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開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A 【第7回】「金融商品に関する注記②」-金融商品の時価等に関する事項-
開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第7回】 「金融商品に関する注記②」 -金融商品の時価等に関する事項- 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 Question 当社は連結計算書類の作成義務のある会社です。連結注記表における金融商品に関する注記の金融商品の時価等に関する事項について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 原則として、金融商品に関する貸借対照表の科目ごとに、貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価及びその差額を注記します。ただし、現金及び短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するものについては、注記を省略することができます。 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)によれば、連結注記表、個別注記表それぞれ次のような注記が考えられます。 【連結注記表】 【個別注記表】 2 注記事項の解説 (1) 金融商品に関する注記の全体像 連結計算書類の作成義務のある会社を前提とした場合、重要性が乏しいものを除き、連結注記表・個別注記表で記載すべき金融商品に関する注記事項は次のとおりです(会社計算規則第109条第1項)。 (※1) 連結注記表を作成する株式会社は、個別注記表における注記を要しません。 (※2) 連結計算書類の作成義務のある会社(会社法第444条第3項に規定する株式会社)以外の株式会社は注記を省略することができます。 (※3) 具体的な注記の内容は、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」を参考にし、各社の実情に応じて、必要な記載をすることになります。 (2) 注記事項の解説 「金融商品の時価等に関する事項」の注記内容は、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」第4項で定められており、量が多いのでここでの解説は割愛します。 ただ、1つ注意してもらいたいのが、時価と帳簿価額が近似するものの注記の取扱いが明確になったという改正が直近であったことです。具体的には、第4項(1)に次の赤字部分の文章が追加されています。 (※) 2019年7月4日改正時の新旧対照表より抜粋(朱記は筆者が加筆) この改正は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度から適用されます。 そのため、従来は貸借対照表計上額と時価に同じ金額を記載し、差額欄にバーを記載する注記事例が多かったですが、改正後は、注記を省略する旨を記載することで表から項目を削除することができるようになります。 それでは、実際の注記を見ていきましょう。 なお、今回のテーマの「金融商品の時価等に関する事項」と前回(第6回)のテーマの「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」は、双方同じ科目について注記する必要があるため、前回と同じ会社の注記を紹介します。前回の注記科目と今回の注記科目及び金額が整合していることも確かめてみてください。 [三菱食品株式会社 2022年3月期 連結注記表] ※三菱食品株式会社「法令及び定款に基づくインターネット開示事項」6頁より抜粋。 [TAC株式会社 2022年3月期 連結注記表] ※TAC株式会社「第39回定時株主総会招集ご通知に際してのインターネット開示事項」14頁より抜粋。 [TAC株式会社 2021年3月期 連結注記表] ※TAC株式会社「第38回定時株主総会招集ご通知に際してのインターネット開示事項」11~12頁より抜粋。 * * * 次回の第8回は、「金融商品に関する注記③-金融商品の状況に関する事項」をテーマに解説します。 (了)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第62回】「減損損失注記」
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第62回】 「減損損失注記」 史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 今回は、減損損失注記について解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 減損損失を計上した場合、有価証券報告書上、注記する必要がある(財務諸表等規則95の3の2、連結財務諸表規則63の2)。そのため、子会社を含めて減損損失を計上した資産又は資産グループについて、注記のために情報を収集する必要がある。 なお、計算書類では、必ずしも注記は求められていないが、重要性に応じて、追加情報として注記することが考えられる。 減損損失を計上した場合、資産又は資産グループごとに以下の事項を注記する。なお、重要性が乏しい場合は、注記を省略することができる。 【事例】(株)ビックカメラ(2022年8月期 有価証券報告書) * * * 以上、2つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)
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〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第14回】「所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の変更・管理の方法と手続」
〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第14回】 「所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の変更・管理の方法と手続」 司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行 【Q】 改正により、所在等が不明な共有者のいる場合の共有物の変更・管理ができるようになるとのことですが、それはどのような方法なのでしょうか。教えてください。 【A】 他の共有者が申立てをして、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判がなされれば、①所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により共有物に変更を加えることや、②所在等不明土地共有者以外の共有者の持分の価格の過半数により管理に関する事項を決定することができる。 -《解説》- 1 改正の経緯 共有者は、他の共有者全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができないとされているところ(現行民法第251条)、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合(以下、このような共有者を「所在等不明共有者」という)には、その同意を得ることができないため、共有物に変更を加えることはできなくなってしまう。 また、共有物の管理に関する事項は、共有者の持分の価格の過半数で決定されるところ(現行民法第252条)、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合には、その共有者の持分の価格によっては、管理に関する事項を決定することができなくなってしまう。 そして、これらの場合には、共有物の変更や管理に関する事項の決定ができない結果、共有物の使用が阻害される事態が生じるおそれがある。 このような場合の対応として、現行民法では、不在者財産管理制度を利用し、裁判所が選任した不在者財産管理人と他の共有者との間で協議し、管理人の同意を得るという方法があるが、これについては、事実上、選任を求めた他の共有者が不在者財産管理人の報酬等を負担せざるをえないことや、共有者が不特定である場合には不在者が特定できず不在者財産管理人を選任できないこと等の問題があった。 そこで、今回の改正により、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所の決定により、①所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により共有物に変更を加えることや、②所在等不明土地共有者以外の共有者の持分の価格の過半数により管理に関する事項を決定することができるものとされた(新民法第251条第2項、同法第252条第2項第1号)。 2 要件等 (1) 請求権者 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判の申立てをすることができるのは、対象となる共有物について持分を有する共有者である(新民法第251条第2項、同法第252条第2項)。 (2) 要件 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判の要件は、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」である(新民法第251条第2項、同法第252条第2項第1号)。 なお、所在等不明共有者がいる場合の共有物の管理者による変更の裁判(新民法第252条の2第2項)においては、「共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」が要件とされている。 まず、“共有者が他の共有者を知ることができないとき”とは、他の共有者の氏名・名称などが不明であり、特定することができないときをいうと考えられる。 次に、“共有者が他の共有者の所在を知ることができないとき”とは、「他の共有者」が自然人である場合には、他の共有者の住所・居所を知ることができないときをいうと考えられる。また、「他の共有者」が法人である場合には、①他の共有者の事務所の所在地を知ることができず、かつ、②他の共有者の代表者の氏名等を知ることができないとき又はその代表者の所在を知ることができないときをいうと考えられる。 (3) 対象となる共有物等 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判は、共有物の変更・管理に関するルール(新民法第251条第1項、同法第252条第1項)の例外を定めるものである。 そのため、当該ルールが適用又は準用される共有物等であれば、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判の対象となりうると考えられる。 したがって、不動産以外の共有物や準共有状態の権利も対象となり、また、相続を原因として共有に至った場合にも適用されると考えられる。他方で、例えば、組合の業務執行(民法第670条)のルールが適用される組合財産(民法第668条)の変更・管理については対象とならないと考えられる。 (4) 対象となる行為 ア 所在等不明共有者以外の共有者による変更の裁判 所在等不明共有者以外の共有者による変更の裁判において対象となるのは、共有物に変更を加える行為である。例えば、土地を農地から宅地に造成することや、借地権を設定することは対象になると考えられる。 他方で、共有持分の譲渡や共有持分への抵当権の設定など、共有者が共有持分を喪失することとなる行為については、共有物に変更を加える行為には含まれず、対象とはならないと考えられる。 イ 所在等不明共有者以外の共有者による管理の裁判 所在等不明共有者以外の共有者による管理の裁判において対象となるのは、共有物の管理に関する事項である。共有物の形状や効用に著しい変更を伴うものや共有者が共有持分を喪失することになるものは、対象とならないと考えられる。 