検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10257 件 / 11 ~ 20 件目を表示

決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第13回】「株主資本変動時の外形標準課税に注意」

◆◇◆◇◆ 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第13回】 「株主資本変動時の外形標準課税に注意」   公認会計士 石王丸 周夫   会計処理を間違う取引には、共通点があります。 その1つが「非資金取引」という性質です。 非資金取引とは、おカネの出入りを伴わない取引という意味です。 おカネの出入りを伴う取引の場合は、比較的容易に間違いに気づきます。帳簿に記録された取引の金額が実際の入出金額と異なれば、預金等について、帳簿残高と預金等残高(実際の残高)の不突合が生じるからです。 一方で、非資金取引にはそのようなチェックをする機会がありません。したがって、会計処理の誤りが起こりやすいといえます。 ところが、なかにはお金の出入りがあるにもかかわらず、間違ってしまう取引もあります。 今回取り上げるのは、そのような取引の1つです。 ではさっそく、訂正事例を見ていきましょう。   訂正事例の概要 過年度に納付した外形標準課税の金額が間違っていたため、決算短信等を訂正したという事例があります。 「外形標準課税」とは、事業税の付加価値割と資本割のことです。 その会計処理は、次のとおり定められています(企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」第10項)。 すなわち、その年度に対応する税額を、発生主義により販売費及び一般管理費に計上するというものです。 この会計処理自体は難しいものではありません。本事例でも、間違えたのは計上のタイミングや表示科目ではなく、金額そのものでした。 訂正事例の概要は、次のとおりです(訂正がなされた日の属する年度をX年度として、その前年度をX-1年度、さらにその前年度をX-2年度としています)。 【訂正前の連結損益計算書(一部)】 【訂正後の連結損益計算書(一部)】 訂正後の金額から訂正前の金額を差し引くと、X-1年度は-33,217円、X-2年度は-66,781千円となります。合計すると-99,998千円です。 この事例の企業(以下、A社という)の説明によると、上記誤りは税務調査で見つかったようです。そして、99百万円が還付される見込みとのことです。 「還付される」ということから、上記の計上誤りの金額は、納付済みだとわかります。 つまり、すでにおカネが出ていった取引です。 おカネの動きを伴う取引の場合、取引の当事者双方が金額の間違いに気づかなければ、誤処理は発覚しないというわけです。A社の説明では、3ヶ年にわたって過剰に納付していたといいます。その間、気づくことがありませんでした。 したがって、本事例には、誰もが見逃しやすい何かがあるはずです。 その点を学ぶ必要があります。   年次推移に異常がない A社の過年度の連結財務諸表等をザっと見ると、誤りに気づくことができなかったことについては、なんとなく思い当たります。 外形標準課税計上額の年次推移に異常がないのです。 有価証券報告書の個別財務諸表の注記に記載されている販売費及び一般管理費の事業税の金額を拾い出してみると、次のようになります。 4年間の金額の推移に、不自然な点はありません。誤計上があったのはX-3年度からX-1年度の3年間です。X-4年度は正しい金額です。X-3年度の金額をX-4年度と比較した場合、これも異常な変動がありません。 外形標準課税は、付加価値や資本金等の額に応じた税額なので、毎期大きく変動することはないと考えられ、前期比較で異常なしなら、誤りに気づかない可能性が高いといえます。 少なくとも、この推移のみで外形標準課税の過大計上を疑うという人は、まずいないでしょう。   原因は資本準備金の取崩しか? 人間なので、間違うことはあります。 気づくことができなかったことも、やむを得ないでしょう。 しかし、それはそれとして、計算を誤った原因はつかんでおきたいものです。 そのヒントとなるのは、間違いがいつから始まったかという点です。 A社は、X-3年度以降、継続して計算を間違っていましたが、それ以前には間違いが起きていませんでした。 つまり、X-3年度に何かが起きたと考えられます。外形標準課税の課税標準であるA社の付加価値か資本金等の額に、何らかの変化が起きた可能性があるという意味です。 そこで、過去の有価証券報告書を眺めてみると、X-3年度に、資本準備金を取り崩して、その他資本剰余金に振り替えていることがわかりました。金額は6,642,283千円です。直感的にですが、これが資本割の計算誤りに関係しているような気がします。 A社の公表資料からは、外形標準課税のうち、付加価値割と資本割のどちらで計算誤りがあったのかはわかりません。しかし、6,642,283千円に税率(A社の税務調査を行った税務署の所在県の税率0.5%)を掛けると33百万円となり、その3年分が99百万円になります。 A社が「過大に納付していた」といっている金額と同じになるのです。   開示前のチェックポイント 繰り返しになりますが、A社が具体的にどのように計算を誤ったのかは、明らかにされていません。資本割で間違えたのではないかというのも、筆者の推測にすぎません。したがって、資本割の詳細な計算方法については、本稿では立ち入らないこととします。 ただし、少し調べてみるだけでも、資本割の課税標準となる額の計算にあたっては、確認すべき事項がいくつかあるとわかります。全体像がわかりやすいウェブページとしては、たとえば下記の宮城県のウェブサイトがあります。 少なくとも、株主資本の額に大きな変動があった年度については、資本割の金額に影響がないかどうか重点的に確認するというのが、本事例から学べることではないでしょうか。 (了)

