件すべての結果を表示
会計
監査
税務・会計
解説
解説一覧
財務諸表監査
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第135回】東海リース株式会社「外部調査委員会調査報告書(公表版)(2022年11月11日付)」
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第135回】 東海リース株式会社 「外部調査委員会調査報告書(公表版)(2022年11月11日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【東海リース株式会社外部調査委員会の概要】 【東海リース株式会社の概要】 東海リース株式会社(以下「東海リース」と略称する)は、1963(昭和38)年創業、1968(昭和43)年5月設立。仮設建物の賃貸及び建設を主たる事業とする。連結子会社は、国内に2社、中国に2社の合わせて4社である。売上高16,420百万円、経常利益593百万円、資本金8,032百万円。従業員数536名(2022年3月期連結実績)。本店所在地は大阪府大阪市。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ大阪事務所。 元代表取締役社長が関与する不適切な取引が発覚した東海ハウス株式会社(以下「東海ハウス」と略称する)は、1968(昭和43)年9月設立(設立時の社名は東海リース株式会社、昭和47年10月に現商号に社名変更)。仮設建物の製造を主たる事業とし、東海リースに販売している。資本金40百万円、従業員数90名。本店所在地は香川県綾歌郡。 【外部調査委員会による調査報告書の概要】 1 外部調査委員会設置の経緯 2022年7月下旬、東海リースの連結子会社である東海ハウスの当時の役員、従業員計4名がエコ・プラント株式会社(以下「エコ・プラント」という)を設立した上で、東海ハウスの部材外注加工に関する取引にエコ・プラントを介在させることにより、総額計約1,400万円の原価水増し請求を行っていることが判明したため、東海リースは、不適切な取引の内容を明らかにするとともに、他に不適切な事案が発生していないかを明らかにすることを目的として、同月26日、松井巧社外取締役監査等委員(税理士)及び西野但社外取締役監査等委員(税理士)、顧問弁護士高橋幸平氏(梅田総合法律事務所所属)の3名からなる社内調査委員会を設置して調査を開始した。 社内調査委員会の調査により、同年8月29日、上記の原価水増し請求以外にも、簿外資金約4,700万円をプールした上でその一部を費消していた事実が発見されたことを受け、東海リースは、より客観的かつ徹底的な調査を行い、不正の原因を究明し、再発防止に努めるべく、同年9月22日開催の取締役会において外部調査委員会の設置を決定し、更なる調査を行うこととした。 2 外部調査委員会の調査により判明した不正行為 外部調査委員会は、東海ハウスにおける不正行為を次の3件であると認定した。これらの不正行為は、いずれも社内調査委員会による調査で判明していたものであり、外部調査委員会による調査の結果、新たな不正行為は判明しなかった。 (1) 東海ハウスの鉄骨部材に係る外注取引にエコ・プラントを介在させた不正行為 東海ハウスにおける鉄骨部材に係る外注取引に、東海リースの前常務取締役であり、かつ、東海ハウスの元代表取締役社長であった眞榮田武氏(報告書上の表記は「A氏」。以下「眞榮田元代表取締役」という)らが支配・経営するエコ・プラントを介在させた不正行為を行った結果、東海ハウスに約14百万円の損害を生じさせた。 エコ・プラントは2019年9月26日に設立され、2020年7月頃から、東海ハウスの鉄骨部材の加工の外注先である高田工業株式会社との取引に介在することにより、東海ハウス➡エコ・プラント➡高田工業という商流で決済を行ったことで、概ね1割の差益を受け取っていた。 外部調査委員会は、この不正行為について、東海ハウスの取締役であった眞榮田元代表取締役、前代表取締役土居治代司氏(報告書上の表記は「B氏」。以下「土居前代表取締役」という)及び取締役副社長であったC氏については、利益相反取引に該当し、利益相反取引によって生じた損害を賠償する責任を負うと同時に、特別背任罪の構成要件に該当し得るものであり、総務部長であったD氏については、利益相反取引に加担したものとして、雇用契約上の付随義務違反(債務不履行)又は不法行為として損害を賠償する責任を負うものと判断した。 (2) ゴルフ練習場の造成・維持管理 2016年12月から2017年1月にかけて、東海ハウスの北側敷地に資材置場の造成工事が施行された際、土地の一部に緑化事業の一環として、福利厚生施設ということでゴルフ練習場(グリーン、バンカー等)が造成された。 ゴルフ練習場は、眞榮田元代表取締役が、専ら、自らの趣味を満足させるために造成したものであり、その後も、高額な費用をかけて維持管理をさせていた。ゴルフ練習場の維持管理費用として、少なくとも約12百万円が支出されていた。 外部調査委員会は、眞榮田元代表取締役について、公私混同であるとの誹りは免れないとした上で、ゴルフ練習場の造成については、直ちに善管注意義務に違反するとまでは評価できないものの、ゴルフ練習場の維持管理を継続したことについては、善管注意義務に違反するものであることから、任務懈怠によって生じた損害を賠償する責任を負うとともに、土居前代表取締役及びC氏についても、眞榮田元代表取締役による業務執行を監視監督する義務を怠った不作為は任務懈怠に該当し、損害を賠償する責任を負うものと判断した。 (3) スクラップ売却代金の別口座への入金 2016年12月以降、眞榮田元代表取締役らは、総務部長であったD氏が自らを代表者として開設した「東海ハウス株式会社親睦会名義」の口座に東海ハウスのスクラップ売却代金の一部を裏金として入金させ、その入金総額は約44百万円であった。