〔2015年からできる!〕
企業が行うマイナンバー制度への実務対応
【第3回】
「対応の進め方、その全体像を把握する」
仰星監査法人
公認会計士 岡田 健司
前回は企業対応を考えるうえで理解しておきたい“3つの考え方”について整理した。
この“3つの考え方”を踏まえたうえで、第3回となる本稿では、マイナンバー制度への実務対応を企業がどのように進めていくべきか、全体像を把握できるような形で解説していく。なお、その工程は大きく2つの段階に分けられる。
1 個人番号の記載が求められる法定調書等の特定~進め方の第1段階~
(1) “3つの考え方”から導かれる『対応の進め方』
前回紹介した重要な3つの考え方とは、
① 個人番号の“目的外入手”の排除
② 個人番号の“目的外提供・目的外出力”の排除
③ 個人情報保護法以上に厳しい個人番号の“情報管理”水準
であった。
〔補足〕
▷②の「提供」とは、税務署や市役所等の個人番号利用事務実施者からの(明示的か否かにかかわらない)情報提供の求めに対して、個人番号とその他の情報を提供することである。代表的には、源泉徴収票、給与支払報告書、報酬等の支払調書などの法定調書を提出することであり、法定調書等の「提出」が「提供」と同義で使われることが多い。
▷②の「出力」とは、一般的に個人番号は人事給与システムにおいて管理されることが多いことを前提に、当該システムから個人番号を印字して源泉徴収票、給与支払報告書、被保険者資格取得届等を出力することを想定しているが、読者においては、情報システムからの帳票の出力というイメージとともに、情報システムにおける情報の「表示」という点も念頭において「出力」という用語を捉えられると全体がわかりやすいと思われる。
▷③の「情報管理」については、基本的に、本連載【第1回】で紹介した「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に則ってその対策を検討する必要がある。
要するに、番号法で認められた範囲内でしか個人番号を入手してはならず、また、個人番号を提供・出力してはならない。さらに、個人番号を含む個人情報の情報漏えいには厳しい処罰が課される可能性もあり、これまで以上に厳格な情報管理が求められるということである。
そこで、これらの考え方から、実務対応として、まず
どのような法定調書や申請書・届出書等で個人番号を記載しなければならないか
を特定する作業が必要となる。
この特定作業を通じて、個人番号の入手範囲、個人番号の提供(提出)範囲、そのために個人番号の出力が許容される範囲が明らかとなる。そこで、これらの範囲に関係する企業内の対象業務で、上記の3つの考え方に留意して必要な業務の見直し等を行っていく。
以上が進め方の第1段階である。
(2) 事例
企業が個人の税理士と税務顧問契約を締結し、当該企業が作成した税務申告書のチェックの対価として一定金額以上の顧問報酬を支払っている場合、企業は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(所得税法第225条第1項第3号)を税務署に提出しなければならない。
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