件すべての結果を表示
会計
税務・会計
解説
解説一覧
財務会計
開示関係
開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A 【第29回】「継続企業の前提に関する注記」
開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第29回】 「継続企業の前提に関する注記」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 Question 当社は連結計算書類の作成義務のある会社です。連結注記表及び個別注記表における継続企業の前提に関する注記について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 連結注記表においては、連結会計年度の末日において、当該株式会社が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、次の事項の記載が必要となります。 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由 当該重要な不確実性の影響を連結計算書類に反映しているか否かの別 なお、個別注記表の場合は、上記「連結会計年度」を「事業年度」、「連結計算書類」を「計算書類」と読み替えて注記することが求められます。 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)では、連結注記表、個別注記表それぞれ継続企業の前提に関する注記の記載例は掲載されておらず、記載上の注意のみ掲載されています。 【連結注記表】 【個別注記表】 2 注記事項の解説 (1) 継続企業の前提に関する注記の全体像 連結計算書類の作成義務のある会社を前提とした場合、連結注記表・個別注記表で記載すべき継続企業の前提に関する注記事項は次のとおりです(会社計算規則第100条)。 継続企業の前提に関する注記は、他の注記のように、連結注記表で記載がある場合に個別注記表での記載を省略できるといった定めはないため、該当する場合は、連結注記表に記載がある場合であっても個別注記表でも記載が必要となることに留意が必要です。 (2) 注記事項の解説 財務諸表は、通常、継続企業を前提として作成・公表されているため、財務諸表に計上されている資産及び負債は、将来の継続的な事業活動において回収又は返済されることが予定されています。 しかし、企業は様々なリスクにさらされながら事業活動を営んでいるため、継続企業を前提とすることが適切でない場合があり、経営者が継続企業の前提に関して評価した結果、期末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する事項を注記することが必要となります。 なお、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」によると、例えば、以下のような項目が考えられます。 それでは、実際の注記を見ていきましょう。 [津田駒工業株式会社 2023年11月期] ① 連結注記表 ※津田駒工業株式会社「第113回定時株主総会 その他の電子提供措置事項(交付書面省略事項)」3頁より抜粋。 ② 個別注記表 ※津田駒工業株式会社「第113回定時株主総会 その他の電子提供措置事項(交付書面省略事項)」18頁より抜粋。 * * * 次回の第30回(最終回)は、「連結配当規制適用会社」をテーマに解説します。 (了)
労務・法務・経営
経営
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例99】オリンパス株式会社「代表執行役の異動について」(2024.10.28)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例99】 オリンパス株式会社 「代表執行役の異動について」 (2024.10.28) 公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、オリンパス株式会社(以下「オリンパス」という)が2024年10月28日に開示した「代表執行役の異動について」である。同社の代表執行役(同社は指名委員会等設置会社)であるシュテファン・カウフマン氏(以下「カウフマン氏」という)が辞任するという内容だが、同氏は、代表執行役だけでなく執行役と取締役も辞任している。 「異動の理由」の記載は次のとおりである(下線は筆者による)。 カウフマン氏が「違法薬物を購入」していたらしいことは週刊誌等で報じられているので、そちらを参照していただきたいが、オリンパスの取締役会が「同氏に辞任するよう求めたところ、同氏がこれに応じ」ているため、おそらく事実なのだろう。 2 真のグローバル企業になるために オリンパスは2019年1月11日に「真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指した企業変革プラン『Transform Olympus』の策定及び代表取締役の異動に関するお知らせ」を開示し、「当社グループが真のグローバルなメディカル・テクノロジー(以下「メドテック」といいます。)