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学会(学術団体)の税務Q&A 【第15回】「学術集会における仕入税額控除の留意点」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第15回】 「学術集会における仕入税額控除の留意点」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 学術集会は大規模なイベントであるため、開催するにあたっては多種多様な取引が発生する。そのため、学術集会の運営は学会本部の事務局が行うのではなく、大規模イベントの開催を専門としたコンベンション会社に業務を委託し、学術集会の経費の大部分に関しては、コンベンション会社に対して支払うケースが多い。 コンベンション会社に対する業務委託費は10%課税仕入の取引であり、通常、コンベンション会社は適格請求書発行事業者であるため、仕入税額控除が可能である。 他方で、コンベンション会社に対する支払いの中には、コンベンション会社の業務委託費のほかに、コンベンション会社が立替払いした経費の精算として支払っている内容が含まれているのが通常である。 立替払い精算に関しては、その立替払いした経費の内容やインボイスの有無によって、課税区分の扱いが異なる。 立替払いの代表例と仕入税額控除にあたっての留意点は、次の通りである。 学術集会の経費に関して、どの部分が業務委託費の一部であり、どの部分が立替払い精算なのか、という点については、コンベンション会社によって異なり、どのコンベンション会社を利用するのかという点については、同じ学会であっても開催年度によって異なる。また、仮に、同じコンベンション会社を利用する場合であっても、開催年度によって開催会場が異なるため、どの部分が業務委託費の一部であり、どの部分が立替払い精算なのかという点について異なる場合がある。 そのため、学術集会の経費に関しては、単純にコンベンション会社に対する業務委託費のため10%課税仕入の取引として判定するのではなく、学術集会の経費に関する証憑の内容を個別具体的に確認した上で、課税区分を判定することが重要となる。   (了)

#No. 612(掲載号)
#岡部 正義
2025/03/27

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第68回】「バークレイズ銀行事件-実質所得者課税の原則に基づく源泉所得税納税義務の可否-(地判令4.2.1)(その2)」~所得税法12条の規定の趣旨~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第68回】 「バークレイズ銀行事件 -実質所得者課税の原則に基づく源泉所得税納税義務の可否- (地判令4.2.1) (その2)」 ~所得税法12条の規定の趣旨~   税理士 吉村 優     4 判旨 認容。 (1) 判断枠組み (下線・網掛は筆者による。以下同様) (2) 当てはめ (3) 被告の主張について   5 考察 裁判所は、「実質所得者の判断に当たっては、前記(1)の事情を総合的に考慮して判断されるべきものと解され、その一つの事情として経済的損益の帰属等を考慮することが許容されないとは解されず・・・」と述べている。これは、実質所得者を判断する際に経済的帰属説を採用しているということではなく、法律的帰属説の立場に立ってはいるものの、それに固執することなく経済的損益の帰属等も考慮しながらの総合的な判断を要請しており、妥当なものと考えられる。 本件は、資産(社債)の所有者とその資産から生ずる果実(社債利息)の権利者が異なる場合に、どのように取り扱われることになるのかが争点である。 被告である課税庁は、「課税物件たる所得の帰属に関し、名義や形式にとらわれることなく、法律的実質に着目して判断されなければならないから、社債の所有者が単なる名義人かどうか、また、収益を享受する社債の実質的所有者(利子を収受する実質的な権利者)が誰かについての判断に当たっては、社債及び利子に関連する契約内容や取引の実態から、社債及び利子の譲渡の目的、社債及び利子の法的な処分権限、利子の経済的利益の帰属先、利子の入金口座の管理状況などを検討して、総合的に判断するのが相当である。」と述べているが、最終的にBが社債の所有者であり、かつ社債利子を収受する実質的権利者でもあると主張している。一連の社債に関連する取引について各契約内容を精査し、真に総合的に判断しているとは考え難い。 本件社債の発行に関連する各契約については、原告グループ以外の第三者が取引に係るリスクを一切負担せずかつ一定の手数料収入を享受でき、一方で本件社債等に関する経済的な損益を最終的にロンドン本店に帰属させるためのスキームが慎重に検討されていると考えられる。 裁判所は、「本件資金調達取引は、本件本支店間融資取引の経済的実質を変えず、原告グループにおける財務効率を改善させることを目的として作り上げられたものであるところ、 BやCの財務状況には一切悪影響を与えず、一定の手数料収入のみを取得させることを不可欠の要素としていたこと、本件各契約の関係者の財務諸表においても、本件社債及び本件利子についてはロンドン本店の資産又は収益として計上され、Bの資産又は収益としては計上されていないことが認められるなど、本件資金調達取引が行われるに至る経緯や関係者の認識としても本件社債等に係る損益につきロンドン本店に全て帰属させることを想定していたものである。」と認定しており、一連の取引関係者の認識とそれぞれの契約内容との間に齟齬がなく、租税回避を目的とすることを前提としたスキーム(著しく濫用的な租税回避スキーム)であるとは判断していない。 課税庁側が上訴せず判決が確定している点からも、地裁の判断を覆すことは困難であると判断したものと思われる。本判決は、資産の所有者とその資産から生ずる果実の権利者が異なる場合において、所得税法12条の規定の趣旨が適切に判断された妥当な判決であると考える。 宮本十至子教授は、国境を越えて国際的に活動している銀行(以下「多国籍銀行企業」という)で、主たる業務が資金の貸付であり、それによって利益を得ている場合、「顧客への資金調達のため、頻繁に本支店間、支店相互間で資金の回金が行われる。当該取引が課税上認識されるかどうかは、支店の利得の算定上、重要な問題である。」(※1)と述べ、本支店間の内部利子をめぐる課税問題について詳細に検討している。 (※1) 宮本十至子「多国籍銀行企業の恒久的施設課税」税法学560号(1984)175頁-176頁 この中で、「日本は、企業の他の部門から調達した資金を用いて支店が貸出した貸付金について、当該企業の外部の貸主からの資金の原始的供給にまで遡るトレーシング方式(資金源追跡方式)をとっている。その方式によると、資金の源泉が追跡確認でき、それが立証される場合に限り、本支店間の内部利子の損金算入を認める。しかしながら、上述のように資金のトレースは不可能に近いので、支店は合理的な推計によることも、独立企業原則に従っている限り、認められている。」(※2)と述べ、銀行内部の支払利子について損金算入しなければならないとする多くのOECD加盟国の見解との乖離は小さいとの見解を示している。 (※2) 宮本・前掲(※1)179頁 多国籍銀行企業において、企業全体としての資金調達コストを最小化しようとする取組みは今後も継続的に行われ、様々な複雑なスキームが実施されるものと考えられる。それらスキームの各々について取引実態や契約内容を詳細に調査し、法律の抜け穴をかいくぐる課税逃れとして不適切なものがあれば、丁寧にその抜け穴を塞いでいく努力が必要であろう。   (了)

