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消費税減税大綱に伴い想定される実務への影響と対応 【第3回】「総額表示義務の特例及び定期供給契約・通信販売に係る経過措置、税率変更日前後の適用税率」

消費税減税大綱に伴い想定される 実務への影響と対応 【第3回】 「総額表示義務の特例及び定期供給契約・通信販売に係る経過措置、税率変更日前後の適用税率」 税理士 石川 幸恵   前回、消費税率の引下げに伴う課税事業者選択届出書等の提出期限の特例について確認した。 今回は、国税庁から公表されているQ&Aで示された、総額表示義務の特例や定期供給契約・通信販売に係る経過措置、税率変更日前後の適用税率について取り上げる。   1 総額表示の範囲について 課税事業者が消費者に対して商品等の販売、役務の提供などの取引を行う際に、あらかじめ取引価格を表示する場合には、商品や役務などに係る税込価格を表示すること(総額表示)が義務付けられている。 免税事業者が行う取引や事業者間取引、口頭による価格の提示、見積書、契約書、請求書などには総額表示義務はない(国税庁「消費税のあらまし(令和8年6月)」79~80頁)。   2 総額表示義務に関する特例 令和9年4月1日の前後2か月と令和11年4月1日の前後2か月について、総額表示義務に直ちに対応することが困難な事情がある場合には、誤認防止措置を講じている場合に限り、次の図のように変更前又は変更後の税率による税込価格を表示することができる。 【適用期間のイメージ】 (※) 消費税率引下げQA問3-9より抜粋 (1) 困難な事情とは 困難な事情については、例えば「夜間の値札の貼り替え作業に対応できない」「カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されている」等の理由から、税率変更時に適切な税率での総額表示が間に合わない場合が該当する。 「困難な事情」について具体的な基準が設けられているわけではないが、「その程度を問わない」とされているものでもない点には注意されたい。 (2) 誤認防止措置 誤認防止措置は、消費者が商品の選択を行う際の価格表示に関する誤認を防止するため、明瞭に認識できる方法で行う必要がある。 例えば、棚の商品について一律に税率8%による税込価格を表示している場合には、その旨とレジでは1%で精算する旨を消費者の目につきやすい場所に掲示する方法が示されている。 また、税率1%と8%による価格表示が混在する場合には、値札の色、税率の明記、シールを貼るなどして両者を区別して、その区別方法とレジでの精算方法を掲示する方法が示されている。   3 総額表示につき、特例の期間でも認められない対応について 税抜価格(本体価格)のみを表示する方法や税抜価格に続けて「+税」とのみ表示する方法など、税込価格を表示しない方法は引き続き認められない。   4 定期供給契約、通信販売の経過措置はどのような取引に適用されるのか 今回の税率引下げでは、定期供給契約と通信販売についてのみ、経過措置が設けられている。経過措置の対象となる取引を確認した上で、令和9年4月1日以後の取引に1%の税率を適用する場合の実務上の対応について確認する。 (1) 定期供給契約 定期供給契約に係る経過措置を例で示すと、次のようなものである。 定期供給契約とは、季節の食材が毎月届く定期便のような不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給する契約をいう。 令和9年1月1日(以下「指定日」とする)前に契約を締結し、対価を施行日である令和9年4月1日前に領収した場合には、4月1日以後のお届け分についても、税率8%が適用される(消費税率引下げQA問1-6)。 (2) 通信販売 通信販売に係る経過措置を例で示すと、次のようなものである。 通信販売の方法により指定日前に販売条件を提示し、施行日前に申し込みを受けて、施行日以後に譲渡が行われる場合には、税率8%が適用される(消費税率引下げQA問1-6)。 なお、いわゆるカタログギフトは、受贈者が選択した商品の手配に係る役務の提供に該当するため、飲食料品のみを掲載したものであっても、標準税率10%が適用される点に注意されたい(個別事例編問35)。 (1)及び(2)の経過的な取扱いについては選択適用ではないことに注意されたい。   5 定期供給契約、通信販売について4月1日以後のお届け分に消費税率1%を適用することはできるのか 4の経過措置は選択適用ではないため、事業者の判断で税率1%を適用することはできない。一方、契約や販売条件において、税率変更があった場合には新税率によることを定めているときは、令和9年4月1日以後の販売について税率1%が適用される。 (1) 定期供給契約 契約等で次のような定めをする。 また、既存の契約についても、当初契約の契約金額を変更する旨の契約を令和9年1月1日以後に締結することで、消費税率1%が適用される。消費税率引下げQA問1-6では、当初契約との差額を返金するケースを例として示している。 (2) 通信販売 通信販売についても、販売条件に、令和9年4月1日以後に販売を行うものは消費税率1%による旨や、税率変更後の販売価格をあらかじめ提示している場合には、同日以後の販売について税率1%が適用される。   6 買い手における仕入れの計上基準と適格請求書の税率が異なる場合、どちらの税率で仕入税額控除を行うのか 買い手は、売り手が適用した税率に基づき仕入税額控除を行うこととなるため、適格請求書に記載された消費税率や消費税額に基づき仕入税額控除額を計算する。 例えば、売り手が出荷基準、買い手が検収基準を採用しており、売り手が令和9年3月31日に出荷し、買い手が4月1日以後に検収した場合、買い手の仕入計上日が4月1日以後であっても、適格請求書に記載された税率に基づいて仕入税額控除を行う(消費税率引下げQA問1-4)。買い手が自らの仕入計上時期に応じて適用税率を選択するものではない。   (了)