親睦会名義の口座からは約31百万円が出金され、上記(2)に記載したゴルフ練習場の維持管理費用として支出され、従業員の送別会や忘年会の関連費用が含まれるほか、眞榮田元代表取締役、取締役副社長であったC氏及び総務部長であったD氏による私的使用も認められた。 外部調査委員会は、眞榮田元代表取締役及びC氏について、善管注意義務に違反するものであることから、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとともに、土居前代表取締役についても、眞榮田元代表取締役及びC氏による業務執行を監視監督する義務を怠った不作為は任務懈怠に該当し、損害を賠償する責任を負うものと判断した。さらに、眞榮田元代表取締役、C氏及びD氏による私的な使用については、業務上横領罪の構成要件に該当し得ると判断した。 4 原因分析(調査報告書23ページ以下) 外部調査委員会は、原因分析を、「動機・プレッシャー」「機会の存在」及び「コンプライアンス意識の欠如・低さ」の3項目に分類して、論じている。 外部調査委員会が原因分析の冒頭に、東海ハウスでは、首謀者である眞榮田元代表取締役に逆らうことが極めて困難な職場環境が醸成され、その意向の是非にかかわらず、従うようになっていたことを挙げ、特に取締役副社長であったC氏について、眞榮田元代表取締役の意向を汲んで、それを具現化し、実行する役割を担っていたと評価している。 さらに、外部調査委員会は、内部統制システムの不備として、東海リースでは、コンプライアンスに関する規程を制定していないことから、コンプライアンス委員会等も設置しておらず、コンプライアンス体制及びリスクマネジメント体制の整備を決定していなかった上、役職員に対するコンプライアンス研修については、数年前から全取締役向けに役員の義務と責任をテーマにしたセミナーは受講されていたものの、それにとどまっていたことを挙げ、こうした内部統制システムの不備から、東海リースが東海ハウスにおけるコンプライアンス遵守状況について統制を効かせることができる状況にあるとは評価できず、不正行為を可能とする機会を与えていたと言えると断じている。 また、外部調査委員会は、東海リースの検査室による東海ハウスに対する内部監査について、直ちに不備があったとまでは言うことはできないものの、検査室が東海ハウスに対し場所往査を行っていなかったことは、内部監査の不十分さとして指摘し得るとして、往査を行わずに監査を済ませていたことも、不正行為を可能とする機会を与えていたと言えると評価した。同様に、東海リース監査役による子会社往査も行われておらず、2021年6月に監査等委員会設置会社に移行したにもかかわらず、監査等委員会監査実施細則規程は決議されておらず、監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人についても決定されておらず、監査等委員が監査をできる体制が整備されていなかったことを挙げ、東海リースグループにおいて不正行為を行う機会を与えていたこと、ひいては、不正行為を可能とする機会を与えていたと言えるという評価を下している。 3 再発防止策(調査報告書28ページ以下) 外部調査委員会は、再発防止策として次の4項目を挙げている。 外部調査委員会による提言のうち、2点見ておきたい。 1つ目は、内部統制システムの整備の中で触れられている「グループ内部通報制度の構築」である。外部調査委員会は、本件不正行為は、東海ハウスの社長らが主導・関与して行われており、東海ハウスの他の役職員が内部通報したとしても、その実効性は期待できなかったことから、東海ハウスをはじめとする東海リースの子会社の役職員が東海リースの内部通報窓口に内部通報できる制度を構築すべきであるとの提言を導いている。 もう1つは、外部調査委員会が言うところの「場所往査」の実施である。内部監査部門による子会社の場所往査について、外部調査委員会は、書面による内部監査の有用性を否定しないものの、場所往査の有用性の方がかなり高いとした上で、内部監査部門が実際に現場に赴くこと、又は、現場に来て内部監査をすることがあると役職員が認識することにより、単に監査事項をチェックすると言うにとどまらず、子会社の役職員にある種の緊張感や不正行為をすれば露見するおそれがあるとの意識を与え、不正行為を起こしにくい雰囲気を醸成するなど、様々な副次効果が期待できることから、東海リースの内部監査部門は、子会社への場所往査も定期的に行うべきであると提言し、さらに、常勤監査等委員についても、自らが監査を行うに際して、検査室による子会社への場所往査とは別に、常勤監査等委員自ら場所往査を行うことも検討すべきであるという提言につなげている。 【調査報告書の特徴】 2009年6月から取締役の職務に就き、2014年からは子会社代表取締役社長の地位にあり、子会社代表取締役社長を退任後、常務取締役に昇格した眞榮田元代表取締役は、約5年間の子会社代表取締役社長在任中、大阪にある本社から離れた香川県で、部下がスクラップ売却で作ってくれた裏金を私的に費消し、趣味のゴルフに興じる毎日を送っていたのであろう。調査報告書によれば、眞榮田武氏は、エコ・プラントによる介在は承知しておらず、スクラップ売却代金の私的費消も否認していることから、残念ながら、外部調査委員会も、同氏の動機については解明できていないようである。 1 株主総会付議議案の一部取下げ 東海リースは、2022年6月16日付で、「第54回定時株主総会付議議案の一部取り下げに関するお知らせ」をリリースして、同月9日付で発送した株主総会招集通知について、取締役の選任議案から眞榮田元代表取締役を取締役候補者から削除することを公表した。その理由としては、「コンプライアンス違反に該当する事実が認められたため、同氏からの辞任届を受理」したとしか説明がされていないため、社内及び外部の調査委員会による調査が行われた不正との関連は必ずしも明らかではないものの、社内調査委員会設置を公表して連結子会社での不適切な取引を認める2ヶ月以上前に、東海リース経営陣は、本件不正の首謀者である眞榮田元代表取締役に法令違反の事実が存在することを知っていたわけで、適時開示が遅すぎたのではないかという印象を抱いてしまう。 