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林總の管理会計[超]入門講座 【第18回】「最先端の原価計算システムが具備すべき“5つの条件”」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第18回】 「最先端の原価計算システムが具備すべき“5つの条件”」   公認会計士 林 總   プロセス情報を反映させる   可逆性を持たせる   誰でも直感的に異常点が分かる   今時点の仕掛品金額が瞬時に分かる   業務活動・財務会計と連動している (了)

#No. 52(掲載号)
#林 總
2014/01/16

経営サイドから見た『ブラック企業』とリスク対策

経営サイドから見た『ブラック企業』とリスク対策   税理士・社会保険労務士 上前 剛   1 ブラック企業の定義 ブラック企業の定義は明確に定まっていないが、一般的には、高齢者に高額な商品を売りつける企業や投資詐欺を行う企業など一般市民にとってブラックな企業を指すのではなく、大量に採用し、大量に離職する企業など企業で働く労働者にとってブラックな企業のことを指す。 また、企業の規模にかかわらず、上場企業でもブラック企業と呼ばれることがある。   2 厚生労働省による実態調査 厚生労働省は、平成25年9月を「過重労働重点監督月間」と位置づけ、若者の使い捨てが疑われる企業に対して過重労働重点監督を集中的に実施した。 若者の使い捨てが疑われる企業とは、いわば、ブラック企業と疑われる企業であり、その実態調査が行われたのである。 その結果が、平成25年12月に公表された(図表1参照)。 図表1 過重労働重点監督の実施状況 出所:厚生労働省資料 過重労働重点監督は、5,111事業場にわたって実施され、4,189事業場(全体の82.0%)において何らかの労働基準関係法令違反が認められた。 違反事項のうち、最も多かったのは「労働時間の違反」で2,241事業場(全体の43.8%)、次に多かったのは「賃金不払残業の違反」で1,221事業場(全体の23.9%)、両違反の合計が全体の約70%を占める。 「労働時間の違反」とは、労働基準法32条の違反をいう。 労働基準法32条には、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと定められている。1日8時間、1週40時間を超えて労働させるためには36協定を労働基準監督署に提出しなければならないにもかかわらず、36協定がないままに時間外労働をさせていたり、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働をさせていたケースが違反に該当する。 「賃金不払残業の違反」とは、いわゆるサービス残業のことである。 時間外労働、休日労働、深夜残業をさせた場合には25%以上の割増賃金を支給しなければならないにもかわわらず、支給していないケースが違反に該当する。 また、過重労働重点監督実施時に事業場の中で時間外・休日労働時間が最長の者を確認したところ、1月当たり80時間以上残業する社員のいる会社は、1,230事業場(全体の24.1%)にのぼった(図表2参照)。4社に1社は80時間以上残業する社員がいたことになる。 ちなみに、80時間以上残業する社員は、過労死予備軍といってよい。詳しくは、下記3の【ポイント2】で解説する。 図表2 時間外・休日労働時間が最長の者の実績 出所:厚生労働省資料   3 経営サイドによる『ブラック企業』対策 自ら経営する会社をブラック企業と認める経営者はいないだろう。 しかし、ブラック企業かどうかは、経営者自身が判断するものではなく、企業で働く労働者や世間が判断するものである。 では、ブラック企業と呼ばれないためにはどうすればよいのだろうか。 上記2より、ブラック企業と疑われる企業においては、36協定がなかったり、サービス残業をさせていたり、長時間労働をする社員がいたりと労働基準関係法令の遵守がなされていない場合が多い。 労働基準関係法令を遵守することは当然のことなのだが、この「当然のこと」をするだけでブラック企業対策になるのである。 以下に3つのポイントをまとめた。 【ポイント1】 36協定を提出する 36協定を労働基準監督署に提出しなければ残業させることはできないと肝に銘じ、36協定は必ず提出する。 【ポイント2】 長時間労働を抑制する 社員が脳・心臓疾患で倒れ、死に至る場合もある。同じく、精神障害を発症し、自殺する場合もある。 こうした場合に、労災の認定が行われることがある。労災の認定が行われたということは、脳・心臓疾患や精神障害と仕事との間に因果関係が認められたということである。 脳・心臓疾患の場合、1月当たり80時間以上の残業は、労災の認定が行われる要因となることが多い(図表3参照)。死に至った場合は、過労死ということになり、社員の遺族から損害賠償請求をされることがある。 最近の事例では、東急ハンズの社員が過労死し、遺族が損害賠償請求した判決が平成25年3月にあり、神戸地裁は東急ハンズに7,800万円を支払うよう命じた(後日、和解成立)。 これがもし中小企業であれば、倒産に値する金額である。過度な長時間労働は、経営リスクといってよいだろう。 図表3 脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1か月平均)別支給決定件数 出所:厚生労働省資料 【ポイント3】 非ブラック企業であることをアピールする “攻撃は最大の防御”と言われるように、ブラック企業でないことをアピールすることもブラック企業対策になる。 ここでは、「若者応援企業宣言」をご紹介する。 一定の労務管理の体制が整備されている企業がハローワークに若者向けの求人を提出する場合に、詳細な企業情報・採用情報を公開することなどを条件として若者応援企業宣言をすることができる。 東京労働局においては、平成25年12月27日時点で897事業所が若者応援企業宣言をしている。 若者応援企業になると、都道府県労働局のサイトに自社サイト、求人票、PRシートが掲載される。同業他社の求人票やPRシートを見ることは、自社の採用戦略の参考にもなる。 (了)

