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《速報解説》 サステナビリティ情報の保証業務の範囲拡大等に伴い、会計士協会が「監査事務所における品質管理」及び「監査業務に係る審査」に係る報告書を改正

《速報解説》 サステナビリティ情報の保証業務の範囲拡大等に伴い、 会計士協会が「監査事務所における品質管理」及び「監査業務に係る審査」に係る報告書を改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年3月18日付けで(ホームページ掲載日は2026年3月23日)、日本公認会計士協会は、「品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」及び品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」の改正」を公表した。これにより、2025年12月16日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」の公表及び国際監査・保証基準審議会(International Auditing and Assurance Standards Board:IAASB)から「IESBA 倫理規程の改訂に伴うISQM、ISA及びISRE 2400(改訂)の狭い範囲の改訂」が公表されたことに伴うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ サステナビリティ情報の保証業務に範囲を拡大するための改正 対象範囲に、サステナビリティ情報の保証業務を加える。 従来、「監査事務所」としていた記載を「事務所」と記載するなどの改正を行う。   Ⅲ 倫理規程改訂に伴う狭い範囲での改訂を受けた改正 品質管理基準報告書第1号において公に取引されている事業体(Publicly Traded Entity)の定義の追加、品基報の適用指針における上場企業の用語を公に取引されている事業体の用語への修正などを行う。   Ⅳ 適用時期等 2027年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査並びに2027年4月1日以後開始する期間を対象としたサステナビリティ情報に対する保証業務又は2027年4月1日以後の特定の日付時点のサステナビリティ情報に対する保証業務から適用する。 ただし、サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」(2026年3月18日公表)を早期適用する場合には、併せて本報告書を早期適用する。 (了)

#阿部 光成
2026/03/23

《速報解説》 日本証券業協会、「新規上場時の会計不正事例を踏まえた引受審査に関するガイドライン」を公表~主幹事証券会社に不正リスクに応じた確認等への一層の留意求める~

