺産分割協議を行ったものと評価することになると思われる(東京地判平成13年6月28日判タ1086-279など参照)。   4 対応方法 長男が、父親の相続を希望する一方で、空き家については相続をしたくないという希望を持っている場合には、まず相続させる旨の遺言に、①遺贈と解するべき記載がないかどうか、②記載がない場合でも、承継を長男の意思表示にかからせていると認められる記載がないかどうかを確認する必要がある。 いずれの記載も認められない場合は、弟と協議をして、空き家を遺産分割協議の対象に含める必要がある。弟も空き家の相続を希望していないとのことであるから、換価分割の方法を提案することなども必要になってくると思われる。 (了)

#No. 288(掲載号)
#羽柴 研吾
2018/10/04

役員インセンティブ報酬の分析 【第10回】「役員インセンティブ報酬をめぐる動向と株式交付信託の現状」

役員インセンティブ報酬の分析 【第10回】 「役員インセンティブ報酬をめぐる動向と株式交付信託の現状」   弁護士・公認会計士 中野 竹司   1 役員インセンティブ報酬制度をめぐる動き ここ数年、役員インセンティブ報酬制度、特に株式報酬を用いたインセンティブ制度の活用について様々な動きがあった。 具体的には、平成27年6月に適用開始されたコーポレートガバナンス・コードでは、原則4-2、及び同補充原則4-2①において、経営陣の報酬について、中長期的な会社の業績等を反映させたインセンティブ付けが行われるべきとされた。 そして、経済産業省が平成27年7月に公表した、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書で、我が国において株式報酬を導入する際の手続きが整理された。また、平成28年6月には経済産業省から「「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬「いわゆる「リストリクテッド・ストック」の導入等の手引き~」が公表され、実務的な環境整備が進んだ。 税務面でも、平成28年度税制改正で役員報酬として損金算入が認められる譲渡制限付株式報酬の要件が明らかになり、実際に導入されるようになった。さらに、平成29年度税制改正では、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与(改正後は業績連動給与)という損金算入可能な役員報酬の3類型は維持しつつ、退職給与や新株予約権も役員報酬の中に含めて損金算入の可否を考えることとなり、株価や業績に連動する条件が付されたインセンティブ報酬については、今後は利益連動型給与の要件を満たさない場合で損金算入が可能なケースはほとんどなくなったと考えられる。 その結果、平成29年度税制改正によって、従来は役員報酬として損金算入は認められないであろうと考えられていた、権利確定時発行型のパフォーマンス・シェアやファントムストックに損金算入の可能性が出てきた一方で、新株予約権やエクイティを利用した退職金の損金算入の可否に影響が出てくると考えられた。 以上のように、株式を用いたインセンティブ報酬の活用のための制度的な取組みは、かなり進んだといえよう。   2 改訂コーポレートガバナンス・コード 平成30年6月、3年ぶりにコーポレートガバナンス・コードが改訂された。改訂コーポレートガバナンス・コードでは、原則4-2①で、「取締役会が、客観性・透明性ある手続きに従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定するべきである」との一文が加わった。また、補充原則4-10①において、設置する任意の諮問委員会の具体例として報酬委員会が示された。 このように、適切な役員インセンティブ報酬の設計、導入について、改訂コーポレートガバナンス・コードでも重視しているといえ、今後、企業は自社の役員インセンティブ報酬制度の在り方について更なる取組みが求められるといえるであろう。   3 役員報酬のための株式交付信託の概要 (1) 株式交付信託の概要 このような状況の下、平成30年度における株式交付信託の状況についてまず見ていこう(この連載ではすでに【第2回】及び【第9回】において、株式交付信託について検討を行っている)。 ここで、株式交付信託(株式給付信託など様々な名称で呼ばれることがある)について簡単に復習すると、会社が信託銀行等と信託契約を結び信託を設定したうえで、委託者たる会社が受託者たる信託銀行等に金銭を交付し、受託者たる信託銀行が株式を取得し、受益者たる役員等が受託者から会社の株式の交付を受けるという制度である。 信託は、信託契約により様々な制度設計ができるが、株式交付信託の大まかな流れを図示すると、以下のようなものである。   