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税効果会計を学ぶ 【第16回】「連結財務諸表における税効果会計の取扱い①」

-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。   税効果会計を学ぶ 【第16回】 「連結財務諸表における 税効果会計の取扱い①」   公認会計士 阿部 光成   今回から、連結財務諸表における税効果会計の取扱いについて解説する。 連結財務諸表における税効果会計については、基本的に、「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第6号。以下「連結税効果会計実務指針」という)に規定されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 連結財務諸表における税効果会計の基本的な考え方 連結財務諸表における税効果会計とは、個別財務諸表において財務諸表上の一時差異等に係る税効果会計を適用した後、連結財務諸表作成手続において連結財務諸表固有の一時差異に係る税金の額を期間配分する手続である(連結税効果会計実務指針2項)。 税効果会計の基本的な考え方は、貸借対照表上の資産及び負債の金額(会計上の簿価)と課税所得計算上の資産及び負債の金額(税務上の簿価)との差額である「一時差異」について、繰延税金資産及び繰延税金負債を認識する会計手法である(「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」Ⅲ、1、「税効果会計に係る会計基準」第二、一、2)。 前述のように、連結税効果会計実務指針では「個別財務諸表において財務諸表上の一時差異等に係る税効果会計を適用した後」と規定されている。 これは、連結財務諸表における税効果会計の適用に際して、連結修正項目に係る税効果会計は、個別財務諸表の会計上の簿価を税務上の簿価とみなし、連結財務諸表における会計上の簿価との差額を一時差異として税効果会計を行うことを意味している(手塚仙夫『税効果会計の実務(第7版)』(清文社、2011年6月)137ページ参照)。   Ⅱ 連結財務諸表における税効果会計適用の手順 連結財務諸表における税効果会計適用の手順は、連結納税制度が適用されている場合を除いて、個々の連結会社ごとに行う(連結税効果会計実務指針10項)。 これは、まず個別財務諸表項目に存在する一時差異等に対して繰延税金資産及び繰延税金負債を計上した後の個別財務諸表を作成し、その後、資本連結手続及びその他の連結手続上生じた一時差異に対して、当該差異が発生した連結会社ごとに税効果会計を適用することを意味している。   Ⅲ 連結財務諸表固有の一時差異 連結財務諸表固有の一時差異には、次のものがある。 (了)

