2014年1月30日(木)AM10:30、Profession Journal No.54 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
損益通算廃止に伴う ゴルフ会員権売却判断のポイント 【第1回】 「現行制度の確認と売却時の注意点」 税理士 内山 隆一 はじめに ゴルフ会員権には、いわゆる「預託金方式」(ゴルフクラブに入会金と預託金を払い込むことにより優先的施設利用権を取得する形態)のものと、「株式方式」(ゴルフ場を経営する法人の株主となることにより優先的施設利用権を取得する形態)とがあるが、我が国におけるゴルフ会員権のほとんどが預託金方式によるものである。 このゴルフ会員権の譲渡による所得は、いずれの方式によるものであっても総合課税の譲渡所得とされ、保有期間が5年以内のものは総合短期譲渡所得、5年を超えるものは総合長期譲渡所得として取り扱われている。 また、ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は損益通算の対象とされ、通算しきれない金額は、青色申告者は純損失の繰越控除又は繰戻還付の適用を受けることができる。 平成26年度税制改正では、平成26年4月1日以後のゴルフ会員権の譲渡による損失を損益通算の対象から除外する旨が示されている。 そこで本連載では、ゴルフ会員権の譲渡にあたり注意すべき事項をあらためて確認するとともに、上記の改正に対応するための「譲渡(売却)を判断するポイント」について2回にわたり解説する。 1 現行制度の概要及び平成26年度改正内容 現行制度では、総合課税による譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は損益通算の対象とされるが、このうち「生活に通常必要でない資産」に係るものはその対象から除外する旨が規定されており、ゴルフ会員権は現行法上この「生活に通常必要でない資産」に該当しないことから、損益通算ができるものとして取り扱われてきた。 今回の改正により、この「生活に通常必要でない資産」にゴルフ会員権が該当するように見直され、損益通算を規制することとなる。 2 売却にあたり注意すべき事項 ゴルフ会員権の譲渡にあたり注意しなければならないのは、その取得費をどう捉えるかということである。 その要点を以下にまとめる。 (1) 基本的考え方 ゴルフ会員権の取得に直接要した金額として、次のようなものが該当する。 なお、預託金方式のゴルフ会員権の性格は、優先的施設利用権【A】と預託金返還請求権【B】を内容とする契約上の地位とされており、【A】と【B】セットで譲渡所得の基因となる資産とされる。 (2) 預託金の分割が行われた場合 【A】も【B】も維持されるため、契約内容の変更とみて、分割前の取得価額を、預託金の比によって分割後のゴルフ会員権に振り分ける(取得時期は分割前の取得時期が維持される)。 《例1》 分割前の預託金1,000万円、入会金 250万円のゴルフ会員権が5口に分割された場合 《例2》 上記《例1》で、預託金100万円を返還後に5口に分割された場合 (3) 更生手続等によって預託金の切捨てが行われた場合 ① 預託金の一部が切り捨てられた場合 契約内容の変更とみて、取得価額、取得時期ともに維持される。 ② 預託金の全部が切り捨てられた場合 イ 原則 預託金返還請求権が消滅し、優先的施設利用権のみで構成される新たな地位を取得したことになるため、取得価額をその時点での適正評価額に付け替える。 なお、この場合の損失は家事上の損失となり考慮されない。 ロ 特例 次の要件を満たすときは、【A】の部分について取得価額を適正評価額に付け替えず、切捨て前の優先的施設利用権の取得価額を維持する。 3 いつまでに判断しないと間に合わないのか ゴルフ会員権の譲渡による損失が損益通算の対象から除外されるのは、平成26年4月1日以後の譲渡であるため、いわゆる損出しによる節税を図るタイムリミットは平成26年3月31日ということになる。 そのため、売却した場合に譲渡損失となるかどうかについて、上記2の取得費についても勘案しつつ、2月中に検討しておく必要があろう。 (了)
平成25年分 確定申告実務の留意点 【第4回】 (最終回) 「金融所得に対する課税(まとめ)」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成25年は、日経平均株価の年間上昇率が50%を超えるなど、金融所得が生じやすい環境にあった。そこで、シリーズ最終回は、金融所得課税を取り上げ、課税方法の概要と計算上の留意点をまとめることとする。 なお、本稿の内容は平成25年分の確定申告を前提としており、平成26年以後適用される改正項目についてはふれていない。また、営利を目的とする継続的な資金運用に基づく金融所得は取り上げていない。 なお、所得計算や所得控除等に関する留意点については、以下の拙稿も併せてご参照いただきたい。 個人が得る金融所得は、その発生源泉により、利子所得、配当所得、譲渡所得(総合、分離)、雑所得に区分される。以下ではその区分ごとに解説する。 【1】 利子所得 (1) 利子所得に区分される金融所得(所法23①) 次の利子は、利子所得ではなく「雑所得」に区分される(所基通35-1、35-2)。 (2) 課税方法 利子所得に対する課税方法は、次の通りである。 (3) 外貨預金の取扱い 外貨預金に関する所得税法上の取扱いは、次の通りである。 