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《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版を公表~重要な契約等、経営方針等、MD&A及び中堅中小上場企業の開示例に言及~

《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版を公表 ~重要な契約等、経営方針等、MD&A及び中堅中小上場企業の開示例に言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年3月24日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版を公表した。 昨年11月以降、次のように、「記述情報の開示の好事例集2024」が公表されており、今回の公表はこれらに続いて、重要な契約等、経営方針等、MD&A及び中堅中小上場企業の開示例について議論したものであり、「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版として公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み 海外の情報開示姿勢に変化があったとしても、政策と情報開示は別であり開示しなくてはいけない内容に変化はないため、企業価値向上のために必要な開示が何かという明確なポリシーを持って開示をすることが重要であることなどが記載されている。   Ⅲ 経営上の重要な契約等の開示例 主な開示のポイントとして、重要な契約等と、経営方針や事業等のリスクなどの有価証券報告書の他の記載項目との連動性、関連性を意識した開示が有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(適時開示文書から必要な部分を的確に抜粋したことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅳ 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(経営方針等)の開示例 主な開示のポイントとして、経営環境の大きな変化等を踏まえて中期経営計画等をアップデートする場合には、アップデートに至った背景等を含め具体的に記載することが有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(文章での記載から表形式の記載に変更し、見やすさ・理解しやすさを追求したことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅴ 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)の開示例 主な開示のポイントとして、経営判断に用いる独自指標、財務数値の分析結果や、環境変化の認識について具体的に開示することは有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(具体的な開示に基づき資本市場とのより深い対話が可能になり、当社への関心が高まったことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅵ 中堅中小上場企業の開示例 主な開示のポイントとして、有価証券報告書で開示しづらいネガティブな情報であっても、具体的に開示をすることで経営課題として認識して対処していることが伝わり、企業の開示姿勢や信頼性の向上につながるため、積極的に開示することが有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(ストーリー仕立てで目標値を設定することで、なぜ取り組むのか、社員の納得感が深まったことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2025/03/24

《速報解説》 会計士協会、「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の改正を確定~我が国の職業倫理に関する規定に従った独立性の記載を追加~

《速報解説》 会計士協会、「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の改正を確定 ~我が国の職業倫理に関する規定に従った独立性の記載を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年3月18日付けで(ホームページ掲載日は2025年3月19日)、日本公認会計士協会は、「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」(期中レビュー基準報告書第1号)などの期中レビューに関する報告書を公表した。これにより、2025年2月14日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。   Ⅲ 適用時期等 2025年4月1日以後開始する中間財務諸表に係る会計期間の中間財務諸表に対する期中レビューから適用する。 2025年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する。 いずれも倫理規則(2024年7月18日変更)を早期適用する場合に注意する。 (了)

#阿部 光成
2025/03/21

プロフェッションジャーナル No.611が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年3月19日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.611を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/03/19

日本の企業税制 【第137回】「所得税の基礎控除の上乗せ(特例)に係る修正案」

日本の企業税制 【第137回】 「所得税の基礎控除の上乗せ(特例)に係る修正案」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇税制改正法案修正への経緯 令和7年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」は、与党による修正を経て、3月4日に衆議院を通過した。本稿公開現在、参議院での審議中である。 今回の修正内容は、2月18日に再開した与党と国民民主党との間の税制協議の中で、与党側が提示したものである。この協議自体は、与党と国民民主党による合意には至らなかった。 国会に提出された当初の税制改正法案では、いわゆる「103万円の壁」への対応として、給与所得控除の最低保障額(現行:55万円)と基礎控除(現行:48万円(最高))とをそれぞれ10万円ずつ引き上げる(これにより課税最低限は123万円へ引き上がる)こととされていた。 与党による法案の修正案では、当初案の上乗せとして、租税特別措置法(案)第41条の16の2が追加されており、大きく恒久措置と時限措置に分けられる。   〇恒久措置 租税特別措置法(案)第41条の16の2では、第1に、給与収入200万円相当(給与所得控除後の合計所得金額ベースでは132万円)以下について、基礎控除の特別枠(恒久措置)として37万円を新設して上乗せすることとされている。これにより基礎控除は当初案58万円+上乗せ37万円=95万円(最高)となる。最低賃金で週40時間、休暇等も考慮して、年で48週働くと概ね200万円くらいになることが、その念頭にある。 上記の結果、給与収入200万円相当以下については、国会に提出されている税制改正法案(当初案)により123万円とされていた課税最低限が、160万円(基礎控除95万円(最高)+給与所得控除の最低保障額65万円)に引き上げられることになる。この水準は、東京の生活保護(生活扶助+住宅扶助)の水準(159万円)を念頭に置いたものである。   〇令和7年分及び8年分の時限措置 第2に、給与収入200万円相当を超えて475万円相当(給与所得控除後の合計所得金額ベースでは336万円)以下、つまり限界税率5%が適用される層については、基礎控除を30万円上乗せし、当初案の10万円と合わせて現行から40万円増加(48万円→88万円)とする。給与所得者の平均的な年収が460万円であることから、平均水準以下の層が概ねカバーされることとなる。 第3に、限界税率10%が適用される給与収入475万円超~665万円相当(給与所得控除後の合計所得金額ベースでは489万円)以下については、10万円上乗せし、当初案の10万円と合わせて現行から20万円増加(48万円→68万円)とする。 第4に、限界税率20%が適用される給与収入665万円超~850万円相当(給与所得控除後の合計所得金額ベースでは655万円)以下については、5万円上乗せし、当初案の10万円と合わせて現行から15万円増加(48万円→63万円)とする。 なお、第2から第4の措置については、物価高騰対策として令和7年分及び8年分に限定した措置とされている。 これらの措置により、減税額が平準化(1人当たり2~4万円程度)された形で、納税者5,600万人の8割強の約4,600万人がカバーされると見込まれている。   〇今後の物価上昇に伴う基礎控除の見直し方針 さらに、附則(案)第81条が設けられ、今後の物価上昇を踏まえて基礎控除を見直すこととされている。具体的には次のとおりである。 (了)

