検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10749 件 / 11 ~ 20 件目を表示

《速報解説》 住宅ローン控除の延長・拡充等~令和8年度税制改正大綱~

《速報解説》 住宅ローン控除の延長・拡充等 ~令和8年度税制改正大綱~   Profession Journal編集部   令和7年12月19日に公表された「令和8年度税制改正大綱」では、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(いわゆる住宅ローン控除)について、適用期限を5年延長するとともに、既存住宅の取得に係る借入限度額の拡充や子育て世帯等への上乗せ措置の対象範囲拡大等が示されている。 また、省エネ性能の向上を図る観点から、令和10年以降の新築住宅については原則として一定の省エネ基準を満たさない住宅を適用対象外とする等の見直しも行われることとされる。 以下、改正の主な内容について解説する。 1 適用期限の延長 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、適用期限が令和7年12月31日から令和12年12月31日まで5年延長されることとされる。 これにより、令和8年から令和12年までの間に居住の用に供した住宅についても、本特例の適用を受けることが可能となる。   2 借入限度額・控除率・控除期間(令和8年~令和12年居住分) 住宅の取得等をして令和8年から令和12年までの間に居住の用に供した場合の借入限度額、控除率及び控除期間は、次のとおりとされる。 ① 認定住宅等の新築等の場合 【用語の定義】 なお、省エネ基準適合住宅である買取再販認定住宅等を令和10年から令和12年までの間に居住の用に供した場合には、借入限度額は2,000万円、控除率は0.7%、控除期間は13年とされる。 ② 認定住宅等である既存住宅の取得の場合 既存住宅については、 省エネ基準適合住宅以上の全ての区分で控除期間が10年から13年に拡充される。また、認定住宅とZEH水準省エネ住宅については借入限度額が3,000万円から3,500万円に引き上げられる一方、省エネ基準適合住宅については3,000万円から2,000万円に引き下げられる点に留意が必要である。 ③ ①及び②以外の住宅の取得等の場合 「①及び②以外の住宅の取得等」とは、買取再販住宅の取得、既存住宅の取得又は住宅の増改築等をいう。この区分については、適用期限が延長された上で借入限度額・控除率・控除期間ともに現行制度が維持される。 ただし、令和9年12月31日以前に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅(登記簿上の建築日付が令和10年6月30日以前のものを含む)又は建築確認を受けない省エネ基準適合住宅で登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものの新築等であって、令和10年から令和12年までの間に居住の用に供したものを含むこととされる。   3 子育て世帯等への上乗せ措置の拡充 特例対象個人が、認定住宅等の新築等又は認定住宅等である既存住宅の取得をして令和8年から令和12年までの間に居住の用に供した場合、借入限度額が次のとおり上乗せされる。 ① 認定住宅等の新築等の場合 省エネ基準適合住宅である買取再販認定住宅等を令和10年から令和12年までの間に居住の用に供した場合には、借入限度額は3,000万円とされる。 ② 認定住宅等である既存住宅の取得の場合 【特例対象個人の定義】 今回の改正により、子育て世帯等への上乗せ措置の対象範囲が、新築住宅のみならず既存住宅にも拡大される点が大きな特徴である。   4 床面積要件の緩和(40㎡以上50㎡未満) 床面積が40㎡以上50㎡未満である居住用家屋についても本特例の適用ができるとする措置は、現行制度において既に設けられているが、今回の改正により、この措置が令和12年12月31日まで延長されることとされる。 ただし、この措置の適用を受ける場合、控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用しないこととされる点は、現行制度と同様である。 なお、この床面積要件の緩和措置は、住宅の取得等をして令和8年1月1日以後に居住の用に供した場合について適用される。   5 省エネ基準を満たさない新築住宅の適用除外 令和10年1月1日以後に建築確認を受ける居住用家屋(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く)又は建築確認を受けない居住用家屋で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のもののうち、一定のZEH水準省エネ基準を満たさないものの新築又は当該居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得については、本特例の適用ができないこととされる。 これにより、令和10年以降の新築住宅については、原則として省エネ基準適合以上の性能が求められることとなる。   6 災害レッドゾーンにおける新築住宅の適用除外 個人が災害危険区域等内において、居住用家屋の新築(従前家屋の建替えによる新築を除く)又は居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得をした場合において、その居住用家屋を令和10年1月1日以後に居住の用に供したときは、本特例の適用ができないこととされる。 ただし、当該居住用家屋に係る建築確認を受けた時において、当該居住用家屋の新築をする土地の全部が災害危険区域等に含まれない場合は、この限りでない。 【災害危険区域等の定義】 なお、「一定の居住用家屋が建築された場合」とは、一定の住宅建設を行う者に対し、都市再生特別措置法に基づき、適正な立地を促すために市町村長が行った勧告に従わないで居住用家屋が建築された一定の場合をいう。   7 気候風土適応住宅の追加 いわゆる気候風土適応住宅を本特例の対象に追加することとされる。 この改正は、住宅の取得等をして令和8年1月1日以後に居住の用に供した場合について適用される。   8 まとめ 今回の改正では、住宅ローン控除の適用期限が5年延長されるとともに、既存住宅の取得に係る借入限度額の拡充や子育て世帯等への上乗せ措置の対象範囲拡大等が行われる。 一方で、省エネ性能の向上を図る観点から、令和10年以降の新築住宅については原則として一定の省エネ基準を満たすことが要件とされる等、環境配慮型の住宅取得を促す方向性が明確に示されている。 また、災害レッドゾーンにおける新築住宅を適用対象外とする等、安全な立地における住宅取得を促す措置も講じられることとなる。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/12/19

