2026年10月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.691を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
音声記事令和9年食料品減税、ここが困りそう──税理士が語る消費税実務【第3回】(最終回)事務所の手間と2年後 収録時点の情報について 本記事は、2026年9月15日に公表された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」の内容を前提に収録しています(収録日:2026年9月26日)。その後の法案審議等により、制度の内容が変わる場合があります。 出席者(※発言者順) 出席日髙 真帆税理士 司会八ッ尾 順一公認会計士・税理士 出席廣瀬 周平税理士 出席三木 孝夫税理士 この連載について 軽減税率が始まった令和元年10月、レジの入れ替えや請求書の様式変更に追われた方も多いと思います。令和9年からの実施が検討されている飲食料品の消費税減税でも、同じような対応に追われることになるかもしれません。 この連載は、税理士が集まり、減税が始まったら実務のどこで困りそうかを話し合った内容を音声にしたものです。顧問先からどんな問い合わせが来そうか、システム改修は間に合うのかといった、解説記事ではなかなか取り上げられない話が中心となっています。 音声記事 再生時間 約11分 CHAPTER 00:06支援金と確定申告04:00届出ルートと固定資産の管理05:33増える還付申告08:20手間の割に、報酬は・・・08:56税務調査と税理士 (連載了)
消費税減税大綱に伴い想定される 実務への影響と対応 【第4回】 (最終回) 「税率引下げ期間に合わせた課税期間の設定方法と留意点」 税理士 石川 幸恵 前回は、国税庁から公表されているQ&Aで示された、総額表示義務の特例や定期供給契約・通信販売に係る経過措置、税率変更日前後の適用税率について確認した。 最終回となる今回も国税庁から公表されているQ&Aで示された事項として、税率引下げ期間に合わせて課税期間を設定する方法などについて、実務上の留意点を交えながら確認する。 1 消費税率の引下げ期間と課税期間が一致しないことによる影響 例えば、個人事業者の課税期間は原則として1月1日から12月31日までであるのに対し、消費税率の臨時的な引下げは、令和9年4月1日から令和11年3月31日までとされている。 このため、もともと免税事業者で、引下げ期間に合わせて課税事業者となり、その終了後にまた免税事業者に戻ろうとする個人事業者については、課税期間との3か月のずれが生じる。令和9年については、1月から課税事業者となれば引下げ開始前の1月~3月も課税事業者となり、令和11年については通常の課税期間のままであれば、引下げ終了後の4月~12月も課税事業者となる。 したがって、引下げ期間にできるだけ合わせて課税事業者となるためには、この課税期間のずれをどのように処理するかが問題となる。 2 個人事業者がインボイス制度を利用して、消費税率の引下げ期間に合わせて課税事業者となる方法 令和9年4月1日から課税事業者選択と課税期間の特例を適用して3か月ごとの課税期間とする方法も考えられるが、この場合には3か月ごとに消費税の申告が必要となり、事務負担が大きくなる。 消費税率引下げQA問3-4では、これとは別に、適格請求書発行事業者の登録制度を利用する方法が示されている。 (※) 消費税率引下げQA問3-4の【適用イメージ】(15頁)及び【適用イメージ②】(16頁)より抜粋 この方法では、令和9年3月17日までに、登録希望日を「4月1日」と記載した適格請求書発行事業者登録申請書を提出し、令和9年4月1日から課税事業者となる。その後、令和11年3月17日までに登録取消届出書、同年3月31日までに課税期間特例選択届出書を提出し、令和11年3月31日で課税期間を終了して、同年4月1日から免税事業者に戻る。 手続きに当たっては複数の申請書・届出書を組み合わせるものであり、月末以外の日が提出期限となるものもあるため、注意が必要である。 令和11年1月~3月分の消費税の申告書を令和11年5月末までに提出する必要がある。以後は免税事業者となるため、消費税の申告は不要となる。 また、課税期間の特例の適用関係には注意が必要である。免税事業者に戻った後は消費税の申告義務がないため、課税期間特例選択届出書の効力が残っていることを意識する機会も少なくなる。その後、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるなどして再び課税事業者となった場合には、課税期間特例選択の適用を受ける課税事業者となり、意図しない課税期間で申告することになりかねない。 このような事態を避けるため、課税期間特例選択不適用届出書も、適用開始日を令和13年4月1日としてあらかじめ提出しておくことが考えられる。 なお、この方法では適格請求書発行事業者となるため、令和9年4月1日から令和11年3月31日まで適格請求書発行事業者としての義務が生ずることにも注意が必要である。 3 課税事業者選択をした個人事業者が令和11年4月から免税事業者に戻りたい場合の手続き 令和11年3月31日までに、課税事業者選択不適用届出書と課税期間特例選択届出書を提出する(消費税率引下げQA問3-2)。 (※) 消費税率引下げQA問3-2【適用イメージ②】より抜粋 この場合も、2と同様、令和11年1月~3月分の消費税の申告書を令和11年5月末までに提出する必要がある。また、課税期間特例選択不適用届出書も提出しておくことが望ましい。 4 令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について、そもそも中間申告不要と判定された場合に中間申告をすることはできるか 中間申告の回数は、直前課税期間の確定消費税額に応じた回数とされている(消費税率引下げQA問3-8)ため、令和11年4月1日以後に開始する課税期間について中間申告書の提出が不要となるケースも考えられる。 ただし、任意の中間申告書を提出する旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、当該届出書を提出した日以後にその末日が到来する6月中間申告対象期間から自主的に中間申告・納付することができる。この任意の中間申告書については、「中間申告対象期間」について仮決算を行い、計算した消費税額等により中間申告・納付することも可能である。 