居住者が外貨建取引を行った場合には、取引時の外国為替の売買相場により円換算し、所得金額を計算する(所法57の3①)。利子は、利払日の対顧客直物電信買相場(TTB)により円換算する(措通3の3-6(1))。 預金の預入時と引出時の為替レートが異なることにより、為替差損益が生じることがある。この為替差損益は、雑所得に区分される(所法35)。 円高になり為替差損が生じた場合、他にも雑所得があれば当該他の雑所得の金額から控除することができるが、給与所得をはじめ他の各種所得と損益通算することはできない。 また、元本や利子に為替予約を付しているときには、為替差益部分も利子と同様に20.315%の率による源泉分離課税の対象となる(所法174①七、所令298④、措法41の10)。 【2】 配当所得 (1) 配当所得に区分される金融所得(所法24①、25①) 次の配当等は、配当所得には該当しない(所基通24-2、23~35共-5、35-1、所法76①、77①)。 (2) 課税方法 配当所得に対する課税方法は、次の通りである。 なお、配当等の支払いに際し、上場株式等の配当等については10.147%(所得税7%、復興特別所得税0.147%、地方税3%)、非上場株式の配当等については20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%、地方税なし)の率で所得税等が源泉徴収されている。 (3) 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算 上場株式等の譲渡損失の金額は、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算することができる(措法37の12の2①)。 この損益通算の対象となる上場株式等の譲渡損失の金額は、同年に譲渡した他の株式等に係る譲渡益を控除した金額である(措法37の12の2②)。 (次ページへつづく) (前ページへ戻る) 【3】 譲渡所得(総合課税) (1) 譲渡所得(総合課税)に区分される金融所得(所法33①) (2) 課税方法 次の算式で算出した譲渡所得の金額を、他の各種所得の金額と合計し総所得金額及び税額を計算する(所法33③~⑤、60①、所令82)。総所得金額の計算上、長期譲渡所得については1/2相当額を他の各種所得の金額と合算する(所法22②二)。 なお、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、一定の順序により他の各種所得の金額と損益通算することができる(所法69①、所令198)。 (注1) 金等、生活に通常必要でない資産に係る譲渡損失は、損益通算の対象とならない(所法69②)。 (注2) 平成26年度税制改正大綱によると、平成26年4月1日以後は、ゴルフ会員権等の譲渡損失を他の所得と損益通算することは認められない。 (3) 取得費及び譲渡費用の範囲 譲渡益の計算上控除する「取得費」は、資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額であり、「譲渡費用」は、譲渡のために直接要した費用である(所法38①、所基通33-7)。 例えば、ゴルフ会員権の「取得費」及び「譲渡費用」としては、次のものが該当する。 【4】 譲渡所得(申告分離課税) (1) 譲渡所得(申告分離課税)に区分される金融所得(措法29の2④、37の10①②) (2) 課税方法 次の算式で算出した株式等に係る譲渡所得の金額に対し、他の所得と区分し一定の税率を乗じて税額を計算する(措法37の10①⑥)。 特定口座での取引について源泉徴収口座を選択している場合には、口座内での譲渡及び受け取った配当等の金額に対して所得税及び地方税が計算され源泉徴収されている。 そのため、源泉徴収口座内の取引は、原則として確定申告する必要はない。 源泉徴収口座内の取引について確定申告が必要となるのは、次の場合である。 株式等に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得を除き、他の各種所得の金額との損益通算は認められない(措法37の10①)。 また、上場株式等に係る譲渡損失の金額は、翌年以後3年にわたり、各年分の株式等に係る譲渡所得の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から控除することができる(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除)(措法37の12の2⑥)。 平成25年において、株式等の譲渡所得に適用される税率は、譲渡の形態に応じて次の通りとなる。 (3) 外国株式の譲渡 外国法人が発行する株式を譲渡した場合も、原則的な課税方法は国内株式の譲渡の場合と同じである(措法37の10①②)。 譲渡対価の額が外貨で表示されている場合の邦貨換算は、約定日における対顧客直物電信買相場(TTB)により行う。為替差損益部分の金額も譲渡損益に含めることとなる(措通37の10-8)。 外国法人が発行する上場株式等について譲渡損失が生じたとき(国内の証券会社等を通した取引の場合に限る)には、国内株式の場合と同様に3年間の繰越控除が可能である(措法37の12の2⑥)。 【5】 雑所得 (1) 雑所得に区分される金融所得(所法35①②、措法41の14①、措令26の23②) (2) 課税方法 ① 総合課税、源泉分離課税 雑所得に区分される利子は、原則として他の各種所得の金額と合計し総所得金額及び税額を計算する(所法35①②)。 