《税務必敗法》 【第7回】「振替伝票を削除した」
X会計事務所は、顧問先であるA社の記帳代行を行っている。ある日、所轄税務署の税務調査が入った。所轄税務署は、会計帳簿について電子データでの提示を希望したため、担当税理士はA社の同意をとったうえで会計ソフトのバックアップデータを提出した。なお、A社の帳簿は「優良な電子帳簿」には該当していない。
後日、調査官から連絡があった。内容は「振替伝票の一部が削除されているが、その理由を教えてほしい」ということであった。
X会計事務所内で調査したところ、入力担当職員が、仕訳を訂正する際、誤った仕訳が入力された振替伝票を削除し、新しい振替伝票に正しい仕訳を入力していたことが発覚した。
租税争訟レポート 【第82回】「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」
原告は、昭和27年10月27日、電気工事、照明工事、機械設備工事、プラント工事、土木工事、建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社である。
原告は、土木工事業を営む訴外株式会社A(以下「A社」という)に対する土木工事の外注費について、平成24年9月期から平成29年9月期までの事業年度(本件各事業年度)の法人税、復興特別法人税及び地方法人税の計算上、これを損金の額に算入するとともに、平成24年9月課税期間から平成29年9月課税期間(本件各課税期間)までの消費税及び地方消費税の計算上、仕入税額控除を適用して申告した。
これに対し、仙台北税務署長は、申告されたAに対する外注費の一部は、原告の従業員であった甲、乙、丙及び丁、並びにA社の代表取締役である戊らが行った工事代金の水増し請求によるものであり(以下、この水増し請求に係る甲らの行為を「本件不正行為」という)、当該外注費のうち水増し金額分(本件外注費水増し分)は、役務の提供を受けた対価であるとは認められないから、これを損金に算入することも、仕入税額控除を適用することもできず、法人税の計算上、本件不正行為により生じた損失は、本件各事業年度の損金に算入され、当該損失に対応する損害賠償請求権は、当該損失が生じた事業年度の益金に算入されることになるなどとして、下記の処分(本件各更正処分等)を行った。
本件は、原告が、本件各更正処分等を不服としてその全部の取消しを求める事案である。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第39回】「国税通則法115条」-税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その2)-
今回は、「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性と限界」の問題に関連して不服申立前置主義をいわば「連続性の強制」の問題として取り上げ、憲法上の適正手続保障(13条・31条参照)の税法における現れとして租税法律主義の内容を構成する手続的保障原則とりわけ司法的救済保障原則(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【27】参照)の見地から、納税者の「裁判を受ける権利」(憲32条)との関係で不服申立前置主義の問題性を検討することにする。その前に、まず、不服申立前置主義の趣旨・目的をみておこう。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第38回】「国税通則法114条」-税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その1)-
課税処分取消訴訟の訴訟物に関する問題に関連して更正と再更正との関係の問題を取り上げ「租税争訟法の特質」を検討しておくことにする。なお、課税処分取消訴訟における主張・立証責任に関する問題は、次々回、国税通則法116条との関連で取り上げ検討することにする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第37回】「国税通則法105条(104条、106条~113条の2)」-執行不停止原則とその例外-
国税通則法第8章(不服審査及び訴訟)第1節(不服審査)第1款は、不服審査に関する「雑則」を定めている。今回は、「雑則」で定められている諸規定(104条~113条の2)のうち、本連載における筆者の問題関心の中心にある国税通則法の「構造」(第1回とりわけ同3参照)と深く関連すると思われる「不服申立てと国税の徴収との関係」に関する同法105条の規定について、執行不停止原則とその例外を検討する。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第36回】「国税通則法99条(98条、101条~103条)」-国税不服審判所の独立性と法令解釈権-
この「解釈」の解釈問題は、国税不服審判所の法令解釈権に関わる問題であるが、従来ほとんど検討されてこなかったように思われる。そこで、今回は、この問題を中心に国税不服審判所の独立性について検討することにする。ただ、その検討に入る前に、まず、国税通則法99条についてその沿革及び趣旨等をみておくことにしよう。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第35回】「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-
今回は、国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討するが、その検討を始めるに当たって、国税不服審判所の創設をめぐる議論の過程でその要請がどのようにして形成されてきたのかをみておくことにしよう。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第34回】「国税通則法84条(81条~83条・85条・86条)」-再調査の請求の審理・決定手続-
今回は、再調査の請求について、審理・決定手続を中心に、検討を行うことにするが、その前に、不服申立ての種類を原則として審査請求に一元化した平成26年行政不服審査法改正の考え方(不服申立種類の原則一元化)に対して、国税通則法がその例外として再調査の請求を定めている理由をみておこう(行審5条1項本文参照)。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第33回】「国税通則法74条の2《補論》」-国税通則法上の「納税義務」と消費税法上の「納税義務」-
国税通則法74条の2は「当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権」という見出しの下、所得税、法人税又は地方法人税及び消費税に関する税務職員の調査に係る質問検査権を規定しているが、第28回の1では、「消費税は、『課税標準等又は税額等』の計算において[課税売上げと課税仕入れとの]差引計算を要素とする点で、所得税や法人税と共通の性格をもつといえよう。」と述べた上で、次のとおり述べた。
