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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載59〕 ヤフー事件(東京地裁判決)からみた買収後の合併により被合併法人の欠損金を引き継ぐ場合の「みなし共同事業要件」に関する考察

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載59〕 ヤフー事件(東京地裁判決)からみた 買収後の合併により被合併法人の欠損金を引き継ぐ場合の 「みなし共同事業要件」に関する考察   税理士 竹内 陽一   はじめに ヤフー事件の判決が平成26年3月18日に東京地裁で出された。 この判決文がTAINSデータベースに収録されたことから、以下、この判決文によりその概要をまとめ、欠損金のある法人の買収事案のうち、特定役員引継要件によって「みなし共同事業要件」をクリアしようとする場合の注意点について述べたい。 なお本件の教訓としては、欠損金のある法人の合併による買収事案においては、欠損金を引き継ぐために、買収による支配関係成立前に、規模要件や特定役員引継要件を満たすか否かを判断し、速やかに合併するか、あるいは、支配関係発生から5年超経過要件を満たしてから合併をするか、という2つの選択肢しかない、と言っても過言ではない。   1 事件の概要 判決文では、原告を「A株式会社」、その株式の42%を保有している法人を「B社」としているが、これらは既知であるため、本稿では、「B社」をソフトバンク=S社とし、「A株式会社」をヤフー日本法人=Y社と表示する。 そして、被合併法人は「C社」、C社の非適格分割によって設立された法人を「F社」と表示する。また、S社社長兼Y社会長を乙、S社取締役兼Y社社長を丙と表示する。 ヤフー事件においては、買収及び合併の直前に丙が被合併法人となるC社の副社長に就任した後に合併を行い、特定役員引継要件を充足したものとして、合併によりC社の繰越欠損金543億円(平成14年3月期から平成18年3月期まで)をY社に引き継いだことが問題とされた。   2 事件の事実関係 平成20年10月27日に、乙から丙に対し、S社の100%子会社であるC社をY社の100%子会社とする提案があり、同年11月21日には、この提案に沿う組織再編成計画書が作成されていた。 同計画書によると、その手順は、下記4段階で構成されていた。 以上のうちF社の件については、同日判決のIDCS事件の判決文に記載されているはずであるが、本稿執筆時点において、この判決文は確認できていない。 C社の繰越欠損金は、平成15年3月期から平成18年3月期までで、合計543億円である。 仮に、5年超経過要件を充足させて合併を行うということになれば、平成21年3月期が特定資本関係発生事業年度であるため、平成18年3月期以前の繰越欠損金はすべて控除できないこととなり、上記の543億円は、その全額が控除できないことになる。 Y社は、3月決算法人である。 実際には、本件合併は次のように行われている。 C社は、F社の分割まではデータセンター事業を行っていた。C社の代表取締役は乙であり、平成20年3月末のC社の従業員数は123名(ヤフー社IR情報平成21年2月19日)であったが、従業員は上記②の分割と同時にF社に出向した。   3 本件の争点に関する裁判所の判断 本件の争点のうち次に掲げるものについて、裁判所がどのように判断を下したのかを確認する。 (1) 合併法人の社長による被合併法人の副社長就任 本件裁判の焦点は、みなし共同事業要件を満たすために、買収直前に買収法人の社長が被合併法人の副社長に就任したというケースに対して、法人税法132条の2の規定を適用できるのか、という点にある。 (2) 132条(同族会社等の行為又は計算の否認)と132条の2の相違点 本件裁判のもう一つの焦点は、132条の2と132条には解釈の同一性があるのか否かということであり、原告側の鑑定意見書は、いずれも同一性があると主張した。 つまり、租税回避防止規定として従来から存在する同族会社等の行為又は計算の否認の規定と同様の解釈を求めた。 これに対して、裁判所の判断は、事業上の理由や事業目的がない事案に適用されることが多い132条とは違って、事業上の理由や事業目的があって行った組織再編成であっても、個別規定の趣旨・目的に明らかに反する状態となっているものには、132条の2の規定が適用される、ということを示した。 なお、法人税法132条の2については、下記の解説がある。 (大蔵財務協会『平成13年版改正税法のすべて』243・244頁) ここでは、個別の租税回避防止規定で否認されなかったものも含めて、租税回避となるものを否認するために132条の2を創設したことが明らかにされている。 (3) みなし共同事業要件における特定役員引継要件の趣旨 この法人税法施行令112条7項のみなし共同事業要件については、従来、同令4条の3第4項の適格判定の共同事業要件と同じものという程度の表面的な理解しかされていなかった。 一般には、事業規模要件については、特定資本関係発生時から合併までの期間において2倍以内の変化がないという要件と理解され、特定役員引継要件については、特定資本関係発生日前から特定役員であることを求める要件と理解されていたものの、これらの2つの要件を比較して特定役員引継要件の趣旨を深く理解するといったことまでは行われていなかった。 本件判決のように、特定資本関係の発生の前後の特定役員をどのように捉えて特定役員引継要件が設けられているのかということを深く考えるといったことは行われてこなかったと言ってよい。 本件判決により、適格判定の共同事業要件とは別に、繰越欠損金の引継ぎ要件であるみなし共同事業要件を厳しい基準として捉え、特に、特定資本関係(現在の支配関係)の発生の前後の状態に十分に注意しなければならない、ということが明確になった。 重要な点は、下記図の通り、特定資本関係発生の直前期以前の繰越欠損金を引き継ぐことから、特定資本関係発生の直前の期間における特定役員要件の充足が鋭く問われるということである。 法人税法施行令112条7項については、次の解説がある。 (大蔵財務協会『平成13年版 改正税法のすべて』199頁) 上記の解説においては、合併直前ではなく、特定資本関係発生時の要件が重要であることが端的に述べられている。 〈合併の場合の「共同事業要件」における検討期間の概要図〉 〈合併の場合の「みなし共同事業要件」における検討期間の概要図〉 (平成26年4月4日 日本税制研究所・一般社団法人FIC共催セミナー「組織再編成と行為計算否認」日本税制研究所代表理事 朝長英樹作成のレジュメ 論点7(副社長就任が租税回避行為となるのか否かの判断基準p8より引用) (4) 特定役員引継要件において考慮されるべき具体的事情 以上のように、特定資本関係発生以前の時期におけるその役員の任期、その職務内容が問われることとなる。 つまり、特定役員要件については、特定資本関係発生前の期間、特定資本関係から合併までの期間、合併以後の期間の3つの期間において、過去の事業の状態の継続性を考える必要があり、特定資本関係発生前の期間の事業の状態が継続することが求められているわけである。 繰越欠損金の引継ぎの制限があるのは、特定資本関係発生前の事業年度の欠損金であり、特定資本関係発生事業年度から最後事業年度までの欠損金は適格要件を満たすことのみで引き継がせることから、本来は、当然にそのように理解する必要があったのである。 なお、本件においては、適格要件を満たすことのみで繰越欠損金の引継ぎが可能な特定資本関係発生後の事業年度が1期だけあるが、その事業年度においては、欠損金が生じていない。 (5) 本件事案での特定役員引継要件の事情 本件の場合、C社副社長の業務は、特定資本関係発生前において、被合併法人に固有の事業であるデータセンター事業に関与したとは認められないということと、関与した職務が特定資本関係発生以後合併までの期間における本件スキ-ムに係る職務であり、後者は、特定役員引継要件からいえば、特段、考慮される事情ではない、とされている。 すなわち、第1に、特定資本関係発生以前に、特定役員として被合併法人において経営に従事していた事実はなく、第2に、法人税法施行令112条7項5号の要件を満たすためにのみ特定役員への就任時期が買収直前とされていること、第3に、特定役員の在任期間について、特段、3年というような要件はないが、同号の要件を満たすことが目的で不自然に短期となっていること、この3点により、租税回避とされているわけである。 なお、特定役員の在任期間が短期間である場合の問題点については、分割の例で、次のように指摘されていたが、当然、合併においても、同様となる。 (大蔵省主税局税制第一課(法人税制企画室)課長補佐 朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』(社団法人日本租税研究協会発行)90頁 平成13年8月10日) (了)

