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《速報解説》 国税庁、リファンド方式特設サイトを開設~Q&Aや関係通達・様式、免税販売管理システム等に係る最新情報を掲載~

《速報解説》 国税庁、リファンド方式特設サイトを開設 ~Q&Aや関係通達・様式、免税販売管理システム等に係る最新情報を掲載~   Profession Journal 編集部   国税庁は4月1日、輸出物品販売場制度のリファンド方式に関する特設ページを新設し、FAQやAPI仕様書を公表するなど、令和8年11月の制度開始に向けて周知を開始している。 輸出物品販売場制度は、外国人旅行者等の非居住者に対し免税対象物品を一定の方法で販売する場合、消費税が免除される制度。現行制度では購入時に消費税が免税となることから、免税購入品が国外に持ち出されず、国内で横流しされる問題があり、令和7年度税制改正においてリファンド方式(出国時に持出しが確認された場合に消費税相当額を返金する仕組み)に見直すこととなった。 ※国税庁「【令和7年度税制改正リーフレット】「輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します」」より一部抜粋 なお、見直しの詳細については下記も参照いただきたい。 特設サイトでは、制度の概要に係るリーフレットや全37問からなるQ&A(リファンド方式・概要編)のほか、関係通達や申請書等の様式(本稿公開時点は準備中)、免税店を経営する事業者に向けた免税販売管理システムに係る情報(API仕様書等)などが用意されている。 また、リファンド方式の適用までまだ期間があることから、特設サイトにおいても「リファンド方式」に関する最新の情報を随時掲載していく予定としており、今後の動向には留意したい。 なお、リファンド方式への見直しに伴い「消費税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」も特設サイトの開設と同日に公表されており、その内容については弊誌にて別途速報解説の掲載を予定している。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2025/04/03

プロフェッションジャーナル No.613が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年4月3日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.613を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/04/03

monthly TAX views -No.146-「揮発油税(ガソリン税)暫定税率廃止を考える」

monthly TAX views -No.146- 「揮発油税(ガソリン税)暫定税率廃止を考える」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   財政ポピュリズムが吹き荒れる今日だが、次のターゲットは揮発油税暫定税率の廃止だ。自公と野党3党の動きが複雑だが、暫定税率の廃止についてはすでに合意されている。 最大の問題は1.5兆円(国1兆円、地方5,000億円)という「財源」の確保だ。今時このレベルの代替財源を見つけることは容易ではない。だからといって安易な国債発行によることも、与党としては容認できない。一方、財源にこだわると、「国民生活が苦しいのに」と一方的にSNSなどで論陣を張られ、参議院選挙を前に与党は守勢に回ってしまう。 解決策は見えない状況だが、政府はこれまで、自動車の取得・保有・利用の各段階にかかる「車体課税」と、揮発油税など燃料の種類に応じてかかる「燃料課税」を一体的に見直す必要性を訴えてきた(例えば令和5年6月の政府税制調査会「わが国税制の現状と課題」p181以降)。ただし、この方針の下でうまく解決策を見出すことができるかどうかは不透明だ。 *  *  * 忘れてはならない論点は、環境問題への波及だ。米国トランプ政権はパリ協定から離脱するものの、わが国やEUは、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)」目標にコミットし、達成に向け様々な努力をしている。脱炭素の取り組みと経済成長の同時実現を目指すという方向性は変わらない。 一方環境省は、「暫定税率の廃止は、それだけで実施すれば、CO2排出に相当規模の負の価格効果がある。・・・2012年から暫定税率を廃止した場合、CO2排出量は2020年には約1,270万トンCO2増加(1990年エネルギー起源GHG排出量1%相当)」という試算を公表し、環境への負荷を問題にしている。 筆者が懸念するのは、EUの炭素国境調整措置(以下CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)の導入だ。2026年からの本格適用を前に2023年10月1日から対象事業者に報告義務を課す移行期間がはじまり、セメント、電力、肥料、鉄鋼、アルミニウムなどが対象になっている。 この制度は、排出量に応じて「炭素価格の差額」を徴収する輸入関税だ。実効炭素価格で比較するとわが国は欧州諸国に比べてきわめて低い水準にある。わが国では全化石燃料に対しCO2排出量に応じてトン当たり289円の税率が課税されているが、スウェーデンの15,000円、英国の2,600円、フランスの5,600円に比べて極端に低い。暫定税率の廃止によりさらに低くなり、差額は拡大する。CBAMが今後拡大していけば、わが国産業が大きな影響を受ける可能性が広がる。 これに対応するためわが国は、GX推進法を制定し、10年間に150兆円を超える官民GX投資の実現・実行を目的とすると同時に、炭素の排出量取引(2026年度~)、発電事業者向けの有償オークションの導入(2033年度~)などの措置を実行する予定だ。これらの措置は、企業などが排出するCO2に価格を付け、それによって排出者の行動を変化させるので、「カーボンプライシング」と呼ばれている。なお、「排出量取引制度」は2026年度からの本格導入を目指し準備が進みつつある。 一方で、カーボンプライシングの最有力手段であるCO2排出量に応じて課税する「炭素税」の導入は見送られた。 揮発油税の暫定税率分が引き下がるとCO2排出量が増加し、国際的な問題を惹起する可能性があるという問題へ対処するには、「暫定税率分を炭素税・環境税として衣替えする」という方法が考えられる。別途低所得者へのガソリン費補助は必要としても、頭の体操として考えておく必要があるのではないか。 (了)