#No. 690(掲載号)
#石川 幸恵
2026/10/15

相続税の実務問答 【第124回】「共同相続人が親の養子である兄弟姉妹の場合」

相続税の実務問答 【第124回】 「共同相続人が親の養子である兄弟姉妹の場合」   税理士 梶野 研二   [答] 相続人が被相続人の養子である場合には、相続税の基礎控除額の算定等において相続人の数に算入できる養子の人数に制限があります。しかし、甲及び乙は被相続人の養子ではなく、被相続人の親の養子です。したがって、相続税の基礎控除額等の計算において、甲及び乙を相続人の数から除く必要はありません。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の基礎控除額等の計算における相続人の数 相続税の計算において、次の(1)、(2)及び(3)については、相続人の数を基礎として計算しますが、被相続人に養子がある場合には、算入できる相続人の数が一定数に制限されています。この制限は、養子縁組によって法定相続人の数を増やし、相続税負担を不当に減少させることを防ぐ趣旨のものです。 (1) 基礎控除額の計算 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(相続税法第19条に規定する生前贈与加算の適用がある場合には、同条の適用により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額を控除することとされています(相法15①)。この金額を遺産に係る基礎控除額といいます。この場合の相続人の数は、民法第5編第2章の規定による相続人の数をいいますが、被相続人に養子がある場合に相続人の数に算入できる当該被相続人の養子の数は、次の①又は②の区分に応じて定められた数に限られ、相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数となります(相法15②)。 ただし、①又は②において、次に該当する者は実子とみなされます。 (注) 上記の定めにより1人又は2人の養子を相続人の数に算入することができるとしても、それが相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、その養子の数を相続人の数に算入せずに相続税の課税価格及び相続税額を計算することができることとされています(相法63)。 (2) 相続税の総額の計算 相続税の総額は、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に相当する金額の合計額からその遺産に係る基礎控除額を控除した残額を、当該被相続人の上記(1)に規定する相続人の数に応じた相続人が民法第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定による相続分に応じて取得したものとした場合における各取得金額について、相続税法第16条に定める税率を適用して求めた金額を合計した金額とされます(相法16)。 (3) 生命保険金等の非課税金額 相続人の取得した保険金(相続税法第3条第1項第1号に規定するもの)については、500万円に相続人の数を乗じて算出した金額までが非課税とされます(相法12①六)。 また、相続人の取得した退職手当金(相続税法第3条第1項第2号に規定するもの)については、500万円に相続人の数を乗じて算出した金額までが非課税とされます(相法12①七)。 これらの非課税金額の計算における「相続人の数」は、上記(1)の相続人の数となります。   2 相続税の基礎控除額の計算等において相続人の数への算入が制限される養子 上記1により相続人の数に算入することが制限される相続人は、「被相続人の養子」(ただし、1(1)の(ⅰ)及び(ⅱ)に該当する養子は除かれます。)とされています。 したがって、次の例のように、相続人自身が養子であっても、「被相続人の養子」でなければ、上記1の相続人の数に算入を制限される養子には該当しません。相続税法基本通達15-5も、この点を明確にするため、被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)が兄弟姉妹である場合は、その中に当該被相続人の親との養子縁組によって相続人となった者がいても、相続税法第15条第2項に規定する「当該被相続人に養子がある場合」に該当しないと定めています。   3 ご質問の場合 お姉様には、相続開始の時において配偶者がおらず、子その他の直系卑属も直系尊属もいないため、兄弟姉妹が相続人になります(民法889①二、890)。ご質問のケースでは、実の妹であるあなたが相続人となります。また、あなたの夫甲及び従兄の乙も、あなた方の父母双方との養子縁組により、お姉様の兄弟姉妹として相続人となります(民法727、809、889①二)。 ところで、甲及び乙は、あなた方のご両親の養子となったことから、今回の相続では、お姉様の兄弟姉妹として相続人となったものです。このため、相続税の基礎控除額を計算する場合などにおいて、この2名を相続人の数に含めてよいかどうかが問題となります。 しかしながら、上記2で述べたように、相続人の数への算入が制限されるのは、「被相続人の養子」です。甲及び乙は、お姉様の相続人ですが、お姉様の養子ではありません。したがって、甲及び乙には相続税法第15条第2項の養子数制限は適用されず、相続人の数をあなた、甲及び乙の3名として、相続税の基礎控除額等を計算します。   (了)