なお、6月29日に行われた東海リース第54回定時株主総会では、付議された議案はすべて原案どおり、賛成多数により可決承認がされている。 2 取締役会の実効性に関する評価結果 東海リースは、2021年5月21日及び2022年6月27日において、それぞれ「当社取締役会の実効性に関する評価結果の概要について」をリリースして、質問票に無記名方式で回答する方法により、取締役会の実効性について分析・評価した結果を公表している。 2021年5月に公表した実効性評価では、東海リースの取締役会は、規模・構成において、経営上の重要な意思決定及び業務執行の監督を適正に行うための体制が概ね確保されていること、適切な議事運営のもと、議案の審議に十分時間をかけ、活発かつ建設的な議論が行われていることなどから、取締役会の実効性は確保されていると評価した上で、取締役会の実効性を高めるために取り組むべき課題として、次の3点を挙げていた。 2022年6月に公表した実効性評価は、前年と一言一句同じ表現で、取締役会の実効性は確保されていると評価した上で、取締役会の実効性を高めるために取り組むべき課題としても、前年同様、以下の項目を挙げている。なお、東海リースは、2021年11月9日付で、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置したことを公表している(2021年11月9日「指名・報酬委員会の設置に関するお知らせ」)ので、前年の課題のうち2点は解消したということのようである。 その上で、本件不正行為に関わる記述として、以下の文章が掲げられている。 また、今後の取り組みには、「ガバナンス体制の強化として他社主催のセミナーなどに積極的に参加するなど、コンプライアンス意識の定着を図って」いくことが追記されている。 東海リース取締役会における自己評価が適正なものであったのか否か、眞榮田元代表取締役を首謀者とする不正事件を防止できなかったことを、内部統制における「重要な不備」に相当しないとする判断が適正なものであったか否かを軽々しく判断することは避けたいが、調査報告書で、東海リース取締役会による眞榮田元代表取締役の業務執行に関する監視監督責任についての言及を避けた外部調査委員会による評価でさえも、東海リースの内部統制システムに不備があったことは認定していることを附言しておきたい。 3 過年度決算の修正、東海リースによる再発防止策の策定及び関係者等の処分 東海リースは、調査報告書公表時のリリースの中で、現時点における連結財務諸表に与える影響は金額的な重要性は乏しいとする判断に基づき、過年度及び2023年3月期第1四半期の連結財務諸表の訂正は行わないと公表した。 さらに、同リリースにおいて、再発防止策を策定して実行することが説明されているが、本校執筆時点(12月9日)において、東海リースによる再発防止策は公表されていない。 最後に、関係者等の処分であるが、関与した取締役全員が辞任又は解任済みであり、役員退職慰労金を不支給とする処分を行ったこと、従業員については懲戒解雇予定であることを公表するとともに、関係者に対する損害賠償請求を含む民事責任・刑事責任の追及を検討することが説明されている。 (了)
会計
税務・会計
解説
解説一覧
〈会計基準等を読むための〉コトバの探求 【第8回】「「自己株式」と「自社の株式」と「ストック・オプション」」-それぞれの定義と意味の整理-
〈会計基準等を読むための〉 コトバの探求 【第8回】 「「自己株式」と「自社の株式」と「ストック・オプション」」 -それぞれの定義と意味の整理- 公認会計士 阿部 光成 ◆はじめに 株主への利益還元などを理由に、自己株式の取得を行う企業がある。 実務では、自己株式や自社株など類似の用語が使用されることがあるが、これらの用語の違いを理解して使い分けることはできているだろうか。 今回は、「自己株式」に関連する用語の定義を取り上げ、その意味を整理する。 ◆「自己株式」と「自社の株式」 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という)では、「自己株式」と「自社の株式」という用語をそれぞれ次のとおり定義している(連結財務諸表規則2条19号、20号)。 上記からわかるとおり、「自己株式」と「自社の株式」という用語の意味は異なっている。 ◆ストック・オプション ストック・オプションに関して、次の用語が定義されている(連結財務諸表規則2条21号、22号)。 つまり、ストック・オプションは、大まかにいうと、自社株式オプションのうち、報酬として付与するものということである。 ストック・オプションの定義では、次の用語が用いられており、定義の全体像の理解がポイントとなる。 (了)
労働基準関係
労務
労務・法務・経営
社員の不妊治療をサポートする会社環境整備のポイント 【後編】