次のものについては、金融類似商品の収益として20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係は終了する(所法174、175、209の3、措法41の10、措通41の10・41の12共-1)。 ② 申告分離課税(先物取引に係る雑所得等) 商品先物取引、金融商品先物取引等をし、かつ、差金等決済をした場合には、他の各種所得の金額と区分して20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)の税率による申告分離課税が適用される(措法41の14①)。 先物取引に係る雑所得等の金額の計算上生じた損失の金額は、他の先物取引に係る雑所得等から差し引くことはできるが、それ以外の各種所得の金額と損益通算することはできない(措法41の14①、措令26の23①)。 先物取引の差金等決済に係る損失の金額は、翌年以後3年内の各年分の先物取引に係る雑所得等の金額から控除することができる(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除)(措法41の15①)。 (3) 外国為替証拠金取引(FX取引) FX取引には、「店頭取引」と「取引所取引」がある。 平成23年以前は、「店頭取引」による場合には総合課税の雑所得として課税されていたが、平成24年からは「取引所取引」の場合と同じ取扱い(上記(2)②の課税方法)となった。 (連載了)
提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第4回】 「国外財産の見積価額の例示」 公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産の見積価額を、例示で詳しく教えてください。 A 国外財産のそれぞれの区分ごとの見積価額の例示は、次のとおりである(調書通5-8)。 なお、国外財産に関する所得税及び復興特別所得税の課税標準並びに相続税及び贈与税の課税価格は、上記の価額でもって国外財産調書に記載される金額にかかわらず、各税に関する法令の規定に基づいて計算されることになる(調書通5-10)。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例10(贈与税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 平成X4年分の贈与税につき、贈与税の配偶者控除を適用して生前贈与を行おうとしたが、贈与対象土地が居住用宅地と賃家建付地とが一筆になっている土地であった。 利用状況の異なる2棟の建物の敷地となっている土地について贈与税の配偶者控除を適用しようとする場合には、居住用部分を特定して申告しなければならない。 税理士はこれを指導しないまま贈与を実行し、申告直前になってこれに気づき、贈与をなかったこととして贈与税の申告を取りやめ、贈与登記を錯誤として無効とすることとなってしまった。 これにより、登記費用等50万円につき損害が発生し、賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 平成X4年7月に貸家建付地と居住用宅地が一筆となっている土地のうち、居住用宅地部分について、贈与税の配偶者控除を使って生前贈与を受けたい旨の相談を受ける。 平成X4年9月に上記業務を受任し、司法書士に依頼して持分による登記が完了する。 平成X4年12月に不動産取得税を支払う。 平成X5年2月に贈与税申告の準備中に居住用宅地を分筆して特定しないと贈与税の配偶者控除の適用が受けられないことが判明 平成X5年3月に贈与税の申告を取りやめ、錯誤で登記を無効とした。その後、課税団体より不動産取得税還付の連絡を受ける。 《基礎知識》 ◆贈与税の配偶者控除(相法21の6) その年において贈与によりその者との婚姻期間が20年以上である配偶者から居住用不動産等を取得した者が、当該取得の日の翌年3月15日までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合には、その年分の贈与税については、課税価格から2,000万円を控除する。 ◆居住用と居住用以外の建物の敷地となっている土地の持分である本件受贈財産のそのすべてが居住用家屋の敷地であるとはいえないとした事例(国税不服審判所 裁決事例集 No.62-329頁。平成13年9月13日裁決) 請求人は、居住用と居住用以外の建物の敷地となっている不動産につき持分で贈与を受けた場合には、贈与当事者の真意を汲んで配偶者の特別控除の特例の適否を判定すべきであると主張するが、当該特例は、生存配偶者の老後の生活安定に配慮する趣旨から、一生に一度限り、その取得した居住用財産の課税価格から2,000万円を限度として控除することを、登記簿の謄本等の提出を要件として認める措置であり、その解釈は厳格にされるべきである。したがって、本件においては、本件受贈財産のそのすべてが居住用家屋の敷地であるとはいえず、請求人の更正の請求には理由がない。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 税理士は、依頼者から、貸家建付地と居住用宅地が一筆となっている土地について贈与税の配偶者控除を適用した生前贈与の相談を受けた際、適用が可能であると説明し、分筆しないまま持分贈与を実行し、登記を行った。 