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《速報解説》 令和9年からの青色申告特別控除65万円について現行適用要件との関係を確認
《速報解説》 令和9年からの青色申告特別控除65万円について 現行適用要件との関係を確認 Profession Journal編集部 既報のとおり令和7年度税制改正では、国税庁長官が定める基準に適合するデータ連携可能なシステムを使用し、かつ、一定の要件に従った保存が行われている電子取引データについて、所得税、法人税及び消費税における重加算税の10%加重の対象から除外するとともに、所得税の青色申告特別控除について控除額65万円が適用できる措置が講じられる。 ここで税制改正大綱の記載では後者(65万円控除)に関し「仕訳帳等につき国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件を満たす電磁的記録の保存等を行っていること(編集部注:いわゆる優良電子帳簿)に代えて、」とされていることから、現行の適用要件(優良電子帳簿・電子申告)との関係が不明とする見解もあったが、今国会(衆議院)にて審議中の税制改正関連法案では改正租税特別措置法(案)25条の2《青色申告特別控除》第4項において、下記〔参考〕のとおり規定されている(下線及び【 】内は編集部による)。 当該改正案第4項では65万円控除の適用要件として、現行法と同様に第1号において電子帳簿保存要件、第2号において電子申告要件の「いずれか」を満たす場合に適用できるとしたうえで、第1号をイ(優良電子帳簿要件)、ロ(データ連携システム要件:新設)の「いずれか」に該当する場合に限るとしていることから、実質的に当該ロが現行要件に加わるかたちとされている(要件ロの詳細については財務省令で定められる模様。なお適用は令和9年分以後の所得税より((税制改正法案 附則第31条)))。 また、新要件が法人税、所得税、消費税における重加算税の10%加重の対象から除外される規定については、改正電帳法(案)8条5項及び改正消法(案)59条の2においてそれぞれ規定されている(適用は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来するものから(税制改正法案 附則第61条))。 (了)
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《速報解説》 防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについてASBJより補足文書が公表される ~税制改正法案成立を想定し法定実効税率の算定式を示す~
《速報解説》 防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて ASBJより補足文書が公表される ~税制改正法案成立を想定し法定実効税率の算定式を示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025年2月20日、企業会計基準委員会は、補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」を公表した。 これは、改正税法が2025年3月31日までに成立した場合を想定し、主として2025年3月31日に決算日を迎える企業における防衛特別法人税の取扱いを明らかにするものである。 改正税法の成立後、「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」に従い、防衛特別法人税の創設に対応した企業会計基準等の改正を行う予定であるとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 改正税法の概要 2025年2月4日に国会に提出された改正税法の法案によれば、防衛特別法人税が法人税額から500万円を控除した額を課税標準とする税率4%の新たな付加税として創設され、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課される予定である。 2 当期税金に係る影響 防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から課される予定であるため、2025年3月31日に終了する事業年度の決算にあっては、当期税金に係る影響はないと考えられる。 3 税効果会計の適用 改正税法が2025年3月31日までに成立した場合、同日に決算日を迎える企業にあっては、税効果会計の適用における2026年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に際して、防衛特別法人税の影響を反映する必要があると考えられる(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)44項~46項)。 防衛特別法人税については、税効果適用指針46項に掲げる税金には明示されていないものの、法人税に対する付加税として課されるものであるため、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金である法人税等(税効果適用指針第4項(2))に該当すると考えられる。 したがって、改正税法が成立した場合には、法人税、地方法人税及び特別法人事業税(基準法人所得割)と同様に取り扱い、次の算式により法定実効税率を算定することが税効果適用指針の趣旨に適うこととなると考えられる。 (了) ↓お勧め連載記事↓
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日本の企業税制 【第136回】「UTPRの創設と米国大統領令による影響」