#No. 52(掲載号)
#上前 剛
2014/01/16

「消費税の取扱事項」に関する法人間契約の注意点と対応策 【第2回】「工事進行基準の特例(経過措置)の適用に関する留意点」

「消費税の取扱事項」に関する 法人間契約の注意点と対応策 【第2回】 「工事進行基準の特例(経過措置)の適用に関する留意点」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   指定日(平成25年10月1日)から施行日(平成26年4月1日)の前日までに請負契約が締結されていることを前提に、法人税法上、工事進行基準が強制適用される長期大規模工事、または工事進行基準の任意適用を受ける場合において、消費税法上も、収入金額が計上された事業年度終了の日の属する課税期間においてその部分につき資産の譲渡等を行ったとする特例の適用を受ける場合(消費税法17①②)、工事着手日から施行日の前日までの期間に対応する請負代金(下記計算式(A))と、施行日から目的物の引渡日(または役務提供完了日)までの期間に対応する請負代金(下記計算式(B))に関し、(A)については5%、(B)については8%の税率が適用される(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則7、消費税法施行令の一部を改正する政令(平成25年3月13日公布・政令第56号)附則9)。 工事等の請負契約において前渡金、中間前払金等の授受が行われる場合、請負契約締結時での見込み計算に従い、施行日までに授受する前渡金や中間前払金等に係る消費税率をすべて5%として請負業者が発注者から授受したとする。 ところが、工事の進捗が遅滞した場合には、上記計算式に従って算出された5%として受領すべき請負工事代金(A)が、当初の見込み計算金額よりも少なくなる結果、すでに受領済みの前渡金、中間前払金等の一部に関し、5%ではなく8%の消費税率が適用され、差額3%相当額の精算を行わなければならない事態が生じる。 そのような事態に備え、あらかじめ締結しておくべき合意書の雛形は、例えば、以下のようなものとなる。 ※PDF形式のものはこちら 他方、工事の進捗が当初の見込みよりも早くなったような場合には、上記計算式に従って算出された8%として受領すべき請負工事代金(B)が、当初の見込み計算金額よりも少なくなる結果、すでに受領済みの請負代金残金等の一部に関し、8%ではなく5%の消費税率が適用され、差額3%相当額の精算を行わなければならない事態が生じる。 そのような場合、工事進行基準の特例(経過措置)に関して課せられている通知義務(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則7④)の履行とあわせ、例えば、以下のような連絡文書を送付することが考えられる。 ※画像をクリックするとPDFファイルが開きます (了)

#No. 52(掲載号)
#米倉 裕樹
2014/01/16

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載50〕 コーポレート・ガバナンスの強化に係る会社法制の見直し