#No. 66(掲載号)
#竹内 陽一
2014/04/24

貸倒損失における税務上の取扱い 【第16回】「判例分析②」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第16回】 「判例分析②」   公認会計士 佐藤 信祐   第15回目においては、日本興業銀行事件に係る第1審における当事者の主張についてそれぞれ解説を行った。 本稿においては、これに対する裁判所の判断について解説を行うこととする。 ③ 裁判所の判断 (ⅰ) 争点の整理 (ⅱ) 本件債権を全額回収不能と評価することの可否(争点1) (ⅲ) 本件債権放棄と損金算入の当否(争点2) (ⅳ) 総括 このように、争点1については、法人税基本通達9-6-2に近い考え方により判断し、争点2については、「債権放棄の有無にかかわらず、その全額を損金に算入できるものというべきであるから、争点2についてはもはや判断を示す必要はない」としながらも、法人税基本通達9-4-1に近い考え方により判断していると考えられる。なお、法人税基本通達9-4-1の根拠については、法人税法37条7項括弧書により寄附金から除外するのではなく、経済合理性があるという理由により、「無償による経済的利益の供与」に該当しないとしているのも注目に値する点である。 なお、争点1については法人税基本通達9-6-2に近い考え方により判断しているものの、債権放棄の効力が生じており、かつ、全額回収不能であるということであれば、法人税基本通達9-6-1(4)で判断する余地もあるため、全額回収不能ということが立証されれば、債権放棄の効力が生じていれば法人税基本通達9-6-1(4)、債権放棄の効力が生じていなければ法人税基本通達9-6-2で判断すると整理することになるのかもしれない。また、全額回収不能と評価し得ない前提で争点2の検討をしていることから、争点2のみで判断するとなれば、法人税基本通達9-4-1で判断するという整理になるのかもしれない。このような法人税基本通達の当てはめについては判決文においてはほとんど触れられていない。法人税基本通達は解釈に過ぎず、法令ではないことから、判決文ではほとんど触れられていなかったことについてはやむを得ないが、税務実務の現場感覚と、税務訴訟における感覚との差異という点で興味深い判決文であるとも言える。 また、第1審における裁判官の中に藤山雅行氏が含まれていたことについても注目に値する点である。藤山雅行氏は納税者に有利な判決を下すことが多く、東京地方裁判所民事第三部に所属されていたことから、「国破れて三部あり」と揶揄されることもあったが、判決文における理論構成は、オウブンシャホールディングス事件(東京地裁平成13年11月9日判決)、日本スリーエス事件(東京高裁平成12年11月30日判決)にあるように、一考に値するものであり、とりわけ日本スリーエス事件では納税者が敗訴しているように、必ずしも納税者に有利な判決を下しているわけでもないことが分かる。 次回以降は、控訴審判決、上告審判決についてそれぞれ触れた上で、さらなる詳細な分析を行う予定である。 (了)

#No. 66(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/04/24

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第28問】「家屋の建築途中に転勤し、妻子の住む家屋を譲渡した場合」-配偶者等の居住用家屋-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第28問】 「家屋の建築途中に転勤し、妻子の住む家屋を譲渡した場合」 -配偶者等の居住用家屋-   税理士 大久保 昭佳   Q 会社員Xは、5年前に東京都に土地を取得し、4年前に居住用家屋の建築に着工しましたが、その完成前に転勤により名古屋市へ単身赴任しアパート住まいをしていました。 転勤後にその家屋は完成し、その家屋にはXの妻子が約3年半居住していました。 このほど、その家屋と敷地を売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 Xは、その家屋の建築途中に転勤し、その家屋に居住したことはないが、その譲渡直前までXと生計を一にする妻子が居住していたものであり、かつ、転勤という事情が解消したときは、妻子と起居を共にすることとなると認められる事情があるため、その家屋は、Xにとっても、その居住の用に供している家屋に該当する(措通31の3-2(居住用家屋の範囲)(1))。 (了)

