《速報解説》 基礎控除及び給与所得控除の引上げ ~令和8年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 令和8年度税制改正大綱(以下、「大綱」という)では、物価高への対応の観点から、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設が示された。また、所得税の課税最低限を2024年12月11日の自由民主党・公明党・国民民主党による三党合意の趣旨を踏まえた178万円に先取りして引き上げる方針が示された。 【1】 物価上昇局面における基礎控除等の対応 基礎控除の額が定額であることにより、物価が上昇すると控除の実質的な価値が減少し、結果として税負担が増加するという課題がある。このような状況を踏まえ、大綱では基礎控除等を適時に見直すことが示された。 具体的には、基礎控除の本則部分及び給与所得控除の最低保障額については、見直し前の控除額に、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることで調整することとされた。なお、源泉徴収義務者等の事務負担に配慮し、見直し後の控除額に端数が生ずる場合には万円単位で調整するとともに、見直し初年は、月次の源泉徴収等では対応せず年末調整からの対応とする。 令和8年分及び令和9年分の基礎控除額と給与所得控除額は、令和5年11月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえ、基礎控除については本則の控除額を58万円から4万円引き上げ62万円とし(【2】(1))、給与所得控除の最低保障額については65万円を69万円に引き上げる(【3】(1))(※)。 (※) 令和10年度税制改正では、令和8年・9年の消費者物価指数(総合)の上昇率を踏まえ、令和10年分と令和11年分の控除額を算出する。 以下、基礎控除と給与所得控除について、大綱で示された具体的な内容を解説する。 【2】 基礎控除の引上げ (1) 本則部分の引上げ(物価上昇対応) 合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額を58万円から4万円引き上げ62万円とする。 なお、控除額の引上げは、令和8年分以後の所得税に適用されるが、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払う給与等及び公的年金等について適用する。 (2) 特例(加算額)の見直し(三党合意を踏まえた更なる対応) 令和7年分以後の所得税では、居住者について基礎控除に一定の金額が加算される特例が設けられている(措法41の16の2➀)。大綱では、この特例について以下の改正案が示された。 大綱に基づき、令和7年分以降の特例(加算額)をまとめると次のとおりとなる。 〈参考〉 大綱で示された内容に基づく基礎控除額(本則+特例)は、次のとおりとなる。 【3】 給与所得控除の引上げ (1) 最低保障額の引上げ(物価上昇対応) 給与所得控除については、最低保障額を65万円から4万円引き上げ69万円とする。 なお、給与所得控除の引上げも、令和8年分以後の所得税(個人住民税は令和9年度分以後)に適用されるが、給与等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払う給与等について適用する。 (2) 最低保障額の特例の創設(三党合意を踏まえた更なる対応) 令和8年分及び令和9年分(個人住民税は令和9年度分及び令和10年度分)の給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例を創設する。なお、本特例は、年末調整で適用できることとする。 〈参考〉 大綱で示された内容に基づく給与所得控除額(特例含む)は、次のとおりとなる。 【4】 各種所得控除の所得要件の見直し 同一生計配偶者等の所得要件について、次のとおり引き上げることが示された。 (※) 大綱では、ひとり親控除の控除額を令和9年分以後35万円から38万円に引き上げることが示されている。 (了)
《速報解説》 投資簿価修正制度における離脱法人株式に 調整勘定対応金額がある場合の加算措置の計算の見直し ~令和8年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱(自由民主党・日本維新の会)(以下、「大綱」という)が公表され、グループ通算制度については、投資簿価修正制度における離脱法人株式に調整勘定対応金額がある場合の加算措置の計算の見直しが明記された。 1 改正の概要 大綱によると改正内容は次のとおりである。 [投資簿価修正制度における離脱法人株式に調整勘定対応金額がある場合の加算措置の計算の見直し] 2 投資簿価修正制度と加算措置とは 投資簿価修正制度とは、通算子法人が通算グループから離脱する場合、その通算子法人(離脱法人)の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の離脱直前の簿価純資産価額に相当する金額とする取扱いをいう(法令9六、119の3⑤、119の4①)。 