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女性会計士の奮闘記 【第6話】「たとえ言いにくいことでも・・・」

女性会計士の奮闘記 【第6話】 「たとえ言いにくいことでも・・・」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈ワンポントアドバイス〉 誠実に、お客様にとって何が最善の方法かを一生懸命に考え、それがたとえ言いにくいことであっても、臆せずお客様に提案することが必要です。 その姿勢がお客様に認められれば、さらに信頼が得られ、いろんな相談案件が舞い込んできます。 しかし、その提案は、経営者の判断に資するため、数字に裏付けられたものでなければなりません。 また、“鉄は熱いうちに打て” 期限を切って作り上げましょう。 (了)
#25(掲載号)
#小長谷 敦子
2013/06/27
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神田ジャズバー夜話 「2.田舎者」

初めて男が店に表れたとき、私はその風貌を見て笑ってしまった。髪の毛がワサワサと不定形のアフロヘアーのようで、スーツ姿の大きな体との取り合わせがなんとも可笑しかった。 「今、笑ったでしょ」 大きな長方形の顔から太い声が出た。口ヒゲの下にある唇は薄く引き結ばれ、黒ぶちの眼鏡の奥にある細い目から表情は伺い知れない。 「え、はい」少しビビり、半ば自棄で返事をした。 「でもいやな笑い方じゃなかったね」 「その髪型、ちょっと意外だったんで」 「そうかなあ」 そんなやり取りから打ち解け、男は自己紹介をした。木曽福島の産でもう還暦を過ぎ、今は新潟で土木業を営み仕事で月に一度ぐらい上京するという。 男は続けて東京駅の靴磨きの兄弟の話をした。内容はもう覚えていないが面白かった記憶はある。 酒は、すすめたアードベックを気に入り、ロックでそればかりを3杯飲んだ。 客の少ない店なので、私は毎日誰が何時に来たかをパソコンに記録している。名前を聞いていない客はその風貌や属性で「黒縁めがね」とか「名古屋IT男」などとする。 男は名乗ったが、名前よりもふさわしい「越後の怪人」にした。 その後も「怪人」は上京の度に来店した。いつも「怪人」の話は面白かった。 ある夜、「怪人」が私の教えた旨いトンカツ屋で隣席の見知らぬおねえさんを口説いたと、ここの常連であるそのトンカツ屋のマスターから聞かされた。コソコソするわけではなく普通の声でメールアドレスを訊いたらしい。 一ヶ月ほど前のこと。画廊の女にあなたはヘッセの『知と愛』を読むべきだといわれ、今読んでいると「怪人」は語った。それ以上の説明がなかったので、その前にどんな会話があれば女がヘッセをすすめるのか私には想像できなかった。 話好きの「怪人」は隣席の男にも話し掛けた。今の話に男は無反応だったが、何度か来店しているその男も話好きなので迷惑ではないだろう。 話題がお互いの仕事におよぶと男はカバンから資料を取り出した。 男は30代後半、神田の生まれで、イベント会社の2代目社長をしているという。 「ぼくは今こんなことしてんですよ」社長は自社で開発した特殊車輌や芸能人と一緒の写真を見せてのプレゼンを長々と続けた。 「怪人」は適当に相づちを打ちながら時々私の方を見ていたが、「あー、もうホテル行かなきゃ」と逃げだした。 私は以前からこの社長がなぜか不愉快だったが、やっとその理由が分った。自慢話ばかりだったのだ。 私は社長に「もう来るな」という意味のことを長々と時間をかけてやんわりと伝えた。 そして今夜も勢い良くドアを開け、「越後の怪人」がやって来た。 私はいつもその風貌を見て笑ってしまうが、今夜は一月前の逃げ出した怪人を思い出して笑っている。 「こないだは、つまんない客に捕まってましたね」笑いを噛み殺し、いつものアードベックをグラスに注ぎながら私は「怪人」の方を見た。 「越後の怪人」は大きな口をへの字にしてから、太い声で言った。 「ああいうのを田舎者っていうんだ」 (了)
#25(掲載号)
#山本 博一
2013/06/27
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《速報解説》 「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の解説