カンパニーへと飛躍することを目的とした抜本的な企業変革プラン『Transform Olympus』」 を策定したとしている。 そのプランの中には「取締役会のダイバーシティ化」が含まれており、次のように記載されている。 カウフマン氏はこれに伴い取締役に就任し(2019年2月8日開示「取締役候補者に関するお知らせ」)、指名委員会等設置会社移行に伴い執行役にも就任している(2019年3月29日開示「指名委員会等設置会社への移行および役員異動に関するお知らせ」)。そして、2023年4月1日には代表執行役に就任している(2022年10月21日開示「代表執行役及び執行体制の変更に関するお知らせ」)。 「取締役候補者に関するお知らせ」に記載されたカウフマン氏を取締役の「候補とした理由」は次のとおりである。「グローバル」という言葉が3回も使用されている。 「グローバルかつ多角的な経験及び専門知識を備えた」日本人もいるかと思うが、これを機にオリンパスは外国人の役員を増やしていく。2018年3月期は外国人の取締役がいなかったが(第150期有価証券報告書)、2024年3月期には取締役13名中5名が、また、執行役も10名中5名が外国人になっている(第156期有価証券報告書)。 3 真にグローバルな企業とは? 役員の構成が「グローバル」になったようだが、役員報酬の額も「グローバル」になったようである。日本企業は欧米企業ほど従業員給与と役員報酬の差が大きくないが、オリンパスは大きくなっている。2024年10月25日付日本経済新聞の記事「出世で『一獲千金』の夢-役員・従業員の報酬差ランキング」によると、同社は従業員給与と役員報酬の差が大きい企業ランキングの上位にあり、役員報酬は従業員給与の30から40倍とのことである。「Transform Olympus」が実施される前の2019年3月期には1億円以上の役員報酬を得ている者は1名だったのに(第151期有価証券報告書)、2024年3月期には9名になっている(第156期有価証券報告書)。 同社は少なくとも表面的には「グローバル」な企業になったようにみえるが、果たして真に「グローバル」な企業になったと言えるのだろうか。「真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指した企業変革プラン『Transform Olympus』の策定及び代表取締役の異動に関するお知らせ」では、あえて「真の」とされていたが、そもそも真にグローバルな企業とは、どのような企業なのだろうか。 なお、役員報酬の額はカウフマン氏が突出しており、2024年3月期は1,138百万円である。しかし、その約半分(業績連動金銭報酬と非金銭報酬)はクローバック条項(役員報酬を会社に返還させる仕組み)の対象となっている(第156期有価証券報告書)。執行役在任中に得た役員報酬がその対象になるので、かなりの額を返還しなければならなくなるだろう。 (了)
読み物
連載
プラス思考の経済効果 【第30回】「2023年度ふるさと納税の経済効果」
プラス思考の経済効果 【第30回】 「2023年度ふるさと納税の経済効果」 関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩 1 はじめに ふるさと納税制度は、都市に人口が集中してきている社会における地方と大都市の税収の格差、人口格差、経済力格差などを是正し、地方創生を目的として2008年から導入された寄附金税制の1つです。 【図表1】には、制度が導入された2008年度から2023年度までのふるさとの納税の受入額の推移が示されています。 【図表1】 ふるさと納税の受入額の推移(単位:億円) 2008年度の受入額は約81億4,000万円でしたが、2023年度には約1兆1,175億円にまで増加しました。15年間でなんと約137倍になっています。 本稿では、2023年度のふるさと納税の経済効果を推計します。 なお、本稿で解説する経済効果は、株式会社ふるさと納税総合研究所代表取締役西田匡志氏、桃山学院大学兼任講師王秀芳氏と協力して分析を行いました。 2 ふるさと納税の経済効果とは (1) ふるさと納税における地方税の動き ふるさと納税の経済効果は、以下の図のとおりです。 【図表2】 ふるさと納税制度導入前の地方税の動き 国としては全地方自治体の(C1)の合計が税収となります。 【図表3】 ふるさと納税制度導入後の地方税の動き 国としては全地方自治体の(C2)の合計が税収となります。D2はB2の5割以下の金額です。 (2) ふるさと納税のお金の動き ふるさと納税のお金の動きは、個別の地方自治体(都道府県、市、町、村など)と国全体とを分けて考えるべきです。 ふるさと納税制度導入前のC1と比べた制度導入後のC2の状況は、それぞれの地方自治体によって異なります。税収が増える地方自治体はふるさと納税のおかげで行政費が増加し、逆に減少する地方自治体は制度導入によって行政費が減少することになります。 ふるさと納税制度導入後のC2はふるさと納税制度が導入される以前からあった地方自治体の税収であって、地方自治体の行政費に使われていたため、国全体としてはC2の税収は以前より増加することはないので、新たな経済効果は発生しません。したがって、ふるさと納税制度導入以後はD2のみが新たな消費と投資に使われることになり、それがふるさと納税制度の経済効果の計算の基になるお金になるのです。 