この場合、離脱法人株式の帳簿価額とされるその離脱法人の「簿価純資産価額に相当する金額」については、その離脱法人の離脱直前の簿価純資産価額にその離脱法人株式の取得価額に含まれる取得時のプレミアム相当額(資産調整勘定等対応金額)を加算することができる措置(加算措置)が設けられている(法令119の3⑥⑦)。 3 改正に関係する加算措置の取扱い 今回の改正に関係する加算措置の取扱いは次の2つとなる。 (1) 資産調整勘定対応金額等の減額の取扱い 法人税法施行令第119条の3第6項では、資産調整勘定等対応金額の計算について、次の取扱いが定められている。 (2) 資産調整勘定対応金額等の計算対象となる離脱法人株式(対象株式)の範囲 資産調整勘定対応金額等の計算対象となる離脱法人株式(対象株式)は、時価で取得した株式となる。 具体的には、対象株式とは、法人税法施行令第119条第1項の規定の適用がある同項第1号又は第27号に掲げる有価証券に該当する株式とされている(法令119の3⑦二)。つまり、その購入の代価が取得価額となる購入した有価証券又はその取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額が取得価額となる交換等により取得した有価証券に該当する株式が対象株式に該当する。 4 全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化 全部取得条項付種類株式とは、ある種類の株式について、これを発行した法人が株主総会の決議(取得決議)によってその全部の取得をする旨の定めがある場合の当該種類の株式をいう。 そして、全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化とは、例えば、以下の手順により、買収会社が少数株主を排除し、対象法人を完全子法人とする行為をいう。 そして、買収会社がグループ通算制度を適用している場合、例えば、買収会社が通算親法人である場合、対象法人はグループ通算制度に加入することとなる。 あるいは、全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化後に、買収会社及び対象法人がグループ通算制度を開始すると、その対象法人は通算子法人に該当することとなる。 5 今回の改正の趣旨・目的 全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化について、現行の法令では以下の取扱いとなる。 このように、現行の法令では、完全子法人化の際の全部取得条項付種類株式の取得決議による対象法人株式の譲渡と取得は、実質的には、全部取得条項付種類株式から普通株式への株式の内容(種類)の変更に過ぎないにもかかわらず、資産調整勘定対応金額等が消滅してしまう(あるいは、新たに発生しない)という問題が生じていることとなる。 そのため、今回の改正で、通算完全支配関係発生日以前に離脱法人株式の譲渡をした場合の資産調整勘定対応金額等の減額調整の対象となる譲渡から、全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化の際の離脱法人株式の譲渡を除外する取扱いに見直すことになったと考えられる。 この点、今回の改正の趣旨・目的は、最終的には財務省の解説で明らかにされるだろう。 なお、「(注)上記の取得決議により交付を受けた上記の離脱法人の株式の価額がその譲渡をした株式の価額とおおむね同額となっていないと認められる場合を除く。」と明記されている。この点につき、このような離脱法人株式の取得は、法人税法施行令第119条第1項第18号に該当するものではなく、同項第27号に掲げる株式の取得に該当する。その結果、普通株式の取得に伴い新たに資産調整勘定対応金額等が生じることから、全部取得条項付種類株式の譲渡については、原則どおり減額措置が適用されるものと考えられる(法令119の3⑦二、119①十八・二十七・法法61の2⑭)。 6 他のスクイーズアウトの手法との比較 今回の改正で、全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化について、株式併合による完全子法人化と同様に、完全子法人化前に生じた資産調整勘定対応金額等が消滅しないこととなる。 スクイーズアウトの手法ごとの資産調整勘定対応金額等の取扱いは、次のとおりとなる。 [スクイーズアウトの手法ごとの取扱い] 7 適用時期は大綱には明記されてない 大綱には、適用時期が明記されていないため、改正法令が令和8年4月1日に施行されることを想定していると考えられる。この場合、令和8年4月1日以後に行われる投資簿価修正から見直し後の取扱いが適用されるのか、令和8年4月1日以後に行われる全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化から見直し後の取扱いが適用されるのか、いずれであるのかについて注目する必要がある。 