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載50〕 コーポレート・ガバナンスの強化に係る 会社法制の見直し   公認会計士・税理士 安原 徹   1 はじめに 平成25年11月29日に「会社法の一部を改正する法律案」(以下「法案」という)が閣議決定された。 今回の会社法制の見直しに際しては、「社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化」が重要なテーマの1つとされており、そのための施策として、監査等委員会設置会社制度を創設するとともに、社外取締役等の要件等の見直しが行われた。 そこで、本稿では、実務に与える影響がより大きいと思われる社外取締役確保のための規律と「社外」要件の見直しについて述べた後、監査等委員会設置会社制度について法案の内容、実務への影響等を考えることとする。   2 社外取締役確保のための規律と「社外」要件の見直し (1) 社外取締役の確保 法制審議会会社法制部会は、平成24年8月に「会社法制の見直しに関する要綱案」(以下「要綱」という)を決定した。 要綱では、社外取締役の選任義務化は見送られたが、公開会社かつ大会社で有価証券報告書提出会社は、社外取締役が存しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告に記載することとされていた。 ところが、今回決定された法案では、要綱より踏み込んだ内容となっており、選任義務化は見送られたものの、同様の会社が社外取締役を置いていない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を定時株主総会で説明する旨の規定が新設された(法案327条の2)。 この説明義務は、現行法の株主総会での取締役の説明義務(会社法314条)と異なり、株主から求められなくてもその義務が生じることが特色である。 また、今後会社法施行規則の改正により、要綱と同様に、事業報告などでも「社外取締役を置くことが相当でない理由」を開示する旨が規定されると考えられる。 ところで、この「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示に関連し、部会の委員を務められた前田雅弘教授は、要綱段階の座談会で「『置くことが相当でない理由』というのは、なかなか書きにくいところであって、だからこそ選任しようという強い方向づけになるのだと思います。」との発言をされている(『別冊商事法務No.372』82頁)。 現実問題として、「社外取締役を置くことが相当でない理由」について合理的かつ説得力のある説明や開示をすることはかなり難しいのではないかと思われる。 さらに、法案と同日付で公表された東京証券取引所の「独立性の高い社外取締役の確保に関する上場制度の見直しについて」(以下「上場制度改正要綱」)では、「上場会社は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」と規定し、上場会社では上場ルールに定める独立性の基準を満たす社外取締役(以下「独立取締役」という)を置くことが原則である旨を明らかにしている。 この結果、実務の世界は、現在の「社外取締役が1名以上いること」でプラス評価される時代から、「社外取締役が1名もいないこと」がマイナス評価される時代へと大きく舵を切り、監査役会設置会社である上場会社においては、社外取締役を選任する会社が増加すると予想される。 なお、東証の上場制度改正要綱によると、改正上場規則の施行は平成26年2月の予定なので、3月末決算の上場会社がこの努力義務の影響を受けるのは、同年6月の定時株主総会での選任議案からとなるケースが多いと思われる。 そうすると、独立取締役のいない上場会社は早急にその選任を検討しなければならないことになる。 (2) 社外性要件の見直し 法案における社外取締役および社外監査役の社外性要件の見直しは、要綱と同様の内容になっている。 すなわち、社外性の要件を厳格化し、親会社等の関係者(法案2条15号ハ)、兄弟会社の業務執行者等(法案2条15号ニ)、および株式会社の業務執行者等の近親者(法案2条15号ホ)も社外取締役になれないとする一方、現行法では過去に一度でも株式会社またはその子会社の業務執行取締役等であった者は社外取締役になることができないとされているところ(会社法2条15号)、退職後10年経過すれば社外取締役になれることとした(法案2条15号ロ)。 その結果、社外取締役の社外性要件は次のようになる。 社外監査役についても、法案では同様の見直しが行われている(法案2条16号)。 