また、ダイレクト納付による予納制度を利用すれば、課税期間中に、確定申告等により納付が見込まれる金額をあらかじめ納付することもできる。中間申告の必要のない納税者がこの方法を使えば、仮決算による中間申告書を提出することなく、納税者自身が納付可能な金額を納付することができると考えられる。 (連載了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例163(所得税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆給与所得に対し、甲欄で源泉徴収が認められる場合 給与所得に対し、甲欄で源泉徴収が認められるのは、源泉徴収義務者に対し、原則としてその年の最初に給与の支払いを受ける日の前日までに扶養控除等申告書を提出している場合に限られる。 ◆還付金等の消滅時効(国通法74①) 還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって時効により消滅する。 ◆還付請求の消滅時効の起算日 所得税法121条1項1号《確定申告を要しない場合》に該当する者から提出された申告書で、還付金の額が記載されているものは、還付申告書に該当するものとして取り扱われるが、還付申告書については提出期限が定められていないため、暦年終了後(翌年1月1日以後)いつでも提出することができることから、上記還付金の消滅時効の適用に当たっては、還付請求の起算日は翌年1月1日となる。したがって、X3年分の所得税を還付請求できる期間はX4年1月1日からX8年12月31日までとなり、当該期間の経過後の還付請求は認められない。 (了)
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第65回】 「土地の売買契約と補償契約は別のものであり、根抵当権を抹消した日が譲渡対価の50%以上受け取った日より早かったから、その日に土地の引渡しがあったとされた事例」 税理士 菅野 真美 ▷固定資産の譲渡損益の帰属事業年度 固定資産の譲渡損益の帰属事業年度は、固定資産の引渡しの日の属する事業年度が原則である(法人税基本通達2-1-14)。一般的な不動産の売買契約の場合、契約書に引渡し日が売買代金全額受領日のような記載がある。契約時点で手付金が支払われ、残金が支払われると同時に、登記に必要な書類が渡される。 しかし、売買契約の引渡しの時期がいつなのかに疑問が生ずる場合もある。これについて、法人税基本通達2-1-14では、2-1-2の例によるとされている。 すなわち、譲渡した資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。 つまり、代金の半分以上の収受が行われた日か、所有権の移転登記の申請(これは、法務局に申請した日でなくても必要書類を相手方に渡した日でも認められる。)のいずれか早い日となる。 今回は、土地の引渡しの日がいつになるのかで争われた事案を検討する。 ▷事案の概要 納税者は、素材製材の販売等をする株式会社である。平成30年9月7日、納税者はX機構が施工する建設工事のために土地を6,445万47円でX機構に譲渡する売買契約と、土地上の建物等を解体撤去することなどの補償金として2億3,637万510円を支払う旨の建物等の移転に伴う物件移転補償契約を締結した。 売買契約に定められた重要な事項は次のようなものである。 納税者は、契約に先立つ平成30年9月3日までに所有権移転登記に必要な登記原因証明情報兼登記承諾書、印鑑証明書を提出した。 納税者は、平成30年12月20日、土地に設定された根抵当権設定登記の抹消登記手続きを行い同日付で登記された。 平成31年1月31日、売買代金のうち4,511万円を受領した。 補償契約は、売買契約とは別に締結されており、実際に建物等の撤去が完了したのは、令和2年12月14日だった。土地の売買代金の残金と補償金の残金は、令和2年12月18日に支払われた。 納税者は、平成30年12月期に法人税の確定申告に、売買代金を益金に算入せず申告をし、また、消費税の申告において、資産の譲渡等の対価の額の計算上含めず、課税売上割合99.9%として消費税の申告をしたところ、税務署から、法人税等と消費税等の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分を行った。この処分に不服な納税者が審査請求したところ棄却されたので、提起したのが本件である。 ▷争点と、納税者の主張 争点は、引渡しの日は、平成30年12月20日であるといえるかである。 納税者の主張のポイントは以下の2点である。 ▷地裁の判決は 判決は、納税者の主張を棄却した。 ▷控訴審は この判決に不満な納税者は控訴したが、控訴審も地裁の判決を支持して棄却した。 納税者が主張した圧縮記帳による税法のメリットを受けるためには、土地の引渡しは令和2年12月14日にすべきという主張に対して、高裁は次のように判示した。 ▷まとめ このように裁判所は、土地の売買契約と補償契約は別のものであるとして、土地の売買契約等から事実関係を整理して、法人税基本通達にあてはめた。そして、譲渡対価の50%以上受け取った日よりも根抵当権を抹消した日が早かったため、その日をもって引渡しがあったと判断された。これは、他の所有権移転登記のために必要な書類は契約締結日より前に受け取っていたからである。 納税者は、収用等による代替資産の取得が、令和2年12月14日の引渡しを前提にしないと課税の繰延ができないからと主張した(代替資産の取得が実際には、いつだったのかは判決文では読みとれない)。 税理士が、引渡し日が明確ではない不動産譲渡の相談を受けた場合、引渡し日がいつなのかを事前に契約書等や通達で検討することが不可欠である。仮に土地を引渡した事業年度に代替資産を取得しなくても、特別勘定を使うことにより収用等の日から2年以内に代替資産を取得した場合は課税の繰延ができるから(租税特別措置法64条の2)、節税のためには、速やかに代替資産の取得をすべきであると顧問先に説明し、説明したことを記録しておくべきである。 (了)