#No. 613(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/04/03

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第33回】「リユースショップ運営会社における架空買取と在庫偽装」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第33回】 「リユースショップ運営会社における架空買取と在庫偽装」   弁護士 原 正雄   BH社グループは、中古品の買取と販売を行うリユースショップの直営店舗の運営やフランチャイズシステムの運営を行っている。対象とする中古品は、書籍・ソフト等を始め、家電、アパレル、スポーツ用品、ベビー用品、腕時計・ブランドバッグ・貴金属、食器・雑貨等である。直営店舗数は387店、フランチャイズ加盟店舗数は368店である(2024年5月末日現在)。 2024年5月28日、店舗の1つで、アパレル在庫に約3,000万円の帳在差異があることが判明した。期末の実地棚卸結果を再点検したところ、別の店舗でも在庫不足と架空買取が判明し、さらに複数店舗で架空在庫計上の疑義が判明した。 このためBH社グループは同年6月25日、特別調査委員会を設置し、約4ヶ月後の同年10月15日に「調査報告書」を公表した。同報告書によれば、26店舗と1事業部で従業員による架空買取や架空在庫計上など29件の不正(合計8,328万8,453円分)が確認されたとのことであった。店舗間での連携は認められず組織的不正ではなかったようだが、チェック・モニタリング体制に不備があったと判断された。 そのため、同年11月12日、BH社グループは取締役会で再発防止策を決議するとともに、社長ら役員について業績連動報酬減額や報酬返上などの処分を決定し、公表した。 同報告書では様々な不正が報告されているが、本稿では、架空買取と、それを隠蔽しようとして行われた在庫不正に絞って、不正の手法と原因を論ずることにする。   1 架空買取の実態 調査報告書では、不正として架空買取が認定されている。架空買取とは、店舗の従業員において、買い取る商品が存在しないのに買い取ったことにして、代金相当額を着服する不正行為である。 (1) 商品買取の業務フロー BH社グループでは、買取は電子買取システムを通じて実施される。 その手順は以下のとおりである。 (2) 架空買取の手法 架空買取の手法は、以下のとおりである。 ① 本人確認 架空買取の行為者は、本人確認において架空人の情報を入力していた。また、システム上で既存顧客の情報を簡単に参照できたため、既存顧客の情報を無断で流用することもあった。さらに署名画面でも、行為者が当該顧客名で勝手にサインをしていた。 こうしたことが可能となったのは、本人確認書類について写し等の取得を求めず、提示で足りるとしていたことが原因である。そのため、BH社グループは、当該顧客が実在していないことや、実際には来店していないことを把握できなかった。 ② 商品の記録 架空買取の行為者は、レジカウンターで架空の商品データを記録していた。 こうした場合、事後点検で商品データが架空であると確認されるはずであった。しかし、BH社グループでは、事後点検を行為者自身が担当していたり、他の従業員が担当していた場合でも適正な調査が実施されていなかったりした。その結果、商品データが架空であることは確認されないままとなっていた。 ③ 精算 架空買取の行為者は、代金相当額を着服していた。 BH社グループでは、精算者分離の原則が徹底されておらず、査定者と精算者が同一であっても、システム上エラーとならず精算が可能とされていた。店舗によっては査定と精算の分離が難しい場合があるため、査定者による精算が許容される場合があったことが、その理由とされている。その結果、架空買取の行為者が1人で査定と精算の両方を行い、代金相当額を着服することができていた。なお、査定者と精算者が同一の場合、事後点検で警告表示されるが、事後点検が機能していなかったのは、上述のとおりである。 また、パートやアルバイトの従業員コードを借用していたケースもあった。その場合、パートやアルバイトを査定者や精算者として登録しつつ、実際の査定と精算は行為者が行っていた。他人の従業員コードの借用は禁止されていたが、一部店舗ではパートやアルバイトをレジに呼んで従業員コードを読み取るなどして借用する運用が、常態化していた。   2 棚卸偽装の実態 (1) 棚卸の実施と偽装の必要性 店舗では、四半期末ごとに棚卸が実施される。棚卸とは、商品の数量などを目視で確認する作業である(実地棚卸)。 棚卸の結果は、統合基幹系システムであるPOSシステムによって在庫データと照合される。棚卸で確認された商品数と帳簿(データ)上の商品数に差異(帳在差異)があれば、以下の情報を記載した一覧(棚卸差異一覧表)が表示される。 もっとも上述したとおり、一部店舗では架空買取などによって「商品が実在しないのにデータ上は存在する」という“帳在差異”が生じていた。棚卸を行うと、そうした帳在差異の存在が判明し、架空買取も発覚するはずであった。 