日本の企業税制 【第136回】 「UTPRの創設と米国大統領令による影響」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 〇はじめに~税制改正法案の審議状況~ 2025年2月4日、令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律案」が第217回通常国会に提出された。同月14日には衆議院財務金融委員会において、加藤財務大臣から同法案の趣旨の説明を聴取した後、質疑が行われ、法案審議入りとなった。 また、同月18日には、昨年末から中断していた、与党と国民民主党との間のいわゆる「103万円の壁」を巡る協議が再開され、自由民主党から、改正法案に盛り込まれた基礎控除、給与所得控除をそれぞれ10万円ずつ引き上げる措置を見直す新たな提案があった。 その提案は次のとおりである。 翌19日にも三党協議が開かれ、自民党案に対する、公明党、国民民主党の受け止めが示された。両党とも給与収入の水準による適用の区分については否定的な見解を示した。また、今後の物価の上昇等を踏まえ基礎控除等の額を適時に引き上げることを法制化することについては、三党間の方向性の一致が見られた。 なお、20日にも再度三党協議が開かれることとされている。 〇グローバル・ミニマム課税に対応した「UTPR」及び「QDMTT」の創設 一方、今回の改正法案には、国際課税における2つの新たな制度の創設が含まれている。 OECD・G20によるBEPS包摂的枠組み(IF:Inclusive Framework on BEPS)の2本の柱(ピラー1、2)に関する国際合意を踏まえ、グローバル・ミニマム課税への対応として、軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)に対応した「各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税」(改正法法82の11、145の2)及び国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)に対応した「各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税」(改正法法82の19、145の6)である。 これらは、法人の令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税及び国内最低課税額に対する法人税について適用することとされている(改正附則13)。 これらのうちUTPRは、親会社が国外にあり、その子会社が日本にある場合に適用される可能性がある制度であり、すでに「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」(IIR:Income Inclusion Rule)の適用が開始されている日本に親会社がある多国籍企業グループについては、基本的に適用されることはないものと考えられるが、米国の大統領令との関係で、気になる点がある。 〇各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(UTPR)の意義 各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(UTPR)は、特定多国籍企業グループの構成事業体の所在する国において、そのグループの税負担が基準税率(15%)を下回る場合、IIRによる課税後の残余のトップアップ税額があるときに、UTPRを導入している国ごとに、それぞれの国に所在する事業体に課税する仕組みである。 UTPRを導入している国ごとに課税額を配分する必要があり、上記の残余のトップアップ税額を、UTPRを発動する国における構成会社の従業員等の数・有形資産の簿価に応じて算出される割合に基づいて按分することとしている。なお、スタートアップなど、特定多国籍企業グループ等に該当後5年以内の場合や、国際的な事業活動の初期段階にある場合は、課税されない。 この制度は、最終親会社の所在地国においてIIRもしくはQDMTTが法制化されていない場合にその最終親会社に対してIIRによる課税をすることができないという問題を解消するため、その傘下にある兄弟会社や子会社に対して代替的に課税をする仕組みであり、IIRを補完する(バックストップ)措置として位置づけられる。 〇米国大統領令による影響 米国では、トランプ大統領就任直後の本年1月20日に「OECDグローバル・タックス・ディール」という大統領令が出された。 この大統領令では、「グローバル・タックス・ディールに係る前政権によるいかなるコミットメントも、米国議会による立法措置なしに、米国国内では効力を有しないことをOECDに通知する」よう財務長官とOECD米国常駐代表に指示している。 さらに財務長官に対して、通商代表(USTR)と協議の上、諸外国が米国との租税条約を遵守しているかどうか、また、制定済又は制定過程にある税制措置が米国企業に域外適用されたり、又は不均衡な影響を与えたりする規則を設けているかどうかについて調査し、そのような条約違反・租税規則に対して米国が採用又は実施すべき保護措置又はその他の措置の選択肢の一覧を作成し、大統領に提示するよう指示している。 米国ではOECDのUTPRが租税条約違反ではないかという議論があるところであり、日本が今回創設する「各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(UTPR)」が上記の「米国企業に域外適用されたり、又は不均衡な影響を与えたりする規則」に該当するのではないかという懸念がある。 しかも、同日に公表された「米国第一の貿易政策(America First Trade Policy)」という大統領令では、不公正かつ不均衡な貿易への対処のため、内国歳入法第891条に基づき、外国が米国民又は米国法人に差別的又は域外適用的な租税を課しているかどうかを調査することとしている。 内国歳入法第891条によれば、外国が米国法人等に差別的・域外適用的な租税を課していると大統領が認める場合、大統領の権限によりその外国の法人等に対する税率を2倍に引き上げることができるとされている。 (了)