 《速報解説》 日本証券業協会、「新規上場時の会計不正事例を踏まえた引受審査に関するガイドライン」を公表 ~主幹事証券会社に不正リスクに応じた確認等への一層の留意求める~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   日本証券業協会は、2026年3月19日、「新規上場時の会計不正事例を踏まえた引受審査に関するガイドライン」を策定したことを公表した。 協会のリリースでは、「昨今、新規上場時の発行者による会計不正の事例が顕在化する事例が見られることを踏まえ、主幹事会員における適切な引受審査機能の発揮のため、主幹事会員が引受審査業務を実施するに当たって特に留意すべき事項を定めた」ガイドラインであると説明され、オルツ社による架空循環取引の手法を用いた会計不正事件によって低下したIPO市場の信頼性を回復するとともに、監査法人・証券会社への社会的批判の高まりに対応して、市場の信頼性回復を企図したものであることが読み取れる。 本稿では、本ガイドラインの内容を概説するとともに、主幹事証券会社が本ガイドラインを遵守することに伴い、新規上場を目指す会社が留意すべきポイントについても検討している。   主幹事証券会社が引受審査業務を実施するに当たって特に留意すべき事項 ガイドラインでは、「はじめに」として、主幹事証券会社は、IPOのゲートキーパーとして、不正を見逃さない強い姿勢と実効的な審査を行うべきであるという視点から、以下のように、特に留意すべき事項を定めている。   1 不正リスクに応じた確認等 (1) 循環取引等の発生リスクを踏まえた、仕入先・販売先・外注先及び広告宣伝の状況の確認 ガイドラインでは、主幹事証券会社の役割として、主幹事会社は、発行者の最近3年間の主要な仕入先・販売先・外注先における上位5社程度の実績について確認するほか、仕入・販売・外注の数量や金額の数値等に重要な変動がある場合にはその理由も確認することを求めるとともに、仕入・販売・外注金額の比率が10%以上を占める相手先については、取引開始の経緯、継続的な取引(比率)の方針や、継続的に取引を実現するための方策も確認するとともに、必要に応じて、主要な仕入先・販売先・外注先に対して直接確認することとしている。 また、主幹事証券会社は、仕入・販売金額の50%以上が代理店を介した取引である場合にあっては、実質的な仕入先・販売先の状況を確認するだけでなく、必要に応じて、代理店及び実質的な仕入先・販売先に対して直接確認することを求めている。 いずれも、主幹事証券会社には、形式的なチェックではなく、実質を見抜く審査を行うことを求める内容であり、取引先の実態確認を求めるものとなっている。 (2) 監査法人が交代している場合における前任監査法人に対する交代経緯等の確認等 ガイドラインでは、主幹事証券会社に対して、監査法人の交代の事実を知ったときは、発行者に対し交代の理由を確認し、確認の内容の合理性について十分に検討するとともに、最近3年間に監査法人が交代した場合には、前任監査法人に直接ヒアリングをすることにより交代した理由を確認するとともに、確認の内容の合理性について十分に検討することを求めている。 (3) 経営者の資質や引受審査に際しての発行者の対応等に関して懸念が想起される場合におけるヒアリング等 ガイドラインでは、主幹事証券会社に対して、発行者の経営者の資質や対応等に関して懸念が想起される場合又は管理担当役員、財務担当役員、監査役等のうち常勤である者等が交代しており、交代経緯について懸念がある場合には、不正リスクに留意して、経営者等又は関係部署の職員等へのヒアリング又は調査を実施し、結果について十分に検討することを求めている。   2 内部通報体制の適切な整備状況等の確認及び不正等に関する情報への対応 (1) 発行者における内部通報体制の整備状況の確認 ガイドラインでは、主幹事証券会社の役割として、発行者において、社内の通報窓口のほか経営者から独立した通報窓口の設置状況、通報受領後のフロー、内部通報制度を有効に機能させるための取組み、役職員への周知方法及び当該制度の利用を促進する施策があればそれらの内容を確認するとともに、最近2年間及び申請事業年度の通報件数、通報内容及び対応状況を確認することを挙げている。 (2) 通報窓口の周知状況の確認等 ガイドラインでは、主幹事証券会社に対して、金融商品取引所の通報窓口の存在について、発行者が自社の役職員に対して、周知をしているか確認するとともに、発行者が周知をしていない場合には、その理由を確認し、理由に合理性が認められない場合には、発行者に対して周知を要請することを求めている。 (3) 不正等に関する情報への対応 主幹事証券会社は、金融商品取引所の通報窓口を通じて情報を受領した場合及びその他不正等に関する情報を受領した場合には、情報を確認するとともに、確認の内容の合理性について十分に検討して、必要な対応を行う必要がある。   3 代表取締役社長等、監査役等、独立役員への確認 ガイドラインでは、主幹事証券会社に対して、代表取締役社長等の経営トップに対して、上場会社となった際の投資者(株主)への対応、コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスに対する方針・現状の体制及び運用状況、適時開示に関する体制及び内部情報管理に関する体制等について確認することを求めるとともに、常勤である監査役等に対して実施している監査の状況や発行者の抱える課題等について確認することを求めている。 さらに、独立役員に対しても、コーポレート・ガバナンスに対する方針・現状の体制及び運用状況、経営者や職員のコンプライアンスに対する意識、独立役員の職務遂行のための環境整備の状況などを確認することを求めている。   本ガイドラインを踏まえて、新規上場を検討する会社が留意すべき事項 本ガイドラインを会社側の視点から見ると、「実態に基づいた透明性の高い経営と有効なガバナンス体制を整えておくこと」と要約できる。 以下、主幹事証券会社による引受審査をスムーズに進めるための対策について検討する。   1 取引の実態を説明できる状態にしておく 引受審査にあたり、会社側としては、主要取引先の選定理由、取引開始の経緯、取引量・金額の変動理由、代理店を使う場合の「実質的な取引先」まで説明できる資料を整理しておく必要があるとともに、循環取引や架空取引を疑われないためには、「なぜその取引が必要なのか」を説明できることが必要となる。   2 監査法人との関係を透明にしておく 監査法人の交代は、引受審査で問題となるポイントの一つであることから、会社側は、監査法人の交代理由を客観的に説明できる資料、前任監査法人とのやり取りの記録、監査上の指摘事項とその改善状況などを準備するとともに、ガイドラインでは「前任監査法人に直接ヒアリングする」ことが明記されているため、会社側の説明と前任監査法人の説明が一致していることが重要となる。   3 経営者・管理部門のガバナンス強化 経営者の姿勢や対応は、引受審査で重視される要素であり、会社側には、経営者が審査質問に誠実・迅速に回答すること、SNSやメディアで不適切な発信をしないこと、管理部門の人材を安定させること、管理担当役員の交代理由を明確に説明できることが求められる。   4 有効な内部通報制度の整備 ガイドラインでは内部通報制度が重視されていることから、会社側としては、社内窓口と外部窓口の両方を設置すること、通報後の調査・是正・再発防止のプロセスを文書化すること、通報者保護のルールを明確化し、通報制度の社員への周知、過去の通報内容と対応した履歴の整理が必要になるとともに、金融商品取引所の通報窓口を社員に周知しておくことは、見落とされがちなポイントであると考えられるので、社員への周知が求められている。   5 取締役会・監査役・独立役員の機能強化 会社側としては、取締役会での議論内容を適切に記録することによって、独立役員が実質的に機能しており、経営者への牽制機能が働いていることを説明するとともに、監査役が十分な情報を得て監査できていることを監査調書などにより明らかにすることが求められている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#米澤 勝
2026/03/23

プロフェッションジャーナル No.661が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年3月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.661を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/03/19

