国際課税レポート 【第6回】「国際的な視点から見た金融所得課税の論点」
この指摘は、現在のグローバルな議論の潮流や実態と整合的なのだろうか。あるいは、金融所得を軽課税すべき理由として説得的なのだろうか。以下では、金融所得課税をめぐるいくつかの論点について、Q&A形式で整理を試みることとしたい。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第44回】「保険業に係る非関連者基準適用の可否」~日産自動車事件(最高裁令和6年7月18日判決)~
本連載【第32回】で取り上げた「日産自動車事件」の最高裁判決が出たとのことですが、その概要を教えてください。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第53回】「サンリオ事件-外国子会社合算税制における適用除外規定の適用-(地判令3.2.26、高判令3.11.24)(その2)」~法人税法69条15項、(旧)租税特別措置法66条の6第3項(現行2項)、7項~
裁判所は「その余については判断するまでもなく、原告の請求には理由がないと判断する。」と判示し、実体審理を行わなかった。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第52回】「サンリオ事件-外国子会社合算税制における適用除外規定の適用-(地判令3.2.26、高判令3.11.24)(その1)」~法人税法69条15項、(旧)租税特別措置法66条の6第3項(現行2項)、7項~
原告Xは、自社キャラクターを使用した商品の企画・販売、著作権の許諾・管理等を行っている内国法人かつ連結法人である。Xが、平成25年度3月期から平成28年度3月期までの各事業年度に係る法人税等の確定申告において、香港に設立されたXの子会社A社(発行済株式の95%をC社を通じて保有)、及びB社(発行済株式の100%をD社を通じて保有)の課税対象金額又は個別課税対象金額が、Xの各事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして、処分行政庁より法人税等に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けた。このことから、Xは被告Y(国)に対し、更正処分等のうちXが主張する金額を超える部分の取消しを求めた事案である。
国際課税レポート 【第5回】「利益A・DSTと国内税制改革」
国際課税においては、ここ1,2ヶ月の間、注目したいいくつかの展開があった。①OECDは、デジタル企業課税の核心である利益Aの多国間条約の署名について今後のスケジュールを示すことができないでいる。一方、②多国間条約の発効を条件に廃止されるデジタルサービス税について、インドは条約とは無関係に廃止することを決めた。また、③OECD加盟国でないブラジルのイニシアチブで、国際租税協力に関してこれからも長く参照されるであろう「閣僚宣言」が採択され、富裕層課税に焦点が当てられた。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第43回】「外国法人の代理人PE認定」
平成30年度の税制改正により、代理人PEの範囲から注文取得代理人の規定が削除されましたが、同改正後は、注文取得代理人は代理人PEの範囲から完全に除外されるのでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第51回】「寄与度利益分割法の適用が認められた事例(地判平24.4.27、高判平25.3.28、最判平27.1.16)(その2)」~租税特別措置法66条の4第1項、2項~
寄与度利益分割法は、基本三法を用いることができない場合に限りこれを用いることができるところ、基本三法のうち、原告が再販売価格基準法の適用が可能であると主張したことに対して、本判決は、エクアドル政府による最低買取価格及び最低輸出価格の設定は、バナナ生産者からの買取価格及び輸出価格を上昇させる方向に作用する要因であることは明らかであり、エクアドル産バナナの輸入価格が上昇すれば、その分だけ原価の合計額が上昇し、売上総利益の額が減少することになるのであって、その割合である「通常の利益率」にも影響が及ぶことは明らかであり、また、エクアドル政府規制の有無という差異により生じる通常の利益率の差を調整することができないと判示した。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第50回】「寄与度利益分割法の適用が認められた事例(地判平24.4.27、高判平25.3.28、最判平27.1.16)(その1)」~租税特別措置法66条の4第1項、2項~
本件は、被告(Y、課税庁)が、農産物の輸入・卸売販売を営む内国法人Xに対し、バハマ所在の国外関連者Sからエクアドル産バナナを仕入れた国外関連取引(以下、「本件取引」という)についていわゆる移転価格税制を適用し、平成11年度から平成16年度までの法人税等について更正処分等を行ったところ、原告Xが被告Yが行ったこれらの処分に違法があると主張して、その取消しを求めた事案である(※1)。
国際課税レポート 【第4回】「“第1の柱”の不在に備えよ」
OECD・G20「BEPS包摂的枠組み」は、約束していた2024年6月末までに第1の柱「Amount A」実施のための多国間条約の署名を開始するという期限を守ることができなかった。
第1の柱の核心である多国間条約には、①「Amount A」(新課税権)による市場国への課税権の配分と、②各国が独自に導入した「デジタルサービス税(以下「DST」)」の廃止という2つの重要な役割がある。国際協調の成功を象徴するはずの存在で、100年に一度とも謳われるOECDの国際課税改革の華であり、いわばフラッグシップだ。