#No. 32(掲載号)
#阿部 光成
2013/08/22

〔会計不正調査報告書を読む〕【第10回】扶桑電通株式会社・当社営業所における不適切な取引に係る「第三者委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第10回】 扶桑電通株式会社・ 当社営業所における不適切な取引に係る 「第三者委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【扶桑電通株式会社の概要】 扶桑電通株式会社(以下「扶桑電通」という)は昭和23年創業。富士通製品の販売、設計施工、保守、システムソフト開発を主たる事業とする。売上高38,489百万円、経常利益322百万円。従業員1,032名(数字はいずれも2012年9月期)。東証2部上場。   【報告書のポイント】 第三者調査委員会による調査に先立つ2012(平成24)年12月12日、扶桑電通では、社外監査役(弁護士)を含む社内調査委員会の調査結果として、平成19年度から平成24年度までにおいて、架空循環取引などの不適切な取引による売上高1,036百万円、スルー取引による売上高1,521百万円があったことを公表し、過年度の有価証券報告書などを訂正した。 ところが、その後の定期監査において、商流が不明確な取引が抽出され不適切な取引であるとの疑念を抱いたことから、継続して事実調査を行った結果、不適切な取引であることが判明し、専門的及び客観的な見地から調査分析、不適切取引に関する事実の認定、発生原因の究明、再発防止策に関する提言が必要であると判断し、第三者調査委員会を設置した。   1 調査結果により判明した事実 (1) 不適切な取引発覚の経緯 2012年12月時点では、今回の不適切な取引が判明した営業所については、スルー取引に係る会計上の誤りは訂正したものの、架空取引は判明していなかった。 その後、再発防止策の一環として2013年3月に行われた定期監査で、不明確な取引が発見され、同月29日に当該取引に係る入金がなかったことから、同営業所販売課長に確認したところ、架空取引の疑いが判明した。 (2) 不適切な取引の内容 首謀者である販売課長は、前職においても、販売実績を上げるために架空取引を行っており、その架空取引の代金について、甲社に資金の工面を依頼し、甲社が銀行から4,000万円の融資を受け、入金に充てた。その後、扶桑電通に転職した販売課長は、この4,000万円を甲社に返済するために、架空循環取引を開始した。 架空循環取引の手口としては、エンドユーザーを自治体や学校とする架空の商談に基づき、扶桑電通が、甲社から仕入れて、己社に販売するという、3社間で資金を循環させる取引を繰り返していた。 (3) アンケート調査 社内調査でも、調査委員会の調査でも、全社員に対してアンケート調査が行われた。 社内調査の際のアンケートは、対象者全員から回答を得ているものの、回答に記名を要求するものであったことから、コンプライアンス上大きな問題となる取引に関する回答はなかった。 一方、調査委員会のアンケートは、調査委員が所属する事務所あてに電子メールで送信させ、会社へは回答者名を提供しないという条件で行われた。 その結果、3名の回答者から調査委員会が把握していない取引に関する回答があったが、1名は通報者の匿名性に不安を感じたことから聞き取り調査を拒否し、聞き取り調査に応じた2名からも、架空取引等を認定する資料までは得られなかった。 (4) 業績に与えた影響 今回の不適切な取引に関する訂正額は、売上高1,836百万円、経常利益347百万円となり、架空取引による売上計上額は、昨年12月に公表した金額を合わせ、2,874百万円に達した。   2 不適切な取引が長期間発覚しなかった理由 (1) 営業所における売上高の急激な増加 同営業所の売上高は例年3億円程度で推移していたところ、販売課長が入社した翌年の平成20年度は6億円弱、その翌年度以降は8億円超となるなど、急激に売上高が増加したが、管理部門・支店長は、不審をもって調査するなどの措置はとらなかった。 通常、社員が1人増加したくらいで、年間3億円から5億円も売上が増えるとは考えづらいところである(しかも、問題の営業所は地方にあると推定される)が、業績が向上している場合に、それを問題にしづらい社風があったことが、発覚を遅らせた一因となっていることが、報告書からはうかがえる。 また、販売課長の上司である支店長や営業所長は、個別の大型案件の成約があっても、得意先やエンドユーザーにお礼を兼ねて挨拶に行くことはなかったということである。しかし、他社の架空取引事例についての調査結果では、新規商談や大型商談の受注に際して、営業部門の責任者などが顧客を訪問することで、取引の不自然さに気づく可能性が高いことは繰り返し報告されており、そうした知見は生かされなかった。 (2) 富士通製品以外の製品を扱う商談、文教商談に関する聖域化 首謀者である販売課長が仕立て上げた架空取引は、扶桑電通の主力である富士通製品ではなく、また、当営業所において不得手とする文教関係の顧客との商談であったことから、これらの商談は、営業所長をはじめ、販売課長の部下である主任クラスの社員も、取引全般を販売課長に任せきりにせざるを得ず、これが、販売課長による架空取引の作出と継続を可能又は容易にした原因の1つとなった。 なお、扶桑電通の主要取引先である富士通グループへの商品発注については、すでに電子化対応により一元管理されており(東京証券取引所への「改善報告書」より)、富士通製品以外の製品についてはこうした対応ができておらず、また、独立した購買部門が存在しなかった組織上の不備も、架空取引を容易に作出できた原因といえよう。 (3) 内部監査の不十分さ 問題となった営業所のような小規模な営業所への往査は5年に一度しか行われず、定期的な監査以外に、売上が急増するとか、一定額以上の大きな成約があったとか、又は、入出金日が近接するなどの取引の異常性に着目した監査は行われていなかった。 こうした内部監査の不十分さも、架空取引の牽制や早期発見を妨げた原因の1つになった。   3 調査報告書の特徴 売掛債権の増加と回収の長期化を懸念した監査室が在庫確認などの内部監査を行い、また、会計監査人からも不適切な会計の疑いを指摘されて、社内踏査委員会を立ち上げ、全社員にアンケート調査を行うなどして、不適切な取引の解明を終え、過去6年間で25億円以上の売上高の修正を発表した。同時に再発防止プロジェクトを立ち上げ、徹底した再発防止に取り組む――これが2012年12月における扶桑電通の対応である。 これで終わっていれば、発見までに少し長い期間を要したとはいえ、一応の自浄能力が発揮できた事例として、さほどの注目を集めることもなかったかもしれない。 ところが、社内調査だけでは、すべての不適切な取引が解明できたわけではなかった。 1つの不正が発覚した場合に、社内に他の不正が潜在しているかどうかについても調査・検証が求められるのは当然であり、扶桑電通においても、限られた時間の中で、こうした作業を行っていたのだが、結果的には、社内調査委員会による調査は不十分なものであり、改めて第三者調査委員会を設置することになる。 第三者調査委員会の調査対象となった営業所は、営業所長が支店長と兼任で常駐しておらず、首謀者である課長、主任を含む所員4名程度の小規模なものであった。そのため、内部監査は5年に一度しか行われず、発注業務を主任に任せることで体裁上は職務分離を行っていたが、実際には、販売課長の商談に対する牽制機能はなかった。 なお、調査委員会によるアンケートは、結果的には、新たな不正の発見にはつながらなかったが、「匿名性が確保されれば有効な回答が得られる」という示唆を与えるものであり、不正調査における網羅性の検証のための手段として、全社員に対するアンケートをどのように利用すればいいのかを検討する1つのヒントを与えたものであると評価できる。 (了)

#No. 32(掲載号)
#米澤 勝
2013/08/22

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第16回】ソフトウェア会計③「自社利用のソフトウェアの会計処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第16回】 ソフトウェア会計③ 「自社利用のソフトウェアの会計処理」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 在庫管理システムの導入費用が3,000千円で、この在庫管理システムによる費用削減効果が5年間継続すると見込んだ場合、会計処理は以下のようになります。 〈会計処理〉 ① 在庫管理システムの資産計上 ② 減価償却費の計上(×1年度末決算時)  (*1) 3,000千円/5年=600千円 〈会計処理の解説〉 本事例における在庫管理システムは、将来の費用削減効果が確実に見込まれるため、取得に要した費用を無形固定資産として計上します。仮に、この在庫管理システムを導入しても、費用削減効果が見込まれない場合には、資産計上は認められず、費用として処理しなければなりません。 ソフトウェアは、物理的実体が見えにくく、その経済価値に不確実性があるため、有形固定資産に比べて資産計上の要件が厳格である点に注意が必要です。 自社利用のソフトウェアには、大きく分けて以下の2つが含まれます。 本事例における在庫管理システムのように、①社内業務の効率化を目的とするソフトウェアは、収益との直接的な対応関係が希薄であるため、定額法による償却が一般的です。 一方、②サービス提供目的のソフトウェアは、通常、自社のサーバーで管理されますが、これを顧客に利用させて収益を獲得するものであるため、収益と密接に対応しています。したがって、自社利用のソフトウェアであっても、サービス提供目的のソフトウェアの場合には、見込販売収益に基づく減価償却を採用した方が合理的と考えられます。 耐用年数は、利用可能期間を基礎として原則5年以内の年数とすることとされています。これは、ソフトウェアは有形固定資産と比較して、技術革新による陳腐化のリスクが高いためです。5年を超える耐用年数を設定することもできますが、その場合には合理的な根拠に基づくことが必要とされています。 (了) ※9月は建設業会計を取り上げます。