《速報解説》 教育資金の一括贈与非課税措置の信託等可能期間を延長せず終了~令和8年度税制改正大綱~

《速報解説》 教育資金の一括贈与非課税措置の信託等可能期間を延長せず終了 ~令和8年度税制改正大綱~   Profession Journal編集部   令和8年12月19日(金)に与党より「令和8年度税制改正大綱」が公表された。 本稿では、令和8年度税制改正大綱において今回、信託等可能期間を延長しないこととされた直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、今後の取扱い等について解説する。   1 制度の概要 本措置は、祖父母等の直系尊属が30歳未満の子・孫等に対して教育資金を一括して贈与する場合に、受贈者1人につき1,500万円(学校等以外に支払われるものは500万円)まで贈与税が非課税となる特例制度である。   2 今後の取扱い 平成25年4月に導入されて以降、延長が繰り返されてきたが、今回延長されないこととなり、適用期日(令和8年3月31日)をもって廃止される。 今後の取扱いについては下記のとおりである。 (1) 信託等可能期間の取扱い 教育資金管理契約に基づく信託等可能期間について、令和8年3月31日をもって終了することとされる。これにより、同日以降は新たに教育資金管理契約を締結し、本措置の適用を受けることができなくなる。 (2) 既拠出金に対する措置の継続 令和8年3月31日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用できることとされる。すなわち、期限までに教育資金管理契約に基づいて信託等がなされた資金については、その後も非課税措置の適用を受けることが可能である。 具体的には、以下の取扱いとなる。   3 実務上の留意点 (1) 適用を検討する場合の対応 本措置の適用を検討している場合は、令和8年3月31日までに教育資金管理契約を締結し、金銭等を拠出する必要がある。期限後は新規の契約ができなくなるため、制度活用を予定している納税者は早めの対応が求められる。 (2) 既契約者の取扱い 既に教育資金管理契約を締結している場合は、令和8年3月31日以降も契約期間満了まで本措置の適用を受けることができる。ただし、追加の拠出については同日までに行う必要がある点に注意が必要である。 (3) 関連する他の贈与税非課税措置との比較 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、令和7年度税制改正大綱において適用期限が延長されている。教育資金の一括贈与非課税措置とは異なる取扱いとなっている点に留意する必要がある。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/12/19

《速報解説》 令和8年度税制改正大綱が公表される~基礎控除・給与所得控除の引上げで年収の壁は160万円から178万円に~

《速報解説》 令和8年度税制改正大綱が公表される ~基礎控除・給与所得控除の引上げで年収の壁は160万円から178万円に~   Profession Journal編集部   12月19日(金)、自由民主党・日本維新の会は「令和8年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。 令和8年度税制改正大綱では、課税最低限を160万円から178万円とする基礎控除等の引上げのほか、暗号資産における分離課税の導入やインボイス制度の経過措置に係る見直し、大胆な投資促進税制の創設や賃上げ促進税制に係る大企業向け措置等の廃止、貸付用不動産の評価見直しなど、幅広いテーマでの改正が盛り込まれている。 ※その他、続報・詳報は例年通り、追って本誌速報解説にて解説、メールマガジンにて公開をお知らせしますので、ブラウザページ右からのメルマガ登録をお勧めします。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/12/19

《速報解説》 JICPA、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正案を公表~外部の専門家の作業の利用及び倫理規則改正公開草案に伴う適合修正~