ただし、BH社グループでは、棚卸の結果のシステムへの入力は店長などが1人で行うことができ、店舗外の者が監視する仕組みはなかった。そのため、店長などが自ら架空買取などを行っていた場合、帳在差異を隠蔽するため棚卸の結果とデータ上の商品数を一致させる偽装工作が行われることになった。棚卸偽装である。 (2) 棚卸偽装の手法 BH社グループにおける棚卸偽装の手法の一部を紹介すると、以下のとおりである。 ① 棚卸結果の修正-架空在庫の計上 帳在差異を隠蔽する方法の1つに、棚卸の結果を修正してしまう、という方法がある。棚卸の結果において商品数の水増し修正(架空在庫の計上)をすれば、データ上の商品数と一致するからである。 BH社グループでは、商品数の水増し修正(架空在庫の計上)は、POSシステムの「棚卸入力」の機能を用い、棚卸時に発行された棚卸差異一覧表に印字されたインストアコードをスキャンすることで、容易に架空の在庫計上ができていた。 こうした作業は単独で行うことができ、店舗外の第三者がチェックする仕組みはなかった。また、帳在差異を修正しても、POSシステムでは最終結果のデータしか保存されず、変更履歴は残らなかった。このため事後に架空在庫計上を疑っても、架空入力の形跡やログを追跡できなかった。 ② 現場の商品の偽装-架空ラベル貼替 帳在差異を隠蔽する方法の1つに、架空計上した在庫に相当する商品を作り出してしまう、という方法がある。そうすれば、棚卸の結果をデータ上の商品と一致させることができる。 例えば、高単価の商品は、値札ラベルを発行することで在庫管理が行われる。BH社グループでは、架空在庫に相当する値札ラベルを再発行し(架空買取の場合、買取処理時に発行済み)、当該ラベルのバーコードを読み取ることで、架空在庫を計上できていた。さらに当該ラベルを別の商品の値札ラベルと貼り替えることで、当該在庫が物として存在するよう偽装することもあった。 なお、値札ラベルを再発行したり、商品の値札ラベルを貼り替えたりする際、他の従業員(上長等を含む)がチェックするルールは定められていなかった。 ③ データ上の商品数の削減-廃棄処理の不正 店舗では、棚からあふれ出るなどして不要になった商品は、外部業者に回収させて廃棄する。廃棄後、POSシステムに廃棄登録を行うと、当該商品は在庫から抹消される。 BH社グループでは、この仕組みを悪用し、架空計上されていた商品についてシステム上で廃棄処理を行い、データ上から抹消していたケースがあった。 こうした廃棄登録は、店長の承認が必要とされていた。しかし、店長自身が廃棄登録をした場合は、他の従業員によるダブルチェックのルールは定められておらず、承認手続が形骸化していた。   3 全体的な原因 調査で判明した29件の不正は、その大半が直近数年内に発生しており、偶然とは考えづらい。BH社グループとして、不正への組織的対応が不十分であったと指摘できる。 BH社グループは、以前にも同種不正の報告を受けたことがあった。取締役会・監査等委員会・内部監査報告会では、再発防止について相当程度の議論をしてきたようである。 しかし、取締役会等には、同種の不正が再発しないよう店舗横断的に防止策を考えるという視点が欠けていた。 例えばBH社グループでは、2017年にも架空在庫の計上が発覚しており、架空在庫の計上というリスクは、その時点で既に明らかであった。しかし、取締役会等が、架空在庫の計上を防止するための店舗横断的な再発防止策を講じることはなかった。 また、取締役会等が再発防止策を定めた後において、当該再発防止策が機能しているかという確認(フォローアップ)が不十分であった。 例えばBH社グループでは、2016年にも架空取引が行われていたことが発覚している。架空買取というリスクは、その時点で既に明らかであった。そこで同社は、架空買取を防止するため「精算者分離の原則」を定めた。しかし、精算者分離は機能せず、その後、何度も不正が再発した。 取締役会等が、その点を把握して改善に取り組んだ様子はうかがえない。   4 本件からの学び 架空買取や棚卸偽装のリスクは、ビジネスの仕組みそのものに内在している。それらの不正がたまたま1か所で1人の担当者により実行されたというケースは稀であり、1件の不正が発覚すれば、同種事案は他にも複数存在すると考えるべきである。 しかし、BH社グループでは、2016年や2017年の不正発覚時点において、そうした考えを十分持つことができなかった。そのため、今回の多数の不正につながったといえる。 他方で、BH社グループは今回、適正な問題意識を持つことができた。同社では徹底的な調査と再発防止策の検討を行っている。今後はこれらの不正が再発しない会社になることを期待したい。 皆さんの会社でも、何らかの不祥事が起こることは当然あり得る。そうした場合、「たまたま例外的事象が起こった」と考えるのではなく、同種事案が職場横断的に生じていないかを検証すべきである。 自社の不祥事を分析することは辛いものだが、そうした事案をリスクマネジメントにおける最大の教科書として受け止め、さらに良い会社にすべき努力をしていくことが求められよう。 (了)