〔実務で差がつく!〕 相続時精算課税制度Q&A 【第9回】 「相続時精算課税適用財産の相続税での相次相続控除の取扱い」 税理士 徳田 敏彦 【Q】 子Bは父Aから平成30年に土地3,500万円の贈与を受けた。子Bはその贈与について、相続時精算課税制度を選択した。 令和8年3月に父Aに相続が発生した。 また、令和7年4月に父Aは弟Cの相続により、財産を取得し、相続税を負担している。 この場合、父Aの相続税で相次相続控除の計算上、相続時精算課税適用財産は除かれるのか。 【A】 相続時精算課税適用財産も相次相続控除の計算に含まれる。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ ◎相次相続控除について 相次相続控除は、第一次相続から第二次相続までの期間が10年以内であった場合に、第二次相続の被相続人が第一次相続で納税した相続税額のうち一定額を第二次相続で控除できる制度である(相法20)。 各相続人の相次相続控除額は、次の算式により計算した金額となる。 〈各相続人の相次相続控除額の金額の計算式〉 つまり、第一次相続で納税した相続税額のうち残存年数1年あたり10%相当額を連続して課税される財産の割合に応じて控除する仕組みである。 この算式中の「B」、「C」、「D」の純資産価額には相続開始前7年以内の贈与により取得した財産で相続税の課税価格に加算される「暦年課税分の贈与財産価額」は含まれない。 一方、相続時精算課税制度により相続税の課税価格に加算される「相続時精算課税適用財産の価額」は含まれる。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第106回】 「上村工業第二事件 -原価基準法の適用が否認され、残余利益分割法が適用された事例- (地判令2.2.28)(その1)」 ~租税特別措置法66条の4第2項1号ハほか~ 税理士・特定社会保険労務士 森田 國弘 [1] はじめに 1 第一事件(※)と第二事件の関連 第一事件は、調査対象年はH12年からH16年までの5年間で、H18年3月に更正処分が行われた。対象はTUC社(台湾)とUMM社(マレーシア)、UIS社(シンガポール)であった。 更正処分のあと、原告(以下Xという)は、H18年5月に異議申立てをしたが、UMM社との取引についてマレーシアとH18年8月に相互協議を行うこととなり、これが長引いて合意となったのがH22年1月で4年の年月を経た。 これが決着してやっと異議申立てが動き始め、審議ののち却下されたのが、同年H22年12月であった。その後、H23年1月に不服審判審査請求がなされ、H24年11月にこれも却下となった。 これらの経緯を経て、XはH25年5月に東京地裁へ提訴した。更正処分後ここまで7年かかった。 第一事件調査開始年後7年経過して2回目の調査が行われた。これが第二事件で、対象はH19年3月からH23年3月の5年分でH25年6月に更正処分が行われた。第一事件の処分について、東京地裁へ提訴した年であった。 (※) 第一事件については、拙稿 森田國弘「上村工業第一事件(その1)(その2)」Professional Journal No.536(令和5年9月21日)、No.537(令和5年9月28日)を参考とする。 2 第一事件と第二事件の違い 第一事件の延長で第二事件があったが、第一事件と第二事件の大きな違いとして次の2点がある。 ① 対象に大きな違いがある。 第一事件は、主に台湾とマレーシアが対象で、これにシンガポールが加わり、三社が対象となった。これに対し、第二事件では、マレーシアは取り上げられず、主は台湾でそれも対象の中心は、TUC社から分社したTUT社であり、検討の対象となったのは、USC社(上海)、USL社(香港)、UIC社(アメリカ)、UIS社(シンガポール)であったが、これらは取引額が少額等の理由で移転価格の対象とはならなかった。 第二事件で、マレーシアが対象とならなかったのは、国税の見解がはっきりと出ていないので、明確には分からないが、考えられるのは1回目の調査時に比べて2回目の調査時は、マレーシアはハードディスク薬品の売上が低迷し、営業利益率が低下したため、移転価格の調査対象から外れたのではないかと推測される。 ② 棚卸資産販売取引が加わった。 2011年(H23年)頃からの新契約で、ライセンス製品を製造する過程の一部をブラックボックス化した製品(以下BB品という。)を販売する取引を開始したことにより、無形資産だけでなく棚卸資産販売取引が検討の対象となった。 〈第一事件及び第二事件の全体像〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 〈第一事件〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 〈第二事件〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 [2] 上村工業第二事件 1 概 要 今回の第二事件は、Xが台湾のTUT社及びTUC社(併せて総称するときは「本件国外関連者」という。)に対して行ったノウハウ等取引に係る取引(以下「本件ライセンス取引」という。)及びBB品に係る取引(以下「本件棚卸資産販売取引」という。両取引を総称するときは「本件国外関連取引」という。)の平成19年3月期から平成24年3月期における取引が、租税特別措置法66条の4第1項に規定する国外関連者との取引に該当し、同条第2項1号ニ、2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項1号の残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格に満たないとして、当該独立企業間価格によって当該取引がされたものとみなして所得金額を計算し、平成25年6月27日付で更正処分をしたところ、Xが として、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の全部の取り消しを求めた事案で、平成27年9月3日に提訴したものである。 2 争 点 第一事件と第二事件の争点を比較すると、下記の表のとおりでほとんど差異がない。 (争点1)では、Xが主張する①独立価格比準法と同等の方法、②独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の可否について、「本件ライセンス取引」と「本件棚卸資産販売取引」に分けて検討がなされた。 (1) 「本件ライセンス取引」について ① 「本件ライセンス取引」の独立価格比準法と同等の方法の可否について この過程はほぼ第一事件と同じ経緯で下記の点について検討がなされた。 