#No. 612(掲載号)
#吉村 優
2025/03/27

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】 (最終回)   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   Ⅸ 分配可能額 配当や自己株式の取得は、債権者保護の観点から、分配可能額を超えて行うことができないとされている(会社法461①)。しかし、昨今、分配可能額を超えた剰余金の配当や自己株式の取得が行われている事例が発生している。そのため、ここでは分配可能額の算定について、解説する。 分配可能額は、以下の流れで算定する。   1 事業年度末日における剰余金の額の算定 まず、事業年度末日における剰余金の額を、以下のように算定する(会社法446)。以下に従って算定すると、決算日における剰余金の額は、「その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額」となる。   2 分配時点における剰余金の算定 次に、分配時点における剰余金を算定する(会社法446)。   3 分配可能額の算定 最後に、分配可能額を算定する(会社法461)。ここで算定した分配可能額を超えて配当を行ってはならない。   4 実務上の留意点 上記1から3で計算式を解説したが、最初から細かい検証をするのではなく、まず、配当総額や自己株式取得総額と「期末日におけるその他資本剰余金+その他利益剰余金」を比較し、配当総額や自己株式取得総額が十分に下回っているか確認することが重要である。 一方、十分に下回っていない場合は、詳細に検証する必要がある。その際には、監査人や顧問弁護士等に相談しながら慎重に検証する必要がある。   Ⅹ 改正リース基準の準備 ASBJより2024年9月13日に「企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、「改正リース基準」という)が公表された。 改正リース基準は、今までオペレーティング・リース取引であったものについても、原則、資産計上が必要であるため、大きな影響がある改正である。 適用時期は、以下のとおりである。 適用にあたって、特に以下の2点について早急に検討を行う必要がある。   1 契約の洗い出し ファイナンス・リースのみならず、オペレーティング・リースを含めて全てのリース(借りているもの)について、会計処理の検討をする必要があるため、まずは全てのリース(借りている)契約を網羅的に洗い出す必要がある。 その際には、経理だけでは全てのリース契約を把握していないことが考えられるため、以下を行って契約を網羅的に洗い出すことが考えられる。   2 システム導入の検討 ファイナンス・リースのみならず、オペレーティング・リースを含めて全てのリース(借りているもの)について、会計処理の検討をする必要があるため、件数が多くなりエクセルで管理することが難しい場合もあると考えらえる。また、単純な件数のみならず、会計と税務で差が生じること、リース期間の設定、注記への対応等も検討しなければならない。そのため、エクセル管理できるのかどうか、システム導入が必要かどうかを会計基準の適用に間に合うように検討する必要がある。   Ⅺ 有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項 2024年3月29日に金融庁より「令和5年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等」が公表された。今回は、有価証券報告書作成にあたって留意すべき事項を解説する。 また、「サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集」も合わせて公表されている。サステナビリティ開示と政策保有株式関連について、自主的な改善のために参考となる事例も公表されているため、参考にされたい。   1 サステナビリティ開示 〈有価証券報告書におけるサステナビリティに関する考え方及び取組の記載の全体像〉 (出所:金融庁「令和5年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等」P.5) (1) ガバナンス (2) リスク管理 (3) 戦略並びに指標及び目標 (4) 人的資本に関する方針、指標、目標及び実績 (5) サステナビリティに関する考え方及び取組の参照方法   2 従業員の状況及びコーポレート・ガバナンスの状況等の開示 (1) 女性管理職比率 (2) コーポレート・ガバナンスの概要 (3) 内部監査の状況 (4) 政策保有株式 (連載了)