#No. 613(掲載号)
#原 正雄
2025/04/03

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第91話】「『年収103万円の壁』をめぐる基礎控除の見直し修正」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第91話】 「『年収103万円の壁』をめぐる基礎控除の見直し修正」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「ようやく税制改正関連法が・・・今年も公布されたか・・・」 中尾統括官は、新聞を大きく開いたままつぶやく。 「・・・しかしなぁ・・・君はどう思う?」 中尾統括官は窓際に置かれているソファーで気持ちよく居眠りをしている浅田調査官に声をかける。 昼休みで、所得課税第三部門には2人しかいない。 「・・・何ですか?」 浅田調査官は目をこすりながら、中尾統括官を見る。 「令和7年度の税制改正だよ。」 そう言うと、中尾統括官は新聞記事を見せる。 「ああ・・・ようやく通りましたか・・・」 浅田調査官は、新聞記事を覗き込みながら言う。 「そういえば確か・・・衆議院を通過した時の新聞記事を保存しておいたのですが・・・」 今度は浅田調査官が、机から1ヶ月前の新聞記事のコピーを取って、中尾統括官へ手渡す。 (※) 朝日新聞digital(2025.3.4)より 「でもまぁ・・・『年収103万円の壁』問題の対応ということで、給与所得控除や基礎控除が改正されましたが・・・特に基礎控除は年収要件があるので、めちゃくちゃ細かくなりましたね。しかも、2年間の時限措置も含まれているので・・・実務ではそれだけ手間が増えて、大変な作業になると聞いています。政治家は自分の主義・主張を勝手に述べれば、それで良いのかもしれませんが・・・」 浅田調査官は、不満そうな表情を浮かべる。 「・・・こんな見直しの仕組み・・・誰が考えたのでしょうね・・・」 浅田調査官は、中尾統括官を見て話す。 「でもそれはまぁ・・・財政支出額や公平性、物価上昇など、いろいろな点を考慮して、結局、この修正案に落ち着いたのだと思うけどな・・・」 中尾統括官は、腕を組んで、困った表情になる。 「今回の修正案は、所得税の基礎控除について、年収200万円以下の人に限定して、年末の税制改正大綱(与党案)から37万円を引き上げることになっています・・・また、年収200万円超850万円以下の人に対しては、2年間の限定で、年収に応じて、30万円、10万円、5万円の追加の引上げが行われます・・・」 浅田調査官はすっかり目が覚めた様子で、説明を続ける。 「この改正によって、各年収層で、年収別減税額は2万円程度・・・と試算されているそうですが・・・高収入者ほど減税額が大きくなるということを避け、減税額を均一にすることに重きを置かれた改正・・・と説明されているようです・・・」 浅田調査官の説明を中尾統括官はじっと聞いている。 「修正案が出された頃・・・気になってまとめて書いてみたのですが、こちらを見てください・・・」 浅田調査官は机から罫紙を出して、中尾統括官に見せる。 「・・・今回の改正で、年収190万円以下のパート労働者の年収層において、所得税の課税最低限は103万円から160万円に引き上げられます・・・でも住民税については、基礎控除の引上げは行われていませんので・・・給与所得控除の最低保障額の10万円の引上げのみになります・・・ですから住民税の課税最低額は、100万円から110万円への引上げにしかならないのです。」 浅田調査官は、図を見ながら言う。 「なるほど・・・この修正による減税額は・・・どれぐらいになるのかな?」 中尾統括官が訊ねる。 「正確には分かりませんが・・・所得税では約1.2兆円で・・・住民税を加味して1.3兆円ぐらいと言われています・・・恒久的な措置(年収190万円以下の場合)の減税額は、1兆円に満たないらしいです・・・」 浅田調査官が答える。 「・・・国民民主党案の減税額は7兆円強と言われていたから、それに比べると与党案はずいぶんと少なく感じるな・・・これだと純粋なインフレ調整としては不足していると批判されるだろう・・・」 中尾統括官は、苦笑する。 「米国型のインフレ調整(調整期間の物価上昇率は10%)を行う場合の減税規模は2兆円強程度という数字になります・・・」 浅田調査官は、手元にあった保険会社の資料を見ながら答える。 「日本も・・・米国で定期的に行われているインフレ調整の方法を制度として法定されるべきだと思うのです・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の説明を聞いてうなずく。 「・・・日本でも、公的年金制度においては、物価・賃金スライドの仕組みが確立されているが・・・同様に、基礎控除や給与所得控除などの税制のみでなく、他の控除や児童手当などの給付においても・・・インフレ調整について一定の確立した考え方や枠組みの整理が求められているのだろう・・・」 中尾統括官は、腕を組みながら言う。 (つづく)

#No. 613(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/04/03

【期間限定】無料公開記事を更新しました!

【期間限定】 無料公開記事を更新しました Profession Journal(プロフェッションジャーナル) は、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスですが、下記の記事については期間限定で、プレミアム会員以外の方でもご覧いただけます。不定期の公開となりますので、早めにご覧ください。 (※) 一般会員の方も速報解説がご覧いただけるようになりました。くわしくは[こちら]。 ◆現在連載中の記事、及び連載が終了した記事の一覧表は[こちら]をご覧ください。 FOLLOW US!!

#Profession Journal 編集部
2025/04/03

《速報解説》 令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」が3月31日(月)付官報:特別号外第8号にて公布~施行日は原則4月1日~