日本の企業税制 【第149回】「設備投資と研究開発投資の加速化」

日本の企業税制 【第149回】 「設備投資と研究開発投資の加速化」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博   政府は、3月6日に「経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」を、3月13日に「産業技術力強化法の一部を改正する法律案」を、それぞれ閣議決定して同日に国会に提出した。 前者については、国際経済事情の変化、資源価格の変動等による物価の継続的な上昇、人口減少や少子高齢化等の経済社会情勢が変化する中、わが国の産業競争力の一層の強化を図る必要性が高まっていることが背景にある。そのために企業の事業活動を持続的に発展させることが重要となっていることから、国内投資の促進による事業の高付加価値化と、海外需要開拓や安定的な原材料の確保を通じた供給網の強靱化を推し進めるとともに、事業活動の基盤となる産業用地の整備や担い手の確保に資する生活基盤の維持を図るために一体的に支援措置を講じるものである。 後者については、産業技術に関する研究開発を推進するため、重点産業技術の指定、事業者による重点産業技術の研究開発に関する計画認定制度や当該技術について共同研究開発する体制がある研究開発機関の認定制度の創設、認定を受けた事業者・研究開発機関に対する支援措置等を講じるものである。 法改正によって、民間による設備投資や研究開発投資といった成長投資の加速化が期待される。   〇 産業競争力強化法の改正 税制措置や金融支援で国内成長投資を促進し、事業適応計画認定制度に新類型を創設することで国際経済の急変やコスト上昇に対応するほか、産業用地の確保・整備を進め、貿易保険を供給網強靱化対応に拡張するといった一体的な政策となっている。   1 「大胆な投資促進税制」による国内成長投資の促進 租税特別措置法に基づく特例として、令和8年度税制改正大綱に盛り込まれた原則全業種を対象にした即時償却又は税額控除7%等を措置する「大胆な投資促進税制」の対象となる、①投資利益率15%以上、②投資規模35億円(中小企業等については5億円)以上等の要件を満たす「特定生産性向上設備等」が定義される。令和11年3月31日までに投資計画の確認を受けた者が、確認を受けた日から5年の間に取得等をして事業の用に供した「機械及び装置、建物、建物付属設備、構築物、器具備品、工具、ソフトウェア」が対象となる。 また、税額控除の繰越の対象となる計画類型として、予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応して行う「国際経済事情激変事業適応」が事業適応計画認定制度の新類型として設けられる。   2 事業適応計画認定制度の新類型の創設 産業競争力強化法に定める事業適応の類型として、上述の①予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応して行う「国際経済事情激変事業適応」、②事業に要する費用の上昇による事業環境の変化に対応して行う「事業費上昇事業適応」が追加される。認定を受けた事業適応計画に従って行う設備投資については、日本政策金融公庫のツーステップローンや中小企業基盤整備機構の債務保証、社債管理者の設置義務の緩和といった金融支援が措置される。   3 産業の担い手の確保に資する生活基盤の維持のための計画認定制度の創設 生活の維持に必要な物品の販売、交通、ガソリンスタンド、自動車整備等の役務の需要減少や供給不足に対応するために、事業の合理化・多角化・広域化といった効率化によって採算性向上を図る計画として、「生活維持物品役務需要減等事業適応」が新設される。主務大臣が実施指針を策定し、事業者が申請した計画を行政庁(市町村長、都道府県知事又は主務大臣)が認定する仕組みとなる。認定を受けた計画に従って行う事業については、次の特例措置等が講じられる。 ①金融支援 信用補完、公庫の低利融資、中小機構等の債務保証 ②事業円滑化 生協の員外利用許可と事業計画の認定手続のワンストップ化 地方公務員が参画する事業計画における兼業許可権者との事前協議 ③組織変更等 事業協同組合等の設立要件の緩和(発起人数:4人→3人) 事業譲渡の債権者承認手続の簡素化 等 そのほか、商工団体、地域金融、生協、農協等の協同組合、産業・職能別団体等を事業効率化の計画策定・伴走や情報提供等を実施する支援機関として認定する制度が新設されるとともに、都道府県及び市町村が当該機関等から構成される協議会を組織することができるよう措置される。 加えて、「経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」では、「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」及び「貿易保険法」についても併せて改正されて一体としての支援策が講じられる。前者については、産業用地確保のための既存用地の条件改善と産業用地整備に係る計画承認制度の創設が、後者については、株式会社日本貿易保険における特定引受業務の創設と特別勘定及び国債の交付等に係る措置の創設が講じられる。   〇 産業技術力強化法の改正 税制措置や行政手続きの効率化、規制改革といった次のような支援策を講じることで、産業技術に関する研究開発の推進が図られる政策となっている。   1 重点産業技術の指定 産業技術について、当該産業技術に関する研究及び開発の成果が多様な事業活動において利用される見込みや当該産業技術の革新性を勘案し、わが国の産業技術力の強化のために当該産業技術に関する研究及び開発を重点的に推進することが必要と認められるときは、政令で、当該産業技術を「重点産業技術」として指定することとなる。具体的な革新的技術としては、AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙が支援すべき技術として指定されることが考えられている。   2 事業者の研究開発計画の認定や研究開発機関の認定 事業者は、支援措置を受ける前提として、重点産業技術に関する研究開発計画の認定を受けるほか、研究開発機関(大学や国研等)は、重点産業技術の研究開発に必要な知識や技術を有する人材、実施体制、設備等が確保されている拠点を持つことの認定を受けることができるようになる。また、認定された拠点は公表され、事業者との共同研究開発実施が促進される。   3 重点産業技術に関する研究開発を推進するための措置 計画認定を受けた事業者は①から④の、認定された研究開発機関は④の支援措置が受けられる。 ① 研究開発税制のメリハリの効いた強化 研究開発税制に「戦略技術領域型」(「大学拠点等強化類型」を含む)が創設される。認定を受けた事業者の研究開発については、その試験研究費の40%を法人税額から控除できる。当該事業者が認定を受けた研究開発機関と共同・委託研究開発する場合は、その試験研究費の50%を法人税額から控除できる。 ② 補助金等交付財産の処分の制限に係る承認手続の特例 事業者や研究開発機関が、補助金等で取得していた既存の設備を、別の研究開発に転用する際、補助金等を交付した大臣へ転用承認の申請(所管大臣が異なる場合、本来は各大臣に申請)が必要になるが、この承認申請を本法案に基づく計画認定申請と一括で行えるようにし、手続負担の軽減と計画実施の迅速化を図る。 ③ 規制改革の円滑化 新しい技術の社会実装に向け、実証により得られたデータを用いて規制の見直しにつなげていく「規制のサンドボックス制度」を認定事業者が利用する際、経済産業大臣から規制担当大臣・事業所管大臣に対して本法案上の認定プロセスで得た情報を提供し、判断に必要な情報を充実させる。 ④ NEDOの行う助言やJSTによる情報提供 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)による民間における研究開発の実施に関する助言やJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)による重点産業技術に関する情報提供を行う。   4 重点産業技術の国等の委託研究の成果に係る特許権等について利用を促す措置 政府資金を供与して行っている委託研究開発に係る特許権等を受託者に帰属させることができる「日本版バイ・ドール制度」において、当該特許権等が重点産業技術に関するものである場合は、受託者が当該特許権等を正当な理由なく相当期間利用していない際、迅速な利用を促すこととなる。   (了)