《速報解説》 JICPA、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正案を公表 ~外部の専門家の作業の利用及び倫理規則改正公開草案に伴う適合修正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月16日、日本公認会計士協会は、「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正に関する公開草案(外部の専門家の作業の利用及び倫理規則改正公開草案に伴う適合修正)」を公表し、意見募集を行っている。 2025年10月15日に、日本公認会計士協会は、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表し意見募集を行っているが、これを受けて、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正に関する公開草案を公表するものである。 今回の公開草案は、2025年11月18日から意見募集されている公開草案(タックス・プランニング業務及びサステナビリティ)に続くものである。 意見募集期間は2026年1月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 倫理規則の改正内容とIESBAから公表されているスタッフQ&Aを踏まえ、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」について、次の項目に関する改正を行う。 (了)

#阿部 光成
2025/12/18

プロフェッションジャーナル No.649が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年12月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.649を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/12/18

相続税の実務問答 【第114回】「贈与税が課税されていない相続時精算課税贈与の相続税の課税価格への加算」

相続税の実務問答 【第114回】 「贈与税が課税されていない相続時精算課税贈与の相続税の課税価格への加算」   税理士 梶野 研二   [答] お父様からの贈与について相続時精算課税の適用を選択した平成16年以降にお父様から贈与を受けた財産の価額は、実際に贈与税が課税されたかどうかにかかわらず、相続税の課税価格に加算しなければなりません。平成20年にお父様がA社に対して債務の免除をしたことに伴い、あなたがお持ちのA社の株式の価額が増加したことによる経済的利益については、お父様からの贈与とみなされますので、贈与税が課税されていないとしても相続税の課税価格に加算しなければなりません。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 みなし贈与 対価を支払わないで又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合において、その利益を受けた者は、その利益を受けた時に、その時におけるその利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)をその利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなされ、贈与税が課されることとなります(相法9本文)。 例えば、次に掲げる場合に該当したことにより同族会社の株式の価額が増加したときには、その株主がその株式の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとみなされます(相基通9-2前段)。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時となります(相基通9-2後段)。   2 贈与税の課税処分の除斥期間等 上記1により贈与を受けたとみなされる者は、原則として、贈与を受けたとみなされる年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を提出し、算出された贈与税を納付しなければなりません(相法28①、33)。 ところで、相続税や所得税などの国税は、原則として申告書の提出期限から5年を経過すると、税務署長は更正処分等の課税処分を行うことができなくなります(課税処分の除斥期間)(通法71①)。また、申告書の提出や税務署長による決定処分がなされない限り、原則として申告書の提出期限から5年を経過しますと、時効の援用をすることなく、徴収権の時効が完成し、国は、その国税の徴収をすることはできなくなります(徴収権の消滅時効)(通法72①②)。ただし、贈与税については、通常の場合、課税処分の除斥期間が6年、徴収権の消滅時効も6年とされています(相法37①⑤)。   3 相続時精算課税 いったん相続時精算課税選択届出書を提出しますと、その届出書を提出した年以降に、その届出書に記載された贈与者から贈与を受けた財産(贈与により取得したものとみなされる財産等を含みます)の価額は、その贈与者の相続開始の際の相続税の申告において、相続税の課税価格に加算又は算入されることとなります。 この加算について相続税法第21条の15第1項は、「・・・・、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるもの(・・・省略・・・)の価額から第21条の11の2第1項(筆者注:相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除)の規定による控除をした残額を相続税の課税価格に加算した価額をもって、相続税の課税価格とする。」と規定しており、また、同法第21条の16第1項は「特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(・・・省略・・・)により取得したものとみなして第1節の規定を適用する。(筆者注:相続税の課税価格に導入されるのは、相続税法第21条の11の2第1項の規定による控除後の残額となります(相法21の16③)。)」と規定しています。このようにいずれの条文とも「第21条の9第3項の規定の適用を受けるもの」と規定されており、実際に同項が適用されて贈与税が課されたものとされているわけではありません。 (注) 令和5年12月31日以前の相続時精算課税の適用に係る贈与については、相続税法第21条の11の2の規定は適用されません(所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則19④)。 この点、相続税法基本通達21の15-1においても、「法第21条の15第1項の規定による相続税の課税価格への加算の対象となる財産は、被相続人である特定贈与者からの贈与により取得した財産(相続時精算課税選択届出書の提出に係る財産の贈与を受けた年以後の年に贈与により取得した財産に限る(・・・省略・・・))のうち、法第21条の3、第21条の4、措置法第70条の2第1項、第70条の2の2第1項、第70条の2の3第1項及び東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第38条の2第1項の規定の適用により贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されないもの以外の贈与税の課税価格計算の基礎に算入される全てのものであり、贈与税が課されているかどうかを問わないことに留意する。」(下線筆者)と念のために定めています。この点は相続税法第21条の16においても同様です(甲斐裕也編『令和6年版 相続税法基本通達逐条解説』(大蔵財務協会・2024年)468頁)。 (参考判決)令和7年1月16日東京地裁判決(TAINSコード:Z888-2731)   4 ご質問の場合 あなたは、平成16年分のお父様からの贈与に係る贈与税の申告において、相続時精算課税選択届出書を提出していますので、同年以降にお父様から贈与を受けた財産の価額(贈与を受けたものとみなされる財産等の価額を含みます)は、「相続税法第21条の9第3項の規定の適用を受けるもの」となり、その贈与財産について贈与税が課されているかどうかにかかわらず、その価額をお父様の相続開始に伴う相続税の申告に当たっては、その価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません。 平成20年にお父様がA社への貸付金について債務免除をしたことにより、A社の株主であるあなたがお父様から受けた経済的利益については、お父様から贈与により取得したものとみなされます。したがって、贈与税の申告期限から6年が過ぎ、既に贈与税の課税処分の除斥期間が徒過していることからもはや贈与税の課税処分がされることもなく、また、徴収権の消滅時効によりその納付をすることができないことから当該経済的利益について贈与税の課税がされないとしても、相続税の課税価格に加算する必要があります。 (了)