この結果、現行法のもとでの実務において、親会社の社外取締役が子会社の社外取締役を兼務したり、親会社の社外監査役と子会社の社外監査役を兼任するような例が見られるが、改正法では親会社の取締役は子会社の社外取締役になれないため、兼任することができなくなる。 社外監査役についても同様に親会社と子会社の社外監査役の兼任はできない。また、親会社の社外取締役と子会社の社外監査役との兼任も同様である。 一方、兄弟会社の社外取締役や社外監査役を兼任することは、会社法上は許される(法案2条15号ニ、16号ニ)。 なお、東証の上場ルールでは、会社法にいう「社外性」よりも厳しい「独立性」の基準を設けており、上場会社は、そのような基準を満たす社外取締役または社外監査役を1名以上確保することが要求される。 例えば、「重要な取引先の関係者でないこと」を会社法の社外性の要件に取り込むことは今回の改正でも見送られたが、東証では、上場ルールにおいて「取引先関係者」をはじめ一般株主と利益相反の生ずるおそれのある場合を列挙し、これらを事前相談要件として制限することを定めている(有価証券上場規程436条の2、「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」、上場管理等に関するガイドラインⅢ5.(3)の2)。 このように上場会社の社外役員については、会社法上の社外性だけでなく、上場ルール上の独立性にも留意する必要がある。   3 監査等委員会設置会社 (1) 監査等委員会設置会社の位置づけ 今回の会社法改正法案によって導入されることになった監査等委員会設置会社は、要綱では「監査・監督委員会設置会社」と呼ばれていたものである。 現行法では、上場会社をはじめとする公開会社である大会社の形態は、従前から存在する「監査役(会)設置会社」と平成14年商法改正で新設された「委員会等設置会社」(会社法では「委員会設置会社」。法案では「指名委員会等設置会社」に名称変更)の2つに大別される。 これに加えて、今回の改正では、両者の中間的な存在と位置づけられる「監査等委員会設置会社」の形態を選択することが可能となった。 監査等委員会設置会社の概要を図示すると、次のとおりである。 (2) 監査等委員会の構成および監査等委員の選任 監査等委員会は、取締役である監査等委員3名以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない(法案331条6項)。監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は、株主総会において区別して選任される(法案329条2項)。 また、その任期についても、監査等委員である取締役は2年とされるのに対し(法案332条4項)、監査等委員以外の取締役は1年となる(法案332条3項)。 なお、監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社と同様に会計監査人を置かなければならない(法案327条5項)。 (3) 監査等委員会および監査等委員の権限 監査等委員会および監査等委員の権限は、各委員が取締役会のメンバーとして取締役会の審議に参加して議決権を行使して業務執行に関与し、取締役の善管注意義務の一環として他の取締役に対する監督義務を負うほか、他の機関設計に比べて固有の権限がいくつか付与されている。 具体的に監査等委員会に特有の権限としては、監査等委員は株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選任もしくは解任または辞任(法案342条の2第4項)やその報酬等(法案361条6項)について、意見を述べることができるとされている(法案399条の2第3項3号)。 この意見陳述権は、指名委員会等設置会社のように直接決定するのではなく、意見を述べるという形だが、指名委員会等設置会社における指名委員会や報酬委員会に準じる機能を果たすことが期待される。 (4) 監査等委員会設置会社の取締役会の権限 監査等委員会設置会社の取締役会の権限に関して注目されるのは、特定の取締役に対する業務執行に関する決定権限の委任についての定めである。 監査等委員会設置会社は、(ⅰ)その取締役の過半数が社外取締役であるか、または、(ⅱ)取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任する旨定款で定めたときは、特定の取締役に対して業務執行に関する広汎な決定権限を委譲することが可能となる(法案399条の13第5項、6項)。 これによって、監査等委員会設置会社では、委員会設置会社と同様の水準まで経営の機動性を高めることができるものと期待される。   4 今後の実務の対応 今回の会社法制の見直しが、企業統治の強化を大きなテーマとしてきたことは前述のとおりである。 そのなかで、今後予想される実務上の対応についていくつかコメントする。  (了)