《速報解説》 「国際会計基準(IFRS)への 対応のあり方に関する 当面の方針」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年6月19日、企業会計審議会は、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(以下「当面の方針」という)を公表した。 本稿では、当面の方針の概要について述べるが、具体的な内容を理解するために、ぜひ、「当面の方針」自体をお読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 「当面の方針」の内容 「IFRSへの対応のあり方に関する基本的な考え方」では、「単一で高品質な国際基準を策定する」という目標がグローバルに実現されていくことは、世界経済の効率化・活性化を図る観点から有効であるとし、我が国としてもこの目標を実現していくために主体的に取り組むことは重要であると述べるなど、多くの事項が取り上げられている。 なかでも、IFRS策定への日本の発言権を確保していくことがとりわけ重要となるとし、IFRS財団への人的・資金的貢献を継続するとともに、IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用(強制又は任意の適用を通じたIFRSの顕著な使用)」を勘案しながら、日本のIFRSへの態度をより明確にすることを検討していく必要があると述べていることは注目される。 「当面の方針」は、まずはIFRSの任意適用の積上げを図ることが重要であると考えて、次の事項について述べている。 1 IFRSの強制適用の是非等 我が国におけるIFRSの強制適用の是非等については、諸情勢を勘案すると、未だその判断をすべき状況にないものと考えられると述べ、今後、任意適用企業数の推移も含め今回の措置の達成状況を検証・確認する一方で、米国の動向及びIFRSの基準開発の状況等の国際的な情勢を見極めながら、関係者による議論を行っていくことが適当であるとしている。 そのうえで、仮に強制適用を行うこととなった場合には、十分な準備期間を設ける必要があると述べている。 2 任意適用要件の緩和 IFRSの任意適用要件のうち、IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組み・体制整備の要件は維持することとし、「上場企業」及び「国際的な財務活動・事業活動」の要件は撤廃する。 3 IFRSの適用の方法 ピュアなIFRSのほかに、我が国においても、「あるべきIFRS」あるいは「我が国に適したIFRS」といった観点から、個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部基準を削除又は修正して採択するエンドースメントの仕組みを設けることが述べられている。 この結果、我が国においては、次の4つの会計基準が並存することになる。 4 単体開示の簡素化 現在、有価証券報告書においては、連結財務諸表の開示が中心であることから、制度の趣旨を踏まえ、単体開示の簡素化について検討することが適当であると述べられている。 単体開示の簡素化の方針について、本表(貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書)に関しては、大多数の企業が経団連モデルを使用している状況を踏まえれば、会社法の計算書類と金商法の財務諸表とでは開示水準が大きく異ならないため、会社法の要求水準に統一することを基本とすることなどの考え方が示されている。 (了)
#24(掲載号)
#阿部 光成
2013/06/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第3回】「「生産等設備」及び「比較取得資産総額」の判定」

「生産等設備投資促進税制」 適用及び実務上のポイント 【第3回】 「「生産等設備」及び 「比較取得資産総額」の判定」   マネーコンシェルジュ税理士法人 税理士 村田 直   ◆「生産等資産」と「生産等設備」 前回の第2回では、対象法人や対象期間、繰越控除の有無など、要件の基本的な部分を確認した。 今回は、生産等設備投資促進税制の中心部分である、以下の要件判定部分について解説する。 上記要件の両方に、「生産等設備」という用語が登場する。まずは、この用語の意味を把握する必要がある。 平成25年度税制改正大綱には、下記の注意書きが記載されている。 生産等設備の範囲は、正式には通達で規定される予定であるが、現時点(執筆6/6)では、まだ発表されていない。 ただし、現行税法で既に施行されている「沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(租税特別措置法42条の9)」において、「生産等設備」の用語が登場する。 そのため、租税特別措置法基本通達42の9-1において、生産等設備の範囲が下記のように規定されている。 税制改正大綱の記載も、この通達を参考にしているものと推察される。詳細は通達の発表を待たなければならないが、現時点では上記の通達が最も参考になるだろう。 “生産等”設備であるため、生産に携わらない事務系設備は除かれる形になる。 なお、条文を確認すると、「一又は二以上の生産等設備を構成する減価償却資産(国内にある当該法人の事業の用に供する機械及び装置その他の政令で定めるものに限る。)」を「生産等資産」と定義している(措法42の12の2①)。 