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〔令和7年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】「「戦略分野国内生産促進税制の創設」「交際費等の損金不算入制度の見直しと延長」「少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直しと延長」「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置の延長」」
〔令和7年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】 (最終回) 「「戦略分野国内生産促進税制の創設」 「交際費等の損金不算入制度の見直しと延長」 「少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直しと延長」 「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置の延長」」 公認会計士・税理士 新名 貴則 令和6年度税制改正における改正事項を中心として、令和7年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。 【第1回】は、「賃上げ促進税制の強化」について解説した。 【第2回】は「戦略分野国内生産促進税制の創設」、「交際費等の損金不算入制度の見直しと延長」、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直しと延長」及び「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置の延長」について解説する。 1 戦略分野国内生産促進税制の創設 令和6年度税制改正において、「戦略分野国内生産促進税制」が創設されている。 中長期的な経済成長を牽引する戦略分野(グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、経済安保等)の、国内投資を推進する産業政策競争が世界的に活発化している。このような戦略分野の中で、生産段階でのコストが高いことなどの理由から投資判断が難しい分野を対象に、生産・販売量に応じた税額控除措置を講じることによって、企業の新たな国内投資を引き出すことを目的として創設されたのが「戦略分野国内生産促進税制」である。 具体的な対象分野は、電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ半導体)である。 ① 制度の概要 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法における認定事業適応計画に従って、一定の機械その他の減価償却資産の取得等をし、国内にある事業の用に供した場合に、対象期間(※)の日を含む各事業年度において、一定額の税額控除ができる制度である。 (※) 産業競争力強化法の事業適応計画の認定の日以後10年以内。 ② 適用要件 当該税制を適用するためには、具体的には次の要件を満たすことが必要である。 (※) 事業適応計画に、その計画に従って行うエネルギー利用環境負荷低減事業適応のための措置として、産業競争力強化法における産業競争力基盤強化商品の生産及び販売を行う旨の記載があるものに限る。 ③ 税制優遇措置 産業競争力強化法の事業適応計画の認定の日以後10年以内の日を含む各事業年度において、次のいずれか少ない金額について税額控除ができる。 (※) 既に税額控除の対象となった金額は除く。 ただし、次の金額を税額控除の上限とする。 (※) 半導体生産用資産については20%。 また、4年間(半導体生産用資産については3年)の繰越控除が可能である。 ④ 適用除外措置 所得金額が前事業年度を上回る事業年度(設立事業年度等を除く)においては、次のいずれにも該当しない場合、税額控除を適用できない。ただし、繰越控除の適用は可能である。 ⑤ 適用期間 この改正は、産業競争力強化法の改正法の施行日(令和6年9月2日)から適用される。したがって、令和7年3月期決算申告においては適用が開始されている。 2 交際費等の損金不算入制度の見直しと延長 令和6年度税制改正において、交際費等から除外される飲食費の金額基準が、1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引き上げられた上で、交際費等の損金不算入制度が3年間(令和9年3月31日までに開始する事業年度まで)延長されている。 令和6年度税制改正後の交際費等の損金不算入制度の概要は、次のとおりである。 【交際費等の課税関係】 (注) 1人当たり10,000円以下の飲食費(社内飲食費は除く)は、そもそも「交際費等」から除かれ、損金に算入される。 この改正は令和6年4月1日以後に支出する飲食費から適用されるので、令和7年3月期決算申告には適用されることになる。 3 少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直しと延長 令和6年度税制改正において、一部の法人が適用対象から除外された上で、中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例が2年間(令和8年3月31日までの取得等まで)延長されている。 ① 制度の概要(令和6年3月期まで) 青色申告書を提出する中小企業者等においては、取得価額10万円以上の減価償却資産であっても、30万円未満であれば少額減価償却資産として取得時に全額損金算入できる。 ただし、次の点に注意が必要である。 ② 改正により除外された法人 令和6年度税制改正により、電子申告義務化法人については、常時使用する従業員数が300人を超える法人が適用対象から除外された。 ③ 適用期間 この改正は令和6年4月1日以後に取得・事業供用した資産から適用されるので、令和7年3月期決算申告には適用されることになる。 4 中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置の延長 令和6年度税制改正において、中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付の不適用措置について、2年間(令和8年3月31日に終了する事業年度まで)延長されている。 (連載了)
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〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第69回】「取締役を解任した法人が同業類似法人にふさわしくないとされた事例」
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第69回】 「取締役を解任した法人が 同業類似法人にふさわしくないとされた事例」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 辞任と解任の相違 中小法人の取締役が退任する場合、その多くは辞任という形で退任すると思われる。辞任とは、取締役が自らの意思によってその職を辞すことをいい、これは会社法330条における株式会社と取締役の関係は委任によること、そして民法651条における委任契約はいつでも解除できるとの規定が根拠となっている。 これに対して、解任については、会社法339条にて、株主総会の決議によりいつでも取締役を解任することができると示されている。取締役に重大な落ち度がある場合や、取締役と株主(※1)との関係が何らかの事情で悪化した場合等において、株主総会で取締役を解任する場合もあるだろう。この場合、株主総会決議や定款の定めにて役員退職慰労金について決められていた場合、解任された取締役が損害賠償請求を行うことができる。しかし、その解任に正当な理由がある場合、その取締役は解任による損害賠償請求を行うことができない(※2)。 (※1) 中小法人の多くは所有と経営が一致していることから、主要株主兼経営者とその他の取締役との関係悪化が想定される。 (※2) 最高裁昭和57年1月21日判決(最高裁判所裁判集民事135号77頁)。 この点については、正当な理由があるかどうかについてしばしば争われるが、一般的に「正当な理由」とは、 がこれに当たるとされている。なお、辞任と解任以外の退任には、任期満了・欠格事項への該当・死亡・会社の解散等の事由がある。 これに対し、税務上では、役員が退任した場合、役員退職給与の支給の有無やその損金算入の可否が問題となる。ここで、税理士の実務感覚としては、辞任は円満な退任であり、解任は円満ではない退任であるというイメージが強いのではないだろうか。 役員退職給与が不相当に高額かどうかを判断する際、同業類似法人の選定が行われる。しかし、辞任による退職と解任による退職では、役員退職給与の支給状況が異なるため、損金算入限度額を算定する際に、解任による役員退職給与を支給した法人を同業類似法人に含めるべきかどうかが問題となるだろう(※3)。そこで、この点が問題となった事例を以下に紹介する。 (※3) なお、同業類似法人の選定基準については【第36回】参照。 (2) 取締役を解任した事例について同業類似法人とすることが不適切とされた事例 納税者が役員の辞任を前提に役員退職給与を支給した場合において、解任による役員退職給与を支給した法人を同業類似法人に含めるべきではないと判断した事例として、東京地裁令和2年3月24日判決がある(※4)。なお、この事例は【第29回】で触れている通り、1年当たり平均額法が適切であると示された事例でもある。本稿では、この事例について、辞任と解任に焦点を絞りつつ紹介する。 (※4) 税務訴訟資料270号順号13403、TAINS:Z270-13403。 このように、裁判所は、辞任と解任では役員退職給与の額に大きな違いがあることを示している。これは、納税者の「解任という退職の事情は、退職給与の支給額に影響を及ぼす典型的かつ類型的な事情である」という主張がそのまま認められている形である。 これに対し、課税庁は、 と主張したが、採用されなかった。 この点に関する裁判所の判断は支持できるものであると考えられる。というのも、法人税法施行令70条2号の「退職の事情」について、解任である場合は正当な理由の有無についての判断が求められ、係争に発展するケースも十分想定されることから、中小法人において、辞任による円満退任の場合の方が役員退職給与の額は高額となるという傾向は明白であると思われるためである。 (3) 本件裁判例の意義 本件裁判例は、同業類似法人を選定する際には、退任した役員の退任事由も考慮すべきであることを示しており、実務の参考となる。 納税者が確定申告を行う時点で民間データベースによる同業類似法人の選定を行う場合、その際に退任した事由を限定できるのであればそれを活用するべきである。そして、仮に課税庁と係争に発展した際には、課税庁が選定した同業類似法人についても、解任による事例が含まれていないかを確認すべきであるといえるだろう。 (了)