#No. 611(掲載号)
#小畑 良晴
2025/03/19

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第70回】「合同会社の社員に対する事前確定届出給与の支給」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第70回】 「合同会社の社員に対する事前確定届出給与の支給」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 株式会社と合同会社の相違 ネット上において「個人事業の法人成りは、手続き等が簡単な合同会社がお勧めです」等、合同会社のメリットを強調する内容が散見される。具体的には、合同会社の設立について、定款認証が不要であったり、登録免許税が株式会社設立の場合より低かったり、利益配分の自由度が高かったり、所有と経営が一致する形態であったりと、様々な内容が解説されている。 他方、法人成りについて株式会社を選択した場合、合同会社に比べてコストや自由度の面で劣る面があることは否めない。例えば、利益配分は原則的に株式数に応じる必要があるし、役員の選任(会社法329①)やその任期(会社法332)、そしてその職務執行の対価(会社法361①)、つまり役員報酬の額は株主総会の決議により定めなければならない。また、計算書類の承認についても定時株主総会で承認されなければならない(会社法438)。 このうち、職務執行の対価は株式総会の決議によって定めなければならないことは、いわゆるお手盛り防止と理解されている。これを前提に、定められる役員給与及び役員賞与の額は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられ、その職務執行の開始の日は定時株主総会の開催日となると認識されている。そして、この職務執行の開始の日は、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に影響を及ぼすこととなる(※)。 (※)  事前確定届出給与に関する届出書については本連載【第17回】参照。 ここで、合同会社に関しては、会社法上、職務執行の対価を総会で決定すべきとする旨の規定がないため、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に迷うこととなる。   (2) 国税庁による文書回答事例 この点について、令和7年2月28日、東京国税局が文書回答事例「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」を公表したので、その内容を確認する(以下、「文書回答事例」という)。 文書回答事例では、合同会社が事前確定届出給与の制度自体を活用できるかどうか、かつ、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について「社員総会の開催日から1月を経過する日」と理解してよいかを照会したものであり、東京国税局は、当該理解で差し支えない旨を回答している。 注目したいのは、照会した背景として、 とされていることである。 さらに照会者は、自社の状況について「前事業年度以前の決算の状況を踏まえた当事業年度の業績見込みを考慮してその決定を行うため、前事業年度の決算が確定する定時社員総会において、その役員給与及び本件役員賞与の支給日及び支給金額をその総社員の同意をもって決定することとして」おり、かつ「定時社員総会の開催日を業務執行社員の『職務の執行の開始の日』としている」ことを示している。   (3) 合同会社における事前確定届出給与の支給 文書回答事例では、これまで曖昧であった、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について見解を示したものである。 照会者と同様、上記前提であれば事前確定届出給与損金算入が認められ、かつ提出期限の起点を定時社員総会の開催日として差し支えないと示された点は、実務上参考となるものであるといえる。   (了)