3 2023年度のふるさと納税における直接効果の項目 2023年度のふるさと納税の経済効果は返礼品に係る支出(消費と投資)の金額から推計します。返礼品に係る支出は、調達に係る費用、送付に係る費用、広報に係る費用、決済等に係る費用、事務に係る費用等の5項目で、詳細な金額は以下に示されています。 【図表4】 直接効果の項目(単位:百万円) (※) 上記のデータは寄附金額(1兆1,175億円)のうち、返礼品にかかる支出です。この支出金額を用いて経済効果を推計します。分析にあたっては、総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果」令和5年度版(2023年8月1日)、令和6年度版(2024年8月2日)などを参照しました。 この金額は、【図表3】で述べられた返礼品関係の経費(D2)であり、経済効果の計算の基となる直接効果の項目になります。 4 返礼品のシェアと金額 次に、返礼品について分析を行います。返礼品には非常に多くの種類があります。例えば、肉、魚貝類、果物類、米、エビ・カニ、お菓子、雑貨・日用品、お酒、イベントのチケット、家具・工芸品、旅行券、ファッション、スポーツ・アウトドアなど多種多様です。 そして、返礼品の調達に係る費用3,028億6,900万円における各カテゴリーの比率は、「ふるさとチョイス」の「お礼の品カテゴリー(大):令和4年度」のデータを用いると【図表5】のようになります。この表より、肉、魚貝類、果物類、米・パン、エビ・カニ等の農林水産物の返礼品は人気があることがわかります。 【図表5】 返礼品の調達に係る費用における各カテゴリーのシェアと金額 (※) 【図表4】の返礼品の調達に係る総費用3,028億6,900万円と【図表5】の合計金額3,029億3,000万円の差は、四捨五入の関係でシェアの合計は100%ではなく、100.01%となっていることによるものです。 5 経済効果 【図表4】と【図表5】のデータに基づいて、5,429億1,300万円の直接効果(この中には返礼品の調達に係る費用3,028億6,900万円が含まれています)と、総務省作成の「令和2年全国産業連関表」を用いた経済効果を求めると、以下のようになります。 【図表6】 ふるさと納税の経済効果 (※) 計測にあたっては、総務省の「令和2年全国産業連関表」を使用しました。また、按分する産業の自給率は、100%と仮定しています。 6 まとめ 本稿では、2023年度のふるさと納税のうち返礼品にかかる消費支出が日本全体にもたらす効果を分析しました。経済効果は約1兆2,221億500万円、さらに雇用創出効果は11万2,936人、粗付加価値創出効果は約6,417億7,800万円となりました。 日本全体としては、2023年度のふるさと納税の返礼品に係る支出(消費と投資)の金額は5,429億1,300万円でしたが、その経済効果は約1兆2,221億500万円となりました。経済効果は直接効果の約2.25倍という非常に大きな値になりました。 ふるさと納税制度は、財源不足に悩む自治体からは救世主のように考えられており、地方自治体の財源の1つとなってきています。また、寄附者からは、わずかな自己負担で自分の好む返礼品を入手できるお得な制度として歓迎されています。さらに、ふるさと納税制度による返礼品の調達は、その地域の活性化・産業育成にも繋がっています。 つまりふるさと納税制度は、納税者にもメリットをもたらし、地方自治体の財源の1つになるだけではなく、その地域の産業の育成、雇用の増加、さらに地域の活性化・創生にも繋がっていることが立証されました。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
税務・会計
財務会計
速報解説一覧
開示関係
《速報解説》 金融庁、政策保有株式の開示に係る「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表~開示ガイドラインでは「純投資目的」の考え方を明示~
《速報解説》 金融庁、政策保有株式の開示に係る「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表 ~開示ガイドラインでは「純投資目的」の考え方を明示~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年11月26日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、政策保有株式の開示について改正するものである。 意見募集期間は2024年12月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 有価証券報告書及び有価証券届出書における「株式の保有状況」の開示に関して、当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る)について、次の開示を求める。 また、企業内容等開示ガイドラインにおいて、次の規定を設け、「純投資目的」の考え方を明示する。 Ⅲ 施行時期等 公布の日から施行する予定である。 改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定は、2025(令和7)年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書及び有価証券届出書から適用する予定である。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