さらに、令和8年4月1日以後に行われる投資簿価修正から見直し後の取扱いが適用される場合、投資簿価修正が行われる日が法令では明記されていないため(財務省の解説では、投資簿価修正は離脱日の前日に行われると解説されている)、その点も問題になると思われる(そのため、通算完全支配関係を有しなくなった日が令和8年4月1日以前の場合は旧法令、令和8年4月1日後の場合は新法令が適用されるという法令の定め方になる可能性もある)。 【図表】全部取得条項付種類株式の取得決議による完全子法人化の際における離脱法人株式の「譲渡」と資産調整勘定対応金額等の減額措置からの適用除外 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 以上が大綱からわかる「投資簿価修正制度における離脱法人株式に調整勘定対応金額がある場合の加算措置の計算の見直し」の改正の内容となる。 この改正については、執筆時点で、大綱以外の情報が公表されていないため、最終的に改正法令が公表された場合、上記と異なる取扱いが生じる可能性もあるため、その点、留意してほしい。 (了)
《速報解説》 国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し ~令和8年度税制改正大綱~ 税理士 石川 幸恵 令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正大綱」では、課税の公平の観点から「国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し」が盛り込まれた。これは、昨年度の税制改正大綱において検討項目とされていたものである。以下、概説する。 1 背景 1万円以下の商品をインターネット上のショッピングサイトを経由して国外事業者から購入した場合と、国内事業者から購入した場合とで競争上の不均衡が生じている。これは、国外事業者から個人輸入により購入した場合、1万円以下の商品は消費税が免除され(関税定率法14⑱、輸徴法13①)、海外事業者が表示価格を低く設定できるためである。 この免税制度を背景として、少額貨物の輸入許可件数は急増しており、過去5年間で5倍超、4,258億円に達している。 こうした輸入貨物の増大は、不正薬物や知的財産侵害物品の流入を防止するための水際対策を行う税関の業務にも負担になっている。 また、国外事業者が国内のプラットフォーム事業者によるフルフィルメントサービス(国内倉庫での商品保管や配送等を代行する仕組み)を利用して販売を行う形態は、本来、国内取引として課税の対象となるものの、無申告となっているケースも指摘されている。 こうした状況を踏まえ、国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化が図られることとなった。 2 課税の対象の見直し 通信販売の方法により国内以外の地域から国内に宛てて発送される資産(一の資産の対価の額が1万円(税抜き)以下であるものに限る)の譲渡を「特定少額資産の譲渡(仮称)」として定義し、この特定少額資産の譲渡については販売者に納税義務を課すこととされた。輸入者については引き続き免税とする。 特定少額資産の譲渡として販売時に課税されたにもかかわらず、為替の影響や混載により課税価格が1万円を超える場合も想定される。この場合、販売時と輸入時の双方で課税される恐れがあることから、国外事業者に対して販売時に課税されたことを証明する仕組みとして、「特定少額資産販売事業者」(仮称)という登録制度を設け、二重課税が生じないような措置が講じられる。 特定少額資産の譲渡を行う事業者の納税義務判定については所定の経過措置を設け、特定少額資産販売事業者については、事業者免税点制度は適用しない。 3 物品販売に係るプラットフォーム課税の導入 一定規模を超えるデジタルプラットフォームを介して行われる下図のような取引で、プラットフォーム事業者が対価を収受するものについては、プラットフォーム事業者が行ったものとみなして、納税義務を販売事業者から転換する。 ここでいう「一定規模を超える」とは、高い税務コンプライアンスや事務処理能力が求められること等を考慮し、(イ)及び(ロ)の取引の合計額(税込み)が50億円を超えるプラットフォーム事業者を対象とする。これらのプラットフォーム事業者については届出義務を課すとともに国税庁長官がそのプラットフォーム事業者を第2種プラットフォーム事業者として指定する。 なお、電気通信利用役務の提供に係る特定プラットフォーム事業者の名称は第1種プラットフォーム事業者とする。 4 適用時期 本改正は令和10年4月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ並びに保税地域から引き取られる課税貨物について適用される。 また、関税には「課税価格決定の特例」が設けられていた。これは個人使用貨物については関税の課税価格を海外小売価格の0.6とするものである。この特例により、課税貨物の引き取りに係る消費税の課税価格についても引き下げられていた。今回の改正でこの特例も廃止されることとなり、上記の改正と合わせて国内外事業者間の競争の平準化が図られることとなる。 (了)