結果は、第一事件と同じ結果で「取引単位」については、Xの主張した個別単位の取引は退けられ、取引全体を一つのものとして捉えるのが合理的であると判示された。 「同種」については、「本件ライセンス取引」が非関連業者である韓国のKPM社とのライセンス取引(以下「KPMライセンス取引」という)と「同種」であるかどうかが検討されたが、無形資産の種類、内容、品目の数等の差異から「同種」とは認められなかった。 「同様の状況」についても、比較対象取引とされる「KPMライセンス取引」とが「同様の状況」の下でされたものであるか検討されたが、実施権が独占と非独占の違い、市場の違い、顧客の規模、利益率等の属性に差異があることから、「本件ライセンス取引」と「KPMライセンス取引」は、「同様の状況」の下でされたものとは、認められなかった。 これにより、Xが主張する独立価格比準法と同等の方法を用いて「本件ライセンス取引」の独立企業間価格を算定することは否認された。 ② 「本件ライセンス取引」の独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の可否について ここでの要点は、それぞれの取引の類型に応じ、取引内容に適応し、かつ基本三法と同等の方法の考え方から「乖離しない合理的な方法」をいうものと解するのが相当である。 それを前提とする限り、価格そのものを比較する方法であって、取引の対象が「同種」であること及び「同様の状況」の下であることが重視される。 これについては、既に検討をしたように「本件ライセンス取引」と「KPMライセンス取引」では、取引となる資産が「同種」のものであるとはいえず、かつ「同様の状況」ともいえないところ、差異の内容、程度等に加え、差異を調整することができないことにも照らすと、独立価格比準法と同等の方法の考え方から「乖離しない合理的な方法」であるとは認めがたいということで退けられた。 ここからが、第二事件独自に論じられた内容である。 (2) 「本件棚卸資産販売取引」について ① 原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立企業間価格を算定することの可否 ア 原価基準法を用いるための要件について 今回新たに取引された「本件棚卸資産販売取引」の対象であるBB品について、原価基準法の適用を検討する。 原価基準法は、国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める「通常の利益率」を乗じて計算した金額をいう。)を加算して計算した金額をもって当該国外関連取引の対価とする方法をいう。(租税特別措置法66条の4第2項1号ハ) イ 「通常の利益率」 政令で定める「通常の利益率」は、国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を購入(非関連者からの購入に限る)、製造その他の行為により取得した者(以下販売者という。)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引(以下比較対象取引という。)に係る当該販売者の売上総利益の額(当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計金額から当該比較対象取引に係る棚卸資産の原価の額の合計額を控除した金額をいう。)の当該原価の額の合計額に対する割合とする。ただし、比較対象取引と当該国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異が生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合とする。(租税特別措置法施行令39条の12第7項) そうすると、原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立価格基準法を算定するためには、「本件棚卸資産販売取引」の対象資産であるBB品について「通常の利益率」を算定する必要があることになる。 ウ 「本件棚卸資産販売取引」における「通常の利益率」を算定することの可否について 原告の主張 a)「本件国外関連者」に対するのと同様、非関連会社であるKPM社に対してもBB品を販売(以下「KPM棚卸資産販売取引」という)している。 b)KPM社に販売しているBB品も「本件国外関連者」に販売しているBB品も、めっき薬品を製造するための半製品であり、その性状、構造、機能等の面で同一であるか類似する。 c)KPM社に対するBB品についても、「本件国外関連者」に対するBB品についても、めっき薬品の製造に必要な複数の原料を混合するという製造行為を行った上で出荷している。 d)「KPM棚卸資産販売取引」と「本件棚卸資産販売取引」との間で、利益率に影響を及ぼすことが明らかな差異も認められない、として「KPM棚卸資産販売取引」を比較対象取引として「通常の利益率」を算定して原価基準法を用いて「本件棚卸資産販売取引」の独立企業間価格を算定することができる旨主張する。 これに対して裁判所は次のように判示している。 ((その2)へ続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第193回】 株式会社エスポア 「第三者委員会調査報告書(公表版)(2026年9月15日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【株式会社エスポア第三者委員会による調査の概要】 【株式会社エスポアの概要】 株式会社エスポア(以下、「エスポア」と略称する)は、1972年9月、鋳造物の販売を目的として「前川産業株式会社」の商号で設立され、1998年9月、株式会社ゲオの完全子会社となって「株式会社ゲオ企画」に商号を変更。2005年4月、ゲオグループによる不動産事業を承継するとともに、商号を「株式会社ゲオエステート」に変更し、不動産開発及び不動産販売を中心とする事業を本格的に開始した。2008年3月には名古屋証券取引所セントレックス市場に株式を上場。2011年3月にゲオグループから離脱し、2012年8月、現在の商号に変更した。 エスポアは、不動産コーディネート&マネジメントに特化した企画開発・販売事業(2026年2月期有価証券報告書)を行っており、連結子会社として株式会社リユニオンを有している。売上高556百万円、経常利益15百万円、資本金1,018百万円。従業員数2人(いずれも2026年2月期実績)。