《速報解説》 令和7年度税制改正に係る 「所得税法等の一部を改正する法律」が 3月31日(月)付官報:特別号外第8号にて公布 ~施行日は原則4月1日~   Profession Journal編集部   令和7年度税制改正関連法は、3月31日(月)の参議院本会議で可決後、参院で予算案の修正があったことから衆院に回付され、衆院本会議にて成立し、同日の官報特別号外第8号にて「所得税法等の一部を改正する法律」が公布された(法律第13号)。施行日は原則令和7年4月1日(法附則第1条)。地方税関係の改正法である「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」も官報同号にて公布されている(法律第7号)。 今年度改正では、既報のとおり当初の税制改正法案から修正案が示された所得税の基礎控除の上乗せ(特例)が実現する。また防衛財源確保のための防衛特別法人税の創設や、新リース会計基準を受けたリース取引に係る所要の整備、100億企業創出に向けた中小企業向け設備投資減税の延長・拡充等が行われるほか、事業承継税制における役員就任要件等の見直しや、子育て支援に係る措置として生命保険料控除・住宅ローン控除等の拡充、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長に加え、以前より問題が指摘されていた外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直しなどが織り込まれている。 *  *  * 以下では主な法律、政令、省令等の官報該当ページへのリンクを紹介する。 なお本誌では例年同様、主要な改正事項については毎週木曜日公開号において、専門家による解説記事を順次掲載するとともに、各府省庁・主な団体等より公表された令和7年度税制改正関連の情報については「令和7年度税制改正に関する《資料リンク集》」及び「新着情報」を随時更新していくので、そちらを併せて参照いただきたい。 また、税制改正大綱を受けた主な改正情報については、すでに本誌掲載済みの「令和7年度税制改正大綱」に関する《速報解説》 をご覧いただきたい。 官報:令和7年3月31日(月)付(特別号外第8号)で公布された主な税制改正関連法令 法令のあらまし ◆所得税法等の一部を改正する法律 附則:施行期日・経過措置など 所得税法の一部改正(第1条関係) 所得税法施行令等の一部を改正する政令 所得税法施行規則の一部を改正する省令 法人税法の一部改正(第2条関係) 法人税法施行令及び法人税法施行令等の一部を改正する政令の一部を改正する政令 法人税法施行規則等の一部を改正する省令 地方法人税法の一部改正(第3条関係) 地方法人税法施行令の一部を改正する政令 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令 登録免許税法の一部改正(第4条関係) 登録免許税法施行令の一部を改正する政令 消費税法の一部改正(第5条関係) 消費税法施行令等の一部を改正する政令 消費税法施行規則の一部を改正する省令 印紙税法の一部改正(第6条関係) 国税通則法の一部改正(第7条関係) 国税通則法施行令の一部を改正する政令 国税通則法施行規則の一部を改正する省令 租税特別措置法の一部改正(第8条関係) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・地価税関係 ・登録免許税関係 ・消費税関係 ・酒税関係 ・たばこ税関係 ・揮発油税・地方揮発油税関係 ・石油石炭税関係 ・航空機燃料税関係 ・自動車重量税関係 ・国際観光旅客税関係 ・印紙税関係 租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(附則) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・登録免許税関係 ・消費税等関係 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(附則) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・地価税関係 ・登録免許税関係 ・消費税等関係 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の一部改正(第9条関係) 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部改正(第10条関係) 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法の一部改正(第11条関係) 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法の一部改正(第12条関係) 防衛特別法人税に関する政令 防衛特別法人税に関する省令 所得税法等の一部を改正する法律(平成19年法律第6号)の一部改正(第13条関係) 相続税法施行令の一部を改正する政令 相続税法施行規則の一部を改正する省令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 たばこ特別税に関する政令の一部を改正する政令 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律施行令の一部を改正する政令 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 復興特別所得税に関する政令の一部を改正する政令 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令 所得税法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴うたばこ税の税率の特例に関する経過措置に関する政令 防衛力強化資金に関する政令の一部を改正する政令 国税収納金整理資金に関する法律施行令の一部を改正する政令 産業競争力強化法施行規則の一部を改正する命令 地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律第四条第一項に規定する基本計画等に関する省令の一部を改正する省令 石油ガス税法施行規則の一部を改正する省令 国際観光旅客税法施行規則の一部を改正する省令 国税質問検査章規則の一部を改正する省令 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令の一部を改正する省令 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令 中小企業等経営強化法施行規則の一部を改正する省令 地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律  ( 附 則 ) ・1条関係 ・2条関係 地方税法施行令及び国有資産等所在市町村交付金法施行令の一部を改正する政令 地方税法施行規則の一部を改正する省令 ▷その他の主な関係法令・告示 地方税法施行規則附則第六条第二十二項の規定に基づき内閣総理大臣が定める償却資産の一部を改正する件 非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に関する基準の一部を改正する件 産業競争力強化法第二十一条の三十五第一項の規定に基づく生産性の向上又は需要の開拓に特に資するものとして主務大臣が定める基準を廃止する告示 地方税法附則第十五条第三十八項の規定に基づく特定高度情報通信技術活用システムの適切な提供及び維持管理並びに早期の普及に特に資するものとして総務大臣が定める基準 地方税法附則第十五条第三十八項の規定に基づき、特定高度情報通信技術活用システムを構築する上で重要な役割を果たすものとして総務大臣が定めるもの 地方税法附則第十五条第三十八項の規定に基づく総務大臣の確認に関する手続 地方税法第二十五条第一項第一号に規定する非課税独立行政法人を指定する件の一部を改正する件 地域における地域経済牽引事業の促進に関する基本的な方針の一部を改正する件 地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律第二十五条の規定に基づく地域の成長発展の基盤強化に特に資するものとして主務大臣が定める基準等に関する告示の一部を改正する件 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律第二十八条の規定に基づく特定高度情報通信技術活用システムの適切な提供及び維持管理並びに早期の普及に特に資するものとして経済産業大臣及び総務大臣が定める基準等を廃止する件 所得税法第百八十九条第一項の規定に基づき、同項に規定する所得税法別表第二の甲欄に掲げる税額が算定された方法に準ずるものとして財務大臣が定める方法を定める件の一部を改正する件 所得税法別表第一独立行政法人の項の規定に基づき、所得税を課さない法人を指定する件の一部を改正する件 法人税法別表第一独立行政法人の項の規定に基づき、法人税を課さない法人を指定する件の一部を改正する件 登録免許税法別表第二独立行政法人の項の規定に基づき、自己のために受ける登記等につき登録免許税を課さない独立行政法人を指定する件の一部を改正する件 消費税法施行令第十八条の二第二項第三号の規定に基づき、財務大臣の定める基準を定める件の一部を改正する件 印紙税法別表第二独立行政法人の項の規定に基づき、印紙税を課さない法人を指定する件の一部を改正する件 寄附金控除の対象となる寄附金又は法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する寄附金を指定する件の一部を改正する件 法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する寄附金を指定する件の一部を改正する件 事業適応の実施に関する指針の一部を改正する告示 我が国産業の基盤強化に特に資することその他主務大臣が定める基準の一部を改正する告示 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第五条第五項第一号の規定に基づき、同号に規定する国税庁長官の定める基準を定める件 租税特別措置法施行規則第十八条の十五の三第三十五項に規定する国税庁長官の定める基準を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条第四項、法人税法施行規則第三十六条の四第六項、地方法人税法施行規則第七条第六項及び消費税法施行規則第二十三条の四第五項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条第三項第三号に規定する国税庁長官が定める添付書面等及び国税庁長官が定めるものを定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条第五項に規定する国税庁長官が定める添付書面等を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条の二第一項に規定する国税庁長官が定める申請等を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令第四十六条の八の二第二項第一号ハの規定に基づき、国税庁長官が指定する方法を定める件を廃止する件 租税特別措置法施行令第四十六条の八の二第五項に規定する国税庁長官が定める方法及び租税特別措置法施行規則第三十七条の四の二第四項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第十八条第八項に規定する国税庁長官が定める方法及び消費税法施行規則第六条の二第五項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第十八条の二第二項第三号の規定に基づき国税庁長官が観光庁長官と協議して指定する自動販売機を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令第三十九条の二十五第一項第一号に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準等の一部を改正する告示 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/04/01