#No. 613(掲載号)
#森信 茂樹
2025/04/03

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例73】「建設工事受注に関するコンサルタント料の損金性と重加算税賦課の適否」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例73】 「建設工事受注に関するコンサルタント料の損金性と 重加算税賦課の適否」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、近畿地方のある県庁所在地に本社を置き、主としてマンション建設工事を行っている株式会社X(資本金30億円・3月決算法人)において、総務部長を務めております。 バブル崩壊後の失われた30年の間に、わが国の地価は右肩下がりで低迷をし続け、日銀のゼロ金利政策により異例の低金利となった個人向け住宅ローンにもかかわらず、わが社の主戦場である近畿地方の都市部に建設されたマンションの販売は長らく低調でした。しかし、アベノミクスの成果が出始めた平成の末期から不動産市場の状況が好転し、ようやく近畿地方においてもマンションが売れるようになりました。 コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻後はインフレにより資材価格が高騰して、マンション価格が急激に上昇し始め、タワーマンションはもちろんのこと、ファミリー向けの中低層のマンションも新築であれば1億円に届きそうな値が付くようになり、果たしてこのような高値のマンションが庶民に売れるのかと大いに懸念しておりました。しかし、幸いにして共働きのパワーカップルや外国人投資家(主として中国人)にマンションをご購入いただいており、わが社の業績もここ数年は堅調となっております。 さて、そのような中、先日来、国税局の調査を受けており、ある項目につき調査官との厳しいやり取りが続いております。それは、わが社が受注したマンション建設工事に関連し、それに多大な功績のあった個人のコンサルタントに報酬を支払ったところ、それが実体のない業務に対する支払いだとして、調査官は当該コンサルタント報酬のマンション工事原価への算入を否認するのみならず、重加算税の賦課対象になると主張しています。 実在するコンサルタントへの実態のある業務への支払いであるにもかかわらず、その損金性を否認するのみならず、重加算税をも賦課するというのは、課税庁の横暴以外の何物でもないと考えますが、調査官にどのように反論すればよいでしょうか、教えてください。 【A】 仮に、実在するコンサルタントへの報酬の支払いであっても、そのコンサルタントの業務がマンションの受注に貢献するものであるといった実態のある活動に基づくものであることを客観的に証明するような証拠書類等が存在しない場合には、当該支払いをマンション工事原価への算入はできないものと考えられます。 また、当該支払いが実態のない活動への報酬であると認定される場合には、架空の経費として重加算税の賦課がされる可能性は十分あるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) コンサルタント報酬のマンション工事原価への算入 法人税法第22条第3項によれば、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額の1つに、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる「原価の額」が挙げられている。 ここでいう「損金」とは、原則としてすべての費用と損失を含む広い観念として理解すべきものと解されている(※1)。また、費用として損金への計上が認められるためには、所得税法の場合と同様に、必要性の要件を満たせば十分であって、通常性の要件を満たす必要はないものと解されている(※2)。そのため、通常必要とはされない、不法ないし違法な支出であっても、それが利益を得るために直接必要なものである限り、費用として損金算入が認められるものと解されている(※3)。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)350頁。 (※2) 金子前掲(※1)350頁参照。 (※3) 金子前掲(※1)350頁参照。 それでは、コンサルタントに支払った報酬が損金に算入されるかであるが、それは当該報酬が支払先であるコンサルタントが行ったどのような業務に対するものかに基づき判断されることとなる。 そのコンサルタントの業務が支払元である建設会社のマンションの受注に貢献するものであるといったような、実態のある活動であるといえる場合には、当該支払いはマンション工事原価に含めることにより損金に算入されるものと考えられる。   (2) 重加算税の賦課要件 加算税は、一般に、納税者の申告水準を高めて、申告納税制度及び徴収納付制度の定着と発展を図るため、申告義務及び徴収納付義務(いわゆる源泉徴収義務)が適正に履行されない場合に課される付帯税である、と解されている(※4)。 (※4) 金子前掲(※1)904頁参照。 そのような加算税のうち、重加算税は、納付すべき税額の計算の基礎となる事実の全部又は一部について隠蔽又は仮装があり、過少申告・無申告又は不納付がその隠蔽又は仮装に基づいている場合において、過少申告加算税・無申告加算税又は不納付加算税の代わりに、それらよりも一定割合の重い負担が課され、また徴収される付帯税である。 重加算税は、納税者が隠蔽・仮装という不正な手段を用いた場合に、これに特別に重い負担を課すことによって、申告納税制度及び源泉徴収制度の基盤が失われるのを防止することを目的とするものである(※5)。重加算税の賦課要件となる「隠蔽・仮装」とは、一般に故意を含む観念と解され、そのうち事実の隠蔽とは、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、また、事実の仮装とは、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいう(※6)。架空の経費の計上は、事実の仮装に該当し、重加算税の賦課要件を満たすものと考えられる。 (※5) 金子前掲(※1)913頁参照。 (※6) 金子前掲(※1)914頁参照。   (3) 建設工事受注に関するコンサルタント料の損金性及び重加算税の賦課の適否が争われた事例 それでは本件と同様に、建設工事受注に関するコンサルタント料の損金性と重加算税賦課の適否が争われた事例(広島地裁令和2年3月18日判決・税資270号-40(順号13400)、TAINSコード:Z270-13400)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 土木建築工事の設計施工監理及び請負業務等を目的とする株式会社である原告は、B株式会社との間でマンション建築工事の請負契約を締結するために、第三者との間でコンサルタント契約を締結し、同契約に基づいて情報の提供を受け、対価として金員を支払ったとして、当該金員を本件各工事の完成工事原価として損金に算入した。 ところが、原処分庁である下関税務署長は、原告に対する税務調査を実施した上、平成27年5月27日に、原告が計上した本件各工事原価は、いずれも架空の契約に基づく架空の工事原価であり、本件各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することはできないとしてこれを否認し、法人税等に係る更正処分及び重加算税賦課決定処分を行った。本件は、原告が、上記各処分は違法であると主張して、その取消しを求める事案である。 原告は、Bとの間で複数のマンション建築工事の請負契約を締結したが、そのうち、平成25年3月期及び平成26年3月期において完成した各工事請負契約の概要は、以下の表のとおりである。 また、原告は、本件C工事につき平成23年4月11日付け、本件D工事につき同年6月30日付け、本件E工事につき平成24年3月30日付けで、いずれも、株式会社Fがコンサルタント業務を提供し、原告がコンサルタント業務費を支払う旨のコンサルタント業務契約書を作成した。 〇マンション建設工事の概要 ② 事案の争点 本件の争点は、各更正処分の取消請求に係るものとして、コンサルタント業務費として支払った本件各金員が、本件各事業年度における原告の所得の金額の計算上、損金の額に算入されるか否かである。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されたが(広島高裁令和2年12月16日判決・税資270号-139(順号13499)、TAINS コード:Z270-13499)棄却され、さらに上告されたが不受理となり(最高裁令和3年5月14日決定・税資271号-60(順号13562)、TAINSコード: Z271-13562)確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例は、原告と株式会社Fの間で締結したコンサルタント業務に関し、丙が代理人を務める株式会社Fが実際に原告に対し当該コンサルタント業務を提供したか否かがポイントとなる。 両社が締結した契約の内容であるが、コンサルタント業務として契約書上に記載された事項は、①土木建築工事の紹介・あっせん、②土木建築工事に関する情報の提供、③請負契約締結に至るまでの監理及び助言・報告とされる。しかし、実際に株式会社Fが行った業務は、裁判所が認定したところによれば、「B発注のマンション建築工事の案件がある旨を一報し、次いで当該案件の工事概要を知らせた程度」である。 しかも、その「工事概要」というものは、「現地に設置された看板に掲示され、建築関係の新聞等にも掲載されるなど広く一般に周知される性質の情報であって、受注実績のある建築業者に対しては、現場説明会への参加を促す際に事前に提供され、現場説明会に参加していない建築業者からの問い合わせに応じることもあったというのであるから、そうした情報それ自体は価値に乏しいというべき」というものに過ぎず、「合理的な経済原則の見地からは、企業が1案件当たり1,000万円を大きく超えるような対価を払って取得すべき情報とは到底いえない」と解するのが自然であろう。 そうなると、当該金銭の支払いは、「コンサルタント業務の対価として交付されたものではないと認めるのが相当であり、本件各金員の支出は、その使途を確認することができず、原告の業務との関連性の有無が明らかでない」ことから、原告においてその法人所得の計算上、損金性はないということになる。 しかも、そうした原告の行為は、国税通則法第68条第1項、法人税法第127条第1項第3号における隠蔽、仮装等のうち、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることに該当することから、特に「仮装」に当たると認められる。したがって、当該コンサルタント報酬の支払いは重加算税が賦課されるべきものと考えられる。 本裁判例における、原告によるコンサルタント報酬の支払いの真意は不明(※7)であるが、実務上、利益調整の手段として架空の、ないし支払根拠が薄弱なコンサルタント報酬の支払いは散見されることから、本裁判例は、そのような安易な利益調整は厳に慎まなければならないことを再認識させられる事案であると考えられる。 (※7) 重加算税の賦課要件である「隠蔽・仮装」とは、一般に、「故意」を含む観念であると解されている。金子前掲(※1)914頁参照。   (4) 本件へのあてはめ 仮に実在するコンサルタントへの報酬の支払いであっても、そのコンサルタントの業務がマンションの受注に貢献するものであるといった実態のある活動に基づくものであることを客観的に証明するような証拠書類等が存在しない場合には、当該支払いをマンション工事原価への算入はできないものと考えられる。 また、当該支払いが実態のない「活動」への報酬であると認定される場合には、架空の経費として重加算税の賦課がされる可能性は十分あるものと考えられる。   (了)