4 税法上の視点 -平成29年度税制改正後の株式交付信託の税制- すでに述べたように、平成29年度税制改正では、定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与という損金算入可能な役員報酬の3類型は維持しつつ、退職給与や新株予約権も役員報酬の中に含めて損金算入の可否を考えることとなった。 そのため29年度改正後は、株式交付信託は交付時点が役員在任時か退任時かというのは従来に比して重要ではなくなり、「在任時交付型」は損金算入の可能性が出てきた一方、「退任時交付型」については若干使い勝手が悪くなった。 なお、株式交付信託により付与された株式の価値が不相当に高額である場合や、隠ぺい又は仮装経理によるものである場合にも、役員報酬として法人税法上損金算入できない点に留意が必要である。   5 経産省「役員報酬に関する手引」の改定 経済産業省による「「攻めの経営」を促す役員報酬 ~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~」(以下「役員報酬に関する手引」という)では、株式交付信託に直接関する事項も含まれており、その主なものは以下の2つである。以前の連載の繰り返しではあるが、再確認しておく。 まず、Q2において、導入済みの株式交付信託に新任役員が加わった場合は、「選任の決議」の時にその給与の支給が決議されたものとして、損金算入の可否が決議されること、また既に導入済みの株式交付信託の中で、予め役員の地位の変動があった場合の支給額が定められている場合に、その地位の変更のあった役員に対する給与については、導入時の支給の決議をした時期によって適用関係を考えるという見解が示されている。 また、Q16において、株式交付信託について、株式を交付する時期に、株式を金銭に換えて、役員に株式と金銭を交付することが実務上行われているが、この場合でも、全体として株式を交付することが目的の給与であることが株主総会議案で明らかにされ、一定の割合の株式を源泉徴収等のために換金するものであることが役員報酬規程等で予め明らかにされて、株式の換金が受益権確定の時期に近接した時点で行われていれば、全体として確定した数の株式とされ損金に算入できるという見解が示されている。   6 導入状況 (1) 業績連動型インセンティブ報酬として人気 以上のような特徴を持つ株式交付信託であるが、平成30年度の株式を利用した業績連動型の役員インセンティブ報酬としての人気は高い。 株式を利用した役員インセンティブ報酬としては、①業績連動指標が解除条件に含まれるパフォーマンス・シェア型譲渡制限付株式(以下「業績連動型の譲渡制限付株式」)、②欧米で発行されているパフォーマンス・シェアに近い権利確定時発行型の業績連動型株式報酬(以下「パフォーマンス・シェア」)、③株式交付信託などが考えられる。 この中で、平成30年度に導入した企業数を見ると、業績連動型の譲渡制限付株式、パフォーマンス・シェアに比べて、株式交付信託の導入件数が圧倒的に多くなっている。 これは、株式交付信託においては、制度の設計・運用に信託銀行が関与していることが、制度運用の正確性や安定性の面でメリットがあると考えている企業が多いからなのではないだろうか。 (2) 導入企業事例 ここで、導入企業の事例をいくつか見ておこう。 まず、制度の導入目的としては、役員に対するインセンティブ付の他、株主との利害関係の一致といった点を挙げる企業が多かった。 例えば、 といった開示例がある。 また、株式交付信託の制度設計は多様であるが、業績連動報酬制を加味した株式交付信託の典型的な設計は次のようなものである。 すなわち、毎事業年度末に開催される任意の諮問委員会の決議に基づき、役員に対して事業年度ごとに株式報酬基準額に相当するポイントを付与し、原則としてポイントの付与から一定期間経過後に役員に対して役員報酬として付与されたポイントに相当する数の当社株式等の交付等を行う株式報酬制度として設計される。 そして、事業年度ごとに役位等に応じてポイントが付与され、それ以降変動しない「固定部分」と、事業年度ごとに役位等に応じてポイントが付与された後、業績条件の達成度に応じて変動する「業績連動部分」から構成され、いわゆるリストリクテッド・ストックとパフォーマンス・シェアの両者の性格を併せ持つものとして設計されることが多い。   7 まとめ 本稿執筆時点で、株式交付信託は、業績連動型の役員インセンティブ報酬制度を新規導入しようとする企業にとって人気が高いという状況になっている。 平成29年度税制改正時点では、自社株を利用した、パフォーマンス・シェアの活用が進んでいくかとも思われたが、株式交付信託ほど導入企業数は伸びない状況となっている(詳細は次回)。 このように株式交付信託の導入が多いのは、制度運用の安心感というものがあると思われるが、信託一般の特徴として設計の自由度が高いという特徴がある。したがって、株式交付信託をどのように企業が設計し運用しているか、その内容をよく見ていく必要があると思われる。 (了)