《速報解説》 法人税等会計基準等の改正受けた、財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令等の改正が確定~未払法人税等に特別法人事業税の未払額を含めるよう規定~

《速報解説》 法人税等会計基準等の改正受けた、 財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令等の改正が確定 ~未払法人税等に特別法人事業税の未払額を含めるよう規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年3月31日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第31号)が公布された。これにより、2024年12月27日から意見募集されていた内閣府令(案)が確定することになる。財務諸表等規則ガイドライン及び連結財務諸表規則ガイドラインも改正する。 内閣府令(案)等に対して特段の意見は寄せられなかったとのことである。 これは、2025年3月11日に公表された「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正」において、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)が改正されたことを受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則等の主な改正 主に次の改正を行う(連結財務諸表規則も同様)。   Ⅲ 施行期日等 公布の日(2025年3月31日)から施行する。 経過措置に注意する。 (了)

#阿部 光成
2025/04/01

令和7年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和7年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和7年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/04/01

《速報解説》新リース会計基準等を受けた「会社計算規則の一部を改正する省令」が公布される~「リースに関する注記」として新たな注記事項を規定~

《速報解説》 新リース会計基準等を受けた 「会社計算規則の一部を改正する省令」が公布される ~「リースに関する注記」として新たな注記事項を規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年3月31日、「会社計算規則の一部を改正する省令」(法務省令第14号)が公布された。これにより、2025年2月5日から意見募集されていた法務省令案が確定することになる。法務省令案に対する意見の概要及び意見に対する法務省の考え方も公表されている。 これは、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)の公表等を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 定義 使用権資産、ファイナンス・リースなどの定義について改正する(会社計算規則2条)。 例えば、使用権資産とは、リースの対象となる資産を使用する権利をいう。 2 資産の部の区分及び負債の部の区分 使用権資産、リース負債などについて規定する(会社計算規則74条、75条)。 3 注記事項 「リースに関する注記」とし、次の事項の注記を規定する。ただし、会社法440条4項に規定する株式会社以外の株式会社は、これらの事項の注記を要しない(会社計算規則98条、108条)。 新リース会計基準を適用しない会社のリースに関しては、実務上の負担等も考慮し、引き続き従前の注記を許容することを意図していることから、法務省令案に対する意見を踏まえ、会社計算規則108条1項の注記については、有価証券報告書提出会社以外の株式会社は要しないことを明らかにしている。 連結計算書類を作成する株式会社は、個別注記表における会社計算規則108条1項(第1号イを除く)の注記を要しない(会社計算規則108条2項)などの規定を設ける。 また、会社計算規則108条1項の規定にかかわらず、ファイナンス・リースの借手である株式会社が当該ファイナンス・リースについて資産及び負債を計上する会計処理を行っていない場合の個別注記表におけるリースに関する注記は、リースの対象となる資産(固定資産に限る)に関する事項とする(会社計算規則108条4項)。 この場合において、当該資産の全部又は一部に係る次に掲げる事項(各資産について一括して注記する場合にあっては、一括して注記すべき資産に関する事項)を含めることを妨げない。 会社計算規則108条4項は、現行の会社計算規則108条の内容を引き継ぐものであり、同条の適用されるリースについて、引き続き同様の注記を求めるものであって、その適用範囲を変更するものではないとのことである。 このため、会社計算規則108条4項は、新リース適用指針114項で要求されている通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用しているリースのほか、新リース会計基準を適用しない株式会社におけるリースなど、ファイナンス・リースにつき資産及び負債を計上する会計処理を行っていない場合に適用されることとなる。 「金融商品に関する注記」(会社計算規則109条)、「賃貸等不動産に関する注記」(会社計算規則110条)も改正する。   Ⅲ 施行期日等 公布の日(2025(令和7)年3月31日)から施行する。 改正後の会社計算規則(以下「新会社計算規則」という)の規定は、2027(令和9)年4月1日以後に開始する事業年度及び連結会計年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度及び連結会計年度に係るものについては、なお従前の例による。 ただし、2025(令和7)年4月1日以後に開始する事業年度及び連結会計年度に係るものについては、新会社計算規則の規定を適用することができる。 会計方針の変更の注記に注意する。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#阿部 光成
2025/03/31