#No. 613(掲載号)
#安部 和彦
2025/04/03

金融・投資商品の税務Q&A 【Q92】「ストックオプションやRSUで取得した株式に係る損失」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q92】 「ストックオプションやRSUで取得した株式に係る損失」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 株式の含み損の取扱い 株式は発行法人の業績等により時価が変動し、特に上場株式については市場価格が明確であるため、含み損益が生じていることを容易に把握することができます。含み損が生じている場合には資産価値が棄損していることになりますが、所得税法上、原則として、このような損失を課税所得から控除する手当ては設けられていません。したがって、株式を譲渡するなどして含み損を実現させるまでは、課税関係が生じないことになります。   2 上場株式の含み損を譲渡により実現させた場合の取扱い 上場している株式(上場株式等)を譲渡して損失が実現した場合には、他の上場株式等の譲渡から生じた譲渡益や上場株式等に係る配当所得等との損益通算が認められています。給与所得や非上場株式等の譲渡から生じた譲渡益などとの損益通算は認められておらず、同一年において他の上場株式等に係る譲渡益等がなければ、譲渡損失をその年の課税所得から控除することはできません。 ただし、翌年以降3年間にわたって譲渡損失を繰り越すことはできますので、翌年以降に他の上場株式等の譲渡が見込まれる場合には、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用の確定申告書付表」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出しておくという対応が考えられます。 なお、上場株式等の譲渡から生じた譲渡損の上場株式等に係る配当所得等との損益通算と譲渡損失の繰越控除の適用は、日本の金融商品取引業者への売委託による譲渡であることなど一定の要件に該当する場合に限られます(詳細は、Q41参照)。   3 本件へのあてはめ 所得税法上、株式の含み損について課税所得から控除するなどの手当ては設けられていませんので、ストックオプションの行使時やRSUの権利確定時に給与所得課税の基礎となった株価から時価が下落して含み損が生じているとしても、それ自体を調整する仕組みはありません。 しかしながら、上場株式を譲渡して含み損が実現した場合には、同一年の他の上場株式等の譲渡から生じた譲渡益との損益通算は認められます。また、上場株式等に係る配当所得等との損益通算や翌年以降3年間の譲渡損失の繰越控除が適用される可能性がありますが、米国親会社の株式をストックオプションの行使又はRSUの権利確定により取得した場合はその株式が外国に所在する証券会社等で保管されていることがあり、日本の金融商品取引業者への売委託による譲渡であることなどの適用要件が充足できないことも考えられますので、譲渡の前に確認しておく必要があります。   (了)

#No. 613(掲載号)
#西川 真由美
2025/04/03

租税争訟レポート 【第78回】「所得税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分の取消請求事件~給与所得を有する社会保険労務士の相談業務に係る損失(国税不服審判所令和5年6月16日裁決/所得区分と損益通算)」