税務・会計
財務会計
速報解説一覧
《速報解説》 ASBJが2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正案を公表~包括利益の表示や特別法人事業税及び種類株式の取扱いに関して提案~
《速報解説》 ASBJが2024年年次改善プロジェクトによる 企業会計基準等の改正案を公表 ~包括利益の表示や特別法人事業税及び種類株式の取扱いに関して提案~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年11月21日、企業会計基準委員会は、「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、2024年年次改善プロジェクトにおいて検出された事項について、改正するものである。 意見募集期間は2025年1月20日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 包括利益の表示関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 包括利益の表示について、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」などの用語について、連結財務諸表上においては「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるための変更を行う。 株主資本等変動計算書について、個別株主資本等変動計算書に関する定めと連結株主資本等変動計算書に関する定めを分けたうえで、連結株主資本等変動計算書の用語についての見直しなどを行う。 3 適用時期等 公表日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用する。 ただし、公表日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することができる。この場合、公表日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表及び四半期連結財務諸表については適用しない。 Ⅲ 特別法人事業税関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 3 適用時期等 公表日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。 経過措置などに注意する。 Ⅳ 種類株式関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 実務対応報告第10号の適用対象となる種類株式について、会社法108条1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式として定義する。 会社法108条1項を参照する定義とすることにより、実務対応報告第10号の適用対象が開発時において想定されていなかった種類株式に拡大することとなる。 3 適用時期等 適用日以後取得する種類株式について次のように行う。 適用日より前に取得した種類株式について次のように行い、いずれの方法を選択した場合も、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わない。 (了)
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
監査
税務・会計
速報解説一覧
《速報解説》 JICPA、「倫理規則」の改正案を公表~タックス・プランニング業務に係る規定を新設~
《速報解説》 JICPA、「倫理規則」の改正案を公表 ~タックス・プランニング業務に係る規定を新設~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年11月20日、日本公認会計士協会は、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際会計士倫理基準審議会(The International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)がタックス・プランニング業務及び関連業務に関して倫理規程を改訂したことを受けたものである。 意見募集期間は2025年1月6日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 タックス・プランニング業務は、所属する組織/依頼人が実務を税効率の高い方法で計画又は構築することを支援する目的で行う助言業務である(280.5 A1/380.5 A1)。 我が国では公認会計士が税理士登録をすることによって税務業務を行うことができるため、タックス・プランニング業務を行う税理士資格を持つ公認会計士に対して一定の規律を示すことが社会的にも期待されている。 