つまり、「生産等設備」を構成する減価償却資産が「生産等資産」であり、「生産等資産」は政令により、「国内にある建物、建物附属設備、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具・器具備品」とされており(措令27の12の2②)、大綱どおり、無形固定資産と生物は除かれる。   ◆「適用事業年度の減価償却費」は加減算の調整あり 「生産等設備」の定義がおおよそ把握できたところで、改めて、冒頭①の要件の把握に移る。 「国内における生産等設備への年間総投資額」が、「適用事業年度の減価償却費」を超えなければならないわけだが、今度は後半の「適用事業年度の減価償却費」の意味をはっきりさせる必要がある。 条文を確認すると、「当該法人がその有する減価償却資産につき当該適用対象年度においてその償却費として損金経理(略)をした金額」となっている(措法42の12の2①)。減価償却費については、会計上の償却費と税務上の償却費の金額が異なる場合もあり、その場合は、償却超過額や償却不足額が発生することとなる。 その取扱いが気になるところだが、この条文を見ると、“損金算入”ではなく、“損金経理”となっているため、税務上の償却費ではなく、償却費として、会計上、損金経理した金額を使うことが分かる。ただし、その金額をそのまま使うわけではなく、以下の3つの調整を加えることとなる。 1つ目は、特別償却準備金である。 損金経理の方法又はその適用対象年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により、特別償却準備金として積み立てた金額は、上記の「適用事業年度の減価償却費」に加算する。 2つ目は、生産等資産に該当する機械装置の減価償却費についての調整である。 生産等資産のうち機械装置(取得をしたものにあっては、その製作の後事業の用に供されたことがないものに限る)の普通償却限度額を超えて、その機械装置につき償却費として損金経理をした金額(特別償却に関する他の規定により損金の額に算入される金額を除く)については、上記の「適用事業年度の減価償却費」から除かれる。 3つ目は、過去の償却超過額についての調整である。 法人税法31条4項の規定により、同条1項に規定する損金経理額に含むものとされる金額は除かれる。 具体的には、適用事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった償却超過額については、適用事業年度に償却不足額がある場合には認容減算され、償却費として損金経理をした金額に含まれることになるが、これらの金額は「適用事業年度の減価償却費」からは除かれることとなる。   ◆「比較取得資産総額」とは 次に、冒頭②の要件についてであるが、条文上は、「比較取得資産総額」の100分の110に相当する金額を超える場合、と規定されている。 「比較取得資産総額」とは、適用事業年度開始の日の前日を含む事業年度(以下「前事業年度」)において、その法人が取得等をした生産等資産でその前事業年度の終了の日において有するものの取得価額の合計額をいう。なお、前事業年度の月数と適用事業年度の月数とが異なる場合には、その合計額に適用事業年度の月数を乗じてこれを前事業年度の月数で除して計算した金額になる(措法42の12の2①、措令27の12の2③④)。 次回は、本制度の創設に伴い新設された法人税申告書「別表6(18)」の書き方や当初申告要件など、手続規定を中心に解説する。 (了)
#24(掲載号)
#村田 直
2013/06/20
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中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第4回】「統合の形態により異なる税務の取扱い」

中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第4回】 「統合の形態により異なる税務の取扱い」   公認会計士・税理士 並木 安生   1 はじめに 前回までは主に「買収」に係る税務デューデリジェンスを取り上げたが、今回より、合併や株式移転に代表される「統合」の各形態の内容及びその税務上の取扱いやポイントについて、事例を交えて解説する。   2 統合の形態 B社のオーナー株主(個人)が、同業種(電子機器卸売業)を営む競合他社(A社)から両社の統合の申し出を受けたとする。この際、その統合の手法・形態によって税務上の取扱いが相違することになる。 以下、数値例を用いて解説する。 《A社及びB社に係る前提》 ●税務上の各数値は下表のとおりである。 ●A社及びB社共に電子機器卸売業のみを営んでいる。 ●両社共に負債は存在しない。 ●B社の資本金額は資本金等の額と一致しており、その額は200である。 ●オーナー株主のB社株式簿価は200であり、B社発行済株式の100%を保有している。 ●A社とB社との間には、統合前の時点で資本関係はない。   ① 合併のケース 競合他社(A社)が自社(B社)を吸収することで自社が消滅し、代わりにオーナー株主がA社株式の交付を受けるものとする(図①)。 これは「合併」という最も一般的な統合形態である。 図① 合併(適格のケース) [ステップ1] [ステップ2]   1) A社及びB社の税務 合併は組織再編税制の対象となる取引であり、適格要件の判定が必須となる。適格要件を満たさない場合は非適格合併となり、消滅する会社側(本ケースではB社)が有するすべての資産・負債にかかる譲渡損益を税務上認識しなければならない(適格要件の判定内容については次回解説)。 本事例が非適格合併に該当し、B社の有する資産の譲渡損益を認識しなければならない場合、B社では譲渡益100が課税対象として認識される(ただし、青色繰越欠損金30との相殺が可能である)。また、この場合は消滅する会社側の青色繰越欠損金は引継ぎができないこととなる(ただし本事例では、青色繰越欠損金30は譲渡益100と相殺され使い切られる)。 一方で、本事例が適格合併に該当する場合は、譲渡損益の認識は行われない。また、合併前に資本関係がない会社間の適格合併の場合は、青色繰越欠損金や、A社及びB社が将来保有資産を処分した際の譲渡損などが損金算入制限を受けることがないため、いわゆる「みなし共同事業要件」や「時価純資産超過額の特例」を検討する必要もないことになる。 2) オーナー株主の税務 本事例が非適格合併に該当する場合、仮にオーナー株主へ交付されるA社株式の時価が400であるとすると、この時価とB社株式簿価300との差額100が「みなし配当」として税務上認識される。この配当は個人の所得税上、累進税率が適用される総合課税の対象となる点に留意されたい。 一方、本事例が適格合併に該当する場合、オーナー株主では合併時点において課税関係は生じないことになる。   ② 株式移転のケース 上記①に記載した合併のようにA社とB社が1つの法人となるのではなく、A社及びB社を新たに設立した持株会社の100%子会社とすることでグループとして一体化を図り、A社株主及びオーナー株主は新たに持株会社の株式を受け取るものとする(図②)。 これは「株式移転」という統合形態であり、統合対象会社を別法人のまま残すことで会社の法的形式や組織風土の急激な変化を避けたい場合などに有効となる手法である。 図② 株式移転(適格のケース) [ステップ1] [ステップ2]   1) A社及びB社の税務 株式移転も合併と同様、組織再編税制の対象となる取引であり、適格要件の判定が必須となる。 適格要件を満たさない場合は非適格株式移転となり、統合対象会社のA社及びB社の一定の資産に係る評価損益を税務上認識しなければならない。この点、合併とは異なり、B社だけでなくA社の資産も評価対象となる。本事例の下で、A社及びB社の有するすべての資産が評価損益の対象となる場合、A社では評価損△200、B社では評価益100が認識される。 なお、合併の場合と異なり、適格又は非適格にかかわらず、株式移転によってA社及びB社の青色繰越欠損金や、A社及びB社が将来保有資産を処分した際の譲渡損などが損金不算入となることはない。 2) オーナー株主の税務 本事例の下では、株式移転に伴いオーナー株主はB社株式の代わりに持株会社株式を保有することとなり、現金等の交付を伴わないことを前提としている。 したがって、株式移転が適格又は非適格のいずれとなるかにかかわらず、株式移転の際には課税関係は生じないことになる(譲渡損益やみなし配当は税務上認識されないこととなる)。   3 まとめ 以上のように、いずれの統合形態を選択するかで、オーナー株主、買収対象会社並びに買い手の課税関係が異なることになる。この内容を踏まえた上で統合形態を選択・決定し、税務デューデリジェンスを実施することになる。 その詳細については次回解説する。 (了)
#24(掲載号)
#並木 安生
2013/06/20
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交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第3回】「1人当たり5,000円以下の飲食費」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第3回】 「1人当たり5,000円以下の飲食費」   公認会計士・税理士 新名 貴則   租税特別措置法において、次の費用は税務上の交際費等から除くと定められている(措法61の4③二)。 ここでいう「政令で定めるところにより計算した金額」とは、飲食等のために支出した費用を参加者の人数で除した金額のことである。また、「政令で定める金額」とは、5,000円のことである(措令37の5①)。 したがって、飲食等のために支出した費用が1人当たり5,000円以下であれば、税務上の交際費から除かれるという意味である。 