#No. 649(掲載号)
#梶野 研二
2025/12/18

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第77回】「法人が負担した取締役の損害賠償金と役員給与」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第77回】 「法人が負担した取締役の損害賠償金と役員給与」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 関連法規等の確認 役員が責任を負うことが想定される場面において、まず考えることはD&O保険であると思われる(※1)。D&O保険については、導入する中小企業も出てきているとはいえ、導入しない中小企業の方が大多数の状況にあるといえる。 (※1) D&O保険の概要については、【第15回】参照。 とりわけ、より強固な信頼関係を構築することを目的に、法人の役員が取引先の役員を兼任する場合には、当該役員の会社法上の責任について検討する必要性が増すだろう。この根拠として会社法429条1項があり、以下のように規定している。 これに対し、税務上検討すべきは以下の通達である。 つまり、仮に当該役員に重過失等が認められ、会社法429条1項により役員個人で負担すべき賠償金等を法人が負担するということとなれば、法人税基本通達9-7-16(2)に該当するということとなろうかと思われる。 この論点が実際に争点となり、裁判所が見解を示した事例があるため、以下にその概要を紹介する。   (2) 法人が負担した役員個人の賠償金は、損金不算入となると示された事例 具体的にこのような点が争点となった事例として、横浜地裁令和6年1月17日判決がある(※2)。 (※2) 判例集等未登載、TAINS:Z888-2558。評釈として、渡辺充「取引先の取締役就任により生じた損害賠償債務の会社負担と役員給与」税理68巻8号99頁がある。 本件は、納税者が、取引先であるB社からの取締役就任の要請を受けたものであり、甲に対して、B社の経営に関与しないという業務命令(以下、「本件業務命令」という)を行った上で取締役に就任させた背景がある。そして、その後にB社から大口受注もできているという事実から、「B社の取締役としての任務懈怠があったとして、会社法429条1項の損害賠償責任を負ったが、甲の任務懈怠の具体的な内容は、『経営に関与しなかった』『何もしなかった』という不作為であり、・・・本件業務命令そのものないしこれに付随又は密接に関連する行為であ」るとして、納税者の職務行為であると主張したことが注目される。 これに対し裁判所は、法人税法22条3項により「所得の金額を計算するに当たり、損金の額に算入することができる支出額は、当該内国法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならない」と示した。その上で、法人税基本通達9-7-16について、「①損害賠償金の対象となった行為等が法人の業務の遂行に関連して生じたもので、行為者たる役員等に故意又は重過失がないものである場合には、法人の負担した損害賠償金は、当該役員等に対する給与としないで、給与以外の損金として取り扱うこととされる一方、②その行為等が法人の業務の遂行に関連なく生じたものである場合又は業務の遂行に関連があっても行為者たる役員の故意又は重過失によるものである場合には、第一次的には行為者たる役員等に対してこれを求償すべき性質のものであり、その損害賠償金を直ちに法人の損金の額に算入することは適当ではないので、まずは役員に対する求償権を資産に計上すべきものとされたものである」と示している。 これを本件について検討すると、本件業務命令について、B社の取締役として甲が法令上果たす義務についてまで禁止するものではないと認定した上で、「甲は、B社の取締役としての義務を負っているのであり、それをどのように行うかあるいは行わないかについては、B社との委任契約における受任者としての甲の判断によるものであったというべきである」とした。そして、甲が個人的に負担すべき費用を納税者が負担したものであり、法人税法34条4項所定の「その他の経済的な利益」に該当するとして納税者の主張を退けた。なお、法人税基本通達9-7-17については、甲の資力に照らし回収確実であるとした。   (3) 本件裁判例の意義 (1)の通り、法人の役員の職務上重大な過失等があった場合には、第三者に生じた損害を役員が賠償する責任を負うことが会社法429条1項にて定められている。これに対し、法人税基本通達9-7-16(2)が、故意又は重過失に基づくものを債権とするとしているのは、会社法429条1項との整合性を念頭に置いたものだと思われる。 本件裁判例は、このような場合の判断について、まずは役員個人への債権として処理すべきであり、その上で貸倒損失に係る損金算入の有無を検討すべきである旨を示した。つまり、本件のような場合に、法人税基本通達9-7-17及び同通達9-7-16、同通達9-2-9(10)によることが合理的であると示されたことにあるといえる。その上で、税務上の結論については疑義なく賛成できるものであると考える。 また、法人税基本通達9-7-16については、一般に、交通事故等の場合の損害賠償金の支出を例に解説されている(※3)。これに対して、本件裁判例のように関係性から取引先の法人の名目役員に就任しており、当該役員個人に対して責任が追及された場合において参考となる事例ともいえる。 (※3) 松尾公二編著『法人税基本通達逐条解説 十一訂版』(税務研究会出版局、2023)1143頁。 (了)