#No. 611(掲載号)
#中尾 隼大
2025/03/19

相続税の実務問答 【第105回】「特例施行前に贈与を受けた相続時精算課税適用財産が被災した場合」

相続税の実務問答 【第105回】 「特例施行前に贈与を受けた相続時精算課税適用財産が被災した場合」   税理士 梶野 研二   [答] あなたがお父様からアパートを贈与により取得したのは、令和2年であり、「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例」が設けられる前ですが、このアパートが被災したのは、この特例の施行日である令和6年1月1日以後の令和7年2月15日ですので、あなたはこの特例を適用することができます。 この特例を適用するためには、災害が発生した日(令和7年2月15日)から3年を経過する日までに、所轄税務署長に一定の書類を添付して「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請書」を提出し、その承認を受けなければなりません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 特定贈与者に相続が開始した場合の相続税の計算 相続時精算課税に係る贈与を行った者(特定贈与者)に相続が開始した場合には、相続時精算課税適用者は、相続時精算課税の適用を受けた財産の価額を、相続税の課税価格に加算又は算入して、相続税の課税価格を計算し、算出された相続税額から相続時精算課税に係る贈与税額に相当する金額を控除します (相法21の15①③、21の16①④)。相続時精算課税に係る贈与税額に相当する金額が当該算出された相続税額から控除しきれない場合には、その控除しきれない金額の還付を受けることができます(相法33の2①)。 相続税の課税価格に加算又は算入される相続時精算課税の適用を受けた財産の価額は、当該財産を贈与により取得した時の価額です(相法21の15①、21の16③一、相基通21の15-2、21の16-1)。例えば、贈与を受けた株式や土地の価額がその後、値上がりしたとしても値上がり前の価額を基に相続税の計算をすることとなりますので、値上がりが見込まれるこうした財産を相続時精算課税制度を利用して早期に贈与することは、相続税対策としては有効です(相続時精算課税制度の趣旨も、高齢者世代から現役世代に早期に財産の移転を図る点にありました)。 しかしながら、相続時精算課税の適用を受けた財産の価値が、大幅に下落してしまった場合やその財産が滅失してしまったような場合でも、贈与時の価額により相続税の計算をすることとなりますので、このような場合には特定贈与者の相続開始時には価値の減少した財産しかない、あるいは贈与を受けた財産が存在しないにもかかわらず、贈与時の価額で相続税の計算をすることとなり、納税者感情にそぐわないといえます。この点が、相続時精算課税の利用が進まない原因の1つであるとの指摘もされていたところです。   2 相続時精算課税適用財産が被災した場合の特例 (1) 特例の概要 令和5年度の税制改正において、相続時精算課税の適用を受けた土地又は建物が、一定の災害により相当の被害を受けた場合(この土地又は建物は災害発生時まで、相続時精算課税適用者が継続して所有していることが要件の1つとなっています)には、相続時精算課税適用者が所轄税務署長の承認を受けることにより、特定贈与者に相続が開始した際の相続税の課税価格の計算上、被災金額を減額することのできる特例措置が創設されました(措法70の3の3①)。この特例を「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例」といいます。 この特例は、令和6年1月1日以後に一定の災害により被害を受けた土地又は建物に適用されることとされており、同日前に贈与を受けた相続時精算課税に係る土地及び建物についても適用されます(注)。ただし、災害減免法との重複適用はできません(措法70の3の3③)。 (注) この特例は、令和6年1月1日から施行されており(所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則1三ニ)、施行日前に相続時精算課税に係る贈与により取得した土地又は建物であっても、施行日以後に被災した場合には適用するとされています(同法附則51⑤)。 (2) 特例の対象となる一定の災害による相当の被害 この特例の対象となる「災害」とは、震災、風水害、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいいます(措法70の3の3①、措令40の5の3①)。 また、「相当の被害」とは、土地については、その土地の贈与の時における価額のうちにその土地に係る被災価額の占める割合が10%以上となる被害をいい、建物については、その建物の想定価額のうちにその建物に係る被災価額の占める割合が10%以上となる被害をいいます(措令40の5の3③)。被災金額の算定上、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される金額は控除しなければなりません(措令40の5の3②) なお、この特例は、災害により土地そのものの形状が変わったことによる損失や建物の損壊及び滅失等による物理的な損失を対象としているため、近隣の環境変化(街路の破損、鉄道交通の支障)等により贈与により取得した土地の価額が下落するなど経済的な損失を受けた場合には、適用対象とはなりません。 (3) 特例を適用するための手続き この特例を適用するためには、災害発生日から3年を経過する日までに相続時精算課税適用者の贈与税の納税地の所轄税務署長に、被害を受けた部分の価額を明らかにする書類等を添付した「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請書」を提出し、その承認を受けなければなりません(措令40の5の3⑤)。承認申請書には、災害による被害を受けた部分の価額その他の一定の事項を記載します(措令40の5の3⑥)。 承認申請書の提出を受けた所轄税務署長は、審査のうえ、その申請について承認又は却下をし、その旨をその申請をした者に対して通知します(措令40の5の3⑦)。所轄税務署長が承認をしたときには、「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請に対する承認通知書」が送られてきますが、この通知書には審査を経た被災金額が記載されています(措令40の5の3⑧)。   3 ご質問の場合 あなたは、令和2年にお父様からアパートの贈与を受け、相続時精算課税を適用して贈与税の申告をしましたが、このアパートが令和7年2月15日に火災により焼失したとのことです。あなたがこのアパートを贈与により取得したのは、令和2年であり、特例が設けられる前ですが、このアパートが被災したのは、特例の施行日(令和6年1月1日)以後の令和7年2月15日ですので、上記2(1)のとおり、他の要件を満たす限り、あなたはこの特例を適用することができます。 この特例を適用するためには、災害が発生した日(令和7年2月15日)から3年を経過する日(令和10年2月15日)までに、あなたの住所地の所轄税務署長に、一定の書類を添付して「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請書」を提出します。税務署長の審査を経て、申請が承認された場合には、承認通知書が送られてきます。その通知書に記載された「被災価額」を、お父様に相続が開始した場合の相続税の課税価格の計算上、アパートの贈与時の価額からその通知書に記載された「被災価額」を控除することとなります。それまでの間、税務署から送られてきた通知書や承認申請書の控えは、相続時精算課税選択届出書の控え、贈与税の申告書の控えとともに、確実に保管するようにしてください。 (了)