#No. 690(掲載号)
#梶野 研二
2026/10/15

税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 【第6回】「従業員用の借上げ社宅⑥」~制度設計と導入準備の実務~

税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 第6回 従業員用の借上げ社宅⑥ ~制度設計と導入準備の実務~ 公認会計士・税理士 桝井康弘   〇普遍性の問題   〇契約書の注意点   〇他社の事例紹介   〇導入時期とスケジュール   (了)  

#No. 690(掲載号)
#桝井 康弘
2026/10/15

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第100回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第100回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   ④ 取引金額・損益計上の有無・タイミング等を判断し、損益を確定 (ア) ブロックチェーンの記録からわかること・わからないこと 「損益計上の有無やタイミング等を判断することが難しい場合」がある。その要因として次のようなものがある。 取引タイプが多様でそれぞれ損益処理が異なる。 暗号資産取引には、エアドロップ、マイニング、ステーキング、レンディング、流動性供給、ラップ・アンラップ、信用取引、レバレッジ、デリバティブなど様々な取引タイプが存在する。これらは、その性質や見解の相違等により、損益処理(損益計上の有無やタイミング)が異なりうる。 暗号資産はボラティリティが大きいため、どの時点を損益計上すべきタイミングと考えるかによって損益額が大きく変動することに注意が必要である。例えば、受領時課税と売却時課税とで評価額が大きく乖離することも珍しくない。 また、その処理方法が確立していないものもある。 他方、ブロックチェーンに記録されるトランザクションの基本形は、暗号資産の「移転」であり、一般的には、いつ、どのアドレスからどのアドレスにどの種類の暗号資産がどの程度送付されたかがわかるにすぎない。 ここでいう「移転」とは、アドレス間における暗号資産の送付や受領のみならず、暗号資産の供給量が変化するミント(生成)やバーン(破棄)も含む意味での「移転」を指す。 (イ)で整理するとおり、暗号資産の送付又は受領のトランザクションが発生している場合、その背後にある取引タイプや取引目的として想定されるものは多岐にわたる。 しかしながら、ブロックチェーン上に記録されているトランザクションのみをもって損益取引か、貸借取引か、損益取引である場合にいつの時点でどのくらいの損益を計上すべきかを明確に又は直ちに判断することが難しい場合がある。 すなわち、「移転」という外形から直ちに「課税イベント」の有無を導くことはできない。ここに、暗号資産税務の最大の判断困難性がある。 ただし、ブロックチェーンエクスプローラーを利用して、そのトランザクションの前後関係やイベントログ(本連載第102回参照)を分析し、呼び出されているスマートコントラクトの関数や付随データを検討することにより、一定の精度で背後にある取引タイプや取引目的を判定又は推定できる場合もある。 しかしながら、取引内容が複雑である場合や分析に必要なデータが不足している場合には、取引の詳細を把握することは難しい。そもそも、上記は高度な技術的読解を前提とするものであり、一般の納税者や税理士にとって容易とはいえない。 結局、納税者が備忘記録や資料を適切に保管していることが税務コンプライアンスの観点から重要である。ブロックチェーンが「透明」であることと、課税関係の判断に必要な事実関係が「自動的に明らかになる」こととは同義ではないことに留意が必要である。 (イ) トランザクション別取引タイプと問題点・注意点 ブロックチェーン上のトランザクションを次の3つのタイプに分けたうえで、各タイプごとに想定される取引タイプ等や注意点を整理する。 トランザクションタイプ:〔1〕暗号資産の送付 《想定される取引タイプ等》 《注意点》 トランザクションタイプ:〔2〕暗号資産を送付し、暗号資産等のトークンを受領 (ただし、送付と受領にタイムラグがある場合もあり) 《想定される取引タイプ等》 《注意点》 トランザクションタイプ:〔3〕暗号資産の受領 《想定される取引タイプ等》 《注意点》 (ウ) その他損益計算時の問題点・注意点 複数チェーン間の資産移動(※)、関連するトークンの送付と受領にタイムラグのある取引が絡むと、取引が複雑化し、損益計算処理が困難になる。 (※) それぞれのチェーンで記録されるトランザクションが独立しており、全体の履歴を一貫して追跡することが難しい場合がある。 ブリッジ取引では、AチェーンでのバーンとBチェーンでのミントが別個のトランザクションとして記録されるため、全体像を理解しなければ誤って譲渡と認定される危険がある(本連載第70回参照)。 また、例えば、次のような理由から「損益計算が煩雑になる場合」がある。   (了)