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相続税の実務問答 【第104回】「受贈財産の評価が誤っていた場合の相続時精算課税の特別控除額の是正」
相続税の実務問答 【第104回】 「受贈財産の評価が誤っていた場合の 相続時精算課税の特別控除額の是正」 税理士 梶野 研二 [答] 相続時精算課税の特別控除額は、贈与税の期限内申告書に適用する控除額を記載した場合に限って適用することができます。そのため、あなたが行う修正申告では、A社の株式600株の正しい評価額1,900万円から、期限内申告書に記載した特別控除額1,500万円を控除した残額400万円の20%(一律税率)である80万円の贈与税が算出されることとなります。 ただし、特別控除額を少なく記載してしまったことにやむを得ない事由があったと認められる場合には、修正申告において適用される特別控除額を是正することができます。 この場合の修正申告書の記載は、次のとおりとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続時精算課税の特別控除 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、基礎控除額を控除した後の贈与税の課税価格(注)(令和5年以前の贈与にあっては、相続時精算課税に係る基礎控除額の控除はできません)から、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除します(相法21の12①)。 (注) 相続時精算課税に係る贈与税の課税価格とは、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産について、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額の合計をいいます(相法21の10)。 この特別控除額の控除は、贈与税の期限内申告書に、控除を受ける特別控除額、前年以前にこの特別控除額の控除した金額がある場合にはその控除した金額及び財務省令で定める一定の事項(注)の記載がある場合に限って適用することができることとされています(相法21の12②)。 (注) 財務省令で定める記載事項は、次のとおりです(相規12)。 ① その年分のその特定贈与者に係る贈与税の課税価格、相続時精算課税に係る基礎控除額及び贈与税額その他の贈与税の額の計算に関する明細 ② 相続時精算課税選択届出書の提出をした税務署名及びその提出年分 ③ 既に当該特定贈与者からの贈与により取得した財産について相続時精算課税に係る特別控除額の控除をした金額がある場合には、当該控除を受けた年分及び当該控除を受けた年分の贈与税の申告書を提出した税務署名 ④ その他参考となるべき事項 したがって、贈与税の期限内申告書に特別控除額の記載がない場合には、原則として贈与税の申告書の提出期限後の手続きにおいてこの特別控除を適用することはできませんし、記載した金額が過少であったとしても、贈与税の申告書の提出期限後にその金額を増額することはできません。 2 贈与税の申告書の提出期限を過ぎた後に特別控除額を増額することの是非 上記1のとおり、各年の贈与税の課税における相続時精算課税に係る特別控除額は、贈与税の期限内申告書に記載した金額が限度となります。 しかしながら、税務署長は、相続時精算課税に係る財産について、適用する特別控除額の記載がない期限内申告書の提出があった場合において、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があった場合に限って特別控除額の控除を適用することができるとされています(相法21の12③)。 この適用する「特別控除額の記載がない期限内申告書」には、特別控除額の記載はあるものの、控除可能な金額の全額が記載されていなかった場合も含まれると考えられます。 また、税務署長が「やむを得ない事情があると認めるとき」に該当するかどうかについては、事案ごとの事実関係等に基づいて個別に判断されることとなります。 (注) この「やむを得ない事情があると認められるとき」の取扱いは、贈与税の期限内申告書の提出があった場合に限り認められるものです。期限内申告書の提出がなかった場合には、その後、期限後申告等において、相続時精算課税に係る特別控除額の控除は認められません(相法21の12③)。 3 特別控除額を増額する手続き それでは、やむを得ない事情により贈与税の期限内申告書に記載した相続時精算課税に係る特別控除額が過少となっていた場合において、その年に適用する特別控除額を増額するためにはどのような手続きをとることができるのでしょうか。 特別控除額を増額したとしても贈与税額が新たに発生し、又は贈与税額が増加することとなるのであれば、修正申告書を提出することができます。しかしながら、特別控除額を増額したとしても、なお贈与税額が発生しない場合に、修正申告書を提出することができるかどうかについて、疑問が生じるかもしれません。 この点、国税通則法は、納税申告書を提出した者は、一定の事由が生じた場合に、その申告について更正処分があるまでは、その申告に係る課税標準等又は税額等を修正する修正申告書を税務署長に提出することができると定め(通法19①)、修正申告書を提出することができる場合として、一般的な「先の納税申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に不足額があるとき」に加え、「先の納税申告書に記載した純損失等の金額が過大であるとき」を掲げています。 そして、この「純損失等」には、「相続税法第21条の12《相続時精算課税に係る贈与税の特別控除》の規定により同条の規定の適用を受けて控除した金額がある場合における当該金額の合計額を2,500万円から控除した残額」が含まれるとされているところです(通法2六ハ(3))。 