《速報解説》 令和8年度改正、所得税法別表第五に措置法特例の給与所得控除「+5万円」は反映されず ~年末調整での取扱いに注意~ Profession Journal編集部 令和8年度税制改正法案では、給与所得控除の最低保障額について、所得税法本則の改正により65万円から69万円への引上げが行われるとともに、租税特別措置法第29条の4《給与所得控除の最低控除額等の特例》の新設により、令和8年・9年の2年間に限り、給与等の収入金額が220万円以下の場合にはさらに5万円上乗せし74万円とする特例が設けられている。 この特例は、基礎控除の特例(措置法第41条の16の2)とあわせて、いわゆる「課税最低限178万円」を実現するための時限措置として位置づけられるものである。 ここで留意すべきは、改正法案における所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)には、本則の69万円ベースの数値のみが記載されており、措置法特例の「+5万円」は反映されていないという点である。 この点について、措置法第29条の4第4項では、年末調整における給与所得控除後の給与等の金額は「所得税法第190条《年末調整》第2号の規定(同法別表第五を含む。)にかかわらず」措置法第29条の4第2項の規定により計算する旨を定めており、法律自体が所得税法別表第五を直接使用しないことを前提とした設計となっている。 したがって、令和8年分の年末調整においては、給与等の収入金額が220万円以下の者について所得税法別表第五をそのまま適用すると給与所得の金額が過大となるおそれがあり、措置法の特例規定に基づいた計算を行う必要がある。 なお、令和8年度税制改正大綱では、本改正に係る令和8年分所得への適用は「年末調整から」とされており、月次の源泉徴収段階では従来どおりの処理を行う旨が明記されている。 年末調整における具体的な処理方法や対応表等については、今後、法律の公布を経て国税庁から情報が公表されることが見込まれる。実務家においては、引き続き国税庁等の最新情報に注視されたい。 (了)
2026年3月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.660を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第40回】 「国税通則法116条」 -税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その3)- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 国税通則法116条(原告が行うべき証拠の申出) 1 はじめに 前々回から、「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界」という副題の下で、国税通則法114条及び115条を主題として、租税手続法のうち租税行政法の論理を租税訴訟法において承継するか(連続性)又は遮断するか(限界)を検討してきたが、今回は、「納税環境の整備」の一環として昭和59年度税制改正で改正された国税通則法116条(原告が行うべき証拠の申出)について、同様の検討を行うことにする。 その検討に入る前に、国税通則法116条の用語について簡単に確認しておくと、同条1項は「国税に関する法律に基づく処分」(税通75条1項、115条1項柱書括弧書)のうち「更正決定等及び納税の告知」のみを対象にしている。ここで「更正決定等」とは、「更正若しくは第25条(決定)の規定による決定又は賦課決定」(同58条1項1号イ)をいい、「納税の告知」については国税通則法36条が定めるところである。これらの処分は国税通則法116条1項においては「課税処分」と称されるが、これは「納付すべき税額」(同16条・24条~26条・32条、36条2項)に係る処分である。 2 国税通則法116条の沿革 昭和59年度税制改正における国税通則法116条の改正について、税制調査会「今後の税制のあり方についての答申」(昭和58年11月。以下「昭和58年税調中期答申」という)42頁は「証拠申出の順序に関する整備」という見出しの下で下記のとおり述べていた(下線筆者)。 ここで述べられているシャウプ勧告の「指摘」の原文は、「the taxpayer should have the initial responsibility of coming forward with evidence to show that the Government's administrative decision is erroneous.」(Report on Japanese Taxation by the Shoup Mission, September 1949, Appendix D, Section C 7b. )となっている。なお、昭和58年税調中期答申は後掲・税制調査会「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)135頁と同じく「the initial responsibility of coming forward with evidence」を「証拠をまず最初に持(も)つて来る責任」と邦訳しているのに対して、福田幸弘監修・シャウプ税制研究会編『シャウプの税制勧告』(霞出版社・1985年)393頁は「先に立証する責任」と邦訳しているが、これは、上記「答申別冊」135頁で述べられているシャウプ勧告の解釈の違いに基因しているのかもしれない。 この点はともかく、昭和58年税調中期答申を受けて、昭和25年の所得税法及び法人税法の改正(昭和25年3月31日法律第71号・第72号)によって「証拠申出の順序」に関する規定が次のとおり定められた(所税52条及び法税38条は同じ法文であるので前者を引用しておく)。 この規定については、「税務訴訟における立証責任については、原、被両告のいずれにあるかについて争われているが税務訴訟の特質、および抗告訴訟という点より考えれば、原告に立証責任ありとすべきであろう。所得税法はこれらの点についてはふれず、単に証拠申出の順序についてのみ規定している。」と解説されていた(岩尾一編『法律學体系コンメンタール篇 所得税法〔Ⅱ〕』(日本評論新社・1954年)931頁。なお、志場喜徳郎編『法律學体系コンメンタール篇 法人税法〔Ⅱ〕』(日本評論新社・1956年)1111頁は「本条は、税務訴訟の場合の証拠申出の順序についての規定である。」とのみ述べていた)。 その後、国税通則法の制定に先立って、税制調査会は「証拠申出の順序」について、次のとおり、これに関する規定を今後も存置する旨を述べた(同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)135-136頁。下線筆者)。 国税通則法(昭和37年4月2日法律第66号)は同法制定前の所得税法52条等の規定を「存置」する規定として同法88条を定めたが、この規定(昭和45年3月28日法律第8号により116条)は、上記の説明によると、「挙証責任分配の問題を離れて」、「裁判所の訴訟指揮に関する証拠申出の順序に関する規定」として、裁判所が「証拠資料によつて」ではなく「税務官庁の主張自体によつて」「税務官庁の主張を合理的と認めたとき」には、「納税者(原告)が、まず最初に証拠を提出すべき責任を負うこと」とし、「税務官庁(被告)は、原告が証拠を提出するまでは、証拠不提出による不利益を受けることはない」とするものと解されていたといえよう。 このように解されていた国税通則法116条について昭和58年税調中期答申は前記のとおり述べたのであるが、この答申を受けて改正された同法(昭和59年3月31日法律第5号)116条について、黒田東彦ほか『昭和59年 改正税法のすべて』(大蔵財務協会・1984年)73-74頁はその改正の趣旨を次のとおり解説した(下線筆者)。 なお、立証責任の分配の問題については、昭和58年税調中期答申は「租税債権について課税の公平確保等の観点から、一般の民事上の債権に関する立証責任と同様に扱つてよいかどうか、租税債権の特殊性を踏まえた立証責任の分配が考えられないかという点について、基本的検討の必要があるのではないかと考えられる。」