公開日: 2015/04/09 (掲載号:No.114)
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非正規雇用の正社員化における留意点と労務手続 【第1回】「非正規社員の雇用状況」

筆者: 池上 裕美

非正規雇用の正社員化における留意点と労務手続

【第1回】

「非正規社員の雇用状況」

 

特定社会保険労務士 池上 裕美

 

2013年4月労働契約法の改正により、契約期間の定めのある労働契約が反復更新されて通算で5年を超えたときに、労働者からの申し出があれば期間の定めのない労働契約に転換できることとなった。また、2015年4月1日施行のパートタイム労働法では、正社員と差別的取扱いが禁止される対象範囲が拡大、パートタイム労働者雇い入れ時の相談窓口を明示するなどの改正が行われている。

このように非正規雇用の労働者に関する法整備が進む中、非正規社員の正社員化へと踏み切る企業が増え始めている。そこで、非正規社員の正社員化における労務手続に関して、第1回目は非正規社員の現状についてみてみることとする。

 

1 非正規社員とは

非正規社員とは、法律で明確に定義されているものではなく、一般的には正規の社員や正規の職員以外の者で、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」の期間を定めた雇用契約により働く者を指すことが多い。

 

2 正規社員・非正規社員の雇用状況

① 正規・非正規の労働者数推移

総務省の「労働力調査」では、正規の職員・従業員は3,278万人と前年に比べ16万人の減少となっている。その一方、非正規職員・従業員は1,962万人と前年に比べ56万人の増加となっている。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

② 非正規社員の割合の推移

非正規社員の全体に占める割合は2004年から現在まで緩やかに増加し、2014年には過去最高の37.4%に達している。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

③ 雇用形態別雇用者数の推移

雇用形態別にみると、専門業務の派遣期間無制限、製造業務への派遣解禁等の派遣法の改正に伴い、派遣労働者数は、2004年の85万人から2007年には133万人と増加を示している。また契約社員・嘱託は、団塊の世代が60歳台入りに合わせて2006年の284万人から2013年には388万人と増加している。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

④ 不本意非正規の状況

不本意で非正規社員として働いている者の割合は、非正規雇用労働者全体の19.2%となっている。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

改正労働契約法で、有期労働契約を反復更新して通算5年を超えたとき、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換できるようになった。上記グラフにあるように非正規の労働者数の推移は増加しているが、その非正規労働者を雇用している企業は、改正労働契約法を理解しているのだろうか。

労働政策研究・研修機構の調査では、「改正内容まで知っている」が63.2%、「改正されたことは知っているが内容はよく分からない」が30.4%である。また、無期転換ルールにどのように対応するのかとの問いに「対応方針は未定・分からない」とする企業がもっとも多く、それぞれ38.6%、35.3%であった。

無期転換の申し込みが発生するのが、多くは2018年4月以降と先の話である。しかし、もし有期労働契約を通算で5年を超えないように運用するのであれば、契約更新が期待されるような発言に注意する等して、契約が更新されることを期待させる「期待権」が発生しないように現時点から対策が必要である。また、無期転換契約とするのであれば、無期転換時の業務、責任、労働条件等の労働契約の内容を、企業として検討しておく必要があるであろう。

*   *   *

次回は改正法の内容と対応状況を確認していく。

(了)

「非正規雇用の正社員化における留意点と労務手続」は、隔週で掲載されます。

非正規雇用の正社員化における留意点と労務手続

【第1回】

「非正規社員の雇用状況」

 

特定社会保険労務士 池上 裕美

 

2013年4月労働契約法の改正により、契約期間の定めのある労働契約が反復更新されて通算で5年を超えたときに、労働者からの申し出があれば期間の定めのない労働契約に転換できることとなった。また、2015年4月1日施行のパートタイム労働法では、正社員と差別的取扱いが禁止される対象範囲が拡大、パートタイム労働者雇い入れ時の相談窓口を明示するなどの改正が行われている。

このように非正規雇用の労働者に関する法整備が進む中、非正規社員の正社員化へと踏み切る企業が増え始めている。そこで、非正規社員の正社員化における労務手続に関して、第1回目は非正規社員の現状についてみてみることとする。

 

1 非正規社員とは

非正規社員とは、法律で明確に定義されているものではなく、一般的には正規の社員や正規の職員以外の者で、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」の期間を定めた雇用契約により働く者を指すことが多い。

 

2 正規社員・非正規社員の雇用状況

① 正規・非正規の労働者数推移

総務省の「労働力調査」では、正規の職員・従業員は3,278万人と前年に比べ16万人の減少となっている。その一方、非正規職員・従業員は1,962万人と前年に比べ56万人の増加となっている。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

② 非正規社員の割合の推移

非正規社員の全体に占める割合は2004年から現在まで緩やかに増加し、2014年には過去最高の37.4%に達している。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

③ 雇用形態別雇用者数の推移

雇用形態別にみると、専門業務の派遣期間無制限、製造業務への派遣解禁等の派遣法の改正に伴い、派遣労働者数は、2004年の85万人から2007年には133万人と増加を示している。また契約社員・嘱託は、団塊の世代が60歳台入りに合わせて2006年の284万人から2013年には388万人と増加している。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

④ 不本意非正規の状況

不本意で非正規社員として働いている者の割合は、非正規雇用労働者全体の19.2%となっている。

(出所)総務省「労働力調査(詳細集計)

改正労働契約法で、有期労働契約を反復更新して通算5年を超えたとき、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換できるようになった。上記グラフにあるように非正規の労働者数の推移は増加しているが、その非正規労働者を雇用している企業は、改正労働契約法を理解しているのだろうか。

労働政策研究・研修機構の調査では、「改正内容まで知っている」が63.2%、「改正されたことは知っているが内容はよく分からない」が30.4%である。また、無期転換ルールにどのように対応するのかとの問いに「対応方針は未定・分からない」とする企業がもっとも多く、それぞれ38.6%、35.3%であった。

無期転換の申し込みが発生するのが、多くは2018年4月以降と先の話である。しかし、もし有期労働契約を通算で5年を超えないように運用するのであれば、契約更新が期待されるような発言に注意する等して、契約が更新されることを期待させる「期待権」が発生しないように現時点から対策が必要である。また、無期転換契約とするのであれば、無期転換時の業務、責任、労働条件等の労働契約の内容を、企業として検討しておく必要があるであろう。

*   *   *

次回は改正法の内容と対応状況を確認していく。

(了)

「非正規雇用の正社員化における留意点と労務手続」は、隔週で掲載されます。

連載目次

筆者紹介

池上 裕美

(いけがみ・ひろみ)

特定社会保険労務士
社会保険労務士法人ミライガ パートナー社会保険労務士

2006年3月 株式会社マイツ・コンサルティングに入社
同年9月   社会保険労務士法人マイツ 代表社員就任
2014年1月 社会保険労務士法人ミライガ パートナー就任

就業規則・諸規程、海外赴任規程の整備運用支援、人事労務コンサルティング、労使トラブルの解決、労働基準監督署の調査対応、セミナー講師などを中心に活動中。

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