つまり、贈与税の期限内申告書に記載した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額が過少に評価されていたことから、適用した特別控除額もそれに見合う額としていましたが、当該財産の価額を正しく評価したことにより、贈与税の課税価格が上昇し、それに伴い適用する特別控除額を増額することになれば、必然的に翌年以降に繰り越される特別控除額が減少することとなりますので、新たに贈与税額が発生しないとしても贈与税の修正申告書を提出することができることとなります。 4 ご質問の場合 あなたは、相続時精算課税を適用した贈与税の申告書を提出期限内に提出し、その申告において、お父様から贈与により取得した株式の価額から相続時精算課税に係る特別控除額を控除する旨を記載しています。しかし、最近になって、その株式の評価額に誤りがあり、正しい評価額に基づいて申告をしたならば、適用することのできる特別控除額は、期限内申告額よりも大きい金額であったとのことです。 あなたが、贈与を受けた株式の価額を過少に評価し、その結果、相続時精算課税に係る特別控除の適用額が過少になっていたことについて、やむを得ない事情があると認められる場合には、正しい評価額により計算した贈与税の課税価格に見合う特別控除額を適用し、翌年以降に繰り越される特別控除額を期限内申告書に記載した金額から減額する修正申告書を提出することができます。この修正申告書を提出する際には、「やむを得ない事情」についての説明資料を添付すべきでしょう。 お尋ねの場合には、このような修正申告書を提出することにより、納付すべき贈与税額は算出されないこととなります。 (注) 修正申告において、相続時精算課税に係る特別控除額を増額しない場合には、期限内申告書に記載した「翌年以降に繰り越される特別控除額」を翌年以降のお父様からの贈与に適用することができます。したがって、今後も、お父様からの贈与が見込まれるのであれば、適用する特別控除額を期限内申告書に記載した金額のままとし、納付すべき贈与税額を算出したうえで、「翌年以降に繰り越される特別控除額」を期限内申告書に記載した額と同額とする修正申告を行うことも選択肢としてはあり得ます(この場合、加算税及び延滞税の負担も考慮する必要があります)。 (了)
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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第65回】「みずほ銀行事件(地判令3.3.16、高判令4.3.10、最判令5.11.6)(その1)」~旧租税特別措置法66条の6第1項、旧租税特別措置法施行令39条の16第1項・2項1号~
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第65回】 「みずほ銀行事件 (地判令3.3.16、高判令4.3.10、最判令5.11.6) (その1)」 ~旧租税特別措置法66条の6第1項、 旧租税特別措置法施行令39条の16第1項・2項1号~ 税理士 松田 祐弥 1 関連法令等 (1) 租税特別措置法66条の6第1項 (2) 租税特別措置法施行令39条の16(内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額の計算等) ※下線筆者 2 事件の概要 (1) 概要 本件は内国法人であるX(原告・控訴人・被上告人)が、平成27年4月1日から同28年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」)の法人税及び地方法人税(以下「法人税等」)の申告をしたところ、処分行政庁から租税特別措置法(以下「措置法」)66条の6第1項の規定(以下「本件委任規定」)により、ケイマン諸島で設立されたXの子会社B及びC(以下「本件各子会社」)の課税対象金額に相当する金額が、Xの本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたものである。 Xは、本件事業年度の法人税等について更正の請求をしたことについても、処分行政庁から更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」)を受けた。そこで国であるY(被告・被控訴人・上告人)を相手に、上記各増額更正処分(後の各減額更正処分により一部取り消されたもの)の一部及び上記各賦課決定処分並びに本件各通知処分の取消しを求めた(※1)。 (※1) 増額更正処分後の更正の請求と通知処分の取消しの訴えの争点について本稿では扱わないものとする。 (2) 事実関係 本件各子会社は、平成20年にケイマン諸島の法令に基づき設立された外国法人で、Xに係る特定外国子会社等であった。Aは同年にケイマン諸島の法令に基づいて設立された法人であり、その発行する普通株式の全部をXの親会社である株式会社Mグループが有していた。Aは平成20年12月29日、額面1億円の優先出資証券3,550口(以下「A優先出資証券」)を発行し、投資家に販売した。本件各子会社は同日、併せて額面1億円の優先出資証券3,550口(以下「本件優先出資証券」)を発行し、Aは、A優先出資証券の発行により調達した資金を原資として本件優先出資証券の全部を購入した。本件優先出資証券の保有者は原則として普通株主に優先して配当受領権を有する一方、議決権を有しないものとされていた。 本件各子会社は、同日、本件優先出資証券の発行により調達した資金を原資としてXに対し劣後ローン(以下「本件劣後ローン」)により金銭を貸し付けたところ、本件劣後ローンの利息の発生期間の終期は、本件優先出資証券及びA優先出資証券に係る配当の支払い日の前日とされていた。本件劣後ローン利息は、ほぼ全て本件優先出資証券の配当に当てられ、本件各子会社に利益が留保されたり、本件各子会社の発行する普通株式に配当がされたりすることは予定されていなかった。 