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和6年7月~9月)」~注目事例の紹介~

《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和6年7月~9月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2025(令和7)年3月25日、「令和6年7月から9月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、国税通則法関係、所得税法関係及び国税徴収法関係がそれぞれ2件と相続税法関係が1件で、合計7件となっている。公表された裁決のうち「全部取消し」となった事例は2件で、「一部取消し」が1件、残りは「棄却」又は「却下」となっている。 【表:公表裁決事例令和6年7月から9月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された7件の裁決事例のうち、行政指導を行わずに過少申告加算税の賦課決定処分を行うことが不当かどうかが争われた事例(①)、訴訟上の和解により得た解決金が遺留分侵害請求(※)に基づく価額弁償金に該当するかどうかが争われた事例(⑤)に加えて、同一の滞納納税者が有する土地に対する公売公告処分について、国税不服審判所の判断が分かれた2つの事例(⑥、⑦)の合計4件について、国税不服審判所の判断内容を概説したい。 (※) 現行民法では、第1046条で「遺留分侵害額の請求」を規定しているが、本事例では、被相続人が、民法が改正される前の2016(平成28)年6月に死亡しているため、裁決の引用では、「遺留分減殺請求」と表記している。 なお、複数の争点がある裁決については、下記の概要の中で、その一部を割愛して、中心的な争点のみに絞らせていただいたことを、あらかじめお断りしておく。   1 過少申告加算税と行政指導・・・① (1) 事案の概要 本件は、一般労働者派遣事業などを目的とする法人である審査請求人(以下「請求人」という)が、令和4年10月1日から令和5年9月30日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の確定申告に当たり本則課税制度により控除対象仕入税額を計算したことについて、請求人は消費税簡易課税制度選択届出書を提出していることから、簡易課税制度を適用して控除対象仕入税額を計算すべきであるとする原処分庁からの指摘に従い修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、確定申告書を提出した際に、原処分庁が上記指摘をするなどの行政指導を行わずに過少申告加算税を賦課したことは不当であるなどとして、原処分の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 原処分庁が行政指導を行わずに本件調査を行い課した本件賦課決定処分は、不当か否か。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、法律解釈として、処分の不当とは、処分を行うにつき、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていると認められる場合において、処分行政庁の行った処分が、裁量権の逸脱又は濫用により違法であるとまではいえないが、その処分の基礎となる法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理であることをいうことから、処分が不当といえるためには、その前提として、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていることを要するものと解するのが相当であるという判断を示した。 そのうえで、本件について国税不服審判所は、過少申告加算税を規定する国税通則法第65条第1項及び第2項の規定において、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、原処分庁に裁量権が付与されたものとは解されず、他にも裁量権が付与されたと解すべき法律上の根拠もないことから、本件賦課決定処分をするに当たり、原処分庁に裁量権が付与されていたとはいえないため、処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではないこととなり、請求人による審査請求は理由がないから、これを棄却することとするという裁決を行った。   2 和解による解決金と遺留分減殺請求に基づく価額弁償金・・・⑤ (1) 事案の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という)が請求人の兄を相手方とする訴訟において、訴訟上の和解が成立し、当該和解により兄から請求人に対して支払われることとなった解決金について、原処分庁が、当該解決金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であって、当該金額のうち請求人の相続税の申告において課税価格に含まれていなかった金額を課税価格に算入する旨の相続税の更正処分を行ったところ、請求人が当該更正処分において課税価格に算入された金額は、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金を超過する金額であって、損害賠償金に該当するものであるから相続税の課税価格に算入されないなどとして原処分の全部の取消しを求めた事案である。 なお、請求人は、主位的には、被相続人による公正証書遺言は無効であり、相続について法定相続分に応じて本件被相続人の財産を相続したとして、予備的には、仮に公正証書遺言が有効であるとしても、遺留分減殺請求権を行使したとして、兄を被告として訴訟を提起したものである。 (2) 訴訟上の和解 裁判所が提示した和解案に基づき、請求人とその兄は、令和4年3月、訴訟上の和解が成立した。和解条項は以下のとおりである。 (3) 争点 本件解決金は、請求人の兄に対する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金に該当するか否か。 (4) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、本件解決金の性質について、和解調書には、本件解決金が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であることを示す記載はないから、本件解決金の法的性質を判断することはできないとしたうえで、訴訟代理人による申述及び和解案を作成した裁判所の判断などを参照して、本件解決金の中に、請求人の遺留分減殺請求に基づく価額弁償金が含まれていること自体は認められるものの、訴訟の担当裁判官が、本件解決金のうち、どの部分を遺留分減殺請求に基づく価額弁償金とし、どの部分をそれ以外の性質のものと考えていたのかは定かではないといわざるを得ないと判断し、少なくとも本件解決金の全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると認めることはできないという見解を示した。 そのうえで、国税不服審判所は、原処分は法定申告期限から5年経過後の令和5年7月7日に、国税通則法第70条第1項第1号が規定する更正の除斥期間を経過して行われたものであり、原処分庁は、本件和解により、兄が請求人に対し遺留分減殺請求に基づく価額弁償金として本件解決金を支払うことが確定したことは、相続税法第32条第1項第3号の事由(遺留分による減殺の請求に基づき弁償すべき額が確定したこと)に該当するとして、本件相続に係る兄の相続税について、更正の請求に基づく更正をし、一方、請求人に対しては、本件更正処分をしたと解されるが、本件金員は、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると断定することはできないのであるから、本件金員について、遺留分による減殺の請求に基づき弁償すべき額が確定したとはいえず、原処分は、相続税法第35条第3項第1号の要件を満たさないから違法であり、その全部を取り消すべきであると判断して、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととするという裁決を行った。   3 公売公告処分の違法もしくは不当、又は瑕疵・・・⑥、⑦ (1) 事案の概要 本件(事例⑥及び⑦)は、原処分庁が納税者G社(以下「滞納会社」という)所有の土地を公売に付するため、公売公告処分をしたところ、当該土地に借地権を有すると主張する審査請求人2名(以下、事例⑥に係る請求人を「請求人A」、事例⑦に係る請求人を「請求人B」と区分する)が、当該公売公告処分は、違法又は不当であるとして、その全部の取消しを求めた事案である。 (2) 事実関係と審査請求に至る経緯 滞納会社は、滞納会社の所有する土地の一部(本件土地)をHに賃貸する契約を締結していて、Hが本件土地の上に建物(本件建物)を所有していたところ、Hが平成25年11月に死亡したため、Hの子である請求人A及び請求人Bが相続人となり、本件建物の所有権については、請求人Bを単独所有者として所有権移転登記を行った。 原処分庁は、平成28年5月2日付で、滞納会社の滞納国税を徴収するため、本件土地を差し押さえた(本件差押処分)。なお、原処分庁は、本件差押処分につき、徴収法第55条の規定による通知(差押通知)を、請求人A及び請求人Bに対してしていない。 請求人A及び請求人Bと滞納会社は、平成28年10月4日、請求人A及び請求人Bが本件建物を本件借地権とともに滞納会社に売却する旨の借地権付建物売買契約を締結した。本件各建物は、平成28年12月12日付で、原因を「平成28年10月21日取壊し」とする閉鎖登記がなされた。請求人A及び請求人Bは、売買契約の約定に従い、平成28年10月31日までに本件建物を解体したにもかかわらず、滞納会社が売買代金を弁済しないとして、令和2年1月22日付で、滞納会社に対し、売買契約の取消し又は解除をする旨の通知書面を送付し、同書面は同月24日に滞納会社に到達した。 原処分庁は、令和〇年〇月〇日付で、滞納会社の滞納国税を徴収するため、本件土地について、徴収法第95条第1項の規定に基づき、公売の開始及び締切りの日時を〇年〇月〇日〇時〇分から〇月〇日〇時〇分まで、売却決定の日時を〇年〇月〇日〇時〇分、買受代金の納付の期限を〇日〇時〇分などとする公売公告兼見積価額公告を行った(本件公売公告処分)。 (3) 争点 (4) 争点1に係る国税不服審判所の判断 争点1について、国税不服審判所は、まず、請求人Aについては、本件公売公告処分に基づく公売の結果、本件借地権を失うから、本件公売公告処分により、自己の権利を侵害されるおそれのある者というべきであり、請求人Aは、本件公売公告処分について不服申立てをすることができる者に該当するとの判断を示した。 一方、請求人Bについては、国税不服審判所は、本件差押処分時において、請求人は、本件土地の借地人であり、差押通知を受けるべき借地権者であり、かつ、差押換請求権を有する者であることから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に該当するとの判断を示した。 (5) 争点2に係る国税不服審判所の判断 争点2について、国税不服審判所は、請求人Aについて、請求人Aは差押通知を受けるべき者には当たらず、また、原処分庁は差押財産である本件土地について公売の日の10日前までに公売財産の名称等の所定の事項を公告しているから、本件公売公告処分は、国税徴収法第95条の規定に基づき適法に行われているうえ、提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められないことから、請求人Aによる審査請求は理由がないから、これを棄却するという裁決をした。 一方、請求人Bについては、国税不服審判所は、争点1で判示したとおり、原処分庁は、請求人Bに対し、本件公売公告処分に先立ち差押通知をしなかったことから、本件公売公告処分には、取り消し得べき瑕疵があること、さらに、本件公売公告処分には、買受人が引き受けるべき公売財産上の負担である請求人の借地権という「公売に関し重要と認められる事項」の記載が漏れているという、取り消し得べき瑕疵が認められることから、本件公売公告処分は、その全部を取り消すべきであり、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととするという裁決をした。 (了)

#米澤 勝
2025/03/28

令和6年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和6年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和6年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/03/27
#