#No. 32(掲載号)
#大川 泰広
2013/08/22

活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第1回】「権利と義務で統治することの限界」

活力ある会社を作る 「社内ルール」の作り方 【第1回】 「権利と義務で統治することの限界」   特定社会保険労務士 下田 直人     〈組織にはルールが必要〉 複数の人間がひとつの場所でひとつの目的に向かって同じ方向を見るには、一定のルールが必要となってくる。 ルールがなければ、それぞれの人が自分なりの考えに基づいて行動することになり、一定基準以上の高い成果を継続的に上げつづけることが難しくなるからだ。 集団を効率的、効果的に動かすには、ルールが存在し、また、そのルールが社員に理解されている必要がある。 この理解というプロセスに極めて重要なのが、「文書によるルールの明文化」である。   〈就業規則の必要性〉 社内ルールと言うと、皆さんは、何をイメージするだろうか。 おそらく、「就業規則」が思い浮かぶのではないだろうか。 就業規則は、労働基準法上では、従業員が10名以上いる事業場では労働基準監督署への届出と社員への周知が義務付けられている。また、労働契約法という法律では、就業規則が定められ、社員に周知されていれば、その内容が労働契約の一部となるとも言っている。 つまり、就業規則は、社内で発生する会社と社員との間の権利と義務をはっきりさせるものである。したがって、会社は、就業規則を根拠に、社員に命令することができるのだ。また、労使間でトラブルが生じた際には、解決の根拠となるものでもある。 仮に就業規則が社内に存在しないということは、各社員と細かな労働契約を結ばない限り、会社の規律に従わせることなどが難しくなる。 つまり、就業規則がないということは、社内統治ができなくなる恐れがあるということだ。 昨今では、「問題社員対策」として事細かな内容を就業規則に定める傾向にある。 前述のとおり、就業規則に様々な禁止規定や義務規定を設けておけば、それを根拠に社員を拘束することができるからだ。 これは、ある意味においては、重要なことであり、否定するものではない。実際に、トラブルメーカー的な者がいることも事実だ。 したがって、何はさておき、会社は、規模や業種に関係なく、自社実情にマッチした就業規則をきちんと作成しておくことが必要になってくる。   〈就業規則重視が行き過ぎると〉 しかしながら、一方で次のような考えも、筆者の頭の中には駆け巡る。 このやり方を追求していくと、問題が起きれば、それに対応する新たな規則を作ることになり、規則がどんどん肥大化していってしまう。 つまり、きりがなくなってしまうのだ。 筆者が学生の頃は、全国の学校で「変な校則がある」と話題になった。 その中には「男子生徒と女子生徒は1メートル以上離れて歩かなければならない。」といった極めておかしなものがあったのを記憶している。想像するに、このような校則も何か問題が起こり、その対処として決められたものであろう。 問題への対処療法としてのルール作りが極端に行きついてしまうと、規則が戦略的にしかけるツールではなくなってしまう。肥大化したルールは、業務の生産性を上げるために求められる一定の基準ではなく、問題が起きた時に会社が都合よく罰することができるようにすることを目的とした、経営的には極めて後ろ向きのツールにしかならない。   〈規則は何のために必要か?〉 ここで一度原点に立ち返りたいのであるが、そもそも、なぜ規則が必要なのか? 筆者は、会社にとって規則が必要な理由は、「生産性の向上」にあると思っている。一定のルールを作ることによって、「非効率な時間が少なくなる」「社員が安心して働くことができ、仕事に集中できる」「離職率が下がる」そのようなことに寄与するのが規則なのではないかと考えている。 「生産性向上」という視点から考えると、規則は、読んで理解できる程度のボリュームにしておかなければならない。そうはいっても、入社から退社まで社内で起こりうることに対応するルールを決めれば、そこそこのボリュームにはなり、すべてを理解しておくことは至難の業と思われる。 そうなると、就業規則の細かい部分を読まなくても、「うちの会社ならこういうことが求められるだろう」「こういうことは禁止されるだろう」と、ある程度の予想が付けられるようにしておく必要がある。   〈規則でないもので統治するとしたら?〉 では、それらの予想は、何が根拠となるのであろうか。 これについて筆者は、自社の企業文化やコア・バリューなど、会社が大切にする価値観が根拠になりうると考えている。 つまり、自社の企業文化やコア・バリューがきちんと明文化されたものとして存在し、その方針と就業規則の内容が同じ方向を向いているのであれば、規則の細部を読み込まなくても大方の方向は間違えないのである。 「企業文化」や「コア・バリュー」というと、何だか堅苦しくて難しいようなものに感じとられてしまうが、実はそんな難しいものではない。特に、オーナー企業で社長の話が伝わりやすい中小企業ではなおさらだ。 最初のうちは、 「社長が大切にしていることで、いつも口酸っぱく言っていること」 「社長が考える社員の幸せ」 「これだけは譲れないもの」 そういったものを少し整理して、文書にするだけでも立派なコア・バリューになると思う。   〈権利と義務で統治することの限界〉 インターネットの発達により、誰でも簡単に多くの情報にアクセスできる時代になってきているのは周知のとおりである。こんな時代に、会社にとって都合のいい就業規則を作り、それに社員を従わせようとしても、難しくなってきている。 つまり、「アラブの春」がインターネットの威力により国家を転覆させたように、会社にとってだけ都合がいいルールは、いとも簡単に社員にそっぽを向かれてしまう時代に突入している事実を認識する必要がある。 例えば、就業規則で副業を禁止していた場合、「規則があるということだけをもって、すべての副業を禁止できない」という事実を、今ではインターネットを通じ誰でも簡単に知ることができてしまう。 権利義務関係での話になっていくと、どうしても会社の方が不利になってくる。 権利は持っているから必ず行使しなければならないものではなく、行使しなくてもいいのだ。誰でも真の情報を簡単に手に入れられる時代になったからこそ、会社は、権利義務の関係ではないところで労使関係を構築していくことが、重要になってきていると筆者は考える。 そして、権利と義務は、突き詰めるほど窮屈な組織になってくる。 窮屈な組織では、皆の発想が「何をやるべきか」ではなく「やってもよい」という発想に陥りがちになる。 世の中がダイナミックに動く時代では、「やってもよい」という消極的な判断が横行する組織では、発展は難しくなってくると思われる。それよりも、自分たちの価値観を基準に照らし合わせ「やるべきか否か」で行動していく組織の方が発展する。 また、価値観が明確になると、変な行動をとる社員がいた場合に、就業規則がその人間を許さないのではなく、周囲がその人間を許さなくなる。つまり、権利義務の関係でその人間が組織から排除されるのではなく、周囲がその人が組織に存在することを許さなくする。 そうなると就業規則は基本的な原則が載せられ、最後のジャッジメントの時に念のために、確認だけすればいいものになってくる。 *  *  * 以上、見てきたとおり、これからの社会では、最終的には価値観で社内統治することを目指していくべきであると筆者は考える。しかし、前述のとおり、その前提としては、社内ルールとしての就業規則が存在していることである。 次回以降では、こんな時代の就業規則のあり方について考えていきたい。 (了)

