公開日: 2013/03/07 (掲載号:No.9)
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改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点 【第1回】「法改正のポイントと雇用確保措置の整理」

筆者: 平澤 貞三

改正高年齢者雇用安定法の

実務上の留意点

【第1回】

「法改正のポイントと

雇用確保措置の整理」

 

社会保険労務士 平澤 貞三

 

法律の改正点

希望者全員の65歳までの安定した雇用確保を目的とした「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正高齢法」)が、平成25年4月1日付で施行となる。

法律の改正点は、以下のとおりである。

改正高齢法(平成25年4月1日施行)の改正ポイント

① 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止

② 継続再雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大

③ 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定

④ 義務違反の企業に対する公表規定の導入

 

高齢法9条の整理

今回の改正の目玉は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止である。

この仕組みの廃止は、平成18年度以降適用されている高年齢者雇用確保措置(高齢法9条)に関する改正であるが、今回の改正の趣旨を理解するために、まず改正前高齢法9条との新旧を比較し、内容を整理しておく必要がある。

改正前高齢法9条(平成25年3月31日まで適用)

(高年齢者雇用確保措置)

第9条  定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一  当該定年の引上げ

二  継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三  当該定年の定めの廃止

2  事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

上記2項の「事業主は、労働者の過半数~」と触れているところが、いわゆる「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」の部分である。

現在、多くの企業で採用されている雇用確保措置は、1項2号の継続雇用制度の導入であり、具体的には嘱託再雇用制度である。

高齢法の狙いの一つは、60歳以降の無年金、無収入者を出さないこと、つまり、65歳までの安定した雇用確保であるが、これには経済界の強い反発もあり、平成18年成立の現行法においては、再雇用基準を設けることで継続再雇用する人間を限定できる仕組みを容認した格好になっている。

つまり、現行法では嘱託再雇用できる人間を選別できる制度があり、これが高齢法9条2項「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」として反映されているのである。

今回の改正では、9条1項はそのままに、従来の2項(継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み)は削除、新たな2項及び3項が追加となった。

次回では、「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の具体的な内容について触れていくこととする。

(了)

改正高年齢者雇用安定法の

実務上の留意点

【第1回】

「法改正のポイントと

雇用確保措置の整理」

 

社会保険労務士 平澤 貞三

 

法律の改正点

希望者全員の65歳までの安定した雇用確保を目的とした「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正高齢法」)が、平成25年4月1日付で施行となる。

法律の改正点は、以下のとおりである。

改正高齢法(平成25年4月1日施行)の改正ポイント

① 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止

② 継続再雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大

③ 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定

④ 義務違反の企業に対する公表規定の導入

 

高齢法9条の整理

今回の改正の目玉は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止である。

この仕組みの廃止は、平成18年度以降適用されている高年齢者雇用確保措置(高齢法9条)に関する改正であるが、今回の改正の趣旨を理解するために、まず改正前高齢法9条との新旧を比較し、内容を整理しておく必要がある。

改正前高齢法9条(平成25年3月31日まで適用)

(高年齢者雇用確保措置)

第9条  定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一  当該定年の引上げ

二  継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三  当該定年の定めの廃止

2  事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

上記2項の「事業主は、労働者の過半数~」と触れているところが、いわゆる「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」の部分である。

現在、多くの企業で採用されている雇用確保措置は、1項2号の継続雇用制度の導入であり、具体的には嘱託再雇用制度である。

高齢法の狙いの一つは、60歳以降の無年金、無収入者を出さないこと、つまり、65歳までの安定した雇用確保であるが、これには経済界の強い反発もあり、平成18年成立の現行法においては、再雇用基準を設けることで継続再雇用する人間を限定できる仕組みを容認した格好になっている。

つまり、現行法では嘱託再雇用できる人間を選別できる制度があり、これが高齢法9条2項「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」として反映されているのである。

今回の改正では、9条1項はそのままに、従来の2項(継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み)は削除、新たな2項及び3項が追加となった。

次回では、「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の具体的な内容について触れていくこととする。

(了)

連載目次

筆者紹介

平澤 貞三

(ひらさわ・ていぞう)

社会保険労務士
平澤国際社労士事務所

1968年生まれ 福島県相馬市出身
横浜市立大学商学部卒業後、1992年、世界4大会計事務所の1つであるKPMG Peat Marwick(現KPMG税理士法人)へ入社。
法人税、消費税、個人所得税などの各種税務申告の他に会計、給与計算業務などに従事。
1998年、KPMG Business Resource Management(現KPMG BRM)へ移籍し、以降、約10年にわたり給与計算に特化したアウトソーシング事業に従事。主に外資系企業に対するテーラーメイドサービスを開発し、1人の会社から1,000人規模までその実績は延べ数百社に及ぶ。
2008年、16年間におよぶKPMGでの経験を経て、平澤国際社労士事務所を開業、現在に至る。

【著書】
・『給与計算実践ガイドブック』清文社(2004年版~2008年版)
【セミナー】
・産業経理協会 「給与計算基礎講座」
・その他、企業の人事労務担当者向けセミナーなど

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