#No. 66(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/04/24

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第14回】「給与計算と源泉徴収」

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第14回】 「給与計算と源泉徴収」   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久   1 源泉徴収制度 (1) 源泉徴収制度の概要 源泉徴収制度とは、給与等を支払う者(源泉徴収義務者)が、支払いの都度、支払金額に応じて定められている所得税及び復興特別所得税(以下、「源泉所得税」という)を計算し、支払金額からその源泉所得税を差し引き、原則として、実際に給与等を支払った月の翌月10日までに国に納付する制度です(所法6、復興財確法8②)。 (2) 復興特別所得税 平成25年1月1日から平成49年12月31日までに生じる所得については、所得税を徴収する際に復興特別所得税を併せて徴収し、その合計額を国に納付する必要があります。また、源泉徴収する復興特別所得税の税率は、源泉徴収する所得税の額の2.1%です(復興財確法27、28)。 (3) 源泉徴収の時期 源泉所得税を源泉徴収する時期は、実際に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。したがって、給与を後払いする場合のように、給与を支払うことが確定していても、実際に支払われなければ、原則として源泉徴収する必要はありません。 (4) 源泉所得税の納税地 源泉徴収義務者が源泉徴収した給与等に対する源泉所得税は、その納税地の所轄税務署に納付します。この場合の納税地は、原則として、給与等の支払事務を取り扱う事務所の所在地です(所法17等)。 (5) 源泉所得税の納付 源泉徴収した源泉所得税は、原則として、実際に支払った月の翌月10日までに納付する必要があります(所法181等)。 また、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、源泉所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があり、これを納期の特例といいます(所法216、217)。なお、この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした源泉所得税と、税理士、社会保険労務士等の一定の報酬から源泉徴収をした源泉所得税に限られます(所法216)。 (6) 給与所得と確定申告 源泉徴収された源泉所得税の額は、源泉徴収だけで課税関係が終了する源泉分離課税の利子所得等を除き、最終的にはその年の年末調整により所得税の額が精算され、一定の事由を除き、確定申告をする必要はありません。 2 給与所得における源泉徴収事務 (1) 給与所得における源泉徴収事務の流れ (2) 給与所得の範囲 「給与所得」とは、役員や使用人に支払う給料、賃金、賞与等をいいます。また、役員や使用人に支給する残業手当、休日出勤手当、職務手当等は、原則として給与所得に含まれますが、例えば次のような手当は非課税給与となり、給与所得には含まれません。 なお、給与は、金銭で支給されるのが普通ですが、食事の現物支給や商品の値引販売のような経済的利益は現物給与といい、原則として給与等に含まれます。 現物給与には、①職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、②換金性に欠けるもの、③その評価が困難なもの、④受給者側に物品等の選択の余地がないもの等、金銭給与と異なる性質があるため、特定の現物給与については、課税上、金銭給与とは異なった取扱いが定められており、例えば次のようなものは非課税給与となり、給与所得には含まれません(所法9、28)。 (3) 税額表 給与等を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求めます。この税額表には、「月額表」「日額表」「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の3種類があります。 (4) 源泉徴収する税額の計算例(平成26年分) 〈税額の計算〉 社会保険料等控除後の給与等の金額は、412,384円-6,500円-48,115円=357,769円となります。 「別表第二 月額表」の「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」欄で、357,769円が含まれる「356,000円以上359,000円未満」の行を探し、「甲欄」の「扶養親族3人」の欄と交わる欄に記載されている金額5,840円が、その給与等の金額から源泉徴収する税額です。 ※画像をクリックすると大きい画像が開きます。 (了)

#No. 66(掲載号)
#草薙 信久
2014/04/24

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第20回】 「遺言の確認方法とその効力」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第20回】 「遺言の確認方法とその効力」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   相続税申告業務を行う際には、相続人・相続財産の確定後、(1)遺言の有無、(2)遺言がない場合には遺産分割協議、という流れになる。 今回は、この遺言について学ぶこととする。 1 遺言の確認方法 遺言(普通方式)には、「公正証書」「自筆証書」「秘密証書」の3つがある(民法967条)。 〈公正証書遺言〉 公正証書遺言とは、公証人(公証役場)により作成された、一定の要件を満たしている遺言である(民法969条)。 遺言作成者が他界後、相続人は公証役場に、戸籍、身分証明書等などを持参すれば、公正証書遺言の有無、及び有る場合にはその内容を確認することができる。 平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、作成された公証役場だけでなく、全国のどこの公証役場でも確認することができる。 公証役場がどこにあるかは、日本公証人連合会のウェブサイトで確認することができる。 〈自筆証書遺言〉 自筆証書遺言とは、遺言者が、全文、日付及び氏名を自署し、押印することで作成される遺言である(民法968条)。遺言者の他界後、家庭裁判所で検認が必要である(民法1004条)。 自筆証書遺言は、公証役場にあるわけではなく、自宅金庫、銀行貸金庫などを探して有無を確認する必要がある。発見された場合には、遺言書の保存を確実にし、後日の変造・隠匿を防ぐために、家庭裁判所の検認が必要とされている。 〈秘密証書遺言〉 秘密証書遺言とは、遺言書に遺言者が署名押印しその証書を封じ、証書に用いた印章で封印し、公証人等へ提出して公証人・証人が署名押印する遺言である(民法970条)。遺言者の他界後、家庭裁判所で検認が必要である(民法1004条)。 自筆証書遺言と同様に、公証役場に保管されているわけではないため、自宅金庫などを探し、有無を確認する必要がある。家庭裁判所の検認が必要であることも、自筆証書遺言と同様である。   2 遺言の効力 法律的に有効な遺言がある場合、その内容に従い、相続財産の取得者が決まる。 ただし、遺留分、遺言の取消しが実務上、問題となることが多い。 〈遺留分〉 遺言は作成者(被相続人)の意思のみで作成されるものであるため、極端な例で言えば、相続人が全く財産を相続できない可能性もある。 民法においては、相続は遺族の生活保障などの役割を有していると考えられ、一定の被相続人については、相続財産の一定割合を留保する制度が設けられている。これが「遺留分」というものである(民法1028条)。 具体的な例として、被相続人Aが、自己の財産のすべてを長男に相続させる遺言を作成した場合を考える。 この場合、遺言に従い、長男がすべての財産を相続するが、他の相続人(次男など)は全く相続できないことになってしまうため、法律上は、遺留分について、他の相続人は権利を主張することができる(「遺留分減殺請求」という)。 なお、あくまで権利を主張した場合(遺留分減殺請求をした場合)にのみ認められるものであり、これを行わない場合には遺留分は認められない(*1)。 遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人であり、原則的には、法定相続分の2分の1が遺留分となる(*2)。 〈遺贈の放棄〉 遺言により財産を取得する者は、遺贈を放棄することが可能である(民法986条)。その場合には、遺言者の死亡時に遡って効力が生じることとなる(つまり、最初から遺言がなかったことに法律上取り扱われる)。 この場合には、「遺言がない状態」ということになり、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意を得る必要が生じる。 実務的には、遺言に従わず、相続人全員で、遺言と異なる内容で遺産分割協議書を作成する場合があるが、この場合、法律的には、遺贈の放棄が行われ、遺言がない状態に法律上なるため、相続人全員で遺産分割協議を行った、という構成になると考えられる。 (了)