3 手続の流れ (1) 申立て・証拠提出 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判は非訟事件であり、管轄裁判所は、共有物(所有権以外の財産権の準共有持分に関する裁判の場合は当該財産権)の所在地を管轄する地方裁判所とされている(新非訟事件手続法第85条第1項)。 そして、申立てをする際には、加えようとしている変更や、決定しようとする管理事項を特定する必要があるとされている。 また、上記2(2)のとおり、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判を受けるためには、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」という要件を満たしている必要があるため、申立てにあたり、このような要件を満たすことを証明するための証拠資料を提出する必要がある。この要件に関しては、例えば、不動産の場合には、裁判所に対し、登記簿上共有者の氏名等や所在が不明であるだけではなく、住民票調査など必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明であることを証明することが必要であるとされているため、このような証明に必要な資料を準備する必要がある。 (2) 公告・異議届出期間の経過 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判については、裁判所は、以下の①~③の事項を公告し、かつ、②の期間が経過した後でなければ裁判をすることができないとされている(新非訟事件手続法第85条第2項)。なお、②の異議届出期間は1ヶ月を下回ってはならないとされている(新非訟事件手続法第85条第2項後段)。 【公告事項】 (3) 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判 裁判所は、公告を実施し、所定の異議届出期間が経過した結果、申立てのあった共有者が所在等不明共有者であると認定した場合には、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判をすることになる。 この裁判は、申立人に告知しなければならない(非訟事件手続法第56条第1項)。他方、所在等不明共有者に告知する必要はないとされている(新非訟事件手続法第85条第6項) 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判は、確定しなければ効力を生じないものとされている(新非訟事件手続法第85条第5項)。そのため、裁判に対し即時抗告がなされた場合には裁判は確定せず、その時点では効力を生じないが、即時抗告がなされないまま即時抗告期間が満了した場合には裁判が確定し効力を生じることになる。 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判に対しては、当該裁判により権利を害されることとなる所在等不明共有者が即時抗告をすることができる(非訟事件手続法第66条第1項)。上記のとおり、所在等不明共有者に対しては裁判の告知をする必要はないとされているところ、裁判の告知を受けない者の即時抗告の期間は、申立人が告知を受けた日から進行するとされているため(非訟事件手続法第67条第3項)、裁判の告知を受けない所在等不明共有者の即時抗告の期間は、申立人が告知を受けた日から進行し、その期間は2週間の不変期間となる(非訟事件手続法第67条第1項)。 (4) 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の決定・実施 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判が確定し効力が生じたときでも、実際に共有物に変更を加えたり共有物の管理に関する事項を決定したりするためには、別途、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意や、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数による決定が必要となる。 4 裁判がなされた後に所在等不明共有者の所在等が判明した場合 所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判がなされた後に、所在等不明共有者の所在等が判明した場合であっても、裁判は有効に成立している以上、当該裁判に基づいて実施された共有物の変更や管理は適法である。 もっとも、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判に基づく変更行為・管理行為は、あくまでも共有者の所在等が不明であることを前提になされるものであることから、例えば、所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の裁判がなされた後、変更行為や管理行為が実施される前に、所在等不明共有者とされた共有者の所在等が判明したにもかかわらず、当該共有者の同意を得ることなくその他の共有者のみで変更行為や管理行為を実施することは、信義則違反又は権利の濫用に該当するものとして違法となりうると考えられる。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例79】株式会社TOKAIホールディングス「特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」 (2022.12.15)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例79】 株式会社TOKAIホールディングス 「特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」 (2022.12.15) 公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社TOKAIホールディングス(以下「TOKAI」という)が2022年12月15日に開示した「特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」である。