#No. 32(掲載号)
#下田 直人
2013/08/22

有効な解雇手続とは 【第3回】「就業規則の作成と運用」

有効な解雇手続とは 【第3回】 「就業規則の作成と運用」   社会保険労務士 井下 英誉   1 はじめに 前回は解雇に関する法規制について解説した。 今回は、解雇手続を適正に行うために必要な就業規則の記載内容と実務上のポイントについて解説する。   2 就業規則に記載すべき内容 第●条(解雇) ※根拠:労働基準法第89条、労働契約法第16条 第●条(解雇制限) ※根拠:労働基準法第19条 第●条(解雇の予告) ※根拠:労働基準法第20条   3 就業規則の作成と運用 労働基準法第89条では「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、・・・就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」と定められている。さらに同条では、就業規則を作成する場合の絶対的必要記載事項として「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を記載することが求められている。 一方、常時10人未満の事業所では就業規則作成は義務付けられていないが、労働基準法第15条及び労働基準法施行規則第5条では、明示すべき労働条件の1つに「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」が定められている。 この2つの条文で求められていることは「解雇事由(どのような場合に解雇するのか)を明確にせよ」ということであり、第2回で解説した労働契約法第16条の「客観的に合理的な理由」がそれに該当する。 つまり、就業規則や労働条件通知書(雇用契約書)を作成していないということは、客観的に合理的な解雇理由が存在しないことと同じであり、使用者が有する解雇権を行使できない(行使した場合は解雇権の濫用とみなされる)可能性が高まるといえる。 解雇をめぐるトラブルにおいては、解雇事由に合理性があるか、又は社会通念上相当であると認められるかが争われることが最も多いが、その内容は第4回目で扱うこととして、ここでは解雇予告手続を適正に行うための3つのポイントについて解説したい。 ① 解雇予告の起算日の考え方 解雇予告日の翌日から起算して、解雇日までが30日以上あるか否かで対応が変わる。 ② 解雇予告手当の計算方法 月給者の平均賃金は、以下の計算式で計算する。 (A):解雇予告をした日の直前の賃金締切日から起算した3ヶ月分の「給与総額」 (B):解雇予告をした日の直前の賃金締切日から起算した3ヶ月分の「総暦日数」 ●次に挙げる給与は「賃金総額」から除外する。 ・臨時に支払われた賃金(臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの等) ・3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(年2回、3回の賞与等) ・通貨以外のもので支払われた賃金(現物給与) ●次に挙げる日は「総暦日数」から除外する。 ・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間 ・産前産後休業をした期間 ・使用者の責に帰すべき事由によって休業した期間 ・育児休業又は介護休業をした期間 ・試用期間 ③ 解雇予告手当の支払方法 解雇予告と同時に支払うか、予告した日に指定口座に振り込む必要がある。また、解雇予告手当は給与ではないので、社会保険料や所得税については以下のとおり取り扱う。 (了)