日本公認会計士協会の会員が行うタックス・プランニング業務は、税額の最小化を図る特定の対策を伴う可能性があり、基本原則の遵守に対する阻害要因が生じる可能性がある。 このため、倫理規則において、所属する組織に対するタックス・プランニング業務及び関連業務(セクション280)と依頼人に対するタックス・プランニング業務及び関連業務(セクション380)に関する規定を設けることを提案している。 タックス・プランニング業務は、幅広いトピック又は分野を対象としている。例えば、次のものが含まれる(280.5 A2/380.5 A2)。 なお、所属する組織/依頼人の税務関連の法令等に基づく税務申告書の作成、申告、報告、納税及びその他の義務の履行を支援する業務は、タックス・プランニング業務には含まれない(280.5 A3/380.5 A3)。 会員は、タックス・プランニングについて法令等に照らして信頼できる根拠(Credible Basis)があると判断できなければ、当該タックス・プランニングについて所属する組織/依頼人に提言又は助言をしてはならない(R280.12/R380.12)。 Ⅲ 適用時期等 2026年4月1日から施行する。 なお、会員の判断において早期適用することを妨げるものではない。 (了)
お知らせ
その他お知らせ
プロフェッションジャーナル No.595が公開されました!~今週のお薦め記事~
2024年11月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.595を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
税務
税務・会計
解説
解説一覧
日本の企業税制 【第133回】「「103万円の壁」の見直し」
日本の企業税制 【第133回】 「「103万円の壁」の見直し」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 11月11日、石破総理大臣は、衆議院本会議で行われた総理大臣指名選挙の決選投票を経て、第103代の総理大臣に選出され、少数与党政権としてのスタートとなった。同月14日に自民党と公明党と国民民主党の政務調査会長、税制調査会長がそれぞれ会談を行い、税制について3党の税制調査会の会長間で協議を開始することとされた。なかでも注目されているのが、いわゆる「103万円の壁」の見直しである。 〇所得税 所得税の課税対象となる「給与所得の金額」は、その年中の「給与等の収入金額」から、その「給与等の収入金額」に応じた給与所得控除額を控除した残額である。「給与等の収入金額」とは、いわゆるグロス給与(額面給与:給与所得の源泉徴収票の支払金額)である。他の所得がなければこの残額が「合計所得金額」となる。なお、「給与等の収入金額」が162万5,000円までは、給与所得控除の額は一律55万円である。「合計所得金額」からさらに基礎控除(そのほか、各人の状況により、扶養控除、配偶者控除、社会保険料控除などの人的控除等と呼ばれる控除も適用される)を控除した上で課税所得が算出される。 平成30年度税制改正では、働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする観点から、給与所得控除等の見直しを行いつつ、一部を基礎控除に振り替えること等の改正が行われた。これらの改正は、令和2年分以後の所得税について適用されている。 この改正では、まず、給与所得控除額を一律10万円引き下げ(最低額は、65万円 ⇒ 55万円)、その上限額が適用される「給与等の収入金額」が850万円 (改正前:1,000万円)とされるとともに、その上限額を195万円(改正前:220万円)に引き下げることとされた(所法28③)。 一方、基礎控除については、控除額を一律10万円引き上げる(38万円 ⇒ 48万円)とともに、所得再分配機能の回復の観点を踏まえつつも、基礎控除が最も基本的な控除であり、より広い所得階層に適用されるべきものであることを勘案し、「合計所得金額」が2,400万円を超える個人についてはその「合計所得金額」に応じて控除額が逓減し(2,400万円超2,450万円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円)、「合計所得金額」が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされた(所法86①)。 こうした改正の結果、現行制度では、給与所得者(単身)の場合、給与所得控除の最低額(55万円)と基礎控除額(48万円)の合計額である103万円を上回る「給与等の収入金額」がある場合に、所得税が課税される可能性があるということとなる(社会保険料や生命保険料、損害保険料の支払いがある場合には、実際に課税が発生するのはさらに高い「給与等の収入金額」を得ている場合となる)。これが、いわゆる「103万円の壁」である。 国民民主党の選挙公約では、この103万円を178万円まで、75万円引き上げることが提示されており、仮に基礎控除を単純に75万円引き上げた場合には、報道によれば、所得税で3兆円強の減税となるとされている。もっとも、所得税の33.1%は地方交付税として地方財源となることから、このうち約1兆円は地方財政への影響が生じることとなる。 