特別調査委員会から受領した、同社の前代表取締役社長である鴇田勝彦氏(以下「鴇田氏」という)による不適切な経費の使用に関する調査報告書(以下「報告書」という)を公表している(同報告書に一部誤りがあったため、その後2022年12月28日に「(訂正)『特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ』の一部訂正について」を開示)。 2 クーデター 始まりは、2022年9月15日に開示された「代表取締役の異動に関するお知らせ」である。代表取締役が鴇田氏から小栗勝男氏へ交代するという内容なのだが、その「異動の理由」の記載は次のとおりである。 報告書には、次のとおり鴇田氏の解職動議が提出された際の様子が記載されている(報告書51頁。「C1氏」は鴇田氏)。いわゆるクーデターである。なお、特別利害関係人である同氏を除く取締役全員の賛成により可決されている(報告書59頁)。 解職の理由は「不適切な経費の使用」とされており、今回の開示は、これを調査するために設置された特別調査委員会の調査報告書を公表したものである。なお、特別調査委員会を設置し、2022年9月22日に「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」が開示されたが、その後、委員の交代があり、2022年10月11日に「特別調査委員会の構成の一部変更に関するお知らせ」が開示されている。 3 クーデターによって得た地位を 鴇田氏は、2002年9月、当時のTOKAIの代表取締役社長に求められ、同社顧問となり、その後、2003年6月に同社代表取締役副社長、2005年6月に同社代表取締役社長兼最高経営責任者(COO)に就任している(報告書27頁)。そして、次のような経緯で会社内での地位を固めた(報告書27~28頁。注記は省略。「C1氏」は鴇田氏、「E5氏」は、同氏を同社に迎え入れた当時の代表取締役社長)。 これらも、交代というよりも排除だが、クーデターといえる。これらのクーデターの首謀者が鴇田氏か否かは不明だが(しかし、最も得をしたのは同氏)、少なくともそれらに加担することにより自身の地位を盤石なものとした。しかし、今回、皮肉にも自身もクーデターにより地位を追われることになったのである。 4 クーデターの原因 報告書には「不適切な経費の使用」の実態が記載されているが(報告書59~112頁)、鴇田氏の非常識さは目に余るものがある。また、ほかにもコンパニオンとの混浴(報告書112~118頁)など非常識な行為が記載されている。そうした非常識さは、官僚(現在の経済産業省出身)からそのまま民間企業の経営者になってしまったことや、年齢による(おおらかな時代の価値観のまま)のかもしれない。 しかし、今回のクーデターの原因は、そうした鴇田氏の非常識さだけではない。本来であれば、クーデターに至る前に、他の取締役は同氏を監督し(会社法362条2項2号)、その非常識な行為を改めさせるべきである。しかし、それが困難であったため、クーデターとならざるを得なかったのだろう。 鴇田氏はワンマン社長で、他の取締役は同氏に逆らうことができなかった(報告書132~133頁)。ワンマン社長の権力の源泉は、人事と報酬の権限を握っていることである。逆らったら、クビあるいは降格になる、報酬が下がるとしたならば、誰も逆らうことができない。鴇田氏も人事と報酬の権限を握っていたのである(報告書28~31頁)。 さらに鴇田氏の独裁には終わりが見えなかったのである。本来は2016年6月の定時株主総会終了後に定年になるはずだったが、次のとおり定年がなくなってしまったのだ(報告書31~32頁。注記省略。「C1氏」は鴇田氏)。なお、取締役会で決議されているのは、誰も逆らえなかったからだろう。 やりたい放題の居心地の良い地位を手放したくはないだろう。しかし、鴇田氏の権力は絶対的なものではなかった。同氏の持株比率は0.27%ほどにすぎないため(第11期有価証券報告書)、いつでも取締役会で解職される可能性はあったのである。 代表取締役に人事と報酬の権限が与えられている会社は多いが、そうした会社では、代表取締役が大株主でもない限り、今回のようなクーデターが生じる可能性があるといえる。全ての場合ではないが、クーデターも、企業統治が機能した形の1つであると思われる。しかし、もとよりクーデターに至る前に手が打たれるべきである。2022年12月23日に開示された「再発防止策及び関係者の処分に関するお知らせ」には再発防止策が記載されているが、その中で最も重要なのは「指名・報酬委員会における決定プロセスの透明化」だろう。これまでは機能していなかった指名・報酬委員会をきちんと機能させるようにしないと、またいつかクーデターが生じてしまうかもしれない。 (了)
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プラス思考の経済効果 【第11回】「初詣の経済効果」
プラス思考の経済効果 【第11回】 「初詣の経済効果」 関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩 1 はじめに 「初詣」は、日本における新しい年の最初のビッグイベントです。昔から全国の初詣の人出は非常に多い人数を記録していました。警察庁が2009年まで発表していた正月三が日の初詣の人数によると、2009年には全国で約9,939万人もの人々が初詣に出かけたとされています。2009年の日本の人口は約1億2,751万人でしたので、日本全体の約77.9%の人が初詣に出かけたという計算になります。しかし、コロナ禍以降、初詣の人数は減少傾向にあると想定されています。 今回は2023年の初詣の人出とその経済効果を分析しました。分析の結果、2023年の初詣の人出予想は約4,572万人、経済効果は約1兆2,344億円となりました。 2 初詣の人気ランキング 初詣は、健康、家内安全、世界平和、金運などを歳神様(家族を守ってくれる神様)にお願いするために出かける新年の恒例行事です。警察庁が2009年を最後に人数について発表しなくなったので、その後はそれぞれの寺社において発表される人数がマスコミで取り上げられています。ここでもそれらに従って、初詣の人数を紹介します。 