そして贈与税の申告にあたり、裁決事例を確認していて、分筆して居住用部分を特定しないと適用が受けられないことに気づき、贈与をなかったこととして贈与税の申告を取りやめ、贈与登記を錯誤により無効とすることとなってしまった。 贈与の相談を受けた段階で、分筆の指導をしていれば、贈与税の配偶者控除の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。 ただし、本事例においては、錯誤登記により不動産取得税が還付されたことから、過大納付税額は発生していない。 しかし、税理士の誤指導による贈与登記費用45万円と錯誤による抹消登記費用5万円(合計50万円)は、損害に該当するものと思われる。 《予防策》 [ポイント] 情報収集を心がける 本事例のように、法律や通達にはないが、裁決事例にほとんど同様の事例の結論ともいえる情報が掲載されていることも少なくない。判断に迷うような依頼を受けた場合には、法律や通達だけでなく、国税庁から発せられる情報や、国税不服審判所の裁決事例、さらには判決事例などにも関心を持ち、常にアンテナを張り、情報収集に心がけたい。 また、本事例のような単独の依頼については、所轄税務署に事前に確認をすることも有効である。 (了)
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第16問】 「家屋の貸し合いをしている場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q 大阪本社に勤務しているXは大阪市内の自宅に居住し、東京支社に勤務しているYは東京都内の自宅に居住していました。 6年ほど前に、Xは東京支社にYは大阪本社に、同時に転勤となり、会社からの斡旋もあったことから、XとYは、それぞれの家屋を無償で貸し合い、それぞれ居住していました。 このほど、Xは会社を退社して他社へ転職することとなったことから、大阪の家屋からYを立ち退かせた上で、この家屋を売却することとしました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A この家屋は、その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されていないため、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 この場合、相互に貸し合っていることから、自己が自己所有の家屋に居住しているものと同一視することはできない。 したがって、措法35①で規定されている法定期限内(その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)の譲渡に該当しないこととなる。 (了)
〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第14回】 「類似業種比準方式の考え方」 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 〔3つの評価方法をおさらい〕 前回は非上場株式の相続税評価について、概略を説明した。非上場株式の評価方法には、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式があり、保有する議決権割合、会社規模により、適用される評価方法が異なることを説明した。 復習すると、少数の議決権しか保有しない場合には、配当還元方式が適用され、支配権を有するような議決権を保有する場合には、会社規模が大会社であれば類似業種比準方式が適用され、会社規模が小会社であれば純資産価額方式が適用される。支配権を有するような議決権を保有する場合で、会社規模が中会社の場合には折衷方式(類似業種比準方式と純資産価額方式を一定割合でそれぞれ考慮する評価方法)にて評価される。 図1(再掲) 〔上場株式との比較で推定〕 類似業種比準方式は、評価対象である非上場株式が、仮に上場した場合にいくらの株価になるか、という推定計算である。評価対象である非上場株式の発行会社の業種と類似業種の上場株式とを比較して株価を推定する考え方であり、株価は配当、利益、純資産に比例して決定されるという考え方に基づいて推定を行う。 図2 上記図の例でいうと、評価対象である非上場株式の発行会社については、配当10、利益10、純資産10であったと仮定する。また、評価対象である非上場株式の発行会社の業種と類似する業種の上場会社について、配当10、利益10、純資産10、株価100円であったとする。このケースでは、評価対象会社と、類似業種の上場会社の配当、利益、純資産が一致しているため、評価対象の非上場株式は、類似業種の上場株式価格100円と同じ金額になると推定される(厳密な類似業種比準方式では、斟酌割合などあるため、完全に一致するわけではないが、ここでは理解しやすくするため、考え方を簡便的に説明している)。 このように類似業種比準方式では、評価対象である非上場株式について、その類似業種である上場株式の「配当」、「利益」、「純資産」を比較することで、その類似業種である上場株式株価から、非上場株式株価を推定するものである。したがって、類似業種比準方式を適用する前提として、評価対象である非上場株式の株価と、類似業種の上場株式の株価とに、一定の関連性(相関関係)がある必要がある。 〔推定計算できない特殊なケース〕 このように考えていくと、一定の場合には、評価対象である非上場株式の株価と、類似業種の上場株式の株価とに、一定の関連性(相関関係)が認められないと考えられるケースもある。