〇個人住民税 地方税(道府県・市町村)である個人住民税(所得割)の計算も基本的には、所得税と同様である。 給与所得控除については、所得税の計算の例によることとされており、所得税と同じである(最低55万円)。 一方、基礎控除については、所得税における基礎控除とは異なる金額となっている。所得税と同様、平成30年度税制改正で見直しが行われ、控除額を一律10万円引き上げる(33万円 ⇒ 43万円)とともに、「合計所得金額」が2,400万円を超える個人についてはその「合計所得金額」に応じて控除額が逓減し(2,400万円超2,450万円以下は29万円、2,450万円超2,500万円以下は15万円)、「合計所得金額」が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされた。これらの改正の施行期日は、令和3年1月1日とされ、令和3年度以後の年度分の個人住民税(所得割)について適用されている。 こうした改正の結果、現行制度では、給与所得者(単身)の場合、給与所得控除の最低額(55万円)と基礎控除額(43万円)の合計額である98万円を上回る「給与等の収入金額」がある場合に、個人住民税(所得割)が課税される可能性があるものの、所得税とは異なり、個人住民税(所得割)においては、低所得者層の負担を考慮し、生活保護基準額(生活扶助基準額+住宅扶助+教育扶助)を勘案して、非課税限度額が設けられている(昭和56年度創設)。合計所得金額が「35万円×世帯人数+10万円+同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合の加算額32万円」に達するまでは課税が生じない。単身者の場合、給与所得控除(55万円)の後の「合計所得金額」が35万円+10万円=45万円に達するまでは課税が生じない。つまり「給与等の収入金額」が55万円+45万円=100万円までは課税されないこととされている。個人住民税(所得割)においては、「100万円の壁」があるともいえよう。 仮に個人住民税(所得割)の基礎控除を単純に75万円引上げ118万円とした場合には、報道によれば約4兆円の減税となるとされている。 (了)
所得税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈令和6年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第2回】「定額減税適用の留意点と源泉徴収票への記載」
〈令和6年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第2回】 「定額減税適用の留意点と源泉徴収票への記載」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 第1回に引き続き、第2回(本稿)も定額減税について取り上げる。本稿では、定額減税を適用する際の留意点と源泉徴収票への記載について解説する。 【1】 定額減税の対象者の判定 年末調整において定額減税の対象となるのは、年末調整の対象者のうち令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の納税者本人である(措法41の3の8①)。納税者本人が定額減税の対象となるかどうかは、基礎控除申告書に記載された合計所得金額から判定する(※1)。 (※1) 基礎控除申告書の提出がなく合計所得金額の見積額を確認できない場合には、納税者本人から当該金額の通知(口頭やメールも可)を受けることにより判定する(措法41の3の8⑨)。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 なお、「合計所得金額」であることから、2ヶ所以上から給与等の支払いを受けている場合にはすべてを合計した給与所得により判定し、給与所得以外にも所得がある場合にはそれらも含めて判定する。 【2】 同一生計配偶者の有無及び扶養親族の人数の把握 (1) 原則的な取扱い 年調減税額の計算において、同一生計配偶者(居住者)の有無や扶養親族(居住者)の人数を把握する必要がある。この場合、役員や従業員(以下、「従業員等」という)から新たな申告書を提出してもらう必要はない。従業員等から提出を受けた「配偶者控除等申告書」や「扶養控除等申告書」の記載により把握する(措法41の3の8②一、二)。 (2) 「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受ける場合 合計所得金額の見積額が1,000万円を超える従業員等は、配偶者控除の適用を受けることができないので、同一生計配偶者がいる場合でも「配偶者控除等申告書」は提出しない。 このように「配偶者控除等申告書」を提出しない従業員等が、同一生計配偶者を年調減税額の計算に含める場合には、同一生計配偶者について記載された「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受けることになる(措法41の3の8②三)。 なお、令和6年分の「配偶者控除等申告書」は、「年末調整に係る定額減税のための申告書」との兼用様式となっている。