社員の不妊治療をサポートする会社環境整備のポイント 【後編】 Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士 飯野 正明 4 どんな制度が必要か 会社は不妊治療と仕事の両立を支援するために、どのような制度を整えればよいかについて考えてみます。 〈図表6〉 不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等の実施状況 〈図表6〉を見ると実際には、制度として行っていると回答した会社の割合は9%となっており、まだまだ支援の制度化は進んでいないようです。支援をしていない理由としては、「要望等が表面化していないため」「対象者がいないため」「不妊治療を行っている従業員を把握していないため」が多く挙げられています。労働者が会社に「伝えていない」ので、「不妊治療と仕事の両立」を課題として捉えられていない現状となっていると考えられます。 〈図表7〉 不妊治療のための制度導入数 なお、実際に会社が導入している制度の具体例としては、以下のものが挙げられます。 いかがでしょうか。制度を設計する際の参考にしていただけるとよいかと思います。ちなみに労働者は、不妊治療と仕事の両立をする上で会社や組織にどんなことを希望しているのかというと、次の〈図表8〉のとおりです。 〈図表8〉 会社等への希望 これを見ると、「休暇制度」が多く挙げられていますが、働き方を柔軟にすることで対応できる部分も多くあリます。例えば、「半日単位・時間単位の休暇制度」「時差出勤制度」「フレックスタイム制度」「テレワーク」です。これらの制度をすでに導入されているのであれば、「不妊治療と仕事の両立」の際も利用できることを明確にすることで、新たな制度を導入しなくても充分対応できると考えます。まずは、柔軟な働き方ができるようにすることから始めるのがよいでしょう。 なお、これらの制度を、あえて「不妊治療」のためと理由を会社に伝えなくても利用できるようにすることもぜひご検討ください。例えば、「年5日」までは、自身や家族などの体調不良等の際に取得できる休暇を導入することで、「不妊治療をしていることを知られたくない」方たちも利用しやすくなります。 5 まとめ 皆さんが想像していたよりも、多くの方が「不妊治療で悩まれている」、と感じた方も多数いるのではないでしょうか。本稿を読んで「これは、会社としての支援が必要だ!」と感じた人事担当者の方もいると思われます。ただ逆に、「会社がここまでやる必要があるのか」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。 しかしながら、自社の社員に長く勤めてもらいたいと考えるなら「不妊治療」に限らず、多様な働き手のライフステージに寄り添う必要があります。「育児」、「介護」や「自分の体調不良」、最近は、リスキング(仕事能力の再開発、再教育)なんてこともあり「長期留学」といったことも考えられ、様々なライフステージを迎えることが考えられます。これらのどのライフステージを迎えたとしても、働き続けられる、お互いの事情を理解し合える職場がこれからは求められるのではないでしょうか。 なお、厚生労働省が行っている「くるみん」認定について、2022年4月1日から「不妊治療と仕事の両立」をしやすい職場環境整備に取り組む会社に対する新たな認定制度がスタートしています。 また、不妊治療のために利用可能な休暇制度・両立支援制度について、導入し、利用しやすい環境整備に取り組み、不妊治療を行う労働者に休暇制度・両立支援制度を利用させた中小企業事業主を支援する助成金として両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)があります。 制度整備の際は、これらの会社を支援する制度の活用もご検討ください。 (了)
労働基準関係
労務
労務・法務・経営
給与計算の質問箱 【第36回】「令和5年に予定されている給与計算に関する改正」
給与計算の質問箱 【第36回】 「令和5年に予定されている給与計算に関する改正」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 令和5年に予定されている給与計算に関する改正についてご教示ください。 A 令和5年4月1日から給与計算に関しては、以下の改正が予定されている。 * * 解 説 * * 1 中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引上げ(25% ⇒ 50%) 中小企業とは、次の図表の❶又は❷のいずれかを満たす企業をいう。 〈中小企業の範囲〉 (出典:厚生労働省リーフレット「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」以降の図表も同様) 令和5年4月1日から、中小企業において月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられる。月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の支払いに代えて、有給休暇(代替休暇)を付与することもできる。 また、月60時間を超える時間外労働を深夜(22時~5時)に行わせる場合、「深夜割増賃金率25% + 時間外割増賃金率50% = 75%」の割増賃金率になる。 なお、月60時間の時間外労働時間には、法定休日に行った労働時間は含まれない。法定休日労働の割増賃金率は、現行の35%のままである。 〈割増賃金率の引上げ〉 2 給与のデジタル払いが可能に 令和5年4月1日から資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができるようになる。厚生労働省で指定申請を行った事業者の審査を行い、基準を満たしている場合には、その事業者を指定資金移動業者として認める。 会社と労働組合(労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との間で給与のデジタル払いの対象となる労働者の範囲や取扱指定資金移動業者の範囲等を記載した労使協定を締結する。 労働者は給与のデジタル払いを希望する場合には会社に同意書を提出し、同意書に記載する支払い開始希望時期以降、給料を資金移動業者の口座で受け取ることができるようになる。一部を資金移動業者の口座、一部を銀行口座で受け取ることもできる。なお、現金化できないポイントや仮想通貨での給与の支払いは認められていない。 (了)
労務・法務・経営
法務
税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第36回】「鑑定評価における土地建物一体減価という発想」~容積率未消化の建物が建つ不動産の価値は下がる?~