#No. 288(掲載号)
#中野 竹司
2018/10/04

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第13話】「重加算税と延滞税」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第13話】 「重加算税と延滞税」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「それで・・・納税者には修正申告を勧奨したの?」 中尾統括官は税務六法を手に取り、国税通則法74条の11第3項をみる。 「はい・・・納税者は『修正申告書を提出する』と言いましたが・・・」 そう言いながら、浅田調査官は、困った表情をする。 「ただ、納税者からどれぐらいの税金を負担しなければならないのかと・・・具体的な金額を尋ねられまして・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「そんな計算・・・簡単にできるだろう?」 中尾統括官の言葉に、浅田調査官は苦笑いしながら、頭をかく。 「まあ、そうなんですが・・・納税者との話し合いで・・・修正申告に、重加算税を賦課することになりまして・・・」 浅田調査官はバツの悪い表情になる。 「話し合いって?・・・どういう意味だ??」 中尾統括官の声が高くなる。午後からは税務調査のため所得課税第三部門は皆出張していて、2人以外、誰もいない。 「国税通則法68条に・・・重加算税の賦課要件として、隠蔽・仮装があるだろう・・・納税者は、どういう内容の申告をしていたんだ?」 中尾統括官は、税務六法のページをめくりながら尋ねる。 「・・・経費の中に、個人的なものを故意に入れており・・・しかも、領収書を改ざんして、あたかも事業用の経費であるかのように装っていたので・・・」 浅田調査官の説明は、歯切れが悪い。 「納税者は・・・それで納得しているの?」 中尾統括官は、再び尋ねる。 「はい、それで納税者は了解しました・・・ただ、その代わりに、一部の経費については、事業用の必要経費として認めました・・・」 浅田調査官は照れ笑いをする。 「それは・・・君が納税者と交渉して、重加算税を無理矢理、取ってきたといった感じだな・・・」 中尾統括官は顔をしかめる。 「しかし、納税者は、それでかまわないと言っていまして・・・ただ、資金繰りが悪いので、税金の負担を少なくしてもらいたいと・・・」 浅田調査官は真面目な表情になって答える。 「所得税そのものは3年分で150万円なのですが・・・それに35%の重加算税を課すると200万円を超えてしまうのです・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の机の前に立ちながら説明する。 「確かにそうだが・・・ただ、それ以上に・・・延滞税もバカにならないだろう?」 中尾統括官が付け加える。 「延滞税・・・ですか?」 浅田調査官は、中尾統括官の顔をみる。 「延滞税の計算は・・・確か1年間という特例規定があったと思いますが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の机の上に置いてある税務六法を開く。 「国税通則法61条1項1号では、延滞税はこのように、1年間で計算することになっています。」 浅田調査官は、条文を確認する。 「・・・それは通常の場合で・・・その条文のカッコ書きで、『偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた納税者が当該国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知して提出した当該申告書を除く』と書かれているだろう・・・そうすると、偽りその他不正の行為の場合には、計算を1年間に限定するという特例規定は適用されない。」 浅田調査官は、中尾統括官の示す箇所を見る。 「でも・・・これは『偽りその他不正の行為』であって、『隠蔽・仮装』ではないのですが・・・」 浅田調査官は抵抗する。 「延滞税については、「延滞税の計算期間の特例規定の取扱いについて」(直所1-18/昭和51年6月10日)という通達がある。・・・この通達では、①重加算税が課される場合、②通告処分若しくは告発がなされた場合には、特例規定は適用しないとしている。」 中尾統括官は、机の引き出しから通達集を取り出して、浅田調査官に見せる。 「ということは・・・国の解釈としては、条文上の表現は異なるけれど、『隠蔽・仮装=偽りその他不正の行為』と考えているんですね・・・そうすると、特例規定が適用できない場合、法定納期限の翌日から修正申告書の提出日までの期間が延滞税の計算対象となるので・・・延滞税の金額もバカになりませんね。」 そう言うと、浅田調査官は腕を組んで、思案顔になる。 (つづく)