#No. 690(掲載号)
#泉 絢也
2026/10/15

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2026年9月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年9月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年9月1日から9月30日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 ◎ 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等 (内容:「法人税等に関する会計基準」(改正企業会計基準第27号)等及び「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第74号)等を受けたもの。意見募集期間は2026年10月16日まで) (了)

#No. 690(掲載号)
#阿部 光成
2026/10/15

給与計算の質問箱 【第81回】「本社を移転した場合の注意点」

給与計算の質問箱 【第81回】 「本社を移転した場合の注意点」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 当社は令和8年10月1日付けで本社を埼玉県から東京都へ移転しました。給料は末締め翌月25日払いです。給料計算の注意点をご教示ください。 A 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 最低賃金 埼玉県の最低賃金は、9月30日までは1,141円、10月1日からは1,196円である(【図表1】参照)。 東京都の最低賃金は、9月30日までは1,226円、10月1日からは1,280円である。 例えば、時給1,200円のパート・アルバイトの場合、埼玉県の最低賃金はクリアしているが東京都の最低賃金はクリアしていないので10月1日から時給を1,280円以上に引き上げなければならない。9月分給与(10月25日支給)の給料計算では時給1,200円で計算、10月分給与(11月25日支給)の給料計算では時給1,280円以上で計算しなければならない。 【図表1】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※) 出典:厚生労働省   2 健康保険料 協会けんぽの場合、埼玉支部の健康保険料率は9.67%、東京支部の健康保険料率は9.85%である(【図表2】、【図表3】参照)。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、9月分給与(10月25日支給)から天引きする健康保険料は14,505円、10月分給与(11月25日支給)から天引きする健康保険料は14,775円である。 【図表2】協会けんぽ埼玉支部の健康保険・厚生年金保険の保険料額表 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 【図表3】協会けんぽ東京支部の健康保険・厚生年金保険の保険料額表 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   3 変更なし 介護保険料(1.62%)、子ども・子育て支援金(0.23%)、厚生年金保険料(18.3%)、雇用保険料、源泉所得税、住民税は、違いはない。 (了)