#No. 52(掲載号)
#安原 徹
2014/01/16

常識としてのビジネス法律 【第7回】「契約に関する法律知識(その3)」

常識としてのビジネス法律 【第7回】 「契約に関する法律知識(その3)」   弁護士 矢野 千秋   1 予約、仮契約、手付金、内金、契約保証金 (1) 予約とは 「予約」とは、商品や当事者の都合ですぐに確定的な契約を結べないとき、将来一定の契約を結ぶことをあらかじめ約束する契約をいう。 予約に基づいてなされた契約を「本契約」という。 予約という用語が使われていても、内容的に完全な合意が当事者間に成立していれば、実質上は本契約である。 また、予約を本契約にする条件を明瞭に相互理解しておく必要がある。 (2) 仮契約とは 「仮契約」という言葉は、法律用語ではない。したがって、「仮」とする趣旨を相互確認する必要がある(予約、条件付、細目的事項未定、使用人の契約等、種々の場合がある)。 また、上記、「予約」にも記したが、「仮」と付されていても内容的に完全な合意が当事者間に成立していれば、実質上は本契約である。 (3) 手付金とは 「手付金」は手金ともいい、契約成立の際に授受される金銭で、最終的に代金の一部に充当されるのが通常である。 手付金には3種類あり、契約成立の証拠として授受されるのが「証約手付」であり、手付を交付した側に債務不履行があった場合に違約金として手付を没収されるのが「違約手付」であり、解約権の留保として授受されるのが「解約手付」である。 そして特段の意思表示、慣習等がないときは解約手付と推定され、相手方が履行に着手するまで、手付金を受け取った側は手付金の倍額の金銭を返還し(手付倍返し)、手付金を交付した側は手付金を捨てて(手付流し)契約を解除することができる。 これは不動産売買などの重要な契約で解除権を留保して、再考の機会を保持するためのものである。 (4) 内金とは 「内金」とは、厳密には解約手付などとは異なり(解除権留保などの法効果を伴わない)、単に代金の一部として授受されるものをいい、授受は契約成立時点に限らない。 契約成立時点などに交付されるものを「前金」などと呼ぶこともある。 ただし、実務では不正確に使用されており、解約手付を兼ねている場合もあるので、確認が必要である。 そして解約手付などであるならば、契約書の条文中に手付倍返し・手付流しなどの法効果を書き込んでおくのが明確である。 (5) 契約保証金とは 「契約保証金」とは、賃貸借や代理店契約などの締結にあたり、債務不履行時の損害を担保する目的で授受されるものをいう。 契約が無事終了すれば返却されるが、一部償却される例もある。 これも敷金、権利金等の種々の用語が使用されており、内容的な確認が必要である。   2 契約の効力の瑕疵(かし) (1) 契約の不成立 契約成立に至る前の状態をいう。 申込みに対して条件を付加したり、内容を変更した承諾などの場合は未だ契約不成立である。 これらは新たな申込みと見られるので、これに対して別途旧申込人の承諾があって初めて契約が成立することになる。 では、条件付加や内容変更がわずかな場合はどう判断するか。 一般的には、当事者の意思解釈や取引慣行から、その程度の条件付加や内容変更を暗黙に了解しているようなときは承諾に当たり契約が成立することとなろう。 しかし契約成立に関して争いになる可能性が大きいので、契約書を作成して未然に紛争を予防しておくことが賢明である。 契約不成立の場合は、当事者間になんらの債権債務は発生しておらず、一方的に契約交渉を打ち切っても債務不履行にはならない。 しかし、一般的に契約交渉段階で当事者は契約成立を見越して債務履行の準備に入ることも多いことから、そのような当事者の保護も必要である。 契約当事者は契約の交渉段階から信頼関係に立ち、しかも「契約締結」という目的に向かって協力関係に立つわけであるから、契約締結に至る過程は信義則の適用を受けるものと解せる。 一方的な交渉打切りは、この信義則上の保護義務違反として損害賠償義務を課されることがある。 ただし、この場合の損害賠償の範囲は、契約が成立すると信じたために実際に被った実損の範囲に限られる。これを「契約締結上の過失」と呼ぶ。 (2) 契約締結後で説明が不十分だと分かったら 相手方の説明が全くの虚偽情報ならば、詐欺に当たる。相手方の詐欺を立証できれば、契約は取消しが可能である(民法96条)。 また、詐欺は不法行為に当たるので、不法行為に基づく損害賠償請求ができる(民法709条)。 しかし、このためには相手方に当初からダマす意思があったことを立証しなければならない。 これは相手方の内心の問題であるから、立証が困難である。また実際には若干オーバーなセールストークなどで、詐欺とまではいえない場合が多いと思われる。 こうした場合は、前述した契約当事者間の信義則上の保護義務違反になる可能性があり、相手方の情報の不正確さが証明できれば損害賠償を請求できる場合もある。ただし、過失相殺をされる可能性がある。 信義則という一般条項によるので、具体的な諸事情を総合考慮したうえで認められることになる。 判例では、クリーニング店のフランチャイズ契約の勧誘に関して認められたものがある。 しかし勧誘を受けた側にも判断のミスがあったことは明らかであり、その過失割合を考えて過失相殺により7割の減額をした。この損害賠償の範囲も実損の範囲である。 (3) 契約の無効・取消し 契約は一応成立したものの、契約としての法律効果が完全には発生しない場合がある。 これには無効と取消しがあり、一般的には瑕疵が重大であれば「無効」、瑕疵が軽微であれば「取消し」といわれるが、さほど正確ではなく、無効と取消しのいずれによるかは立法政策の問題と言ってよいであろう。 「無効」とは、最初から当然に効力がないことをいう。そしてすべての人が効力のないものとして取り扱うことになる。 また、時の経過によっても無効であることは変わらない。 具体的には、意思能力のない者の契約、内容不能な契約、強行規定違反の契約、公序良俗違反の契約、虚偽表示、錯誤などである。 「取消し」とは、特定人(取消権者)の取消しの意思表示があって初めて効力がなくなることをいう。 したがって、取り消されるまでは一応有効として取り扱われる。 また、不安定な状態を長期間継続させるのは法的安定性を害して好ましくないので、一定期間を過ぎると有効に確定させる。 具体的には、詐欺、強迫、行為無能力者などである。 (4) 契約の解除 契約当事者の一方の意思表示により、契約が初めから存在しなかったものとすることをいう。 取消しが契約成立時に意思表示の瑕疵(かし)があって不完全であったのに対し、解除の場合、契約は一旦完全に有効に成立しており、後発的原因で契約を白紙に戻すことである。 解除には、「法定解除」(債務不履行、クーリングオフなど)と「約定解除」がある。 賃貸借契約の告知(解約)とは異なる概念である(後述)。 (5) 法定解除 「法定解除」とは、法律上の要件により解除権が発生する場合における解除である。 ① 債務不履行 履行遅滞(民法541条)、定期行為の遅滞(民法542条)、履行不能(民法543条)がある。 いずれも債務を履行しない者の過失が必要である。 ②  各種契約特有の解除原因によるもの 売買契約で売主の担保責任と買主の解除(民法563条ないし570条)、賃貸借契約で賃借権の無断譲渡、無断転貸による賃貸人の解除(民法612条)などがある。 ③ 事情変更の原則 契約締結後の社会的経済的事情の重大な変動に際して、信義誠実の原則の一適用として契約の消滅あるいは契約内容の変更を認める原則である。 判例法上確立した法理であり、契約内容改定権(例えば代金増額請求権)と契約解除権(内容改定を拒絶されたり、内容改定が不可能な場合などである)がある。判例法理であり、容易に認められない欠点がある。 (了)