(41頁)と述べつつも、租税債権債務関係の特殊性の検討、裁判制度や立証責任のあり方に関する比較法的検討等に関する意見を踏まえた上で、「このような議論を考慮すれば、現段階において一般的な立証責任を納税者に課すことを制度化することは見送り、判例等の今後の展開に待つこととすることもやむを得ないものと考える。」(41-42頁)と述べ、結局のところ、基本的には国税通則法制定当時の前記の考え方を踏襲したものと解される。 もっとも、昭和58年税調中期答申がこれに続けて次のような「期待」を述べていたこと(42頁。下線筆者)には注意しておく必要がある。 この叙述については、「この答申の叙述に鑑みれば、改正116条は、租税訴訟における立証責任を納税者側へと移行する過渡期における規定として位置づけられているとみることができよう。」(岩﨑政明「租税訴訟における納税者の証拠提出責任―改正国税通則法116条の意義と適用範囲―」判タ581号(1986年)44頁、46頁。下線筆者)との解釈が示されており、「本条[=改正国税通則法116条]は、税務訴訟における立証責任の分配についての規定ではないが、本条の趣旨とするところは、ここにあろう。」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和7年改訂・18版〕』(大蔵財務協会・2025年)1381頁)とさえ説かれてきたのである。 いずれにせよ、そのような「期待」が昭和59年度税制改正による「納税環境の整備」の背景にあったからではないかと思われるが(この点については後記3で検討するが、そのような「期待」の拠り所となったのではないかと思われる改正前税通116条に関する見解として田中二郎『租税法〔新版〕』(有斐閣・1981年)353頁参照)、昭和58年税調中期答申を受けて提案された国税通則法116条の改正案に対して、第101回国会における国会審議中の昭和59年3月16日に日本弁護士連合会は理事会で意見書を承認し次のとおり厳しく批判した(同「所得税法等の一部を改正する法律案並びに法人税法の一部を改正する法律案に対する意見書」自由と正義35巻5号(1984年)98頁。傍点原文・下線筆者)。 このような意見については、第101回国会の衆参両議院大蔵委員会でも取り上げられ質疑がなされたが、国税通則法116条の改正案は裁判所の訴訟指揮に関する規定であって立証責任の転換を図るものではないということが繰り返し確認された。例えば昭和59年3月30日参議院大蔵委員会における鈴木和美委員の質問(国立国会図書館「国会会議録検索システム」で検索した同大蔵委員会第8号会議録の発言No.67)に対して梅澤節男政府委員は次のとおり答弁した(同発言No.68)。 3 「納税環境の整備」の論理と税務訴訟の論理 昭和59年度税制改正における国税通則法116条の改正に対しては、日本弁護士連合会の前記意見と同じく、税務訴訟の論理の観点から、次のような厳しい批判が加えられた(松沢智『税理士の職務と責任―期待される税理士像を求めて』(中央経済社・1985年)161-162頁【ⓐ】、167-168頁【ⓑ】。下線筆者。ほかに、北野弘久「『財政再建』と税財政制度の転換」法律時報57巻8号(1985年)8頁、13-15頁、同『税法学原論〔第6版〕』(青林書院・2007年)501-503頁等参照)。 ここで示された見解によれば、「納税者は課税庁の手の内を見てから都合のいいところだけを突くという戦術」(高野俊信「所得税法・法人税法・国税通則法(納税環境の整備関係)の一部改正」税務弘報32巻7号(1984年)121頁、142頁。志場ほか共編・前掲書1377頁もほぼ同じ)は必ずしも一方的に非難されるべきものとはいえず、況んや法律によってこれに否定的評価を加えることは許されないということになろう。そうすると、「昭和59年の通則法第116条の改正は、民事訴訟法の原理を変更するものではなく、旧規定と本質は異ならない。ただ現実の訴訟が、終結間際に至って、納税者から必要経費の主張がなされて訴訟が著しく遅延する実状に対し、改正規定は、むしろ、納税者に対して良心的に訴訟遂行を求めるための精神的・倫理的規定、すなわち訓示規定たるにとどまるものといえる。」(松沢・前掲書168頁。下線筆者)ということにもなろう。 しかしながら、昭和59年改正国税通則法116条2項は、同条1項の規定に違反して行った主張又は証拠の申出について、「民事訴訟法第139条[現行157条]につなぐこととして、その効果を明らかにしたもの」(黒田ほか・前掲書74頁)である以上、同条の規定を「訓示規定」と解するのは、租税法律主義の下では、困難であるように思われる。その規定が「証拠申出の順序」に関する昭和59年改正前国税通則法116条を「納税環境の整備」の一環として改正して定められた規定であることを考えると尚更である。 ここでいう「納税環境の整備」は、昭和58年税調中期答申33-34頁では、下記の①~③の「理念」に基づくものとして捉えられていた(下線筆者)。 このような意味での「納税環境の整備」は、「納税者の実態に十分配慮した記録及び記帳に基づく申告制度の確立を主たる目的とし」(黒田ほか・前掲書47頁)、「今回の提案により記録及び記帳に基づく申告制度が確立される場合には、納税者は取引の記録を整理して保持していることが一般的に予定される状況にあることにな[る]」(昭和58年税調中期答申42頁)との想定の下で、その論理を、税務訴訟における納税者の主張及び証拠の申出について展開し「時機に遅れた攻撃防御方法の却下」(民訴139条[現行157条])に「つなぐ」(黒田ほか・前掲書74頁)ことによって、税務訴訟における国税通則法(租税行政法)と行政事件訴訟法(租税訴訟法)との連続性に「新たな道」を拓いたものとみてよかろう。 とはいえ、そのような想定は、下記の指摘(岩﨑・前掲論文49頁)にみられるように、必ずしも「納税者の実態に十分配慮した」ものではないように思われる。 そうすると、国税通則法116条は、前述のように「納税環境の整備」の論理を、納税者の主張及び証拠の申出について展開し「時機に後れた攻撃防御方法の却下」に「つなぐ」ものではあるが、その却下の決定に関する裁判所の裁量権(民訴157条1項)は、「争訟法の基本たるべき当事者対等主義」(日本弁護士連合会・前掲意見書)、「民事裁判における基本原則」(松沢・前掲書)、「武器平等・当事者対等の大原則」(同)、「訴訟の衡平の原理」(同)等の税務訴訟の論理に鑑み、謙抑的に行使すべきであろう。 国税通則法116条は、昭和59年度税制改正前の同条と比べて、対象とする訴訟の種類を課税処分取消訴訟に、対象とする攻撃防御方法を必要経費の存在等納税者に有利な事実にそれぞれ限定するなど(同条1項)、その適用範囲を明文の定めによって制限しているが、このことは税務訴訟の上記の論理に対する制約を最小限にとどめようとする措置として比例原則(憲13条参照)の観点からみて妥当であるとしても、それだけでは十分ではなく、課税処分取消訴訟の実際においても、まさに前記の第101回国会審議における政府委員の答弁で繰り返し確認されたように、同条の規定は裁判所の訴訟指揮に関する規定にとどまることが適切に考慮されるべきであろう。 また、税務訴訟の前記の論理は、民事訴訟法上の原理・原則であるだけでなく、租税債務関係説という租税実体法の基礎理論(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【12】参照)の観点からは、課税処分取消訴訟の実質を債務不存在確認訴訟として捉える考え方(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)1135頁、志場ほか共編・前掲書1380-1381頁等参照)を反映したものとみることができるように思われる。租税債務関係説によれば、租税法律関係は、基本的には民事上の債権債務関係と同じく、その当事者である納税義務者と国(を代表する税務官庁)との対等性を基礎として構成されると考えられるが、その当事者対等性が税務訴訟の場面に反映され前記のような論理として発現すると考えるところである。