毎回、税理士等の実務家にとって必要な基礎知識をProfession Journal編集部がわかりやすく解説する[税務ピンポイント解説]がスタートしました。
初回に取り上げるのは『スイッチOTC薬控除制度』です。
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税務ピンポイント解説
【第1回】
「スイッチOTC薬控除制度」
Profession Journal 編集部
平成28年度税制改正で、セルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)の推進を目的とした新たな医療費控除の特例(スイッチOTC薬控除)制度(措法41の17の2)が創設されました。
新制度は現行の医療費控除制度(所法73)との選択適用となり、また、確定申告を行うことで控除を受けられることとなります。適用期間は平成29年1月1日から平成33年12月31日までの5年間です。
新制度の要件は、健康維持増進や疾病への予防取組みとして、医師の関与がある検診等または予防接種を行う者が、自己又は生計を一にする親族に係る一定のスイッチOTC医薬品を購入した場合とされており、その購入費用(年間10万円を限度)のうち1万2,000円を超える額が所得控除されます。
周知のように、現行の医療費控除(所法73)でも、疾病の治療を行うために薬局などで購入した市販薬の購入費も控除の対象となっています。しかし、新制度はスイッチOTC医薬品に限られることになります。とはいえ、現行制度の要件である“10万円の壁”に比べると、新制度の使い勝手は良くなるのではないでしょうか。
ところで、聞きなれない「スイッチOTC医薬品」ですが、医療薬から市販薬に転用(=スイッチ)された医薬品であり、OTC(Over the Counter)、すなわちカウンター越しの対面販売される一般市販薬を指します。新制度の対象となる成分は厚労省より公表されているものの(平28.3.31 厚労省告示178)、私たちには、どの医薬品がスイッチOTC医薬品に該当するのか見当がつきません。
こうした状況に対して、医薬品業界では、店頭で「スイッチOTC医薬品」であることをパッケージに明示するなどの対応を急いでいます。また確定申告の際に必要となるレシートについても、小売店サイドではレシートにスイッチOTC医薬品を購入したことが判明するよう対処を行うとしています。
制度が開始となる平成29年1月までには、購入者準備が整うことでしょう。
(了)
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