本件各子会社は、平成27年6月30日、Xから本件劣後ローンの全額の返済を受けたうえで、これを原資として本件優先出資証券に係る資金及び配当金をAに送金し、本件優先出資証券を償還した。この結果、本件各子会社の平成26年12月30日から同27年12月3日までの事業年度(以下「本件各子会社事業年度」)の終了の時における発行済株式等は、Xが有する普通株式のみとなった。 Xは、本件各子会社の本件各子会社事業年度終了の時における発行済株式等のうちXの有する本件各子会社の請求権勘案保有株式等の占める割合(以下「本件保有株式等割合」)は0%であり、本件各子会社事業年度における課税対象金額は0円であるとして、本件事業年度に係る法人税等の申告をした。 処分行政庁は平成29年11月に、Xに対し、本件保有株式等割合は100%であり、本件各子会社の適用対象金額の全額が課税対象金額となるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。その後、処分行政庁は令和元年7月にXに対し上記各処分に係る法人税等の各減額処分及び過少申告加算税の各変更決定をした(以下「本件各増額更正処分」。各変更決定により一部が取り消された後の各賦課決定処分と合わせて「本件各増額更正処分等」とする)。 〈図表1:本件資金調達スキーム〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 〈図表2:時系列〉 3 争点 本件は、①「外国子会社が請求権の内容の異なる株式等を発行している場合」の判断の時期、②内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額の計算等について定める措置法施行令39条の16第1項(以下「本件規定」)が本件委任規定の「政令で定めるところにより計算した金額」という政令委任の範囲を逸脱したものであるかどうかが争点となった。 ((その2)へ続く)
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リース会計基準を学ぶ 【第3回】「リースの識別」
リース会計基準を学ぶ 【第3回】 「リースの識別」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、リースの識別について解説する。 リース会計基準における「リースの識別」は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)では置かれていなかった規定である(リース適用指針BC165項)。 「リースの識別」の規定に従って、契約がリースを含むか否かを判断することになるので、当該規定は、リースに関する会計処理を行うにあたって重要なプロセスであると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 契約の締結時におけるリースの識別 リース会計基準では、「リース」を次のように定義している(リース会計基準6項)。 このように、「リース」とは、「契約又は契約の一部分」とされており、リースの識別の判断に際しては、契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断するとされている(リース会計基準25項)。 リースの識別に関する規定の概要は、次のとおりである(リース会計基準25項~30項、リース適用指針5項~16項)。 Ⅲ リースの識別の判断 契約がリースを含むか否かを判断するにあたり、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含むとされている(リース会計基準26項)。 つまり、契約は、①資産が特定され、かつ、②特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合に、リースを含むと判断される(リース会計基準26項、リース適用指針5項)。 このため、リースの識別の判断に際しては、次の2つを理解することがポイントになると考えられる。 前述のとおり、「リースの識別」は新たに規定されたものであり、理解が難しいものと思われる。 また、以下に記載するように、リースの識別の判断に際しては、多くの要件を検討する必要がある。 リース適用指針は、下記のように「[設例1]リースの識別に関するフローチャート」を設けて、リースの識別の判断に資するように工夫されており、リース会計基準を実務に適用する際には、当該フローチャートを利用することが便利であると考えられる。 (※) ASBJホームページより 1 資産が特定されているかどうかの判断 資産は、通常は契約に明記されることにより特定される(リース適用指針6項)。 ただし、資産が契約に明記されている場合であっても、次の(1)及び(2)のいずれも満たすときには、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当しない(リース適用指針6項)。 リースの識別において、「借手」及び「貸手」の用語を使用せずに「顧客」及び「サプライヤー」という用語を使用しているのは、リースの識別の判断の段階は契約がリースを含むか否かを判断する段階であり、契約がリースを含まない場合があるためである(リース適用指針BC9項)。 「顧客」及び「サプライヤー」は、リースを含む場合には、それぞれ「借手」及び「貸手」に該当することになる(リース適用指針BC9項)。 2 契約に明記されているかどうか 前述のとおり、資産は、通常は契約に明記されることにより特定される(リース適用指針6項)。 IFRS第16号「リース」では、資産が契約に明記されない場合でも黙示的に定められることによって特定され得るとの定めがあるが、リース適用指針は当該定めを取り入れなかった(リース適用指針BC10項)。 