#No. 32(掲載号)
#井下 英誉
2013/08/22

新たな高速バスの法規制と労働問題 【第3回】「バス運転手の健康管理をめぐる問題と今後の法改正の動向」

新たな高速バスの法規制と労働問題 【第3回】 (最終回) 「バス運転手の健康管理をめぐる問題と 今後の法改正の動向」   特定社会保険労務士・運輸安全コンサルタント 山田 信孝   Ⅰ 前進した過労運転防止対策 前回、改正に至る経緯を解説した「新高速乗合バス」及び「貸切バス」の交替運転者の配置基準は、「勤務時間等基準告示」を基本としつつも、疲労を蓄積させないためには、長時間働いて長時間休むよりも、こまめに休憩をとった方が効果的であるとの生理学的な考えに基づき、連続運転時間は4時間ではなく、昼夜とも小刻みに原則2時間までとしたことや、夜間400km超えのワンマン運行では、原則2時間毎に休憩20分と「勤務時間等基準告示」よりも長い休憩時間を定めた。 また、夜間における連続乗務回数を制限したほか、ワンマン運行の運転者には、1運行の実車距離が夜間は400km(昼間は500km)を超える場合には、実車距離100kmから夜間は400km(昼間は500km)までの間にある休憩地点において、運転者に運行管理者に対し、電話で乗務中の体調報告をすることを、新たに義務付けた。 この結果、運転者の体調の変化に応じて、運転者自らの申出又は運行管理者の指示により、休憩時間の追加や運転者の交替などの措置を講じることが可能となった。 前回述べたとおり、今回の交替運転者の配置基準は運転者の過労運転防止対策として、とても有効であり、従前より大きく前進したといえる。   Ⅱ 運転者の健康管理の重要性 次に、運転者の過労運転防止に当たり、運転者の健康状態とも関連性があることから、運転者の健康管理について、検討することとする。 平成25年7月上旬、高速道を走行中にバス運転者が、意識を消失した出来事が、連続して2件(宮城、三重)発生するなど、近年、運転者の健康状態に起因する事故が続発していることから、バス事業者には運転者に対する健康管理の一層の取組みが求められる。 1 健康状態の把握義務 バス事業者には、他の事業者と同様に雇入れ時及び1年以内ごとに1回(深夜業務に従事する場合には6ヶ月以内ごとに1回)の健康診断の受診が義務付けられている(労働安全衛生法第66条)が、国土交通省のホームページに公表されているネガティブ情報(行政処分歴情報)を見る限り、運転者の健康状態を把握していないバス事業者が依然として存在していることが分かる。 このような状況下、てんかんなどの意識障害を起因とする交通事故を踏まえ、平成25年6月14日に改正道路交通法が公布された。 この改正により、運転免許証を取得する場合又は運転免許証を更新する場合には、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある一定の病気等についての質問制度が新設され、質問に虚偽の回答をした場合には、罰則(1年以下の懲役又は30万円以下の罰金)が適用される。当然のことながら使用者としても、このことを承知しておく必要がある。なお、施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において、政令で定める日(本稿公開時点で未定)となっている。 また、一定の持病を持っている運転者が、運転中にその病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合、新たに「危険運転致死傷罪」が適用される内容を盛り込んだ「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」案が、先の国会に上程された。採決には至らなかったが、現在、継続審議となっている。 したがって、以上のことから、バス事業者は、運転者のプライベートへの配慮を行いつつ、健康状態を把握することとし、選任運転者が万が一、総合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性低血糖症、躁鬱病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、認知症などの病気を持つことが判明した場合、治療期間中は他の職種に転換させるなどの対策を講じることが必要であると考える。 2 健康状態に起因する事故 運転者に起因する重大事故のうち、健康状態に起因する事故件数については図1のとおり、年々逓増する傾向にあり、バス全体では平成23年は対前年比19件の増加となっている。 なお、健康状態に起因する事故の病名の特徴としては、脳・心臓疾患が全数の半数を占めている。 また、運転者の年齢分布については、年齢とともに増加傾向にあり、ハイヤー・タクシーの高齢者の急増が特徴的である一方で、乗合バスでは50~54歳、貸切バス等では60~64歳が最も多くなっている(下図は、いずれも「平成23年「自動車運送事業用自動車事故統計年報」p40,41)。 〈運転者の健康状態に起因する事故発生状況の推移〉 〈健康状態に起因する事故の病名別運転者数〉 〈健康状態に起因する事故の運転者の年齢分布〉 なお、健康管理に関する労務対策として、運転者が健康診断を受診しない場合には、就業規則等で、懲戒処分等の対象とする規定を整備することが必要であると考える。 (連載了)