このように考えると、税務訴訟について「租税債権の特殊性」(昭和58年税調中期答申41頁)を過度に強調するのは公正妥当な議論とはいえないであろう。 さらに、税務訴訟の前記の論理は、納税者と税務官庁との手続法上の関係を、対等・対称的な権利義務の関係(法律関係)として構成することを要請する租税法律主義(手続的保障原則)が裁判を受ける権利(憲32条)の保障との関係で司法的救済保障原則(前掲拙著【27】参照)として訴訟手続の場面で発現したものとみることもできよう。 税務訴訟の論理を以上のように捉えると、そこに、税務訴訟における国税通則法(租税行政法)と行政事件訴訟法(租税訴訟法)との連続性の限界を認めることができると考えるところである。 4 おわりに 以上を要するに、国税通則法116条については、「これは、原告の一定の主張及び証拠の申出が不当に遅れることを阻止し、訴訟の迅速化を図ることを目的とした規定であるが、これは立証責任についてなんらかの定めをするものではない。」(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)320頁)というように解すべきであろう(泉徳治ほか『租税訴訟の審理について〔第3版〕』(法曹会・2018年)150頁、日本弁護士連合会日弁連税制委員会編『国税通則法コンメンタール 不服申立手続編』(日本法令・2026年)632-633頁[武田涼子執筆]、前掲拙著【163】等参照)。 なお、昭和58年税調中期答申42頁が「納税環境の整備」の観点から税務訴訟における立証責任の分配について述べていた「納税者に立証を求める方向へ漸次進んでいく」という「期待」は今日でも根強いということも、忘れてはならないであろう。下記の意見(田中二郎『租税法〔第3版〕』(有斐閣・1990年)380頁)を「正に傾聴すべき意見」と説く見解(志場ほか共編・前掲書1381頁)も引き続き説かれているが、前記2で概観した国税通則法116条の沿革をも踏まえると、そのような意見はあくまでも立法論の領域にとどめ、同条の解釈適用に持ち込むべきではないと考えるところである。 (了)
社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第3回 SNS投稿用の衣装・バッグ等の購入費用 〈JUN税会〉 公認会計士・税理士 田村 俊雄 * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。 2 法的論点の整理 (1) 必要経費の要件 所得税法37条1項には、必要経費について次のように定められています。 この規定から、必要経費として認められるためには、「業務遂行上の必要性」を満たす必要があります。 (2) 家事費と家事関連費 所得税法45条1項1号は、家事費について次のように定めています。 また、所得税法施行令96条は、家事関連費について次のように定めています。 つまり、家事関連費は原則として必要経費に算入できませんが、以下の2つの要件を満たす場合には、業務に必要な部分を按分して経費計上することが認められます。 3 本件事例への当てはめ (1) ブランドバッグ(30万円) タイアップ案件で着用が指定された場合を除き、全額を必要経費として計上することは認められない可能性が高いと考えられます。 使用記録等で業務使用割合を合理的に算定できる場合には、家事按分による一部経費計上の可能性がありますが、実務上は困難です。 (2) カジュアルウェア(15万円) 原則として家事費(生活費)とみなされ、必要経費として計上することは認められません。 (3) アクセサリー類(5万円) カジュアルウェアと同様、私的使用との区別が困難であり、必要経費として計上することは認められません。 4 認められる可能性が高いケース (1) タイアップ案件で着用が指定された衣装やバッグ等 広告主との契約に基づき着用が義務付けられている場合、契約書等で業務関連性を明確に証明できるため、「事業遂行上の必要性」が客観的に担保されます。 (2) 明らかに業務専用と認められる衣装 【具体例】 これらは私的使用の可能性が極めて低く、業務専用であることが明白です。 5 参考裁決事例 【ライブチャットサービス業務を行う請求人が主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の購入費及びインターネット接続料金については必要経費に算入するのが相当であるとした事例】(裁決年月日:平成26年5月22日、一部取消し) 6 実務上の対応策 (1) 証拠資料の整備 SNS投稿用の衣装等を必要経費として計上する場合、以下の証拠資料を整備することが必要です。 (2) 業務専用管理の徹底 以下の対策により、業務専用であることを明確化できます。 (3) 家事按分の検討 家事按分を検討する場合は、以下の対応が必要です。 ただし、日常着として使用可能なカジュアルウェアの場合、業務使用部分を明確に区分することは実務上極めて困難です。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第88回】 東洋大学法学部教授 泉 絢也 (ウ) 海外CEX、DEX、プライベートウォレットの利用がもたらす問題 しかしながら、前回のような調査手法によっても、暗号資産の匿名性や分散性がもたらす税務執行上の問題を完全に克服することはできない。 まず、メルカリ等で暗号資産取引の経験を積んだ利用者の一部が、暗号資産取引の世界のより深いところに足を踏み入れる可能性がある。 海外CEXやDEXの中には、国内CEXと比べて、取り扱っている暗号資産の種類が多く、取引手数料が低いものや、独自の報酬制度(たとえば取引額に応じたトークン還元制度など)を備えたものが多数存在している。 また、日本では法制度上提供が難しい高倍率のレバレッジ取引や各種デリバティブ取引等を提供する事業者も存在し、これらが暗号資産取引に慣れてきた利用者にとっては非常に魅力的に映る可能性がある。 自己管理型の暗号資産運用に関心を持つ者の中には、プライベートウォレットを作成し、そこからDEXを利用して自由に取引を行う者も出てくる可能性もある。 また、近年、日本国内においてオンラインカジノの利用が拡大していると指摘されているが、これらのカジノでは法定通貨に代わり、暗号資産が決済手段として用いられていることも多い。そのため、こうしたサービスを利用する者が、暗号資産を管理等するためにプライベートウォレットを使用している可能性は高いと考えられる。 暗号資産は匿名で取引が可能であり、税務調査で取引を把握されない可能性があることが、「税務署に把握されないだろう」という安心感をもたらし、一部の利用者を強く惹きつける可能性もある。 しかも、インターネット上には、本人確認を行っていないCEX、DEX、プライベートウォレットの紹介やこれらのサービスの利用の仕方について解説する日本語サイトが多数存在しており、専門的な知識があまりなくても、これらに容易にアクセス可能な環境が整っている。 こうした状況は、暗号資産取引にある程度精通した層だけでなく、一般層にもこうした匿名性の高い手段が広まりうる土壌を形成している。 実際、既に暗号資産について一定の経験を有する者は、当然のように海外CEX、DEX(DeFi)(※)、さらには海外事業者が提供するプライベートウォレットを利用している。 (※) 日本における暗号資産活動のプラットフォームタイプ別のシェアは、CEXと様々な種類のDeFiプロトコルの間でほぼ均等に分散しているという調査結果がある。Chainalysis「The 2023 Geography of Cryptocurrency Report(日本語版)」63-64頁(2023)、Chainalysis「The 2022 Geography of Cryptocurrency Report(日本語版)」(2022)59-61頁、 Chainalysis「The 2024 Geography of Crypt Report 127(Oct.2024)」参照。 もっとも、本人確認を行っている海外CEXに日本の居住者が口座を保有している場合には、CARFの情報交換制度を通じて、国税庁が一定の取引情報や身元情報を把握できる可能性がある。 