その場合には、上場株式の株価から推定計算が成り立たないことになり、結果として、類似業種比準方式による株価計算は理論的に適用できないことになる(*)。 そのような一定の場合として、財産評価通達では、以下のものを挙げており、これらを特定の評価会社の株式と呼ぶ(財産評価基本通達189)。 要するに、特殊な状況にあるため、上場株式から株価を推定することが合理的でないケースであり、類似業種比準方式が適用できないケースである。 詳細な定義の説明は割愛するが、1及び2は、総資産に占める株式・土地等の割合が大きい会社であり、3、4、5、6は収益力が著しく悪化している会社または通常の事業活動を行っている状態ではない会社を意味している。このような会社と、上場会社とは、所有財産の構成内容や事業活動状況が著しく異なると考えられ、したがって上場株式の株価との関連性が乏しいと考えられ、上場株式の株価から推定して株価を導くことは合理的ではないと考えられる。これらの会社の株価については、類似業種比準方式は適用できないため、基本的には純資産価額方式による株価計算を行うことになる(財産評価基本通達189-2~189-6)。 (了)
経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第11回】 「グループ内合併と税金(その1)」 ―被合併法人の支配関係前未処理欠損金の引継制限― 仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久 1 適格合併における欠損金の制限措置 適格合併における欠損金については、次のような3つの制限措置を受ける可能性があります。 2 被合併法人の支配関係前未処理欠損金の引継制限 適格合併の場合には、被合併法人の支配関係前未処理欠損金は、原則として合併法人に引き継ぐことができます(法法57②)。 しかしながら、同一グループ内の適格合併において、被合併法人の未処理欠損金の引継ぎを無制限に認めた場合には、未処理欠損金を利用した不当な租税回避行為がなされる可能性があります。例えば、多額の未処理欠損金を有するグループ外の法人の発行済株式のすべてを取得した上で同一グループ内の収益性の高い他の法人に適格吸収合併させた場合には、このような引継制限を課さないと、当該他の法人において容易に節税することが可能となります。 そのため、同一グループ内の適格合併においては、次のような3つのケースを除き、被合併法人の支配関係前未処理欠損金の合併法人への引継ぎを制限しています。 以上の被合併法人の支配関係前未処理欠損金の引継制限の用件をフローチャートにすると次のようになります。 ご質問のケースでは、合併の日の属する事業年度開始の日が、支配関係が発生した後5年を経過しておらず、みなし共同事業要件も満たしていないため、被合併法人の支配関係前未処理欠損金の引継ぎに制限が課されます。 4 合併法人における未処理欠損金の帰属事業年度 合併法人に引き継ぐことができる被合併法人の未処理欠損金は、未処理欠損金が発生した被合併法人の事業年度開始の日が属する合併法人の事業年度において生じたものとみなされます(法法57②)。 そのため、合併法人と被合併法人の事業年度が異なる場合には、引き継いだ未処理欠損金の繰越期間は、1年決算の場合、本来の繰越期間より決算月の差の月数だけ短くなります。また、期中で合併した場合であっても、被合併法人の最終事業年度(適格合併の日の属する事業年度の開始の日から適格合併の日の前日までの期間)において発生した未処理欠損金も同様です。 ご質問のケースでは、合併法人と被合併法人の事業年度が異なるため、次のように未処理欠損金の発生事業年度が3ヶ月早くなり、繰越期間が3ヶ月短くなります。 すわなち、S社において平成25年3月期に発生した未処理欠損金は、平成24年4月1日が事業年度の開始の日なので、平成24年4月1日が属するP社の事業年度である平成24年12月期が帰属事業年度になります。また、期中で合併しているため、平成25年4月1日に開始した被合併法人の最終事業年度において発生した未処理欠損金は、合併法人の合併事業年度の前事業年度である平成24年12月期において発生した未処理欠損金とみなされます。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 5 引継制限を受ける被合併法人の未処理欠損金 被合併法人の未処理欠損金のうち、次の①及び②の金額は合併法人に引き継ぐことができず、切り捨てられます。 ご質問のケースでは、平成23年7月1日にS社の株式を取得していることから、平成23年12月期が支配関係の発生した事業年度となります。そのため、支配関係が発生する前の平成22年12月期において生じた被合併法人の未処理欠損金は、全額が引継制限を受け、切り捨てられます。また、支配関係が発生した以後の平成23年12月期及び平成24年12月期において生じた被合併法人の未処理欠損金のうち、特定資産の譲渡等損失相当額に対応する部分については引継制限を受け、切り捨てられます。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 6 合併法人の支配関係前自社繰越欠損金の控除制限 多額の資産の含み益を有するグループ外の法人の発行済株式のすべてを取得した上で同一グループ内の他の法人に適格吸収合併をさせた場合には、被合併法人から帳簿価額で引継ぎを受けた資産の含み益を実現させることにより、合併がなければ控除期間の制限から切り捨てられていたであろう合併法人の未処理欠損金を当該実現利益で相殺控除することが可能となります。 