#No. 32(掲載号)
#山田 信孝
2013/08/22

〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第6回】「IT 関連資格の実態」

〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第6回】 「IT 関連資格の実態」   公認会計士 五島 伸二 公認会計士 神崎 時男 公認会計士・税理士 小田 恭彦 公認会計士 中原 國尋   IT関連資格 記帳業務や決算・申告業務はコンピュータソフトを利用するのが一般的であり、さらにその前工程である販売、購買、製造活動もコンピュータソフトを利用しているケースもある。 このような状況において、税理士、会計士、簿記検定合格者などが、コンピュータ(IT)に関する知識を深めることにより、さらに自身の価値を高め、職域を広げることができる。 ITに関する知識を深める手段のひとつとして、IT関連資格の取得が考えられるが、IT関連の資格は多様であり、コンサルタントに近いもの、システム開発系のものなど多様である。このため、会計プロフェッションが自身の方向性や得意分野を築いていくうえで、どの資格を取得するのが効果的なのかについては、十分な検討が必要である。 そこで以下では、ITに関するいくつかの資格について、その概要と会計プロフェッションがこれらの資格を活用する方向性について記述する。 ITコーディネータ 〔概要〕 ITコーディネータ(ITC)とは、2001年に当時の通商産業省によって、中小・中堅企業のIT経営をサポートする人材を確保するために設けられた資格制度である。 「IT経営」とは、企業経営にITを戦略的に取り込んで、ITの有効な利活用によって競争力や生産性の向上を実現することをいう。よってITコーディネータは、経営者の立場に立ってIT経営をサポートする人材として、経営とITの両面に精通したプロフェッショナルであることが要求される。 そういった資格の特徴もあり、ITコーディネータ資格の認定を受けるには、試験に合格することのほかに、ケース研修の受講が条件として課される。 ケース研修は、モデル企業の事例を題材に「グループ討議」「ロールプレイ」を通じてITコーディネータの活動を模擬体験する集合研修を中心に、eラーニングによる個人学習を組み合わせて実施される。 ケース研修を受講することで、ITサポートの経験のない人でも、効果的にIT経営を推進するための実践的な知識を身に付けることができる。 〔資格の活用〕 ITコーディネータは、中堅・中小企業の経営課題に精通し、ITによる課題解決を通じて経営力強化に貢献することが期待されており、これは、従来から会計や税務のサポートを通じて中堅・中小企業の経営を支援してきた税理士・会計士などの会計プロフェッションと通じるものがある。 会計プロフェッションやその事務所職員がITコーディネータの資格を取得することで、より広い範囲の経営サポートをワンストップサービスとして提供する事務所を実現することが可能となり、中小・中堅企業の経営改革を強力に支援する存在になることができるであろう。   公認情報システム監査人(CISA) 〔概要〕 CISA試験は、1967年に創立されたISACA(情報システムコントロール協会)が認定しているシステム監査に関する資格である。国家試験ではないが、世界約30ヶ国で実施されており、国際的な認知度は比較的高い。日本においても内部統制報告制度が普及した際に当該資格を取得した人が多く、それに応じて認知度は高まった。 〔資格の活用〕 「情報システム監査のプロセス」、「ITガバナンスとマネジメント」、「情報システムの取得、開発および導入」、「情報システムの運用、保守およびサポート」、「情報資産の保護」の各分野から出題されることから分かるように、内部統制報告制度におけるIT全般統制の評価とは分野が重なる部分が多く、IT全般統制の評価を実施する際の有効な知識となる。 特に会計士が当該資格を取得することで、財務報告に影響の大きいIT全般統制の評価項目にフォーカスをすることが可能となり、監査品質の向上につながる。 ISACAでは、CISM(Certified Information Security Manager)、CGEIT(Certified in the Governance of Enterprise IT)、CRISC(Certified in Risk and Information Systems Control)といった関連資格もあり、それらとの組み合わせによって各種コンサルティング業務への展開も考えられる。   情報処理技術者試験 〔概要〕 情報処理技術者試験は、経済産業省が認定している国家試験である。したがって、特定のベンダーやソフトウェアに依存することなく、フラットに情報システムに関する知識レベルを認定しているといえる。 平成21年度に大幅な試験体系の改正が行われ、現行の試験の体系は図の通りとなっている。 (「情報処理技術者試験の手引き(2007年)」図3新情報処理試験の体系図 より) 〔資格の活用〕 上図のうち、もっとも平易な「ITパスポート試験」は、情報システムを勉強するきっかけとして有効であるが、会計プロフェッションが業務で活用しようと考えれば「基本情報技術者」は取得したいところである。 高度情報技術者であれば、特に「システム監査技術者」試験は監査業務の一つであるため、公認会計士監査との親和性は高い。特に会計監査の一環として実施されるシステムレビュー(IT全般統制の評価)には、システム監査技術者の知識は有効である。 一方で経営に情報システムを活用するために実施するコンサルティング業務に対しては、「ITストラテジスト」により一定の知識が認定される。また、多少技術よりにはなるが、業務システムに占める位置づけが大きいデータベース知識の認定試験である「データベーススペシャリスト」、情報セキュリティをどのように実現するかについての認定試験である「情報セキュリティスペシャリスト」も比較的親和性が高い。 情報処理技術者試験は、一般に広く周知されている資格試験制度であることから、取得を検討するに値する資格試験であるし、その価値は十分に認められる。   パッケージシステム別インストラクター 〔概要〕 会計システムやERPシステムなど、業務系システムの多くは、「公認インストラクター」「認定コンサルタント」などの資格認定制度がある。 これは、各製品ベンダーが設定した研修や試験を受けることにより製品ベンダーから付与される資格であり、この資格により製品に対する操作や設定方法などに対する知識を有していることを資格として表現できるものである。 これらは研修の期間や試験の有無、受講費用などは製品毎にさまざまであり、製品の価格や難易度によって異なる。 〔資格の活用〕 会計システムやERPシステムの認定資格を持つことにより、会計・経理に関する業務知識とパッケージシステムに関する知識を合わせて、ユーザとシステムベンダーの両方の業務を理解した能動的・提案型のシステム導入コンサルティンが可能となり、さらには、その後の運用や日常業務まで一貫してサポートができる体制を作ることができるであろう。 (了)

