公開日: 2024/09/12 (掲載号:No.585)
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従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第1回】「解雇をめぐる現状及び解雇に対する制約」

筆者: 柳田 忍

従業員解雇をめぐる企業対応

【第1回】

「解雇をめぐる現状及び解雇に対する制約」

 

弁護士 柳田 忍

 

1 はじめに

解雇とは、使用者による一方的な労働契約の解約である。民法上は、期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)については、使用者・労働者はいつでも解約の申込みをなすことができること(解雇の自由)、この場合、解約の申込み後2週間の経過によって雇用契約が終了することが定められている(民法627条1項)。

しかし、民法の特別法である労働契約法は、使用者による解約(解雇)について、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定め、解雇の自由に制限を加えている(解雇権濫用法理。労契法16条)。

裁判所において、この「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当である」ことが容易に認められないことは広く知られており、仮に従業員の労務提供能力等に問題があったとしても解雇が現実的な選択肢にはならない場合が少なくないことから、企業は採用段階で慎重な態度を採らざるを得なくなっている。

しかし、昨今の人手不足等を受けて、企業が、従前であればおそらく採用しなかったであろう、採用段階で少し引っかかりを覚えた求職者の採用に踏み切ったところ、(案の定)当該従業員について労務提供能力や勤務態度等に関する深刻な問題が発覚し、解雇を真剣に検討せざるを得ない、という場面が増えているように思う。

そこで、本連載においては、従業員を解雇する場合に注意すべき点やよく相談を受けるポイントについて説明する。なお、本連載の前半では解雇に係る知識全般を確認したうえで、後半からは具体事例をもとにQ&A形式で解説を行う。

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従業員解雇をめぐる企業対応

【第1回】

「解雇をめぐる現状及び解雇に対する制約」

 

弁護士 柳田 忍

 

1 はじめに

解雇とは、使用者による一方的な労働契約の解約である。民法上は、期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)については、使用者・労働者はいつでも解約の申込みをなすことができること(解雇の自由)、この場合、解約の申込み後2週間の経過によって雇用契約が終了することが定められている(民法627条1項)。

しかし、民法の特別法である労働契約法は、使用者による解約(解雇)について、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定め、解雇の自由に制限を加えている(解雇権濫用法理。労契法16条)。

裁判所において、この「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当である」ことが容易に認められないことは広く知られており、仮に従業員の労務提供能力等に問題があったとしても解雇が現実的な選択肢にはならない場合が少なくないことから、企業は採用段階で慎重な態度を採らざるを得なくなっている。

しかし、昨今の人手不足等を受けて、企業が、従前であればおそらく採用しなかったであろう、採用段階で少し引っかかりを覚えた求職者の採用に踏み切ったところ、(案の定)当該従業員について労務提供能力や勤務態度等に関する深刻な問題が発覚し、解雇を真剣に検討せざるを得ない、という場面が増えているように思う。

そこで、本連載においては、従業員を解雇する場合に注意すべき点やよく相談を受けるポイントについて説明する。なお、本連載の前半では解雇に係る知識全般を確認したうえで、後半からは具体事例をもとにQ&A形式で解説を行う。

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連載目次

筆者紹介

柳田 忍

(やなぎた・しのぶ)

弁護士
牛島総合法律事務所 スペシャル・カウンセル
https://www.ushijima-law.gr.jp/attorneys/shinobu-yanagita

北海道大学法学部卒業、2005年牛島総合法律事務所入所。
労働審判、労働訴訟等の紛争案件のほか、人員削減・退職勧奨、M&A・統合・組織再編に伴う人事労務、懲戒処分、ハラスメント、競争企業間の移籍問題、人事労務関連の情報管理やHRテクノロジー等を中心に、国内外の企業からの相談案件等を多く手掛けている。また、労働者派遣・職業紹介の領域についても明るい。特にハラスメント問題に関しては、女性ならではの視点をもった対応が好評を博しており、各種団体におけるハラスメントに関する講演経験も豊富である。

The Legal 500 Asia Pacific 2019のLabour and Employment部門で高い評価を得ており、また、The Best Lawyers in Japan(2020 Edition及び2021 Edition)のLabor and Employment Law部門において選出されている。

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