#No. 288(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/10/04

《速報解説》 経済産業省、コーポレート・ガバナンス改革の深化に向け「CGSガイドライン」を改訂~社長・CEOの指名及び後継者計画記載を全面見直し~

《速報解説》 経済産業省、コーポレート・ガバナンス改革の深化に向け 「CGSガイドライン」を改訂 ~社長・CEOの指名及び後継者計画記載を全面見直し~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年9月28日、経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)を改訂し公表した。 CGSガイドラインは、平成29年3月31日に公表されたものであるが、その後、平成30年5月18日に「CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第2期)中間整理」が公表され、その提言を受けて、今般、コーポレート・ガバナンス改革を形式から実質へと深化させていく上で重要と考えられる事項に関し、CGSガイドラインを改訂するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改訂内容 CGSガイドラインは、表紙を含め146ページに及ぶものであり、また、今回の改訂も多岐にわたっているので、以下では主な改訂内容について解説する。 1 社長・CEOの指名と後継者計画 社長・CEOは、優れた後継者に自社の経営を託すために、その重要な責務として、自らリーダーシップを発揮して後継者計画に取り組むことが期待されている。 そこで、社長・CEOは、就任したときから、自らの交代を見据えて後継者計画に着手することを検討すべきであると記載されている。 また、経営トップの交代と後継者の指名は、企業価値を大きく左右する重要な意思決定であることを踏まえて、優れた後継者に対して最適なタイミングでなされることを確保するため、十分な時間と資源をかけて後継者計画に取り組むことを検討すべきであると記載されている。 このように、社長・CEOの指名と後継者計画に関する記載を全面的に改訂し、その重要性や、客観性・透明性を確保する意義について改めて整理している。 新たに別紙4「社長・CEOの後継者計画の策定・運用の視点」が作成されており、次の7つのステップに分けて検討することが有益と考えられると記載されている。 2 取締役会議長 各社には取締役会の監督機能を強化することが求められている。 そこで、監督を受ける立場にある社長・CEO等が取締役会議長を兼ね、そのイニシアティブで議案の選定や議事進行を行うよりも、取締役会議長は監督を行う立場にある社外取締役などの非業務執行取締役が務め、執行側は業務執行に関する説明を行う役割に徹する方が、取締役会の監督機能の実効性を確保しやすいと考えられると記載されている。 他方、取締役会の意思決定機能も重視する企業では、社外取締役が取締役会議長を務める場合には、必ずしも社内の情報に精通しているわけではない社外取締役が適切に議案選定や議事進行を行うことを可能とするための環境整備が必要と考えられるとし、取締役会における決議事項・報告事項等を改めて整理することに加えて、取締役会議長を務める社外取締役の十分な時間を確保することなどが記載されている。 3 指名委員会・報酬委員会の活用 本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂により、指名委員会・報酬委員会の設置が原則化したことを踏まえ、委員会の構成については、社外取締役が原則であることを明確化した上で、①社外役員が少なくとも過半数であるか、または、②社外役員とそれ以外の委員が同数であっても委員長が社外役員であることを検討すべき旨を記載している。 4 社外取締役の活用 社外取締役が実質的な役割・機能を果たす上では、必要な資質・背景を有していることに加えて、アベイラビリティ(社外取締役として必要な時間や労力を自社のために費やせること)や、責任感と覚悟(自社の企業価値向上への意思・意欲があること)も重要であると記載されている。 例えば、適格性の確認の一環として、社外取締役候補者の本業や兼職の状況を確認することや、あらかじめ社外取締役の兼職数の上限の目安を設けておくことなども検討に値すると記載されている。 また、社外取締役の再任基準を設けておくことを検討すべきであると記載されている。 5 相談役・顧問 平成30年1月1日、東京証券取引所により「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の様式及び記載要領の一部改訂が行われ、代表取締役社長等を退任した者の相談役や顧問などへの就任の有無の記載欄が新設された。 代表取締役社長等を退任した者が、引き続き、相談役や顧問などに就任している場合には、その氏名、役職・地位、業務内容等を記載することが望まれている。 企業においては、この欄を利用して積極的に情報発信を行うことが期待されている。 (了)