#No. 661(掲載号)
#魚住 康博
2026/03/19

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第79回】「定期同額給与と会計処理」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第79回】 「定期同額給与と会計処理」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 役員給与と会計処理等 会社法においては、役員報酬は「報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益」とされており(会社法361条)、その額は定款又は株主総会の決議によって定めるものとされている。このうち、毎月発生するものは、会計上において発生期間に応じて費用処理されていくこととなり、一般的にはこれが税務上の定期同額給与に該当する。 そして、本連載各所で触れてきたとおり、税務上の定期同額給与については、「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」に支給することが必要となる(法法34①一)。具体的には「あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるもの」が、定期同額給与に該当することとなる(法基通9-2-12)。 なお、ここでの「支給」は、債務確定主義に基づくことが通説的見解であるため、短期間かつ合理的な理由があれば未払金計上も認められており、必ずしも実際のキャッシュアウトが必要というわけではない。つまり、定期同額給与については、議事録等を整備し、対象者ごとに毎月給与計算を行った上で適切に経理処理をしていれば、不相当に高額とされない限り、実務上問題となることは通常ないと考えられる。 しかし、議事録等を備えず、毎月の給与計算を行わないばかりか、実際の支給や未払金計上も行わず、期末の試算表に役員報酬として一括記載、定期同額給与に該当すると納税者が主張したものの、その主張が退けられた事例がある。実務上参考となる事例として、以下にその概要を紹介する。   (2) 役員給与の額1年分を一括経理したところ定期同額給与に該当しないとされた事例 このように示された事例として、国税不服審判所平成29年8月4日裁決がある(※)。 (※) 裁決事例集等未登載、TAINS:F0-2-777。 納税者は、本件各取締役に対する支給実績に係る銀行口座の動きがないことから、「本件各取締役と本件代表者間で金銭貸借をし、さらに本件代表者と請求人間で同様の金銭貸借をするスキームで資金を還流させていた」と主張し、毎月支給はしていたものの本件各取締役への銀行振込等を省略していたこと、そして試算表への記載が年度末の合計一括記載としていたのは便宜上のものである旨を主張した。 これに対し、課税庁側は、株主総会等の開催事実が認められないこと、請求人の代表者や従業員は毎月給与計算を行っていたことを示す各書面があるにもかかわらず、本件各取締役に関する部分が存在しないこと、本件各取締役については年度末に一括して明細書が作成されているため毎月の支払いの事実が認められないこと等を主張している。 国税不服審判所は、課税庁の主張を認めた上で、「請求人は、・・・総勘定元帳あるいは仕訳帳などの帳簿を作成していない上、・・・本件各試算表には資産及び負債に係る記載もないことからすれば、本件各役員給与額の支払及び未払の事実を確認することができない」と示している。   (3) 本件裁決例の意義 本件裁決例は、管理や経理処理が著しく不十分な状況であれば定期同額給与該当性が否定され得ることを示した、他山の石とすべき事例であるといえる。なお、総勘定元帳や仕訳帳が未作成であるならば青色申告の有効性への疑義が生じるところでもあるが、本件では、役員給与における定期同額給与の該当性が争点となっている。 本件裁決例においては、納税者が本件各役員給与額の支給時期が1月以下の一定の期間であったことを主張する証拠がなかったと思われるため、上記(2)の通りの主張を行った。これに対し、国税不服審判所は、支払いの事実も未払いの事実も認められないとしている。 この点は、当該役員に対する報酬を1月以下の一定期間ごとに支払った、または支払うべき事実があったのかどうかということに留意して定期同額給与への該当性を判断すべきことを示唆するものであると思われる。付言すれば、単に会計上において毎月未払金として計上しておきさえすればそのすべてが定期同額給与に該当するというわけではなく、支払うべき事実があると認識した上でやむを得ず未払となっている等の事情は確認する必要があるだろう。 (了)