#No. 612(掲載号)
#西田 友洋
2025/03/27

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第48回】「うっかりミスが何度も繰り返される箇所を要チェック②」~事業報告の「財産及び損益の状況」~

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第48回】 「うっかりミスが何度も繰り返される箇所を要チェック②」 ~事業報告の「財産及び損益の状況」~   公認会計士 石王丸 周夫   1 総資産と純資産を見間違えたか 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 数字の入力箇所が上下逆転してしまったというミスです。このミスが起きたのは、事業報告の「直前3連結会計年度の財産及び損益の状況」という箇所です。事業報告は計算書類の範囲には含まれませんが、株主総会招集通知の添付書類として、計算書類と一体となって読まれるものなので、この連載で取り上げることにします。 今回も前回に引き続き、うっかりミスの内容や原因ではなく、それが発生した場所に注目します。特に事業報告において、うっかりミスが繰り返し発生している箇所を整理していきたいと思います。 では早速、事例を見ていきましょう。 【事例48-1】 総資産と純資産の金額を逆に記載してしまったミス(その1)。 〈訂正前〉 (出所) 株式会社ソルクシーズ「第44期定時株主総会招集ご通知」(2024年3月12日、電子提供措置の開始日2024年3月6日)及び「「第44期定時株主総会招集ご通知」記載事項の一部訂正について」(2024年3月19日) この事例の会社は、2024年3月6日に本事例を含む「第44期定時株主総会招集ご通知」を公表(電子提供措置の開始)し、2024年3月19日に当該誤記載の訂正を公表しています。 間違っていたのは、【事例48-1】の赤枠部分で、事業報告の「直前3連結会計年度の財産及び損益の状況」という表中の、総資産と純資産の金額です。金額の記載欄を逆にしてしまったとみられ、うっかりミスと思われます。「総資産」と「純資産」が1文字違いで、かつ「総」と「純」の字が似ているため、入力時に欄を間違えてしまった可能性が考えられます。 このミスは、連結貸借対照表を見ながら「財産及び損益の状況」に転記した場合に起こりやすいような気がします。連結貸借対照表の貸方では、純資産合計欄が負債・純資産合計欄(総資産合計と同額)の上に表示される一方、「財産及び損益の状況」では総資産が純資産の上に設けてあります。つまり、上下の順序を逆にして転記しなければならないので、いかにもミスが起こりそうです。 実際、他社でも全く同じミスが起きています。 【事例48-2】 総資産と純資産の金額を逆に記載してしまったミス(その2)。 (参照資料) 株式会社カクヤス「招集通知記載事項の一部訂正について」(2020年6月26日) この事例の会社は、2020年6月10日に本事例を含む「第38回定時株主総会招集ご通知」を公表し、2020年6月26日に当該誤記載の訂正を公表しています。当期及び直前3事業年度の単体の主な財務数値を記載した表で、1番左の最も古い年度の列でこのミスが起きています。上場後初めて迎えた決算期だったことも関係していたのかもしれません。   2 「財産及び損益の状況」はうっかりミス多発箇所 このようなミスが何年かおきに発生するのは避けられないように思います。ただし、開示前に落ち着いて確認すれば、発見できる可能性はあります。 【事例48-1】から、総資産と純資産の行だけを抜き出してみましたので、おかしなところに気づくことができないか、確認してみてください。 数字の推移に違和感がありますね。右端の部分です。 このようにして、入力ミスに気がつくことはできたかもしれません。とはいえ実務では、「間違いが含まれていますよ」と言われて確認するわけではありませんので、見つけるのは簡単ではないというわけです。 そう考えると、やはり、「この場所はミスが多発しているから気をつけねば」という心構えを持っておく必要があります。 実際、「財産及び損益の状況」の表ではミスが多いです。もう1つ事例を紹介します。 【事例48-3】 百万円単位で記載すべき金額を千円単位で記載してしまったミス。 (出所) 株式会社グルメ杵屋「第56期定時株主総会招集ご通知」の一部訂正について」(2022年6月7日) この事例の会社は、2022年6月3日に本事例を含む「第56期定時株主総会招集ご通知」(2022年6月7日付)を公表し、2022年6月7日に当該誤記載の訂正を公表しています。 間違っていたのは、第56期の親会社株主に帰属する当期純利益の金額で、百万円単位で記載すべきところを千円単位で記載してしまったというものです。 これも落ち着いて数字を読めば、気づくことができそうです。【事例48-3】から第56期の売上高、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純利益の部分を抜き出すと次のようになります。 親会社株主に帰属する当期純利益の金額が売上高より大きいことに気づきます。これは常識的に考えて異常です。 この会社に限らず、一般論として、数字を記号ではなく会社の業績として読んでいれば気がつくのですが、作業に没頭している作成担当者は見逃す可能性があり、それ以外の人にそうした確認を期待したいところです。   3 最もミスが繰り返される箇所はここ 事業報告には、ミスが繰り返し起きている箇所が他にもあります。最も気をつけるべき箇所は、すでにこの連載で解説済みです。次の箇所です。 〈うっかりミスの多発箇所〉 【第45回】で取り上げた事例は、取締役等の報酬等の一覧表で起きているミス事例の1つにすぎません。実際には、外部からはミスの原因がよくわからないものも含めて多数の事例があります。十分に注意しましょう。   〈今回のまとめ〉 事業報告の「財産及び損益の状況」は、うっかりミスが繰り返し起きている箇所です。会社の業績をイメージしながら数字を読むことで、違和感がないことを確かめてください。 (了)