#No. 287(掲載号)
#阿部 光成
2018/10/01

《速報解説》 消費税率の10%引上げまで1年を切る~あらためて最新情報の確認を~

《速報解説》 消費税率の10%引上げまで1年を切る ~あらためて最新情報の確認を~   Profession Journal編集部   2019年10月1日の消費税率の10%への引上げ、及びそれに伴う8%の軽減税率導入まで、いよいよ1年を切った。日本商工会議所が9月28日付で公表した「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査 調査結果について」でも約8割の事業者が「(軽減税率制度については)準備に取り掛かっていない」と回答するなど、準備不足の企業が非常に多い現況が見て取れる。 一方で、税率引上げ前後の景気変動対策を除き、来年10月以降の新制度について、法令通達の改正による整備は完了したと言っていいだろう。国税庁が6月に公表したインボイスの取扱通達及びQ&A、8月に公表した3パターンによる「軽減税率制度に対応した申告書の作成手順」は新しい情報だが実際に関係する場面はまだ先で、当面は区分記載請求書等保存方式による対応となり、これらに関する情報の多くは既に2年ほど前に公表されているものだ。 この消費税率に係る改正への対応については、大きく「税率の引上げ」と「軽減税率の導入」に分けて考えたほうがよいだろう。 まず、軽減税率に関する情報は、国税庁HPにおける特設ページ(消費税の軽減税率制度について)においてまとめられており、上記の通達やQ&Aなどのパンフレットを確認することができる。 税率引上げに係る消費税法の改正当時は意識して情報を収集していたが、二度にわたる引上げ時期の延期もあって、その後公表された情報で未確認のものが存在する可能性もある。また、初めて公表されてから現在までの間に内容が改訂されている資料もあるため、上記特設ページに掲載された最新の情報について、(改訂の有無も含めて)あらためてチェックしておきたい。 さらに全国の税務署が主催する説明会も盛んに開催されており(国税庁HP「消費税軽減税率制度説明会の開催予定一覧」)、「消費税軽減税率電話相談センター(軽減コールセンター)」では電話による問い合わせを行っているため(電話代は自己負担)、上記資料の確認だけでは不安の残る場合、直接質問のできるこれらの機会も活用を検討したい。さらに飲食業など影響の大きい業界によっては、業界団体が統一的に対応を図っている場合も考えられる。広報誌などにセミナー等情報が掲載されていないか、今一度確認しておきたい。 また、中小事業者が軽減税率への対応としてレジや受発注システムの改修を行う際に受けられる軽減税率対策補助金については、昨年、補助事業の完了期限が「平成30年1月31日までに申請したもの」から「平成31年9月30日までに事業完了したもの」へ延長されたものの、冒頭のアンケート結果などから、今後、駆け込みの申請が急増することも十分想定される。 一方で中小企業庁からは、公募要領や申請の手引きなどをしっかりと読み込まずに申請して却下されるケースや、不適切と思われる申請案件が多くあるとの注意喚起がなされており、不正と疑われる案件については補助金の返還を求められることもあるとしているため、慎重かつ速やかな対応が望まれるところだ。 これら軽減税率をめぐっては、マスコミによる報道等の効果もあって比較的意識が向けられている面もあるが、来年10月から消費税の税率が2%引き上げられる(変更となる)ことへの実務上の対応については、二度の延期という経緯もあり、意識の薄れという印象も否めない。 この点について当面留意したいのが、8%の引上げ時にも問題となった「経過措置」、すなわち、税率引上げ後においても旧税率が適用される取引の存在だ。国税庁が公表した「消費税法改正のお知らせ(平成28年4月)(平成28年11月改訂)」には主な経過措置の内容が示されているため、自社にこれらに係る取引形態のものが存在する場合は、契約書の日付や更新時期、消費税の取扱いに関する条項などを確認しておきたい。なお、軽減税率が適用される取引については経過措置が適用されないケースもあるため、この点も留意しておきたい。 また、法令上求められる対応を前提として、実際に自社がどのような手順でどのような対応をとるべきかについては、2014年4月1日に5%から8%への税率引上げが行われた前後において、どのような対応を行ったか、またはどのような問題が起きたか、という点も参考となる。経理や法務、システム等の担当者が当時と異なる場合は、当時の担当者へのヒアリングや社内記録の確認などを行うことも有効といえよう。 ここで、前回の引上げと異なり、今回はその時期が10月1日であるという点も留意しておきたい。つまり3月決算法人の場合、事業年度途中に税率が変更されるということは、様々な準備を行う上で意識しておくべだろう(本件については11月に本誌で解説記事を掲載する予定です)。 なお、最新の情報がまとめられた次のDVDや書籍についても有効に活用し、社内研修等で従業員への周知を図っていただきたい。 (了)