【第1表】は株式会社MS-Japanのビジネスメディア「Manegy」が2019年2月7日に更新発表した新型コロナ前の2018年の初詣と、調査会社XYZが発表した新型コロナ禍の2020年の初詣人数のランキングです。やはり、コロナ禍の2020年は増加した寺社もありますが、全体としては落ちこんでいます。 【第1表】 初詣の人数トップ10 3 2023年の初詣の人出と消費額の推定値 2023年はどれだけの人が初詣に出かけるでしょうか。2023年の正月は行動制限も無くなり外出が増加すると予想する説と、新型コロナの第8波が高止まりしている状況から外出はまだまだ控えるでしょうと予想する説があります。 前述のように、警察庁発表のデータでは、2009年には日本全体の約77.9%の人が初詣に出かけたとされていますが、筆者はこの比率はかなり誇張された数値であると考えています。NHKは10年毎に「宗教に関する意識調査」(全国の18歳以上対象)を実施していますが、それによると、「初詣によく行く」と回答した人の割合は、1998年は56.1%、2008年は55.1%、2018年は53.9%となっています。そして、近年はコロナ禍で初詣に行く人の割合は減少してきていると考えられます。 株式会社日本マーケティングリサーチ機構が2022年1月7日に発表したデータ(全国の10~70代の男女対象にしたアンケートで有効回答は1,030人)によると、2022年に初詣に行った人の割合は40.1%であり、行かなかった人は59.9%でした。そして、2023年の初詣に行く予定の人の割合は44.27%、行かない予定の人は29.71%、不明の人が26.02%です。本報告書ではこの数値を参考にして計算を行うことにします。 (1) 10~70代の人口 総務省統計局が2022年11月21日に発表した人口推計では、10~70代の11月1日現在の人口の概算値は約1億328万人でした。もちろん、10歳未満や80歳以上の人も初詣に出かけますが、それらの人々の経費などは家族の人たちが負担しているか、ほとんどかからないと想定して本報告書の計算には算定しないことにします。 (2) 2023年の初詣の人数の推定値 これまでの計算から、2023年の初詣の人数は約4,572万人と予測されます。 4 2023年の初詣の総消費額(直接効果) 次に、初詣の1人当たりの消費額を推計します。国土交通省観光庁の2022年9月26日発表の「旅行・観光消費動向調査」の2021年1~12月期の資料によると、「観光・レクリエーション目的」の消費項目別消費単価は次のとおりです。 【第2表】 消費単価(万円/人) バスツアーなどで有名な神社やお寺に出かける一部の初詣のグループもありますが、ほとんどは家族や友人たちと出かけて、日帰りであると仮定します。初詣は参拝目的で、遊びに行くのではありませんので、娯楽等サービス費はほとんど消費しないと仮定します。 そうすると、1人当たりの消費額は、飲食費約4,000円(正月料金は高価である)、交通費は多くの人が日帰りなので、【第2表】の約5,000円の半額の約2,500円、そして買物代は約4,000円ではなく約6,000円(ほとんどの人が着飾って初詣をするので、晴れ着や洋服を新たに購入したり、衣装を借りたりします。また、破魔矢・お守り・おみくじなどを購入します)と仮定します。その結果、合計は約1万2,500円となります。 そうすると、初詣の総消費額は約5,715億円です。 5 経済効果 上記4で計算した初詣の総消費額約5,715億円を基にして、総務省内閣府が作成した最新の「全国産業連関表」(2019年に発表した2015年版の「産業連関表」の修正版)を用いて経済効果を推計すると、2023年の全国の初詣の経済効果は約1兆2,344億4,000万円となりました。 〈2023年の経済効果〉 6 2021年との比較 コロナ禍で一番初詣の人数の少なかったのは行動制限のあった2021年です。この年の初詣の人数と経済効果を2023年と比較してみましょう。 総務省統計局によると、2021年1月1日の10歳~79歳の人口は約1億423万人で、調査会社日本トレンドリサーチ(2021年1月5日発表)によると、2021年の初詣に行った比率は35.8%でした。その結果、初詣の人数は約3,731万人と推定されます。 そして、1人当たり消費単価が【第2表】のとおりだとすると、総消費額は約4,663億7,500万円となります。 この直接効果を用いて2023年と同じように経済効果を計算すると、約1兆73億7,000万円となりました。 〈2021年の経済効果〉 7 まとめ これまでの分析により、2023年の初詣の人出は約4,572万人、経済効果は約1兆2,344億円となります。これは、コロナ禍の2021年と比べて人数で約841万人、率にして約22.5%の増加、経済効果は約2,271億円、率にして約22.5%の増加になりました。 今後も新型コロナの影響、人口減少、物価の上昇、所得の減少などで初詣の人出がコロナ禍以前の水準に急速に戻るのは難しいかもしれませんが、2024年以後はワクチン接種や新薬の開発などにより新型コロナが沈静化され、日本の新年のスタートを飾る初詣の人出が以前の水準に戻ることを願っています。 (了)
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《速報解説》 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備等行う「公認会計法等改正に係る政令・内閣府令等」が公布される~施行は2023年4月1日から~