これは、次の①及び②を前提として、国税庁が暗号資産の匿名性の壁を乗り越えたことを意味する。 よって、上記のいずれかの前提が崩れる場合には、依然として暗号資産の匿名性の壁が立ちはだかる。 税務執行面から特に問題が深刻化するのは、本人確認を行っていない海外CEX、DEX、プライベートウォレットが利用されている場合である。 国税庁がこれらを通じて行われた取引を捕捉できたとしても、そもそもそのようなCEXの口座やウォレットについて、誰が管理しており、誰に帰属しているのかという「名寄せ」を行うことは困難であるし、特定の納税者がそのようなCEXの口座やウォレットを保有していることを把握することも難しい。 すなわち、ブロックチェーン上では取引履歴そのものは可視化されているにもかかわらず、それが誰の取引であるかを特定できない限り課税は不可能である。 この点において、上記の名寄せの困難性は、公開性と課税実効性との間に構造的なギャップを生じさせている。 特に、日本の居住者が、本人確認情報を保有する国内CEXとのつながり(接点)を完全に断ち、国内の名寄せ経路を遮断した“スタンドアロン”の状態で海外CEXやプライベートウォレットのみを利用している場合には、国税庁にとって当該納税者の特定は事実上不可能に近い。その結果、ブロックチェーン上で取引が可視化されていても、それを特定の納税者に帰属させて課税することは極めて困難となる。 例えば、国税庁が、日本人によって管理されている可能性のあるプライベートウォレットから、多額の暗号資産が本人確認を行っていない海外CEXへ送付されている事実を把握したとしても、当該海外CEXから納税者を特定するための有力な情報を取得することは難しい。 同様に、日本人によって管理されている可能性のあるプライベートウォレットがDEXを利用して多額の暗号資産取引を行っていたとしても、これらから直接的に本人特定のための有力な情報を得ることはできない。 なお、CEXの口座の真の保有者が誰であるかを認定することは、本人確認手続を実施しているCEXの場合にも問題となりうる。 例えば、登録された名義人と実際の資産保有者が異なる可能性がある。名義貸しや他人の本人確認書類の流用などによって、口座の「真の保有者」の認定が困難となるケースがあるということだ。 一方で、本人確認手続を実施していない海外CEXの場合には、開設された口座の真の保有者の有力な候補となる口座開設者を形式的に認知できる書面やデータが存在しないため、真の保有者の認定は一層困難なものとなる。 (了)
〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第18回】 「個人事業者が暗号資産取引を行った場合の消費税の課税関係」 税理士 石川 幸恵 【Q】 建築関係の仕事をしている個人事業者(消費税課税事業者)です。令和7年中に試しに一度だけ暗号資産の売買を行いましたが、少し損失が生じてしまいました。 所得税額への影響はないと考えていますが、消費税の申告での注意点はありますか。 【A】 1 消費税の確定申告における取扱い 消費税の課税の対象は、「事業者が事業として」行うものに限られています。事業としてとは「対価を得て行われる資産の譲渡等を反復、継続かつ独立して」行うことをいいますから、試しに一度だけ行った売買については消費税の課税対象とはなりません。 もっとも、「事業者が事業として」行った場合であっても、暗号資産の売却は消費税法上「支払手段に類するものの譲渡」に該当し、非課税取引とされています。詳細は【解説】をご確認ください。 2 (参考)所得税の確定申告における取扱い 暗号資産取引により生じた損益については、原則として雑所得に区分されます。損失が生じた場合、他の所得と通算されたり、翌年に繰り越されることはありません。 3 今後の改正の予定 令和8年度税制改正大綱では、暗号資産に係る課税関係について、所得税における分離課税の導入を含めた見直しが明記されています。改正金融商品取引法施行日の翌年1月1日以降に行う取引から適用される見込みです。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 本件は一度限りの取引であったため消費税への影響はないが、取引態様及び今後の制度改正によって課税売上割合に影響する場面も想定される。 1 暗号資産取引を「事業として」行ったか否かの判断 暗号資産取引を反復、継続かつ独立して行う場合には、消費税法上の「事業として」に該当し、課税の対象となり得る。もっとも、この「事業として」は消費税法上の判断であり、所得税法上の所得区分と直接的に連動するものではない。 所得税法上は、暗号資産取引による所得は原則として雑所得に区分されるが、年間収入金額が300万円を超え、かつ帳簿書類の保存がある場合には、原則として事業所得に区分される(暗号資産FAQ2-2)。所得税ではこのように金額や帳簿書類の保存により一定の基準が設けられているが、所得税で雑所得に区分される場合であっても、消費税法において「事業として」に該当しないとは直ちにいえない。 2 暗号資産取引を「事業として」行った場合 暗号資産の譲渡は「支払手段に類するもの」の譲渡として取り扱われ、消費税は非課税である。また、消費税の確定申告を一般課税により行う場合に課税売上割合の計算が必要となるが、支払手段に類するものの譲渡については非課税売上高にも算入しない取扱いとされている(暗号資産FAQ6-1)。 3 令和8年度税制改正大綱のポイント 令和8年度税制改正大綱では、暗号資産の譲渡を「支払手段に類するもの」の譲渡から、「有価証券に類するもの」の譲渡へ見直す方向が示されている。 この見直しが行われた場合、一般課税により申告する事業者は、課税売上割合の計算上、暗号資産の譲渡対価の5%相当額を分母に算入することとなる。暗号資産取引の額が大きい場合には、課税売上割合に影響が生じる可能性がある。 また、暗号資産の貸付けが現在は課税取引とされているが、非課税取引とする方向で見直しが示されている。 (了)
国際課税レポート 【第24回】 「トップアップ課税の免除と越境電子商取引への消費税課税の強化」 ~令和8年度税制改正~ 税理士 岡 直樹 (公財)東京財団上席フェロー 令和8年度税制改正法案の国会提出(2月20日) 令和8年2月18日に発足した第2次高市内閣は、2日後の同月20日、令和8年度税制改正関連法案を閣議決定し、国会に提出した。 昨年の令和7年度税制改正では、政府案が令和7年2月4日に提出され、その後、同月28日に与党修正案が提出され、最終的に3月31日に成立した。令和8年度の法案提出は、令和7年度と比べるとやや後ろ倒しとなったが、高市早苗総理大臣は、国会答弁で年度内成立を目指すと強調している。 国際課税・国境を越える取引関係の改正項目 令和8年度税制改正のうち、クロスボーダー取引に関係する主な項目としては、次の2つを挙げることができる。 グローバル・ミニマム課税関係の見直し(米国多国籍企業等に対する適用免除基準の創設) 国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化(少額輸入貨物課税の拡大とプラットフォーム課税の創設) 本稿では、これらの改正の概要を簡単に紹介したい。 ※なお、令和8年度税制改正法案は第221回国会で審議中である(3月12日現在)。本稿は税制改正大綱及び法案ベースの内容に基づいており、今後異同があり得る。なお、条文番号は原則として改正法案のそれによる。 グローバル・ミニマム課税の見直し わが国は、OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」で合意されたグローバル・ミニマム課税に対応するため、令和5年度(2023)税制改正において所得合算ルール(IIR)、令和7年度(2025)税制改正において軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)を導入し、多国籍企業の実効税負担率が15%を下回る場合、15%との差分についてトップアップ課税するための制度を整備してきた。 