租税争訟レポート 【第78回】 「所得税等の各更正処分及び 過少申告加算税の各賦課決定処分の取消請求事件 ~給与所得を有する社会保険労務士の相談業務に係る損失 (国税不服審判所令和5年6月16日裁決/所得区分と損益通算)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【裁決の概要】 〈国税不服審判所令和5年6月16日裁決の概要〉   【事案の概要】 本件は、勤務先3社から給与収入を得る一方、社会保険労務士として開業している審査請求人(以下「請求人」という)が、社会保険労務士として行った相談業務に係る事業所得の金額の計算上生じた損失の金額があるとして、他の所得金額と損益通算する内容の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該業務に係る所得は雑所得に該当することから、当該損失の金額は損益通算できないなどとして所得税等の各更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 請求人は、平成18年以後の所得税について青色申告の承認を受けており、今回の原処分は、平成28年分から令和2年分(本件各年分)の所得税等に係るものである。   【争点と当事者の主張】 1 本件調査に原処分を取り消すべき違法があるか〔争点1〕 (1) 請求人の主張 請求人は、次のとおり、本件調査には、原処分を取り消すべき違法又は不適正があると主張した。 (2) 原処分庁の主張 原処分庁は、請求人の主張に反論を加えたうえで、本件調査に原処分を取り消すべき違法はないと主張した。 2 本件各更正処分の理由の附記に原処分を取り消すべき不備があるか否か 〔争点2〕 (1) 請求人の主張 請求人は、原処分庁は、本件各通知書において、本件業務から生じた所得が事業所得に該当するか否かについて3つの項目の各事実を総合して勘案すると、本件業務が客観的に事業として営まれていると認められないとしているが、いかなる理由に基づき、どのような処分基準を適用し、その結果、当該処分を行ったかが不明であること、また、本件各通知書には、調査の対象となる期間が3年間から5年間に延長された理由及び本件業務から生じた所得を雑所得とした際に必要経費の全額を雑所得の必要経費として認定した理由が記載されていないこと、さらに、本件各通知書には、うそや不適切表現が含まれており、認めることはできないと主張した。 (2) 原処分庁の主張 原処分庁は、本件各通知書には、本件業務から生じた所得が事業所得に該当しない旨判断した理由について、所得税法第27条の法令解釈を示したうえで、本件業務について原処分庁が認定した事実及びその認定した事実を法令解釈に当てはめた原処分庁の判断が記載されており、同時に、この記載は、原処分庁の恣意を抑制するとともに不服申立ての便宜を与えるという所得税法第155条第2項の理由附記の制度の趣旨目的を充足する程度に記載されているとしたうえで、請求人の主張する本件調査の対象となる期間が3年間から5年間に延長された理由及び必要経費の全額を雑所得の必要経費に認定した理由の記載までを必要とするものではないと主張した。 3 本件業務から生じた所得は事業所得又は雑所得のいずれに該当するか 〔争点3〕 (1) 請求人の主張 請求人は、本件業務は自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務であることは明らかであるので、本件業務から生じた所得は事業所得に該当すると主張し、その理由として、開業登録して以来、年会費を支払いながら、10年ほど反復継続して本件業務を営んでおり、その間、事務所を備え、売上げとして相談料を受領しているうえ、通信費や水道光熱費等の経費が発生していること、1日の半分近くを営業や講習会に費やしているほか、損害賠償請求をされる危険性も抱えながら活動していること、さらに、本件業務は、社会保険労務士という国家資格に基づき請求人の勤務先とは関係なく独立して行われ、労務管理という幅広い要望に対するものであることを挙げている。 (2) 原処分庁の主張 原処分庁は、「営利性、有償性及び反復継続性の有無」、「自己の危険と計算による企画遂行性の有無及び相当程度の期間安定した収益を得られる可能性」、「精神的及び肉体的労力の程度」、「人的設備及び物的設備の有無」及び「職業・経験、社会的地位及び生活状況」を総合的に考慮し、社会通念に照らして判断すれば、本件業務から生じた所得は事業所得には該当せず、雑所得に該当すると主張した。   【国税不服審判所の判断】 国税不服審判所は、結論としては、請求人による審査請求はいずれも理由がないから棄却するという裁決をした。争点ごとの国税不服審判所の判断は、次のとおりである。 1 本件調査に原処分を取り消すべき違法があるか否か 〔争点1〕 国税不服審判所は、法令解釈として、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解されるが、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合、つまり、調査を全く欠く場合、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合については、課税処分の取消事由となるものと解すべきであるとしたうえで、重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどを挙げている。 そして、国税不服審判所は、認定した事実に基づき、調査担当職員は、本件業務から生じた所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に関し、各費用の算入割合を請求人と協議した際、本件業務から生じた所得が雑所得になる可能性を指摘していることからすれば、かかる所得が事業所得になることを調査担当職員が認定したうえで、請求人に対して修正申告を勧奨していた事実は認められないこと、調査担当職員による延滞税に係る説明が法令に則ったものではなかったとはいえ、説明をもって修正申告に誘導したということはできないこと、調査担当職員による勤務先調査は、本件業務から生じた所得が事業所得又は雑所得のいずれに該当するかの判断に必要な調査であったということができることから、客観的な必要性があったものと認められ、また、勤務先調査において、請求人の個人情報が記載された雇用契約書の提出を受けるなどしたことは、たとえ雇用契約書の提出を受けるに当たってその必要性が明示的に示されなかったとしても、それをもって、勤務先調査が直ちに社会通念上相当な限度を超えるものであったということはできないこと、調査担当職員が、本件業務の事業性を認めることを前提に各費用の家事関連費該当性を検討していたという請求人主張の事実を基礎づける客観的な証拠はないこと、原処分庁が各費用の全額を雑所得の金額の計算上必要経費として認定した本件各更正処分が、本件調査を経ずにされたものと評価することはできないことなどの判断を示したうえで、調査に違法な点はなく、本件調査の違法を理由として、原処分には、これを取り消すべき違法があるとは認められないと結論づけた。 2 本件各更正処分の理由の附記に原処分を取り消すべき不備があるか否か 〔争点2〕 国税不服審判所は、法令解釈として、帳簿書類の記載自体を否認して更正をする場合において更正通知書に附記すべき理由としては、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要するが、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては、その更正は納税者による帳簿書類の記載を覆すものではないから、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正の理由の附記として欠けるところはないと解すべきであるとした。 そのうえで、認定した事実に基づき、国税不服審判所は、原処分庁は、本件各通知書において、根拠法令及び法令解釈等を示したうえで、本件業務の態様、本件業務に係る人的・物的設備、請求人の職歴・社会的地位に関する具体的な事実を摘示して、本件業務から生じた所得に係る所得区分が事業所得ではなく雑所得に該当すると判断した理由を記載しており、こうした記載は、本件各更正処分における原処分庁の判断過程を省略することなしに記載したものということができ、判断の慎重、合理性を確保するという点について欠けるところはないうえ、請求人としても、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して当該処分がなされたのかを了知し得るものであり、不服申立てに当たって必要な材料の提供を受けていたといえることから、本件各通知書の理由附記については、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものと認められるから、法の要求する更正の理由の附記として欠けるところはなく、本件各更正処分の理由の附記に原処分を取り消すベき不備はないという判断を示した。 3 本件業務から生じた所得は事業所得又は雑所得のいずれに該当するか 〔争点3〕 国税不服審判所は、法令解釈として、ある所得が事業所得に該当するか否かは、営利性及び有償性の有無、反復継続性の有無、自己の危険と計算においてする企画遂行性の有無、その者が費やした精神的及び肉体的労力の有無及び程度、人的及び物的設備の有無、その者の職業、経験、社会的地位及び生活状況、相当程度の期間安定した収益を得られる可能性の有無及び程度等を総合的に考慮し、社会通念によって判断するのが相当であるとの前提を示した。 そのうえで、認定した事実に基づき、国税不服審判所は、事業所得に該当するかどうかの判断について、本件業務は、有償性、反復継続性及び物的設備を有していたほか、請求人は社会保険労務士として本件業務に従事していたことが認められるものの、営利性は乏しく、企画遂行性は希薄であり、請求人が本件業務に費やした精神的及び肉体的労力の程度は、必ずしも大きいものではないことに加え、請求人が生活の資としているのは本件業務による収入ではなく、本件業務には相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が存するともいい難いという点を総合的に考慮し、社会通念により判断すると、本件業務が自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務ということはできないから、本件業務から生じた所得は、事業所得には当たらないという判断を示した。   【裁決の特徴】 裁決では更正処分の対象となった年分以前のことは触れられていないが、請求人は、社会保険労務士として登録をして10年以上、収入の多くは勤務先からの給与所得でありながら、青色申告事業者として確定申告を行い、事業所得の損失と給与所得を損益通算することによって、いわゆる節税を行ってきたようである。具体的な収入金額や事業所得による損失額が「不開示」となっているため、その金額や年分ごとの変動は判然としないが、収入を大きく上回る必要経費を計上し続ける申告内容に不審を抱いた税務署が、調査の対象として請求人を抽出したものであると推測できる。 国税不服審判所は、後述する5つのポイントについて、「事業所得に該当するか否か」を判断しており、必ずしも、「毎年損失を計上しているから事業所得には該当しない」と判断しているわけではないが、「副業解禁」を打ち出す企業が広まってきている中、「副業を事業として認めさせるべきにはどうすべきか」といった観点も含めて、裁決の特徴を見ておきたい。 1 原処分庁による瑕疵 国税不服審判所は、原処分庁の調査担当者が、延滞税の計算方法について適正な説明であったとはいえないこと、さらに、原処分庁が作成した本件各通知書に附記された理由のうち、請求人の平成28年分の給与収入の金額の記載に誤記が認められることを認定している。 請求人による違法の主張に対して、国税不服審判所は、調査担当者は、適正ではない説明によって修正申告に誘導したとは認められないこと、給与収入の誤記は、本件業務から生じた所得の所得区分の判断を左右するものということはできないなどの理由を挙げて、原処分を取り消すべき不備があるということはできないと結論づけているが、納税者に不利益な処分を下すという点に着目すれば、誤った説明は是正されるべきであるし、通知書についても、訂正したものが発行されるべきであると思料するが、そうした行為が原処分庁によってなされたかどうかについては、裁決書に言及はない。 2 請求人の申告内容 上述のとおり、請求人の事業所得に関する決算内容は不開示となっているのであるが、裁決では、本件各年分のいずれにおいても利益が生じておらず、損失の金額は、売上金額に比して、平成28年分が約13倍、平成29年分が約13倍、平成30年分が約9倍、令和元年分が約7倍、令和2年分が約13倍に相当し、国税不服審判所は、多額の損失が5年連続して生じていることからすると、本件業務は、経済合理性に欠け、営利性は乏しいというべきであると結論づけている。 3 事業所得に該当するという判断を導くための要件はあるのか 国税不服審判所の認定した事実から、請求人が、本件業務を事業所得であると主張するためにはどういった要件が必要であったかを検討してみたい。 (1) 営利性及び有償性の有無並びに反復継続性の有無について 国税不服審判所は、有償性と反復継続性については認定しており、上記2で見たとおり営利性が問題であった。私見ではあるが、平成30年分以後、売上金額に対する損失の額が減少していたことを考えると、その後も損失額が減少する傾向が続けば異なった判断が出る可能性もあったと考えるが、結果的には令和2年分になって損失の割合が拡大していた。 (2) 自己の危険と計算においてする企画遂行性の有無について 国税不服審判所は、請求人は、多額の損失が5年間継続していたにもかかわらず、本件業務に係る売上先が分かる書類や営業活動の内容を詳細に示す資料を作成していないことをもって、本件業務に係る損失を改善する手段を講じていたということはできず、企画遂行性は希薄であるという判断をしたものであり、売上先の管理、売上拡大のために行ってきた、又は行う予定の施策を示すことができれば、本項目もクリアできる可能性があった。 (3) 精神的及び肉体的労力の有無及び程度について 国税不服審判所は、請求人の本件業務に係る必要経費の内訳には、通信費、広告宣伝費及び接待交際費の支出があることからすると、請求人は本件業務に精神的及び肉体的労力をある程度費やしていたともいえると認定しながら、請求人が営業の電話をかけることはまれであり、本件業務に係る相談を受ける頻度が平均すると月に2回から3回程度、多くともその頻度は月に5回程度で、1回も相談を受けることがない月もあって、相談の時間は1回当たり1時間程度であるから、請求人が本件業務のうち実際に相談を受けるために使う時間は多くとも月5時間程度であり、本件業務に費やした精神的及び肉体的労力の程度は、必ずしも大きいものということはできないという判断を示しているが、たとえば、業務日誌のようなものを作成して、営業の電話をかける以外にも、研修を受講する、業務関連書籍を読む、会合に参加して商機を得るための活動を行うといったことを立証できれば、判断に影響を与えることはできたかもしれない。 (4) 人的設備及び物的設備の有無について 本項に関しては、国税不服審判所は、従業員を雇うことなく請求人1人で本件業務に従事していることから人的設備は有していない一方、自宅1階部分を事務所として使用していることから物的設備は有していることを認定し、請求人が人的設備(従業員を雇うこと)を有することなく1人で本件業務に従事していることが不自然ということはできないという判断を示している。 (5) 職業、経験、社会的地位、生活状況及び相当程度の期間安定した収益を得られる可能性について 国税不服審判所は、請求人は、本件業務により多額の損失が連続して生じていたにもかかわらず、当該損失を改善する手段を講じていたとは認められないこと、及び、請求人の顧客が請求人の事務所を訪問することはなく、請求人の事務所は自己学習等のために利用されているにすぎず、請求人の業務の規模が安定した収益をもたらす程度のものであったとまではいえないことをも併せ考慮すれば、請求人が、本件業務から相当程度の期間安定した収益を得られる可能性を有していたとはいい難いと判断しており、この判断を覆すのは困難であるが、上記(1)及び(2)にも関連することではあるが、連続して損失を計上するという事態に甘んじることなく、事業を拡大して、利益を計上するために何をしてきたかを、資料を基に説明する準備が必要であったとまとめておきたい。 4 裁決要旨検索システム 国税不服審判所の裁決要旨検索システムで、本件裁決の要旨を確認したところ、該当する要旨として2件が公開されていたため、以下に引用しておきたい。   (了)