#No. 66(掲載号)
#根岸 二良
2014/04/24

企業結合会計基準に対応した改正連結実務指針等の解説 【第1回】「追加取得の会計処理」-子会社株式から子会社株式

企業結合会計基準に対応した 改正連結実務指針等の解説 【第1回】 「追加取得の会計処理」 -子会社株式から子会社株式   公認会計士 布施 伸章   ◆ 解説 ◆ 1 子会社株式の追加取得の連結上の基本的な会計処理 子会社株式を追加取得した場合には、上記のように、追加取得した株式に対応する持分を非支配株主持分から減額(②240)(※)し、追加取得により増加した親会社の持分(追加取得持分(※))を追加投資額(①300)と相殺消去したうえで、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額(③△60)は、資本剰余金とすることになる(連結会計基準28項)。 (※) 追加取得持分及び減額する非支配株主持分は、追加取得日における非支配株主持分の額により計算する(連結会計基準(注8))。 また、連結会計基準に従い、上記の差額を資本剰余金から控除した結果、資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金をゼロとし、当該負の値を利益剰余金から減額することになる(連結会計基準30-2項)。 この会計処理は、自己株式等会計基準40項と同様に行うため、負の値となった資本剰余金は、連結会計年度末において、利益剰余金で補てんし、その残高を確定することになり(資本連結実務指針39-2項)、四半期での会計処理は洗い替えることになる。   2 取得関連費用(付随費用を含む)の会計処理 支配獲得後において、子会社株式を追加取得した際に発生した取得関連費用(付随費用を含む)は、連結上、発生した連結会計年度の費用として処理されるが、個別上は、取得関連費用のうち付随費用を取得価額に含めることとなる(資本連結実務指針46-2項)。   3 連結上の税効果の会計処理 1のとおり、連結会社が子会社株式を追加取得した場合、追加取得により増加した親会社の持分と追加投資額との間に生じた差額(親会社の持分変動による差額)は(のれんではなく)資本剰余金として処理することとされたため、子会社への投資の個別貸借対照表上の価額と連結貸借対照表上の価額との間に差額が生じることになる。 また、2のとおり、追加取得に係る子会社株式の取得関連費用の会計処理は、連結上と個別上とで異なることとなったため、子会社への投資の個別貸借対照表上の価額と連結貸借対照表上の価額との間に差額が生じることになる。 これらの差額は、連結財務諸表固有の一時差異に該当し、連結税効果実務指針32項又は37項に従って税効果の会計処理を行うことになる。 (了)