2025年2月期は債務超過状態であった。本店所在地は東京都渋谷区。名古屋証券取引所ネクスト市場に上場(2026年10月17日付で上場廃止)。 会計監査人は、2025年2月期決算(2025年5月28日開催の定時株主総会終了)までは海南監査法人、その後、監査法人アリアが会計監査人に就任したが、2026年5月26日に辞任届を出している。 【第三者委員会による調査報告書の概要】 1 第三者委員会設置の経緯 エスポアは、2026年2月期の決算において、2026年4月24日、監査法人アリアから、会社法第436条第2項第1号及び会社法第444条第4項の規定に基づく監査について監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領するとともに、同年5月27日、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく連結財務諸表及び財務諸表等に対しても監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領した。 また、エスポアは、監査法人アリアから、2026年5月27日開催の第54期定時株主総会終結をもって、任期満了により会計監査人を辞任したい旨の辞任届を受領した。 エスポアは、同年6月11日、株主・投資家をはじめとするステークホルダーに対する説明責任を果たすとともに、事態の真相究明、原因分析及び実効性のある再発防止策の策定を行うために、高い専門性、中立性及び公正性を担保するため、高潔な人格と豊富な専門的知見を有し、かつ利害関係のない経営陣から完全に独立した客観的かつ公正な調査が不可欠であると判断し、独自の「第三者委員会」を設置することを取締役会で決議した。 その後、6月11日に設置した第三者委員会の委員の一部について、その中立性・独立性について検討を要することとなったことから、第三者委員会による調査を一時中断し、外形的にも一抹の疑念の介在する余地の無い、エスポアと利害関係のない経営陣から完全に独立した公正かつ客観的な調査の実施が不可欠であると判断し、同年7月10日の取締役会決議により、エスポアとは利害関係を有しない外部の弁護士、公認会計士及び税理士によって構成される当委員会を設置した。新たな委員構成による第三者委員会を設置した。 2 監査法人アリアが意見不表明とした理由 エスポアが、2026年5月27日にリリースした「2026年2月期有価証券報告書に係る監査報告書の意見不表明及び内部統制監査報告書の意見不表明に関するお知らせ」から、監査法人アリアによる「意見不表明の根拠」を引用しておきたい。 3 第三者委員会による調査結果――本件取引①「不動産コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、売主であるO社所有の宅地について、買主であるN社への紹介、価格交渉への関与、隣地取得に関する検討支援等の不動産コンサルティング業務を提供したとして、報酬1億2,100万円(消費税込)を受領した取引。エスポアの担当者は事業本部長の肩書きを有するg氏。2025年7月10日、O社を売主、N社東京本店を買主、U社を仲介として、本件物件について、売買代金を20億円とする売買契約が締結されたが、エスポアは、当事者としても仲介業者としても記載されていない。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引①のエスポアの業務実態の存在を積極的に裏付ける事情として、O社とエスポアとの間の契約書が存在すること、入出金記録によりO社からエスポアへの金銭の交付が裏付けられていること、当事者(g氏・O社)双方の供述が概ね一致していることに尽きるとまとめている。 一方、エスポアの業務実態の実在性に関する消極事実として、まず、N社ad氏に対する、電話による事実確認において、同氏は、本件取引①は2025年2月頃から仲介業者であるU社を通じて開始されたものであり、エスポアという会社は第三者委員会からの連絡により初めて知り、g氏についても全く知らないと回答したことを挙げている。さらに、g氏の説明が事実と食い違うことを検証したうえで、売買価格は当初から売主が希望する20億円とされ、その妥当性はN社自身の設計部門が作成した企画図に基づいて検討されたものであって、その一連の過程においてエスポア及びg氏はいずれも認識されていないことから、N社という新規ルートの紹介及び各種資料の作成支援については、単にこれを裏付ける客観的資料が存在しないというにとどまらず、こうした役務が本件売買の成立及び価格の形成に対して寄与する余地はないとまとめている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、不動産コンサルティング報酬の対価となる各役務について、実在性が認められないと結論づけ、現在の証拠状況並びにg氏及びO社の説明を前提とすると、本件取引①について、その取引の実在性が認められないと判断し、2026年2月期に計上した売上高報酬1億2,100万円(消費税込)を取り消すべきであるとしている。 4 第三者委員会による調査結果――本件取引②「不動産コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、商業施設及び土地の所有者であるG社との間で締結した不動産コンサルティング業務委託契約に係るもので、買主候補であったP社の信用性や資金力等についての情報提供を行うとともに、決済延期に伴いP社の購入意思を確認し、資金調達状況等に関する情報提供等を行っている。コンサルティングの報酬金額は5,000万円(消費税込)であった。エスポアの担当者は事業本部長の肩書きを有するg氏である。 2025年10月31日、G社とP社は売買代金を27億円、決済日を同年11月28日とする売買契約を締結し、契約締結時にG社はP社から手付金2億円を受領し、さらに、同年11月27日、P社からG社に残代金が支払われ、売買に係る決済が完了した。