令和8年度改正では、一定の要件を満たす国又は地域について、財務大臣が指定した場合、その国又は地域(以下便宜上「対象国」という)を最終親会社所在地国とする特定多国籍企業グループ等につき、トップアップ税額を零とする(本稿では、便宜上トップアップ課税の免除と呼ぶ)適用免除基準や(法人税法第82条の3第7項)、国際最低課税残余額(UTPR)から当該対象国に最終親会社を置く多国籍企業を除外する適用免除基準(法人税法第82条の11第4項)を設けることとされている。 トップアップ税額を零とするための要件としては、20%以上の税率で会社等の所得に対する租税が課されること(法人税法第82条の3第7項第1号)、自国内最低課税額に係る税(QDMTT)又は15%以上の補完的課税があること(同条第7項第2号)、子会社等の所得を原則として広く親会社側で益金算入する規定があること(同条第7項第3号)などが掲げられている。 〈法人税法の改正(抜粋)〉 これは、2025年6月28日に発出された「グローバル・ミニマム課税に関するG7声明」を受けて、予定されていた年末を越えて2026年1月5日に公表した「共存パッケージ」を実施するためのものだ。その中核は、令和8年1月23日に閣議決定した文書において「米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存」としているように、米国多国籍企業にグローバル・ミニマム課税の「トップアップ税」を適用しないことを確保することにあると言ってよい(経緯について詳しくは、本連載【第22回】を参照)。 この見直しは、国際課税実務との摩擦を回避する観点から歓迎できる。この見直しの根底にある内容は、昨年6月のG7声明で、日本も当事者の一人として国際的に合意したものであり、この見直しなしですでに適用が開始されている(2024年4月以後に開始する会計年度)「国際最低課税額」(IIR)や「国際最低課税残余額」(UTPR)の規定を米国多国籍企業に適用した場合には、日本企業や日本の個人は米国で「報復的な」課税を受ける可能性があったからだ。今回の改正は、国際合意を踏まえて重要な制度調整を行うものと理解できる。 「国際基準」(ソフトロー)の「国内法基準」化と租税法律主義 もっとも、技術的には、わが国のこれまでの租税法にみられない規定となっている点に注目しておきたい。制度の発動要件(具体的には、グローバル・ミニマム税のためのトップアップ税が零となる要件)は、①「次に掲げる要件その他の財務省令で定める要件を満たしていると」②「国際的に認められる国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域」の多国籍企業という二層構成を採っている。このため、多国籍企業からみると、どの国がいつ指定対象となるのか、どの程度安定的に運用されるのかは、現時点の資料等からだけではなお見通しにくい。国内法上の指定制度がOECDにおける議論や合意といった“ソフトロー”に依拠する点で、不確実性が残る仕組みとなっているようにも思われる。 租税法律主義(憲法84条)の縛りが強い日本においては、主要要件を国内法法律に置きつつ(ただし、日本独自のものではなく、「共存パッケージ」の内容をなぞったもの)、国際合意を踏まえた指定制度を組み合わせる2層構造の基準は、比較法的には理解可能であるが(後述の「国際基準の国内基準化の方法」参照)、その分、指定基準や運用方針の明確化が不可欠になるように思う。 OECDは対象国について公示する制度「Central Record」を導入し、対象となる制度を持つ国名を掲示している(例えば、トップアップ課税を免除する共存セーフハーバーの対象国としては米国だけが記載されている)。 したがって、これを直接引用できれば簡便であるが、OECD/G20の「BEPS包摂的枠組」は条約等に基づいた組織ではないし、「共存パッケージ」は事務運営指針(administrative guidance)と呼ばれるソフトローである。これを直接根拠とし、参照(cross-reference)により「法源」とすることはできないのかもしれない。しかし、そうであれば、国内法に規定する要件を満たしていると「国際的に認められる」とは何を意味しているのかが重要になる。 申告実務においては今後示される財務大臣の指定に従うほかないが、この問題は立法裁量と委任の限界なども含め、いくつかのこれまでに経験していない興味深い問題を内包している可能性がある。この点については、今後の説明や評価を待つこととしたい。 電子商取引(BtoCの物販)の拡大 今回の改正の背景には、プラットフォーム等を利用した物販のBtoC市場規模の拡大がある。経済産業省によると、物販系分野のBtoC EC市場規模は2024年に15.2兆円に達しており、コンピューターネットワーク上で受発注が行われるEC取引の率は9.78%となっている。 【図1】 BtoC EC物販市場の拡大とEC化率 (出所) 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」5頁より引用。なお、EC化率は、電話、FAX、Eメール、相対(対面)等も含めた全ての商取引金額(商取引市場規模)に対するEC市場規模の割合と定義されている(16頁)。また、ECとは、「インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること」としている(13頁)。 少額貨物の輸入の増加 また、課税価格の合計額が1万円以下の貨物で、輸入時に課される消費税等が免除される少額貨物の輸入金額・件数も大幅に増加している。 2019年には3,146万件、860億円、1件平均2,734円であったものが、 2024年には16,966万件、4,258億円、1件平均2,510円となった 少額貨物への消費税免税制度については、近年、廃止する国が増えていることから、わが国の消費税1万円以下の少額輸入貨物の免税制度の基準が相対的に見て高い状況が生まれている。 【図2】 少額免税貨物に対する消費税・関税免除制度 (注) 米国の関税免税基準額は、トランプ大統領令により、2025年8月29日に停止されている。 (出所) 財務省「国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題」(令和7年5月13日)9頁より抜粋して引用。なお、原文にあった注(※1~※4)は割愛している。 海外から直送される少額資産(1品あたり1万円以下)への消費税課税の拡大 国境を越えて行われる通信販売のうち、1万円以下の少額輸入貨物の販売を、資産の譲渡等に係る消費税の課税対象とすることとされた(消費税法第4条第3項)。 この見直しは、国内事業者と越境EC事業者との競争条件を平準化するという点で理解しやすい。国内販売には消費税が課されるのに、海外からの少額貨物に有利な扱いが残ると、中立性が損なわれるからである。 他方で、登録番号の付記、輸入申告との連動、特定少額資産販売事業者の登録、公表・通知義務、仕入税額控除との関係整理など、実務上の対応事項は多い。制度目的は理解できるが、海外事業者、プラットフォーム事業者、通関実務のそれぞれにそれなりに重いコンプライアンス負担を課す点は否定し難い。 資産の譲渡に係るプラットフォーム課税の創設(アプリ課税と同様の仕組みを物販に導入) 資産の譲渡に係るプラットフォーム課税制度が創設される。対象は、デジタルプラットフォームを介した次の2つである。 国外事業者が国内で行う資産の譲渡(国内の倉庫から国内の消費者に商品を発送するようなケース。消費税法第15条の3第1項第1号) 事業者が行う特定少額資産の譲渡(消費税法第15条の3第1項第2号) ※特定少額資産の譲渡とは、通信販売の方法により、国内以外の地域から国内宛てに発送される資産で、1個あたりの対価額が1万円(税抜き)以下のもの(消費税法第2条第1項第8号の6)。 これらがデジタルプラットフォームを介して行われ、その対価が国税庁長官が指定するプラットフォーム事業者(「第二種プラットフォーム事業者」)を介して収受される場合には、その第二種プラットフォーム事業者が当該譲渡を行ったものとみなされ、納税義務者となる(消費税法第15条の3を新設)。 