#No. 690(掲載号)
#上前 剛
2026/10/15

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第82回】「土地区画整理事業における仮換地指定と「みなす課税」」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第82回】 「土地区画整理事業における仮換地指定と「みなす課税」」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 土地区画整理事業は、それが都市計画決定されてから事業の完了に至るまで、事業期間が相当長い年月にわたります。(資料1)はその流れを示します。 (資料1) 土地区画整理事業の流れ (出所) 国土交通省ホームページ掲載資料を基に筆者作成。 また、土地区画整理事業の大きな柱は「減歩」と「換地」です。 ちなみに、「減歩」とは区画整理後の宅地面積が区画整理前と比べて減少することを指し、「換地」とは区画整理によりもとの宅地に対して置き換えられた宅地のことを指しています。そのイメージは(資料2)のとおりです。 (資料2) 土地区画整理事業のイメージ (出所) 福岡市ホームページ「土地区画整理事業」の掲載資料より抜粋。 土地区画整理事業では事業期間が長期にわたることから、最終的な換地処分までの間に仮換地指定が行われるのが通常です。そして、仮換地指定を受けた場合、土地の使用収益について、土地区画整理法上特別な扱いがなされることとなります。 また、仮換地指定を受けた土地について、固定資産税の納税義務者は誰になるのかについても留意する必要があります。   2 土地区画整理事業における仮換地の位置付け (1) 土地区画整理事業の概要 土地区画整理事業とは、(資料2)のイメージ図からも明らかなとおり、土地(宅地)の区画を根本的に整備(再配置)するとともに、道路、公園等の公共施設も併せて整備することを目的として行われる街づくり事業です。 (2) 土地区画整理事業の特徴 既に述べたとおり、土地区画整理事業の大きな柱は減歩と換地です。 ① 減歩 土地区画整理事業の実施に伴い、道路、公園等の公共施設が整備されますが、これらの土地は事業主体が地権者から買収することによってまかなわれるわけではありません(あくまでも、従前から所有している宅地の一部を拠出し合うことにより確保されます)。 このほか、土地区画整理事業では、保留地と呼ばれる宅地を拠出して生み出し、これを売却して事業資金を捻出するところに特徴があります。そのため、事業全体としてみた場合、区画整理後の宅地面積は、区画整理前と比べて減少することになります(これが減歩であり、それによって減少する面積割合を減歩率と呼んでいます)。 ② 換地 換地とは、区画整理によりもとの宅地に対して置き換えられた宅地のことを意味します。なお、換地処分の行われた土地には、登記簿(登記事項証明書)の表題部および権利部(甲区)にその旨の記載が行われます。 (3) 仮換地指定について ① 仮換地指定の意味 仮換地指定とは、(文字どおり)将来換地となるべき土地の位置や面積を仮に指定することを指し、土地区画整理法第98条に根拠を置いています。 ② 仮換地指定の効果 次に、仮換地指定の効果ですが、仮換地が指定されただけでは、その所有権はまだ仮換地に移転するわけではありません。しかし、仮換地の指定日を境に、(仮換地に移行する前の)所有地は使用収益ができなくなり、これに代えて仮換地の使用収益が可能となるという仕組みがとられています(同法第99条)。この点が土地区画整理事業の大きな特徴であり、次に述べる固定資産税の「みなす課税」がなされる拠り所となっています。   3 仮換地に対する固定資産税の「みなす課税」について 固定資産税は、固定資産の所有者に課される税ですが、土地については、その所有者とは、登記簿または土地補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者をいうとされ、いわゆる台帳課税の原則がとられています。 しかし、土地区画整理事業の施行に係る土地について、仮換地の指定があった場合には、仮換地の指定の効力発生の日(使用収益開始可能日の指定があったときはその日)から、当該仮換地に対応する従前の(すなわち仮換地に移行する前の)土地の所有者は、当該仮換地の使用収益が可能となります。 一方で、当該仮換地の現所有者は、当該仮換地について使用収益ができなくなりますが、換地処分の効力が発生するまでは、土地の所有権については変更がなく(=登記簿上の名義もまだ変更されておらず)、台帳課税の原則を貫く限り、依然として当該仮換地の所有名義人が納税義務を負うこととなります。 すなわち、当該仮換地の現所有者にとっては自らその土地を使用できない(=他人に使用収益の権利を譲る)にもかかわらず、その土地の固定資産税の納税義務を負うこととなるのは不公平であるという理由によりなされるのが「みなす課税」というものです(その拠り所は地方税法第343条第7項となります。以下の下線部は、上記説明に関連する部分であり、筆者によります)。 なお、課税実務では「みなし課税」ではなく、「みなす課税」という表現が用いられている点に留意が必要です。 〇地方税法   4 まとめ 土地区画整理事業に関しては、不動産鑑定士としても留意すべき点が多々あります。今回取り上げた「みなす課税」は固定資産税の賦課にかかる問題ですが、仮換地の使用収益開始後は仮換地の現況で鑑定評価を実施するという点が重要です。そのため、鑑定評価を実施する時点において、実際に仮換地指定がなされているかを確認することはもちろん、仮換地指定後の位置を特定し、インフラの整備状況をも踏まえて評価額を求めることが課題となります。 (了)