#No. 611(掲載号)
#梶野 研二
2025/03/19

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第67回】「バークレイズ銀行事件-実質所得者課税の原則に基づく源泉所得税納税義務の可否-(地判令4.2.1)(その1)」~所得税法12条の規定の趣旨~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第67回】 「バークレイズ銀行事件 -実質所得者課税の原則に基づく源泉所得税納税義務の可否- (地判令4.2.1) (その1)」 ~所得税法12条の規定の趣旨~   税理士 吉村 優     1 事実の概要 外国法人である原告の東京支店(以下「東京支店」という)は、その事業資金を調達するために、英国ロンドン市にある原告の本店(以下「ロンドン本店」という)から本支店間取引として融資取引により資金調達を行っていた。 原告においては、日本の課税額に係る外国税額控除を十分に受けられない年度が継続し、外国税額控除を受けられずに繰り越された部分が多額となっていた。平成23年頃、原告グループにおいて財務効率を改善するため、その資金調達の方法を、東京支店からロンドン本店に対して社債(以下「本件社債」という)を発行し、ロンドン本店は、外国法人かつ原告の完全子会社であるBに、Bは、内国法人であるCに順次本件社債を譲渡するという形式に変更した。 本件は、原告が、本件社債の利子(以下「本件利子」という)の収益を実質的に享受している者はC又はロンドン本店であるとして、本件利子の各支払に際して源泉徴収をしなかったところ、A税務署長から、本件利子の収益を実質的に享受している者はBであり、本件利子の各支払は外国法人に対する利子の支払に当たるとして、本件利子についての源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び各不納付加算税賦課決定処分(以下「本件各処分」という)を受けたことから、本件各処分の取消しを求めるとともに、本件各処分に基づいてされた源泉所得税の本税、不納付加算税及び延滞税の各納付は法律上の原因なく行われたものであるとして、被告に対し、過納金として53億4,717万6,776円の還付及びその還付加算金の支払を求める事案である。   2 前提事実 ◎ 原告について 〈関係図〉   3 争点 本件の争点は、本件利子の実質所得者(所得税法12条)がロンドン本店であるかBであるかである(なお、Cが本件利子の実質所得者ではないこと、ロンドン本店が本件利子の実質所得者である場合には、原告に本件利子に係る源泉徴収義務が生じないことは、当事者間に争いはない)。 ((その2)へつづく)