指定基準は、当該対価のうち当該プラットフォーム事業者を介して収受する額の合計が課税期間に50億円を超える場合である。通知・公表、明細書添付、仕入税額控除の特例も併せて整備されている。 無数の国外販売者を個別に追うよりも、大規模なプラットフォーム事業者に納税義務を転換する方が、執行可能性を高めるという意味で合理性がある。 もっとも、50億円基準の下では、中規模事業者やプラットフォーム外取引には同じ仕組みが及ばない。そのため、制度は徴税可能性を高める一方で、課税の網に一定の段差を残す構造でもある。これは制度設計上の割り切りであるが、適正課税の担保と社会的なコストのバランスの観点から、理解できるものである。 なお、この仕組みの原型としては、令和6年度税制改正で導入され、令和7年4月1日から適用された、国外事業者によるアプリ配信等の消費者向け電気通信利用役務の提供に対するプラットフォーム課税がある。今回の改正により、クロスボーダーの消費税課税において、プラットフォーマーを納税義務者とする流れが明確になったと言えるだろう。 国会審議への期待 令和7年度税制改正法案は、最終的に3月31日に成立した。令和8年度税制改正法案は2月20日に国会提出され、3月9日時点では衆議院で審議中である。税制改正法は、成立後の解釈や将来の紛争処理において立法趣旨が参照される場面もあり、議会での議論は将来の解釈・適用にも影響がある。したがって、国民生活や企業活動への影響が大きい改正については、十分な審議を行い、法案の趣旨と射程を明らかにすることが望ましい。 【表】 税制改正日程(令和8年3月12日現在) 令和8年度税制改正 (参考)令和7年度税制改正 税制改正大綱閣議決定 令和7年12月26日 令和6年12月27日 追加閣議決定 令和8年1月23日(※1) 法律案閣議決定・国会提出 令和8年2月20日 令和7年2月4日 与党修正案国会提出 令和7年2月28日(※2) 法律の成立 令和7年3月31日 (※1) 「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」 (※2) 基礎控除の特例を創設するための修正案(自民・公明案) (出所) 筆者作成。 令和8年度改正には、基礎控除等の物価連動見直し、AI・量子等を対象とする戦略技術領域型研究開発税制、NISAの拡充、防衛特別所得税の創設など、従来の枠組みに収まらない先駆的な項目も多く含まれている。国際課税・消費課税の分野でも、制度の実務運用と予見可能性の確保は今後の大きな論点であり、国会審議において必要な議論がなされることが期待される。 (了)
2026年3月期決算における会計処理の留意事項 【第1回】 史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋 Ⅰ 法定実効税率 2025年2月4日に国会に提出された令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律案」において、防衛特別法人税が2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることとなった。そして、2025年3月決算の会社において防衛特別法人税の税効果会計における取扱いがないため、それを明らかにするために2025年2月20日にASBJから補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(以下「補足文書」という)が公表された。 その後、令和7年3月 31 日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)(令7改正法)」により「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防確法)」が改正され、防衛特別法人税が創設された。そして、2026年2月7日にASBJから、実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(以下「防衛取扱い」という)が公表された。防衛取扱いは2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用される。 なお、令和8年度税制改正は今後行われる予定であるが、法定実効税率への影響はないと考えられる。 1 法定実効税率 法定実効税率については、防衛特別法人税率は地方法人税率と同様に取り扱うとされている(補足文書13、防衛取扱い9)。防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、2026年3月決算で使用する法定実効税率は防衛特別法人税を考慮して、繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。 Ⅱ 外形標準課税の改正 令和6年度税制改正により、法人事業税の外形標準課税について、従前の外形標準課税の適用対象法人(事業年度終了の日において資本金1億円超の法人)に加え、以下1、2に該当する法人についても外形標準課税の対象とする改正が行われている。 1 外形標準課税の対象の追加 事業年度末時点で資本金1億円超の法人に加えて、資本金が1億円以下であっても以下の要件をすべて満たす法人は、外形標準課税の対象となる。 2 駆け込み減資への対応 駆け込み減資を行い、外形標準課税の対象から外れることを防止するため、以下の経過措置が設けられている。 (出所:総務省「法人事業税における外形標準課税」) 3 100子法人等への対応 一定規模以上の親会社の子会社についても実態に応じて外形標準課税の対象とするため、以下の要件をすべて満たす子会社は、外形標準課税の対象となる。 (出所:総務省「法人事業税における外形標準課税」) なお、この対応によって、新たに外形標準課税の対象となったことにより、法人事業税額が従来の税額を超えることとなる場合は、以下のとおり税負担が軽減される。 2026年4月1日から2027年3月31日まで の間に開始する事業年度 当該超える額の3分の2を軽減 2027年4月1日から2028年3月31日まで の間に開始する事業年度 当該超える額の3分の1を軽減 4 適用時期 適用時期は、以下のとおりである。 1 外形標準課税の対象の追加 2 駆け込み減資への対応 2025年4月1日以降開始する事業年度から適用 3 100%子会社への対応 2026年4月1日以降開始する事業年度から適用 5 中間申告義務 中間申告の義務も以下のように改正されている。 改正前 改正後 中間申告義務を有することとされる外形標準課税の適用対象法人であるかどうかの判定は、当該事業年度開始の日以後6か月を経過した日の前日の現況による。 中間申告義務を有することとされる外形標準課税の適用対象法人であるかどうかの判定は、当該事業年度の前事業年度の事業税について外形標準課税の適用対象法人であるかどうかによる。 2025年4月1日以後開始事業年度においては、前事業年度について外形標準課税の適用対象法人(従前の外形標準課税の適用対象法人(事業年度終了の日において資本金1億円超の法人)を含む)である場合には、当該事業年度開始の日以後6か月を経過した日の前日において外形標準課税の対象外であっても、中間申告を行う必要がある。 Ⅲ 令和8年度税制改正大綱 2025年12月26日に令和8年度税制改正大綱が公表されている。本解説では、この中から多くの企業に影響する項目について解説する。 〈企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設〉 1 概要 内国法人が関連者との間で特定取引を行った場合、その取引に関して、取引関連書類等にその取引に関する資産又は役務の提供の明細、その取引においてその内国法人が支払うこととなる対価の額の計算の明細等のその取引に係る対価の額を算定するために必要な事項の記載又は記録がないときは、その記載又は記録がない事項を明らかにする書類(電磁的記録を含む)を取得し、又は作成し、かつ、これを保存しなければならない。 書類の保存が法令の定めに従って行われない場合は、青色申告の承認の取消事由等となる。 