#No. 690(掲載号)
#黒沢 泰
2026/10/15

《税理士のための》登記情報分析術 【第41回】「役員の退任登記のポイント」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第41回】 「役員の退任登記のポイント」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   会社の登記に関するテーマとして、本連載では役員変更登記や任期についての考え方について解説をした。これらに加えて役員退任登記のポイントについても解説をしておきたい。世代交代等を理由として既存の役員に退任をしてもらうというケースも増えている印象がある。役員退任のタイミングではトラブルが発生することもあるため、顧問税理士としてもポイントを押さえておくとよいだろう。   1 役員退任の原因 役員退任の原因としては、主に「退任」、「辞任」、「解任」、「死亡」がある。各原因が意味するところは以下の通りである。 【原因の意味】 退任 任期満了によって退任したということ 辞任 役員が自ら退任を申し出たことにより退任したということ 解任 会社側が役員を解任し、退任させたということ 死亡 役員が死亡したことにより退任したということ 役員退任の原因は、会社の登記情報に記録されることになる。 【「解任」の場合の登記記録】 役員に関する事項 取締役 山田 三郎 令和8年10月30日解任 令和8年11月5日登記 登記情報に記録されるということは、どのような理由で役員が退任したかは、外部にも明らかになるということを意味する。「解任」を原因として退任の登記がされた場合、外部からは何らかのトラブルがあったのではないかと思われ、会社の信用不安を生じさせかねないため、できるだけ避けるべきであるといわれる。   2 役員を解任する前に 外部に与える影響はあるとしても、役員の素行不良などを理由として、解任をせざるを得ないというようなケースもありうる。このような場合でも急いで解任の手続きを行うのではなく、ひと呼吸おいて確認したいのが役員の任期である。 もし役員の任期があと1、2か月で満了するということであれば、解任を原因として退任登記を申請しなくても、任期満了に伴う株主総会において、当該役員の選任決議をしなければ自動的に任期満了により退任となる。このように処理をすれば外部から不審の目を向けられることなく、また役員を解任した場合、地位をめぐってトラブルになりやすいがそのリスクを低減できるといえる。   3 「辞任」による退任について 「辞任」を原因として退任登記を申請する場合、「辞任届」の添付が必要になる。辞任届は必ずしも役員が自ら氏名を記載した「署名」が必要になるわけではなく、パソコン等で氏名を入力した「記名」でよいとされている。また、いわゆる会社実印の届出を行っている代表取締役を除き、辞任届に押印は不要となっている。 しかし、筆者としては脱ハンコの流れから押印を省略することはやむを得ないとしても、事後的にトラブルになることを防ぐために、辞任届には「署名」を求めることが望ましいと考えている。   4 「死亡」による退任について 役員が死亡した場合、「死亡」を原因として退任登記を申請することになる。死亡を証する書面として、死亡した役員の親族が作成した死亡届や、死亡の記載がされた戸籍謄本等を添付する必要がある。役員が死亡した場合も、他の退任の原因と同じく2週間以内に登記を申請することが必要になる(会社法915条)。役員が死亡した場合、会社としては慌ててしまうと思われるが、速やかな対応が求められるため、役員の親族の連絡先等もしっかりと把握しておくことが求められる。 (了)