#No. 32(掲載号)
#五島 伸二、神崎 時男、小田 恭彦、中原 國尋
2013/08/22

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第11回】「売上・売掛債権管理のKPI(その② 売上計上)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第11回】 「売上・売掛債権管理のKPI (その② 売上計上)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、売上・売掛債権管理を構成する業務プロセスから、売上計上のKPIを取り上げる。 「売上」という指標は、企業活動の成果を表現する最も分かりやすい指標なので、内外から注目されやすい。会社の経営者も、会社の外部の利害関係者も、「年商いくら」などと言うのをよく耳にする。 そこで、経理財務部門がそのような売上を帳簿に計上する業務プロセスのあり方はどうあるべきか、そのサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 KPIの解説に入る前に、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを確認しよう。 前回も述べたが、売上・売掛債権管理において、会社が担う一般的な機能は、「売上業務」、「債権残高管理」、「滞留債権対応」、「値引・割戻」という4つになる。 これらの4つの機能のうち、売上業務の流れは、「与信管理」、「契約(受注)」、「売上計上」、「請求」、「決済」という5つの機能から構成される。 今回解説するKPIは、売上業務のうち、売上計上に関連する業務プロセスにおいて設定されている。この売上計上に関連する業務プロセスは、売上業務という一連の流れの中では、契約締結に関連する業務プロセスの後、請求に関連する業務プロセスの前に現れるのが一般的である。 〈経済産業省スタンダード:売上・売掛債権管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、売上計上に関連する業務プロセスとして、次のような業務プロセスをまとめている。この業務プロセスは、「出荷」という事実に基づいて売上を計上するという方法を前提にしている。日本の会社が一般的に採用してきた出荷基準と呼ばれる売上計上基準である。 今回のKPIは、売上計上に関連する業務プロセスを前提に、販売完了日から販売管理情報システムへの売上データ入力までの平均日数を問うものである。 〈経済産業省スタンダード:1.3.1売上計上〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 まず、「製品・商品・サービス」とあるのは、製造業の場合は製品について調査し、卸売業や小売業の場合は商品について調査し、製品や商品以外の役務を提供するサービス業の場合のサービスについて調査することを想定して、まとめて表示している。会社の業種に合わせて、読み替えていただきたい。 次に、「提供完了日」とは、出荷日又は検収完了日をさす。出荷基準を採用する場合は出荷日、検収基準を採用する場合は検収完了日となる。なお、上場企業等で適用が検討されている国際財務報告基準(IFRS)の収益認識要件では、出荷日は含まれない可能性がある。 「売上データ入力日」とは、販売管理情報システムに入力する日をさす。もし会社が販売情報と会計情報が即時に自動的に連動するような情報システムを使っている場合、「売上データ入力日」は総勘定元帳に売上データが作成される日となる。会社が販売情報と会計情報が分断された情報システムを使っている場合、「売上データ入力日」は必ずしも総勘定元帳を作成する日にはならず、純粋に販売管理情報システムに入力する日となる。 「平均」とは、複数の「売上データ入力日」を合算して、それを売上データ入力件数で割った平均値をさす。データを取る場合、前月1ヶ月のデータに基づいて記入すればよい。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 スコアリングモデルでは、売上金額及び売掛債権の発生額を適正に財務諸表に反映するため、収益の認識要件が備わったら売上データ入力を適時に完了することが望ましいと考えている。 その前提として、受注、出荷、検収、売上計上、請求という各業務について、担当者の職務分離を徹底しながら、一連の業務のつながりを追跡できるようにすることが必要となる。すなわち、「注文」という客観的事実に基づく出荷、「物品の受領」や「検収」、「役務提供の完了」という客観的事実に基づく売上計上を行うことにより、一連の業務のつながりを情報として追跡できる連番管理ができることが求められる。 そこで、会社の経理財務部門が適正に適時に売上を計上し、その流れを追跡することができるか否かというサービスレベルを比較するため、データ入力日までの平均日数をKPIとした。スコアリングモデルでは、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。そして、どの程度の日数が望ましいのかという問題は、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークに委ねている。 では、もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されない場合、どういう事態が想定されるのか。 まず、販売管理情報システムへの入力が放置される結果、売上計上漏れ、期ずれを起こし、経営者は売上を適時に把握できなくなる事態が想定される。 また、資産の保全の観点では、会社の内部者が売掛金の着服をしていた場合、売上計上をあえてしないことにより着服を隠蔽するため、売上計上の適時性に無頓着な会社では、不正の発見が遅れることが懸念される。 スコアリングモデルでは、経理財務部門が、このようなリスクをあらかじめ想定し、必要な対応を講ずることが望ましいと考えているのである。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、売上計上に関連する業務プロセスが売上・売掛債権管理に組み込まれていることを確認していただきたい。 次に、実際にKPIを測定するときは、証拠を具体的に特定して、日数を確認する必要がある。 例えば、閲覧すべき証拠として販売管理規程が考えられる。販売管理規程に、売上データの入力に関する決まりが定められていることを確認する。次に、販売管理規程の内容に基づいて、実際の入力状況が分かる証拠として、情報システムから出力される売上伝票、販売先からの検収通知書を閲覧し、出荷日から入力日、あるいは検収日から入力日までの平均日数を確認する。 読者の顧問先において、製品・商品・サービスの提供完了日から、売上データ入力日までの平均日数は何日になっただろうか。 *  *  * 次回は、売上・売掛債権管理を構成する複数のKPIのうち、請求に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 32(掲載号)
#島 紀彦
2013/08/22

改正金融検査マニュアルのポイントと中小企業へ与える影響 【第6回】「再生支援を活かすヒント」

改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第6回】 (最終回) 「再生支援を活かすヒント」   OAG税理士法人 税理士 山下 好一   1 金融円滑化法失効後の現況 金融円滑化法の失効から4ヶ月余り経過したが、特に混乱等が生じたとの話も聞こえてこないことから、スムーズに移行されたものと考えられる。 直近の「金融機関における貸付条件の変更等の状況について(平成25年6月25日)」を見ると、昨年9月末から債権ベースで新たに約70万件の申込みがされている。 また、中小企業の積極的な取組みに対しては、金融機関による金融円滑化以外にも、例えば、経営計画の策定などに係る費用に対する補助金の支援など、「中小企業金融円滑化法の期限到来に当たって講ずる総合的な対策」にあるような支援策が用意されていることはすでに述べた。 経営計画の策定などの費用に対する補助金の支援では、1/3は自己負担となる。この策定した大切な計画書を神棚などに祭ることはないと思うが、実行しなければ改善もない。この策定費用が一番の無駄にならないよう、確実に実行していただきたい。 繰返しになるが、これらの支援策は、「延命のための支援」ではなく、「再生のための支援」である。   2 ディスクロージャー誌から分かる「これからの金融機関との関係」 金融機関は、その規模及び特性等により、経営方針等が異なっている。この経営方針等を確認できるのが、「ディスクロージャー誌」である。 このディスクロージャー誌には、銀行法等で開示が定められた各種事項(銀行法施行規則 別表第一)が掲載されており、この中の「貸出金等に関する指標」を見ると、「中小企業等に対する貸出金残高及び貸出金総額に占める割合」を確認することができる。 下記の参考図を例にすると、A・B金融機関共に貸出金総額が増加している状況において、A金融機関は、貸出総額に占める中小企業向け貸出残高が伸びているが、B金融機関は逆に下がっている。 上記は極端な例であり、一概に言うことはできないが、A金融機関の方が中小企業への貸付けに積極的であると見ることができる。 このように、その金融機関の中小企業等に対する貸付状況のほか、業種別の貸出残高及びその割合も掲載されているので、今後の取引の参考にすることができる。 このディスクロージャー誌は、店頭への備え置きが義務付けられており、持ち帰ることも可能である(インターネットでも見ることができる)。 また、金融機関との取引においては、メインとなる金融機関を含め、4又は5の金融機関と取引することが望ましい。 これは、金融機関の規模・特性による経営方針等の転換などのリスク対策(分散)のほか、各金融機関間の金利等の競争など、借入条件面での優位性が期待できるためである。 いずれにしても、金融機関との取引においては、借手の中小企業等も自社の抱える問題点等を包み隠すことなくすべて開示し、それに対してしっかり対応できる金融機関と取引するのが望ましい。   3 外部専門家を活用し収益性の向上を 赤字(又は債務超過)からの脱却のためには、まずは今よりも収益性を高めることである。 収益性が低い状態では、一生懸命頑張って働いても、収益改善の効果は少ない。最悪の場合、負のスパイラルに陥り、債務超過からの脱却が難しくなってしまう。自ら思いつかないのであれば、外部専門家に依頼してでも収益性を高める必要がある。 前回(第5回)述べたように、売上の増加による収益の改善は容易ではない。それは外部専門家であっても同様である。 しかしながら、中には、天才的な発想から、売上増加の方法を考え出す外部専門家も存在している。その方法の共通点は、営業努力などではなく、単に「売るための工夫」であると言うことができる。 また、収益性の改善には、5S(ゴエス:整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も有効である。 特に、整理・整頓ができている企業は、原価管理もできており、無駄のない経営を行っているところが多い。また、清掃・清潔・しつけは、企業イメージのアップに繋がっている。 5Sは、どのような業種でも、簡単に採り入れることが可能である。今すぐにでも取り組むと良いであろう。   4 周りに人を置く 組織は、一人では成り立たない。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもあるように、企業も経営者が一人で頑張るよりも、たとえ少数でも全社一丸となって頑張った方が、良い知恵も出るだろうし、良い結果も生まれるだろう。一人では不可能なことでも、複数では可能になる。 先ほど「金融機関に問題点等を包み隠すことなく」と述べたが、それは社内に対しても同様である。 他の役員や従業員等の協力がなくては、経営改善は難しい。必要があれば、取引先にも協力を求めるべきである。   5 黒字の同業者からヒントを得る 国税庁発表(24年10月)の「平成23事務年度における法人税の申告事績の概要」を見ると、平成23事務年度(23年7月から24年6月)の法人税の申告件数2,763千社のうち、黒字申告割合は25.9%である。 逆の見方をすれば、74.1%の法人が赤字申告ということになり、件数では2,047千社である。粉飾法人や無申告法人及び個人事業者を加えると、さらに大きくなる。 これを20年前と比べると、20%近く赤字申告割合が増加している。 特定の業種のすべてが赤字企業であることは考えられない。 このため、同業者の黒字企業と自社を比較することで、経営改善のヒントを見出すことも可能である。 (連載了)