#No. 66(掲載号)
#布施 伸章
2014/04/24

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第4回】「個別財務諸表における税効果会計」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第4回】 「個別財務諸表における税効果会計」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   「税効果会計」とは、将来の税金を減少させる効果を繰延税金資産として計上し、将来の税金を増加させる効果を繰延税金負債として計上する会計処理である。 例えば、会計上は当期に費用計上するが、税務上は翌期以降に損金算入する場合、将来に損金算入されることにより将来の課税所得が減少し、将来の税金が減少する。この減少の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金資産(回収可能性ありの場合、詳細は【STEP4】参照)として計上する。 反対に、税務上は当期に損金算入するが、会計上は翌期以降に費用計上する場合、将来の当該費用計上額は税務上加算され、将来の課税所得は増加し、将来の税金が増加する。この増加の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金負債として計上する。 また、税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説し、「連結財務諸表における税効果会計」は第5回で、「連結納税における税効果会計」は第6回で取り上げたい。 個別財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。 この5つのステップをフロー・チャートにすると、以下のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   税効果会計は、将来の課税所得(税金)を増減させる効果を財務諸表に反映する会計処理である。そのため、【STEP1】では会計上と税務上の差異のうち、将来の課税所得(税金)を増減させる差異である一時差異等を集計する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 一時差異等と永久差異の分類 会計上と税務上の差異には、一時差異等と永久差異がある。 一時差異等には、会計上の資産及び負債と税務上の資産及び負債の差額が将来、解消することにより、将来の課税所得(税金)が増減する一時差異と、一時差異ではないが将来の税金を減少させるものである繰越欠損金等の一時差異に準ずるものがある。 永久差異とは、会計上と税務上の差異であるが、将来の課税所得(税金)を増減させる効果がないものである。 まず、会計上と税務上の差異で、将来の課税所得を増減させる効果がある一時差異等と効果がない永久差異に分類する。 次に、繰越欠損金等に該当するか否かで、一時差異に準ずるものと一時差異に分類する。   (2) 一時差異 一時差異とは、会計上の資産及び負債の金額と税務上の資産及び負債の金額との差額をいう(税効果会計に係る会計基準(以下、「基準」という) 第二 一2)。 以下のものが該当する。 また、一時差異はその差異解消時に将来の課税所得(税金)を減少させるか、増加させるかで、将来減算一時差異と将来加算一時差異に分けることができる(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、「実務指針」という)6)。 一時差異は、法人税申告書の別表5(1)から集計することができる。 ① 将来減算一時差異 将来減算一時差異とは、会計上と税務上で資産又は負債の差異が生じたときに課税所得の計算上(税務上)加算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上(税務上)減算されるものである(実務指針7)。言い換えると、会計上と税務上の資産又は負債の差異の将来解消時に課税所得が減少し、税金が減少するものである。 将来減算一時差異には、未払事業税、貸倒引当金繰入限度超過額、棚卸資産評価損否認額、賞与引当金、退職給付引当金等がある。 ② 将来加算一時差異 将来加算一時差異とは、会計上と税務上で差異が生じたときに課税所得の計算上(税務上)減算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上(税務上)加算されるものである(実務指針9)。言い換えると、会計上と税務上の資産又は負債の差異の将来解消時に課税所得が増加し、税金が増加するものである。 例えば、積立金方式による特別償却・圧縮記帳等が該当する。   (3) 一時差異に準ずるもの 一時差異に準ずるものとは、一時差異ではないが、将来の税金を減少させるものであるため一時差異と同様に扱うものである。 これには以下のものが該当する(実務指針11)。 繰越欠損金は法人税申告書の別表7(1)から集計することができる。また繰越外国税額控除は法人税申告書の別表6(3)から集計することができる。   (4) 永久差異 永久差異とは、会計上、費用又は収益として計上されるが、税務上は永久に損金又は益金に算入されないもの(社外流出項目)である。将来の課税所得(税金)を増減させる効果がないため、一時差異等には該当せず税効果会計の対象とはならない。 例えば、交際費や寄附金の損金算入限度超過額、損金算入できない役員賞与、損金不算入の罰科金、受取配当金の益金不算入額が該当する(実務指針14)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 繰延税金資産及び繰延税金負債は、一時差異等に法定実効税率を乗じて算定する。 【STEP2】では、この法定実効税率を算定する。   (1) 法定実効税率とは 法定実効税率とは、法律で定められている税率により計算された税額の課税標準(課税所得)に対する割合(負担率)のことである。 税金にはいろいろあるが、税効果会計の対象となるのは、利益(課税所得)に対する税金である(実務指針36)。そのため、法定実効税率の算定に使用する税率は利益(課税所得)に係る税金の税率である。 具体的には、以下の表の「税効果会計の対象」欄に「〇」を付した税金を法定実効税率の算定に使用する。 (2) 法定実効税率の算定 具体的には、法定実効税率は以下のように算定する(実務指針17)。 税率は決算日現在の税法規定に従った税率を使用する。したがって、決算日までに改正税法が公布されている(施行ではない)場合、改正税法の規定に従った税率を使用する(実務指針18)。 《設例1》 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP3】では、回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。 (1) 回収可能性考慮前・繰延税金資産の算定 回収可能性考慮前・繰延税金資産は以下のとおり算定する。 (2) 繰延税金負債の算定 繰延税金負債は以下のとおり算定する。 (次ページ【STEP4】(1)へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 【STEP3】で算定した繰延税金資産は、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか貸借対照表に計上できない。 そこで【STEP4】では、貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために「繰延税金資産の回収可能性」を検討する。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。 具体的には、以下の(1)~(3)の検討が必要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 会社区分の決定 ① 会社区分の決定 日本の税効果会計は、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、「66号」という)に定められている以下の6つの区分に会社を区分して、その区分ごとの一定の判断指針をもとに繰延税金資産の回収可能性を検討する(66号5)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 そのため、繰延税金資産の回収可能性の検討では、まず会社区分を決定する。 会社区分は、以下の順に判断する(66号5(1))。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 ② 会社区分ごとの判断指針 66号では、会社区分ごとに繰延税金資産の判断指針が設けられている。 会社区分によっては、【STEP4】(2)の全部又は一部の検討が不要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (注) 「回収可能性あり」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることから繰延税金資産を計上できるということである。「回収可能性なし」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることができないため、繰延税金資産を計上できないということである。 (※1) スケジューリングとは、将来減算一時差異の解消時期を合理的に決めることをいう(【STEP4】(2)①参照)。 (※2) その他有価証券評価差額金に係る税効果については、原則、個々の銘柄ごとに判断するが、スケジューリング可能なものと不能なものに分類した上で、評価差額の純額で判断する容認処理が認められている。本解説では実務上よく使う容認処理の場合で解説している。 (※3) 解消時期が長期にわたる将来減算一時差異とは、スケジューリングの結果、一時差異の発生から解消までの期間が長期であるものをいう。例えば、退職給付引当金や建物の減価償却超過額が該当する(66号5(2))。なお、償却資産を減損し、税務上加算した場合、「会計上の簿価<税務上の簿価」となり、減損後の減価償却の際には、「会計上の減価償却費<税務上の減価償却費」となるが、この減価償却費の差額は「通常の」将来減算一時差異に該当する(監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(以下、「70号」という)Ⅱ 2(1))。 (次ページ【STEP4】(2)へ進む) (前ページ【STEP4】(1)へ戻る) (2) 回収可能性の検討 ① 一時差異等の解消のスケジューリング 会社区分の決定の後は、一時差異等の解消のスケジューリングを行う。 一時差異等の解消のスケジューリングとは、一時差異等の解消時期が「いつになるか」を検討することをいう(66号3①②)。 解消時期がわかるものをスケジューリング可能な一時差異等といい、解消時期がわからないものをスケジューリング不能な一時差異等という。 スケジューリング不能な将来減算一時差異は、いつ解消するかが不明であるため、当該一時差異に係る繰延税金資産については回収可能性の判定ができない。そのため、貸借対照表に計上できない(会社区分「1」の場合は除く)。 したがって、スケジューリング不能な将来減算一時差異については、②以降の検討は不要である。 具体的には、スケジューリングは以下のように判断する。  ◆一時差異◆ 【将来減算一時差異】 【将来加算一時差異】  ◆一時差異に準ずるもの◆ なお、スケジューリング不能な将来加算一時差異(例えば、スケジューリング不能なその他有価証券評価差額金(純額)に係る繰延税金負債)は以下の②、③で行う将来減算一時差異の解消見込年度と対応させることができないため、②、③において将来減算一時差異、一時差異に準ずるものと相殺しない(66号4)。  ② 将来減算一時差異(一時差異に準ずるものを含む。以下、同様)と将来加算一時差異の解消年度ごとの相殺 上記①のスケジューリングをもとに、解消年度ごとに将来減算一時差異、将来加算一時差異を相殺する(66号3③)。 将来減算一時差異と将来加算一時差異は将来の課税所得(税金)に対して反対方向の影響であるため、将来加算一時差異と相殺できた将来減算一時差異は、将来の課税所得(税金)を減少させる効果がある。そのため、相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する。 ③ 将来減算一時差異とその繰越期間内の将来加算一時差異との相殺 上記②で相殺できなかった将来減算一時差異は、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記②相殺後の残額の)将来加算一時差異と相殺する(66号3④)。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する。 これは、相殺できなかった将来減算一時差異は課税所得の水準次第(上記②では課税所得は考慮していない)では、将来の欠損金になる可能性もある。そのため、相殺できなかった将来減算一時差異を欠損金と考えて、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記②相殺後の残額の)将来加算一時差異と相殺する。 ④ 将来の課税所得の見積額の算定 上記③でも相殺できなかった将来減算一時差異は、下記⑤で将来の課税所得の見積額と解消年度ごとに相殺する。そのため、ここでは合理的な課税所得を見積もる。ここでいう課税所得とは、一時差異解消前の課税所得(交際費の損金算入限度超過額、受取配当金の益金不算入額等の永久差異や一時差異の発生は考慮する)である。 見積もる際には、収益力による課税所得及びタックス・プランニング(固定資産又は有価証券の売却等)による課税所得を考慮して検討する。 収益力に基づく課税所得は、原則として、取締役会や常務会等の承認を得た事業計画や予算等に合理的な修正を考慮して算定する必要がある(66号5(3))。 また、タックス・プランニングによる課税所得は、区分ごとに、以下の2つを満たす場合、課税所得の見積りに含めることができる(66号6(1)③④)。   ⑤ 将来減算一時差異と課税所得の解消年度ごとの相殺 上記③でも相殺できなかった将来減算一時差異は、上記④で算定した将来の課税所得の見積額と解消年度ごとに相殺する。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する(66号3⑤)。 ⑥ 将来減算一時差異とその繰越期間内の課税所得との相殺 上記⑤でも相殺できなかった将来減算一時差異は、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記⑤相殺後の残額の)課税所得と相殺する。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する(66号3⑥)。このような相殺を行うのは、上記③と同じ理由である。 ここまでで相殺できなかった将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、回収可能性なしと判断する。 ⑦ 回収可能性のある繰延税金資産及び回収可能性のない繰延税金資産(評価性引当額)の算定 【STEP3】で算定した回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債から上記⑥までで回収可能性なしと判断した繰延税金資産(評価性引当額)を控除した金額のみが回収可能性のある繰延税金資産として貸借対照表に計上することができる(実務指針22、66号3⑦)。 (次ページ【STEP4】(3)へ進む) (前ページ【STEP4】(2)へ戻る) (3) 支払可能性の検討 将来加算一時差異は、将来の課税所得(税金)を増加させるものである。したがって、理論上は将来の税金の支払が見込まれる(支払可能性のある)将来加算一時差異に係る繰延税金負債のみを貸借対照表に計上するために、繰延税金負債について支払可能性の検討が必要である。 しかし、実務指針では、事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合のみ支払可能性がないと判断することになっている(実務指針24)。 そのため、事業休止等の状況でない限り、支払可能性はあるとし、会社が事業を行っている状況では支払可能性を検討せずに、(スケジューリング不能な将来加算一時差異も含む(ただし、将来加算一時差異についてスケジューリングが常に不要なわけではない。【STEP4】(2)①なお書き参照))すべての将来加算一時差異に係る繰延税金負債を貸借対照表に計上する。 ここまでをまとめた設例は下記のとおりである。 《設例2》 (前提条件) 会社区分は「3」である。 法定実効税率は35%である。 毎期の課税所得(将来減算一時差異及び将来加算一時差異の減算及び加算前)は300である。 X1年度末の将来減算一時差異は以下のとおりである。 X1年度末の将来加算一時差異は以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】(3)へ戻る) 【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。   (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の計上 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(実務指針2)。 会計処理の例は以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産 (*2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債   (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果-その他有価証券評価差額金の場合 その他有価証券評価差額に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は、以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) (時価-取得価額)× 法定実効税率   (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債は、相殺して表示する。また、投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(実務指針30)。 また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(基準第四、財務諸表等規則8の12)。 なお、計算書類では、「繰延税金資産及び繰延税金負債(重要でないものを除く)の発生の主な原因」の注記をすれば足り(会社計算規則107)、上記のような注記は必ずしも求められていない。 《設例3》 (前提条件) 前期末と当期末の繰延税金資産及び繰延税金負債は以下のとおりである。 法定実効税率は35%である。 ① 繰延税金資産及び繰延税金負債の計上 ② その他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債の前期末の仕訳の洗い替え (*1) 35÷35%=100 (*2) 差額 ③ その他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債の計上 (*3) 70÷35%=200 (*4) 差額 ④ 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 (*5) 固定繰延税金資産 > 固定繰延税金負債のため、固定繰延税金負債の全額を固定繰延税金資産と相殺する。      (了)