《速報解説》 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備等行う 「公認会計法等改正に係る政令・内閣府令等」が公布される ~施行は2023年4月1日から~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023(令和5)年1月25日、「公認会計士法施行令等の一部を改正する政令」(政令第15号)、「公認会計士法施行規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第9号)等が公布された。 これにより、2022(令和4)年10月21日から意見募集されていた案が確定することになる。「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」も公表されている。 これは、2022(令和4)年5月11日に成立した「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律」(令和4年法律第41号)の施行に伴い、関係政令・内閣府令等の規定の整備を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 令和4年公認会計士法等改正に係る政令・内閣府令関係 1 上場会社等監査人登録制度に係る規定の整備 2 監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限に係る規定の整備 監査法人の社員が被監査会社等の役員等と配偶関係を有する場合に、監査法人の業務が制限されることとなる社員の範囲等を定める。 3 その他 4 施行期日等 政令は、2023(令和5)年4月1日から施行される。 内閣府令及び告示は、ガイドライン等と併せて、2023(令和5)年4月1日から施行・適用される。 公認会計士法施行規則の一部改正に伴う経過措置が規定されている。 「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(政令第14号)は、公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律の施行期日は、令和5年4月1日とするとしている。 Ⅲ 日本公認会計士協会の「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱」 1 主な内容 2022年12月2日、日本公認会計士協会は、「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱」を公表している。 これにより、2022年10月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。「「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱案」(公開草案)に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 これは、公認会計士法の改正による改正項目のうち、日本公認会計士協会の会則等を変更する必要のあるものに関して、「令和4年公認会計士法等改正に係る政令・内閣府令案等」を踏まえ、取りまとめたものである。 次の項目を取り上げている。 なお、公開草案からの変更に関しては、例えば、上場会社等監査人登録制度に係る制度変更において、「適格性確認のためのレビュー」の用語を「登録の審査のためのレビュー」へ変更するなど、一部の記載については趣旨の明確化を目的とした字句修正を行っているとのことである。 2 適用時期等 2022年改正公認会計士法は、公布の日(2022年5月18日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。変更規定は、経過措置を含め法令の施行に従う。 (了)
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《速報解説》 IASB、第2の柱モデルルール課税に係る繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を提案~影響下の企業に対しての的を絞った開示要求等の導入を記載~
《速報解説》 IASB、第2の柱モデルルール課税に係る繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を提案 ~影響下の企業に対しての的を絞った開示要求等の導入を記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年1月9日、国際会計基準審議会(IASB)は、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール IAS第12号の修正案」を公表し、意見募集を行っている。原題は、“International Tax Reform―Pillar Two Model Rules Proposed amendments to IAS 12”である。 これは、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールの間近に迫った適用から生じる繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を取り扱うものである。 企業会計基準委員会から上記公開草案の和訳が公表されており、本稿は、基本的に、当該和訳をもとに記載している。 公開草案に対するコメントは、2023年3月10日までである。 IASBは、公開草案に対するコメントを条件として、修正を2023年第2四半期に完了させることを目指している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 第2の柱モデルルール 第2の柱モデルルール(Pillar Two model rules)は、2021年12月に、経済協力開発機構(OECD)が公表したルールであり、経済のデジタル化から生じる課税上の課題に対処するための2つの柱からなる解決策の1つである。 第2の柱モデルルールは次のようなものである。 2 法人所得税の会計処理への影響 IASBは、第2の柱モデルルールによる法人所得税の会計処理に与える潜在的な影響があると考えており、特に、利害関係者は当該ルールから生じる繰延税金の会計処理に関する不確実性に関して、懸念を示している。 公開草案はこれに応えるものであり、また、いくつかの法域では当該ルールの適用が間近に迫っており、緊急性のある内容である。 公開草案における提案は、次のことを導入するものである。詳細な内容は公開草案をお読みいただきたい。 Ⅲ 企業会計基準委員会の審議 2022年12月16日に政府税制調査会から公表された「令和5年度税制改正大綱」では、グローバル・ミニマム課税に関する法人税法の改正について記載されている。 