#No. 649(掲載号)
#中尾 隼大
2025/12/18

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第11回】

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正 -防衛特別法人税等の企業への影響- 【第11回】 (最終回)   公認会計士・税理士 荒井 優美子   38 高市政権の国家安全保障戦略 2025年11月21日、高市政権下の経済対策(「強い経済」を実現する総合経済対策~日本と日本人の底力で不安を希望に変える~、以下、「令和7年経済対策」)が閣議決定された。令和7年経済対策は、日本の目指すべき方向を、「責任ある積極財政」の下で「危機管理投資」と「成長投資」を進め、官民連携を強化し、戦略的な国内投資の拡大を通じて国力の増大を図ることとした。 令和7年経済対策は3本の柱(第1の柱:生活の安全保障・物価高への対応、第2の柱:危機管理投資・成長投資による「強い経済」の実現、第3の柱:防衛力と外交力の強化)を経済対策の基本的枠組みとする。 第1の柱は物価高対策による生活の安全保障の実現、第2の柱は「危機管理投資」を成長戦略の肝とする「強い経済」の実現、第3の柱は防衛力と外交力の強化による「強い日本」の実現を目的とする。第3の柱の防衛力と外交力の強化は、これまで、国家安全保障対策の一つとして、国土強靭化や経済安全保障(サプライチェーンの強化)と併せて一つの柱に盛り込まれていた。米国の政権交代や地政学リスクの高まりを受けて、国土強靭化や経済安全保障とは独立させて経済対策の一つの柱とされたと考えられる。 第2の柱における「強い経済」の実現に向けて、以下の5分野を中心に取組を強化するとしている。 「危機管理投資」と「成長投資」の対象には、17 の戦略分野(注)を指定し、予算・税制を通して投資の支援を実施することとしている。税制支援については、12月に閣議決定される令和8年度税制改正の大綱において示されると考えられる。 (注) ①AI・半導体、②造船、③量子、④合成生物学・バイオ、⑤航空・宇宙、⑥デジタル・サイバーセキュリティ、⑦コンテンツ、⑧フードテック、⑨資源・エネルギー安全保障・GX、⑩防災・国土強靱化、⑪創薬・先端医療、⑫フュージョンエネルギー、⑬マテリアル(重要鉱物・部素材)、⑭港湾ロジスティクス、⑮防衛産業、⑯情報通信、⑰海洋   39 国家安全保障戦略と防衛増税 国家安全保障戦略(2022年12月16日閣議決定)は、ロシアによるウクライナ侵攻を始めとする、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に対応し、「外交、防衛、経済安全保障、技術、サイバー、海洋、宇宙、情報、政府開発援助(ODA)、エネルギー等の我が国の安全保障に関連する分野の諸政策に戦略的な指針を与えるもの」として策定された。 国家安全保障戦略では、「2027年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在の国内総生産(GDP)の2%に達するよう、所要の措置を講ずる。」としていたが、令和7年経済対策では、「補正予算と合わせて、2025 年度中に前倒して措置する。」と明記された。 国家安全保障戦略の決定を受けて、令和5年度税制改正の大綱(2022年12月23日 閣議決定)で、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置を2027年度に向けて段階的に実施することを明記し、令和7年度税制改正の大綱(2024年12月27日 閣議決定)で、防衛特別法人税の創設とたばこ税の増税が明記された。 なお、所得税は、2027 年1月から1%増税(復興特別所得税を同率分引き下げ)する方針で、令和8年度の税制改正の大綱に盛り込むとされている。   40 国家安全保障戦略と経済安全保障 我が国を取り巻く安全保障環境と国家安全保障上の課題として、経済安全保障の必要性の拡大が挙げられ、その戦略的なアプローチは、経済安全保障政策の促進のための、①自律性、優位性、不可欠性の確保等、②レアアース等の重要物資の安定供給確保等によるサプライチェーン強靭化、③セキュリティ・クリアランスを含む我が国の情報保全の強化の検討等であるとしている。 戦略物資についてサプライチェーンの供給リスクに対応すべく、経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)が2022年5月に公布され、国民の生存や、国民・生活経済に甚大な影響のある物資で安定供給を確保すべき物資が指定された(注)。 (注) 抗菌性物質製剤、肥料、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体、蓄電池、クラウドプログラム、天然ガス、重要鉱物、船舶の部品、先端電子部品(コンデンサー及びろ波器) 経済安全保障の確立及び国内生産基盤の強化に係るインフラ整備として、重要物資安定供給のための設備投資等の税制支援が、戦略分野国内生産促進税制として令和6年度税制改正により創設されたが、対象とされたのは半導体を含む5分野である(注)。 (注) 電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ半導体) 重要鉱物の開発支援は、令和7年度税制改正により、減耗控除制度(探鉱準備金又は海外探鉱準備金、新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除)の拡充及び延長が行われた。今後も探鉱ニーズや費用の拡大が様々な要因で予想される(注)ため、探鉱活動を加速する必要があるとされている(令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正について)。 (注) ①天然ガス・石油:将来的な需給ギャップ、エネルギートランジッションの不透明さから生じる需要サイドの振れ、ウクライナ危機や中東情勢の悪化、②金属鉱物:GX・DX の進展に伴う銅の需要増加による需給ギャップ拡大、レアメタルに対する中国の貿易管理措置への対応、銅鉱山の開発費の高騰等の探鉱費の上昇   41 17 の戦略分野と税制支援 17の戦略分野について、税制の対応では、研究開発税制での既存制度の見直しと、成長分野への大胆な投資、即時償却等の大胆な設備投資税制の導入が明記されている。 具体的に、どの分野について税制支援措置が設けられるかは、令和8年度の税制改正大綱に明記されると考えられるが、従来にも増して経済安全保障の強化をより意識した制度となることが想定される。   (連載了)