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第36回】 「鑑定評価における土地建物一体減価という発想」 ~容積率未消化の建物が建つ不動産の価値は下がる?~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 対象不動産の現実の利用状況が周辺環境に適合していない(例えば、周囲は住宅であるが対象建物は遊興施設である等)という理由で土地建物一体としての不動産の価値が下がるという捉え方は、従来から鑑定実務においてもごく一般のこととして受け止められてきました。 しかし、今日では不動産の保有価値だけでなく利用価値という側面に関心が向けられており、環境に適合して建築されている建物でも、その地域で指定された容積率をはるかに下回ったものとしてしか利用されていない場合には、土地建物一体の価値が下がるという発想が取り入れられています。鑑定評価ではこれを「容積率未消化による一体減価(市場性の減退)」と呼んでいますが、今回は筆者が実際にこのような物件を評価した例を取り上げます。 2 容積率未消化による一体減価が必要となった事例の概要 本件建物(一棟の建物)は鉄筋造3階建てであり、法人が一社で所有しています。なお、1階から3階まで自社で事務所として使用しています。 物件の所在する地域の状況及び対象不動産の状況は以下のとおりです。 (1) 近隣地域の状況 ① 近隣地域の範囲 近隣地域は、通称「〇〇通り」(都道)に沿い、〇〇区〇〇一丁目の交差点から南に約200mまでの範囲で下記⑤の公法上の制限を受ける地域が対象範囲です。 ② 街路条件 幅員約25mの都道に沿い、系統・連続性は良好です。 ③ 交通事情 地下鉄〇〇線「〇〇」駅より近隣地域の中心まで南東方へ約600mの距離にあります。 ④ 地域の特性 近隣地域は、中層事務所と中層共同住宅が混在する商業地域ですが、地域要因に格別の変動要素はないため、当分の間、現状を維持すると予測されます。 ⑤ 公法上の規制 商業地域、指定建蔽率80%、基準建蔽率100%(商業地域かつ防火地域内で、耐火建築物の場合)。指定容積率500%、基準容積率500%、防火地域、35m高度地区。最低限高度地区(建築物の高さの最低限度は原則7m)。 ここに登場する「指定」とは都市計画で指定された建蔽率や容積率の限度を指し、「基準」とは建築基準法の規定を個々に適用した場合に許容される建蔽率や容積率の限度を指しています。 ⑥ 標準的な画地 近隣地域において標準的な利用形態と認められる土地のイメージは、都道に一面が接し、規模120㎡程度の画地(間口10m、奥行12m)と判断されます(いわゆる中間画地です)。 ⑦ 標準的使用 近隣地域においては6階建て程度の中層事務所及び中層共同住宅の敷地としての土地利用が標準的といえます。 ⑧ 最有効使用 上記状況を踏まえた場合、近隣地域での最有効使用(土地の価値を最も発揮できるような使用方法)は中層事務所又は中層共同住宅の敷地であるといえます。 (2) 対象不動産の状況 ① 土地 ② 建物 〈イメージ図:容積率未消化の不動産〉 ③ 建物及びその敷地としての最有効使用 既に述べた近隣地域での標準的使用の状況を踏まえ、対象不動産の建物及びその敷地としての最有効使用を6階建て程度の中層事務所の敷地と判断しました。 (3) 一体減価の織り込み 本件においては、容積率未消化により対象不動産は最有効使用の状態にないことから、土地建物を一体とした場合の複合不動産としての減価を、最有効使用の状態の実現に係るコスト等を勘案して土地建物の一体価格の10%と査定しています。 3 一体減価の根拠をどこに求めるか 本件のように土地建物一体として減価を行うことの根拠は以下のとおりです。 (1) 「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」(国土交通省) ここでは、次の考え方が示されています。 (2) 「鑑定実務Q&A〈第7集〉」(平成15年3月 社団法人東京都不動産鑑定士協会研究委員会)17頁 ここでは、次の考え方が示されています。 4 まとめ 一体減価という捉え方は税理士の皆様には馴染みが薄いかも知れません。しかし、土地建物の価格を物理的な視点から単純に積み上げて求めただけでは、それが市場の実態を的確に反映し切れないケースも生じます。今回紹介したのはその一例です。 このことは、容積率を消化し切れていない(=床面積を多く確保できるにもかかわらず、有効利用ができていない)不動産を仮に賃貸しようとした場合、周辺にあり容積率をほぼ消化している建物と比べて少ない賃貸料しか得られない状況を思い浮かべれば理解し得ることと思われます。 (了)
読み物
連載
〈エピソードでわかる〉M&A最前線 【第8回】「調剤薬局業界のM&A」-会社譲渡により夢を叶える-
〈エピソードでわかる〉 M&A最前線 【第8回】 「調剤薬局業界のM&A」 -会社譲渡により夢を叶える- 株式会社日本M&Aセンター 調剤薬局業界専門チーム 太田 昇真 提携統轄事業 戦略コンサルタント営業部 林本 和也 【第8回】は、現在、最もM&Aが活発な業界の1つである調剤薬局業界について、M&Aにて会社の譲渡により夢を叶えられた売り手社長の事例を、調剤薬局業界の動向に触れながら紹介します。 【調剤薬局業界の動向】 今回は、譲渡企業の社長が40代と若くしてM&Aを決断された理由、また、すでに100店舗展開している譲受会社が1店舗のみを経営している譲渡会社を引き継いだ理由について、両者のM&A後のエピソードと合わせて、譲渡側・譲受側のそれぞれの視点に立ち、メリットに焦点をおいて紹介します。 また、調剤薬局業界のM&Aは通常、株価がEBITDAの3倍程度であるところ、EBITDAの5倍程度まで高く評価され、かつ、価格交渉においてスムーズに進んだ理由についても紹介します。 