#No. 613(掲載号)
#米澤 勝
2025/04/03

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第51回】「租税減免規定の限定解釈」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第51回】 「租税減免規定の限定解釈」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 他の外国法人が負担すべき外国法人税について、我が国の納税者が対価を得て引き受け、その負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用し、国内で納付すべき法人税額を減らすことによって納税を免れるような取引は認められるのでしょうか。 〔A〕 りそな銀行外国税額控除事件の最高裁判決では、我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ、外国法人税を負担すれば損失が生ずるだけであるという取引をあえて行うというものであって、外国税額控除制度を濫用するものであり、税負担の公平を著しく害するものとして許されないという判断が示されました。 現在では、法人税法69条1項に「内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対する外国法人税を納付することとなる場合を除く。」という文言が付加され、同様の取引は認められないこととされています。 ●●●〔解説〕●●● 1 一括控除限度額方式の彼此流用問題 外国税額控除の控除限度額は、次の算式で計算される(法令142①)。 上記の分数式の分子が「当期の国外所得金額」とされていることから、我が国の計算方式は一括限度額方式を採用していることが理解される(※1)。ここでいう一括限度額方式の意味するところを次の設例で見てみたい。 (※1) 増井良啓=宮崎裕子『国際租税法[第4版]』(東京大学出版会・2019年)167頁は、「立法政策論上、外国税額控除の控除限度額の定め方の類型としては、所得項目別にバスケットを設ける方式、国別に限度額を設ける方式、一括限度額を設ける方式などがある。米がバスケット方式を採用し、独が国別方式を採用するなど、立法例は分かれる。日本法は、昭和38年度改正で一括限度方式を採用し、その後もその基本線を維持してきた。」と述べている。 上記の金額を冒頭の計算式に当てはめると、同内国法人の控除限度額は90と計算されるが、実際の外国法人税の合計は80であるため、外国税額控除として控除可能な金額はあくまで80となる。 一方で、国別に見ていくと、A国は控除限度額が30であるのに対し、実際の外国法人税の額が50であるため、限度超過額が20発生している。B国は逆に、税額が0にも関わらず控除余裕額が30発生していることになっているので、全体で見ると、A国の限度超過額20が控除限度額計算において流用されてしまう結果となっている。 このことは控除余裕額の「彼此流用(ひしりゅうよう)」問題と呼ばれ(※2)、過去の数次の税制改正において、非課税国外所得に対する取扱いが段階的に改められ、平成23年12月の改正でその全額を国外所得金額から除外することとされた(法令142③④)(※3)。なお、ここでいう非課税国外所得の除外規定は法人税法に限られ、所得税法上の外国税額控除制度では導入されていない(所令222③)。 (※2) 増井=宮崎・前掲(※1)170頁参照 (※3) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)579頁参照 以下では、外国税額控除の控除余裕額の利用の是非が争われた、りそな銀行外国税額控除事件を取り上げる。   2 過去の裁判例 《【第一審】大阪地裁平成13年12月14日判決(平成9年(行ウ)第77号ないし第79号)》(※4) 《【控訴審】大阪高裁平成15年5月14日判決(平成14年(行コ)第10号)》(※5) 《【上告審】最高裁平成17年12月19日判決(平成15年(行ヒ)第215号)》(※6) (※4) TAINSコード:Z251-9035 (※5) TAINSコード:Z253-9341 (※6) TAINSコード:Z255-10240 (1) 事件の概要及び争点 ニュージーランド法人D社は、投資家から集めた資金をクック諸島(タックス・ヘイブン)に持ち込む際、ニュージーランド連結法人税の対象から除外する目的で、D社が28%を所有するクック諸島所在のC社(D社の連結除外)を経由して、当該資金を同諸島所在のB社(D社の100%子会社)において運用することとした。 しかし、C社からB社に直接に融資する場合には、クック諸島の税制により、その利息に15%の源泉税が課されるため、これを回避する目的で、内国法人X(原告・被控訴人・被上告人)のシンガポール支店をC社とB社の間に介在させることとした。すなわちXは、①B社に対し年利10.85%の利率で5,000万米ドルを貸し付ける(以下「本件ローン契約」という)。当該利息から15%の源泉税(以下「本件源泉税」という)が控除される。②C社から①と同額の預金を受け入れる(以下「本件預金契約」という)。預金利息は①の貸付金利息に本件源泉税を加算し、そこからXの手数料を控除して支払う、というものであった(以下「本件取引」という)(※7)。第一審判決文よりXの本件取引の収支を要約すると以下のとおりとなる。 (※7) 志賀櫻『タックス・ヘイブン』(岩波書店・2016年)94頁は、「要するに、ニュージーランドの旧属領であるクック諸島というタックス・ヘイブンにある貸付金利子に対する15%の源泉税を免れるためのスキームである。ここでは、同じくタックス・ヘイブンであるシンガポール支店に源泉税がないことを利用する。第三国間の取引の間に自行のシンガポール支店を割り込ませて、自行の外国税額控除の余裕枠でクック諸島の源泉税の肩代わりをしてやって、取引相手の税負担を減らすのである。」と述べている。 平成4年3月期を例にとると、Xは23,679千円の受取手数料を収受したが、本件源泉税の負担を差し引けば、86,430千円のマイナスとなる。しかし、仮に本件源泉税が我が国の外国税額控除制度により、全額控除可能であれば、その分我が国の法人税負担は少なくなるので、受取手数料相当額が手許に残ることとなる(※8)。 (※8) ただし、仮にXの国外源泉所得が当該受取手数料のみであれば、控除限度額は、同国外所得に実効税率を乗じた金額と等しくなるため、クック諸島源泉税の一部しか控除できなくなる。この点につき、岡村忠生「租税法規の限定解釈」『租税判例百選[第7版]』(有斐閣・2021年)40頁は、「日本の外国税額控除制度は、全ての国外源泉所得を合算して控除限度額を計算する一括限度額方式を採用しているので、他の国外源泉所得に対する外国税の実効税率が日本のそれより低ければ、控除限度額に余裕枠が生じる。この余裕枠を利用して、Xはクック諸島源泉税の全部を税額控除し、課税後においても純利益を得た。」と述べている。 Xは上記に従い確定申告を行ったが、所轄税務署長Y(被告・控訴人・上告人)は、本件取引に係る外国税額控除を否認する課税処分を行った。これを不服としてXは審査請求を経て出訴した。 本件の争点は、上記否認を前提とする各更正処分の適法性である。 (2) 裁判所の判断 ① 第一審及び控訴審の判断 ➤第一審 Yは、本件源泉税の発生の前提となる本件取引を、主位的には、私法上の法律構成による否認(※9)によって、予備的には、法人税法69条の限定解釈による否認によって否認し得ると主張した。 (※9) 第一審においてYが主張するように、「私法上の法律構成による否認とは、裁判所が私法上の当事者の真の意思を探求する形で事実認定を行い、その結果として課税が行われるもの」であり、「課税は、第一義的に私法の適用を受ける経済取引の存在を前提として行われるのであるから、私法上の法律構成においても、当事者間の表面的形式的合意にとらわれることなく、経済的実態を考慮して実質的に認定し、当事者が真に意図した私法上の法律構成による私法上の合意内容に基づいて課税を行うことになる。」とされる。 大阪地裁は、前者について、「当事者らは、所期の目的を達成するために、このような取引(筆者注:クック諸島源泉税を軽減する目的でXの外国税額控除の余裕枠を利用するために本件ローン契約・本件預金契約を締結したこと)の形式を選択し、それに応じた法的効果を意図してローン契約・預金契約を締結したのであって、当該法的形式と法的効果は一致しており、これをもって、仮装行為であると解することは困難である」とし、後者については、「取引各当事者に、税額控除の枠を利用すること以外におよそ事業目的がない場合や、それ以外の事業目的が極めて限局されたものである場合には、(法69条の)『納付することとなる場合』には当たらない」とし、「本件についてみると、C社には投資家から集めたNZドル資金をB社を通じて本件C/D購入資金(筆者注:集めた資金の運用先)に充てるという、事業目的があり、Xの有する控除枠を利用するのは、あくまでも、B社への投資の総合的コストを低下させるための手段と位置づけることが可能である。」と判示し、Yの主張を排斥してその処分を取り消した。 ➤控訴審 第二審においてYは、原審における予備的主張を補強し、本件取引は、Xが故意に二重課税を生じさせたものであり、外国税額控除制度の濫用事案であるから、同条の適用は否定されるべきであると主張した。 これに対し、大阪高裁は、「本件取引は、資金仲介機能を有するXが、顧客に対し金融サービスを提供すべく融資のための資金調達と調達した資金の運用をして自らも利ざやを確保するために外国税額控除枠の利用をも踏まえて検討のうえ実施したものであり、金融機関として採算のとれるものであって、Xに事業目的が認められるものである。本件において、外国税額控除枠を利用する以外におよそ事業目的がないとか、それ以外の事業目的が極めて限局されたものであるということはできない。」と判示し、Xが二重課税を生じさせたとの面はあるものの、本件取引が外国税額控除の制度を濫用したとまでいうことはできないとして原審を維持した。 ② 最高裁の判断 最高裁は、一転、原判決を破棄(第一審は取消し)し、本件外国法人税を外国税額控除の対象とすることは制度を濫用するものであり、税負担の公平を著しく害するものとして許されないと判示した。   3 検討 (1) 限定解釈の位置付け 本件は、租税法規の解釈において、限定解釈の途を拓いたものとして位置付けられる。限定解釈とは、通常の解釈方法によれば、規定された要件が満たされ、租税法上の利益(費用控除や税額控除など)が得られる場合に、その利益を与えないために要件規定を狭く限定して解釈することをいう(※10)。 (※10) 岡村・前掲(※8)41頁参照 本件で最高裁が与えないとした利益は、外国税額控除という租税減免措置であり、Xがそれを濫用したと判断したのである。この背景にあるのが、本件当時、外国税額控除を「悪用」する銀行はケシカラン、という感情論があり、最高裁裁判官の判断に一定の影響が及んだ可能性が指摘されている(※11)。このことは、本件についての本庄資教授の評釈「外国税額控除余裕枠の利用による租税回避事件に鉄槌を下した最高裁判決」(※12)というタイトルに象徴的に表れている。 (※11) 志賀・前掲(※7)95頁は、「多額の国費(国民の税金)を投入して救済された日本の金融機関(筆者注:90年代後半の日本長期信用銀行等の破綻による国有化を指しているものと思われる)が、手数料稼ぎのために国庫に納付すべき税金を他国に納付するなど許されるべきではない、というのが判決の真の理由であったらしい。」と述べている。 (※12) 「税経通信」(2006年6月号)25頁 ただし、むやみに限定解釈が認められるわけではなく、最高裁も、「本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用」されるという制度濫用の局面で初めて適用されるものであるとしており、金子宏教授も「法律上の根拠がない場合に否認を認める趣旨ではなく、外国税額控除制度の趣旨・目的にてらして規定の限定解釈を行った例であると理解しておきたい。」(※13)と述べている。 (※13) 金子・前掲(※3)141頁参照 一方で、租税回避行為の否認や本件のような租税減免規定に濫用の不許が問題となる事案では、租税法律主義を規定する憲法84条との整合性が問題となり得る。この点につき、最高裁の調査官解説(※14)では、「外国税額控除のような政策的な減免規定を法律で定めた場合に、その立法目的を逸脱する租税回避のみを目的とする行為をその適用範囲から除外するなど、適用要件を合目的的に限定解釈することは租税法律主義に反するものではない(下線筆者)」と述べている。 (※14) 杉原則彦「[時の判例]外国税額控除の余裕枠を利用して利益を得ようとする取引に基づいて生じた所得に対して課された外国法人税を法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)69条の定める外国税額控除の対象とすることが許されないとされた事例」ジュリストNo.1320(2006年)182頁参照 しかしながら、そもそも課税減免規定の濫用、または当規定によって付与される権利の濫用を禁止する規定は存在しないため、上記調査官解説の見解に異を唱える論者は少なくない(※15)。要は、租税回避行為に対応するためには、下記で述べる個別的否認規定を新たに設ける等の立法的解決が必要不可欠、ということであろう。 (※15) 例えば、谷口勢津夫『税法基本講義(第4版)』(弘文堂・2014年)76頁は、「租税法律主義の下でも不文の濫用禁止原則(括弧内略)が税法に内在すると考えることは、租税法律主義の自己否定である。」とさえ述べている。 (2) 課税問題の立法的解決 平成13年度の税制改正で、法人税法69条1項に「(内国法人が通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対する外国法人税を納付することとなる場合を除く。)」という文言が付加され、実際に外国法人税を納付した場合であっても、租税回避目的のために仕組まれた取引である場合には、外国税額控除が適用されないこととされ、本件のような事例に対処するための立法的な手当てがされた。   (了)

