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毎回、税理士等の実務家にとって必要な基礎知識をProfession Journal編集部がわかりやすく解説する[税務ピンポイント解説]。
今回取り上げるのは『マンション購入時に気をつけたい「50㎡の“壁”」』です。
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税務ピンポイント解説
【第3回】
「マンション購入時に気をつけたい「50㎡の“壁”」」
Profession Journal 編集部
皆さんはマンションを購入する際に、何を重視するでしょうか?
様々な要素がありますが、注意したいポイントに「床面積」があります。
なぜなら、「床面積が50㎡以上」か否かによって、次の各種の税制上の特例が受けられるかどうかが決まってしまうからです。
① 住宅ローン控除
② 登録免許税の軽減
③ 不動産取得税の軽減
④ 住宅取得等資金贈与の特例
(※) ④については「240㎡以下」という限度面積が設定されています。
ここでいう「床面積」とは、一般的に物件資料などで使用されている「壁芯面積」ではなく、登記簿上の面積である「内法の面積」であることに注意が必要です。つまり、壁芯面積で50㎡を超えていても内法面積で満たせなければ、上記の特例は受けられないことになります。
まさに「50㎡の“壁”」が立ちふさがっているのです。
ではなぜ「50㎡」が最低面積とされているのかといえば、昭和51年3月26日に閣議決定された「第Ⅲ期住宅建設五箇年計画」(国土交通省、昭和51年)で4人世帯の場合の「最低居住水準」が50㎡と定められたことにより、住宅金融支援機構などのローンの基準が50㎡に引き上げられた状況を鑑みて、各種税制優遇措置が設けられたことによります。
ちなみに「マンション・一戸建て住宅データ白書2015」(東京カンテイ、2016年1月28日)によると、首都圏での平均専有面積は61.90㎡、平均価格は5,183万円であり、日本では3LDK(3K等を含む)の間取りのマンションの供給数が群を抜いているため、3LDKのマンションの購入の際には「50㎡の壁」に阻まれることはほぼないと予想されます。
では、どのような人がこの「50㎡の壁」に注意すればよいのでしょうか。
上記の五箇年計画によれば、標準世帯の最低居住面積水準は35~47.5㎡とされています。2LDKの専有面積は40㎡前後であるため、家計に余裕のない子ども2人の世帯がここに当てはまることがわかると思います。
「平成27年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省、2016年7月12日)によると、児童のいる世帯の平均所得金額は712.9万円であり、一般的に住宅価格の年収倍率は5~6倍が望ましいと言われるため、もはや3LDKの物件には手が届かない世帯が多いことがうかがえます。
となると、子育て世代の2LDK(2K等を含む)に対する需要はますます高まることが予想されますが、税制上の特例の要件は、果たして現状のままでよいのでしょうか。世相に合った政策の充実が求められます。
(了)
「税務ピンポイント解説」は不定期掲載です。