#No. 661(掲載号)
#中尾 隼大
2026/03/19

相続税の実務問答 【第117回】「相続時精算課税を適用した財産の評価額が誤っていた場合の相続税の申告」

相続税の実務問答 【第117回】 「相続時精算課税を適用した財産の評価額が誤っていた場合の相続税の申告」   税理士 梶野 研二   [答] 贈与税の申告書に記載した財産の価額に過大評価などの誤りがあった場合において、更正の請求等によりその贈与税の課税価格や税額の是正がされなかったとしても、相続税の課税価格の計算において加算する贈与財産の価額は、贈与税の申告書に記載した価額にかかわらず、正しい評価額となります。 ただし、贈与税の申告書に記載した価額は、納税者として正しい評価額であると考えて記載したものであると推定できますし、贈与時から長期間が経過した現時点で、申告書に記載した評価額とは異なる価額が適正な評価額であると合理的に説明することは困難な場合が多いと思います。 広大地評価通達の適用が問題となるお尋ねのケースでは、仮に広大地評価通達を適用して評価した価額を相続税の課税価格に加算する金額とする相続税の申告を行ったとしても、具体的な根拠を示し、説得力のある説明を準備できない限り、否認されるリスクが高いといえます。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の課税価格に加算する価額 相続時精算課税に係る贈与者に相続が開始した場合の相続税の計算において、相続時精算課税を適用した財産の価額を相続税の課税価格に加算(特定贈与者から財産を相続又は遺贈により取得した場合)、又は算入(特定贈与者から財産を相続又は遺贈により取得しなかった場合)しなければなりません(相法21の15①、21の16①)。 相続税の課税価格に加算又は算入する相続時精算課税を適用した財産の価額は、相続開始時におけるその財産の状態にかかわらず、その財産の贈与の時における価額となります(相法21の15①、21の16③、相基通21の15-2)。 例えば、相続時精算課税を適用した財産である建物が老朽化して価値のないものとなったとしても、あるいは贈与を受けた株式の価額が下落したとしても、相続税の課税価格に加算又は算入する財産の価額はそのような贈与後に生じた事情に関わりなくその財産の贈与を受けた時の価額となります。 また、相続時精算課税に係る贈与税の申告において、贈与を受けた財産の価額を過大に評価し、又は過少に評価していた場合、相続税の課税価格に加算又は算入する財産の価額は、贈与税の申告書に記載した評価額にかかわらずその財産の贈与を受けた時の価額となります。 贈与税の課税処分の除斥期間内(一般的には、贈与税の申告期限から6年(相法37①))に過大評価又は過小評価の事実が判明した場合には、修正申告や更正の請求により、又は当局の職権による更正処分により正しい評価額に基づいた贈与税課税に是正することができ、その是正をした結果により、贈与者に相続が開始した場合の相続税の課税価格の計算がされることとなります。 一方、贈与税の課税処分の除斥期間が徒過した後に贈与者に相続が開始し、相続税の申告準備の中で、贈与税の課税価格の計算における財産の価額に誤りがあることが判明したような場合、もはや贈与税の是正をすることはできませんが、このことによって相続税の課税価格に加算又は算入する贈与財産の価額までが、贈与税の申告書に記載した贈与財産の価額に固定されてしまうわけではありません。   2 相続税の申告において贈与財産の価額を見直すこと 上記1のとおり、相続税の課税価格に加算又は算入する相続時精算課税に係る財産の価額は、贈与税の申告書に記載した金額に固定されるわけではありません。しかしながら、贈与税の申告における価額は、納税者において贈与財産の適正な価額と判断したことを前提として計算したものであり、その価額は、特段の事情がない限り、適正なものと推定することができます。ですから、贈与税の申告における価額とは異なる価額をもって、相続税の課税価格に加算又は算入する贈与財産の価額とすることは、その推定を打ち破るほどの確かな裏付けが必要となるといえます。 贈与の時から相続税の申告の時までの期間が長期となる場合、贈与財産の価額を明らかにすることができる資料は散逸し、相続時精算課税適用者の記憶も薄れてしまっていることなども考え合わせると、贈与税の申告書に記載した贈与財産の価額とは異なる価額を相続税の課税価格に加算又は算入することは難しい場合が少なくないと考えられます。   3 いわゆる広大地評価通達 いわゆる広大地評価通達(平成29年9月20日付課評2-46ほかによる改正前の財産評価基本通達24-4)とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地(広大地)について、その広大地が路線価地域内に所在する場合には、その広大地の面する路線の路線価に一定の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した金額によって評価するとする評価上の取扱いです。 この広大地評価通達を適用するためには、①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地であること、②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められること、③中高層の集合住宅等の敷地に適している宅地(いわゆるマンション適地)ではないことなどの点についての判断が必要でしたが、これらの判断が難しいとの指摘もあり、この通達は平成29年までの課税事案をもって廃止され、この扱いに代わるものとして、「地積規模の大きな宅地」の評価方法が財産評価基本通達20-2に定められ、平成30年以降の課税事案に適用されることとなりました。 広大地通達を適用することができるかどうかの判断に当たっては、その評価対象地の形状、接道状況、有効利用方法、近隣の開発の状況、開発に係る法令等の規制などを確認する必要がありますが、このような観点の確認は、評価時点(贈与時)から時の経過が進むとともに困難となります。   4 質問の場合 昨年、お父様がお亡くなりになられたとのことですので、お父様から贈与を受けた財産で相続時精算課税の適用を受けたものについては、その財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません。通常は、贈与税の申告書に記載した金額が、贈与を受けた時の価額であると認められますから、その金額を相続税の課税価格に加算することとなります。ただし、贈与税の申告書に記載した金額が誤ったものである場合には、適正に評価した価額を加算することとなります。 あなたは、お父様から贈与を受けた宅地について広大地評価通達を適用することができたのではないかとお考えのようです。その宅地について通達を適用することができたということであれば、相続税の申告に当たり課税価格に加算する当該宅地の価額は同通達を適用した後の金額となります。 しかしながら、上記3で述べたように、広大地評価通達を適用することができる要件を満たすかどうかの判断は、容易ではない場合もあり、専門家である税理士や税務当局の職員によっても判断が分かれるケースも珍しくありませんでした。 贈与を受けた当時において広大地評価通達を適用することができるかどうかの判断が困難であったとすれば、贈与を受けた時から10年以上が経過した現時点においてその判断を行うことは、さらに困難なものとなります。特段の事情がない限り、あなたの贈与税の申告において広大地評価通達を適用しなかったのは、当時のあなた又はあなたから委任を受けた税理士が広大地評価通達を適用することはできないと判断した結果であると推定されます。 したがって、相続税の申告におけるあなたの主張が認められなかった場合のリスクをも勘案して、相当程度確実な説明が準備できるかどうかにより、今回の相続税の課税価格に加算する贈与時の価額を決めるべきであると考えます。 (了)