#No. 649(掲載号)
#荒井 優美子
2025/12/18

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第86回】「オウブンシャホールディング事件 (地判平13.11.9、高判平16.1.28、最判平18.1.24)(その2)」~法人税法22条2項の「取引」の解釈~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第86回】 「オウブンシャホールディング事件 (地判平13.11.9、高判平16.1.28、最判平18.1.24)(その2)」 ~法人税法22条2項の「取引」の解釈~   税理士 中野 洋     5 争点 本件訴訟の争点は以下のとおりである。本稿では争点1のみを検討する。   6 当事者の主張 争点1に関する当事者の主張は、大要以下のとおりである。 《Yの主張》 X社は、A社の100%株主として、本件増資決議により、自らの意思に基づき、X社の保有するA社株式の資産価値の大半をB社に取得させた。 本件増資は、X社、A社及びB社の合意に基づき、A社株式の資産価値を分割し、対価を得ることなく、その資産価値の一部をX社からB社に移転させたもので、法22条2項の無償による資産の譲渡又はその他の取引に該当する。 資産の譲渡又はその他の取引とは、法人が資産に対する管理支配権を行使してその資産価値の全部又は一部を他に移転することであり、法律行為的な取引に限定されない。 《Xの主張》 本件増資においては、X社の保有する旧株式200株についての利得は、実現されることなく失われたのであり、未だ実現していない利得は、課税されるべきではない。 法22条2項の「取引」について税法上格別の規定がない以上、その意味は一般私法におけるのと同じと解すべきである。 非按分的有利発行増資の場合、新株主に払込価額と時価との差額について、受贈益として課税されるが、旧株主には課税されないと解釈すべきである。   7 第一審の判示 Yが行った課税処分は法132条(同族会社の行為計算否認)の規定を適用したものであり、当初から同条の適用を主張していたが、第一審の審理中に法22条2項を主位的主張、法132条を予備的主張とする旨の主張の変更を行っている。 【図2】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 第一審の判示は、法22条2項の適用について「本件増資は、・・・新株の払込を受けたA社と有利な条件でA社から新株の発行を受けたB社の間の行為にほかならず、X社はB社に対して何らの行為もしていないというほかない・・・実質的にみてX社の保有するA社株式の資産価値がB社に移転したとしても、それがX社の行為によるものとは認められないから、・・・法22条2項を適用すべきである旨のYの主位的主張には理由がない。」(下線筆者)と述べ、Yの予備的主張である法132条の適用についても「X社の保有するA社株式の資産価値がB社に移転したことが、X社自らの行為によるものとは認められないこと・・・X社にはもともと法人税が課されないのであるから、・・・法人税の負担を不当に減少させる余地はない。」(下線筆者)などとして、これを斥けた。 上記のとおり、第一審では、私法上の法律関係を重視した判示をしている。すなわち、本件非按分的有利発行増資では、たとえX社の保有するA社株式の資産価値がB社に移転したとしても、私法上はあくまでも発行会社(A社)と新株引受人(B社)間の取引であり、既存株主(X社)は何ら取引に関与していない。資産価値の移転がX社の行為と認められない以上、X社に対する法22条2項の適用も、法132条の適用も、理由がないということになる。   8 控訴審の判示 控訴審の判示は、概ねYの主張に沿っている。X社の持株割合の減少は、既存株主X社と新株引受人B社間の「合意」に基づくもので、X社からB社への無償による「持分の譲渡」にあたるとした。曰く「持株割合の変化は、各法人及び役員等が意思を相通じた結果にほかならず、X社は、B社との合意に基づき、同社からなんらの対価を得ることもなく、A社の資産につき、株主として保有する持分16分の15及び株主としての支配権を失い、B社がこれらを取得したと認定評価することができ、・・・それが両者の合意に基づくと認められる以上、両者間において無償による上記持分の譲渡がされたと認定することができる。」 さらに、「持分の譲渡」は、法22条2項の「資産の譲渡」に当たるとしながらも、同項の「その他の取引」にも当たると判示する。