#No. 52(掲載号)
#矢野 千秋
2014/01/16

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第31回】「経費管理のKPI(その⑤ 概算計上)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第31回】 「経費管理のKPI (その⑤ 概算計上)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、経費管理を構成する複数のKPIから、経費計上における「概算計上」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 経費の支出に対する物品や役務の反対給付は受けているため、経費の発生を認識しているが、金額が確定しないまま決算を迎える場合に、例外的に、経費を見積もって計上することがある。このような経費の概算計上は、おのずから経費計上の正確性の観点で課題が残る。 そこで、今回は、経理財務部門が経費の概算計上を行う場合にその正確性に与える影響を評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 このうち、「日常管理」を構成する機能は、「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」である。 今回解説するKPIは、「日常管理」における「通常経費処理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   ただ、経済産業省スタンダードでは、「通常経費処理」に関連して、「処理指導」と「大口経費申請検証」という2個の業務プロセスのフローチャートを作成しているが、今回のKPIに対応する概算計上という業務プロセスをフローチャートとしてまとめていない。 スコアリングモデルの開発では、経費の概算計上は、経費を計上するにあたりその金額の測定の仕方が、確定金額によるか、見積金額によるかの問題に過ぎず、それが該当する業務プロセスは通常経費処理であると考えている。 いったん見積金額で経費計上されて決算を締めた後、主管部門が取引先から請求書等の証憑を受領すれば、その後は、金額が確定した通常の経費計上の流れにつながる。すなわち、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した支払依頼書を作成する。支払依頼書の内容が承認されれば、概算計上金額との差額が経費として計上される。 今回のKPIは、このような経費の概算計上金額と経費確定額の乖離に着目し、その精度を問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「概算経費計上」とは、経費の発生を認識しているが、金額の測定に必要な請求書等の外部証憑が入手できていないため、経費金額を見積計上することをさす。 このような概算計上は、決算期に決算早期化の要請で行われることが多い。 もっとも、月次決算や四半期決算で採用される概算計上と呼ばれるすべての処理が「概算経費計上」に該当するわけではない。 例えば、減価償却費の按分計上、年間広告費の前払費用の繰延計上、家賃や賃借料の未払費用の見越計上も、慣用的に概算計上と呼ばれることがあるが、これらはいずれも発生金額が測定できる経費確定額を期間配分しているに過ぎず、決算期末に金額そのものを見積計上する必要はない点で「概算経費計上」には該当しない。 「経費確定額」とは、請求書等の外部証憑に基づき測定された経費金額をさす。 なお、KPIの算出式の分子にあたる|直前決算期末の経費確定額(A)-直前決算期末の概算経費計上額(B)|は、(A)と(B)の差の絶対値をさす。「概算計上」していない場合は、(A)(B)に同じ数値を記入する。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費の発生額を適正に財務諸表に反映するため、概算と実績の乖離を小さくし、期間費用の見積の精度を高めることが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 そこで、スコアリングモデルでは、経費概算計上が経費計上の正確性に与える影響度を比較するため、乖離が経費確定額に対して占める割合をKPIとした。割合は%で表されるが、この数値が小さい会社が大きい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 乖離を小さくするには、概算計上を廃止するのが最適である。その場合、取引先に締め日の前倒しを要請し請求書の発送を早めることや、主管部門を教育し、請求書と経費伝票等の社内回付の迅速化を啓蒙する等の業務改善が必要となる。 そのような取り組みをしても、決算の早期化の要請から、決算財務報告の業務の締め切り日までに経費の金額を確定できない場合、合理的に見積もって計上を行い、確定金額との差額を翌期に計上するとともに、法人税申告の別表四で申告調整することになる。 その場合、乖離を小さくするには、過去の経費実績による財務データの分析や、経費を発生させる要因として説明変数となる非財務データの多角的分析に基づき、経費発生の傾向を把握し、見積の精度を高めることが必要である。 このようなKPIを設定した価値判断が共有されず、未払経費の概算計上金額と経費確定額の乖離が大きい会社では、見積の合理的裏付が不足している可能性が高く、経費計上金額の正確性が低下するだけでなく、財務諸表監査において許容できる監査差異を超えた場合、決算修正を迫られるリスクがある。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、経費計上において決算期に概算計上する業務プロセスの有無を確認していただきたい。仮に、概算計上していない場合、(A)と(B)に同じ数値を記入し、0%となる。 概算計上していることを前提に、例えば、期末に計上した概算金額の根拠資料、対応する証憑、確定申告書別表四を閲覧し、試査によらずに、概算計上額と確定金額の比率を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、未払経費の概算計上金額と経費確定額の乖離が経費確定額に対して占める割合は何%になったであろうか。 *  *  * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、経理財務部門が行う「経費分析」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 52(掲載号)
#島 紀彦
2014/01/16

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第13回】「ネットの世界の取組みでホームページへの訪問者を増やす(その1)」~お金をかけずに広告効果を上げる