#No. 612(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/03/27

〔業種別Q&A〕労使間トラブル事例と会社対応 【第2回】「製品の情報や製造のノウハウ等の機密情報保護の対応策」

〔業種別Q&A〕 労使間トラブル事例と会社対応 【第2回】 〈製造業〉 〔Q2〕 「製品の情報や製造のノウハウ等の機密情報保護の対応策」   弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士 中野 博和 【Q】 当社では精密機器の製造を行っております。製造している精密機器に関する情報が外部に流出することは死活問題ですが、これを避けるために、どのようなことをすればよいのでしょうか。 【A】 労働者に対して秘密保持義務や競業避止義務を課した就業規則を定めたり、誓約書への署名・押印等をさせたりすることが考えられます。 ▲ ▼ ▲ 解 説 ▲ ▼ ▲ 1 はじめに 製造業では、製品の情報や製造のノウハウなどが外部に漏れてしまうと、模倣品が製造される等により損害が生じかねないため、これらの情報を外部に漏らさないように管理する必要がある。 そのため、労働者に対して秘密保持義務や競業避止義務を課した就業規則を定めたり、誓約書への署名・押印等をしてもらったりすることがよく見受けられる。 しかし、就業規則や誓約書があるからといって、必ずしも秘密保持義務や競業避止義務が認められるわけではない。 そこで、以下では、秘密保持義務や競業避止義務に関してよくある問題点を中心に解説する。   2 秘密保持義務について (1) 在職中の場合 ア 事前の対応について 在職中の労働者については、「在職中の労働者は、労働契約上の信義則に基づく誠実義務として、当然に、業務上知り得た企業の機密をみだりに開示しない義務を負う」(レガシィ事件・東京地判平成27年3月27日労経速2246号3頁など)とされているため、秘密保持義務を定めた誓約書への署名・押印等がなくとも、労働者は秘密保持義務を負う。 もっとも、この信義則(労働契約法3条4項)上の義務としての秘密保持義務の内容は抽象的であり、労働者としてはどこまでが業務上の秘密に含まれるのかが必ずしも明確なものとはならず、実効的とはいえない。また、労働者によっては秘密保持に対する自覚が薄い場合がある。 そのため、秘密保持義務について就業規則で定めたり、秘密保持義務を定めた誓約書を労働者に提出してもらったりするなどの対応をするべきである。 なお、営業秘密については、不正競争防止法において刑罰付きで規制がされており、このために、不正競争防止法において定義される営業秘密として認められるためには、①秘密管理性、②非公知性及び③有用性の全てを満たしている必要がある。 他方で、誓約書など、契約で秘密保持義務を発生させる場合には、秘密保持義務に違反したときでも刑罰が科されるわけではないため、不正競争防止法上の営業秘密よりも広い範囲の情報を秘密保持義務の対象とすることができると考えられている。 誓約書については、どのタイミングで提出してもらえばよいのかということが問題となり得るが、主として、入社時、異動時、退職時のそれぞれに労働者から誓約書を提出してもらうとよい。特に、異動時においては、異動先で取り扱う秘密を秘密保持義務の対象として盛り込むことで秘密保持義務の対象を明確化することができる。ただし、異動する全ての労働者に対して、逐一誓約書の提出を求めることは現実的ではないため、異動先において取り扱う情報が要保護性の高いような場合に限るべきである。 イ 事後の対応について 秘密保持義務違反が発覚した場合には、当該労働者に対し、損害賠償請求、懲戒処分及び普通解雇などの対応をすることが考えられる。 (2) 退職後の場合 ア 事前の対応について 在職中の場合とは異なり、退職後については、労働者は当然に秘密保持義務を負うということはない。 したがって、労働者に退職後にも秘密保持義務を課すためには、就業規則や誓約書で秘密保持義務を定めた規定に「在職中、退職後の如何を問わず」といった文言を記載しておくことが不可欠である。 