【譲渡側・譲受側のデータ】 ※秘密保持の観点から、実際の事例とは一部内容を変更しております。 1 譲渡側の視点~事業成長の意欲があるにも関わらず成長実現が困難~ A社は、関西に処方元を複数持つ高収益な調剤薬局1店舗を運営する企業です。譲渡側のオーナー社長(以下「X氏」とします)は創業者でありながらまだ40代前半と若く、業績も非常に好調でした。 元々、X氏は1店舗の運営に留まることなく20店舗以上の事業展開を見据えて、自分自身は経営者として現場で薬剤師業務を行わないで済むような体制にすることを目標とし、30代で起業しました。 しかし、薬剤師の採用難や、度々行われる調剤報酬改定への対応、金融機関との融資交渉など、自社単独では超えられない壁に直面する中で、創業から約10年経過しても日々現場で薬剤師業務を行っている現状に閉塞感を感じていらっしゃいました。また、店舗数も1店舗から増やせずにいました。調剤薬局業界は市場が成熟しきっており、今後業界再編がさらに加速していくであろうという先行き不安を以前から強く危機感として持っていたこともあり、以前から面識があった日本M&Aセンターに相談し、他社との資本提携についての検討を始めました。 2 譲受側の視点~次世代の経営幹部の育成が課題~ B社は当時100店舗を全国展開する調剤薬局企業です。業績も順調でさらに事業を拡大できる薬剤師の数・資金的な余裕は十分にあるものの、創業社長(以下「Y氏」とします)への依存度が高く、組織の急速な事業拡大に対して次の経営幹部となる人材がいないという経営課題がありました。 3 それぞれのメリット (1) 譲渡側のメリット A社のM&A譲受候補先として、実際に大手の会社も手を挙げてくれましたが、大手の会社へのM&Aを実行して仮に社長として残ったとしても、結局1店舗の会社のオーナーという状況は変わりません。従来どおり現場に出る働き方に縛られ、結局できることは限られてしまうため、譲渡後の自分の理想の働き方のイメージが湧かず、譲渡の決断には至りませんでした。 そんな中、譲受候補企業であったB社のY氏は、A社創業者であるX氏の将来を見据えた経営判断ができる決断力、優良店舗を育てあげてきた運営力・考え方を評価して、M&A後に譲受企業のB社の経営に参画してもらいたいとのオファーを出しました。そういうことであれば、X氏としても創業時に思い描いていた理想の働き方と変わらない大きなやりがいを得ることができると判断してM&Aを実行する決断に至りました。 結果的に、元々1店舗のオーナーだったX氏は、株式を売却後も譲渡企業の社長を継続しつつ、100店舗規模の企業の西日本統括という役職・立場に就くことになりました。ビジネスマンとしての視座も高まり、自社単独では困難だったダイナミックな事業展開を行う素地もでき、夢を叶えることができました。 (2) 譲受側のメリット B社はY氏のオーナーワントップの会社で、Y氏の右腕となるような人材が社内にいないというのが経営課題でした。 A社の地域性とその事業内容、そしてX氏の能力は、B社の経営課題を解決するためのM&Aに最適なお相手であり、これからのさらなる事業展開にアクセルを踏むことができるようになりました。 X氏に経営に参画してもらい、事業の一部を任せることで、自社単独では育成が困難だった次世代の経営幹部となるような人材の獲得を実現したのです。 本事例においては、双方の経営上の課題がM&Aを実施することで相互に補完される形で無事成約したものでしたが、M&Aにおいて重要なポイントとなる株価算定については、どのように行われたのか、また調剤薬局業界においては一般的にどのように算定されるのかについて解説していきます。 ① 定性面について 調剤薬局業界のM&Aでは、企業価値を算出するためにEBITDAなどの複数の指標を活用した評価方法である「EBITDAマルチプル」で株価算定を行います。定量面で計算方法が決まっている相続税評価と異なり、M&A株価は定性面も踏まえた上でお相手によって全く変わり、具体的には下図の倍率決定要素等が加味されて決定されます。 本事例においては、主要処方元の医師の年齢が40代と若く、処方箋枚数も80枚/日と多く、かつ、集中率も70%を下回っていたため、結果としてはEBITDAの約5倍と高く評価されました。 〈倍率決定要素のイメージ〉 ② 定量面について 本事例においては、株価算定へ影響を与える定量的な要素について、事前に譲受側への提案の中で明確にしていたことから双方の認識相違がなく、後々の論点とはならずスムーズに交渉が進みましたが、以下参考までに論点となりやすい代表的なものについて紹介します。 (i) 在庫について デューデリジェンス(買収監査、以下「DD」)や譲渡時の棚卸により、使用期限が切れている不良在庫の存在が発覚するケースがあるため、留意する必要があります。 (ⅱ) 仕入れの薬価差改善について 株価評価において、仕入れの薬価差益改善額を、EBITDAに織り込むべきではないとする公認会計士や監査法人なども多いのが実情です。買い手と売り手の間で事前に認識のすり合わせを行っておくことが望ましいです。 (ⅲ) 不動産について EBITDAマルチプルの場合、調剤薬局業界のM&Aにおいては別途評価を行っているケースが多いです。また、非事業用資産をオーナーが買い取る場合や退職金の一部とする場合など、時価評価損益が発生する場合は、税効果の認識を行う必要があります。 (ⅳ) ネットキャッシュ(余剰資産)について 調剤薬局業界のM&Aでは基本的に、「ネットキャッシュ=現金及び現金同等物-有利子負債」として評価する考え方が主流ですが、公認会計士や監査法人などによっては「ネットキャッシュ=現金及び現金同等物-有利子負債-運転資金(ミニマムキャッシュ)」と考えるケースもあるため、事前に買手と売手の間ですり合わせておくことが必要です。 (ⅴ) 運転資金について 運転資金とは、仕入による買掛金の支払から、調剤報酬の売掛金の入金までの期間のズレに備えた資金のことです。