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第13回】 「ネットの世界の取組みで ホームページへの訪問者を増やす(その1)」 ~お金をかけずに広告効果を上げる   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回は、現実の世界で何をすれば事務所ホームページの訪問者が増えるのか、というお話でしたが、今回からはインターネットの世界で訪問者を呼び込む方法についてお話しましょう。 *  *  * ネットの世界であなたの事務所のホームページを見つけて訪れた人は、Google(グーグル)やYahoo(ヤフー)といった大手検索サイトで、検索結果に表示されたあなたの事務所のホームページ名をクリックして来た人が多いはずです。 1つの検索例を使って考えてみましょう。 東京在住で相続にあたり税理士に相談したい人が、「相続 税理士 東京」というキーワードで検索したとしましょう。 読者の皆さんも、実際にこのキーワード(相続 税理士 東京)で、GoogleやYahooで検索してみてください。 そうすると、検索結果として税理士事務所のホームページ名がいくつも表示されますね。 次の画像は、この原稿を書きながら、Googleで「相続 税理士 東京」を検索した結果の画面です(掲載の都合上、モザイク処理をしています。見づらくなっている点はご容赦ください)。 〈Googleで「相続 税理士 東京」を検索したら・・・〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   検索結果と言いつつ、実はこの画面には、「検索結果」と「広告」が混じって表示されているのですが、おわかりでしょうか? ★  ★  ★ 【②】の部分に表示されているのが「検索結果」で、【①】と【③】の部分に表示されているのは「広告」です。 今回は【②】の「検索結果」を利用する方法についてご説明し、次回以降で【①】と【③】の「広告」を使った方法をご説明していきます。なお、【④】はページを切り替えるための表示です。 *  *  * 【②】の検索結果については、GoogleやYahooといった検索サイトが、登録されているホームページの中から、そのキーワードを含むページについて独自に順位付けをして、順位の高い順に表示しています。 そのため、検索結果に表示されるためには、まず検索サイトに登録する必要があります。検索サイトは無料で登録を受けつけており、通常はホームページ制作会社がホームページ公開時に登録してくれているはずです。 また、登録をしなくとも、検索サイトは、インターネットの世界を巡回して新しいホームページを発見すると自動的に登録するシステム(クローラーと呼ばれます)を稼働させていますので、月日が経過すればいつの間にか登録されていることもあります。 そして、ホームページの「順位付け」は、そのホームページの社会的な有用性を基準として行っているとのことなのですが、具体的なルールについては公表されていません。 そのホームページの内容や、被リンク(他のホームページからリンクされていること)の数などをクローラーにより解析して、順位付けしていると推測されています。 さらに、検索結果が10件を超えると1ページに収まりきらなくなり、表示画面の下の方でページの切替えができるようになります(上の【④】がこれにあたります)。 2ページ目、3ページ目と続いていくのですが、今お話している「相続」にあたり「税理士」を「東京」で探しているというだけの人なら、わざわざ2ページ目以降を見ることはないでしょう。1ページ目に10件の税理士事務所が表示されていますので、そのうちのいくつかのホームページを訪れれば事足りてしまうはずです。 このことから、 などと極端なことも言われています。 ばかばかしいと思うかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。 検索結果の1ページ目(上位10件)に表示されるために、検索サイトに広告料を支払う必要は?・・・ありませんね。 それでいて検索結果の1ページ目に表示されれば、多くの人の目に留まり、多くの人が事務所のホームページを訪れ、そこから受注に結びつく可能性があります。 つまり、自分の事務所のホームページ名が検索結果の1ページ目に表示されることは、それほどお金をかけずに大きな広告効果を得られる可能性を有しているのです。 先ほどの極端な言い回しは、このことを反対の視点から言い表しているものともいえます。 そうしたことから、ホームページを公開した事務所や会社は、GoogleやYahooといった大手検索サイトで、自らの商材をキーワードとした検索結果の1ページ目に、自らのホームページ名が表示されることを望むようになります。 そのための対策もいろいろと考えられていて、総称してSEO(エス・イー・オー)と呼びます。 SEOのノウハウを有料サービスとして提供する会社も多数あり、ホームページを公開している事務所であれば、そのような会社からの営業電話や営業メールを受けたことは何度もあることと思います。 ◆  ◆  ◆ 次回からはこの「SEO」についてお話します。 (了)

#No. 52(掲載号)
#河村 慎弥
2014/01/16

《速報解説》 単体開示の簡素化に関する財務諸表等規則等の改正(公開草案)

《速報解説》 単体開示の簡素化に関する財務諸表等規則等の改正(公開草案)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年1月14日、金融庁は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表した。 次のものの改正が予定されている。 公開草案は、企業会計審議会の「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(平成25年6月20日掲載)を踏まえ、単体開示の簡素化を図るためのものである。 意見募集期間は平成26年2月14日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則に関する主な改正事項 1 特例財務諸表提出会社の新設 「特例財務諸表提出会社」として次の規定を新設する。 これにより、特例財務諸表提出会社の個別財務諸表の開示については、いわゆる経団連モデル(「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」)と同様の開示とすることが可能となり、貸借対照表や損益計算書の様式、重要な会計方針の注記、関係会社に対する資産の注記及び関係会社に対する負債の注記などについて、会社計算規則と同様の注記とすることが可能となる。 2 連結財務諸表を作成している会社の個別財務諸表の開示の簡素化 従来から、連結財務諸表を作成している会社については、個別財務諸表における記載を要しない規定があった。 公開草案では、リース取引に関する注記、資産除去債務に関する注記、研究開発費の注記、減損損失の注記など多くの項目について、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないとの規定が設けられている。 3 規定の削除等 4 重要性基準の緩和   Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の主な改正事項 1 配当政策 「配当政策」において、会社法以外の法律の規定又は契約により、剰余金の配当について制限を受けている場合には、その旨及びその内容を注記するとの規定を設けている(第二号様式 記載上の注意(54)d、第三号様式 記載上の注意(34)c)。 2 合併により消滅した会社の財務諸表 従来、合併により消滅した会社の財務諸表の記載が求められていたが、当該規定を削除している(第二号様式 記載上の注意(67)e、第三号様式 記載上の注意(47)e、第三号の二様式 記載上の注意(27)d)。 3 製造原価明細書の記載 最近2事業年度の製造原価又は売上原価について、製造原価明細書又は売上原価明細書を掲げて比較し、原価の構成比を示し、かつ、会社の採用している原価計算の方法を説明するとの規定は従来と同様である。 ただし、連結財務諸表において、連結財務諸表規則15条の2第1項に規定するセグメント情報を注記している場合にあっては、製造原価明細書を掲げることを要しないとの規定が設けられている(第二号様式 記載上の注意(69)b)。 4 主な資産及び負債の内容 貸借対照表のうち最近事業年度のものについて、科目の内容又は内訳をおおむねそれぞれに掲げるところに従い記載するとの規定は従来と同様である。 ただし、連結財務諸表を作成している場合又は附属明細表に掲げた科目については、記載を省略することができるとの規定が設けられている(第二号様式 記載上の注意(73))。   Ⅳ 適用時期等 平成26年3月期決算から適用することが予定されている。 (了)