曰く「両社間における無償による上記持分の譲渡は、法22条2項に規定する「無償による資産の譲渡」に当たると認定判断することができる。尤も、上記「持分の譲渡」は、同項に規定する「資産の譲渡」に当たるとすることに疑義を生じ得ないではないが、「無償による・・・その他の取引」には当たると認定判断することができるというべきである。」 上述部分によると「持分の譲渡」が、法22条2項の「資産の譲渡」なのか「その他の取引」なのか釈然としないが「上記規定にいう「取引」は、その文言及び規定における位置づけから、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念として用いられていると解せられ、上記のとおり、X社とB社の合意に基づいて実現された上記持分の譲渡をも包含すると認められる。」として、「関係者間の意思の合致」が「取引」に該当するための「必要条件」であるという認識を示している。 さらに、収益認識の時点について「本件において、法22条2項に規定する無償による「資産の譲渡」又は「その他の取引」は、遅くも、B社により引き受けた増資の払込みがされた時に発生したと認められる。」と続けた。この点については、法22条2項が実現原則にもとづく益金計上を要請し、未実現利益に課税しない規定と解すれば、この判示にも疑義が生じるところである。   9 上告審の判示 最高裁の判示は、概ね控訴審の判示に沿っている。結論部分では、まずX社が一連の取引を管理・支配できる立場にあった点(事実関係)を重視し、X社の意図や当事者の意思の存在を認定する。曰く「前記事実関係等によれば、X社は、A社の唯一の株主であったというのであるから、第三者割当により同社の新株の発行を行うかどうか、だれに対してどのような条件で新株発行を行うかを自由に決定することができる立場にあり、著しく有利な価額による第三者割当増資を同社に行わせることによって・・・第三者に移転させることができたものということができる・・・X社が、A社の唯一の株主の立場において・・・A社株式200株に表章されていた同社の資産価値の相当部分を対価を得ることなくB社に移転させることを意図したものということができる・・・また、前記事実関係等によれば、上記の新株発行は、X社、A社、B社及びC財団の各役員が意思を相通じて行ったというのであるから、B社においても、上記の事情を十分に了解した上で、上記の資産価値の移転を受けたものということができる」 次いで、X社とB社間の「合意」を認定する。当該合意は、結論部分の「取引」該当性を判断する上で重要な要素となる。曰く「以上によれば、X社の保有するA社株式に表章された同社の資産価値については、X社が支配し、処分することができる利益として明確に認めることができるところ、X社は、このような利益を、B社との合意に基づいて同社に移転したというべきである。」なお、当該「合意」の認定に際しては、第一審から上告審を通じて、これを裏付ける文書や記録などの直接証拠の存在について、一切触れられていない。先に述べた当事者の意思や意図と同様に、専ら事実関係という状況証拠により、高裁及び最高裁が認定したようである。 最後に、次のように述べ、当該合意が法22条2項の「取引」に当たるとした。「したがって、この資産価値の移転は、X社の支配の及ばない外的要因によって生じたものではなく、X社において意図し、かつ、B社において了解したところが実現したものということができるから、法22条2項にいう取引に当たるというべきである。」 上記、結論部分の最後に述べる「取引」該当性の判断要素は2つである。1つは「資産価値の移転が、X社の支配の及ばない外的要因によって生じたものではないこと」であり、2つ目は「X社において意図し、かつ、B社において了解したところが実現した」ことである。最高裁の判示では、これら2つの要素が満たされることを「取引」とされるための「十分条件」に過ぎないと解しており(※4)、これらを「必要条件」と解した控訴審判示とは異なる点が指摘されている。 (※4) 岡村忠生、高橋祐介、田中晶国「有利発行課税の構造と問題」『新しい法人税法』有斐閣(2007年)279頁。 このように、本件では、一定の支配関係下において、非按分的有利発行増資が行われた場合、状況証拠を総合的に評価することで、事実上の「合意」が認定され、株主間で生じた「持分」ないし「資産価値」の移転が、法22条2項の「取引」に当たると判断された。 ((その3)へ続く)

