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《速報解説》 IT委員会研究報告第43号「電子的監査証拠」の解説

《速報解説》 IT委員会研究報告第43号 「電子的監査証拠」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年7月30日、日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告第43号「電子的監査証拠~入手・利用・保存等に係る現状の留意点と展望~」(以下「研究報告」という)を公表した。 研究報告は、電子的な取引記録や証憑などが増大している経営環境を踏まえ、主として監査基準委員会報告書230「監査調書」及び同500「監査証拠」の規定をもとに、監査人が電子的監査証拠を入手・利用・保存するに当たっての留意点並びに監査アプローチの変化及び監査調書作成上の留意点を取りまとめたものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 概要 1 背景 クレジットカード会社、インターネット銀行、携帯電話会社、ソフトウェアのダウンロード販売の企業のように、売上げ、仕入れといった業務範囲において書面が全く存在しない業務が増えてきている。 このような環境に対応して、監査人においても、電子的監査証拠を積極的に活用することで、効率的により強い監査証拠を入手することができるようになってきている。 2 電子的監査証拠 電子的監査証拠とは、企業において電子的に作成、転送、処理、記録、保存された情報から監査人が入手し、意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報である。 監査証拠とは、財務諸表の基礎となる会計記録に含まれる情報及びその他の情報である。 研究報告では、例えば、電子データに対してCAAT(Computer-assisted audit techniques)を利用することにより、書面の監査証拠に対し手作業で行う監査に比べて監査対象範囲の拡大と同時により短時間で効率的な監査を実施することができると述べられている。また、監査計画段階でも、企業から入手した電子データを分析することで、監査計画の質の向上と作業の効率化を図ることができると述べられている。 電子的監査証拠を監査に利用する場合には、監査人は監査証拠としての信頼性に留意する必要がある。 3 監査手続への影響 研究報告は、監査手続への影響として次の事項について述べている。 研究報告は、②に関する事項として、「ストック的なデータが残らない、すなわち、一定時点のスナップショットがないシステムの場合」と「企業が原始文書を電子化した後で破棄している場合」をあげている。 監査人の対応として、企業に、監査人が手続を実施する時期まで電子データを保存しておくよう依頼することも対応方法として考えられるが、企業において追加的な手順が必要となり、場合によってはシステムの改訂が必要になることも想定されると述べられている。 このように、監査人が電子的監査証拠を積極的に活用することにより、企業側の対応にも影響することが考えられる。そのほか、例えば、企業が作成する電子データを監査人が入手する場合に、監査人のパソコン上にダウンロードするための技術的な環境の整備が必要なケースが考えられる。 (了)

#No. 31(掲載号)
#阿部 光成
2013/08/19

《速報解説》 「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の解説

《速報解説》 「財務情報の保証業務等の 契約書の作成について」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年7月30日、日本公認会計士協会は、「法規委員会研究報告第10 号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の改正について」(以下「研究報告」という)を公表した。 今回の改正は、法規委員会研究報告第14 号「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の改正を受け、所要の見直しを行ったものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 研究報告の内容 1 対象 研究報告は、公認会計士等が実施する業務のうち、任意の財務諸表等のレビュー業務及び合意された手続業務を中心に、業務の違いによる契約書作成ガイドラインを示している。 最近の公認会計士等の扱う業務が広範にわたっていることから、専門家として契約書を作成する際の注意点を示しておくことも会員各位の実務に資すると考えられるため、契約書作成に関する概括的内容を付け加えている。 調製に関する業務は、実務として我が国においては、公認会計士等が実施する場合は少ないと考えられるため、研究報告の対象とはしていない。 2 主な改正内容 (1) 暴力団排除条項(反社会的勢力排除条項) 今回の改正では、暴力団排除条例の施行後、事業者が契約書に暴力団排除条項を入れる実務が増加していることから、研究報告の作成例でも、会社と業務実施者の双方が互いに暴力団等に該当しないことを表明・確約し、相手方がそれに反した場合には催告を要さずに解除できることを内容とする暴力団排除条項を、独立した条項として加えている。 (2) 報酬及び経費の負担 報酬合意時に予想していなかった事由により執務時間数が当初の見積時間数を超えることとなった場合の取扱いを記載する旨が述べられている。 (3) レビュー契約書の作成例 レビュー契約書の作成例では、「第5条(レビューの性質及び限界)」において、次の事項を新たに述べている。 研究報告は、レビュー契約書の作成例として、一般の財務諸表のレビュー契約に関するものを示している。 ただし、「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」(監査・保証実務委員会研究報告第20号)は公表されたものの、一般のレビューに関し業務上の規範とすべき基準は示されていないため、作成例は国際レビュー業務基準(International Standards on Review Engagements)に示された内容をもとに我が国の実務向きにアレンジした一例にすぎず、実際の作成に当たっては実状に適応した契約書を作成することに留意すると述べられていることに注意が必要である。 (了)

