〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第77回】「定期傭船契約付き船舶の評価方法が争われた事例(地判令2.10.1)(その1)」~相続税法22条~
原告Xは、Xの母から平成21年2月28日に株式会社Eの株式20株(以下「本件株式」という)の贈与(以下「本件贈与」という)を受けた際、本件株式の価額は0円であり、課税価格に係る贈与税額はないとして平成21年分の贈与税の申告をしなかった。
これに対し、所轄税務署長は、株式会社Eが100%保有する外国子会社H所有の船舶70隻(以下「本件各船舶」という。)について、鑑定評価による再評価を行った結果、本件株式の価額は43億円余りになるとして、贈与税額約21億6,000万円とする決定処分等を行った(以下「本件各処分」という)。
本件は、原告Xが本件各処分は本件株式の価額(本件各船舶の価額)の評価が誤ったものであるとして、被告に対し本件各処分の取り消しを求めた事案である。
国際課税レポート 【第17回】「実効関税率2.3%から17%へ」~トランプ関税と輸出企業の関税・移転価格戦略~
4月、米トランプ政権は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき全輸入に一律10%のベースライン関税を導入し、貿易赤字の大きい国に個別の上乗せを開始した。これとは別に、3月末には通商拡大法232条に基づき自動車・部品に25%の関税を発動した。
日本は7月23日に、相互関税と232条を合わせ関税率を原則15%に抑える枠組みに合意。8月7日から相互関税の適用が始まり、細目は後続の大統領令で調整中となっている。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第55回】「国外財産調書に係る過少申告加算税の加算措置」
国外財産調書及び債権債務調書について過少申告加算税の加重措置が適用される「重要なものの記載が不十分である」とはどのような場合をいうのでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第76回】「外国証券会社への売委託による株式譲渡損失に関する繰越控除の適用可否(地判平27.7.3、高判平28.3.17)(その2)」~租税特別措置法37条の12の2、日本国憲法13条・14条・84条・98条2項、 日米租税条約1条2項(a)~
憲法14条(平等原則)の違憲を対象とする争点①が最も重要な論点であると考えるが、その際の納税者の主張の背景には、争点④での納税者の繰越控除制度に関する根本的な考えがあると考える。そのため、この報告においては、争点④・争点①・争点③の順で検討を行いたい。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第75回】「外国証券会社への売委託による株式譲渡損失に関する繰越控除の適用可否(地判平27.7.3、高判平28.3.17)(その1)」~租税特別措置法37条の12の2、日本国憲法13条・14条・84条・98条2項、 日米租税条約1条2項(a)~
本件は、確定申告において外国証券会社への売委託により生じた株式譲渡損失の繰越処理を行った納税者に対して、課税庁が当該処理を適用するための要件を満たしていないとして更正処分を行った事案である。
日本の企業税制 【第141回】「日本企業の海外展開動向を踏まえた国際課税制度のあり方」
経済産業省は6月30日、「日本企業の海外展開動向を踏まえた国際課税制度のあり方に関する研究会」の最終報告書を公表した。同研究会は、経済産業政策局投資促進課が主管し、学者、実務専門家、企業関係者が参加して、昨年11月から5月までの合計4回に及ぶ会合開催を経て、報告書を取りまとめた。
国際課税レポート 【第16回】「G7緊急声明と国際課税制度の進路」~米国報復課税回避の先にあるもの~
本稿では、最終的に採決された法案から削除された国際課税関連の条項、すなわち「外国の不公平な税制への対抗規定」(以下「第899条」とも呼ぶ)に焦点を当てる。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第54回】「第三者割当増資による持分の希釈化と課税機会の喪失」
100%子会社の第三者割当増資による保有株式の希釈化に伴う資産価値の移転は、法人税法22条2項にいう無償による資産の譲渡等に該当するのでしょうか。
日本の企業税制 【第140回】「アメリカの税制改正の行方」
トランプ政権の関税政策が世界中で話題となっている一方、アメリカの連邦議会で審議が進むOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)の行方にも高い注目が集まっている。
既に5月22日には下院で法案が可決されており、現在、ステージは上院での審議に移っている。法案に含まれる「報復措置」による影響が欧州のみならず日本でも甚大になる恐れがあることから、上院での審議を経た上での上下両院での修正作業がどの程度の期間で完了するのか、内容的にどういった修正が施されるのかなどについて、税制関係者の間で話題になっている。