なお、秘密保持契約は、対象とする営業秘密等の特定性や範囲、秘密として保護する価値の有無及び程度、退職者の従前の地位等の事情を総合考慮し、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合には、公序良俗(民法90条)に違反し無効となるため、注意が必要である(マツイ事件・大阪地判平成25年9月27日労働判例ジャーナル21号10頁参照)。秘密保持契約において定められた営業秘密等の範囲が不明確で過度に広範であったり、そもそも営業秘密等として保護する必要がなかったりするような場合には、当該契約は従業員の職業選択の自由や営業の自由を不当に侵害するものとなり得るためである。 イ 事後の対応について 秘密保持義務違反が発覚した場合には、当該労働者に対し、損害賠償請求や退職金の返還請求をすることなどが考えられるが、既に退職してしまっているため、懲戒処分や普通解雇をすることはできない。なお、実際に退職金の返還請求をすることができるか否かについては、退職金規程等の定め方により異なる。また、返還請求が認められるとしても、必ずしも全額の返還を求めることができるとは限らない。秘密保持義務の違反の程度等によって、どの程度の額の返還請求が認められるかが変わってくる。   3 競業避止義務について (1) 在職中の場合 ア 事前の対応について 秘密保持義務と同様、在職中の労働者は、競業避止義務を定めた誓約書への署名・押印等がなくとも、信義則(労働契約法3条4項)を根拠として、競業避止義務を負う(ピアス事件・大阪地判平成21年3月30日労判987号60頁等参照)が、労働者に競業避止に関する自覚を高めてもらう観点からは、競業避止義務について就業規則で定めたり、競業避止義務を定めた誓約書を労働者に提出してもらうなどの対応をすることも考えられる。ただし、誓約書については、秘密保持義務の場合とは異なり、異動時にも誓約書を提出してもらう必要まではない。 イ 事後の対応について 競業避止義務違反が発覚した場合には、当該労働者に対し、損害賠償請求、懲戒処分、普通解雇、競業行為の差止請求及びその仮処分の申立てなどの対応をすることが考えられる。 (2) 退職後の場合 ア 事前の対応について 在職中の場合とは異なり、退職後については、労働者は当然に競業避止義務を負うということはない。 したがって、労働者に退職後にも競業避止義務を課すためには、就業規則や誓約書で競業避止義務を定めた規定に「在職中、退職後の如何を問わず」といった文言を記載しておくことが不可欠である。 ちなみに、競業避止義務は、秘密保持義務と異なり、職業選択の自由(憲法22条1項)に対する制約が大きいため、その有効性について厳格に判断されている。 具体的には、①会社の正当な利益を保護することが目的であるか、②労働者が競業避止義務を負うのに相応しい地位にあったか、③禁止の対象となる競業行為の範囲、地域的な範囲、禁止期間の内容、④代償措置の有無及びその内容等を総合的に考慮して判断される。 ①については、不正競争防止法において定義される営業秘密に該当しない情報についても、正当な利益となり得るが、競業他社が簡単に入手できるような情報などは、正当な利益には含まれない。 ②については、必ずしも管理職等の重要な役職に就いている必要まではなく、正当な利益となり得る秘密情報を取り扱っているような場合には肯定され得るものと考えられる。 ③については、特に禁止期間の程度が重要であり、基本的には1年間、長くとも2年間にとどめておくべきであり、これを超える期間とすると、競業避止義務が無効となる可能性が高い。 ④については、裁判例においては、代償措置であることを明示されずに金銭の支給等を行っていたとしても、これを代償措置として考慮するものもあるが、事案によっては代償措置として認められない可能性もあるため、例えば、労働者に説明した上で、通常の退職金とは別に「特別退職金」の名目で支給するなど、代償措置としての支給であることを明確にしておくべきである。 イ 事後の対応について 競業避止義務違反が発覚した場合には、当該労働者に対し、損害賠償請求、退職金の返還請求、競業行為の差止請求及びその仮処分の申立てなどの対応をすることが考えられる。秘密保持義務違反の場合と同様、既に退職してしまっているため、懲戒処分や普通解雇をすることはできない。 (了)