「説明資料〔国際課税〕(令和4年11月4日(金)財務省)」では、第2の柱(グローバル・ミニマム課税)の考え方として「国際的に最低限の実効税率(15%)を定めた上で、それを下回る国(=軽課税国)における最低税率での課税を確保」すると記載されている。 「グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応」については、2022年12月26日開催の第493回企業会計基準委員会で審議しており、これに関連する法人税法の改正がなされた場合、次の会計基準等の改正等が必要となる可能性があるものと考えられると記載されている(審議事項(3)-1、4項)。 グローバル・ミニマム課税に関する法人税法の改正が2023年3月31日までに国会において可決、成立した場合、現行の会計基準等によれば、成立日以降に決算日を迎える企業の財務諸表において、改正後の税法に基づき税効果会計の適用を行う必要がある。 税制改正大綱において、改正後の税法の適用は2024年4月1日以後とされているが、成立日以降に決算日を迎える企業の会計処理について何らかの会計基準上の対応をすることが必要か否かを検討する必要があるものと考えられると記載されている。 (了)
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《速報解説》 信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋等について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は不適用~東京国税局からの文書回答事例~
《速報解説》 信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋等について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は不適用 ~東京国税局からの文書回答事例~ 税理士 菅野 真美 令和4年12月20日(ホームページ公表は令和5年1月10日)に東京国税局が、 事前照会を受けた信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋及びその敷地(以下「居住用家屋等」)について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除(以下「空き家控除」)(措法35③)の適用可否について、適用できないという回答を行った。この件について今回は検討する。 ▷どのような事案か 乙は母甲との間で、母の所有する居住用家屋等を信託財産とする信託契約を締結した。委託者兼受益者は母で、受託者は乙である。受益者の死亡により信託は終了し、居住用家屋等は帰属権利者の乙と乙の弟丙に帰属した。 乙と丙はこの居住用家屋等を相続のあった年の翌年に譲渡したが、この譲渡について、空き家控除の適用があるかについて甲が東京国税局に照会を行った。 ▷乙の見解はどのようなものか 乙はこの譲渡について、空き家控除の要件である「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人に該当するから、空き家控除の適用はあると考えた。 なぜなら、この居住用家屋等は、信託の終了により遺贈により取得したものとみなされ(相法9の2④)、帰属権利者が居住用家屋等の所有者であった甲の相続人である。そして、乙や丙の状況は、相続人が相続又は遺贈により被相続人の財産を取得した相続人と同様に、適正な管理の責任を負うことになるためだからである。 ▷東京国税局の回答は 東京国税局は、次のような理由から空き家控除の適用がないと回答した。 信託の終了による財産の移転は「相続」や「遺贈」に該当せず、空き家控除の条文には相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含むとは規定されていない。また、帰属権利者は権利を放棄することができるから(信託法183③)、残余財産の取得を相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことはできない。 ▷相続財産である株式の譲渡のみなし配当特例や相続税額の取得費加算の特例とどこが違うのか 空き家控除が、空き家問題の解消のための制度であるならば、信託を利用した場合は適用ができないとすることは不合理であると考える。 被相続人の死亡により相続人が信託の受益者となり、信託終了後に信託財産であった非上場株式を発行会社に譲渡した場合のみなし配当特例(措法9の7)や、相続税額の取得費加算の特例(措法39)は認められるという質疑応答事例がある。空き家控除の規定と異なり、これらの条文に「相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む」が規定されている。なぜ、空き家控除だけ規定されていないのだろうか。速やかな条文改正により、この問題が解決されることを期待する。 (了)
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《速報解説》 監査役協会、改正倫理規則を踏まえた監査役等の実務に関するQ&A集を公表~「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心とした実務への影響を想定して取りまとめ~