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引②のエスポアの業務実態の存在を積極的に裏付ける事情として、①コンサルティング業務の対象となったG社とP社間の売買契約が実在すること、②P社の担当社員が、g氏と売買代金の増額2億円分に関して話した記憶があり、g氏についてG社側で動いている人物であるとの認識を有していた旨を述べていること、③2025年9月10日及び翌11日、2026年1月14日に実施されたZoom会議の文字起こしに、本件取引②に関する具体的な発言が記録されていること、④2026年1月20日、同年2月9日及び翌10日のLINEトーク履歴に、本件取引②の報酬額及び契約書に関するやり取りが残されていること、⑤G社が本件取引②に係る報酬5,000万円全額をエスポアに対して現実に支払っていることが認められ、これらの事情は、本件取引②に係る役務内容についてのエスポア及びG社の供述とも概ね整合するとまとめている。 一方で、第三者委員会は、監査法人アリアが監査時点で必要かつ十分な監査証拠を取得できなかったとの判断自体は、その時点で提出された資料の状況に照らして理解できるとしたうえで、第三者委員会による調査で収集した資料及び供述を総合すれば、エスポアが実際に一定の役務を提供したことを裏付ける事情が認められ、本件取引②の成立経緯及び役務提供の具体的な時期等には不明確な点が残るものの、これらの事情を踏まえても、上記認定を覆すに足りる事情があるとは認められないとまとめている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、本件取引②について、監査手続上その実在性を確認するための資料が十分に整備されていなかったという問題は認められるものの、追加的に確認した資料及び関係者供述を総合すれば、本件物件の売却に係るコンサルティング業務は実際に履行されたものと認定するのが相当であり、本件取引②が架空取引又は実体を伴わない取引であったと認めるに足りる事情はないと判断するとしている。 5 第三者委員会による調査結果――本件取引③「蓄電池事業コンサルティング業務」 (1) 取引の概要 エスポアが、I社に対し、某県内の系統用蓄電池事業に係る2案件について、デューデリジェンス資料の提供、案件保有者の紹介その他のコンサルティング業務を提供したとして、報酬合計2,200万円(消費税込)を計上した取引に関するものである。 エスポアの説明によれば、エスポアは、当初、本件案件1を自ら取得した上で第三者に転売することを予定し、既に各案件についてデューデリジェンスを実施するとともに、転売先の検討等を進めていたものの、その後、資金繰り上の事情から自ら取得することを断念したことから、I社に対し、これまでに取得・整理したデューデリジェンス資料を提供するとともに、本件案件1の案件保有者を紹介することとし、その対価として1案件当たり1000万円(消費税別)、合計2,000万円(消費税別)とする業務委託契約を締結したとのことである。エスポアの担当者は、鈴木魁太代表取締役社長(報告書上の表記は「a氏」。以下「鈴木代表取締役」と略称する)である。 (2) 第三者委員会により認定された事実 第三者委員会は、本件取引③については、①契約対象となった土地が実在し、当該土地に関するAL社からの接続検討に関する文書が存在すること、②当該案件に対応するデューデリジェンス資料が現に存在し、I社がこれを保有していること、③I社が本件取引③に係る消費税込み報酬全額と同額の2,200万円を現実に支払っていることが認められ、これらの事情は、本件取引③に係る役務内容についてのエスポア及びI社の供述とも概ね整合するうえ、鈴木代表取締役及びy氏(I社取締役・企画部長)の供述は、2026年2月24日にエスポアの設定によりI社と案件保有者との面談が実施され、デューデリジェンス資料を基に案件内容の説明及び質疑応答が行われたという点で一致しているとまとめている。 ただし、第三者委員会は、本件取引③の完了時期について、期末に2,000万円という多額の収益を計上しているにもかかわらず、エスポアが主張する同年2月中のデューデリジェンス資料の引渡しについて、その事実及び時期を直接裏付ける電子メール、郵送記録、受領書その他の客観的資料は一切確認されていないと指摘した。そのうえで、デューデリジェンス資料が2月中には提供されていなかった可能性をうかがわせる事情として、I社が本件取引③の契約金額全額をエスポアに支払ったのは、本件取引③に係る契約書の締結日から1か月以上も経過した2026年4月6日であり、この日は、エスポアからI社に対し「案件ファイル」が郵送された日と同日であることから、契約書記載の支払期日を経過した後、デューデリジェンス資料又はこれに関連する案件資料の授受が行われたと思われる日に報酬の支払がなされていることになり、デューデリジェンス資料の提供時期を同年4月6日から9日までの間とすることとも整合的と考えられるとしている。 (3) 第三者委員会による結論 第三者委員会は、認定した事実に基づき、デューデリジェンス資料の提供が本件取引③における主要な役務の一つとして予定されていたことからすれば、本件取引③に係る役務が2026年2月中に全て完了していたと認定することはできず、少なくともデューデリジェンス資料の提供に係る役務については、同年4月6日から9日までの間に履行が完了したものと認めるのが相当であると判断して、2026年2月期における営業外収益への計上を否定する結論を導いている。 6 発生原因の分析(調査報告書123頁以下) 第三者委員会は、発生原因について、「総論」「根本原因」及び「直接的原因」に分けて論じている。まず、「総論」では、第三者委員会が調査の対象として3件の取引について、次のように概説している。 次いで、第三者委員会は「根本原因」とした3項目は次のとおりである。 原因分析のなかで、第三者委員会が繰り返し言及するのは、エスポア事業本部長の肩書きを有する「g氏」の存在である。上記に引用した総論部分、根本原因の「地位・権限の不明確な者による事業の運営及び統制の不備」はいずれも、「g氏」に関するものであり、さらに、重要性が最も高い「直接的原因①」でも、次のように評価している。 また、代表取締役である鈴木氏についても、第三者委員会は「直接的原因⑥」として、次のように評価している。 第三者委員会による直接的原因の指摘は、上記を含めて11項目にわたっている。 7 再発防止策の提言(調査報告書132頁以下) 第三者委員会は、再発防止策として次の10項目を提言している。 エスポアの2026年2月期有価証券報告書によれば、従業員2名と契約社員2名が管理部門に所属しているが、この人員で、第三者委員会による再発防止策の提言を実現することは、事実上不可能であろう。なお、調査報告書から、エスポアの従業員2名は、内部監査室長のh氏と経理担当のi氏であると考えられる。 