#No. 31(掲載号)
#阿部 光成
2013/08/19

《速報解説》 消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン案等(7/25公表)について

《速報解説》 消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン案等(7/25公表)について   弁護士 大東 泰雄   1 はじめに 「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下「消費税転嫁対策特別措置法」という)の施行を平成25年10月1日に控え、同年7月25日、公正取引委員会(以下「公取委」という)、消費者庁及び財務省が、消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン等の原案を公表し、パブリックコメント手続に付した(意見提出締切日は8月23日)。 消費税転嫁対策特措法は、条文の文言からは規制範囲が必ずしも明確でないため、企業等の間ではガイドライン案の公表が待望されていたところである。 公表されたガイドライン等の原案は、下表のとおり多数にわたるため、紙幅の都合上、本稿では、法律の規定とガイドライン案等の関係を整理することを主眼としたい(各ガイドライン案等の略称は本文中に記載)。 なお、「消費税転嫁対策特別措置法」の内容については、本誌No.25(2013/6/27公開)の拙稿「「消費税転嫁対策特別措置法」を理解するポイント」を参照いただきたい。   2 消費税転嫁拒否等の行為関係 (1) 公取委GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、転嫁拒否等の行為(減額、買いたたき、購入強制・役務の利用強制・不当な利益提供の強制、税抜価格での交渉拒否、報復行為)を禁止しているところ、公取委の「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方(案)」(本稿では「公取委GL案」という)は、禁止される転嫁拒否等の行為の具体的な内容を明らかにするとともに、消費税転嫁拒否等の行為が独占禁止法の優越的地位の濫用や下請法違反となる場面を説明するものである。 (2) 大規模小売規則案 消費税転嫁対策特別措置法において、大規模小売事業者は例外なく「特定事業者」に該当し、転嫁拒否等の行為の禁止の対象とされているところ、公取委の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第2条第1項第1号の大規模小売事業者を定める規則案」(本稿では「大規模小売規則案」という)は、かかる大規模小売事業者の要件を定めるものである。   3 消費税転嫁を阻害する表示関係 (1) 転嫁阻害表示GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、消費税転嫁を阻害する表示(消費税を転嫁していない旨の表示等。「消費税還元セールの禁止」などと報道されたものである)を禁止するところ、消費者庁の「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」(本稿では「転嫁阻害表示GL案」という)は、禁止される表示の具体的内容を明らかにするものである。 (2) 内閣府令案 消費税転嫁対策特別措置法が禁止する表示の1つに、消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示として内閣府令で定めるものがあるところ、内閣府の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第8条第3号の規定による消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示に関する内閣府令(案)」(本稿では「内閣府令案」という)は、消費税に関連して取引の相手方に物品、金銭、金券、商品券、便益、労務その他の役務等を提供する旨の表示を禁止する旨を定めるものである。   4 総額表示義務の特例関係 (1) 財務省GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、総額表示義務の特例が認められる条件として、表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じることを求めているところ、財務省の「総額表示義務に関する特例の適用を受けるために必要となる誤認防止措置に関する考え方(案)」(本稿では「財務省GL案」という)は、上記誤認防止措置として認められるものの具体的内容を明らかにするものである。 (2) 適用除外GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、税込価格と税抜価格又は消費税額を併記する場合において、税込価格が明瞭に表示されているときは、税抜価格の表示について景品表示法を適用しないこととしているところ、消費者庁の「総額表示義務に関する消費税法の特例に係る不当景品類及び不当表示防止法の適用除外についての考え方(案)」(本稿では「適用除外GL案」という)は、どのような場合であれば税込価格が明瞭に表示されているといえるのかを明らかにするものである。   5 転嫁カルテル・表示カルテル関係 (1) 公取委GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、一定の転嫁カルテル・表示カルテルを容認しているところ、前記公取委GL案は、許容される転嫁カルテル・表示カルテルの具体的内容や、同法の範囲を超え許容されないカルテルの具体的内容についても明らかにしている。 (2) 届出規則案 公取委の「消費税の転嫁の方法及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為の届出に関する規則案」(本稿では「届出規則案」という)は、消費税転嫁対策特別措置法によって容認される転嫁カルテル・表示カルテルの届出方法や届出書の書式を定めるものである。 (3) 施行令案 消費税転嫁対策特別措置法は、中小事業者が3分の2以上含まれる場合にのみ転嫁カルテルを容認しているところ、内閣の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法施行令案」(本稿では「施行令案」という)は、上記中小事業者の範囲等を定めるものである。  (了)

#No. 31(掲載号)
#大東 泰雄
2013/08/15

夏季休刊のお知らせ

平素は税務・会計Web情報誌「Profession Journal(プロフェッションジャーナル)」をご愛読いただき、厚くお礼申し上げます。 Profession Journalは毎週木曜日AM10:30に解説記事を公開しておりますが、8月15日号を夏季休刊とさせていただきます。 8月22日(木)より通常の公開となりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