ただし、これはその飲食等が、得意先や仕入先、その他事業に関係のある社外の者等と一緒の場合のみである。 親会社や子会社の役員や従業員は社外の者とされる。 社内の者だけでの飲食代が1人当たり5,000円以下であったとしても、これには該当しない(もちろん、そもそも交際費等ではなく会議費等に該当する場合もある)。 逆に、これらの社外の者と一緒であれば、明らかに居酒屋等での飲酒も伴う食事であったとしても、1人当たり5,000円以下であれば交際費等にはならないことになる。 このとき、以下の事項を記載した書類を保存しておくことが必要である。 この書類の様式は定められていないので、必要項目さえ網羅されていれば、任意の様式で構わない。   ◆ 判定に当たって注意すべき事項 ◆ 【税抜経理のケース】 【税込経理のケース】 (了)
#24(掲載号)
#新名 貴則
2013/06/20
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法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第3回】

法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第3回】   弁護士 木村 浩之   (前回はこちら) 4 少額の減価償却資産等の判定 (1) 問題の所在 取得価額が10万円未満又は使用可能期間が1年未満であれば、少額の減価償却資産として、その取得価額の損金算入が認められる(法令133)。また、取得価額が20万円未満であれば、一括償却資産として、事業年度ごとに対象資産を一括して3年間で均等償却することが認められる(法令133の2)。さらに、中小法人の場合は、取得価額が30万円未満であれば、少額減価償却資産として、合計300万円までの範囲で取得価額の損金算入が認められる(措法67の5)。 この取得価額の計算方法は前回みたとおりであるが、実際に固定資産を取得するに当たっては、一定の数量をまとめて取得する場合、複数の異なる種類の資産をセットで取得する場合などがあり、これらの取得価額をどの範囲で合計すべきであるかという固定資産の判定単位の問題がある。 また、上記のとおり、使用期間が1年未満の減価償却資産については、その取得価額にかかわらず、少額の減価償却資産として取得価額の損金算入が認められていることから、この使用可能期間をどのように考えるかという問題もある。 以下、これらの問題を順に検討することとしたい。 (2) 固定資産の判定単位 固定資産の取得価額を計算するに当たっての固定資産の判定単位については、一般に、通常の取引において1単位として取引される単位によるものと解されている。 この1単位の考え方については、もともと固定資産が事業収益の獲得に寄与するための機能を有するものであることから、単なる物理的な一体性等の観点のみならず、機能的な観点から1つの単位であるかどうかを判断すべきものと解されている。 そこで、固定資産については、事業に有意な機能を発揮しうる最少取引単位をもって1つの資産であると考えるべきであり、実際の使用状況とは別に、本来単独でそのような機能を発揮することができるかどうかという基準によって1単位と判定することになる。 この点、通達では、「通常1単位として取引される単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては、一の工事等ごとに判定する」とされている(法基通7-1-11)が、実際の裁判例においては、「機能」に着目した判断がなされている。 例えば、最判平成20年9月16日・民集62巻8号2089頁は、「減価償却資産は法人の事業に供され、その用途に応じた本来の機能を発揮することによって収益の獲得に寄与するものと解される」と述べた上で、「複数の電気通信施設利用権をまとめて事業の用に供していた場合であっても、その利用権は一つでもって機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる」ことを理由に、「権利一つをもって、一つの減価償却資産とみるのが相当である」と判示している。 また、さいたま地裁平成16年2月4日・税資254号順号9549は、カメラ、ビデオ、テレビ等で構成される防犯ビデオカメラ等について、「ビデオカメラ、テレビ、ビデオはそれぞれ独立した機能を有し、特にテレビやビデオは普通それら単独で取引単位となるもの」であると述べた上で、「防犯用ビデオカメラ等は全体として監視目的のため一体的に用いられているといっても、本件防犯用ビデオカメラ等を常に一体として一つの償却資産と扱うことは必ずしも合理的とはいえず、カメラ、ビデオ、テレビは一つ一つを器具備品として取り扱っても差し支えないというべきである」と判示し、それぞれ単独で機能を発揮しうるものであることを理由にして、一つの目的のために一体的に使用されるものであったとしても、各資産が単独で1単位の減価償却資産に該当するとの判断をしている。 (3) 使用可能期間 取得価額が10万円以上の減価償却資産であっても、その使用可能期間が1年未満であれば、少額の減価償却資産として取得価額の損金算入が認められる。この使用可能期間については、耐用年数とは異なる概念であると解されている。 すなわち、耐用年数が所得計算の便宜のために定められたものであり、実際に使用可能と見込まれる期間とは異なる概念(いわば擬制されたもの)であるのに対して、ここでいう使用可能期間は、実際に資産が使用可能と見込まれる期間をいう。 もっとも、使用可能期間の判定については、事前の予測に基づくものにならざるを得ないことから、恣意的な判断を排除するために、使用可能期間が1年未満であるかどうかを判断するに当たっては、次のような基準によることが合理的であると考えられる。 この点、通達では、「使用可能期間が1年未満である減価償却資産とは、法人の属する業種(例えば、紡績業、鉄鋼業、建設業等の業種)において種類等を同じくする減価償却資産の使用状況、補充状況等を勘案して一般的に消耗性のものとして認識されている減価償却資産で、その法人の平均的な使用状況、補充状況等からみてその使用可能期間が1年未満であるものをいう」とされている(法基通7-1-12)が、上記の要件を満たす限り、使用可能期間が1年未満であると判断して差し支えないものと解される。 なお、使用可能期間が1年未満の減価償却資産とは区別されるものとして、貯蔵品となるべき棚卸資産がある。すなわち、使用可能期間が1年未満であっても、販売用資産の製造等のために消費される資産や時の経過によって減価しない資産については、貯蔵品として棚卸資産に該当することになる(【第1回】の2(2)ア参照)のであり、貯蔵品については、事業の用に供された際に費用化することになる。 (了)
#24(掲載号)
#木村 浩之
2013/06/20
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第10話】「優良法人の税務調査(その4)」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第10話】  「優良法人の税務調査(その4)」  公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   (前回のつづき) 「やはり・・・無理かなあ・・・」 渕崎統括官が田村上席に声をかけた。 法人課税第三部門の職員は、皆、税務調査で出張していて、渕崎統括官と田村上席しかいない。 「・・・?」 田村上席は、振り向いて、渕崎統括官を怪訝そうに見る。 「いや、あの例の・・・更生計画案で切り捨てられた債権なんだが・・・」 渕崎統括官は、苦笑いしながら言う。 「ああ、あれですか・・・」 田村上席は、大きく頷く。 「あれは、仕方ないでしょう」 渕崎統括官は、未練がましく首を傾けている。 「それに、優良法人ですから・・・」 田村上席は、渕崎統括官を諭すような口調で言った。 統括官と上席の立場が逆転しているようである。 「・・・まあ、優良法人であるかどうかはともかく、理論上は、翌期に切捨てが確定している金額なのだから、法人税法施行令96条2号が適用されて・・・結局・・・あの損失処理が引当金として認められるということだな」 渕崎統括官は、自分を納得させるようにつぶやく。 「まあ、上の決裁を受けるときには、ややこしいから、この件は省略しておこう・・・他については、特に問題もなかったのだから、優良法人として継続する手続はすることにしよう」 渕崎統括官は、調査記録等をファイルした書類を机の横にポンと置いた。 「ところで、今回の税務調査の結果を会社に伝えなければならないから、すまんが田村上席、会社に連絡してくれないか?」 実地調査が終了してから、3週間が過ぎている。 「私も会社に行くのですか?」 田村上席が尋ねる。 「いや、税務調査の結果の報告だから・・・私一人で行くよ」 渕崎統括官は笑って応える。 「・・・そう言えば、吉田税理士がしきりに、あの債権の損失処理の結末を気にしていましたね」 田村上席は、吉田税理士が渕崎統括官に、債権の損失処理の意見を聞きたがっていた様子を思い出した。 「そうだな」 渕崎統括官も頷く。 「・・・まあ、今回は、不問にするとでも言っておくか・・・」 渕崎統括官は、吉田税理士の生真面目そうな顔を思い出しながら言った。 どんよりとした空から、大粒の雨が降っている。 渕崎統括官は、濡れた傘の滴を落としながら、会社の玄関に置かれている受話器を取る。 しばらくすると、若い女性の事務員が2階から下りてきて、渕崎統括官を会議室に案内した。 濡れた肩をハンカチで拭いていると、齋藤課長と吉田税理士が会議室に現れた。 「どうも、雨の中、ご苦労様です」 齋藤課長が声をかける。 「いや、だいぶ濡れてしまって・・・」 渕崎統括官は、ハンカチで拭きながら応える。 