#No. 613(掲載号)
#霞 晴久
2025/04/03

リース会計基準を学ぶ 【第6回】「借手のリースの会計処理②」-借手のリース期間-

リース会計基準を学ぶ 【第6回】 「借手のリースの会計処理②」 -借手のリース期間-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 前回(第5回)に続き、借手のリースの会計処理について解説する。 今回は、借手のリース期間について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 借手のリース期間 1 リース期間 借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する「解約不能期間」に、次の①及び②の両方の期間を加えて決定する(リース会計基準15項、31項)。 イメージで示すと次のようになる。 借手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該権利は借手が利用可能なオプションとして、借手は借手のリース期間を決定するにあたってこれを考慮する(リース会計基準31項)。 貸手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該期間は、借手の解約不能期間に含まれる(リース会計基準31項)。 2 「合理的に確実」の用語 前述のように、借手のリース期間に関して、リース会計基準は「合理的に確実」の用語を用いており、「合理的に確実」は、蓋然性が相当程度高いことを示している(リース適用指針BC29項)。 これは、IFRS第16号の“reasonably certain”の用語であるが、同第16号では「合理的に確実」に関する具体的な閾値の記載はない(リース会計基準BC37項、リース適用指針BC29項)。 また、米国会計基準では、「合理的に確実」が高い閾値であることを記載した上で、米国会計基準の文脈として、発生する可能性の方が発生しない可能性より高いこと(more likely than not)よりは高いが、ほぼ確実(virtually certain)よりは低いであろうことが記載されているとのことである(リース適用指針BC29項)。 3 「合理的に確実」であるかどうかを判定するにあたっての経済的インセンティブ 借手は、借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが「合理的に確実」であるかどうかを判定するにあたって、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮する(リース適用指針17項)。 これには、例えば、次の要因が含まれる(リース適用指針17項)。 このため、借手のリース期間の決定に際しては、経営者の意図や見込みのみに基づく年数ではなく、借手が行使する経済的インセンティブを生じさせる要因に焦点を当てて決定されることになる(リース適用指針BC30項)。 例えば、借手が原資産を使用する期間が超長期となる可能性があると見込まれる場合であっても、借手のリース期間は必ずしもその超長期の期間となるわけではない(リース適用指針BC30項)。 借手のリース期間は、借手が延長オプションを行使する経済的インセンティブを有し、当該延長オプションを行使することが「合理的に確実」であるかどうかの判断の結果によることになる(リース適用指針BC30項)。 また、借手が特定の種類の資産を通常使用してきた過去の慣行及び経済的理由が、借手のオプションの行使可能性を評価する上で有用な情報を提供する可能性がある(リース適用指針BC33項)。 ただし、一概に過去の慣行に重きを置いてオプションの行使可能性を判断することを要求するものではなく、将来の見積りに焦点を当てる必要がある。「合理的に確実」であるかどうかの判断は、諸要因を総合的に勘案して行うことに留意する必要がある(リース適用指針BC33項)。 前述のとおり、「合理的に確実」の用語の説明はあるものの、それに関する具体的な閾値の記載はないこともあり、リース会計基準等の開発に際して、「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念が示されている(リース適用指針BC28項)。 実務上、借手のリース期間の決定に際しては、具体的な数値基準(例えば、可能性が○%である)を示すことは困難な場合が多いのではないかと思われ、リース適用指針17項の例示(上記①から⑤)などに基づき、具体的な判断の過程を文書化するなどにより対応することが考えられる。 4 リース物件における附属設備の耐用年数と借手のリース期間(不動産リース) 普通借地契約及び普通借家契約に係る借手のリース期間を判断することの困難さについては、実務上の判断に資するため、設例が設けられている(リース適用指針BC34項、[設例8-1]から[設例8-5])。 借手のリース期間を判断する際の思考プロセスが具体的に記載されており、リース会計基準を実務で適用するにあたって、非常に参考になるものと考えられる。 また、リース適用指針では、不動産リースに関する具体的な懸念として、リース物件における①附属設備の耐用年数や②資産計上された資産除去債務に対応する除去費用の償却期間と③借手のリース期間との整合性を考慮する場合、実務上の負荷が生じる可能性があると記載されている(リース適用指針BC28項(2)②)。 実務上、リース会計基準の適用に際しては、これら3つの要素の関係について整理する必要があると考えられる。 リース適用指針では、リース物件における「附属設備の耐用年数」と「借手のリース期間」の関係について、次のように記載されている(リース適用指針BC34項)。 特に、下記②における記載は、リース会計基準を実務で適用するにあたって、参考になるものと考えられる。   (了)