調剤薬局の運転資金の主なポイントとして、調剤報酬の入金はレセプト(調剤報酬請求書)請求後、約2ヶ月後と決まっています。 一方で買掛金の支払期限は長短のズレがあるため、株価調整対象にするか検討する必要があります。例えば、売掛金の入金までの期間が2ヶ月、買掛金の支払期限が1ヶ月の場合、1ヶ月分相当額を株価増額要素とするケースもあります。 (ⅵ) 店舗改修費について 店舗が極端に古い場合や、新規に許認可を取得する際に改修を必要とする場合、費用をあらかじめネットキャッシュの負債項目に入れておくことが株価調整要因の発生を未然に防ぐためにも望ましいです。 (ⅶ) 人件費について 従業員採用の際の紹介手数料、人の補充が必要となる案件(役員が薬剤師として勤務しておりM&A後退任するケースなど)において、買手が派遣会社に支払う紹介手数料をネットキャッシュで調整するかどうかなど、売手との事前のすり合わせが重要です。 4 最後に 調剤薬局業界においては、2020年から2021年にかけては新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、M&Aや新規出店に慎重な姿勢を見せる企業が目立ちましたが、2022年度はポストコロナを視野に入れた事業計画を立てている企業も数多くあります。 今後も業界再編が加速していくことが予想される中、積極的に情報収集をして、自社の強み・弱み、そして将来の展望を事前に整理しておくことが、M&Aの成功のために有効です。 (了)
インタビュー
読み物
《編集部レポート》 近畿税理士会と近畿司法書士会連合会が「事業承継の連携に関する協定」を締結
《編集部レポート》 近畿税理士会と近畿司法書士会連合会が 「事業承継の連携に関する協定」を締結 Profession Journal 編集部 2022年12月9日(金)、近畿税理士会と近畿司法書士会連合会は、「事業承継の連携に関する協定」を締結し、税理士と司法書士が協力して中小企業等の事業承継に取り組む環境を整備することとした。 現在、少子長寿化の進展による人口減少や経営者の高齢化・人手不足が深刻な問題となっており、今後数年で多くの中小企業等が事業承継又は廃業のタイミングを迎えるとみられている。しかし、事業承継を支援する公的機関による様々な取組はあるものの、現状として中小企業等の事業承継対策は進んでいない。 そこで、日常的に経営者と接している税理士と、法務手続の専門家である司法書士が情報を共有し連携することで、中小企業等の円滑な事業承継をより一層支援していくことを目指す。 大阪司法書士会館で行われた「事業承継の連携に関する協定」締結式には、近畿税理士会から4名、近畿司法書士会連合会から5名、日本司法書士会連合会から2名が出席。近畿税理士会・杉田宗久会長と近畿司法書士会連合会・香山恭慶理事長による挨拶の後、「事業承継の連携に関する協定書」の調印が行われた。 近畿税理士会会長 杉田宗久氏(写真右) 近畿司法書士会連合会理事長 香山恭慶氏(写真左) (了)
お知らせ
消費税・地方消費税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 国税庁が「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」を公表~システム修正費用が修繕費又は資本的支出かの法人税法上の取扱いの判断基準を示す~
《速報解説》 国税庁が「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」を公表 ~システム修正費用が修繕費又は資本的支出かの法人税法上の取扱いの判断基準を示す~ 税理士 石川 幸恵 国税庁は、令和4年12月9日、「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」をQ&A形式で公表した。 当該ページは、国税庁ホームページの消費税インボイス制度特設サイトの「Q&A」からもリンクを辿ることができる。 このQ&Aでは、法人が自社の固定資産であるPOSのレジシステム等のプログラムにつき、適格請求書等保存方式に対応するための修正を行った場合に、その修正に要する費用は修繕費か、資本的支出かという法人税法上の取扱いの判断基準を示している。 「修繕費か、資本的支出か」は、法人税基本通達7-8-1で「固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となる」として建物の避難階段などを例示している。 〇法人税基本通達7-8-1 今回公表されたQ&Aでは適格請求書等保存方式に対応するためのシステムの改修につき、修繕費に該当するもの、資本的支出に該当するものを次のように具体的に示している。法人が適格請求書等保存方式に対応するためのシステムの改修を行った場合は、作業指図書等を基に、いずれに当てはまるかを検討することになろう。 (了) ↓お勧め連載記事↓
お知らせ
その他お知らせ
プロフェッションジャーナル No.498が公開されました!~今週のお薦め記事~
2022年12月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.498を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
税務
税務・会計
解説
解説一覧
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第114回】「節税商品取引を巡る法律問題(その8)」