#Profession Journal 編集部
2013/08/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第3回】「馬券訴訟(その3)」~継続的行為としての「競争順位の予測行動」~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第3回】 「馬券訴訟(その3)」 ~継続的行為としての「競争順位の予測行動」~   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 「継続的行為」 一時所得の要件を考えるに当たっては、「継続的行為から生じた所得」が一時所得から外されていることと、「一時の所得」であることの2つの場面で、ある種の継続的な性質を有する所得を排除している点に気がつく必要がある。 すなわち、継続的行為から生じた所得が一時所得に該当しないだけではなく、一時の所得でない所得も一時所得に該当しないのである。 つまり、一見すると類似したこの2つの継続性のいずれに該当しても、一時所得には当たらないということになるのである。 上図が示すとおり、継続的行為から生じた所得の場合は、その発生する所得の態様(結果)が一時のものであるかどうかにかかわらず、原因が継続的行為に基づく限り、その原因によって生じた所得は一時所得に該当しないことになる。 また、原因が継続的な行為であるかどうかに関わりなく、何らかの原因により発生した所得が「一時の所得以外の所得」であれば、かかる所得は一時所得に該当しないことになる。このように解するのが最も文理に素直な解釈であるといえよう。 もっとも、「一時の所得」を現象(結果)としてのみ捉えるのは、前回述べた所得源泉があるか否かを判断の基礎とするという考えに必ずしも合致しない。そうであれば、一時の所得とは、その表面的な形態(結果)により判断するのではなく、所得源泉性を認めるに足りる程度に、かかる行為(原因)に継続性が認められるか否かという点から判断をすることが要請されよう。   2 一回的行為が連続・継続した場合の継続的行為性 所得の基礎が所得源泉となり得ない臨時的・不規則的なものであっても、連続して継続的行為となることにより、所得源泉を有するものとみられるに至る場合があり得る。 この点、名古屋高裁金沢支部昭和43年2月28日判決(行裁例集19巻1=2号297頁)は、 とする。 そもそも継続的行為とは、一回的行為が連続することによって成り立つものである。 〈名古屋高裁金沢支部昭和43年2月28日判決〉 すなわち、上記名古屋高裁金沢支部判決が述べるとおり「連続的行為性」から、継続的行為の有無を判断することもあり得るのである。   3 Yの主張に対する疑問 本件において、Y(原処分庁)は、「馬券の購入行動が所得稼得活動だ」と主張している。このYの主張には、次のような大きな疑問がある。 すなわち、X(請求人)の所得稼得活動の本質は、「馬券購入行動」ではなく、「競争順位の予測」であるという点である。 つまりXがしていることは、様々な情報や経験則に基づくノウハウを活用して、いかなるコンディションの馬場で、いかなる体調の馬が、いかなる騎手の下で、次のような評価を経た後に、どのような着順になるかを予想することである。 Yは、馬券購入行動が所得稼得活動であると考えているようであるが、Xは、①該当する競走馬、レース条件の計算式を適用して、合計評価ポイントを算定し、②算定された合計評価ポイントを基に、当該レースの購入金額・買い方パターンを決定し、③購入基準に照らし合わせて、買い目と1点当たりの購入金額を決定するという行動をしており、予測と購入金額の決定の後、初めて、Yがいう「馬券購入行動」をするのであって、いわば、馬券購入行動自体は、Xの所得稼得活動の最終の段階であり、極端に言えば本人以外の者に購入を依頼してもよいような作業である。 Xがその構築したシステムやノウハウ、収集した資料に基づく知見を発揮するのは、馬券購入行動そのものにあるのではなく、それ以前の段階であるという点を見過ごしているといわざるを得ない。 このようなXの所得稼得活動は、いわば投資家が株券を購入すること自体に能力を発揮するのではなく、経済分析、投資対象者の経済活動の分析などを行うこととまったく変わりがないのである。たまたま、それが株券ではなく、馬券であるというだけのことであるといっても過言ではあるまい。 また、本件において、Yは、「JRAが開催する競馬においては、馬券を購入する行為とその競争の結果(着順)との間に相関関係がないことは明らか」と述べている。このことは至極当然のことであり、この論旨自体は問題がない。 しかし、このYの主張にも大きな疑問がある。 すなわち、いかにXが知見と研究に基づき構築したシステムを活用して馬券を購入したとしても、当然ながら、かかるXの行為が競走馬の着順を左右できないことは言わずもがなである。Xは、これまでの情報収集等で築き上げたノウハウを使って競走馬の着順を予測しているのであって、着順を左右しようとしているわけではないのは当然である。 これは議論以前の問題である。   まとめ ― 本裁決の問題点 本件裁決は、上記のようなYの主張を基礎とした判断を展開しているようであるが、上記の2つの点に加えて、さらに大きな問題点を残しているといわざるを得ない。 一般論での一時所得該当性の議論においては、所得源泉性が重要とし、すなわち、行為や原因が所得判定要素であるかのように述べているにもかかわらず、本件の検討においては、結果の側面、すなわち所得発生の「偶然性」を基礎とした判断を展開していると思われる点である。所得源泉性が重要であるとの論理一貫性からすれば、所得発生の偶然性にこだわった結論に問題はなかったのであろうか。 ここまで詳述してきたように、Xは自らの知見と研究に基づき独自に開発したシステムを活用して競走馬の順位予測を行い、それに基づき購入した馬券により所得を得ていたことは明らかであり、その所得嫁得活動は、一回的行為の連続による継続的行為に基づくもので、所得源泉性を有するものと認められるに十分な程度の継続性を有するものといい得るのであって、これらの点に加えて、他の一般的な馬券購入行動とはその規模からしても異なることをも併せ考えれば、本件馬券に係る所得は、一時所得に当たらず雑所得に該当すると解するのが相当であったように思えてならない。 本件は東京地裁にそのステージを移している。今後の判決の動向に注目したい。 (了)

#No. 31(掲載号)
#酒井 克彦
2013/08/08

「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の解説 【第1回】「制度導入の趣旨・背景と適用期間の確認」

「商業・サービス業・ 農林水産業活性化税制」の解説 【第1回】 「制度導入の趣旨・背景と 適用期間の確認」   公認会計士・税理士 新名 貴則   ◆連載開始に当たって◆ 平成25年度税制改正により、中小企業活性化のために設備投資を促進する税制が創設された。具体的には「商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設」という。 これについては、本誌に寄稿した2013年3月28日公開の拙稿「商業・サービス業・農林水産業活性化税制の創設-平成25年度税制改正」において、以下のとおり解説している。 税制の概要 中小企業等が器具備品及び建物附属設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(当期の法人税額の20%が上限)を認める税制措置を創設する。 ただし、下記の要件を満たす必要がある。   〔イメージ図〕 本連載では、本制度の創設に係るポイントや適用要件等を具体的に解説していく予定である。   1 制度導入の趣旨・背景 アベノミクス効果により、大企業を中心として景気回復の傾向は見られるものの、多くの中小企業は依然として苦しい経営状態が続いている。 このような状況において、今後次のとおり消費税率の2段階引上げが予定されている。 【消費税率(及び地方消費税率)の引上げスケジュール】 これを実行するか否かは、税率引上げ前における経済状況等を総合的に勘案した上で決定することになっているが、実際にこの引上げが実行された場合には、中小企業は次のようなダメージを受ける可能性が高い。 中小企業は地域経済と雇用を支える非常に大事な存在であるにもかかわらず、このようなダメージを受けることによって倒産が相次ぐような事態になると、地域経済及び雇用に大打撃となる恐れがある。 そこで、税制優遇措置を導入することで、中小企業の魅力向上や業務改善に貢献する設備投資を促進し、消費税率の2段階引上げに備えて経営状態の安定及び活性化を実現するために、この商業・サービス業・農林水産業活性化税制が導入されたのである。   2 適用期間 この制度が適用されるのは、平成25年4月1日から平成27年3月31日までの期間(指定期間)である。 この指定期間内に取得し、事業の用に供した資産(器具及び備品、建物附属設備に限る)について適用されることになる。 【適用期間と消費税率(地方消費税率を含む)引上げの関係】 (了)