#No. 613(掲載号)
#阿部 光成
2025/04/03

決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第13回】「株主資本変動時の外形標準課税に注意」

◆◇◆◇◆ 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第13回】 「株主資本変動時の外形標準課税に注意」   公認会計士 石王丸 周夫   会計処理を間違う取引には、共通点があります。 その1つが「非資金取引」という性質です。 非資金取引とは、おカネの出入りを伴わない取引という意味です。 おカネの出入りを伴う取引の場合は、比較的容易に間違いに気づきます。帳簿に記録された取引の金額が実際の入出金額と異なれば、預金等について、帳簿残高と預金等残高(実際の残高)の不突合が生じるからです。 一方で、非資金取引にはそのようなチェックをする機会がありません。したがって、会計処理の誤りが起こりやすいといえます。 ところが、なかにはお金の出入りがあるにもかかわらず、間違ってしまう取引もあります。 今回取り上げるのは、そのような取引の1つです。 ではさっそく、訂正事例を見ていきましょう。   訂正事例の概要 過年度に納付した外形標準課税の金額が間違っていたため、決算短信等を訂正したという事例があります。 「外形標準課税」とは、事業税の付加価値割と資本割のことです。 その会計処理は、次のとおり定められています(企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」第10項)。 すなわち、その年度に対応する税額を、発生主義により販売費及び一般管理費に計上するというものです。 この会計処理自体は難しいものではありません。本事例でも、間違えたのは計上のタイミングや表示科目ではなく、金額そのものでした。 訂正事例の概要は、次のとおりです(訂正がなされた日の属する年度をX年度として、その前年度をX-1年度、さらにその前年度をX-2年度としています)。 【訂正前の連結損益計算書(一部)】 【訂正後の連結損益計算書(一部)】 訂正後の金額から訂正前の金額を差し引くと、X-1年度は-33,217円、X-2年度は-66,781千円となります。合計すると-99,998千円です。 この事例の企業(以下、A社という)の説明によると、上記誤りは税務調査で見つかったようです。そして、99百万円が還付される見込みとのことです。 「還付される」ということから、上記の計上誤りの金額は、納付済みだとわかります。 つまり、すでにおカネが出ていった取引です。 おカネの動きを伴う取引の場合、取引の当事者双方が金額の間違いに気づかなければ、誤処理は発覚しないというわけです。A社の説明では、3ヶ年にわたって過剰に納付していたといいます。その間、気づくことがありませんでした。 したがって、本事例には、誰もが見逃しやすい何かがあるはずです。 その点を学ぶ必要があります。   年次推移に異常がない A社の過年度の連結財務諸表等をザっと見ると、誤りに気づくことができなかったことについては、なんとなく思い当たります。 外形標準課税計上額の年次推移に異常がないのです。 有価証券報告書の個別財務諸表の注記に記載されている販売費及び一般管理費の事業税の金額を拾い出してみると、次のようになります。 4年間の金額の推移に、不自然な点はありません。誤計上があったのはX-3年度からX-1年度の3年間です。X-4年度は正しい金額です。X-3年度の金額をX-4年度と比較した場合、これも異常な変動がありません。 外形標準課税は、付加価値や資本金等の額に応じた税額なので、毎期大きく変動することはないと考えられ、前期比較で異常なしなら、誤りに気づかない可能性が高いといえます。 少なくとも、この推移のみで外形標準課税の過大計上を疑うという人は、まずいないでしょう。   原因は資本準備金の取崩しか? 人間なので、間違うことはあります。 気づくことができなかったことも、やむを得ないでしょう。 しかし、それはそれとして、計算を誤った原因はつかんでおきたいものです。 そのヒントとなるのは、間違いがいつから始まったかという点です。 A社は、X-3年度以降、継続して計算を間違っていましたが、それ以前には間違いが起きていませんでした。 つまり、X-3年度に何かが起きたと考えられます。外形標準課税の課税標準であるA社の付加価値か資本金等の額に、何らかの変化が起きた可能性があるという意味です。 そこで、過去の有価証券報告書を眺めてみると、X-3年度に、資本準備金を取り崩して、その他資本剰余金に振り替えていることがわかりました。金額は6,642,283千円です。直感的にですが、これが資本割の計算誤りに関係しているような気がします。 A社の公表資料からは、外形標準課税のうち、付加価値割と資本割のどちらで計算誤りがあったのかはわかりません。しかし、6,642,283千円に税率(A社の税務調査を行った税務署の所在県の税率0.5%)を掛けると33百万円となり、その3年分が99百万円になります。 A社が「過大に納付していた」といっている金額と同じになるのです。   開示前のチェックポイント 繰り返しになりますが、A社が具体的にどのように計算を誤ったのかは、明らかにされていません。資本割で間違えたのではないかというのも、筆者の推測にすぎません。したがって、資本割の詳細な計算方法については、本稿では立ち入らないこととします。 ただし、少し調べてみるだけでも、資本割の課税標準となる額の計算にあたっては、確認すべき事項がいくつかあるとわかります。全体像がわかりやすいウェブページとしては、たとえば下記の宮城県のウェブサイトがあります。 少なくとも、株主資本の額に大きな変動があった年度については、資本割の金額に影響がないかどうか重点的に確認するというのが、本事例から学べることではないでしょうか。 (了)