《速報解説》 金融庁、金融審議会による「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を公表 ~開示規制の緩和・見直し及びセーフハーバー・ルールの創設等を検討~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025(令和7)年12月26日、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」を公表した。 これは、スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等などについて検討したものである。 報告書は、今後、金融審議会総会・金融分科会において報告されるとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等、情報開示を巡る環境変化を踏まえ、投資判断に資する企業情報の開示のあり方やその実現に向けた環境を整備するため、次のことを行う。 (了)
《速報解説》 パーシャルスピンオフ税制の恒久化等の見直し ~令和8年度税制改正大綱~ 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 令和7年12月19日公表の与党税制改正大綱において、パーシャルスピンオフ税制の見直しが行われることとなった。本稿ではその概要について解説を行う。 1 改正の背景 令和5年度税制改正により、親会社に持分を一部残す株式分配(パーシャルスピンオフ)についても、一定の要件を満たせば、適格株式分配とする特例措置(パーシャルスピンオフ税制)が創設され、令和6年度税制改正において、新事業活動要件を追加した上で、適用期限が令和10年3月31日まで延長された。 経済産業省は、スタートアップの創出だけでなく、ノンコア事業を切り出し、コア事業に専念するための事業ポートフォリオの組替えも促進できるように、適用要件を見直した上で、恒久化のための所要の措置を講ずることを求めていた。 これを受け、「令和8年度税制改正大綱」において、パーシャルスピンオフ税制の見直しが盛り込まれた。 2 現行制度 パーシャルスピンオフ税制の適用要件は以下の通りである。 3 令和8年度税制改正大綱の内容 大綱に盛り込まれた改正の内容は次の通りである。 令和10年3月31日までの時限措置とされているパーシャルスピンオフ税制については、次の要件に該当するものを、適格株式分配に該当することとする措置に見直すこととする。 4 適用時期及び適用期限 適用時期については、令和8年4月1日以後に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が行う認定株式分配に適用される予定である。 令和8年度税制改正大綱における経済産業省関係の税制改正に関する資料によると、「事業再編は企業の状況に応じて恒常的に検討されるべきであることも鑑み、期限の定めのない措置とする」とあり、適用期限の定めがなくなり、恒久化されることとなる。 5 今後の留意点 今回見直された適用要件の詳細について、法令等で明確化されることが予想されるため、今後の留意が必要である。 (了)
《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2025」を公表 ~気候変動関連、人的資本等のサステナビリティ情報の開示例を追加~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025(令和7)年12月25日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」を公表した。 今回の事例集では、「全般、気候、個別テーマ」の開示例、「人的資本、従業員の状況」の開示例を取り上げている。「定量分析」も記載している。 今後、「MD&A」、「事業等のリスク」、「コーポレート・ガバナンス(株式の保有状況)」、「重要な契約」に関する開示例を追加し、「記述情報の開示の好事例集2025(最終版)」として公表・更新することを予定しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント 例えば、次のことが記載されている。 Ⅲ 全般、気候、個別テーマの開示例 主な開示のポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(ESG部門として、ISSB/SSBJの動向を継続的にモニタリングするとともに、昨年度の金融庁の好事例勉強会等で得られた知見をIR、経理、コミュニケーション部門に適時共有したこと、気候関連のリスク・機会の評価では、WGでの各部門との対話をもとにリスクマトリックスで客観的な評価を実施したことなど)。 好事例のポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 Ⅳ 人的資本、従業員の状況の開示例 主な開示のポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(有価証券報告書や統合レポートを、人的資本の価値創造プロセスにある各取り組みと紐づいた形の構成とすることで、わかりやすく伝わるよう工夫したことなど)。 好事例のポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 (了)