#No. 31(掲載号)
#新名 貴則
2013/08/08

相続税対策からみた生前贈与のポイント 【第3回】「配偶者の老人ホーム入居金を負担した場合の贈与税」

相続税対策からみた 生前贈与のポイント 【第3回】 「配偶者の老人ホーム入居金を 負担した場合の贈与税」   税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義     1 妻の生活費を夫が負担した場合の贈与税の取扱い 妻の生活費に充てるため、夫が妻に贈与した金銭のうち、通常必要と認められるものには、妻に係る贈与税が非課税とされる(相続税法21条の3第1項2号)。 しかし、その具体的な額は、相続税基本通達21の3-6で妻(受贈者)が必要とする額と夫の資力等を勘案し、社会通念上適当と認められる範囲の金銭とされているのみであり、上限がいくらなのかは明確にされていない。 実務上は、個々のケースに応じ、その金銭の贈与が贈与税の非課税財産とされるかどうかを判断することになる。 老人ホーム入所の際に支払う入居金は、住居に係る生活費と考えられる。妻が負担すべき老人ホームの入居金を夫が負担した場合、その負担額が「通常必要と認められるもの」に該当すれば、妻に係る贈与税は非課税となる。 この場合、該当するかどうかは個別判断になるため、同様の事例における課税当局の判断を参考にするのが有用である。 この点につき、国税不服審判所で争われた事例を次で紹介する。   2 裁決事例から考える「妻の老人ホーム入居金を夫が負担した場合」の贈与税課税 (1) 平成23年6月10日裁決の内容 Aは夫と一緒に施設利用権付有料老人ホームに入居していた。 病により余命いくばくもないことを悟っていたAの夫は、入居に当たり自分の死後の手続等も考え、妻のAを主契約者、自らを追加契約者とし、Aが負担すべき入居金1億3,370万円のうち大半(1億2,359万円)を負担した。 その後、夫は3年も経たず死亡し、Aは夫の相続税の申告を行ったが、夫負担の入居金は課税財産として申告しなかった。 しかし、「夫が負担した入居金はAに対する相続開始前3年以内の贈与に当たり、相続税の課税価格に加算すべき」と税務当局より指摘され、結果、国税不服審判所での争いとなった。 この事例では、夫がAの老人ホーム入居金を負担した行為が、「生活費に充てるための贈与」に該当するかどうかが最大の争点となった。 Aは、夫が負担した入居金について、「夫婦で入居するため夫が負担する費用だから、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものに該当し、相続税法21条の3第1項第2号により贈与税は非課税であり、よって相続税の申告に含めるべきものではない」と主張した。 Aの主張に対し国税不服審判所は、まずAが夫から金銭贈与を受けて老人ホームの施設利用権を取得したと整理し、次に「相続税法21条の3第1項第2号の立法趣旨から、生活費に該当するか否かの判断は、個々の具体的事情に即して社会通念に従って判断すべき」と指摘。 問題の老人ホームについては、「入居金が億単位できわめて高額」「居室が広い」「共用施設にレストラン・ラウンジ・大浴場など多数」「医療支援・食事サービス・生活助言・文化・レクリエーション支援などサービスが充実、無料サービスもある」等から、施設利用権取得のための金員は社会通念上、日常生活に必要な住の費用であるとは認められないと判断し、さらに、この老人ホームが介護付有料老人ホームではなく、Aが要介護状態にはなく老人ホームに入居することが避けられなかったわけでもないことから、「この入居金は相続税法21条の3第1項第2号の生活費には該当せず、贈与税の非課税財産とはならない」として、Aの主張を退けている。 (2) 平成22年11月19日裁決の内容 国税不服審判所の裁決事例には、(1)とは反対に、被相続人が配偶者のために老人ホームの入居金を負担した場合において、「妻の生活費に充てるために行った贈与であるから、相続税法21条の3第1項第2号により贈与税は非課税であり、よって相続税の申告に含める必要もない」と判断されたものもある。 この事例について国税不服審判所は、被相続人から配偶者に入居金相当額の金銭の贈与があったとしたうえで、次に挙げる理由により「入居金相当額の金銭の贈与は、介護を必要とする配偶者の生活費に充てるために通常必要と認められる」と判断している。 (3) 判断のポイント 夫婦の一方が配偶者の老人ホーム入居金を負担した場合について、前述(1)の裁決と(2)の裁決では判断が分かれている。 このうち、生活費の贈与として贈与税が非課税とされた(2)の裁決においては、介護の必要性があることや、老人ホーム施設が介護の目的を超えた豪華なものではないことが判断基準となっている。 夫婦で入居する老人ホームの入居金につき、夫が妻の分も一緒に負担することは珍しくない。 このような場合においては、(2)の裁決で示された①~④の判断基準を参考に、税務上のトラブルが生じないよう慎重に対応したいものである。 (了)