#No. 287(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/10/01

《速報解説》 日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会が報告書「監査活動の現状と監査役の役割・責任について」を公表~昨今のコーポレートガバナンス改革に伴い監査役監査全般について課題・問題点をとりまとめ~

《速報解説》 日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会が報告書 「監査活動の現状と監査役の役割・責任について」を公表 ~昨今のコーポレートガバナンス改革に伴い監査役監査全般について課題・問題点をとりまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年9月27日(ホームページ掲載日)、日本監査役協会関西支部監査役スタッフ研究会は「監査活動の現状と監査役の役割・責任について-コーポレートガバナンス改革を受けた実効的な監査役監査を目指して-」(以下「報告書」という)を公表した。 これは、平成27年5月に改正会社法、改正会社法施行規則の施行、同年6月にはコーポレートガバナンス・コードの適用が開始され、約3年が経過したこともあり、改めて監査役監査全般について、各社の監査活動の現状を調査し、それぞれの活動における課題や問題点等について研究を行ったものである。報告書にはアンケート結果も記載されているので、実務の動向などを知ることができる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 報告書は、第1章に機関設計毎の監査役の責任と権限に関する解説、第2章に監査活動に関する今回のアンケート結果、第3章にスタッフ研究会としての意見という構成となっている。 以下では主な内容について解説する。 1 重要会議(経営会議、常務会等)への出席 重要会議(経営会議、常務会等)にどの程度出席しているかについては、大会社以外を含め、90%以上の会社が大半又はすべての会議に出席しており、監査役が重要視していることが伺えるとのことである(15ページ)。 その他の会議への出席については、代表取締役及び取締役が出席する会議(予算策定・決算報告の事前会議、投融資会議、保安防災・安全会議等)、内部統制システムに係る重要な会議・委員会(内部統制委員会、リスク・マネジメント委員会等)、その他情報収集のための必要な会議等が挙げられる(18ページ)。 2 役職員からの非定例報告(リスク情報の聴取) 役職員からのリスク情報(事件・事故・不祥事情報、法令違反、セクハラ・パワハラ・メンタル疾患の発生など)の聴取での工夫に関して、事実を正確に聴取し、情報の信頼性を確認することを重視し、複数の関係者から事情聴取を行ったり、聴取前に事前調査を実施したりすることや、気になることや疑問点があれば積極的に事情聴取を実施していることなどが記載されている(23ページ)。 3 子会社の役職員からの報告聴取など 子会社往査を報告聴取の場として活用する会社が多いが、子会社の重要性等により頻度や報告方法を変えるなど、メリハリをつけて実施しているという回答も多数見られるとのことである(26ページ)。 子会社との定期的なミーティングや、質問票の事前送付、報告書の事前提出などにより、効率化の工夫をしている事例も見られるが、それでもなお、子会社を多く有する会社では、報告聴取の機会づくりは、限りある要員と時間の中で課題となっているようであるとのことである(26ページ)。 また、子会社への往査の手法としては、面談・ヒアリングと現地視察が会社区分にかかわらず80%以上と最も多いとのことである。常勤監査役が直接子会社へ赴き、面談・ヒアリングを行うケースが多いと思われるが、内部監査部門や会計監査人に同行するケースは半数以下であった(30ページ)。 4 会計監査人との連携 監査役(会)と会計監査人との連携は、四半期毎に実施している会社が多いとのことである。会計監査の実施状況だけでなく、双方が様々な事象やリスクについて忌憚のない意見交換ができるよう、代表社員以外の実務担当者ともコミュニケーションの機会を設けており、会計監査人の監査によって得られた情報を、監査役監査にも生かせるよう工夫を行っているものと考えられるとのことである(40ページ)。 5 計算関係書類の監査 会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類を作成した取締役から計算関係書類を受領し、監査役の視点から監査を実施するが、その後、会計監査人から会計監査報告を受領し、会計監査人の監査の方法及び監査の結果について意見表明、監査報告の作成を行う(41ページ)。 したがって、計算関係書類の監査については、第一義的には職業的専門家である会計監査人が行うことになるが、監査役としても、計算関係書類の記載項目の適法性、計算関係書類の数値の適正性について監査することが必要である(41ページ)。 大会社では、会計監査人の監査結果の確認と経理部門からの説明により計算書類関係の適法性、適正性の確認を行っているケースが多いが、重要な項目については、根拠資料を自ら確認し、会計監査人の監査結果への意見形成の材料とする必要があるとのことである(42ページ)。 6 会計監査人の相当性の判断 会計監査人の相当性判断において、70%を超える会社に基準があり、そのうち85%の会社がチェックリストを作成しているとのことである(45ページ)。 監査計画や監査の実施状況を、会計監査人からの報告聴取や監査立会いで確認している会社が多いと思われるが、相当性の判断では、監査役との適切なコミュニケーションや監査計画の妥当性、監査チームの体制等が重視されているとのことである(45ページ)。 7 有価証券報告書等の監査 監査役による有価証券報告書の記載内容の監査については、法令上義務付けられていないが、取締役の職務執行の監査の一環として、虚偽記載がなく適正に作成・報告されていることを確認する(45ページ)。 しかしながら、監査の方法については、取締役会での報告・聴取だけでよいのか、さらに根拠資料の確認まで実施するべきではないのかなど、一律的なルールではなく、開示資料の重要性や作成プロセスの適切性に対する監査役としての判断が重要になってくると考えられるとのことである(47ページ)。 (了)