令和8年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和8年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
《速報解説》 試験研究費の税額控除制度(研究開発税制)の見直し ~令和8年度税制改正大綱~ 太陽グラントソントン税理士法人 プリンシパル 税理士 竹内 一樹 令和7年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱において、試験研究費の税額控除制度(以下、研究開発税制という)は既存の時限措置の3年の延長(令和11年3月31日まで)がされるとともに、「成長投資」による力強い経済成長を実現する観点から、更なる拡大成長が見込まれる重点戦略分野に焦点を当て、かつ、研究開発に積極的な成長企業に対してより優遇される措置となるよう、新たな制度の創設や既存制度の見直しが行われた。 各改正項目について、以下の通り解説する。 1 重点産業技術試験研究費の額に係る税額控除制度の創設 高市政権が掲げる成長戦略の一環として、17の重点投資対象分野が議論されている。また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)でも、将来にわたって科学技術力を維持・強化するため、限られた政策資源を最大限活用する観点から、技術領域の戦略的重点化が議論されてきた。 このような中、高市総理から、基礎研究から社会実装まで一気通貫での支援を実現するための施策の1つとして、研究開発税制の見直しが指示された。これらを受け、CSTIで検討を行っている重要技術領域のうち「国家戦略技術領域(AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙)」について、既存の措置とは別枠を設け、重点的に後押しする見直しが行われることとなった。 なお、本制度の実施に当たっては、産業技術力強化法の改正が必要となり、参照した税制改正大綱は本法律の改正を前提に記載されている。 【改正内容】 〈開始日:改正産業技術力強化法の施行日〉 産業技術力強化法の改正法の施行の日から令和11年3月31日までの間に産業技術力強化法の重点研究開発計画(仮称)につき同法の認定を受けたものの適用期間内の日を含む各事業年度において、重点産業技術試験研究費の額(一般試験研究費の額に係る税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制及び特別試験研究費の額に係る税額控除制度の適用を受ける場合のその適用を受ける金額を除く)がある場合には、重点産業技術試験研究費の額の40%(特別重点産業技術試験研究費の額の場合には50%)の税額控除ができる(当期の法人税額の10%が上限)。 【補足:用語の意義】 ① 適用期間 重点研究開発計画の認定を受けた日(認定日)から同日以後5年を経過する日までの期間をいい、その認定に係る重点研究開発計画の計画期間の終了の日が5年経過日前の場合には、認定日から計画期間の終了の日までの期間をいう。 ② 重点産業技術試験研究費の額 改正法の施行の日から令和11年3月31日までの間に産業技術力強化法の重点研究開発計画につき、同法の認定を受けた法人が適用期間内において支出するその認定に係る重点研究開発計画に従って行う特定重点研究開発に係る試験研究費の額をいう。 ③ 特定重点研究開発 産業技術力強化法の重点産業技術(仮称)(前述のCSTIの国家戦略技術領域(AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙)を想定)のうち、特に早期の企業化が期待されるものとして、一定の基準に該当するものに関する研究及び開発であることにつき確認を受けた研究及び開発をいう。 ④ 特別重点産業技術試験研究費の額 重点産業技術試験研究費の額のうち、産業技術力強化法に規定する重点産業技術共同研究開発機関(仮称)と共同して行う又は委託する試験研究に係る金額をいう。 2 一般型の試験研究費の額に係る税額控除制度の控除率及び控除上限の見直し 近年の物価上昇等の状況も踏まえても継続的に研究開発投資を増やしている企業にインセンティブを措置するという考えの下、制度自体にメリハリをつける観点からの改正も行われた。 【改正内容】 〈開始日:令和9年4月1日〉 一般型の試験研究費の額に係る税額控除制度について、令和9年4月1日以後に開始する各事業年度から現行の控除率及び控除上限が、以下の通り見直された。 《図1-1》控除率の見直し ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 《図1-2》控除率の推移(y=“控除率”、x=“増減試験研究費割合”) 《図2-1》控除上限の見直し ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 《図2-2》控除上限の推移(y=“控除上限”、x=“増減試験研究費割合”) なお、中小企業技術基盤強化税制、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例については現行制度のまま適用期限が3年延長される。 