#No. 32(掲載号)
#山下 好一
2013/08/22

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第3回】「ページの更新料を安くするには?」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第3回】 「ページの更新料を安くするには?」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   ホームページの記載内容を書き換えたり追加するためには、前回お話した「維持費」とは別に、「更新料」がかかります。 この「更新料」、何をどう更新するといくらかかるのか、非常に分かりにくいといった声をよく聞きます。 また、高額の更新料を請求されるのが恐くて更新できないという声も耳にします。 ホームページ制作管理業者の宣伝にありがちな 「簡単な更新は無料です。」 という文言。 一見すると親切心に溢れているように見えますが、よく考えると分からないことがあります。 「簡単な更新」って、いったいどのような更新なのだろうかと・・・。 *  *  * この文面が分かりづらいのは、ホームページを管理している業者の立場から書かれたものだからです。 実は、更新料の内訳のほとんどは、更新作業を行うスタッフの「人件費」です。 したがって、何十時間もかかるような作業であれば高額になりますし、10分か20分で終わるような作業であれば低額になります。 つまり管理業者の言う「簡単な更新」とは、この「10分か20分で終わるような作業」の更新を指しているのです。 でも、依頼した更新作業に、どれくらいの時間がかかるかなんて、依頼する側には分かりませんよね。 一般的には、変更箇所が少ないほど、作業時間は短くなります。 ただし、変更内容によっては一箇所の変更に時間がかかることもありますので、変更箇所の数だけで画一的に判断することはできません。 そこで、現実的な対応としては、「望んでいる更新」をホームページ管理業者に告げて、見積りを出してもらうというのが最良です。 もし、見積金額が高すぎると感じるのでしたら、安くするにはどうすればよいか、管理業者と相談してみましょう。 きちんとした管理業者であれば、相談に乗ってくれるはずです。 *  *  * もっと手っ取り早く、「自分で更新すれば、どれだけ更新しても無料だ」とお考えの人も多いかと思います。 そこで、次は、自分で更新できるホームページのお話です。 これには、大別して3つの方法あります。 ①は、自分で制作するのですから、自分で更新もできます。ただし、前回お話した「サーバー」や「ドメイン」を自分で契約しなければなりませんし、ホームページ制作の知識もある程度必要です。 ②は、文章や写真の全く入っていない、いわば「ホームページの枠」だけをホームページ制作業者が制作し、そこに自分で文章や写真を貼り付けていくものです。 ③は、ホームページの一部分だけ、例えば「事務所からのお知らせ」欄だけ、自分で文章や写真を貼り付けられるようになっているものです。 自分で文章や写真を貼り付ける作業は、それほど大変なことではなく、ワープロソフトを操作するような簡単な作業です。ただし、操作が簡単な代わりに、デザインの自由度は低いため、見栄えの良いホームページは制作しにくくなります。 良く言えば、「手作り感溢れる」ページになりますので、素人っぽさをウリにするのなら効果的です。しかし、専門性をウリにする士業のホームページとして、それが相応しいかどうかは意見の分かれるところでしょう。 筆者としては、ホームページ全体としてのデザインの自由度を保ちつつ、一部分をタイムリーに自分で更新できるという③の方法がお薦めです。 自分で更新できるホームページは、CMS(シー・エム・エス)というソフトを用いて制作されています。 「お知らせ」などを頻繁に更新して高額な更新料にお悩みなら、ホームページ制作業者に依頼して、ホームページをこの「CMSソフト」で制作し直してしまうのも一つの方法です。 新たにホームページ制作料がかかってしまいますが、その後の維持費と更新料まで考えると、長い目で見れば費用の削減になる場合もあります。 (了)

#No. 32(掲載号)
#河村 慎弥
2013/08/22
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