#No. 661(掲載号)
#梶野 研二
2026/03/19

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第92回】「日星両国の複数法人代表の居住者該当性が争われた事例(東地令5.4.12)(その1)」~所得税法2条1項3号~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第92回】 「日星両国の複数法人代表の居住者該当性が争われた事例 (東地令5.4.12)(その1)」 ~所得税法2条1項3号~   税理士 大野 道千     1 判例 (1) 当事者等 (2) 事実の概要 原告会社及びその代表者である原告Xが、平成25年5月24日に、同月30日(以下「本件転出日」という)をもって東京都江戸川区(以下「本件転出前住所登録地」という)からシンガポール共和国(以下「シンガポール」という)へ転出する旨の届出(以下「本件届出」という)をし、原告Xが平成25年(本件転出日後)から平成27年において所得税法2条1項3号が定める「居住者」に該当するとしてされた原告更正処分等及び原告賦課決定処分並びに平成25年6月分から平成27年12月分までの原告会社納税告知処分等及び原告会社賦課決定処分等を違法として取消しを求めた事案。 【出国日等】 【滞在日数】 (※) 品川芳宣「所得税法における「居住者」と「非居住者」の区分~「住所」の認定~」T&A master(2024年2月19日号・No.1015)より引用 【住居・居住の所在】 物件名 所在 裁判所の判断 1 □□物件B2902号室 日本 ・定期建物賃貸借契約において、No.2□□物件B3301号室と不可分一体とする旨の特約が付されていた。 ・その大部分がゴルフ道具や衣装等を保管する倉庫としての使用。 ・ベッド、トイレ、風呂等の生活に必要な設備等は備えられていた。 ・日常生活に必要な衣服等もある程度は保管されていたことがうかがえるから、継続的な生活を送るための住居といえる程度の実体が最低限あったことは否定し難い。 ・賃料115万円/月 ・入居者の欄に原告の名前の記載あり。 2 □□物件B3301号室 日本 3 □□物件E302号室 日本 4 □□物件W1109号室 日本 5 汐留物件204号室 日本 6 芝大門物件301号室 日本 7 オーチャード物件 シンガポール 〈平成25年:シンガポール申告書記載の住所地〉 オーダーメイド家具や衣服等が十分に備えられていた。 8 コーヴウェイ物件 シンガポール 〈平成26年・平成27年:シンガポール申告書記載の住所地〉 オーダーメイド家具や衣服等が十分に備えられていた。 【職業の状況】 日本での職業の状況 シンガポールでの職業の状況 (平成25年及び平成26年) ・多額の役員報酬 ・毎月帰国し、業務関係者等との飲食、ゴルフ番組の収録等をしていた。 ・代表取締役等の地位にある原告元代表者の国内で従事すべき業務は限定的で、最終的な意思決定は担当者等による口頭等での説明を受けて追認等をする程度のものであった。 (平成25年及び平成26年) ・原告元代表者は、シンガポールにワイン事業の商機を見出し、同国には世界的なハブ空港があり、仕入れ等の際の利便性が高く、ワインの輸送に便利な港湾も整備されていたことなどから、O社を設立してワイン事業を始めた。 ・設立したばかりで、十分な従業員等がおらず、シンガポールでの事業経験等もなかったことから、シンガポールのワイン業界における人脈の構築や情報収集、仕入先との交渉や営業活動、第三国へ渡航しての仕入れ等を原告元代表者が自ら行っていた。 ・その結果、仕入本数等が増加し、平成25年が1社であったのに対し、平成26年は6社に仕入先が増加した。 ・原告元代表者は、シンガポールに滞在中、専らO社のワイン事業に従事しており、その業務の内容等に鑑みても、自らシンガポールに滞在する必要性があった。 (平成27年) ・平成25年及び平成26年と同様で年間の18%程度しか事業に従事していなかった。 (平成27年) ・原告元代表者は、O社のワイン事業が軌道に乗り始め、シンガポールに滞在する必要性が高まったこともあり、平成27年においては、シンガポールへ渡航する頻度が増加し、毎月シンガポールに滞在するようになり、それまでのオーチャード物件が手狭になったことから、3階建てでワイン倉庫を併設したコーヴウェイ物件を賃借し生活していた。 ・第三国へ渡航して、O社のワイン事業の仕入れ等をしていた日数を加味した上で、シンガポールでO社のワイン事業に従事していた日数は年間の32%程度であった。 【家族の状況】 原告元代表者には生計を一にする配偶者その他の親族はいない。 (3) 争点 Xの各年における居住者該当性(「住所」がどこにあるか)。 (4) 判旨 一部認容。 ((その2)へ続く)