これは、当該定めを置かなくとも、顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、顧客が当該資産の使用を指図する権利を有している場合には、資産が契約に明記されていなくとも事実と状況によりリースが含まれることが明らかであるときがあり、このときにはリースの識別に関する適切な判断がなされると考えられるためであると説明している。反対に、リースが含まれていないことが明らかな場合にまでリースの識別の判断を行う必要はないと考えられるとしている(リース適用指針BC10項)。 企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等に対する「主なコメントの概要とそれらに対する対応」のNo.56は、役務提供契約に含まれているリースの識別についてのコメントである。 当該コメントに対して、企業会計基準委員会は、契約の中に実質的に資産の使用の対価が含まれる場合で当該資産の使用を借手が支配しているときには、契約の実質を優先し、リースとして識別することが借手の経済実態を忠実に表現することになると考えられると述べている。 3 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断 特定された資産の使用期間(リース適用指針4項(1))全体を通じて、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他方の当事者(顧客)に、資産の使用を支配する権利が移転する(リース適用指針5項、BC9項)。 4 使用を指図する権利 「使用を指図する権利」に関して、顧客は、次の(1)又は(2)のいずれかの場合にのみ、使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有している(リース適用指針8項)。 5 その他の留意事項 「リースの識別」の規定の適用により、これまで「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられている(リース適用指針BC165項)。 リース会計基準等の開発に際して、次の契約についても審議されたが、いずれの契約においてもサービスの要素を区分した後に、リースの定義を満たす部分が含まれる場合があるとし、当該部分についてリースの会計処理を行うことについて記載されている(リース会計基準BC31項)。 「設例」では、「[設例3]小売区画(特定された資産)」、「[設例5]ネットワーク・サービス(使用を指図する権利)」の例などが示されている。また、「Ⅱ 借手のリース期間」の設例([設例8-1]~[設例8-5])であるが、普通借地契約及び普通借家契約に関する設例も示されている。 (了)
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給与計算の質問箱 【第62回】「同月得喪の社会保険料」
給与計算の質問箱 【第62回】 「同月得喪の社会保険料」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 1月1日にA(18歳)とB(25歳)が当社に入社しましたが、どちらも1月10日に退職しました。 当社は末日締めの翌月25日支給で給料計算を行っています。AとBの1月分の給料(1月31日締め2月25日支給)から社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は控除するのでしょうか。 A 控除する。なお、AとBが退職後、1月中に他社へ入社した場合及び1月中は無職だった場合の取扱いについても以下で解説する。 * * 解 説 * * 1 同月得喪の社会保険料 社会保険の資格取得日は入社日の1月1日、資格喪失日は退職日の翌日の1月11日である。社会保険料の支払期間は、資格取得日の属する月から資格喪失日が属する月の前月までである。資格取得日と資格喪失日が同じ月である同月得喪の場合、資格喪失日の属する月の前月は存在しないが、その月の社会保険料は発生することとされている。 したがって、1月分の社会保険料は発生するので、1月分の給料から健康保険料と厚生年金保険料を控除する。 2 退職後、1月中に他社へ入社して社会保険に加入した場合 例えば、1月10日に当社を退職し、1月20日に他社へ入社して社会保険に加入した場合、資格取得日が1月20日となり、他社においても1月分の社会保険料が発生する。他社の給料計算が末日締め翌月25日支給の場合、1月分の給料(1月31日締め2月25日支給)から社会保険料を控除する。 1月分の社会保険料を当社と他社で二重に支払うことになるが、健康保険料と厚生年金保険料で取扱いが異なる。健康保険料は二重払いのままである。 一方、厚生年金保険料は先に資格喪失した当社の厚生年金保険料の納付は不要とされる。当社が1月分の社会保険料を納付後、年金事務所から厚生年金保険料の還付のお知らせが当社へ届き、当社の銀行口座へ1月分の厚生年金保険料が還付される。その後、当社から退職者したAとBへ1月分の給料から控除した厚生年金保険料を還付する。 3 退職後、1月中は無職だった場合 A(18歳)とB(25歳)で取扱いが異なる。国民年金は日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満で厚生年金保険に加入していない者が加入することになっている。 Aは、1月10日に退職し、1月11日~31日は無職だった場合、国民年金に加入する義務はなく、上記2の厚生年金保険料の還付はされない。 Bは、1月10日に退職し、1月11日~31日は無職だった場合、1月11日に国民年金に加入し、1月分の国民年金保険料を納付する。また、上記2の厚生年金保険料の還付がされる。 (了)