そのため、同一グループ内の適格合併においては、次のような3つのケースを除き、合併法人の支配関係前自社欠損金についての繰越控除が制限されています(法法57④)。 なお、控除制限の適否については、被合併法人からの未処理欠損金の引継制限と同様の検討を行うことになります。 また、自社繰越欠損金の控除制限は、適格合併以外の適格組織再編成又は100%グループ内の非適格合併の場合にも適用がありますので注意する必要があります。 ★ ★ ★ 今回は、「被合併法人の支配関係前未処理欠損金の引継制限」と「合併法人の支配関係前自社繰越欠損金の控除制限」に着目して説明しましたが、次回(2月27日公開)は、「特定資産譲渡等損失額の損金算入制限」と「欠損金の引継等制限における特例計算」について説明したいと思います。 (了)
貸倒損失における税務上の取扱い 【第10回】 「子会社支援のための無償取引⑥」 公認会計士 佐藤 信祐 本事件についての第一審判決の内容は、第9回で解説した通りである。 本稿においては、控訴審判決、最高裁判決について触れたうえで、低利貸付けについての法人税法上の考え方について考察を行うこととする。 (2) 控訴審・福岡高裁宮崎支部平成14年10月29日判決(税資252号順号9222) 第一審判決とほぼ同じ判断が下されている。なお、利率だけみればわずかな供与であっても、本件各貸付けの元本額が巨額である結果、控訴人が子会社に供与したこととなる利益の額もまた巨額となるから、利率だけをみて本件各貸付けによる低利融資が寄付金に該当しないとは到底いえないことが補足された。 (3) 最高裁平成15年4月25日判決(税資253号順号9332) 上告理由が民事訴訟法に規定する事由に該当しないことから、不受理となった。 (4) 本事件についての評釈 本事件においては、適正利率をどのように算定すべきであるかという点と、法人税基本通達9-4-2に定める「相当の理由」があるか否かという点が争われた事件である。 実務上、いずれとも重要な内容ではあるが、本連載は貸倒損失についての連載であり、当該判例を紹介した理由としては、法人税基本通達9-4-2の内容を分析するためであるため、本稿では後者についてのみ解説を行うこととする。 本事件については、平野敦士氏達は、 としている。 たしかに、控訴審判決については、説示の補足として、①低利貸付けを受けた子会社は一貫して営業利益を計上し続けていたこと、②株式取引によって被る損失を対象となった子会社1社に集約させたことによって債務超過になったことから、 とまで言っているため、そういった印象を受けるのもやむを得ない点である。 しかしながら、本事件が租税回避的な要因が強かったかといえば、少なくても、被告(鹿児島税務署長)の主張や、裁判所の判断においては、そこまで強く影響を与えたものではなく、単純に安い金利で貸し付けたから寄附金として認定したという程度のものであると考えられる。 また、大淵博義教授は、第1審判決が下された後に、 としたうえで、 と指摘されている。 控訴審判決において、僅かな金利差であっても貸付金額、経済的利益が多額であるという点が補足されているため、控訴審判決後であれば違った文章であったのかもしれないが、当時において、納税者にとって厳しい判断が下されたという印象を受けていたことは窺える文面である。 さらに、法人税基本通達9-4-2の適用の可否については、①例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためやむを得ず行われるもの、②合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付等をしたことについて相当な理由があると認められるときの2つを挙げたうえで、 と指摘されている。 すなわち、被告の主張や裁判所の判断については、倒産寸前まで至らないと無利息貸付けや低利貸付けを行うことができないと言っているに等しく、法人税基本通達9-4-2の趣旨を敢えて狭く解釈するものであるということである。 この点については、実務においても悩ましい点であり、法人税基本通達9-4-2の適用がかなり難しい実態を表すものである。 著者の経験上、法人税基本通達9-4-2に基づいて、子会社に対する債権放棄や無利息貸付けなどの支援が認められた事例はあることはあるが、国税局に対する「再建支援等事案に係る事前相談」を行いながら、かなり慎重に行う必要があり、むしろ、当該事前相談を行わないと法人税基本通達9-4-2を適用することすらできないのではないかという印象を受けたことも少なくない。 そのため、組織再編税制や子会社支援の事例が積み重なると、むしろ、子会社に対する債権放棄や無利息貸付けは行わず、組織再編成を利用した手法や、第2会社方式を利用した貸倒損失の認識などによる手法を採用するようになったというのが実感である。実際に、少なくても、ここ10年くらいの著者の経験によれば、債権放棄や金利の引下げに伴う法人税基本通達9-4-2の適用は、金融機関による融資先の支援が中心であり、私的整理ガイドラインや中小企業再生支援協議会等を利用するものである。 このように、大淵博義教授が懸念されたように、法人税基本通達9-4-2を適用し、子会社に対して無利息貸付けや低利貸付けを行うことはかなり難しくなっているというのが実態であると言える。 