#No. 612(掲載号)
#中野 博和
2025/03/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例103】トヨタ自動車株式会社「監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ」(2025.2.25)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例103】 トヨタ自動車株式会社 「監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ」 (2025.2.25)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、トヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という)が2025年2月25日に開示した「監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ」である。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行を決定したという内容である。 この開示の翌日26日、日本経済新聞(以下「日経」という)は本件を「トヨタ経営『社外の目』強化-監査等委員会設置会社に」と題し大きく取り上げたが、監査等委員会設置会社への移行は、「トヨタ(TOYOTA)」という社名のインパクトを除き、記事にするほど価値のある決定といえるのか疑問である。 すなわち、日経の記事には「ガバナンスを向上させつつ、電気自動車(EV)など変化の激しい市場環境に対応する」や「ガバナンス向上で株主などからの理解を得たい狙いがあるとみられる」とあり、監査等委員会設置会社への移行によりガバナンスが向上するかのように記載されているが、本当にトヨタのガバナンスは向上するといえるのか、検証してみたい。   2 監査体制の充実への疑問 監査の担い手を監査役会よりも取締役会の中の監査等委員会とした方が、監査は充実するのだろうか。 確かに、監査役による監査は、法令や定款に反していないかを確認する適法性監査であるとされるのに対して、監査等委員は取締役であるため、監査等委員会による監査は、適法性だけでなく妥当性の確認にも及び、その責任が重くなるとされる。そのため監査等委員会設置会社の⽅が、広範で⽔準の⾼い監査が期待できると⾔えるのかもしれない。しかし、今回の開⽰も⽇経の記事もこの点について⾔及しておらず、そうした監査を期待してよいのか、また、監査等委員に就任する⽅々もその覚悟を持っておられるのか、判然としない。 また、監査役会の「半数以上」は社外監査役、監査等委員会の「過半数」は社外取締役でなければならない(会社法331条6項、335条3項)。確かに「半数以上」よりも「過半数」の方が高い比率であり、社外出身者が多ければ、それだけ客観的な視点での監査が期待できると言えるかもしれない。実際に現在のトヨタの監査役会において、社外監査役が占める比率は半数であり、移行後の監査等委員会において社外取締役が占める比率は過半数である。ただし、現在の監査役の人数は「6名」であるのに対して、移行後の監査等委員の人数は「4名」である。社外出身者の比率が高まるといっても、そもそも監査の担い手の人数を縮小することに、支障はないのだろうか。 上述のとおり監査等委員会による監査は、監査役会による監査よりも広範で水準の高いものでなければならないはずである。さらに監査等委員は取締役であるため、監査以外の役割も担わなければならない。今回の開示には「内部監査室との連携強化による組織監査を充実化」とあるが、内部監査との連携はこれまでも行われており、今回の監査等委員会設置会社への移行によって監査がより充実したものとなるのか否か、判断するのは難しい。   3 執行への委任に対する疑問 今回の開示の「監査等委員会設置会社への移行のポイント」には「今回の移行により、重要な業務執行の決定について、取締役会から執行への委任が可能になり、意思決定が迅速化、取締役会は監督業務に注力」という記載がある。確かに監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外取締役である場合や、定款に定めた場合は、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができるとされている(会社法399条の13第5項・第6項)。 しかし、監査等委員会設置会社へ移行した後の社外取締役は過半数ではなく半数とされており(10名中5名)、定款の変更も行っていないようであるため(定款の変更に関しては適時開示が必要だが、行っていない)、トヨタの言う「重要な業務執行の決定について、取締役会から執行への委任が可能」は、この会社法で定められた「重要な業務執行の決定を取締役に委任すること」を指しているわけではないようである。 同社の言う、監査等委員会設置会社への移行により可能となる「重要な業務執行の決定について、取締役会から執行への委任」が何を指すのかは不明だが、今回の開示によると、「執行役員」に権限を委譲するようである。監査等委員会設置会社への移行後、その「執行役員」は9名になるという(これまでは8名。2025年2月25日に開示された「役員人事に関するお知らせ」によると、「執行役員」を兼務する取締役は3名なので、6名は取締役以外の者)。 指名委員会等設置会社の場合、取締役会から少数の執行役へ重要な業務執行の決定を委任することができるため(会社法416条4項)、それによる意思決定の迅速化を期待できる。しかし、10名の「取締役会」から9名の「執行役員」へ重要な業務執行の決定を委任することにより、果たして意思決定が迅速になると言えるのだろうか。   4 指名委員会等設置会社へ移行しないことへの疑問 監査等委員会設置会社は2015年に導入された機関設計だが、多くの上場会社が監査役会設置会社からそれに移行した。本稿執筆時現在(2025年3月11日)、東京証券取引所上場会社のうち監査役会設置会社が2,096社であるのに対して、監査等委員会設置会社は1,625社であり、この傾向が続けば、近い将来、監査等委員会設置会社が上場会社における主流の機関設計となるかもしれない(ちなみに2002年に導入された指名委員会等設置会社(当時は「委員会等設置会社」)は95社にとどまる)。 監査等委員会設置会社がこれだけ広まった理由は、同じ2015年に導入された「コーポレートガバナンス・コード」において、上場会社は複数の社外取締役の設置が必要とされたからだろうと思われる(原則4ー8。会社法でも上場会社における社外取締役設置義務の定めが設けられた(会社法327条の2))。 上述のとおり監査役会は3人以上の監査役で構成され、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないため、監査役会設置会社のままだと、複数の社外監査役に加えて複数の社外取締役も置かなければならない。それならばと、監査等委員会設置会社へ移行した会社が多かったのではないだろうか。実際に監査等委員は監査役からの横滑りが多かった(トヨタの場合も4名の監査等委員のうち2名が監査役からの横滑り)。 そのため、多くの投資家は、監査等委員会設置会社への移行によりガバナンスが向上するとは思っていないようである。日経の記事には「ガバナンス向上で株主などからの理解を得たい狙いがあるとみられる」とあるが、期待したほどの評価は得られないのではないだろうか。 投資家からの評価を得たいならば、むしろ指名委員会等設置会社へ移行した方がよいのではないだろうか。トヨタの取締役会の中には「役員人事案策定会議」と「報酬案策定会議」という会議が置かれているが、同社の「コーポレートガバナンス報告書(2024年6月25日更新)」によると、「役員人事案策定会議」は指名委員会等設置会社における指名委員会、「報酬案策定会議」は報酬委員会と同様の役割を果たしている。指名委員会等設置会社における指名委員会と報酬委員会は過半数を社外取締役としなければならないのだが(会社法400条3項)、今回の開示の「コーポレートガバナンスの変遷」を見ると、「役員人事案策定会議」と「報酬案策定会議」は2019年から過半数が社外取締役とされている。 指名委員会等設置会社では、取締役会から執行役へ重要な業務執行の決定を委任することができるのは上述のとおりであり、同社がなぜ指名委員会等設置会社へ移行しないのか分からない。先の日経の記事では指名委員会等設置会社へ移行しない理由について、同社の総務・人事本部長が「全員参加で議論したい」と答えたとされているが、その真意も不明である。 (了)