#No. 51(掲載号)
#阿部 光成
2014/01/14

Profession Journal No.51 公開のお知らせ

2014年1月9日(木)AM10:30、Profession Journal  No.51 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/01/09

monthly TAX views -No.12-「インボイスなき軽減税率は可能か」

monthly TAX views -No.12- 「インボイスなき軽減税率は可能か」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   1  ねじれている議論 与党税制改正大綱の決定寸前まで、自民党と公明党との間で、軽減税率の問題が議論された。 軽減税率反対論には、財源の問題や線引きの難しさといった課題があげられるが、最大の理由は、「(軽減税率に必要な)インボイスが導入されると事務が面倒」という点に集中していた(「軽減税率についての議論の中間報告」(平成25年11月12日、与党税制協議会)。 つまり、軽減税率というより「インボイスの導入」に反対なのだ。 そこで公明党側は、インボイスを導入しなくても軽減税率は可能と議論を展開し、現行の帳簿保存方式のもとでの軽減税率を主張した。 結果、「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する」(平成26年度税制改正大綱)こととされ、結論は先送りされた。   2  インボイスの機能 このような議論の展開は、「そもそもインボイスとは何か」という本質論から考えると、非常に不可解な議論・論理といえる。 そこで、あらためてインボイスについて整理してみたい。 そもそも消費税(欧州の付加価値税)は、転々流通する取引のそれぞれの段階で、売り手(納入側)が買い手(仕入側)に、その取引価格に消費税額を上乗せし、買い手はその消費税額を(仕入税額)控除する、という仕組みをとっている。 これにより、「事業者は、納税義務者ではあるが税の負担者ではない」という消費税の間接税の仕組みが完結することになる。 その際重要なことは、納入側(売り手)と仕入側(買い手)の税額の認識を一致させることである。 このことを納税される国家の側から見ると、売り手から納税される消費税額と買い手側から控除される消費税額が一致していることを確認するということになる。 このようにして、事業者自らは消費税額の負担をせず、最終消費者まで負担を先送りしていく。 そしてこの一連の過程を、手間をかけずに可能にするツールがインボイスである。 つまりインボイスは、事業者間取引において、正確かつ簡便に税額計算のやり取りを行う、結果として国家へ正確に納税されるために考え出されたものである。 こういう認識に立つと、冒頭の「インボイスが導入されると事務負担が増加する」という認識は、どこか違和感がある。 このような認識がまかり通るのは、わが国の現行消費税制度が、「請求書等保存方式」という世界に類を見ない簡便法を採用しており、「売上から仕入を差し引いた差額に105分の5を乗じて」計算して消費税額を納付していることによる。 これが、インボイスの導入により、本来の消費税(付加価値税)の姿に戻るということである。   3 軽減税率とインボイス 軽減税率を導入した場合には、商品やサービスごとに税率が異なる場合が生じる。 その際、インボイスを発給することにより、仮に適用税率の判断に誤りがあったとしても、支払税額と仕入税額控除の額が一枚のインボイスによってつながっている(一致している)ので、相手側に請求した税額だけが仕入税額控除されることになり、国家税収には影響を与えないことになる。 国家(税収を受け取る側)にとってみれば、納税される金額(売り手が買い手に求める税額)と控除される金額(買い手が控除を受ける全額)が同じであることを確認することが重要で、それがインボイスを通じて可能になるのである。 つまり、軽減税率の適用税率にたとえ誤りがあったとしても、インボイスを通じて納税額と控除税額が等しくなるので、誤りは治癒されることになる。インボイスがクロスチェックの機能を持つといわれる所以である。 いずれにしても、軽減税率の導入の是非を今後1年かけて議論することになる。 軽減税率の導入は、事業者・消費者・納税者の3者にとって多大なコストがかかる。筆者は、できるだけ先送りにすべきという考えである。 しかし、これが政治的決断で導入となった際には、「インボイスがなければ納税事務はもっと大変になり、正確な納税を期待することはできなくなる」ということだけは、しっかり認識しておきたい。 (了)

#No. 51(掲載号)
#森信 茂樹
2014/01/09
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