公開日: 2026/04/02 (掲載号:No.663)
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《税務必敗法》 【第11回】「3割特例の適用可否の判断を誤った」

筆者: 森 智幸

《税務必敗法》

【第11回】

「3割特例の適用可否の判断を誤った」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

AはWeb制作会社に勤務していたが、令和6年4月に独立し個人事業者として開業した。Aは開業後、X会計事務所と税務顧問契約を締結し、初回面談において「開業後2年間は免税事業者とし、令和8年からインボイス登録を行い課税事業者となる予定である」旨を担当税理士甲に説明し、あわせて簡易課税制度選択届出書を提出した。

【開業後の課税売上高】

令和6年分

前職からのWeb制作サービスに関する委託業務に加え、大型のスポット業務があったため、課税売上は1,100万円となった。なお、特定期間の課税売上高及び給与等の支払額はいずれも1,000万円以下であった。

令和7年分

大型スポット業務がなく、課税売上は800万円であった。

令和8年分

基準期間(令和6年分)の課税売上高が1,000万円超であったことからAは課税事業者となり、予定通りインボイス登録を行ったものの、2割特例の適用は受けることができなかった。なお、特定期間の課税売上高及び給与等の支払額はいずれも1,000万円以下であった。

令和9年分

令和9年に入り個人事業者を対象にして3割特例が開始されたが、甲はAに対して次のように説明した。

「2割特例や3割特例は、免税事業者がインボイス登録をして初めて課税事業者になった場合に適用される経過措置である。貴殿は令和8年において、インボイス登録前からすでに課税事業者であった。そのため、2割特例に続き、3割特例の適用も受けることができない。」
甲はこの判断に基づき、簡易課税制度を適用して確定申告を行った。なお、みなし仕入率は約50%であった。

ところが、確定申告期限後、Aから「別の税理士に確認したところ、インボイス登録時にすでに課税事業者であっても、令和7年分の課税売上高と令和8年分の特定期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、令和9年分は3割特例の適用は可能との説明を受けた。再確認してほしい。」との申し出があった。

X会計事務所内で調べたところ、Aの主張通り、令和9年分については3割特例の適用が可能であり、納付額が過大であることが判明した。

そこで、所轄税務署に対して更正の請求を行ったが「この場合、更正の請求は認められない」と却下された。

その結果、X会計事務所はAから過大納付相当額について損害賠償請求を受けることになった。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「3割特例の適用可否の判断を誤った」である。

令和8年税制改正では、個人事業者についてはいわゆる2割特例の終了後も、令和9年及び令和10年分について「3割特例」が経過措置として適用されることになった。

3割特例の経過措置期間中に想定されるミスとしては、2割特例の時と同様、3割特例の適用が可能であったにもかかわらず、その適用を失念するケースが考えられる。2割特例の時と同様の論点ではあるものの、もう一度確認しておきたいところである。

また、3割特例よりも簡易課税の方が有利になるケースも増える可能性があるので、この点も注意が必要である。

なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。

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《税務必敗法》

【第11回】

「3割特例の適用可否の判断を誤った」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

AはWeb制作会社に勤務していたが、令和6年4月に独立し個人事業者として開業した。Aは開業後、X会計事務所と税務顧問契約を締結し、初回面談において「開業後2年間は免税事業者とし、令和8年からインボイス登録を行い課税事業者となる予定である」旨を担当税理士甲に説明し、あわせて簡易課税制度選択届出書を提出した。

【開業後の課税売上高】

令和6年分

前職からのWeb制作サービスに関する委託業務に加え、大型のスポット業務があったため、課税売上は1,100万円となった。なお、特定期間の課税売上高及び給与等の支払額はいずれも1,000万円以下であった。

令和7年分

大型スポット業務がなく、課税売上は800万円であった。

令和8年分

基準期間(令和6年分)の課税売上高が1,000万円超であったことからAは課税事業者となり、予定通りインボイス登録を行ったものの、2割特例の適用は受けることができなかった。なお、特定期間の課税売上高及び給与等の支払額はいずれも1,000万円以下であった。

令和9年分

令和9年に入り個人事業者を対象にして3割特例が開始されたが、甲はAに対して次のように説明した。

「2割特例や3割特例は、免税事業者がインボイス登録をして初めて課税事業者になった場合に適用される経過措置である。貴殿は令和8年において、インボイス登録前からすでに課税事業者であった。そのため、2割特例に続き、3割特例の適用も受けることができない。」

甲はこの判断に基づき、簡易課税制度を適用して確定申告を行った。なお、みなし仕入率は約50%であった。

ところが、確定申告期限後、Aから「別の税理士に確認したところ、インボイス登録時にすでに課税事業者であっても、令和7年分の課税売上高と令和8年分の特定期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、令和9年分は3割特例の適用は可能との説明を受けた。再確認してほしい。」との申し出があった。

X会計事務所内で調べたところ、Aの主張通り、令和9年分については3割特例の適用が可能であり、納付額が過大であることが判明した。

そこで、所轄税務署に対して更正の請求を行ったが「この場合、更正の請求は認められない」と却下された。

その結果、X会計事務所はAから過大納付相当額について損害賠償請求を受けることになった。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「3割特例の適用可否の判断を誤った」である。

令和8年税制改正では、個人事業者についてはいわゆる2割特例の終了後も、令和9年及び令和10年分について「3割特例」が経過措置として適用されることになった。

3割特例の経過措置期間中に想定されるミスとしては、2割特例の時と同様、3割特例の適用が可能であったにもかかわらず、その適用を失念するケースが考えられる。2割特例の時と同様の論点ではあるものの、もう一度確認しておきたいところである。

また、3割特例よりも簡易課税の方が有利になるケースも増える可能性があるので、この点も注意が必要である。

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連載目次

筆者紹介

森 智幸

(もり・ともゆき)

公認会計士・税理士

東京都出身。慶應義塾大学商学部卒。神戸の会計事務所を経て、大阪・京都の監査法人に勤務し、京都の監査法人では代表社員を務める。2019年9月に独立し、森 智幸公認会計士・税理士事務所を設立。独立後もPwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)にて、内部監査などガバナンス領域のアドバイザリー業務を担当(~2025年6月)。現在は、株式会社および公益法人の会計・税務、ガバナンス強化支援、内部監査、中小企業の経営支援に従事。近畿税理士会業務対策部部員、日本公認会計士協会租税調査会・租税政策検討専門委員会専門委員、近畿実務補習所専門委員。

【主な著作】
・『税務の異常点の表れ方と見つけ方』(中央経済社2024年)
・『独立する公認会計士のための税理士実務100の心得』(中央経済社2023年)
・『現場で使える「会計上の見積り」の実務』(共著、清文社2022年)
・『「社会福祉充実計画」の作成ガイド』(共著、中央経済社2017年)

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