#No. 611(掲載号)
#吉村 優
2025/03/19

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   Ⅵ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準 2022年10月28日に、ASBJより以下の会計基準の改正が公表された。 また、2022年10月28日、日本公認会計士協会より以下の改正が公表された。 本改正では、その他の包括利益に対して課税される場合の法人税等の計上区分、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いについて、改正が行われている。   1 その他の包括利益に対して課税される場合の法人税等の計上区分 (1) 改正理由 その他の包括利益に計上された取引又は事象(以下、「取引等」という)が課税所得計算上、益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。 従来、取引等については、その他の包括利益に計上される一方で、これに対して課される法人税、住民税及び事業税等は損益に計上され、税引前当期純利益と税金費用の対応関係が図られていないものがあった。 そのため、その他の包括利益に対して課される法人税、住民税及び事業税等のほか、株主資本に対して課される法人税、住民税及び事業税等も含めて、所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分についての見直しが行われた(改正企業会計基準第 27 号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表)。 (2) 影響があるケース 影響があるケースとして、以下の例示が挙げられている(「改正企業会計基準第 27 号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表」の「公表にあたって」3頁、11頁)。 上記以外にも、影響があるケースとしては、以下が考えられる。 なお、株主資本に対して課税される場合については、従来から税効果適用指針等において取扱いが示されているため、以下の場合を除き、影響はない(「改正企業会計基準第 27 号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表」の「公表にあたって」3頁)。 (3) 法人税等の計上区分 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益(又は評価・換算差額等)に区分して計上する(法人税等基準5、5-2、8-2)。 ただし、以下のとおり、例外的な取扱いも設けられている。 (※) 退職給付に関する取引が想定されているが、株主資本やその他の包括利益を用いた会計処理を定めた場合や税制改正が行われた場合に、退職給付に関する取引以外の項目でも該当する可能性がある(法人税等基準29-6、7)。 (4) 株主資本又はその他の包括利益に計上する金額の算定 株主資本又はその他の包括利益の区分に計上する法人税、住民税及び事業税等は、課税の対象となった取引等について、株主資本又はその他の包括利益に計上した金額に、法定実効税率を乗じて算定する。 なお、課税所得が生じていないこと等から法令に従い算定した額がゼロとなる場合、株主資本又はその他の包括利益の区分に計上する法人税、住民税及び事業税等についてもゼロとするなど、他の合理的な計算方法により算定することができる(法人税等基準5-4)。 (5) その他の包括利益の組替調整(リサイクリング) その他の包括利益累計額に計上された法人税、住民税及び事業税等は、当該法人税、住民税及び事業税等が課される原因となる取引等が損益に計上された時点で、これに対応する税額を損益に計上する(法人税等基準5-5)。 なお、税率変更に係る差額はリサイクリングしない(法人税等基準29-10)。 (6) 子会社に対する投資を売却した時の親会社の持分変動による差額に対する税効果 親会社の持分変動による差額に係る連結財務諸表固有の一時差異について、資本剰余金を相手勘定として繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合、当該子会社に対する投資を売却し、一時差異が解消した場合には、繰延税金資産又は繰延税金負債を取り崩す。この際、従来は相手勘定を法人税等調整額として取り崩していたが、改正後は、資本剰余金を相手勘定として取り崩す(税効果適用指針9(3)、30)。 また、子会社に対する投資について親会社の持分変動による差額を直接資本剰余金に計上する場合、当該親会社の持分変動による差額に係る一時差異に関する繰延税金資産又は繰延税金負債の差額について、税率が変更されたことによる修正差額を当該税率が変更された年度において資本剰余金を相手勘定として計上する(税効果適用指針51(3))。 (7) その他の包括利益の開示 包括利益計算書におけるその他の包括利益の内訳項目は、税効果を控除した後の金額で表示し、税効果の金額を注記する。そのため、その他の包括利益の内訳項目から控除する「税効果の金額」及び注記する「税効果の金額」について、「その他の包括利益に関する、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金及び税効果の金額」と改正された(包括利益基準8)。   2 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 (1) 改正理由 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式及び関連会社株式(子会社株式等)の売却(連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上、当該売却損益を繰り延べる場合)に係る税効果について、従来では、当該子会社株式等を売却した企業の個別財務諸表において、当該売却損益に係る一時差異に対して繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されている場合は、連結上、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額は修正していなかった。 しかし、連結上、消去される取引に対して税金費用が計上されることとなり、税引前当期純利益と税金費用が必ずしも適切に対応していないため、改正が行われた(「改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表」の「公表にあたって」7頁)。 (2) 影響を受けるケース 100%子会社を所有する親会社の連結財務諸表において、その100%子会社同士又は親会社と100%子会社との間で、親会社又は100%子会社が所有する子会社株式等を売却し、当該売却に伴い生じた売却損益について、グループ法人税制が適用される場合に、連結財務諸表について影響を受ける(「改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の公表」の「公表にあたって」7頁)。 なお、個別財務諸表における取扱いは改正されていないため、税効果適用指針8項及び9項に従い繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する(税効果適用指針143-2)。 (3) 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱い及び子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の取扱い 連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益について、税務上、当該売却損益を繰り延べる場合、連結財務諸表において、以下の会計処理を行う(税効果適用指針22、23、39)。   3 適用時期等 (1) 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(法人税等基準20-2、包括利益基準16-5、税効果適用指針65-2)。 (2) 適用初年度の経過措置 ① その他の包括利益に対して課税される場合の法人税等の計上区分 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。 ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減するとともに、対応する金額を資本剰余金、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額のうち、適切な区分に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができる(法人税等基準20-3、包括利益基準16-5、税効果適用指針65-2)。 ② グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果 改正の対象となる取引は、売却元企業の税務申告書に譲渡損益調整勘定等として記載されているため、過去の期間における対象取引の把握は可能と考えられる。また、会計処理については、購入側の企業における再売却等についての意思の有無により判断することになるが、この点についても、過去の連結財務諸表における子会社等に対する投資に係る一時差異への税効果会計の適用において、一定の判断がなされていたと考えられる。したがって、遡及適用が困難となる可能性は低いため、経過的な取扱いは設けられていない(税効果適用指針163)。 (3) 会計方針の変更の注記 重要性が乏しい場合を除き、会計方針の変更の注記が必要である。連結財務諸表において同一の内容が記載される場合には、一部の項目を除き、その旨を記載し、個別財務諸表における記載を省略することができる(財務諸表等規則8条の3、連結財務諸表規則14条の2、会社計算規則102の2)。 【事例:(株)モスフードサービス 2024年3月期有価証券報告書】     Ⅶ 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等   1 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い 2023年3月28日に「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)(以下、「改正法人税法」という)が成立し、国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税のルールのうち所得合算ルール(IIR)に係る取扱いが定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されている。 