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第114回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その8)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅶ 最近の節税商品取引と租税リテラシー 前回の「Ⅵ 租税法の不知・誤解」では、節税商品取引等の勧誘を受ける側の租税リテラシーのレベルに関する問題について、いくつかの事例を確認した。本節においても引き続きこの点に着目してみたい。 1 節税マンション投資 例えば、いわゆるレオパレス21事件の一つに岐阜地裁令和2年2月28日判決(判例集未登載)がある。高齢者であるAは、レオパレス21(被告)の担当者から、Aが金融機関から融資を受けて所有地上に共同住宅を建築し、被告が同共同住宅を一括して借り上げて転貸するといういわゆるサブリース事業の勧誘を受け、建築した共同住宅を、被告に対し、契約期間30年、当初10年間は賃料額固定(その後は2年ごとに協議)等の約定で賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という。)、被告から賃料(管理費等は控除)を受領していた。 原告(Aの相続人)は、被告が、平成22年頃から、業績回復のため、オーナーに対し賃料の減額等を迫る活動(通称「終了プロジェクト」)を全国的に開始し、手段を選ばず、賃料の減額ありきで、強引に賃料の減額を求めていたところ、被告の担当者は、誤った説明(減額に応じなければ被告が賃貸借契約を解除できる等)をしたり、長時間自宅に居座ったり、威圧的な言葉遣いをしたりして、強引に賃料の減額に応じさせており、現に、Aは、被告の担当者が突然同契約の解約を通告してきたため、やむなく減額合意に応じることになったと主張した。 本件では、かかる減額合意が錯誤によるものであるか否かが争点となった。 被告は、オーナーの節税対策としても活用されることが多いサブリース取引では、「事業の収益性だけが考慮されているわけではない」のであるから、「本件賃貸借契約の期間満了後の事情は、本件において考慮されるべき要素とはなり得ない。」などと主張した。 これらの主張に対し、同裁判所は、本件減額合意が「錯誤により無効である」と判断した。 このように、不動産購入による節税効果が強調される事例は枚挙に暇がない。例えば、確定申告をすればその節税効果も高いなどと、マンション投資のメリットが強調されてマンションの購入が勧誘されるケースにおいて損害賠償請求が争点とされる事例などがある(請求が一部認容された例として、東京地裁平成31年4月17日判決・先物取引裁判例集82号165頁など。請求が認容されなかった例として東京地裁平成28年9月5日判決・判例集未登載など参照)。 一昔前には、いわゆる変額保険訴訟が数百件にものぼったが、同様の事例はその後も頻発しているとみてよかろう。 2 税務署・国税局を名乗るメール 近時、しばしば税務署や国税局などを名乗る偽装メールが横行しているようである。 「税金の滞納があるから、ご連絡ください」などといった趣旨の次のようなメールが国税庁を名乗る発信者から届き、安易にかかるメールを開いてしまうことが危惧されている。このような危険性が広く国民一般に十分に共有されているであろうか。 国税庁は、上記のような偽装メールについて、次のような注意喚起をホームページ等(※)で行っている。 (※) 国税庁「国税局・税務署をかたった不審なメールにご注意ください」〔令和4年11月27日訪問〕 すなわち、「国税局・税務署をかたった不審なメールにご注意ください」とし、「最近、・・・国税局・税務署をかたった不審なメールが送信されております。国税局・税務署では、電子メールで納税に関する催告を行っておりません。指定されたURLをクリックしないようお願いします。」とする。また、「ご不審な点がある場合には、最寄りの税務署(総務課)までお問い合わせください。」ともしており、情報収集にも努めているように思われる。 かような詐欺的な行為に対して、行政が注意喚起を行うことは非常に重要であると思われるが、それ以前の問題として、国民に一定の租税リテラシーがあれば、かような詐欺に騙されることはないのではなかろうか。例えば、上記の例でいえば、自分の納税額がいくら程度であって、それが納付済みであるはずだなどという点についての理解があれば、稚拙な詐欺的行為に翻弄されることはないであろう。 しかしながら、以前、東京税理士会内に設けられた「成人向け租税リテラシー教育検討委員会〔座長:筆者〕」が行った国民向けアンケート調査の結果からして、自分がいくらの所得税を納税しているかをしっかりと認識している者の数は必ずしも多くないということが判然とした。 そのごく一部をここに紹介しよう。 ※ なお、アンケート調査のサンプル数は、一般サラリーマンのみ、年代ごとにサンプル数を確保する方法を採用し、他のカテゴリーより多いサンプルを収集した。すなわち、経営者1,000人、一般社員から部長クラスの給与所得者につき、20代300人、30代300人、40代300人、50代300人、60代300人の合計1,500人、自営業者1,000人の総計3,500人を対象に行った。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (出典) 東京税理士会租税教育推進部「平成30年度 租税リテラシー教育研究報告書」18頁 このように、所得税を納めていることは分かっているが金額までは分からないという者の数が、35.7%にも及んでいるのが現状なのである。 上記の不動産建築に係る勧誘にしても、偽装メールにしても、個々の法的対応などの重要性に加えて、事故防止という意味での予防法学的視角からは、成人の租税リテラシーの底上げが重要であると思われるのである。 3 成人向け租税リテラシー教育の重要性 かような消費者保護ないし投資者保護問題が発生する理由の一つに、消費者ないし投資者側の租税リテラシーの欠如を挙げることができるのではなかろうか。さすれば、「成人向け租税リテラシー教育」としての租税教育が改めて見直されてもよいように思われるのである。すなわち、そこにあるのは、安易なうまい節税話に騙されない「生きる力」の醸成を目的とした成人教育の必要性である。 (続く)