#No. 690(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/10/15

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和8年1月~3月)」~注目事例の紹介~

《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和8年1月~3月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2026(令和8)年10月8日、「令和8年1月から3月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、国税通則法関係が4件、所得税法関係が2件、登録免許税法関係が1件で、合計7件である。公表された裁決は、「全部取消し」、「全部取消し・棄却」及び「一部取消し・棄却」が各1件、「棄却」が3件、「却下」が1件となっている。 【表:公表裁決事例令和8年1月から3月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 税目・税法 主に争点となった項目 裁決結果 国税通則法 ① 重加算税 隠蔽、仮装の認定(認めた事例) 棄却 ② 調査手続 調査の必要性 一部取消し 棄却 ③ 不服審査 処分について利害関係を有する第三者 棄却 ④ 不服審査 審査請求期間の不遵守 正当な理由 却下 所得税法 ⑤ 事業所得 必要経費 家事関連費 全部取消し ⑥ 雑所得 役務等の提供による収入の所得区分 棄却 登録免許税法 ⑦ 課税標準 土地の価額 全部取消し 棄却   本稿では、公表された7件の裁決事例のうち、審査請求人が過誤により売上高を少なく申告したという主張を斥けた事例(①)、審査請求人が、審査請求期間を徒過したことに正当な理由はないとした事例(④)及び社外取締役等を務める審査請求人の講演料などの収入は事業所得ではなく雑所得であるとした事例(⑥)について、国税不服審判所の判断内容を概説したい。 なお、複数の争点がある裁決については、下記の概要の中で、その一部を割愛して、中心的な争点のみについて絞らせていただいたことを、あらかじめお断りしておく。   1 売上金額を過少に申告したのは、請求人又は内縁の妻の単なる過誤等であるとして、審査請求人が、重加算税の賦課決定処分の取消しを求めたが、棄却した事例・・・① (1) 事案の概要 本件は、原処分庁が、ロードサービス業を営む個人事業者である審査請求人が売上金額を過少に申告していたことにつき隠蔽又は仮装の事実及び偽りその他不正の行為があるとして、所得税等及び消費税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実及び偽りその他不正の行為はないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、次のように事実認定を行ったうえで、争点1について判断を示している。 審査請求人は、事業用預金口座に係る通帳等の管理や別口座への資金移動等を自ら行っており、審査請求人の売上高の集計表を作成して所得税の確定申告を行っていた内妻は、事業用預金口座の通帳等を確認したことがなかったところ、審査請求人の事業に係る売上金の各月における振込回数は、少ない月で1回、多い月で6回であって、その平均は約2.8回であるにもかかわらず、調査対象となった72か月のうち、68か月で、審査請求人が集計した売上高は、国税不服審判所が集計した金額を下回っている。 こうした事実認定に基づき、国税不服審判所は、審査請求人は、事業用預金口座の通帳を確認することにより、各年分における事業に係る売上金額を容易に把握でき、個人事業者である審査請求人が、自らの事業に係る売上金額を確認しないことは通常あり得ず、これを否定すべき事情もないことからすれば、各年分の真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、審査請求人は、内妻に各年分の事業に係る売上金額が過少となるよう各月の売上金額を伝えたことにより、その売上金額が反映された一覧表並びに確定申告書及び決算書を作成させたものと認められ、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別の、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠蔽又は仮装に当たるというべきであるという判断を示した。 裁決の結果は、審査請求は理由がないから、これを棄却するというものである。   2 再調査審理庁が再調査決定書の謄本を税務代理人ではなく請求人本人の住所に、特定記録郵便で送達したことは適法であり、不服申立期間が経過したことに国税通則法第77条第2項の「正当な理由」はないとした事例・・・④ (1) 事案の概要 本件は、被相続人Dが令和3年12月○日に死亡したことに伴い開始した相続に係る唯一の法定相続人(被相続人の妹)である審査請求人が、新型コロナウイルス感染症の影響などにより相続税の申告等をその期限までにすることができなかったとして、災害による申告等の期限延長申請をしたところ、原処分庁が、当該申請の却下処分をしたことから、請求人が、原処分の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 本件の争点は、審査請求の適法性であり、国税不服審判所は、次の二つの争点について、判断を示している。 (3) 国税不服審判所の判断 争点1について、審査請求人は、①再調査審理庁は、税務代理権限証書に一切の書類を税務代理人(本件代理人)が受領する旨記載されていたにもかかわらず、再調査決定書の謄本を請求人本人に送達したこと、②再調査審理庁は、謄本の送達先を代理人に確認する義務があるにもかかわらずこれを怠ったこと、③再調査審理庁が特定記録郵便で謄本を送達したことから、謄本の送達は違法であり無効であると主張した。 