関連者 移転価格税制における関連者(株式保有割合50%以上の持株関係や役員兼務による実質的支配関係等があるもの)と同様の基準により判定 特定取引(販売費、一般管理費その他の費用 の額の基因となるものに限る) ① 資産の譲渡又は貸付け ・工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの ・著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む) ・プログラムの著作物 ② 役務の提供 ・一定の研究開発、広告宣伝等の事業活動 ・資産を使用させる行為、維持及び管理 ・関連者が内国法人に対して行う経営の管理又は指導、情報の提供等の役務の提供で一定のもの ・以上の役務の提供に類するもの 取引関連書類等 注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類(電磁的記録を含む) 2 実務上の留意点 グループ間の資産の譲渡・貸付け、役務の提供について「対価の額の計算の明細等のその取引に係る対価の額を算定するために必要な事項の記載又は記録がないときは、その記載又は記録がない事項を明らかにする書類」を保存することが義務付けられることになるため、これらの書類を作成していない場合は、作成する必要がある。 3 適用時期 税制改正大綱においては、適用時期は明記されていない。 Ⅳ 未適用の会計基準等の注記 2024年9月に「リースに関する会計基準」及び「リースに関する会計基準の適用指針」等が公表されている。 当該基準等は、多くの会社にとって相当程度の影響がある基準であると考えられるため、有価証券報告書では「未適用の会計基準等に関する注記」の記載を検討する必要がある。なお、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において注記する必要はない(財務諸表等規則8の3の3、連結財務諸表規則14の4)。 なお、計算書類においては、会社計算規則上、必ずしも注記は求められていない。 【(株)マネーフォワード 2025年11月期 有価証券報告書】 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第182回】 株式会社サンウェルズ 「外部弁護士からの調査報告書(2026年3月6日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【株式会社サンウェルズ外部弁護士による調査の概要】 【株式会社サンウェルズの概要】 株式会社サンウェルズ(報告書上は「当社」、以下、「サンウェルズ」と略称する)は、代表取締役社長の苗代亮達氏(以下、「社長」と略称する)が、2006年9月に設立。当初は石川県内を中心にデイサービスやグループホームを展開していたが、2018年よりパーキンソン病(PD)専門フロアを開設し、現在は中核事業であるパーキンソン病専門ホーム(PDハウス)を全国に40施設以上展開している。 売上高26,496百万円、経常利益388百万円、資本金35百万円、税引前当期純損失△316百万円。従業員数3,302人。社長とその資産管理会社が発行済み株式の53.66%を所有している(いずれも2025年3月期実績)。本店所在地は石川県金沢市。2022年6月、東京証券取引所グロース市場に上場し、2024年7月にはプライム市場へ区分変更。会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ北陸事務所。 〈事案の経緯〉 2024年9月3日 前日、共同通信社が配信した記事において運営する施設で過剰訪問看護及び保険の不正請求が存在すると報じられたことを、サンウェルズ側は、そのような事実は一切ないと否定するリリース(※1)を公表 2024年9月20日 共同通信社の報道に関する調査のため、特別調査委員会を設置(※2) 2025年2月7日 調査報告書を受領し、公表(※3) 2025年2月12日 過年度有価証券報告書等の訂正(※4) 2025年5月1日 宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求(※5) 2025年12月1日 運転代行サービスの利用経費等に関する調査の実施及び外部弁護士からの調査報告書の受領(※6) (※1) 「共同通信社における記事について」 (※2) 「特別長委員会の設置に関するお知らせ」 (※3) 「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」 (※4) 「過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」 (※5) 「宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求に関するお知らせ」 (※6) 「運転代行サービスの利用経費等に関する調査の実施及び外部弁護士からの調査報告書の受領並びに再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」 【調査報告書の概要】 1 外部弁護士に調査を委嘱した経緯 サンウェルズは、契約していた運転代行会社のサービスについて、社長が私的目的で利用していたこと等の疑いに関する調査(以下、「前回調査」という)を外部の弁護士を起用して行ったところ、この調査の過程において、社長が東京の社有車も業務に使用していることが判明した。このような調査の結果を受け、外部機関から、上場申請時に日本取引所自主規制法人(以下、「取引所」という)に提出した「役員に割り当てられた社有車が金沢に所在の社有車1台である」という趣旨の回答内容と齟齬が生じるのではないかとの疑義を指摘されたことから、監査等委員会は、2026年1月、独立した立場の外部弁護士に依頼して、疑義について調査を行うこととした。 2 前回調査の結果概要 (1) 社長による私的利用 外部弁護士による調査の結果、社長による私的利用が確認され、その金額は、運転代行サービスで約406万円、接待交際費で約145万円など、合計614万円あまりであった。 (2) 原因分析 外部弁護士は、原因分析として、以下の5項目を挙げている。その中で、社長の接待交際費資料に関して、監査等委員会がこれを牽制し、一定の成果が上がっていたにもかかわらず、社長の理解不足と社長秘書による形式的な申請により、監査等委員会の指摘の趣旨・意図が正しく理解されておらず、適切な運用が徹底されていなかったために不適切な交際費の処理につながった部分があることも否定できないとしている。 (3) 再発防止策 外部弁護士による再発防止策の提言は、次の4項目からなっている。 (4) 財務上の影響について サンウェルズは、調査結果を受けて、社長から、運転代行サービス等の私的利用分の経費(2025年12月1日時点で確定している金額は約16百万円)に加え、本調査に要した費用の全額(2025年12月1日時点で確定している金額は約40百万円)を自主的に返還したいとの申し出があり、これを受理することとしたことから、財務上の重要な影響はないことを公表している。 3 外部弁護士による調査結果の概要 (1) 2022年3月17日付けで取引所に提出した回答書1の記載内容 報告書によれば、取引所からの「社有車について」に質問に答える形で、サンウェルズは、「2022年3月当時、社有車は80台稼働しており、社有車輛管理規程を定めて管理しており、業務での使用を目的として役員及び社員(従業員)に適用し、私用での使用・社外への貸与は禁止している、ただし、役員では社長のみ業務用として社有車1台を支給していることを回答した」(下線は引用者による)。 (2) 事実関係 外部弁護士による調査の結果、2022年3月時点において、役員に支給されていた社有車は、金沢に配置されていた車両1台に加え、東京に配置されていた車両1台の合計2台であり、サンウェルズが提出した回答書における社有車の台数の記載との間に齟齬が認められた。 ただし、社長以外の役員に社有車が支給されていた事実は認められていない。 (3) 社有車の管理記録 外部弁護士による調査の結果、金沢の社有車について作成されていた車両管理日報には、通勤や会食等の利用に関する記載が十分に反映されていない例が確認され、記録として完全に正確なものとは言い難い状況が認められた。 (4) 故意性の判断 外部弁護士による調査の結果、サンウェルズが、提出し回答書の内容に事実との齟齬が認められる点はあるものの、作成者が当時の認識に反する内容を意図的に記載したものとまでは認められなかった。 4 外部弁護士の提言を受けたサンウェルズによる再発防止策 調査報告書公表時のリリースで、サンウェルズは、次のとおり3項目からなる再発防止策を明らかにしている。 サンウェルズは、このリリースを、「これらの再発防止策を着実に実行し、社有車管理の適正化およびコンプライアンス体制の一層の強化に努めてまいります」と締め括っている。 【調査報告書の特徴】 市場区分をグロースからプライムへ変更したサンウェルズは、変更後間もなく、「診療報酬の不正請求」を報道され、最初は、これを真っ向から否定するリリースを出したものの、調査委員会を設置して事実解明に当たらざるを得なくなり、調査の結果、「診療報酬の不正請求」を認め、過年度決算の修正を行うとともに、2025年3月期決算では、638百万円の特別調査費用等を特別損失に計上して、当期純損失の決算となった。 その後、東京証券取引所による上場再審査と上場契約違約金の徴求措置を受け、おそらくは、現在進行形で証券取引等監視委員会の開示検査を受けるなかで、社長による運転代行サービスの私的利用が判明して、さらなる調査の必要が生じ、監査等委員会が外部弁護士による調査を依頼しただけでなく、その調査の過程で発見された上場審査の回答における疑義の調査のために、さらに別の外部弁護士の調査を求めるという、異例の展開をたどってきた。 極めつけは、代表取締役が私財1,000百万円を寄付し、会社はこれを特別損失に計上して、運転資金に充当するという、中小のオーナー会社でもあまり目にすることのない、巨額の資金調達を行ったことである。 一連の経緯を振り返っておきたい。 1 監査等委員会が外部の弁護士に検証を求めた理由 特別調査委員会による調査報告書には、2024年2月、不正請求に関してPDハウス職員から内部通報があり、窓口を担当する社外取締役で常勤監査等委員である山本英博氏(以下、「山本氏」という)から、当時の専務取締役及び常務取締役に情報が共有された後、常務取締役から社長にも報告されていた。通報を受けて行われた社内調査の結果は、山本氏及び社長にも報告されたが、問題自体は存在するものの指導・改善がなされているという結論であり、社長も、対応方針について異論を述べるなどはしなかったことから、結果として、この事案は、特定のPDハウスにおける個別の問題事象であるとして、内部通報を踏まえた実態把握のためのより詳細な調査等の対応はとられなかったことが説明されている。 特別調査委員会は、サンウェルズのこの内部通報への対応について、とくに批判的なコメントは附していないが、通報をもとに、外部の調査者による全社的な調査が行われていたら、共同通信による報道で不正請求が露見して、風評被害も含めて、業績に大きな悪影響を受けることは避けられたかもしれないという監査等委員会の思いが、外部弁護士による調査を求めただけではなく、さらに、調査報告書の検証を求めるという意思決定に現れていたのではないかと思料する次第である。 2 東京証券取引所による宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求 2025年4月30日、東京証券取引所は、サンウェルズに対して、宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求を行っている。再審査の理由としては、「市場区分の変更申請に係る宣誓書において宣誓した事項に違反し、市場区分の変更に係る基準に適合していなかったと当取引所が認めた場合に該当するため」とし、上場契約違約金6,240万円の徴求理由については、以下のように説明されている。 3 社長によるサンウェルズに対する寄付 2026年2月12日、サンウェルズは、「代表取締役からの寄付金受入及び特別利益の計上に関するお知らせ」をリリースして、苗代亮達代表取締役社長が、サンウェルズの財務基盤の強化を目的として、1,000百万円の寄付を行うことを公表した。 リリースにある「寄付の背景と理由」によると、サンウェルズは、特別調査委員会による調査の結果、訪問看護事業において診療報酬の請求が過大に行われた事実が判明したため、当該事実の対象となる部分について過年度決算の訂正を行うとともに、特別調査委員会による調査報告書において指摘された原因分析及び再発防止策の提言と真摯に向き合い、「PDハウス」の運営体制について抜本的な見直しに取り組んだ結果、収益性は一時的に大幅に低下し、2025年3月期において当期純損失925百万円、2026年3月期第3四半期累計期間において四半期純損失2,055百万円を計上するに至ったことによって、手元資金水準が低下したため、財務基盤の安定化を図るべく運転資金の確保を企図して、苗代亮達代表取締役社長から寄付金1,000百万円の受入れを行うこととしたとのことである。 翌日公表された2026年3月期第3四半期決算短信によれば、サンウェルズは、この寄付金を、2月13日に受領しているが、通期の業績予想の修正は行っていない。 4 訂正された過年度の決算内容 本稿の最後に、サンウェルズが、2025年2月12日に提出した有価証券報告書の訂正報告書から、財務諸表の訂正内容をまとめておきたい。訂正の対象となったのは、2021年3月期から2024年3月期までの4期分である。 表から読み取れるのは、2024年3月期になって、「診療報酬の不正請求」による訂正金額が一気に増加していることである。もちろん主力事業である「PDハウス」の設置数が増加し、売上高も右肩上がりで上昇している中での事象ではあるのだろうが、調査に当たった特別調査委員会は、不正請求額の増加についてはとくに分析を行っていないようである。 (了)
〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年2月】 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年2月1日から2月28日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。 Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 ① 実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」 (内容:防衛特別法人税の取扱いについて、実務対応報告を公表することにより短期的な対応を行うもの) ② 企業会計基準公開草案第97号「金融商品に関する会計基準(案)」等 (内容:金融資産の譲渡において、譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化を行うもの。意見募集期間は2026年3月31日まで) Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公布されている。 〇 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第5号)等 (内容:サステナビリティ開示基準の適用、人的資本開示に関する制度見直し、株主総会前の有価証券報告書の開示などについて規定するもの) Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 監査基準報告書700実務ガイダンス「事業報告等と有価証券報告書の一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書に係る実務ガイダンス(2026年版)」(公開草案) (内容:現行の法制度下における一体書類に対する監査報告書の文例について検討し、各種の文例を示す。意見募集期間は2026年3月17日まで) (了)