#No. 649(掲載号)
#中野 洋
2025/12/18

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第15回】「ガバナンスの開示 ~監督と執行、どう伝える?」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第15回】 「ガバナンスの開示 ~監督と執行、どう伝える?」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔ジャーナル食品社の登場人物〕 *  *  * 伝えたい情報の性質によっては、文章よりも図による表現が適する場合があります。 四半世紀ほど前の有価証券報告書は、数字と文章・表が中心でしたが、近年では部分的に図を用いる事例が増えています。特に、「第2 事業の状況」の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の欄では、経営理念やビジョン、中期経営計画などを説明する際に図が活用される事例が目立ちます。 *  *  * *  *  * 【「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄におけるガバナンスの開示で利用される図のイメージ】 *  *  * *  *  * 2025年3月期決算企業の有価証券報告書についてSSBJ基準を早期適用した事例は確認されていません。ただし、SSBJ基準の公表に先立ち、我が国の有価証券報告書には「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄が設けられており、①ガバナンス・②戦略・③リスク管理・④指標及び目標という4要素に基づく開示の枠組みがすでに採用されています(【第14回】参照)。 また、SSBJ基準はTCFD提言の基本的な枠組みを踏襲しています(【第12回】参照)。これまでTCFD提言に沿った開示を行ってきた企業の開示例を参考とすると、SSBJ基準が求める開示の方向性をイメージしやすくなります。 *  *  * *  *  * 【㈱大和証券グループ本社 2025年3月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】より抜粋) (※) 脚注(★)は筆者による *  *  * ①「ガバナンス機関又は個人に関する情報」については、SSBJ基準でも、監督責任の所在や、その責任がどのように権限や方針に反映されているか、監督を行うにあたりサステナビリティ関連のリスク及び機会をどのように考慮しているか、などを開示することが求められます。 *  *  * *  *  * 一方、②「経営者の役割に関する情報」については、業務執行に関する役割の委任の状況などを開示することが求められます。 *  *  * *  *  * なお、【第14回】で見たように、「一般基準」と「気候基準」はどちらも4つのコア・コンテンツを定めています。「気候基準」で求められるガバナンスに関する開示事項は、「一般基準」で求められるガバナンスに関する開示事項と共通します。 *  *  * *  *  * (例) *  *  * *  *  * ガバナンスに関する情報は、一定要件を満たせば、有価証券報告書の他の箇所に記載し、それを参照する形でサステナビリティ関連財務開示に含めることもできると考えられます。 *  *  * *  *  * Q サステナビリティに関するガバナンスについてどのような開示をするの? A ①サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人に関する情報と、②ガバナンスのプロセス、統制及び手続における経営者の役割に関する情報を開示します。各社の状況に応じて、工夫や具体的な書き方はさまざまになると考えられます。 (了)

#No. 649(掲載号)
#石王丸 香菜子
2025/12/18
#