改正法人税法では、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させ、当該課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する。 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等及び税効果会計についてどのように取り扱うかが明らかでなかったことから、2024年3月22日に、ASBJより以下の会計基準の改正が公表された。 補足文書は、課税取扱いを適用する場合に実務に資するための情報を適用することを目的としている。 (1) 連結財務諸表及び個別財務諸表における取扱い ① 会計処理 (※) 「対象会計年度」とは、法人税法第15条の2に規定する多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表(法人税法82①)の作成に係る期間をいう(課税取扱い5)。 ② 特に見積りが困難な場合 (ⅰ) 適用初年度 適用初年度は特に見積りが困難な状況が考えられるが、「財務諸表作成時に入手可能な情報」に基づき見積ることとなる。 《適用初年度において情報の入手が困難な場合の会計上の見積りの例》 (ⅱ) 適用初年度の翌年度以降 適用初年度の翌年度以降は、適用初年度に比べればグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の申告に向けて情報を入手する体制がより強化され、実績値の把握等によって、入手可能となる情報が増加することがあると考えられる。しかし、グローバル・ミニマム課税制度においては、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難な場合があると考えられる。このような場合には、適用初年度の翌年度以降においても、上記(ⅰ)の(ア)(イ)に示した例を参考とすることが考えられる(補足文書14)。 ③ 見積金額と確定額の差額 上記①(又は②)により入手可能な情報に基づき見積もった金額と翌事業年度の見積金額又は確定額との間に差額が生じる場合がある。しかし、各事業年度において財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積もっている限り、当該差額は誤謬にはあたらず、当期の損益として処理する。 また、会計上の見積りの変更にあたって、当該差額に重要性がある場合には、会計上の見積りの変更注記(企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、「遡及基準」という)18)を行う(課税取扱いBC11)。 (2) 四半期及び中間における取扱い なお、課税取扱い第 7 項を適用するときは、その旨を注記する(課税取扱い13)。 (3) 表示 貸借対照表及び損益計算書における表示は、以下のとおりである。 (4) 適用時期 2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(課税取扱い14)。 四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記(上記(2)参照)については、上記の適用時期に関わらず、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(課税取扱い15)。 (5) 会計方針の変更注記 課税取扱いの適用については、以下の見解に分かれると考えられる。四半期又は中間の注記事例から考えると、会計方針の変更注記の会社もあったが、会計方針の変更注記を記載していない会社の事例の方が多いと推測される。   2 グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い グローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正は数年にわたって行われ、令和6年度の税制改正において所得合算ルール(IIR)が導入され、令和7年度税制改正大綱で、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)の導入が予定されている(前回参照)。 そこで、ASBJにおいてグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いが検討され、2023年3月31日に以下の実務対応報告が公表され、2024年3月22日に改正が行われた。 (1) 会計処理 したがって、法定実効税率もグローバル・ミニマム課税に係る法人税等を含まない税率を使用すると考えられる。 (2) 適用時期 課税税効果取扱いの公表日以後適用する(課税税効果取扱い4-2)。 (3) 注記 課税税効果取扱いを適用した旨の注記は必要ない(課税税効果取扱い16)。   Ⅷ 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正 ASBJでは、原則、年1回、4月1日を基準日として、会計基準等の要変更事項を検出し、基準変更の要否を検討している。今回、2024年4月1日を基準日として、会計基準等の変更が行われ、2025年3月11日に以下の会計基準等の改正が公表された。   1 包括利益の表示に関する改正 包括利益基準及び株主資本適用指針におけるその他の包括利益の取扱いに関して、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていなかったため、表現の見直しを図ることを目的として改正が行われた。 (1) 包括利益基準の改正 包括利益基準では、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上は「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるための変更を行っている(包括利益基準16、42-3)。 (2) 株主資本適用指針の改正 株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額は純額で表示するが、主な変動事由ごとにその金額を表示することができる(企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」8)。 ここで、株主資本適用指針では、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示する場合の例として示す項目について、「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されていたため、当該用語について見直しを行っている。 また、同様の区分により内訳を示している包括利益基準と用語の統一を図ることで、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書と連結株主資本等変動計算書の連携が理解しやすくなると考えられるため、「当期発生額」及び「組替調整額」という用語に変更されている(株主資本適用指針11-2、21-2)。 (3) 実務上の影響 上記(1)及び(2)の改正は、用語の修正であり、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示していない限り、実務的な影響はないと考えられる。 (4) 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(包括利益基準16-6、株主資本適用指針14-4)。   2 特別法人事業税の取扱いに関する改正 改正前の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」では、特別法人事業税の取扱いについては個別の規定はなかった。 そのため、特別法人事業税の取扱いの明確化を図るため法人税等基準が改正され、税効果会計における特別法人事業税の取扱いについても改正を行うため税効果適用指針が改正された。 (1) 法人税等基準の改正 特別法人事業税について、事業税(所得割)と同様の取扱いになることを明確化するための変更を行った(法人税等基準5)。 また、開示について、「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように表現の変更を行った(法人税等基準9)。 (2) 税効果適用指針の改正 法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることが明確化された(税効果適用指針4、46)。 (3) 実務上の影響 上記(1)及び(2)の改正は、今までの実務に沿った明確化のための改正であるため、多くの会社にとって実務的な影響はないと考えられる。 (4) 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(法人税等基準20-4、税効果適用指針65-4)。   3 種類株式の取扱いに関する改正 種類株式取扱いの適用対象となる種類株式に関して、会社法施行に伴い削除された商法の条文を参照したままとなっていたため、会社法を参照する定めに変更された。 (1) 種類株式取扱いの改正 種類株式取扱いの適用対象となる種類株式について、会社法第108条第1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式として定義された。 ここで、会社法第108条第1項では、旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能とされ、旧商法で認められていた種類の株式についても設計の柔軟化が図られていることから、種類株式取扱いの適用対象は、改正前の種類株式取扱いの開発時において想定されていなかった種類株式にも拡大する。 (2) 実務上の影響 会社法施行後の種類株式について、これまでも種類株式取扱いに沿って会計処理を検討していた場合は、実務的な影響は大きくないケースもあると考えられる。一方、種類株式取扱いに沿って会計処理を検討していなかった場合は、会計処理の再検討を行う必要がある。 (3) 適用時期 適用時期は、以下のとおりである。 (了)