#No. 66(掲載号)
#西田 友洋
2014/04/24

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第12回】「初めて作成する連結財務諸表」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第12回】 (最終回)  「初めて作成する連結財務諸表」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(会計制度委員会研究報告第14号。以下「研究報告14号」という)のQ3では、「初めて連結財務諸表を作成する場合の会計方針の変更」について述べている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 会計方針の変更 「会計方針の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいう(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)4項(5))。   Ⅱ 初めて連結財務諸表を作成する場合 1 論点 研究報告14号のQ3では、従来、連結子会社がなかったため、個別財務諸表のみを作成していたが、連結子会社が生じたことから、当連結会計年度に初めて連結財務諸表を作成することになったケースについて述べている。 この場合、前連結会計年度に関する連結財務諸表は作成されていないので、「会計方針の変更」の取扱いがあるのかどうかが論点となる。 2 研究報告14号 研究報告14号は、連結財務諸表を初めて作成する場合には、比較する前連結会計年度に係る連結財務諸表が作成されていないため、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に関する変更(会計方針の変更)については、記載を要しないことになると述べている。 3 個別財務諸表における会計方針の変更がある場合 前述のように、連結財務諸表を初めて作成する場合には、会計方針の変更については記載を要しないという取扱いになるが、個別財務諸表は存在するので、例えば、親会社の個別財務諸表において会計方針の変更が行われているときに、連結財務諸表上、どのように開示するのかの論点がある。 これについて、研究報告14号は、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項には、連結財務諸表作成の基礎となっている各連結会社の財務諸表の作成に係る会計方針(会計処理の原則及び手続)を含むとされていることから(連結財務諸表規則ガイドライン13-1 2)、親会社において会計方針の変更が行われている場合には、連結財務諸表において当該会計方針の変更に関する注記が必要となると述べている。 なお、新規に取得された子会社において会計方針の変更が行われていたとしても、当該会計方針の変更に関する注記は不要となる。 4 四半期の場合 研究報告14号は四半期に関する取扱いについて、次のように述べている。 四半期連結財務諸表については、会計方針そのものを開示するのではなく、会計方針の変更があった場合に開示する(「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)19項(1)(2)、「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」10条の2、10条の3)。 このため、四半期連結財務諸表を初めて作成する場合、会計方針の変更については、記載を要しないことになる。 ただし、四半期連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項には、四半期連結財務諸表作成の基礎となっている各連結会社の四半期財務諸表の作成に係る会計方針(会計処理の原則及び手続)を含むとされていることから(「「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について」10 1)、親会社において会計方針の変更が行われている場合には、四半期連結財務諸表において当該会計方針の変更に関する注記が必要となる。 なお、新規に取得された子会社において会計方針の変更が行われていたとしても、当該会計方針の変更に関する注記は不要となる。 (連載了)