《速報解説》 監査役協会、改正倫理規則を踏まえた 監査役等の実務に関するQ&A集を公表 ~「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心とした実務への影響を想定して取りまとめ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年1月18日、日本監査役協会 会計委員会は、「日本公認会計士協会「倫理規則」の改正を踏まえた監査役等の実務に関するQ&A集」を公表した。 日本公認会計士協会の「倫理規則」は公認会計士の職業倫理に関する自主規制規範である。 その中には、「報酬」及び「非保証業務の提供」を中心に、監査役等の実務への影響が想定される事項が含まれているので、日本監査役協会は、今般、Q&A集として取りまとめている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 Q&A集は表紙を含めて32ページに及ぶものであるので、以下では主な内容について解説する。 1 倫理規則の改正と監査役等との関係(1-2) 日本公認会計士協会の倫理規則の改正により、主に次の2点において、監査役等の実務に大きな影響を及ぼすことが考えられる。 2 改正倫理規則による規律の対象(1-4) 今回の改正における監査役等にとって影響の大きい規定は、「社会的影響度の高い事業体」(Public Interest Entity:PIE)を主たる規律の対象とするものである。 PIEは、①公認会計士法上の大会社等、及び②会計事務所等が追加的に社会的影響度の高い事業体として扱うこととした事業体が該当する。 国内上場会社はすべて対象となる。ただし、報酬に関しては一部PIEでない場合の規律も追加となっている。 3 報酬に関する改正の概要(2-1、2-2) 監査役等に関連する主要な改正内容は次のとおりである。 改正後の倫理規則では、依頼人がPIEである場合、監査報酬、非監査報酬それぞれについて、監査人から監査役等に対してコミュニケーションを行うべき旨、並びにその内容が明示されている。 4 報酬関連情報の開示に関する改正(2-6) 会社がPIEである場合、次の事項についての開示が要求される。 5 非保証業務に関する改正の概要(3-1、3-8) 監査業務の依頼人である会社がPIEである場合に、監査人である会計事務所等は、当該会社、その子会社又は親会社等に非保証業務を提供する場合には、監査役等に対して情報提供を行った上で、事前に了解を得なければならない。 業務の量的又は質的な重要性にかかわらず、監査人により提供可能と判断されたすべての非保証業務が監査役等の事前の了解の対象となる。 6 非保証業務と非監査業務(3-2) 「非保証業務」と「非監査業務」の範囲は異なる。 保証とは、「誰かが一定の規準で作成した情報に対して、別の利用者のために信頼性を付与すること」である。 「監査業務」、即ち財務諸表監査、内部統制監査は、保証業務の一環という位置付けになる。 一方、例えば、サステナビリティや温室効果ガスに関する実績や記述等に対する保証は、非監査業務である保証業務であり、提供に際して事前の了解が求められる対象ではないということになる。 7 事前の了解に関するプロセス(3-4) 「事前の了解」を行うプロセスについては、全体にわたる画一的なルールは存在しないものの、趣旨を踏まえつつ監査役等と監査人の間でプロセスを事前に構築することが求められている。 プロセスとして定めることが想定される要素には次のものがあり、監査人側において、合意されたプロセスに基づいて到達した結論等について文書化することが求められている。 8 包括的な事前の了解の可否(3-7) 包括的な事前の了解の可否については、一定の考慮要素に基づく範囲で、包括的な事前の了解に基づく非保証業務の提供が可能とされている。 ただし、包括的な事前の了解を行うためには、監査役等と監査人との間で、その範囲等を中心としたプロセスを事前に構築する必要がある。 9 提供可能な業務と提供不可能な業務(3-13) 会社がPIEである場合、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がある業務の提供が全面的に禁止される。 従来、重要性の判断やセーフガード(非保証業務に従事した者を監査業務に関与させない等)によって提供が認められていた業務も、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がある場合には禁止となる。 (了)
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《速報解説》 改正倫理規則のセーフガードの定義見直しを踏まえた監査基準報告書等の改正がJICPAより公表される
《速報解説》 改正倫理規則のセーフガードの定義見直しを踏まえた 監査基準報告書等の改正がJICPAより公表される 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年1月12日付けで(ホームページ掲載日は2023年1月18日)、日本公認会計士協会は、「倫理規則の改正に伴う監査基準報告書及び監査基準報告書実務指針の改正」を公表した。 これにより、2022年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、倫理規則(2022年7月25日変更)の公表に伴い、所要の見直しを行うものである。 監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」、監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」など多くのものが改正の対象となっている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 セーフガードの定義の見直し改正前の倫理規則では、阻害要因を除去又は許容可能な水準にまで軽減するものをセーフガードとしていた。 改正倫理規則では、阻害要因に対処するための対応策を「阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するために講じる対応策」と「阻害要因を生じさせている状況を除去するための対応策」に分け、前者をセーフガードとして定義している。 公開草案では、本改正の適用を改正倫理規則の適用と併せて、2023年4月1日から適用(早期適用可)としていた。 本改正では、2022年12月23日付けで公表された「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に示された適用時期(同附則2条)に鑑みて、次のとおり修正している。内閣府令(案)は、倫理規則の改正に関連した監査報告書の記載事項の改正(報酬関連事項)に関するものである。 本報告書(2022年10月13日及び2023年1月12日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。 ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。 (了)