#No. 612(掲載号)
#鈴木 広樹
2025/03/27

プラス思考の経済効果 【第34回】「2025年お花見の経済効果」

プラス思考の経済効果 【第34回】 (最終回) 「2025年お花見の経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 新型コロナの流行が落ち着いてから、お花見の人々が増加しています。いくつかの調査会社が実施した「お花見」に関する事前アンケートを見ると、2024年は、ほとんどすべての調査で「2023年よりお花見に行く」という回答でした。この傾向は2025年も継続すると予想されます。また昨今の観光客の増加傾向から、お花見客もさらに増加すると想定されます。 今回は2023年、2024年に続いて、今年のお花見の経済効果について分析してみましょう。   2 お花見の経済効果 「経済効果」とは、専門的には「経済波及効果」(以下「経済効果」と呼ぶ)と呼ばれ、「直接効果」、「一次波及効果」、「二次波及効果」の3つの効果を合計したものです。 お花見の「直接効果」は、お花見に行った観光客が直接消費する交通費、飲食費、土産代などの金額のことです。「一次波及効果」とは直接効果の原材料の売上増加額のことです。さらに、直接効果、一次波及効果を生み出す企業、店舗、工場などで働く経営者や従業員の所得増加額から消費に使われる金額が「二次波及効果」です。 以上の3つの効果の合計が、お花見の経済効果なのです。   3 日本在住の人たちのお花見の直接効果(消費支出額) (1) 日本の総人口 総務省統計局の2025年1月20日の発表によると、2024年8月1日の日本の総人口(日本人+在日外国人)は〈第1表〉のとおり、確定値で約1億2,389万人です。 〈第1表〉日本の総人口 本稿では、自主的に個人や家族、または友人たちとグループでお花見に行って1人分の経費がかかる年齢層を「10~84歳」と仮定しますと、合計約1億844万人となります。 (2) お花見に行く日本在住の人数 携帯電話向けの天気予報アプリケーションの「ウェザーニューズ」(2024年4月1日発表)によると、「お花見に行きます」と答えた割合は、52%(調査人数:1万1,115人、調査日:2024年2月25日~26日)でした。 また、体験型情報サイト「株式会社ファンくる」が2024年3月22日に発表した報道関係向け資料(調査対象:男性226名、女性786名、合計1,012名)によると、お花見に「行きたい」人は71%の割合でした。 本稿では、この2つのアンケート結果の平均値61.5%を採用します。 ① 10~84歳でお花見に行く人数 10~84歳の人口の約61.5%がお花見に行くと仮定すると、約6,669万人が自主的にお花見に行くことになります。 このうち10~19歳の学生や若者でお花見に行く人数は約657万人、20~84歳の大人でお花見に行く人数は約6,012万人となります。 ② 9歳以下の子供でお花見に行く人数 9歳以下の子供は両親や家族がお花見に連れて行くと考えられるので、同じ割合でお花見に行くと仮定しますと、約535万人が一緒にお花見に行くことになります。 また、85歳以上の高齢者も元気な人は、1人またはご夫婦、家族、友人とお花見に行くと考えられますが、本稿ではお金のかからない近くの公園や堤の桜を鑑賞すると仮定します。 ③ 0~84歳でお花見に行く人数 これまでの計算の結果、消費を伴うお花見に行く人数は約7,204万人となります。 (3) お花見における1人当たりの消費額 次に、お花見における1人当たりの消費額を推定します。マーケティング調査会社の株式会社インテージが2024年3月13日に発表した調査結果(15歳~79歳の2,500人の男女対象:調査期間2024年2月15日~2月19日)によると、お花見の1人当たりの予算は平均6,872円でした。 2024年12月24日公表の総務省統計局の資料では、総合物価指数は対前年同月比で3.6%の上昇でしたので、2025年も同じ比率で上昇すると仮定しますと、1人当たりの消費額は約7,119円となります。金額には、飲食費、交通費、土産代、雑費などが含まれています。 本稿では、9歳以下の幼児・子供の1人当たり消費額は大人の約3分の1の2,291円、そして10~19歳の学割を使用する場合や飲酒をしない学生や若者の平均消費額は6,872円より2,000円少ない約4,872円と仮定し、総合物価指数の上層率を加味すれば、それぞれ約2,373円、約5,047円となります。 (4) 日本在住の人たちのお花見の総消費額 以上の計算から、2025年の日本在住の人たちのお花見の総消費支出額は、約4,738億4,862万円となります。   4 訪日外国人のお花見の直接効果(消費支出額) (1) お花見に行く訪日外国人数 ① 春に日本を訪問する外国人数 昨年もお花見を目的に、春に訪日した外国人観光客はかなり増加しました。そして、今年は円安の影響もかなりの追い風になると考えられています。 株式会社JTBは、2025年の1月~12月の訪日外国人旅行者数は約4,020万人と、過去最多を予想しています。これは対前年度を9%上回る人数です。 この増加率を春の桜の時期の訪日外国人にも適用しますと、2025年の花見の時に訪日する観光客数の予測値は、〈第2表〉のようになります。 〈第2表〉春に訪日する観光客数 (注) 〈第2表〉は2024年の訪日外国人数のうちのビジネス客などの客を除いた純粋な観光客数であり、2025年の予測値も同様です。 ② お花見に行く訪日外国人数 日本の桜は、南から北まで3月中旬から5月中旬まで咲き誇るので、訪日外国人は長期間にわたって日本の桜を楽しむことができます。 桜を楽しむ外国人観光客は3月下旬(1か月の1/3)と、4月の1か月、5月上旬(1か月の1/3)にお花見に行くと仮定しますと、この間の訪日観光外国人の総数は約502万人となります。 (2) お花見に行く観光客の支出額 ① 訪日外国人観光客の1人当たりの支出額 国土交通省観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年1月15発表)によると、2024年の訪日外国人の1人当たり消費支出額は22万7,000円でした。滞在日数として訪日観光客の滞在日数の平均値約7日を用いると、訪日外国人観光客の1人1日当たりの消費額は約3万2,429円となります。 そして前述のとおり、総合物価指数は対前年同月比で3.6%の上昇であったので、2025年も同じ物価上昇率を仮定しますと、訪日外国人観光客の1人1日当たりの消費額は約3万3,596円となります。 ② 訪日外国人のお花見の消費支出額 お花見に行く訪日外国人の人数は約502万人、1人当たりのお花見の支出金額は約3万3,596円として計算すると、訪日外国人のお花見の消費支出額は約1,686億5,192万円となります。   5 経済効果 (1) 2025年のお花見の経済効果 これまで計算してきた日本人と訪日外国人観光客のお花見の直接効果の総額(消費支出の総額)約6,425億54万円(約4,738億4,862万円+約1,686億5,192万円)の経済効果を推計します。 総務省内閣府が作成した最新の「全国の産業連関表」(2024年に発表した2020年版の「全国の産業連関表」の修正版)を用いて経済効果を分析すると、〈第3表〉のように約1兆3,878億117万円となりました。 〈第3表〉経済効果 (2) 過去のお花見の経済効果 本連載でも昨年、一昨年と取り上げてきましたが、過去のお花見の経済効果の一覧表は、〈第4表〉のとおりです。 〈第4表〉過去のお花見の経済効果の推移   6 まとめ (連載了)