「よかったら、タオルでも持ってきましょうか?」 齋藤課長が尋ねると、渕崎統括官は首を横に振りながら、ハンカチを後ろのポケットに仕舞った。 「もうすぐ、会長も来ますので」 吉田税理士が渕崎統括官に言う。 「はい、今日は税務調査の結果報告で、すぐに終わりますから」 渕崎統括官は、2人に告げた。 田村上席が会社にアポイントメントを取るときに、今回の税務調査では、特に問題はなかったと事前に伝えてある。 会長が会議室に入ってきた。 「どうも、今日はご苦労様です」 会長は挨拶をすると、齋藤課長の席の横に座る。 3人を前にして、渕崎統括官は、税務調査の結果報告を述べる。 「今回は、御社において3日間、実施調査をした結果について、ご報告に来たのですが、結論から言えば、特に問題はないということであります。会社の経理状況も良好でありますし、特に、指摘すべき問題点もありませんので、御社においては、優良法人として今後も継続できるように、こちらで上申したいと思います」 会長と齋藤課長は、満足そうに頷く。 「ところで・・・更生計画案で切り捨てられた債権・・・の処理については・・・?」 吉田税理士が尋ねる。 「あの件については、とりあえず、今回は不問にします。しかし、後で・・・会計検査院で指摘された場合、修正してもらうことになるかもしれません」 渕崎統括官は、少し強い口調で言う。 「・・・しかし・・・」 吉田税理士が声を出そうとしたとき、会長が遮った。 「まあ、まあ、吉田先生、それで良いじゃないですか。今回は何も指摘がなかったということだし・・・優良法人として上申もしていただけるということですから・・・」 会長は、少し不満そうな吉田税理士を諭す。 「ところで、優良法人の税務調査がこれで終わったので、一度、うちの署長と副署長に会っていただきますが、それについては、また後日、ご連絡させていただきますので」 渕崎統括官はそう言うと、会長に優良法人の申請に必要な書類(会社・個人の履歴等の記載)を手渡した後、早々に退席した。 (つづく)
#24(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/06/20
税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載24〕 判決により取扱いが変更となった通達改正に係る事案の更正の請求

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載24〕 判決により取扱いが変更となった 通達改正に係る事案の更正の請求   税理士 小林 磨寿美   平成25年2月28日、東京高裁(平成24年3月2日東京地裁)において、平成16年の相続事案について、平成2年の通達改正において定めた大会社における株式保有特定会社の判定基準を株式保有割合25%以上とした取扱いを適用することは、平成9年の独禁法改正以後の平成15年の大法人の株式保有割合の実情16.31%(平成元年度7.38%)であることを考慮すると、合理的でないとした判決が確定した。 国税庁はこの判決を受け財産評価基本通達189(2)を改正し、大会社の株式保有特定会社の判定基準を株式保有割合「25%以上」から「50%以上」とした改正通達を、平成25年5月28日に発遣し、ホームページ上にて5月31日に公表した。   1 通達の有利改正と更正の請求 『「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)(平成25年5月28日)(平成25年5月31日)』の別添の「あらまし」では、この改正通達の適用時期として、「本改正に係る改正後の評価通達(大会社の判定基準)は、平成25年5月27日以後に相続、遺贈又は贈与(以下「相続等」という。)により取得した財産を評価する場合に適用するほか、本改正が判決に伴うものであり、過去の相続税等についても、通則法第23条第2項第3号の規定に基づき更正の請求をすることができる(注)ことを踏まえ、平成25年5月27日以後に相続税等の申告をする者が、平成25年5月27日前に相続等により取得した財産を評価する場合にも適用することができる。」としている。 つまりは、平成25年5月27日以後の相続税等の申告について、この改正を適用することができることに加え、通則法第23条第2項第3号の規定に基づき、過去の相続税等についても更正の請求をすることができることを明らかにしている。 従来、租税が納付された後に租税確定行為の基礎とされていた通達が納税者の有利に変更されても、租税確定行為が過去に遡って無効になることはないとされていた。 それが、平成17年のゴルフ会員権の取得費についてのいわゆる右山判決を契機として、平成18年度の国税通則法の改正があり、後発事由による更正の請求(通法23②)に、「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正又は決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、当該課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知ったこと。」