#No. 31(掲載号)
#山崎 信義
2013/08/08

租税争訟レポート 【第13回】非課税貯蓄申込書の受付義務と損害賠償

租税争訟レポート【第13回】 非課税貯蓄申込書の受付義務と損害賠償   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【事案の概要】 本件は、障害者手帳の交付を受ける原告が、被告株式会社A銀行(以下「被告銀行」という)B支店に定期預金の預入をした際、所得税法10条所定の非課税貯蓄申込書等を郵送したところ、被告銀行が郵送による受付はしないとしてこれを返却したため、定期預金の利子所得について所得税及び地方税の課税を受けた等と主張し、被告銀行に対し債務不履行責任又は不法行為責任に基づき、被告国に対し国家賠償法上の賠償責任に基づき、被告埼玉県に対し同法上の賠償責任に基づき、課税額相当損害金38円及び慰謝料10万円の連帯支払を求める事案である。   【当事者の主張】 1 原告 (1) 所得税法10条2項、3項は、非課税貯蓄申込書等は金融機関の営業所等に対してのみ提出することができるものとし、所得税基本通達10-14、同10-15は、郵便等によって金融機関の営業所等に非課税貯蓄申込書等の提出があった場合の取扱いについて規定しているのであるから、被告銀行は、郵送により提出された非課税貯蓄申込書等を受け付ける義務があり、被告銀行は債務不履行責任及び不法行為責任を負う。 (2) 被告銀行は所得税法に違反しているのであるから、東村山税務署担当官は、被告銀行に対し指導監督する義務があるところ、それを怠ったものであり、被告国は、国家賠償法上の賠償責任がある。 (3) 利子等の支払い又はその取扱いをする者の営業所等で道府県内に所在するものを通じて利子等の支払いを受ける者に利子割額の納税義務を課し、その結果、原告の住所地ではない被告埼玉県に利子割額を納税することとなる地方税法の規定は、違憲無効であるから、被告埼玉県は、国家賠償法上の賠償責任がある。   2 被告銀行 所得税法上、金融機関は、郵送された非課税貯蓄申込書等を受け付ける義務を負っていないものであるから、郵送された第1非課税貯蓄申込書等及び第2非課税貯蓄申込書等を受け付けなかったことについて、被告銀行が不法行為責任を負うことはない。 被告銀行は、インターネットバンキングを利用した預金の預入を受け入れた後で、非課税貯蓄申込書等が郵送により到着した場合に、さかのぼって非課税扱いとすることはシステム上の整備を必要とすることから、郵送された非課税貯蓄申込書等を受け付けないこととしているものである。 3 被告国 所得税法上、金融機関は、郵送された非課税貯蓄申込書等を受け付ける義務を負っていないものであり、すべての預金等について非課税制度の取扱いを義務付けられているとはいえず、非課税制度の取扱いを行わない預金等を商品化しても問題はないものである。 したがって、東村山税務署担当官が被告銀行に対し指導監督をすることをしていないことをもって、被告国に国家賠償法上の賠償責任が生じることはない。 4 被告埼玉県 原告が指摘する地方税法の規定は、合憲である。   【裁判所の判断】 1 所得税法の解釈について 所得税法10条3項所定の金融機関の営業所等に非課税貯蓄申込書等が提出された場合、当該営業所等は、これを受け付けて、関係法規に従った手続を行うことが定められているのであり、当該営業所等はその義務を負うと解釈される。当裁判所は、同法10条2項、3項所定の「提出」に郵送による提出が含まれると解釈する。 2 被告銀行に対する請求について 民法1条2項所定の信義則に基づき、被告銀行は、原告と被告銀行との間の預金契約上の付随義務として、郵送により提出された非課税貯蓄申込書等について、これを受け付ける義務を負うと認める。郵送により提出された非課税貯蓄申込書等を受け付けず、これを原告に返却した被告銀行の行為は、預金契約上の付随義務に違反したものであり、債務不履行責任を負う。 3 被告国に対する請求について 所得税法10条3項所定の原告の住所地を所轄する東村山税務署担当官としては、必要な調査をした上で、被告銀行に対し、非課税貯蓄申込書等を受け付けて、所定の手続をした上で、所得税法施行令47条の2に従い、当該金融機関の営業所等の所在地の所轄税務署長に送付することの指導監督をすべき義務があったというべきである。 東村山税務署担当官は、上記義務に違反し、被告銀行に対して指導監督をすることをしていないのであるから、被告国は、国家賠償法1条1項に基づく賠償責任がある。 4 被告埼玉県に対する請求について 原告の住所地ではない被告埼玉県に利子割額を納税することとなる地方税法24条1項5号、71条の9、同条の10の規定が違憲無効であることをもって、本件に関し、被告埼玉県が国家賠償法上の賠償責任を負うこととなると解することはできないから、被告埼玉県の国家賠償法上の賠償責任に関する原告の主張は、主張そのものが成り立たないものである。 したがって、地方税法の上記規定が違憲無効であるかを検討するまでもなく、原告の被告埼玉県に対する請求は理由がない。   【解説】 原告が、インターネットバンキングを利用して定期預金を預け入れた後、非課税貯蓄申込書等を郵送したところ、被告銀行はこれを返却した。これを受けて、原告は、その住所地を所管する東村山税務署担当官に対し、被告銀行に指導監督を求めたが、指導監督は行われなかった。 原告は、源泉徴収された税額38円に加えて、「疾患の症状が悪化する等の精神的苦痛」の代償として慰謝料10万円を求める本人訴訟を提起し、裁判所は、原告の訴えを全面的に認めた。 被告銀行が郵送による提出を受け付けない理由は、「さかのぼって非課税扱いとすることはシステム上の整備を必要とする」ためであり、企業としての経済合理性を追求した選択であることは、預金者の利便性を犠牲にすることの可否はともかく、納得できるものである。 しかし、課税当局の対応について、理解に苦しむところがある。原告が主張するとおり、所得税基本通達10-14、10-15は、非課税貯蓄申告書等が郵送で提出される場合もあることを前提に発遣されたものであることは明らかであり、また、提出には、郵送は含まないという主張は、一般的に考えても受け容れがたい。また、国税通則法22条には、申告書その他の書類が、「郵便又は信書便により提出された場合」の提出時期についての規定を置いているように、租税手続において「提出」が「郵送」を含むことは、裁判所の認定するとおりである。 その結果、裁判所は、相談を受けながら被告銀行に対する指導監督を怠ったとされた東村山署担当官のみならず、以前に原告と面談した複数の納税者支援調整官もまた、「所得税法上、金融機関は、郵送された非課税貯蓄申込書等を受け付ける義務を負っていない」「非課税制度の取扱いを行わない預金等を商品化しても問題はない」という趣旨の説明をしており、「徴税当局における所得税法の解釈に誤りがあったことに起因する」と断じた。 なお、裁判所は、原告は、被告銀行が郵送により提出された非課税貯蓄申込書等を受け付けない方針であることを知りながら、その方針が違法であることを明らかにする手段として、一連の預入手続を行い、本件訴訟を提起したものであると認めながら、この事実は、原告の損害賠償請求権を消滅ないし減縮する事実には当たらないと判断した。 (了)