#No. 287(掲載号)
#阿部 光成
2018/10/01

《速報解説》 改正相続法で新設される預貯金債権の仮払い制度、単独行使による金融機関ごとの払戻し限度額は150万円に~改正法務省令案がパブコメに付される~

《速報解説》 改正相続法で新設される預貯金債権の仮払い制度、 単独行使による金融機関ごとの払戻し限度額は150万円に ~改正法務省令案がパブコメに付される~   Profession Journal編集部   本年7月6日に成立し同月13日に公布された民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律、いわゆる民法(相続法制)の見直しについては、遺言書制度の見直しや配偶者居住権の創設等の一部を除き、施行は公布日から1年以内とされている。 法務省はこのほど9月28日付で、改正民法に関する法務省令案を公表し意見募集を行っている(意見・情報受付締切日は10月27日)。 今回パブコメに付された法務省令案は、次の事項について定められたもの。 平成28年12月19日の最高裁決定によって、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、共同相続人による単独での払戻しができないこととされたため、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金が必要な場合にも、遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払戻しができないという問題が指摘されていた。 このため改正民法では、一定の条件下で、次の2つの方法によって、遺産分割前でも被相続人の預金の払戻しが受けられる仮払い制度が創設されることとなった。 上記のうち①の方法については、家庭裁判所への申立てが必要とされ、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができるとされ(改正家事事件手続法200条3項)、仮払いの額については家庭裁判所の判断によるものとされている(詳しくはこちらを参照)。 一方で②の方法による場合、家庭裁判所への申立ては必要とされず、共同相続人が単独で(他の共同相続人の同意がなくても)以下の【計算式】で求められる金額まで払戻しを受けることができる(改正民法909条の2)。 ただし、この場合の払戻し金額には上限が設けられており、改正民法では下記のとおり、その具体的な限度額については、法務省令に委ねられていた。 今回パブコメに付された法務省令案では次のとおり、その限度額を150万円と定めている。 これまで法制審議会では金融機関1つあたりの上限を100万円で検討していたが、法務省はパブコメの補足説明において、150万円という限度額を定める際の考慮要素として、上記改正民法にて「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案」するとされていることから、「標準的な生計費の額」として世帯人員が1名の標準生計費は1ヶ月当たり12万円弱、「平均的な葬式費用の額」として150万円前後という数値を各種統計情報から導き出し、さらに金融機関における平均口座保有数が約3.5個であることから、複数の金融機関から合計で150万円を超える金額を払い戻すことも可能であるとしている(根拠となる統計情報については補足説明を参照)。 また法務省は、仮に単独による預貯金の払戻しによって必要となる生計費等の額をまかなうことができない場合には上記①の方法によることもでき、さらに、払戻しをすることのできる金額が多額になると、具体的相続分を超過した払戻しがされた場合に他の共同相続人の利益を害する程度が大きくなることをその理由として説明している。 なお、今回の法務省令案については、冒頭述べたとおり意見・情報受付締切日は10月27日とされ、改正民法の施行の日から施行される。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 257(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/09/28