3 繰越控除制度の復活(重点産業技術試験研究費及び中小企業技術基盤強化税制に限る) 諸外国では研究開発税制に繰越控除制度がセットで導入されている。研究開発税制が赤字企業に対してインセンティブが働かない制度である点について、本年度の改正で緩和された。 【改正内容】 〈開始日:令和8年4月1日〉 重点産業技術試験研究費の額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制を対象に、控除超過額の3年間の繰越が認められる。なお、控除超過額の利用については、以下の要件を満たした事業年度に限り適用できる。 (※1) グループ通算を適用している企業は、通算グループ全体の額で判定。 (※2) 一般試験研究費の額に係る税額控除制度の適用を受ける事業年度は適用不可。 【補足:グループ通算制度下における取扱い】 試験研究費の額に係る税額控除制度にはグループ通算が適用される。控除超過額の繰越についても同制度の考え方が取り入れられており、それぞれ取扱いは以下の通りとなる。 4 特別試験研究費の額に係る税額控除制度の見直し 特別試験研究費の税額控除の適用については、確認手続きの煩雑さや、要件が厳しいことから制度適用の障壁となっている部分がある旨の指摘があった。本制度の趣旨である大学等との共同研究の促進や高度研究人材の活用、引いてはその知見の社会への還元をより促進する観点から一部の確認手続きについて省略ないしは適用要件を緩和する改正も行われた。 【改正内容】 〈開始日:令和8年4月1日〉 ① 大学等との共同研究及び委託研究に係る試験研究費の額 適用にあたり、1)大学等の相手方の確認を受けること、2)第三者による監査を受けること、とされていた部分について、一定の要件を満たしたうえで経済産業大臣の指定を受けた大学等については、学長が認定した金額をそのまま適用金額として利用することができるようになる。 ② 新規高度研究業務従事者に対して人件費を支出して行う試験研究 イ)高度研究人材の定義の拡充 博士号取得から5年未満に加え、左記の者を採用してから5年未満が対象となる。 ロ)研究テーマの公募要件の緩和 改正前:高度研究人材のみ ⇒ 改正後:高度研究人材含む社員等 5 海外委託試験研究費の対象範囲 研究開発税制の対象となる試験研究費の範囲に関し、科学技術創造立国実現の礎となる、国内の研究人材や研究開発拠点の維持・強化の観点から、諸外国と同様、その費用の一部を対象外(医薬品等の海外治験を除く)とする改正も行われた。 【改正内容】 〈開始日:令和8年4月1日〉 現行法で対象となっている他の者への委託試験研究費のうち、国外において行われるものについては、次の区分に応じた金額を税額控除の対象とする。 (了)
《速報解説》 外国子会社合算税制の見直し ~令和8年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 霞 晴久 政府与党(自由民主党・日本維新の会)が12月19日に公表した令和8年度税制改正大綱では、グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について、OECDから発出されたガイダンスの内容等を踏まえ、制度の明確化等の観点から所要の見直しが行われる。 一方、国際的なルールにおいても「第2の柱」と併存するとされる外国子会社合算税制については、「第2の柱」の実施により対象企業に追加的な事務負担が生じることから、令和8年度の税制改正において、以下のとおり見直しが行われる。 かかる改正は、外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度について適用される(地方税についても同様)。 1 解散した部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に係る特例の創設 (1) 外国関係会社が清算部分対象外国関係会社(注1)又は清算外国金融子会社等(注2)に該当する場合には、その解散により最初に部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に該当しないこととなった事業年度終了の日から原則として同日以後3年を経過した日までの期間内の日を含む事業年度(1において「特例、、清算事業年度」という)については、清算部分対象外国関係会社は部分対象外国関係会社と、清算外国金融子会社等は外国金融子会社等とそれぞれみなして、外国子会社合算税制が適用される。 (注1) 解散した外国関係会社のうち、その解散の日を含む事業年度開始の日前2年以内に開始した事業年度のいずれにおいても部分対象外国関係会社に該当していたものをいう。1において同じ。 (注2) 解散した外国関係会社のうち、その解散の日を含む事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度のいずれにおいても外国金融子会社等に該当していたものをいう。