#No. 612(掲載号)
#宮本 勝浩
2025/03/27

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#Profession Journal 編集部
2025/03/27

《速報解説》 リース会計基準等の公表を受けた「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令」等が公布・施行される

《速報解説》 リース会計基準等の公表を受けた「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令」等が公布・施行される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年3月24日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第20号)が公布された。「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正も行われている。これにより、2024年12月24日から意見募集されていた内閣府令(案)等が確定することになる。 内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されている。 これは、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則等の主な改正 財務諸表等規則8条の6を改正し、「リースに関する注記」として、以下のように規定する。 下記のほか、財務諸表等規則8条の6第1項1号ロ及びハ、2号並びに3号に掲げる事項は、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、当該事項の記載を省略することができる(財規8条の6第3項)などを規定する。 1 借手のリースに関する注記事項 2 貸手のファイナンス・リースに関する注記事項 3 貸手のオペレーティング・リースに関する注記事項 4 その他 上記のほか、例えば、次の改正事項がある。 第一種中間財務諸表及び第二種中間財務諸表の規定や、連結財務諸表規則についても、リースに関連する改正が行われている。 コメント対応No.3では、リース負債に係る利息費用の金額が営業外費用の総額の100分の10以下で一括して表示することが適当と認められるときに、他の費用と一括して表示する場合にも、リース負債に係る利息費用が含まれる科目と当該費用の金額を注記する必要がありますと記載されている。   Ⅲ 財務諸表等規則ガイドラインの主な改正 「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)」についても改正されている。 例えば、重要な会計方針の記載に関して、「ファイナンス・リース取引に係る収益及び費用の計上基準等」から「リースに係る収益及び費用の計上基準等」へ改正する(財務諸表等規則ガイドライン8の2の3、3(6)①)。 また、企業会計の基準の指定については、適用時期も含めて行われるものであることから、個々の企業会計の基準の適用時期については、特段の定めのない限り、個々の企業会計の基準の規定に従うものとする(財務諸表等規則ガイドライン1-3、2(1))。 販売費及び一般管理費に属する費用の例示から、「不動産賃借料」が削除されている(財務諸表等規則ガイドライン84)。 「「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(連結財務諸表規則ガイドライン)」も改正されている。   Ⅳ 施行日等 公布の日(2025年3月24日)から施行する。 経過措置に注意する。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#阿部 光成
2025/03/25

令和6年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和6年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和6年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/03/25
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