これに対し、国税不服審判所は、謄本は、令和7年2月7日午前11時29分に配達が完了したとされており、調査の結果によっても、謄本が返戻、転送又は誤配送されたことや、配達完了日よりも遅れて配達されたことをうかがわせる事情や証拠は見当たらないことから、謄本は、令和7年2月7日に審査請求人の住所に配達されて謄本の内容を了知し得る状態に置かれたものと評価できるとしたうえで、再調査の請求人が書類の受領の代理権限を代理人に付与した場合に、それに伴い、再調査の請求人が本来なし得る書類の受領について、その権限が制限されるか、又はその権限を喪失すると解すべき理由はないことから、審査請求人は、本件謄本を受領する権限を失わないというべきであり、審査請求人の主張には理由がないとしてこれを斥けた。 また、争点2について、審査請求人は、①再調査請求に係る調査において、担当職員に対し、審査請求人の住所には月に2、3回郵便物を見に帰る程度で、それ以外は被相続人Dの自宅で生活をしている旨や、税務代理権限証書のとおり、書類の受領を含む全ての事務を代理人に一任している旨を伝えていたにもかかわらず、審査請求人の住所に謄本が送達されたこと、②謄本がポストに投かんされるだけの特定記録郵便で郵送されることは予測できず、偶然、審査請求人が令和7年2月8日に本件住所に行った際に謄本を見つけて現実に受領したことから、同日を「送達があった日」と考えたことなどの事情に照らすと、審査請求人には通則法第77条第2項ただし書に規定する「正当な理由」があると主張した。 これに対し、国税不服審判所は、審査請求人は謄本を令和7年2月8日に確認しており、不服申立期間の経過まで十分な時間的余裕があったことから、請求人が主張する事情は、請求人の責めに帰することができない事由により不服申立期間内に不服申立てをすることが不可能と認められるような客観的な事情であるとは認められないとの判断を示した。 結論として、国税不服審判所は、審査請求は、通則法第77条第2項本文に規定する不服申立期間の経過後にされたものであり、また、請求人が不服申立期間内に審査請求をしなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるといえる事情も認められないことを理由として、審査請求は、不服申立期間の経過後にされた不適法なものであるから、これを却下するという裁決を行った。   3 請求人がした講演、一般財団法人の理事等に係る業務から生じた所得が事業所得には該当せず雑所得に該当するとした事例・・・⑥ (1) 事案の概要 本件は、税理士である審査請求人が、給与所得である役員報酬のほかに、一般社団法人などが主催するセミナーでの講演、税理士会が開催する無料相談会の従事並びに一般財団法人等の理事等に係る業務による収入を事業所得として申告した所得の金額の計算により生じた損失の金額を給与所得の金額と損益通算して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、事業所得として申告した所得は事業所得ではなく、雑所得に該当するなどとして更正処分等をしたことから、審査請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 本件業務から生じた所得は、事業所得又は雑所得のいずれに該当するか。 (3) 国税不服審判所の判断 審査請求人及び原処分庁は、次の6つの基準について、争点に関する主張を行った。 こうした主張を踏まえて、国税不服審判所は、審査請求人の申告内容について、各年分において、本件業務から生じた総収入金額はいずれも○○万円に満たない一方で、各年1,000万円を超える必要経費を計上し、本件業務に係る収支は連年大幅な赤字が続いていたことからすれば、本件業務は、経済合理性に欠け、営利性は乏しいというべきであることから、本件業務は、有償性、反復性及び継続性並びに自己の計算と危険による企画遂行性を一定程度有し、一定の物的設備を備えていたほか、請求人が精神的及び肉体的労力を一定程度費やして行っていた活動であるとはいえるものの、営利性に乏しく、多額の給与を得ていたことにより本件業務が継続され、多額の損失が生じており、相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性を有していたとは認められないという判断を示した。 そのうえで、国税不服審判所は、本件業務から生じる所得の所得区分を判断するに当たり、役員等業務と本件業務とを全体としてみることを前提に、本件業務と本件役員等業務を併せた収入金額及び所得金額は高い伸びを示しているから本件業務には営利性がある旨、並びに請求人は30年にわたり個人の事業活動が継続的にできたからこそ、給与所得を得ているという審査請求人の主張に対しては、本件業務から生じる所得の所得区分を判断するに当たっては、本件業務に係る事実関係のみをもって上記の基準への該当性を判断すべきであって、本件業務から生じる所得と所得区分を異にする役員等業務に係る事実関係をも含めてこれを判断することはできないとして、請求人の主張を斥けた。 結論として、国税不服審判所は、審査請求は理由がないから、これを棄却するという裁決を行った。 (了)

#米澤 勝
2026/10/13

プロフェッションジャーナル No.689が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年10月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.689を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/10/08
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