また、「書面による合理的再建計画」の存在が必要か否かという点については、あくまでも、「相当な理由があること」の例示であるとしたうえで、 と指摘されている。 この点についても、債権放棄はともかくとして、緊急融資については、資金繰りのために行われるものであり、わざわざ再建計画を作成する時間的な余裕は存在しないというのが当然であり、理解できる主張である。そうなると、実際に、無利息貸付けや低利貸付けが認められる場合はかなり限定的であると言わざるを得ない。 さらに、被告の主張や裁判所の判断を見てみると、グループ会社からの借入金については、支払利息について未払利息として計上するだけにして、実際の支払いについては後回しにすれば、資金繰りに窮することはないという理論構成のように思われる。 しかしながら、その理屈を持ち出せば、資金繰りさえ何とかなれば、赤字であっても会社は倒産しないことから、親会社や他のグループ会社が健全であれば、倒産の危機に瀕している会社は存在しないことになる。 言い換えれば、損益計算書を改善させないと倒産の危機に瀕してしまう業界でないと、倒産の危機に瀕していないとも言えてしまい、法人税基本通達9-4-2の適用がかなり難しいことを物語る事実である。 それが故に、金融機関の不良債権処理については、法人税基本通達9-4-2を適用するための事前相談を避けるために、私的整理ガイドライン、RCC企業再生スキームなどが生み出されたことを考えると、子会社に対する債権放棄、無利息貸付けなどの支援のために法人税基本通達9-4-2を適用することはかなり厳しいということができる。 本事件だけでなく、子会社支援に係る判例や裁決例等を見てみると、法人税基本通達9-4-2の適用が想像以上に厳しいものであり、実務上、これを適用することは限定的であるということができる。 次回以降においては、所得税法における無償による金銭の貸付けである平和事件について解説し、法人税法における無利息貸付けと所得税法における無利息貸付けの取扱いの相違点について、それぞれ分析を行う予定である。 (了)
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第1回】 「資産除去債務~計上から履行まで~」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 「資産除去債務」とは、「有形固定資産(投資不動産を含む)の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの」をいう(「資産除去債務に関する会計基準」(以下「基準」という)3(1))。 資産除去債務の会計処理は、簡潔にいうと、将来、法令や契約等で義務付けられた除去費用が発生する(可能性がある)場合、その除去費用を将来ではなく、現時点で負債に計上するというものである。 具体的な資産除去債務の会計処理の検討は、以下の4つのステップに分けることができる。 この4つのステップをフロー・チャートにすると、以下のようになる。 ※ 画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 全体の流れを確認しながら、以下ステップごとの解説をご覧いただきたい。 まず、【STEP1】固定資産の取得時では、計上要否の判定を行う。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (1) 資産除去債務が有形固定資産に存在するか? 具体的には、以下の2つの要件をいずれも満たすかどうかを検討する(基準3(1))。 以下の2つの要件のうち、いずれかを満たさない場合には、【STEP1】(2)以降の検討は不要である。 ②の法令上又は契約による義務としては、以下のような例が挙げられる。 《法令上の義務の例》 PCBの除去 アスベストの除去 土壌汚染 等 《契約による義務》 建物等の賃貸借契約による原状回復義務 定期借地権契約による原状回復義務 等 なお、資産除去債務の対象にならない場合でも、引当金や固定資産の減損の対象になる場合がある。 (2) 資産除去債務を合理的に見積もることができるか? 資産除去債務が発生する(可能性がある)としても、合理的に見積もることができない資産除去債務は財務諸表に計上しない(基準5)。そのため、ここでは資産除去債務を合理的に見積もることができるかどうかを検討する。 資産除去債務の金額(割引前将来キャッシュ・フロー)を合理的に見積もることができない場合や資産除去債務の履行時期を合理的に見積もることができない場合(基準35)、資産除去債務の計上は行わない。 ここで、「合理的に見積もることができない場合」とは、決算日現在において入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいう(「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という)2)。 なお、資産除去債務の履行時期や除去の方法が明確にならないことなどにより、その金額が確定しない場合でも、履行時期の範囲及び蓋然性について合理的に見積もるための情報が入手可能なときは、資産除去債務を合理的に見積もることができる場合に該当する(適用指針17)。 検討した結果、「合理的に見積もることができる」と判断した場合、【STEP2】以降を検討する。 「合理的に見積もることができない」と判断した場合には、【STEP2】以降の検討は不要である。 