#No. 31(掲載号)
#米澤 勝
2013/08/08

税務判例を読むための税法の学び方【16】 〔第5章〕法令用語(その2)

税務判例を読むための税法の学び方【16】 〔第5章〕法令用語 (その2)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 (前回はこちら) 3 「直ちに」「すみやかに(速やかに)」「遅滞なく」 これらはいずれも、ある行為又は事実とその後に続く行為との間の時間的な近接性を表す、一般的には「すぐに」という言葉で表現される内容を意味する法令用語である。これらの言葉が通常使われたとしても、言葉に差があると意識して使い分けられることはないであろう。 しかし、法令用語としてこれらの間には、時間的許容範囲、遅滞があった場合の違法性の有無・程度といった点に差異がある。 ① 直ちに 上記のうちでも、時間的即時性が最も強いものは、「直ちに」であり、「即時に」「間髪を入れずに」という趣旨を表すときに用いられる。 このため「直ちに」という場合は、一切の遅滞は許されないと解されるのが通例である。 その使用例として、国税通則法第82条第2項で見てみよう。 したがって、異議申立書が提出された場合には、その異議申立書を、即時に、間髪を入れずに国税局長又は国税庁長官に送付しなければならないこととなる。 ② すみやかに 「直ちに」よりは急迫の程度、時間的近接性の度合いが低い場合について用いられ、通常の事務処理に従ってできる限り早く行えば、即時に、間髪を入れずに行われなくても、違法又は不当の問題が発生しないものとされている。 その使用例として、国税通則法第103条で見てみよう。 ここでは、「すみやかに」返還すればよいという「直ちに」よりもやや緩やかな時間的近接性を許容している。 それは、返還すべき帳簿書類等が、担当の国税審判官、国税副審判官や国税審査官等複数の関係者がそれぞれ保管していることもありうるところから、「直ちに」返還することが困難な場合があると考えられるからである。 ③ 遅滞なく 「直ちに」と比べると時間的即時性はやや弱くなり、正当な又は合理的な理由があれば、その限りでの遅れは許されるものであると解されている。すなわち、事情が許す限り最も早くという意味であって、合理的理由があれば遅滞も許されるのである。 しかし、正当な理由等がなく遅滞した場合には、違法又は不当の問題が発生すると解されている。 その使用例として、国税通則法第56条第1項で見てみよう。 ここで「直ちに」ではなく「遅滞なく」と規定しているのは、還付の手続には相応の日時が必要であるところから、その手続のために要する時間的許容を認める趣旨である。 ④ 「すみやかに」は訓示規定か 「直ちに」や「遅滞なく」が、違反した場合に違法又は不当の問題を生ずるのに対して、「すみやかに」は訓示的な意味で使われることもあるといわれる。 「できるだけすみやかに」(警察官職務執行法第3条第2項)とか、「なるべくすみやかに」(国家公務員法第95条)が、訓示的であることが分かるような使い方の例として挙げられる。 しかし、「速やかに」としながらその違反に対して罰則を設ける立法例もあり(道路交通法121条第1項第9号(道路交通法94条1項に規定する免許証の記載事項の変更届出等の義務違反に対するもので、「速やかに」はこの94条1項にある))、また上記のような訓示規定の例とされているものについても、正当な理由や合理的な理由もなく遅滞した場合に、違法又は不当の問題を全く生じないとはいえないであろう。 また、もしこれが単なる訓示規定であり、遅れが違法や不当の問題を生じずに許されるものならば、最終的には、正当な又は合理的な理由がある限りでの遅れは許されるものとされる「遅滞なく」よりも、時間的即時性が弱いことになってしまう。 したがって、訓示的意味合いを含んでいたとしても、それは単なる訓示規定ではなく、正当な理由や合理的な理由もなく遅滞した場合には、違法又は不当の問題を生じるものと解すべきである。 ⑤ 「直ちに」の手続的意味 「直ちに」は、時間的即時性を示すだけでなく、本来とるべき手続等を踏むことなく行うことができるという手続面での即時性を示すために用いられる場合がある。 例えば、酒税法第28条の3第6項、第54条第5項及び第6項等で、末納税引取りの条件不履行により徴収される酒税や無免許製造の酒類等について徴収される酒税について、「直ちにその酒税を徴収する」と規定されている。 これは、「通常の納税告知書によって納期限が指定されるという手続を経ないで、即座に」という意味であり、単に時間的即時性を示しているのではない。 ⑥ まとめ 「直ちに」は、一切遅れを許さない趣旨で用いられ、一方、「遅滞なく」は、正当な又は合理的な理由があれば遅れることも許される、「速やかに」は両者の中間に位置している。したがって、即時性の度合いの強い順に、「直ちに」「すみやかに」「遅滞なく」となっている。 また、「直ちに」は、時間的即時性を示すだけでなく、本来とるべき手続等を踏むことなく行うことができるという手続面での即時性を示すために用いられる場合がある。 (了)