【調査報告書の特徴】 2期連続の債務超過による上場廃止を回避するため、当初、エスポア社内では2億円の資本調達が検討されていたという。債務超過を回避するために、2026年2月期末に、不動産コンサルティングなどで、約175百万円の収益を計上するが、監査法人アリアによる会計監査で問題となり、エスポアは、「意見不表明」の監査報告書を受け取るとともに、会計監査人の辞任という事態に直面する。「意見不表明」の公表を受けて、名古屋証券取引所は、エスポア株式を「監理銘柄(確認中)」に指定。エスポアは、第三者委員会の設置を取締役会で決議するが、その後も紆余曲折があり、設置を決議してから3か月以上も経過して、ようやく、調査報告書を受領し、公表する。一方、エスポアが上場している名古屋証券取引所は、調査報告書の公表と同日、エスポア株式の上場廃止を決めた。第三者委員会による調査の結果、2期連続の債務超過が確定したとはいえ、2026年2月期の決算を修正する前の段階での上場廃止もまた、異例の措置と言えよう。 1 役務提供の実態がないコンサルティング料はなぜ支払われたのか 第三者委員会は、エスポアが売上に計上したコンサルティング料110百万円(消費税込で121百万円)について、役務提供の実態が確認できないとして、売上計上を取り消す修正が必要であると結論づけた。結論自体は第三者委員会が認定した事実に基づく判断であり、異論はない。問題は、このコンサルティング料が、O社から、2026年2月27日に30百万円、残額91百万円が4月8日に実際に支払われていることである。第三者委員会は、問題となった3つの取引に係る入金がエスポアの2026年2月期の債務超過を解消するためであった場合には、取引先であるO社、G社及びI社に対し、同額を迂回して返金する可能性も疑われるとして、これらの社を含む外部取引先18社に対して協力を求めて調査を行ったが、「協力拒否」1社、「未回答」4社のほか、13社については迂回返金を覚知できなかったとしている。ただ、公表された調査結果では、O社がどのような回答を行ったかは明らかではない。 なお、エスポアの2026年2月期有価証券報告書17頁には、主要な販売先が記載されており、株式会社サンライズに対する販売実績が110,000千円と明示されていることから、報告書における「O社」は、株式会社サンライズであることが推察できる。 なぜ、同社が、エスポアに対して総額121百万円を支払ったのかという謎は、第三者委員会による調査では解明できなかったようである。 2 エスポアの取締役会・監査役会の構成 エスポアの取締役会と監査役会の構成は次のとおりである。 役職名 氏名 担務 など 就任時期 資格その他 代表取締役 鈴木魁太 社長 2025年4月 取締役 勝又英博 2025年4月 取締役 山本健司 経営管理本部長 2025年5月 2026年5月末日辞任 取締役 宮下弘充 社外取締役 2025年5月 常勤監査役 日向健太 社外監査役 2022年5月 公認会計士・税理士 監査役 宮本武明 社外監査役 2022年5月 弁護士 監査役 杉浦亮次 社外監査役 2025年5月 税理士 鈴木代表取締役及び勝又取締役は、2025年4月17日開催の臨時株主総会において、株主であるJPIW合同会社による提案が承認可決されたことにより、就任したものである。なお、同臨時株主総会では、上田真由美氏及び吉川元宏氏も取締役(社外)に就任しているが、両氏は、2025年5月28日開催の定時株主総会をもって、取締役を退任している。 3 名古屋証券取引所による上場廃止及び整理銘柄指定 名古屋証券取引所は、2026年9月16日、エスポア株式について、10月17日付で上場廃止を決定して、整理銘柄指定をすることを公表した。上場廃止の理由としては、「上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において「意見の表明をしない」等の旨が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認める場合に該当するため(有価証券上場規程第601条第8号)と説明したうえで、理由の詳細を次のように公表している。 (了)
【新基準対応版】 〈一から学ぶ〉 リースの会計と税務 【第7回】 「借手の会計処理」 ~短期リース、少額リース~ 公認会計士・税理士 喜多 弘美 【第5回】・【第6回】では、借手の会計処理について、原則的な処理を整理しました。今回は、借手の会計処理でも、使用権資産・リース負債を計上しないことができる「短期リース」「少額リース」について見ていきます。 1 原則的な会計処理のおさらい まず、原則的な会計処理を簡単に振り返りましょう。借手は原則として、次の会計処理を行います。 ただ、規模が大きな会社では、リースが数百件に及ぶこともあります。そのため、すべてのリースについて、同じように会計処理を行うと、会社の事務負担はとても大きくなってしまうでしょう。 そこで、一定の要件を満たすリースは、使用権資産とリース負債を計上しない簡便的な取扱いが認められています。 それが、「短期リース」と「少額リース」です。 2 短期リースの会計処理 「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(適用指針第4項(2))。 つまり、以下2つの条件をどちらも満たす場合、「短期リース」と判定されることになります。 短期リースに該当する場合、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます(適用指針第20項)。 注意したいポイントとしては、短期リースに該当するかの判断基準が、契約書上の「契約期間」ではなく、「借手のリース期間」となっている点です。【第4回】でもお伝えしたように、借手のリース期間は、契約書に記載された契約期間と必ずしも同じになるとは限りません。 たとえば、契約期間が6ヶ月でも、延長オプションを使うことが合理的に確実なら、延長する期間も含めて、借手のリース期間を決定することになります。その結果、借手のリース期間が12か月を超える場合は、短期リースには該当しません。そのため、契約書上の契約期間だけで判断しないように注意が必要です。 また、「購入オプション」とは、借手がリース対象の物件を購入することができる権利のことです。借手のリース期間が12か月以内でも、購入オプションが含まれている場合は、短期リースには該当しないことになります。 3 少額リースの会計処理 少額リースとは、次の(1)と(2)のいずれかを満たすリースをいいます(適用指針第22項)。 