また、資産除去債務を合理的に見積もることができない場合には、財務諸表上「資産除去債務の概要、合理的に見積もることができない旨及び理由」を注記する(基準16(5))。他方、計算書類では、当該注記は必ずしも求められてはいない。 なお、当初は合理的に見積もることができなかったが、その後、合理的に見積もることができるようになった場合は、その時点で貸借対照表に計上する(基準5)。 【STEP2】資産除去債務の発生時では、3つの数値の算出及び会計処理について検討する。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (1) 数値の算出 ① 割引前将来キャッシュ・フローを見積もる。 (1)では、具体的な資産除去債務の金額を算出する。まず、割引前将来キャッシュ・フローを算出する。 具体的には、将来支出する(可能性のある)除去に直接要する費用の他、除去に至るまでの保管や管理のための費用を見積もる(基準6)。 見積もる際の参考となる情報としては、以下のものが考えられる。 平均的な処理作業に対する価格の見積り 過去の類似資産における除去費用の実績 投資の意思決定を行う際に見積もられた除去費用 業者からの見積書、業者のホームページ 有形固定資産の取得の際に取引価額から控除された売り手に原因がある除去費用 等 ② 割引率を設定する。 次に割引率を設定する。割引率には、無リスクの税引前の割引率を用いる(基準6(2))。 この際、将来キャッシュ・フローが発生するまでの期間に対応した国債の利回りなどを参考に設定することが考えられる。 ③ 割引後将来キャッシュ・フローを算定する。 3番目に上記(1)①で見積もった割引前将来キャッシュ・フローと(1)②で設定した割引率をもとに、割引後将来キャッシュ・フローを算定する(基準6)。 (2) 会計処理 - 貸借対照表に計上する。 (1)③で算定した金額を資産除去債務として貸借対照表に計上する。また、同額を有形固定資産の帳簿価額に加える(基準7)。 有形固定資産の帳簿価額に加えるのは、取得に係る付随費用であるためである。有形固定資産の取得に係る付随費用は取得原価に含めるが、除去費用も取得に係る付随費用の1つであるため、有形固定資産の帳簿価額に加える。 また、有形固定資産の帳簿価額に加えることで、資産への投資について回収すべき金額を引き上げることになり、会社が回収すべき金額や保有している資産からどれだけ利益を獲得できているかの判断にとって、有用な情報が提供されることになる。 会計処理は以下のとおりである。 【会計処理(税効果は除く)】 また、財務諸表上、重要性が乏しい場合を除き、以下の内容を注記する(基準16(1)~(3))。他方、計算書類では、当該注記は必ずしも求められていない。 【STEP3】決算時では、資産除去債務発生時及び翌期以降に分けて考える必要がある。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (1) 資産除去債務発生時の決算時 - 減価償却費及び時の経過による費用を損益計算書に計上する。 資産除去債務を計上した後、減価償却費と利息費用を毎期計上する(基準8、9)。 資産計上された資産除去債務に対応する金額は、減価償却を通じて、各期に費用計上する。 資産除去債務は割引「後」将来キャッシュ・フローで計上されることから、時の経過による資産除去債務の調整額(=期首の資産除去債務×割引率)を費用として計上する。また、この費用は減価償却費と同じ区分に計上する。 【会計処理(税効果は除く)】 (2) 資産除去債務発生の翌期以降の決算時 ① 割引前将来キャッシュ・フローに「重要な」見積りの変更が生じたか? 割引前将来キャッシュ・フローに「重要な」見積りの変更がある場合、資産除去債務の金額を変更する必要がある(基準10)。 そのため、「重要な」見積りの変更とは、どれくらいの「重要性」かを、会社の規模に応じて社内で決定する必要がある。 「重要な」見積りの変更が生じた場合、資産除去債務及び関連する有形固定資産の帳簿価額を修正する。 その際には、割引率は、以下のものを用いる(基準11)。 また、資産除去債務の見積りを変更したときは、財務諸表上、重要性が乏しい場合を除き、「その変更の概要及び影響額」を注記する(基準16(4))。他方、計算書類では、当該注記は必ずしも求められていない。 ② 減価償却費及び時の経過による費用を損益計算書に計上する。 上記(2)①で見積りを変更した場合は、変更後の金額をもとに減価償却費及び利息費用を計上する。また、見積りを変更しなかった場合は、元々の計上額をもとに減価償却費及び利息費用を計上する。 具体的な会計処理については、上記【STEP3】(1)を参照。 最後のSTEPである【STEP4】履行時では、以下の会計処理を行う。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 具体的には、資産除去債務を履行した時(有形固定資産の処分等を行った時)に、資産除去債務を取り崩す会計処理を行う。 【会計処理(税効果は除く)】 なお、履行差額は、原則、減価償却費と同じ区分に計上する(基準15)。ただし、履行差額が異常な原因により生じた場合(例えば、当初の除去予定時期よりも著しく早期に除去することとなった場合)には、特別損益に計上することができる(基準58)。 * * * 以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 (※)画像をクリックするとPDFが開きます。 (了)