#No. 66(掲載号)
#阿部 光成
2014/04/24

〔会計不正調査報告書を読む〕【第16回】東テク株式会社・「不適切な会計処理に関する調査委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第16回】 東テク株式会社・ 「不適切な会計処理に関する調査委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【東テク株式会社の概要】 東テク株式会社(以下「東テク」という)は、1955(昭和30)年7月設立。空調・衛生・電気設備機器の販売とアフターサービス、ビルオートメーションを中心とした設備の設計・施工・保守業務を主たる事業とする。連結売上高約665億円、従業員数1,028名(2013年3月期)。本店所在地は東京都中央区。JASDAQ上場。   【報告書のポイント】 1 調査結果により判明した事実 (1) 不適切な会計処理に関する疑義が発覚した経緯 東テクは、平成26年2月上旬、東京国税局による税務調査の過程において、社員の一部が不適切な外注費の処理を行っていた可能性があるとの指摘を受け、これを端緒として社内調査を進めたところ、水増し又は架空の仕入発注、ルームエアコンの無断転売等の不正取引の事実を把握するに至った。 (2) 調査委員会の構成 本件調査を行った委員会は、日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会ではなく、委員長を東テク常勤監査役が、委員にも東テク内部監査部長が就任している。 その理由として、「平成26年3月期第3四半期報告書提出期限延長後の提出期限(3月14日)までの時間が短いため、円滑・迅速に調査を行う必要性から社内メンバーに外部の専門家が参加する委員会構成」を採用した旨、説明している。 (3) 発覚した不正の内容 調査の結果、東テク社員により、 が行われていたことが判明した。 ① 水増し仕入発注等 利益が見込まれる現場において、下請業者である外部協力者に対して、営業担当者による水増し仕入発注が行われ、東テクから外部協力者に対する支払いが行われた後、手渡し又は振込により、営業担当者にキックバックがされた。 なお、大阪支店においては、東テクOBが経営する会社を利用して、複数の社員が相互に役割分担を行っていたことも判明している。 ② 取引事実のない販売手数料の支払い 調査の過程で、特定の社員が、空調機の販売手数料や設計料の名目で、取引の事実のない設計事務所に対する支払いに応じていたことが判明しているが、社員はこれを否定している。また、こうした類型の不正が4件36百万円と報告されているが、調査報告書で言及されているのは1件12百万円に過ぎない。 ③ ルームエアコンの無断転売等 現場における仕入を仮装して発注したルームエアコンを、依頼者あるいは現場以外の倉庫に向けて発送し、依頼者に供与(贈与)し、転売して交際費を捻出することが行われていた。 ④ 社員が関係する会社への資金還流を目的とした水増し発注 特定の社員は、妻が代表取締役を務める会社に金銭を還流させることを目的に、仕入業者に対して水増し仕入発注を行い、その下請として妻の会社へ資金を流させていた。 (4) 水増し仕入発注等の方法により交際費等を捻出することになった背景 東テクにおける営業の基本方針は、商品及び技術面での差別化により取引先から受注を受けることであり、取引先との人的関係によって継続受注につなげたり、接待を行って取引先との関係を構築したりという営業担当者等は、主流ではなかった。 また、内部手続として交際費を申請しづらい(事前申請が求められている)こと、交際費の支出に慎重な対応をとっていたこともあり、営業担当者等が交際費申請に消極的になっていた。 その結果、一部営業担当者等の間で、交際費の捻出目的から、不正行為がはじめられたものであるが、資金捻出方法を会得し、不正行為を継続するにつれてコンプライアンス意識が欠如し、営業上必要な交際費の捻出に止まらず、取引先に対する過度の飲食・遊興費、社員同士の私的な飲食等の支出にまで発展したものである。 (5) 不正行為に関与した社員の数及び不正に処理された金額等   2 調査報告書の特徴 (1) 原因分析 調査報告書は、社員が不正行為を実行した原因及び東テクがこれを発見・防止することができなかった原因を、以下の6点にまとめている。 本件の特徴としては、多数の社員と業者が関与した不正が相当期間続き、その不正を見聞きした社員もまた多数いたにもかかわらず、国税局による税務調査で指摘されるまで、問題が発覚しなかった点にある。 その点について、報告書はこのように分析している。 (2) 経営者の関与 経営者の関与について、調査報告書は、「東テクの取締役その他の役員のうち、役員の立場として、本件不正行為を立案・実行したものは確認されていない」こと、「東テクの代表取締役会長及び代表取締役社長が、本件不正行為の存在については、認識していたことを窺わせるような事実は存在ない」としている。 取締役その他の役員について、「役員の立場として」と限定したうえで、立案・実行したものはいないとしている点、役員就任より前に不正行為を実行し、あるいは部下の不正行為を容認・黙認していた者があることを感じさせる表現になっている。 (3) 監査役監査及び内部監査の不十分性 調査報告書は、以下のとおり、監査の不十分性を指摘しているが、問題は、こうした記述をしている調査委員会のトップが常勤監査役であり、内部監査室長も委員に加わっている点にある。 なぜ監査役監査や内部監査が不十分なまま放置されていたのかが解明されなければ、再発防止策に結びつかないのではないだろうか。 (4) 水増し仕入発注等に関与した社員に対する求償 報告書では、社員が関係する会社への資金還流を目的とした水増し仕入発注等については、これを売上原価から除外し、未収入金として計上するよう、修正事項として記載されているが、それ以外の、水増し仕入発注等によるキックバックを私的に費消した社員やルームエアコンを無断転売した社員に対して、これらの不正により得られた金銭の求償については、コメントがない。 (5) 再発防止策 上記(1)の原因との対比で、再発防止策が検討されている。 この中で、購買プロセスの改善については、「購買部門の新設を図り、発注権限を営業部門に集中させないこと」や「申請された外注又は追加仕入の要否」などの問題点が検討できるようにすべきであることなどに加えて、物流プロセスの改善も提言されており、まったく統制がなかった業務プロセスに新たな統制をおいて、牽制機能を高めるという改善は有効であろう。 一方、「健全な倫理観を有する社員による内部通報」すら期待できない形骸化した内部通報システムをはじめとする、「コンプライアンス意識の改善」には、より抜本的な再発防止策が必要ではないだろうかと思料する。 (6) 「原価内交際費処理」ルールについて 調査委員会による再発防止策に関する提言の中で、気になった点がもう1つある。それは、「原価内交際費処理ルールの導入」である。 調査報告書から全文を引用する。 ルールそのものの是非はさておき、交際費を売上原価として処理する方法は、建設業の地元対策費などで見られる方法であるが、法人税においては、勘定科目には関係なく、交際費等は損金の額に算入できないため、原価内交際費の存在や支出された金額が経理部門に伝達されておらず、しばしば税務調査で問題となっている。 支出が必要な交際費等については、適正に申請するという意識を醸成するために、交際費の予算枠から除外するという提言の趣旨は理解できるが、かえって交際費等が適正に申告できず、税務上のペナルティにつながりかねないという懸念を抱く。   3 訂正された決算短信の内容 決算短信の訂正は平成21年3月期の期首残高にまで遡っているが、ここでは、直近である平成25年3月期の連結財務諸表について、訂正内容を検討したい。 貸借対照表科目を見ると、未払法人税等の増額が目につき、ほぼ同額の利益剰余金が減少している。これは、今回の不適切な会計処理の結果、過年度に遡及して交際費等の額が増加することとなることから、その分、法人税、住民税及び事業税の計上額を増額した結果によるものといえる。 損益計算書科目では、売上原価が減額されて、不正関連損失という新たな勘定科目を営業外費用に計上しているが、当期純利益に与える影響については、法人税、住民税及び事業税の増額に止まっており、不正関連損失(損金の額に算入されない交際費等)に対する法人税、住民税及び事業税の計上額は約44%と通常の実効税率を上回る水準になっている。 【平性25年3月期(単位:百万円)】 (了)

