公開日: 2014/05/15 (掲載号:No.69)
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中小法人の〈交際費課税〉平成26年度改正のポイント 【第1回】「改正のあらまし」

筆者: 新名 貴則

中小法人の〈交際費課税〉

平成26年度改正のポイント

【第1回】

「改正のあらまし」

 

公認会計士・税理士 新名 貴則

 

はじめに

平成25年度税制改正に引き続き、平成26年度税制改正においても、消費税率の引上げに伴う景気後退を防ぐ施策として、交際費課税の見直しが行われた。

本連載では、この改正による中小法人への影響について解説するが、まず第1回目は、平成26年度税制改正における交際費課税の改正のあらましについて解説する。

 

1 平成26年度税制改正前の交際費課税

平成26年度税制改正前の交際費課税の概要は、次のとおりである。

  (*1) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く)
  (*2) 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度

【平成26年度改正前の中小法人の特例のイメージ】

このように平成26年度税制改正前の交際費課税においては、資本金1億円超の大法人については、税務上の交際費等の損金算入は一切認められていなかった。

これに対して一定の中小法人については、特例として年間800万円までは全額損金算入が認められていたが、平成26年3月31日までに開始する事業年度までとされていた。

 

2 平成26年度税制改正における改正点

(1) 中小法人の特例の延長

平成26年度税制改正において、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)の期限が2年間延長された。つまり、平成28年3月31日までに開始する事業年度までは、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)が適用されることになった。

決算月が何月かによって異なるが、具体的には次の事業年度まで、税務上の交際費等を年間800万円まで全額損金に算入できることになる。

決算月 延長後の適用期限 3月決算 平成28年 3月期まで 9月決算 平成28年 9月期まで 12月決算 平成28年12月期まで

(2)  「接待飲食費の50%損金算入」制度の導入

平成26年度税制改正によって、接待の飲食のために支出した交際費等については、その50%を損金算入できることとされた。また、その損金算入額に上限は設定されていない。

この「接待飲食費の50%損金算入」の制度は、法人の規模等に関係なくすべての法人に認められた。したがって、平成26年度税制改正前は交際費等を一切損金算入できなかった大法人でも、接待飲食費に限っては50%を損金算入できることになった。

中小法人では、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、「中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)」と「接待飲食費の50%損金算入」を選択適用できることになった。

ただし、あくまで税務上の交際費等の中でも「接待飲食のために」支出したものに限定されており、すべての交際費等の50%が損金算入されるわけではない。

また、接待飲食のための支出であっても、いわゆる社内接待費については、50%損金算入の対象とはならず、全額が損金不算入となる。

【接待飲食費の50%損金算入のイメージ】

 

3 接待飲食費とは

50%損金算入の対象となるのは、あくまで「接待飲食費」に限定されている。

接待飲食費とは、交際費等の中でも「飲食その他これに類する行為のために支出する費用」を意味する。具体的には、次のような費用を指す。

●法人の従業員等が得意先等を接待して飲食する場合の飲食代

●飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料等

●飲食等のための会場代

●得意先等の業務や行事に際して、弁当の差入れを行うための弁当代(差入れ後相応の時間内に飲食されるもの)

●飲食店等での飲食後に、その店等で提供されている飲食物をお持ち帰りする場合のお土産代

ここで注意が必要なのは、法人内部の役員や従業員を接待した場合の飲食代(いわゆる社内接待費)は「接待飲食費」には含まれないので、50%損金算入の対象にはならないということである。

ただし、親会社の役員や従業員などを接待した場合は、グループ法人内部の者であってもあくまで別法人に属する者であるため、その飲食代は「接待飲食費」に含まれ、50%損金算入の対象となる。

また、次のような費用もここでいう「接待飲食費」には含まれないので、注意が必要である。

費 用 「接待飲食費」に含まれない理由 ゴルフ、観劇、旅行等といった行事の接待と併せて行った飲食の費用 主たる目的であるゴルフ等の行事と区分できない、一体のものであると考えられるため 接待を行う飲食店等に得意先等を送迎するための送迎費用(タクシー代等) 送迎という行為のために要する費用であって、飲食のために飲食店に直接支払う費用ではないため 飲食物の詰め合わせの贈答費用 単なる飲食物の詰め合わせの贈答は、中元や歳暮と変わらない、贈答を目的とした費用であるため

*  *  *

次回はこの改正が中小法人の交際費に係る実務にどのような影響を与えるかを検討したい。

(了)

「中小法人の〈交際費課税〉平成26年度改正のポイント」は、隔週で掲載されます。

中小法人の〈交際費課税〉

平成26年度改正のポイント

【第1回】

「改正のあらまし」

 

公認会計士・税理士 新名 貴則

 

はじめに

平成25年度税制改正に引き続き、平成26年度税制改正においても、消費税率の引上げに伴う景気後退を防ぐ施策として、交際費課税の見直しが行われた。

本連載では、この改正による中小法人への影響について解説するが、まず第1回目は、平成26年度税制改正における交際費課税の改正のあらましについて解説する。

 

