相続税の実務問答 【第101回】「遺産を取得しない相続人が受け取った生命保険金の一部を他の相続人に支払った場合」
6月に父が亡くなりました。相続人は母、私と妹の3人です。父の遺産は、両親が暮らしていた自宅及びその敷地と銀行預金などです。これらの遺産の価額は、およそ1億2,000万円になります。また、父の死亡に伴い、生命保険金5,000万円が受取人となっていた私の銀行口座に振り込まれました。この生命保険金に係る保険料は父が支払っていましたので、この保険金は相続財産とみなされて、相続税が課税されると保険会社から言われました。
3人で協議した結果、母の今後の生活を考え、父の遺産の全てを母が相続することとし、また、私の口座に振り込まれた保険金5,000万円の中から1,000万円を妹に支払うこととしました。このような協議が調った場合の課税関係はどのようになりますか。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第42回】「父が駐車場用地のアスファルト舗装部分を長男に贈与して、駐車場賃料を長男に収受させたが、この所得は長男ではなく父に帰属するものであり、賃料収受権を父から贈与により取得したものとみなされた事例」
使用貸借とは、動産や不動産を無償で貸し付ける契約である。たとえば、建物の所有者と土地の所有者が別人で、使用貸借契約を締結した場合、建物所有者には借地借家法が適用されず、貸主は、原則的にはいつでも借主に対して返還を求めることができる。
相続税の実務問答 【第100回】「先順位の相続人が相続を放棄したことにより相続人となった者の相続税の申告期限」
私の伯父が6月に亡くなりました。伯父の配偶者は既に他界しており、伯父の相続人は伯父の長女甲1人だけでした。伯父の財産は、出身地であるA村の農地と山林、伯父の知人への貸付金などです。ところが、甲は9月に相続放棄の申述をし、B家庭裁判所はこれを受理しました。伯父の子である甲が相続を放棄し、伯父の両親は既に他界していることから、伯父の兄弟姉妹が相続人になります。
B家庭裁判所から甲に送られてきた相続放棄申述受理書に記載された申述の受理日は9月27日ですが、私がそのことを知ったのは、10月15日です。伯父の妹(私の叔母)乙には、10月20日に私から甲が相続を放棄したことを知らせました。
私も乙も相続を放棄するつもりはありません。伯父の遺産を確認したところ、どうやら相続税の申告及び納税が必要になりそうです。私と叔母が相続税の申告及び納税をすることとなった場合、その期限はいつになりますか。
相続税の実務問答 【第99回】「更正の請求における小規模宅地等の選択の同意」
父が、昨年1月に亡くなりました。相続人は兄と私の2名です。相続税の申告書の提出期限までに遺産分割協議が調わなかったので、相続税の申告期限である昨年11月には、法定相続分の割合に従って父の遺産を取得したものとして相続税の計算を行い、期限内申告をしました。
その後、兄と私の間で協議を重ね、今年の8月10日に私と兄がほぼ法定相続分の割合で父の遺産を取得する内容の遺産分割協議が成立しました。
父は、N市とK市にアパートを所有していましたが、遺産分割協議の結果、N市のアパートは私が、K市のアパートは兄がそれぞれ取得することとなりました。いずれのアパートの敷地についても貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用することが可能ですが、私が取得したN市のアパートの敷地300㎡のうち200㎡について小規模宅地等の特例を適用することについて兄も同意していますので、私の相続税について同特例を適用したいと考えています。小規模宅地等の特例を適用するにはどのようにすればよいでしょうか。
相続税の実務問答 【第98回】「各相続人が単独で相続税の申告書を提出する場合の小規模宅地等の選択の同意」
父が、3月に亡くなりました。相続人は姉と私の2名です。父は、東京都S区と出身地のM県T市にアパートを所有していましたが、S区のアパートは私が、T市のアパートは姉がそれぞれ遺贈により取得しました。
現在、相続税の申告の準備をしているところですが、私の名義となっている定期預金500万円について2人の認識が異なっています。すなわち、私はこの預金を10年前に父から贈与されたものと認識していますが、姉は、父が私名義で預金したに過ぎず私に贈与されたものではないとの認識であり、この預金は父の遺産として相続税の申告に含めるべきであると主張して譲りません。そこで、私は、相続税の申告書を姉とは別に作成し、提出したいと考えています。