#No. 613(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/04/03

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第33回】「リユースショップ運営会社における架空買取と在庫偽装」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第33回】 「リユースショップ運営会社における架空買取と在庫偽装」   弁護士 原 正雄   BH社グループは、中古品の買取と販売を行うリユースショップの直営店舗の運営やフランチャイズシステムの運営を行っている。対象とする中古品は、書籍・ソフト等を始め、家電、アパレル、スポーツ用品、ベビー用品、腕時計・ブランドバッグ・貴金属、食器・雑貨等である。直営店舗数は387店、フランチャイズ加盟店舗数は368店である(2024年5月末日現在)。 2024年5月28日、店舗の1つで、アパレル在庫に約3,000万円の帳在差異があることが判明した。期末の実地棚卸結果を再点検したところ、別の店舗でも在庫不足と架空買取が判明し、さらに複数店舗で架空在庫計上の疑義が判明した。 このためBH社グループは同年6月25日、特別調査委員会を設置し、約4ヶ月後の同年10月15日に「調査報告書」を公表した。同報告書によれば、26店舗と1事業部で従業員による架空買取や架空在庫計上など29件の不正(合計8,328万8,453円分)が確認されたとのことであった。店舗間での連携は認められず組織的不正ではなかったようだが、チェック・モニタリング体制に不備があったと判断された。 そのため、同年11月12日、BH社グループは取締役会で再発防止策を決議するとともに、社長ら役員について業績連動報酬減額や報酬返上などの処分を決定し、公表した。 同報告書では様々な不正が報告されているが、本稿では、架空買取と、それを隠蔽しようとして行われた在庫不正に絞って、不正の手法と原因を論ずることにする。   1 架空買取の実態 調査報告書では、不正として架空買取が認定されている。架空買取とは、店舗の従業員において、買い取る商品が存在しないのに買い取ったことにして、代金相当額を着服する不正行為である。 (1) 商品買取の業務フロー BH社グループでは、買取は電子買取システムを通じて実施される。 その手順は以下のとおりである。 (2) 架空買取の手法 架空買取の手法は、以下のとおりである。 ① 本人確認 架空買取の行為者は、本人確認において架空人の情報を入力していた。また、システム上で既存顧客の情報を簡単に参照できたため、既存顧客の情報を無断で流用することもあった。さらに署名画面でも、行為者が当該顧客名で勝手にサインをしていた。 こうしたことが可能となったのは、本人確認書類について写し等の取得を求めず、提示で足りるとしていたことが原因である。そのため、BH社グループは、当該顧客が実在していないことや、実際には来店していないことを把握できなかった。 ② 商品の記録 架空買取の行為者は、レジカウンターで架空の商品データを記録していた。 こうした場合、事後点検で商品データが架空であると確認されるはずであった。しかし、BH社グループでは、事後点検を行為者自身が担当していたり、他の従業員が担当していた場合でも適正な調査が実施されていなかったりした。その結果、商品データが架空であることは確認されないままとなっていた。 ③ 精算 架空買取の行為者は、代金相当額を着服していた。 BH社グループでは、精算者分離の原則が徹底されておらず、査定者と精算者が同一であっても、システム上エラーとならず精算が可能とされていた。店舗によっては査定と精算の分離が難しい場合があるため、査定者による精算が許容される場合があったことが、その理由とされている。その結果、架空買取の行為者が1人で査定と精算の両方を行い、代金相当額を着服することができていた。なお、査定者と精算者が同一の場合、事後点検で警告表示されるが、事後点検が機能していなかったのは、上述のとおりである。 また、パートやアルバイトの従業員コードを借用していたケースもあった。その場合、パートやアルバイトを査定者や精算者として登録しつつ、実際の査定と精算は行為者が行っていた。他人の従業員コードの借用は禁止されていたが、一部店舗ではパートやアルバイトをレジに呼んで従業員コードを読み取るなどして借用する運用が、常態化していた。   2 棚卸偽装の実態 (1) 棚卸の実施と偽装の必要性 店舗では、四半期末ごとに棚卸が実施される。棚卸とは、商品の数量などを目視で確認する作業である(実地棚卸)。 棚卸の結果は、統合基幹系システムであるPOSシステムによって在庫データと照合される。棚卸で確認された商品数と帳簿(データ)上の商品数に差異(帳在差異)があれば、以下の情報を記載した一覧(棚卸差異一覧表)が表示される。 もっとも上述したとおり、一部店舗では架空買取などによって「商品が実在しないのにデータ上は存在する」という“帳在差異”が生じていた。棚卸を行うと、そうした帳在差異の存在が判明し、架空買取も発覚するはずであった。 ただし、BH社グループでは、棚卸の結果のシステムへの入力は店長などが1人で行うことができ、店舗外の者が監視する仕組みはなかった。そのため、店長などが自ら架空買取などを行っていた場合、帳在差異を隠蔽するため棚卸の結果とデータ上の商品数を一致させる偽装工作が行われることになった。棚卸偽装である。 (2) 棚卸偽装の手法 BH社グループにおける棚卸偽装の手法の一部を紹介すると、以下のとおりである。 ① 棚卸結果の修正-架空在庫の計上 帳在差異を隠蔽する方法の1つに、棚卸の結果を修正してしまう、という方法がある。棚卸の結果において商品数の水増し修正(架空在庫の計上)をすれば、データ上の商品数と一致するからである。 BH社グループでは、商品数の水増し修正(架空在庫の計上)は、POSシステムの「棚卸入力」の機能を用い、棚卸時に発行された棚卸差異一覧表に印字されたインストアコードをスキャンすることで、容易に架空の在庫計上ができていた。 こうした作業は単独で行うことができ、店舗外の第三者がチェックする仕組みはなかった。また、帳在差異を修正しても、POSシステムでは最終結果のデータしか保存されず、変更履歴は残らなかった。このため事後に架空在庫計上を疑っても、架空入力の形跡やログを追跡できなかった。 ② 現場の商品の偽装-架空ラベル貼替 帳在差異を隠蔽する方法の1つに、架空計上した在庫に相当する商品を作り出してしまう、という方法がある。そうすれば、棚卸の結果をデータ上の商品と一致させることができる。 例えば、高単価の商品は、値札ラベルを発行することで在庫管理が行われる。BH社グループでは、架空在庫に相当する値札ラベルを再発行し(架空買取の場合、買取処理時に発行済み)、当該ラベルのバーコードを読み取ることで、架空在庫を計上できていた。さらに当該ラベルを別の商品の値札ラベルと貼り替えることで、当該在庫が物として存在するよう偽装することもあった。 なお、値札ラベルを再発行したり、商品の値札ラベルを貼り替えたりする際、他の従業員(上長等を含む)がチェックするルールは定められていなかった。 ③ データ上の商品数の削減-廃棄処理の不正 店舗では、棚からあふれ出るなどして不要になった商品は、外部業者に回収させて廃棄する。廃棄後、POSシステムに廃棄登録を行うと、当該商品は在庫から抹消される。 BH社グループでは、この仕組みを悪用し、架空計上されていた商品についてシステム上で廃棄処理を行い、データ上から抹消していたケースがあった。 こうした廃棄登録は、店長の承認が必要とされていた。しかし、店長自身が廃棄登録をした場合は、他の従業員によるダブルチェックのルールは定められておらず、承認手続が形骸化していた。   3 全体的な原因 調査で判明した29件の不正は、その大半が直近数年内に発生しており、偶然とは考えづらい。BH社グループとして、不正への組織的対応が不十分であったと指摘できる。 BH社グループは、以前にも同種不正の報告を受けたことがあった。取締役会・監査等委員会・内部監査報告会では、再発防止について相当程度の議論をしてきたようである。 しかし、取締役会等には、同種の不正が再発しないよう店舗横断的に防止策を考えるという視点が欠けていた。 例えばBH社グループでは、2017年にも架空在庫の計上が発覚しており、架空在庫の計上というリスクは、その時点で既に明らかであった。しかし、取締役会等が、架空在庫の計上を防止するための店舗横断的な再発防止策を講じることはなかった。 また、取締役会等が再発防止策を定めた後において、当該再発防止策が機能しているかという確認(フォローアップ)が不十分であった。 例えばBH社グループでは、2016年にも架空取引が行われていたことが発覚している。架空買取というリスクは、その時点で既に明らかであった。そこで同社は、架空買取を防止するため「精算者分離の原則」を定めた。しかし、精算者分離は機能せず、その後、何度も不正が再発した。 取締役会等が、その点を把握して改善に取り組んだ様子はうかがえない。   4 本件からの学び 架空買取や棚卸偽装のリスクは、ビジネスの仕組みそのものに内在している。それらの不正がたまたま1か所で1人の担当者により実行されたというケースは稀であり、1件の不正が発覚すれば、同種事案は他にも複数存在すると考えるべきである。 しかし、BH社グループでは、2016年や2017年の不正発覚時点において、そうした考えを十分持つことができなかった。そのため、今回の多数の不正につながったといえる。 他方で、BH社グループは今回、適正な問題意識を持つことができた。同社では徹底的な調査と再発防止策の検討を行っている。今後はこれらの不正が再発しない会社になることを期待したい。 皆さんの会社でも、何らかの不祥事が起こることは当然あり得る。そうした場合、「たまたま例外的事象が起こった」と考えるのではなく、同種事案が職場横断的に生じていないかを検証すべきである。 自社の不祥事を分析することは辛いものだが、そうした事案をリスクマネジメントにおける最大の教科書として受け止め、さらに良い会社にすべき努力をしていくことが求められよう。 (了)

#No. 613(掲載号)
#原 正雄
2025/04/03
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