1において同じ。 本見直しにより、平成30年度税制改正で導入された、解散した部分対象外国関係会社(清算外国金融子会社等)の「特定、、清算事業年度」の特例は廃止される(以下同じ)。 (2) 特例清算事業年度については、部分合算課税の対象所得である異常所得の金額の計算において控除することとされる金額の計算の基礎となる総資産の額、人件費の額及び減価償却累計額は、その解散により最初に部分対象外国関係会社又は外国金融子会社等に該当しないこととなった事業年度の前事業年度に係るこれらの金額とされる。すなわち、特例清算事業年度については、当該年度のこれら金額を改めて計算しなくてもよいことになる。 (3) 外国関係会社が清算外国金融子会社等に該当する場合における特例対象事業年度については、部分合算課税の対象所得である異常な水準にある資本に係る所得の金額はないものとして金融子会社等部分適用対象金額の計算を行う。これも簡素化の一環である。 (4) 国税当局の該当職員が上記に係る書類等の提出を求めた場合、期限までに提出等がないときは、上記(1)の適用については、その外国関係会社が清算部分対象外国関係会社又は清算外国金融子会社等に、その事業年度は、特例清算事業年度に、それぞれ該当しないものとして取り扱われる。 2 ペーパー・カンパニー特例に係る資産割合要件 ペーパー・カンパニー特例に係る資産割合要件について、外国関係会社の事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の額が零である場合には、その外国関係会社に係るその事業年度に係る資産割合要件の判定は不要とされる。 なお、ペーパー・カンパニー特例とは、①主たる事業が株式保有業でない、②収入割合要件、及び③資産割合要件の3つを満たす外国関係会社については、ペーパー・カンパニーに該当しないとするもの(措法66の6②二イ(3)、措令39の14の3⑤・⑥)で、令和元年度税制改正で導入された。 3 最高税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例 外国関係会社の本店所在地国の外国法人税の税率が所得に応じて高くなる場合に最高税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例(措令39の17の2②四)について、その最高税率が適用されることが通常見込まれないこと、その最高税率が適用される所得の額の区分が極めて限定される等の事情により、本特例を適用することが著しく不適当であると認められる場合には、本特例を適用しないことができる。 4 所得税における取扱い 所得税についても上記同様に見直される。 (了)
《速報解説》 貸付用不動産の評価見直し(相続税・贈与税) ~令和8年度税制改正大綱~ 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 西田 尚子 令和7年12月19日に公表された「令和8年度税制改正大綱」において、貸付用不動産の評価方法について、以下の見直しが行われた。 1 改正の趣旨 賃貸用不動産の市場価格と財産評価基本通達による評価額との乖離を利用して相続税・贈与税が大幅に圧縮される租税回避スキームに対して、これまでは課税庁が財産評価基本通達第6項に基づく課税処分を行うことにより個別に対応されてきたが、こうした個別の対応については、納税者の予見可能性の観点から批判等があり、評価方法の明確化が要請されていた。 納税者の予測可能性を確保しつつ、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から今回の改正が行われた。 2 改正の内容 (1) 相続等の直前に取得した貸付用不動産 ① 対象不動産 被相続人等が相続・贈与前5年以内に有償で取得または新築した一定の貸付用不動産 ② 評価方法 (※) 課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%相当額によって評価することも可能。 ③ 適用時期 R9年1月1日以後の相続・贈与により取得する財産の評価に適用される。 ただし、通達の改正日までに、同日の5年前から所有している土地のうえに新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)については上記の改正は適用されない。 (2) 商品として小口化された貸付用不動産 ① 対象不動産 不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産(取得時期の制限なし) ② 評価方法 (※) 課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することも可能。 ただし、上記の評価に該当するものがない場合は、(1)②の取得価額を基に算定する方法に準じて評価する。 ③ 適用時期 R9年1月1日以後の相続・贈与により取得する財産の評価に適用される。 【不動産小口化商品と評価方法】 (了)