上記に該当する場合、短期リースと同じように、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって、原則として定額法により費用計上することができます(適用指針第22項)。 次にそれぞれの条件について、具体的に見ていきましょう。 (1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース 通常の固定資産の取得でも、購入時に費用処理される少額のものは、重要性が乏しい場合が多いです。そのため、会社が一定の金額以下の減価償却資産について、購入時に費用処理する方法を採用している場合、その基準額以下のリースについても、簡便的な取扱いが認められています。 たとえば、10万円未満の減価償却資産を購入時に費用処理している会社の場合、借手のリース料が10万円未満のリースについても、使用権資産とリース負債を計上しないことができます。ただし、ここでいう「基準額」とは、それぞれの会社が会計方針として設定している会計上の基準額のことです。すべての会社に同じ基準額が適用されるわけではないことに注意しましょう。 (2) 次の①又は②を満たすリース 日本でのリースは、事務機器等の比較的少額なリース資産に利用されることが多く、一定金額以下のリースについては簡便的な処理が認められています。①②それぞれの条件を確認しましょう。 ① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース(1契約当たりのリース料が300万円以下) 改正前のリース会計基準では、企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースについて、簡便的な処理を認めていました。 新しいリース会計基準でも、この取扱いが引き継がれています。これまで、この簡便的な取扱いを適用してきた会社では、新しいリース基準に対応するための追加的な事務負担を増やさずにすむようにするためです。 また、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として「借手のリース期間」となります。ただし、これに代えて、契約書に定められた「契約期間」とすることも認められています(適用指針第23項)。これも、借手のリース期間を見積もる事務負担を減らすための取扱いです。 ② 新品時の原資産の価値が少額(5千米ドル程度以下)であるリース もう1つは、リースの対象となる物件について、新品時の価値が少額かどうかによって判断する方法です。これは、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)との整合性を図るために設けられた取扱いになります。 IFRSでは、新品時の価値がおよそ5千米ドル以下の原資産を念頭に置いて、少額リースの簡便的な取扱いが認められました。リース料の総額ではなく、物件そのものの新品時の価値で判断するということで、リース1件ごとに簡便的な取扱いを選択適用することができます。 IFRSを任意適用している会社では、この会計処理を採用すると、IFRSを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となり、これも事務負担の軽減につながるでしょう。 (2)①リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースと、(2)②新品時の原資産の価値が少額であるリースは、いずれかを会計方針として選択し、継続して適用することになります(適用指針第22項)。そのため、会社の事務負担を減らすために、IFRSを任意適用している会社は(2)②を、一方、日本基準を適用している会社は(2)①を選択適用することが考えられます。 なお、前回は、リース負債に係る支払利息についても、簡便的な方法が認められていることをお伝えしましたが、判断基準は使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合でした。今回の少額リースでは個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合となり、状況が異なるので注意しましょう。 * * * 最後に、今回の内容をまとめると、次のようになります。 (了)
税理士事務所の労務管理Q&A 【第34回】 「カスタマーハラスメントの防止対策」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 職場におけるカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」という)が増加し、社会問題にもなっています。これを受け、労働施策総合推進法が改正され、令和8年10月1日から、企業等にはカスハラ防止のため、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。今回はカスハラ防止対策について解説します。 * * 解 説 * * 1 カスハラとは カスハラとは、顧客や取引先から労働者に対して行われる、著しい迷惑行為や理不尽な苦情・クレームのことで、 の3つの要素をすべて満たすものをいいます。 2 著しい迷惑行為の事例 「著しい迷惑行為」としては、次のような例があげられます。 3 事業主が雇用管理上講ずべき措置義務 カスハラを防止するため、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し、雇用管理上講ずべき措置として、その内容が厚生労働大臣による指針で示されています。 〈カスハラ防止のために講ずべき措置〉 〈具体的な取組み内容〉 4 カスハラ対策を講ずるときの留意点 カスハラ対策を講ずる際には、消費者の権利等を阻害しないものでなければならず、 障害者差別解消法の合理的配慮の提供義務を遵守する必要があります。 また、事務所の労働者が取引先等の労働者に対してカスタマーハラスメントを行った場合、その取引先等の事業主が講じる事実確認等の措置の実施に関して必要な協力が求められた際は、事務所はこれに応じるよう努めるものとされています。 5 カスハラ防止に関する規程の整備 カスハラ防止に関しては、就業規則に規定しておくことが望ましいです。下記の規程例を参考に事務所の実態に即した規程を作成してください。 ◎カスタマーハラスメントの防止規程例の一部 (了)