賃金請求権の消滅時効変更に伴う
未払残業代等の企業対応
弁護士 鈴木 郁子
1 はじめに
2020年4月1日から、民法の改正にあわせ、賃金請求権の消滅時効が2年から5年(当分の間3年)に変更されたので、本稿では、法改正の内容を紹介し、企業が検討しなければならない実務的対応について論じたい。
2 法改正の経緯
2017年5月に成立した改正民法においては、短期消滅時効が廃止された。
旧民法においては、債権の消滅時効は原則として10年(旧民法167条1項)とされる一方、債権の種類によっては異なる時効が定められていた。そして、使用人の給料にかかる債権については、権利関係の早期確定の見地から、短期消滅時効として消滅時効が1年とされていたが、労働者保護の観点から、特別法である労働基準法の115条で、賃金・災害補償・その他の請求権の時効は2年、退職手当については5年とされていた。
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