#No. 611(掲載号)
#西田 友洋
2025/03/19

リース会計基準を学ぶ 【第5回】「借手のリースの会計処理①」-使用権資産及びリース負債の計上額、借手のリース料、使用権資産の償却-

リース会計基準を学ぶ 【第5回】 「借手のリースの会計処理①」 -使用権資産及びリース負債の計上額、借手のリース料、使用権資産の償却-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回から3回にわたり、借手のリースの会計処理について解説する。 リース会計基準は、主として借手の会計処理について改正を行うものであり(リース会計基準BC13項)、基本的に、借手のすべてのリースについて資産及び負債の計上を求めるものである(リース会計基準BC13項、BC39項)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 基本的な考え方 リース会計基準は、IFRS第16号と同様に、借手のリースの費用配分の方法について、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルを採用している(リース会計基準BC39項)。 このため、現行の「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)に基づき、オペレーティング・リース取引として会計処理しているリース取引についても、リース会計基準では、基本的に、使用権資産及びリース負債を計上することになる。 次の事項が論点となる。 なお、本稿では取り上げないが、リース会計基準及びリース適用指針では、リースの契約条件の変更が行われた場合について詳細に規定されているので、当該変更に該当するときには、会計処理等に注意が必要である。   Ⅲ 使用権資産及びリース負債の計上額 借手は、リース開始日に、使用権資産及びリース負債を計上する(リース会計基準33項、34項)。 使用権資産及びリース負債は、それぞれ次のように算定する。 上記の使用権資産及びリース負債の計上額の算定のイメージを示すと、次のとおりである。 上記のほか、借地権の設定に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含めるとする規定などがある(リース適用指針27項)。 仕訳で示すと、次のようになる(「[設例9-1]リース料が当月末払いとなる場合」参照)。 〈リース開始日〉 〈支払日〉 借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として会計処理を行い、後者はリース負債の元本返済として会計処理を行う(リース適用指針38項)。   Ⅳ 借手のリース料 借手のリース料は、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、次の①から⑤のもので構成される(リース会計基準35項)。   Ⅴ 使用権資産の償却及び利息相当額の各期への配分 1 減価償却 使用権資産については、次のように減価償却を行う(リース会計基準37項、38項、BC47項)。 上記の「①契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース」とは、次の(1)から(3)のいずれかに該当するものをいう(リース適用指針43項)。 2 利息相当額の各期への配分 利息相当額は、借手のリース期間にわたり、原則として、利息法により配分する(リース会計基準36項)。 借手のリース期間にわたる利息相当額の総額は、リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額になる(リース適用指針38項)。 利息法においては、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する(リース適用指針39項)。 現行の「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)に基づき、オペレーティング・リース取引のリース料を定額で費用処理している場合と比較し、リース会計基準では、利息相当額について利息法により各期に配分することから、借手のリース期間の前半部分では支払利息が多めに計上されることになる。 3 割引率 借手がリース負債の現在価値の算定のために用いる割引率は、次のとおりである(リース適用指針37項、BC66項)。   (了)