《速報解説》 金融庁、「監査上の主要な検討事項」(KAM)記載に対応した「財務諸表等の監査証明に関する改正内閣府令(案)」等を公表

《速報解説》 金融庁、「監査上の主要な検討事項」(KAM)記載に対応した 「財務諸表等の監査証明に関する改正内閣府令(案)」等を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年9月26日、金融庁は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会、平成30年7月5日)により、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」を記載することなどを受けたものである。 意見募集期間は平成30年10月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」(案) 監査報告書等の記載事項について、次のように規定する。 2 「企業内容等の開示に関する内閣府令」(案) 「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条の臨時報告書の記載内容等に関する改正である。   Ⅲ 適用時期等 改正後の府令は公布の日から施行する。 なお、以下の経過措置が規定される予定である。 また、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の一部改正に伴う経過措置も規定される予定である。 (了)

#No. 287(掲載号)
#阿部 光成
2018/09/27

《速報解説》 BEPS防止措置実施条約、2019年1月1日の発効が明らかに~条件を満たした租税条約相手国は現在5ヶ国~

《速報解説》 BEPS防止措置実施条約、2019年1月1日の発効が明らかに ~条件を満たした租税条約相手国は現在5ヶ国~   弁護士 木村 浩之   1 BEPS防止措置実施条約の発効 平成30年9月27日付けで、財務省は、BEPS防止措置実施条約(税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約)が、日本について、2019年1月1日に発効することを公表した。 これにより、同日以降、関係する各国との租税条約(所得に対する租税に関する二重課税防止のための条約)が、BEPS防止措置実施条約に従って修正され、適用されることになる。   2 BEPS防止措置実施条約とは 平成27年10月にOECDがBEPSプロジェクトの最終報告書を公表したが、それには租税条約の改正に向けた内容が含まれる。これを受けて、平成29年11月にはOECDモデル租税条約の改正がなされた。 ところが、租税条約は通常二国間で締結されるものであるところ、モデル条約の改正はあくまでも将来の二国間の交渉によって租税条約を新規に締結する場合や改正する場合に参照されるべきものであり、過去に締結された租税条約を書き換える効力を有するものではない。すでに締結されている租税条約は3,000を超えて存在しており、実際にこれらが改正されるには非常に長い年月を要する。 このようなことから、既存の租税条約の改正をより迅速かつ効率的に実現するため、多数国間でBEPS防止措置実施条約が締結された。これに日本も含まれており、今般、その発効に必要な手続が完了したものである。   3 BEPS防止措置実施条約の適用関係 BEPS防止措置実施条約は、適用関係がやや特殊であり、各国が相互に相手国との間の租税条約について適用することを選択し、かつ、必要な手続を経て各国について本条約が発効した場合に適用される。 日本に関しては、かかる条件を満たした租税条約の相手国は次のとおりとされる(平成30年9月26日現在)。 また、本条約は様々な規定を含むものであり、各国が必ず適用しなければならない規定と各国が任意に適用を選択できる規定があるが、いずれにしても双方の国で適用することが選択された規定のみが適用される。 日本では、次のとおり規定の適用について選択がなされている。   4 実務上の留意点 二国間の租税条約を適用するに当たっては、否応なく、BEPS防止措置実施条約の適用関係を踏まえて、既存の租税条約にどのような修正がなされているかを確認する必要がある。本稿は、日本の租税条約についての適用関係の概要を述べたものであるが、海外に子会社を有する企業にとっては、日本の租税条約のみならず、日本が当事者とはなっていない租税条約についての適用関係も検討する必要がある。 これはかなり複雑な作業となりうるが、OECDにおいて、各国の選択や本条約の発効状況についての取りまとめがなされている。その上で、簡易に適用関係が確認できるデータベース(ベータ版)が提供されているので、これを活用することが有用である。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 287(掲載号)
#木村 浩之
2018/09/27
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