#No. 661(掲載号)
#大野 道千
2026/03/19

2026年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

2026年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   Ⅴ 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正 2026年2月20日に金融庁より「「企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、「開示府令」という)及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について」が公表された。 主な改正内容及び適用時期について以下解説を行う。 〈主な改正内容〉   1 人的資本開示に関する制度見直し 有価証券報告書における人的資本の開示をより充実したものとするため、以下の改正が行われている。また、「従業員の状況」については、「第1 企業の概況」に記載していたが、「第4 提出会社の状況」に「5 従業員の状況等」を新設し、その中で「(2)従業員の状況」と新設の「(1)人材戦略に関する基本方針」を記載する(開示府令第二号様式記載上の注意(58-2)、第三号様式「第一部 第4【提出会社の状況】」及び記載上の注意(39-2)。 〈改正内容〉 (1) 「人材戦略に関する基本方針」の新設 「5 従業員の状況」において、「(1)人材戦略に関する基本方針」という項目が新設され、以下の①②の内容を記載する。ただし、全部又は一部を有価証券報告書の他の箇所において記載した場合には、その旨を記載することによって、記載を省略することができる(開示府令第二号様式記載上の注意(58-2)、第三号様式「第一部 第4【提出会社の状況】」及び記載上の注意(39-2)。 (※1) 「人材戦略」に関しては、有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で記載する「経営方針・経営戦略等」に関連付けて記載する。「経営方針・経営戦略等」が連結会社ベースで記載することとされるため、「人材戦略」についても連結会社ベースで記載することが適当と考えられる。ただし、これは、連結会社を構成する個々の会社ごとの「人材戦略」の記載が必要という趣旨ではない(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等)」(以下、「コメント考え方」という)149)。 (※2) 「人材戦略」の具体的な定義はないが、中長期的に企業価値を向上させていくために必要と考えられる人材戦略等が立案され、その内容を開示することが、投資判断に資する情報開示につながるものと考えられる(コメント考え方107)。 (※3) 上記②の方針は、提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社(純粋持株会社など)否かで以下に限定して記載することができる(開示府令第二号様式記載上の注意(58-2))。 (※4) 従業員給与等の額及び内容の決定に関する方針として具体的な指標等を定めている場合で、投資情報としての有用性が認められるときは、必要に応じて当該指標について追加的に注記することも考えられる(コメント考え方150)。 (※5) 「最大人員会社」の従業員数は、提出会社の従業員数のカウント方法の例によりカウントすることができる。実務上、提出会社からグループ会社への出向者はカウントせず、グループ会社から提出会社への出向者はカウントしている例が多い(コメント考え方151)。 (2) 「従業員の状況」の開示の拡充 「従業員の状況」において、新たに以下の開示を行う(開示府令第二号様式記載上の注意(58-3)、第三号様式「第一部 第4【提出会社の状況】」及び記載上の注意(39-3))。 (※6) 最大人員会社のセグメント別の従業員数については、不要である(コメント考え方168)。 (※7) 最大人員会社の決算末日が提出会社と異なる場合、提出会社の決算日時点の最大人員会社の情報を記載するか、最大人員会社の決算日時点の情報を記載するかについては、各企業におけるデータ集計の容易さ等を勘案し、適切な方法により開示することが考えられる。決算日が提出会社と異なる連結子会社のセグメント別の従業員数の集計において、その子会社の決算日時点の数を合算している例もある(コメント考え方171)。 【従業員の状況】の記載箇所 (3) 適用時期 2026年3月期の有価証券報告書から適用される。   2 サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備 サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の適用開始に向けて整備が行われている。 (1) 適用対象企業及び適用時期 SSBJ基準の適用対象企業及び適用時期は、以下のとおりである(開示府令19の9①④⑤)。 なお、2026年1月8日に公表されている金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告では、平均時価総額1兆円未満5億円以上の企業については、2029年3月期から適用と記載されている。 (2) 平均時価総額 平均時価総額は、有価証券報告書の対象事業年度の前事業年度の末日その前4事業年度の末日における時価総額の平均値により算定する(開示府令19の9③)。例えば、2027年3月期の企業であれば、2022年3月末、2023年3月末、2024年3月末、2025年3月末、2026年3月末の時価総額の平均値により算定する。 また、プライム上場企業は、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移」において、当事業年度及び前5事業年度の各事業年度末日における時価総額及び平均時価総額を注記する(開示府令第二号様式記載上の注意(25)h、第三号様式記載上の注意(5)a)。   3 株主総会前の有価証券報告書の開示への対応 株主総会前の有価証券報告書の開示については、【第3回】で解説する。   Ⅵ 金融商品会計に関する実務指針   1 投資事業有限責任組合の会計規則 (1) 改正内容 投資事業有限責任組合の会計規則について、公正価値評価を進めるため、経済産業省より2023年12月5日に「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則」が廃止され、「投資事業有限責任組合会計規則」(以下、「会計規則」という)が公表されている。 この改正で、ファンドが保有している投資先の株式評価について、以下のように改正されている(会計規則7)。 改正前 改正後 会計処理 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。 投資は、原則として、時価を付さなければならない。 時価の定義 - 金融商品にあっては、計算を行う日において、市場参加者間で秩序ある取引が行われるとした場合におけるその取引において、組合が受け取ると見込まれる対価の額又は取引の相手方に交付すると見込まれる対価の額とする。 ⇒つまり、時価=「公正価値」と定義された。 評価方法 組合契約に定めるところによる。 組合契約に定めるところによる。 (2) 適用時期   2 金融商品会計に関する実務指針 近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ASBJより2025年3月11日に移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下、「金融商品実務指針」という)の改正が公表された。 (1) 対象となる組合等 以下の要件を満たす組合等が改正の対象である(金融商品実務指針132-2)。 (※) 時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、IFRS第13号「公正価値測定」又は FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれる(金融商品実務指針308-3)。 (2) 評価方法 組合等が保有する市場価格のない株式の評価は、以下のとおりである。改正により容認処理が追加されている。 原則 組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする(金融商品実務指針132)。 市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準 」19)。 減損は、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(基本的に株式の実質価額が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針92)に従い、会計処理を行う。 容認 上記(1)の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部の「その他有価証券評価差額金」に計上する(金融商品実務指針 132-2)。 減損は、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(基本的に株式の時価が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針91)に従い、会計処理を行う。 なお、上記評価方法は組合単位で決定し、容認処理を採用した場合は、出資後に取りやめることはできない(金融商品実務指針132-3、308-5)。 (3) 注記 有価証券報告書の「金融商品に関する注記」において、以下の注記が必要となる(金融商品実務指針132-5)。連結財務諸表において注記している場合は、個別財務諸表において注記不要である。なお、計算書類では必ずしも以下の注記は求められていない。 (4) 適用時期 (5) 実務上の留意点 組合等で非上場株式を時価評価した場合、その金額は貸借対照表に計上されるため、その金額の妥当性は重要である。そのため、組合等において非上場株式の評価が適切に行われているかの検討が欠かせない。もし、自社内で非上場株式の評価の検討を行うことが難しい場合は、外部の専門家などに相談することも必要となる。 (了)