(通令6①五)が追加された。 上記高裁判決においては、株式保有割合に加えて、その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮して判断するとしていたが、改正通達では「大会社の判定基準」を50%としたのみであるため、個別の事案の適用関係について、実態判定する必要がない。通達の遡及適用の可否は、形式基準の判定のみで判断することができる。 また、今回の事例は、通達制定当時において適当であった要件が、社会情勢等の変化により当てはまらなくなったものであるため、その当てはまらなくなったことが明らかになった時以後の事案において、つまり本件相続開始時(平成16年)以後においては、改正通達の判定基準が適当であるということになる。   2 更正の請求期間と減額更正の期間制限 「更正の請求」という制度は、それ自体では税額が確定されず、納税者の請求を受け、税務署長が減額更正をすることにより、はじめて税額が確定される。そして、更正の請求期間があるだけでなく、税務署長の減額更正についても、期間制限が設けられている。 具体的には、相続税については5年間、贈与税については6年間、更正の請求をすることができ(通法23①)、これに加えて後発事由に該当する場合は、その事由が発生した翌日から2月間、更正の請求が可能である。後発事由の発生自体には、法定申告期限から何年以内のものに限るなどの期間の制限はない。 一方、減額更正については、相続税については法定申告期限から5年、贈与税については6年経過後においては原則としてすることができない(通法70①、相法36①)。もっとも、後発事由があった場合に対応して、除斥期間も延長する規定が設けられている(通法71①)。しかし、後発事由のうち、通達の有利変更の場合、この特別の除斥期間の適用がないため、法定申告期限等から既に5年を経過している相続税、6年を経過している贈与税については、法令上、減額できないことになる。 ただ、平成23年12月改正で更正の請求期間が延長されたことに伴い、更正をすることができないこととなる日前6月以内にされた更正の請求に係る更正は、その更正の請求があった日から6月を経過する日まで、することができることとなっている(通法70③)。この改正の趣旨から、期限ぎりぎりの更正の請求であっても、減額更正は行われるものと思われる。 つまりは、贈与税については法定申告期限から6年内であるから平成19年分~24年分について、相続税については法定申告期限から5年内であるから平成20年5月31日申告期限のものから、適用可能であったことになる。   3 後発事由による更正の請求と通常の更正の請求の関係 今回の更正の請求は国税通則法23条2項に当てはまることから、通達改正を知った日の翌日から2月以内、つまり、平成25年8月1日(ただし、相続税について法定申告期限から5年目の応当日が先に到来する場合はその日)までに更正の請求をしなければならないと考える向きが多い。 しかし、23条2項括弧書には、「納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。」とあるため、2項の要件に該当するならば、同時に同条1項の通常の更正の請求の適用があることとなる。 したがって、平成23年分、24年分の贈与税については、申告期限から6年以内の更正の請求、相続税については、23年12月2日以降申告期限到来分から、申告期限から5年以内の更正の請求が可能となる。   4 更正の申出のできる期間 さらに、平成23年12月1日以前の申告期限到来分については、更正の申出をすることができる。 つまりは、平成19年分~22年分の贈与税で平成25年8月1日までに更正の請求をしなかった場合については、6年以内の更正の申出。同様に、相続税で平成22年8月以降23年12月1日までの申告期限分については、3年間の更正の申出が可能となる。 ただし、更正の申出は法令上の根拠のある制度ではなく、減額更正期間の延長はないため、期限ぎりぎりの申出だと減額更正はされない危険もある。 以上をまとめると、通達の遡及適用の範囲は次のようになる。 【贈与税】 【相続税】 (注)更正の申出の場合は、各期間終了の日より6月前までの申出が無難。 (了)
#24(掲載号)
#小林 磨寿美
2013/06/20
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林總の 管理会計[超]入門講座 【第5回】 「変動費と固定費の関係」   公認会計士 林 總   (了)
#24(掲載号)
#林 總
2013/06/20

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