1 平成26年度税制改正前の交際費課税

平成26年度税制改正前の交際費課税の概要は、次のとおりである。

  (*1) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く)
  (*2) 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度

【平成26年度改正前の中小法人の特例のイメージ】

このように平成26年度税制改正前の交際費課税においては、資本金1億円超の大法人については、税務上の交際費等の損金算入は一切認められていなかった。

これに対して一定の中小法人については、特例として年間800万円までは全額損金算入が認められていたが、平成26年3月31日までに開始する事業年度までとされていた。

 

2 平成26年度税制改正における改正点

(1) 中小法人の特例の延長

平成26年度税制改正において、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)の期限が2年間延長された。つまり、平成28年3月31日までに開始する事業年度までは、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)が適用されることになった。

決算月が何月かによって異なるが、具体的には次の事業年度まで、税務上の交際費等を年間800万円まで全額損金に算入できることになる。

決算月 延長後の適用期限 3月決算 平成28年 3月期まで 9月決算 平成28年 9月期まで 12月決算 平成28年12月期まで

(2)  「接待飲食費の50%損金算入」制度の導入

平成26年度税制改正によって、接待の飲食のために支出した交際費等については、その50%を損金算入できることとされた。また、その損金算入額に上限は設定されていない。

この「接待飲食費の50%損金算入」の制度は、法人の規模等に関係なくすべての法人に認められた。したがって、平成26年度税制改正前は交際費等を一切損金算入できなかった大法人でも、接待飲食費に限っては50%を損金算入できることになった。

中小法人では、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、「中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)」と「接待飲食費の50%損金算入」を選択適用できることになった。

ただし、あくまで税務上の交際費等の中でも「接待飲食のために」支出したものに限定されており、すべての交際費等の50%が損金算入されるわけではない。

また、接待飲食のための支出であっても、いわゆる社内接待費については、50%損金算入の対象とはならず、全額が損金不算入となる。

【接待飲食費の50%損金算入のイメージ】

 

3 接待飲食費とは

50%損金算入の対象となるのは、あくまで「接待飲食費」に限定されている。

接待飲食費とは、交際費等の中でも「飲食その他これに類する行為のために支出する費用」を意味する。具体的には、次のような費用を指す。

●法人の従業員等が得意先等を接待して飲食する場合の飲食代

●飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料等

●飲食等のための会場代

●得意先等の業務や行事に際して、弁当の差入れを行うための弁当代(差入れ後相応の時間内に飲食されるもの)

●飲食店等での飲食後に、その店等で提供されている飲食物をお持ち帰りする場合のお土産代

ここで注意が必要なのは、法人内部の役員や従業員を接待した場合の飲食代(いわゆる社内接待費)は「接待飲食費」には含まれないので、50%損金算入の対象にはならないということである。

ただし、親会社の役員や従業員などを接待した場合は、グループ法人内部の者であってもあくまで別法人に属する者であるため、その飲食代は「接待飲食費」に含まれ、50%損金算入の対象となる。

また、次のような費用もここでいう「接待飲食費」には含まれないので、注意が必要である。

費 用 「接待飲食費」に含まれない理由 ゴルフ、観劇、旅行等といった行事の接待と併せて行った飲食の費用 主たる目的であるゴルフ等の行事と区分できない、一体のものであると考えられるため 接待を行う飲食店等に得意先等を送迎するための送迎費用(タクシー代等) 送迎という行為のために要する費用であって、飲食のために飲食店に直接支払う費用ではないため 飲食物の詰め合わせの贈答費用 単なる飲食物の詰め合わせの贈答は、中元や歳暮と変わらない、贈答を目的とした費用であるため

*  *  *

次回はこの改正が中小法人の交際費に係る実務にどのような影響を与えるかを検討したい。

(了)

「中小法人の〈交際費課税〉平成26年度改正のポイント」は、隔週で掲載されます。

連載目次

「中小法人の〈交際費課税〉平成26年度改正のポイント」(全3回)

筆者紹介

新名 貴則

(しんみょう・たかのり)

公認会計士・税理士

京都大学経済学部卒。愛媛県松山市出身。
朝日監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)にて、主に会計監査と内部統制構築に従事。
日本マネジメント税理士法人にて、個人商店から上場企業まで幅広く顧問先を担当。またM&Aや監査法人対応などのアドバイスも行う。
平成24年10月1日より新名公認会計士・税理士事務所代表。

【著書】
・『新版 退職金をめぐる税務』(清文社)
・『Q&Aでわかる 監査法人対応のコツ』
・『現場の疑問に答える 税効果会計の基本Q&A』
・『148の事例から見た是否認事項の判断ポイント』(共著)
・『消費税申告の実務』(共著)
(以上、税務経理協会)

関連書籍

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