#No. 661(掲載号)
#西田 友洋
2026/03/19

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第18回】「指標・目標の開示 ~リスクや機会と向き合う企業の現在地とゴール」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第18回】 「指標・目標の開示 ~リスクや機会と向き合う企業の現在地とゴール」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔ジャーナル食品社の登場人物〕 *  *  * SSBJ基準では、企業がサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示を行うにあたり、次の4要素を開示することが求められます(【第14回】参照)。 「指標及び目標」の開示は、サステナビリティ関連のリスク又は機会に関する企業の取り組み状況を表す指標、設定している目標やその進捗状況を具体的に示すものです。 *  *  * *  *  * 利用者にとって有用である可能性が高いと考えられる次の7項目が、「産業横断的指標等」とされています。 *  *  * *  *  * *  *  * *  *  * 気候基準は、報告期間中に生成した温室効果ガス排出量(【第3回】参照)を、スコープ1(【第4回】参照)・スコープ2(【第5回】参照)・スコープ3(【第6回】参照)に区分して開示するものとしています。 GHGプロトコル(【第3回】参照)に従った測定が原則ですが、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(【第4回】参照)における測定方法を用いて開示することも、一定要件のもとで認められます。 なお、スコープ2については、ロケーション基準による排出量の開示が求められます。加えて、主要な利用者の理解のために必要な契約証書に関する情報がある場合には、それに関する情報も開示するものとされていますが、代わりにマーケット基準による排出量を開示することも可能です(【第5回】参照)。 *  *  * *  *  * スコープ3の算定にあたっては、広範なサプライチェーン全体からデータを収集する必要があり、それが実務上の大きな負担になると考えられます。そのため、SSBJ基準の適用初年度は、スコープ3排出量を開示しないこともできる経過措置が設けられています。 *  *  * *  *  * 移行リスクは、低炭素経済に移行する取組みから生じるリスクをいい、政策や法規制の変更、技術の進歩、市場の動向、レピュテーション(評判)の変化などによって損失を被るリスクを指します。 物理的リスクは、気候変動を原因とする物理的な影響(豪雨、大型台風、海面上昇など)により損害を被るリスクです。 一方、気候関連の機会は、気候変動から生じるプラス面の影響を意味します(【第11回】参照)。 *  *  * *  *  * 【(株)大和証券グループ本社 気候関連レポート2025(旧TCFD開示)】 より抜粋 物理的リスクについては、たとえば、洪水による浸水リスクがある資産に関して開示することなどが考えられます。なお、物理的リスクを評価するための資料として、国土交通省から「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き~気候変動を踏まえた洪水による浸水リスク評価~」が公表されています。 *  *  * *  *  * そのため、どのような資産又は事業活動を開示対象としたのかについても開示すべき旨が、気候基準において示されています。 *  *  * *  *  * Ⅲのグループの指標は、意思決定や評価のしくみにおける取り組み状況を表すものです。 内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング)とは、企業が、自社の排出する二酸化炭素に対して、社内で独自に価格を付けるしくみをいいます(【第8回】参照)。 *  *  * 【三菱製鋼(株) 2025年3月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)④ 指標と目標 より抜粋) *  *  * こうした産業横断的指標等に加え、自社に関連する産業別の指標のうち、主なものを開示することも求められます。開示する産業別の指標を決定するにあたっては、IFRS S2号に付属する「産業別ガイダンス」を参照し、その適用可能性を考慮することとされています。 *  *  * 【オムロン(株) 2025年3月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】(3)環境(気候変動)に関する取組み より抜粋) このような指標と目標が開示されることによって、利用者は企業の取り組み状況や、目標とその達成に向けた進捗状況を具体的に把握することができるのです。 *  *  * *  *  * Q サステナビリティに関する指標と目標についてどのような開示をするの? A 気候関連の指標の開示では、温室効果ガス排出を含む7項目の産業横断的指標等が中核となります。加えて、産業別の指標などの開示も求められます。また、気候関連の目標とその進捗状況なども開示するものとされています。 (了)

#No. 661(掲載号)
#石王丸 香菜子
2026/03/19

連結会計を学ぶ(改) 【第17回】「子会社株式の一部売却①」-支配が継続するケース-

連結会計を学ぶ(改) 【第17回】 「子会社株式の一部売却①」 -支配が継続するケース-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第16回】では、連結子会社株式の追加取得について解説したが、今回は子会社株式の一部売却(支配が継続するケース)について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社株式の一部売却(支配が継続するケース) 1 基本的な会計処理 子会社株式を一部売却したが、親会社と子会社の支配関係が継続している場合には、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額する(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)29項、(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)42項)。 この際、売却による親会社の持分の減少額(以下「売却持分」という)と売却価額との間に生じた差額は、資本剰余金として処理する(連結会計基準29項)。 当該会計処理を行うに際して次のことに注意する(資本連結実務指針42項、44項)。 ③については、親会社と子会社の支配関係が継続している状況下で、子会社株式を一部売却した場合等におけるのれんの未償却額の取扱いについては、減額する方法及び減額しない方法のそれぞれに一定の論拠があると考えられるが、のれんを減額する場合における実務上の負担や、のれんを減額しないこととしている国際的な会計基準における取扱い等を総合的に勘案して、支配獲得時に計上したのれんの未償却額を減額しないこととしたものである(連結会計基準66-2項)。 2 考え方 平成20年12月に公表された「連結財務諸表に関する会計基準」では、子会社株式を一部売却した場合は、損益を計上することとしていた。 平成25年に改正された連結会計基準では、親会社の持分変動による差額は、資本剰余金として処理することとされた(連結会計基準53-2項(1))。 これは、それまでの会計処理方法の問題点を、最も簡潔に対応する方法が損益を計上する取引の範囲を狭めることであるとも考えられたことによる(連結会計基準51-2項)。 3 投資と資本の相殺消去(非支配株主持分のあるケース) 設例を用いて、子会社株式の一部売却に関する会計処理を説明すると次のようになる。   (了)

#No. 661(掲載号)
#阿部 光成
2026/03/19
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