#No. 31(掲載号)
#長島 弘
2013/08/08

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載31〕 合併に係る個人株主の課税関係

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載31〕 合併に係る個人株主の課税関係   税理士 内藤 忠大   Q 私が株主となっているA社がB社に吸収合併されることになりました。 この場合の所得税の課税関係を教えてください。 A 合併があった場合の被合併法人の株主には、みなし配当課税と株式譲渡損益課税の所得計算に関する取扱いと、合併法人株式の取得価額の計算の取扱いがある。 みなし配当課税は、合併が適格合併かどうかによりその適用の有無が決まる。また株式譲渡損益課税は、合併対価に合併法人株式以外の金銭等があるかどうかによりその適用の有無が決まる。合併法人株式の取得価額は、みなし配当の有無及び株式譲渡損益の有無によって計算方法が異なる。   (1) みなし配当課税と合併との関係 ① みなし配当課税 法人が剰余金の配当をすると、当該法人の課税済み利益である利益積立金が株主に配当として帰属するが、剰余金の配当という手続をしなくても、法人の利益積立金が株主に帰属することがある。そこで、剰余金の配当がされたことと経済的実質が同様となる一定の事由が生じたときは、一定の金額を剰余金の配当とみなすこととされている(所法25)。この一定の事由には、法人の合併(適格合併を除く)や法人の自己の株式の取得などがある。 株主において配当とみなされた金額は、支払法人の利益積立金額の減少額と理論的には一致することになる。このため、支払法人側の処理を確認することにより、みなし配当課税の理解が深まる。 ② 合併に伴う当事者間の取引 合併は、被合併法人の株主の視点では、被合併法人株式が合併法人株式その他の合併対価に変わるだけであるが、被合併法人と合併法人との間の法人税法上の取扱いは、複雑な取引を行っていることになる。そしてこの取引内容は、適格合併と非適格合併では異なる。 適格合併では、被合併法人の資産及び負債は帳簿価額により合併法人に引き継がれる(法法62の2②)。また、被合併法人の資本金等の額と利益積立金額も、原則として、同額が合併法人において増加する(法令8①五、9①二)。資産と負債の差額(=増加した資本金等の額と利益積立金額)の対価として合併法人株式が被合併法人に交付され、それが直ちに株主に交付されることになる。 このように、適格合併では、被合併法人の利益積立金額は合併法人に引き継がれ、被合併法人の利益積立金が株主に帰属することはないので、みなし配当課税はされない。 【適格合併】 なお、利益積立金額と資本金等の額の合併における取扱いに関しては、平成22年度税制改正において、基本的な考え方が変更されている。詳細については、論末のコラム「合併における利益積立金額の引継ぎについて」を参照いただきたい。 非適格合併では、被合併法人は資産及び負債を時価で合併法人へ譲渡するとともに合併対価を取得し、直ちに株主に交付したものとされる(法法62①)。合併法人は、合併により移転してきたものの対価として合併法人株式等の合併対価を交付するので、合併法人株式の時価相当額が資本金等の額の増加額となる(法令8①五)。 非適格合併では、被合併法人の資本金等の額と利益積立金額は、株主への合併対価の交付の際に清算されることになり、それがみなし配当課税につながる。 【非適格合併】 合併法人の処理と株主の処理は表裏一体であり、適格合併と非適格合併では被合併法人の利益積立金の行き先が違うので、株主におけるみなし配当課税の取扱いも異なる。   (2) 適格合併の場合の課税関係 ① みなし配当課税 (1)②で見たとおり、合併が適格合併である場合、被合併法人の利益積立金相当額は合併法人に引き継がれ、被合併法人株主に帰属することはないため、みなし配当課税は生じない(所法25①一)。 ② 株式譲渡損益課税 適格合併では、合併法人株式以外の合併対価はないため、被合併法人から合併法人に対する投資の継続性が認められる。つまり、キャピタルゲイン・キャピタルロスの清算は不要とされ、株式譲渡損益課税は生じない(措法37の10③一)。 ③ 合併法人株式の取得価額 投資の継続性が認められるため、取得した合併法人株式の1株当たりの取得価額は、被合併法人株式の取得価額を引き継ぐことになり、具体的には次の算式により計算する(所令112①②、措通37の10-24)。 (通常の場合) (無対価合併の場合)   (3) 非適格合併の場合の課税関係 ① みなし配当課税 非適格合併は、被合併法人の株式等の払戻しとして合併対価が交付されたことになるので、合併対価の種類にかかわらず、合併対価の額の合計額が被合併法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった被合併法人の株式に対応する部分の金額(次の算式により計算した金額)を超える場合の、その超える部分の金額が、剰余金の配当等とみなされる。   ※合併の日の前日の属する事業年度終了の時のもの 配当とみなされた金額は、原則として総合課税とされ、また、配当所得の金額の10%又は5%の配当控除が受けられる(所法92)が、みなし配当額が10万円以下の場合は、申告不要を選択し、所得税の計算の埒外に置くこともできる(措法8の5、9)。 ② 株式譲渡損益課税 非適格合併であっても、合併対価が合併法人株式のみの場合は、適格合併と同様、被合併法人から合併法人への投資の継続性が認められるため、株式譲渡損益課税はされない。ただし、みなし配当として課税された部分は、合併法人に対する新たな投資として取得価額を構成することになる。