なお、S区のアパートの敷地250平方メートル及びT市のアパートの敷地300平方メートルは、いずれとも20年以上前から父の貸付事業の用に供されてきたもので、いずれも父の貸付事業を承継し、しばらく保有を継続することとしていますので、限度面積200平方メートルまでの範囲内で小規模宅地等の特例を適用することができます。
この特例は、地価の高いS区のアパートの敷地について適用した方が相続税の総額が小さくなりますので、私が取得したS区のアパートの敷地に適用することについて、姉も異存はないと言っています。S区のアパートについて、小規模宅地等の特例を適用するにはどのようにすればよいでしょうか。
相続税の実務問答 【第97回】「贈与を受けた年の中途で贈与者が亡くなった場合の相続時精算課税の選択」
父(Y市に居住)が令和6年7月に亡くなりました。相続人である私(S市に居住)は、父の遺産を相続しますので、相続税の申告が必要となります。
ところで、私は、令和6年2月に父から150万円の現金の贈与を受けました。その贈与に係る贈与税については、相続時精算課税を選択するつもりでした。
相続時精算課税の選択届出書は、贈与税の申告書に添付して提出することとされていますが、被相続人の相続開始の年に被相続人から受けた贈与については、贈与税の申告は不要とのことなので、相続時精算課税の選択届出書を贈与税の申告書に添付して提出することはできません。
相続時精算課税を選択することができるのであれば、令和6年2月の父からの150万円の贈与について相続税の課税価格に加算される金額は、110万円を控除した残額の40万円になります。父からの贈与について相続時精算課税を選択するにはどのようにすればよいのでしょうか。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第44回】「外国会社株式等がある場合における法人版事業承継税制のみなし相続時における納税猶予税額の計算」
前回の設問において先代経営者甲は令和5年10月16日に後継者乙にA社株式40,000株(発行済株式総数の全て)の贈与を行い、法人版事業承継税制(特例措置)に係る贈与税の納税猶予の適用を受け、贈与税の申告を行いましたが、甲は令和6年6月1日に相続が発生しました。
この場合には、特例株式等の価額が相続財産に加算され、相続税の納税猶予の適用を受けることができますが、実際に納付すべき相続税及び猶予される相続税について教えてください。
日本の企業税制 【第128回】「実行計画2024年改訂版案等で示された“事業承継税制の見直し”」
6月7日、政府の新しい資本主義実現会議(第28回)では、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版案(以下「実行計画2024年改訂版案」という)が取りまとめられた。
相続税の実務問答 【第96回】「相続時精算課税選択届出書の提出(贈与税の申告義務がない場合)」
私は、毎年、6月の誕生日に父から100万円の現金の贈与を受けており、今年も6月に父から100万円の贈与を受けました。
父からの贈与金額はいわゆる暦年課税の基礎控除額である110万円以下なので、これまで贈与税の申告はしていません。相続時精算課税を選択すると、父から贈与により取得した財産の価額は、その贈与が何年前のものであったとしても、父に相続が開始した際に、相続税の課税価格に加算しなければならないとのことでしたので、これまで相続時精算課税の選択をしませんでした。
令和6年からは、相続時精算課税にも110万円の基礎控除を適用することができることとなり、しかも、贈与者に相続が開始した場合にも基礎控除額までの金額については、相続税の課税価格に加算する必要がなくなったと聞きました。
令和6年中に他に財産の贈与を受ける見込みはないので、将来の相続税をも考慮し、相続時精算課税を選択したいと思っています。相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を適用すれば、贈与税は発生しませんので、昨年までと同様に贈与税の申告をする必要はないということでしょうか。その場合、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。