#No. 611(掲載号)
#阿部 光成
2025/03/19

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第47回】「うっかりミスが何度も繰り返される箇所を要チェック①」~損益計算書の「法人税等調整額」~

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第47回】 「うっかりミスが何度も繰り返される箇所を要チェック①」 ~損益計算書の「法人税等調整額」~   公認会計士 石王丸 周夫   1 計算チェックがスルーされやすい箇所 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 損益計算書の法人税等調整額の数字が間違っているというミスです。ただし、「法人税、住民税及び事業税」と法人税等調整額の2つを合計した金額は間違っていません。内訳金額としての法人税等調整額が間違っていたというものです。 公表資料のみではその原因を正確につかむことはできませんが、合計が合っているので、おそらくは内訳金額の入力ミスか更新漏れだったと考えられます。いずれにしても、うっかりミスであることは間違いなさそうです。 さて、今回注目してほしいのは、うっかりミスの内容や原因ではなく、それが発生した場所です。計算書類等のどの箇所で発生したのかということです。計算書類等の作成作業では、うっかりミスが発生しやすい場所がいくつかあります。この連載の既出事例も参考にしながら、うっかりミスが繰り返される箇所を整理していきたいと思います。 では早速、事例を見ていきましょう。 【事例47-1】 損益計算書の法人税等調整額を訂正。 〈訂正前〉 〈訂正後〉 (出所) 株式会社ケイブ「「第30回定時株主総会招集ご通知」の一部訂正について」(2024年8月24日) この事例の会社は、2024年8月8日に本事例を含む「第30回定時株主総会招集通知及び株主総会参考書類」を公表(電子提供措置の開始)し、2024年8月24日に当該誤記載の訂正を公表しています。 間違っていたのは、【事例47-1】の下線部で、損益計算書の法人税等調整額の数字です。訂正前が「△36,648」、訂正後が「△38,648」でした。8を6と見間違えて入力したようにも見えますが、実際にそうだったかどうかはわかりません。そのような入力ミスではなく、税効果の金額が内容的に修正された可能性もあります。しかし、「法人税、住民税及び事業税」と法人税等調整額の合計金額は訂正の前後で変化がないので、入力ミスでないとすれば、税効果修正後の損益計算書更新漏れではないかと考えられます。 いずれにしても、このミスは作成後に計算チェックを行えばすぐに見つけることができます。「法人税、住民税及び事業税」と法人税等調整額の合計が△38,116になればよいわけです。 ところが、現実にはそう簡単ではありません。 実際、他社でも全く同じ場所でほぼ同じミスが起きています。計算チェックを行えば見つかっていたはずだというのは、後から考えればそうかもしれませんが、実際にはこの箇所の計算チェックがなぜかスルーされやすく、ミスが見つからないようです。その理由はともかく、このようなミスが多いということは知っておくべきでしょう。   2 類似事例の確認 他の事例についても確認しておきましょう。 この連載では、損益計算書(又は連結損益計算書)の法人税等調整額が間違っていた事例として、次の2つを紹介済みです。 両事例とも、計算チェックを行っていれば発見可能なミスということで、今回の【事例47-1】と全く同じパターンですね。 【事例3-1】と【事例11-1】は、実例をもとに、一般化した事例として筆者が作成したものでした。会計ソフト等により経理作業の自動化が進んでいる時代に、本当にこのような間違いが起きているのか懐疑的だった人もいたかもしれませんが、2024年に発生した実例である【事例47-1】を見れば、ご納得いただけると思います。 以上のように、同じ箇所で同じミスが繰り返されていることから、この箇所でのミスの防止・発見は簡単ではないとわかりました。この箇所でミスが起きやすいことを頭に入れておき、当該箇所については、他の箇所よりも注意深く確認することが必要ではないでしょうか。すなわち、ミスが繰り返される箇所を知っておくというのもまた、うっかりミスの防止・発見法の1つだというわけです。   3 ミスが繰り返される箇所は他にもある ミスが繰り返される箇所は他にもあります。この連載で解説したものは次のとおりです。 〈うっかりミスが繰り返される箇所〉 これらの箇所が盲点になりやすい理由については、各回の解説で述べましたので、必要であれば復習してみてください。   〈今回のまとめ〉 損益計算書の法人税等調整額は、うっかりミスが繰り返し起きている箇所です。作成時や確認時に計算チェックをして、間違いがないことを確かめてください。 (了)

#No. 611(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/03/19
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