一方、金銭等の交付がされれば、投資関係は一旦清算すべきものとされ、株式譲渡損益課税がされ(措法37の10③)、合併法人は新たに取得したものとされる。 株式譲渡損益を計算する場合、合併対価の額の合計額のうち剰余金の配当等とみなされた部分の金額以外が株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる。結果的には、みなし配当額がある場合には、被合併法人株式等に対応する資本金等の額相当額が収入金額となり、みなし配当額がない場合には、交付金銭等の額の合計額が収入金額になる。どちらの場合も、取得費は被合併法人の株式の帳簿価額の合計額である。 なお、株式譲渡損益課税は分離課税とされているため、株式譲渡損失が生じても、総合課税を選択したみなし配当とは損益通算することはできない(措法37の10)。法人株主とは取扱いが異なるので注意が必要である。 ③ 合併法人株式の取得価額 (イ) 金銭等の交付を受けていない場合 投資の継続性が認められるので、旧株式の取得価額を基に付替計算をする。なお、みなし配当相当額は、合併法人に対する新たな投資になるので、取得価額に加算する。計算式は次のとおりである(所令112、措通37の10-24)。 (通常の場合) (無対価合併の場合) (ロ) 金銭等の交付を受けている場合 金銭等の交付を受けている場合は、投資関係が清算される。したがって、合併法人株式は新たに取得したものとされ、合併法人株式の取得価額は、取得時の時価相当額となる(所令109①五)。   (4) 適格合併の判定 みなし配当課税の有無は、合併が適格合併か否かに依存する。適格合併とは、法人税法2条12号の8に規定がされており、その要件を満たしているものが適格合併とされる。適格合併であることの要件の詳細についてはここでは言及しないが、合併法人株式(合併法人の株式又は出資をいう)又は合併親法人株式※(合併法人の100%親法人の株式又は出資をいう)のいずれか一方の株式又は出資以外の資産(交付金銭等)の交付がされないことが絶対条件になる。 ※合併親法人株式のみを交付をする三角合併も適格合併に該当する場合もあるが、本稿では三角合併を省略している。 この交付金銭等には、被合併法人の株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう)として交付される金銭その他の資産及び合併に反対する株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭等は該当しない。 また、合併に際し株主に対し交付しなければならない株式に1に満たない端数が生じたため、会社法234条1項の規定等によりその端数の合計数に相当する株式等を譲渡し、又は買い取った代金として株主等に金銭が交付されたときは、その1に満たない端数に相当する合併法人又は合併親法人の株式等の交付がされたものとして取り扱われる(所基通57の4-1、措通37の10-24(3)、法基通1-4-2)。   (5) 反対株主が買取請求により対価の支払いを受けた場合の取扱い 合併に反対する被合併法人の株主の買取請求は、被合併法人に対して行われる(会社法785①)。合併効力発生日前に株式の価格の決定について協議が整ったときは、被合併法人又は合併法人から対価が支払われ、合併効力発生日以後に協議が整ったときは合併法人から対価が支払われることになる(会社法786①)。被合併法人又は合併法人のいずれが支払う場合であっても、この対価はこれらの法人の自己株式の取得の対価となるので、法人税法上も買取請求の対価は合併全体の対価の一部として取り扱わないことを確認的に明示している(上記(4)参照)。 ところで、法人が自己の株式を取得することは、一般的にみなし配当事由に該当する(所法25①四)。被合併法人が買い取る場合はみなし配当額の計算ができるが、合併法人が買い取る場合は、被合併法人と資本金等の額と利益積立金額の構成割合が異なるため、合併法人の合併後の資本金等の額を基準にみなし配当課税をすることは適切とはいえない。そこで、合併法人が買い取る場合と平仄を揃えるため、被合併法人が買い取る場合もみなし配当とされる事由から除外していると思われる(所令61①八)。 このように、反対株主が買取請求をしたことにより支払いを受けた対価は、上記のとおりみなし配当課税はされないので、全額が株式譲渡損益課税の対象とされる(所法25①四、所令61①八、措法37の10①)。また、被合併法人又は合併法人側は利益積立金額を減少させられないので、対価全額を資本金等の額から減算させる(法令8①十八)。   (6) 1に満たない数の株式等の取扱い 合併法人が、法人の合併に際し株主に対し交付しなければならない株式に1株に満たない端数が生じたため、会社法234条1項(1に満たない端数の処理)の規定等によりその端数の合計数に相当する株式を他に譲渡し、又は買い取った代金として株主に金銭が交付された場合は、所基通57の4-1《一株に満たない数の株式の譲渡等による代金が交付された場合の取扱い》に準じて取り扱われる。 すなわち、その株主に交付された1に満たない端数に相当する数の株式については所得税法施行令112条1項の規定による取得価額の計算が行われ、その上で譲渡があったものとして株式譲渡損益を計算することになる。 ただし、その交付された金銭が、その交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に株主に対して支払う被合併法人の株式の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱われる。 (了)

#No. 31(掲載号)
#内藤 忠大
2013/08/08
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