#No. 66(掲載号)
#米澤 勝
2014/04/24

パワーハラスメントの実態と対策 【第4回】「パワハラの予防策と解決策」

パワーハラスメントの実態と対策 【第4回】 (最終回)  「パワハラの予防策と解決策」   特定社会保険労務士 大東 恵子   パワハラのリスクを防止するためには、2つの観点から対策を整備する必要がある。 それは、「発生しないようにする予防策」と、「発生してしまったときのために解決策」である。 〈パワハラ予防策〉 まず、予防策としては、 という5つの点が重要であるといわれている。 ① トップのメッセージ まずは「会社全体としてパワハラをなくすべき」という方針を会社のトップから明確に打ち出すことが重要である。 これにより、それぞれの職場環境に「パワハラはダメ」という雰囲気が生まれ、職場の一人ひとりが意識を持つことができる。さらに組織の方針が明確になれば、パワハラを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取組みの効果がより期待できるようになると考えられる。 ② ルールを決める 就業規則その他の職場の服務規律等を定めた文章において、「パワハラ行為を行った者については厳正に対処する」旨の方針及び懲戒規定等の対処方針を定めることが肝要である。 就業規則等に予め定めておかないと、実際にパワハラが起きたときに懲戒処分などの処罰は適用されない。 ③ 実態を把握する パワハラが発生しやすい状況・職場環境には、いくつかの特徴があるといわれている。 そういった実態を予め把握し、早期発見につなげることも重要となる。 パワハラが発生しやすい状況として、「閉鎖的な職場」があげられる。 閉鎖的な職場では外部からの力が及びにくく、ある一定の人物に権限が集中し、固定的な支配関係ができやすくなる。こういった状況ではパワハラが発生しやすく、またエスカレートしやすいといわれている。 次に、「忙しすぎる職場」である。 人は、日々の業務が忙しく、忙殺されてしまうと、部下や周りの人を配慮する余裕がなくなってしまう。そのため、相手のことを考えずに、厳しい言葉が出てしまったり、ストレスをぶつけてしまうことがある。 また、「人や仕事のマネジメントが徹底されていない職場」でもパワハラが起きやすいといわれている。 上司の指示が曖昧であったり、複数の上司から違う指示が出されるなど、指示命令系統に問題があるにもかかわらず、一方的に叱られ、叱られた部下が後からパワハラだと訴えてくるというケースも多くある。 このようなパワハラが起きやすい状況に注目しながら、職場の実態を把握するためには、アンケート調査を実施することが有効である。 アンケート調査では、パワハラの有無の把握だけではなく、パワハラについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなる。 ④ 教育する 予防対策のもっとも一般的で効果が大きいと考えられる方法が、教育・研修の実施である。 教育・研修は、繰り返し定期的に行うことで、効果があるといわれている。 ⑤ 周知する 職場のパワハラの防止に向けて、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口その他の取組みについて、組織内で共有される情報媒体(情報誌やウェブサイト、ポスターなどの掲示物等)や会合などあらゆる機会を通じて従業員に対し周知・啓蒙を行い、パワハラ防止に向けた意識を従業員全体に浸透させることも重要である。   〈パワハラ解決策〉 一方、実際にパワハラが起こってしまった場合の解決策としては、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(平成24年1月)」において、2点の対応が示されている。 ① 相談や解決の場を設置する 会社内・外の相談・苦情を受け付ける窓口を明確にし、従業員が気軽に苦情の申し出や相談ができる体制を整え、適切かつ柔軟に対応することが必要である。事案によっては解決のために専門家の介入が必要な場合もある。 ② 再発防止のための取組み 問題解決後の相談者へのフォロー、職場全体としての再発防止の取組みも重要である。 発生した事案を特別なものとして捉えるのではなく、職場全体の問題として捉え、基本方針の再確認、防止体制の必要な見直し、従業員への周知、研修の実施等再発防止のための対策を行い、職場環境の改善に努めることが重要である。 *  *  * パワハラは、被害者だけでなく加害者の生活、会社経営までも取り返しのつかない状態へ追い込む事態となる。 本連載で述べたとおり、パワハラは誰にでも起こりうる問題と捉え、予め対策を整備することは、すべての労働者を守る上で、重要な会社の役割なのである。 (連載了)

#No. 66(掲載号)
#大東 恵子
2014/04/24
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