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 また、16歳未満の扶養親族も含め、一般に「扶養控除等申告書」にはすべての扶養親族が記載される。しかし、扶養控除の対象にならない16歳未満の子を「扶養控除等申告書」に記載していないケースもある。このように「扶養控除等申告書」に記載されていない扶養親族を年調減税額の計算に含める場合には、その扶養親族について記載された「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受けることになる(措法41の3の8②四)。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (注) 配偶者控除の適用対象とならない同一生計配偶者については、配偶者控除等申告書との兼用様式又は本様式のいずれかに記載する。 ※国税庁「《記載例》年末調整に係る定額減税のための申告書」より抜粋 〈同一生計配偶者の有無及び扶養人数を把握する申告書〉 【3】 同一生計配偶者に関する留意点 減税額計算の人数に含める配偶者は、同一生計配偶者(居住者のみ)である(措法41の3の3②)。同一生計配偶者とは、納税者と生計を一にする合計所得金額48万円以下の配偶者(青色事業専従者等は除く)をいう(所法2①三十三)。 合計所得金額については、【1】と同様、2ヶ所以上から給与等の支払いを受けている場合にはすべてを合計した給与所得により判定し、給与所得以外にも所得がある場合にはそれらも含めて判定する。 〈減税額計算の人数に含める配偶者〉 (注) 令和6年の中途で死亡した配偶者の場合には、死亡時の現況で判定する。 なお、同一生計配偶者の定義には、納税者本人の所得に関する要件はない。よって、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えるため、同一生計配偶者について配偶者控除の適用を受けることができない場合でも、その配偶者が居住者であれば減税額計算の人数に含まれることとなる。 【4】 扶養親族に関する留意点 減税額計算の人数に含める親族は、扶養親族(居住者のみ)である(措法41の3の3②)。扶養親族とは、納税者本人と生計を一にする合計所得金額48万円以下の配偶者以外の親族(青色事業専従者等は除く)をいう(所法2①三十四)。 合計所得金額については、【1】及び【3】と同様、2ヶ所以上から給与等の支払いを受けている場合にはすべてを合計した給与所得により判定し、給与所得以外にも所得がある場合にはそれらも含めて判定する。 〈減税額計算の人数に含める親族〉 (注) 令和6年の中途で死亡した扶養親族の場合には、死亡時の現況で判定する。 なお、扶養親族の定義には、親族の年齢に関する要件はない。よって、扶養控除の対象とならない年齢15歳以下の扶養親族も減税額計算の人数に含まれることとなる。 【5】 年調減税額を引ききれない場合の対応 定額減税は、令和6年分の所得税について措置された制度である。よって、年末調整の結果、控除しきれない年調減税額が生じたとしても、令和7年1月以後に支給する給与等に係る源泉徴収税額から控除することはできない。 なお、控除しきれない年調減税額が生じた場合には、源泉徴収票(※2)に「控除外額」としてその金額を記載する。 (※2) 給与支払報告書にも同様の記載を行う。 【6】 源泉徴収票の記載方法 (1) 年末調整を行った従業員等の場合 年末調整を行った従業員等の源泉徴収票には、定額減税についての記載が必要である。具体的には、摘要欄に次のように記載する。 (※3) 控除しきれなかった年調減税額がない場合は、「控除外額0円」と記載する。 また、合計所得金額が1,000万円を超える従業員等が同一生計配偶者を年調減税額の計算に含めた場合には、上記の記載に加え「非控除対象配偶者減税有」と記載する。 なお、年末調整の対象となる従業員等のうち、年末調整の対象となる給与等以外に収入があるため令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える人は、定額減税の対象とならない(※4)。このような場合には、源泉徴収票に控除した年調減税額及び控除しきれなかった年調減税額がともに0円であることを記載する。 (※4) 月次減税事務においては減税額が控除されているが、年末調整で精算されている。 (2) 年末調整を行わなかった従業員等の場合 支払った給与等が収入金額ベースで2,000万円を超えるなどの理由により、年末調整の対象とならなかった従業員等も、月次減税事務では定額減税の適用を受けている。これらの人は、確定申告で定額減税についての最終的な精算を行うこととなるため、源泉徴収票には定額減税に関して何も記載する必要はない。 なお、源泉徴収票の源泉徴収税額欄には、月次減税額を控除した後の実際に源泉徴収した税額を記載する。 * * * 最終回(第3回)は、年調減税事務に関し、実務上判断に迷う事項等をQ&A方式で解説する予定である。 (了)
所得税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
給与計算の質問箱 【第59回】「年末調整書類の書式の前年からの変更点」~簡易な扶養控除等申告書及び定額減税に伴う対応~
給与計算の質問箱 【第59回】 「年末調整書類の書式の前年からの変更点」 ~簡易な扶養控除等申告書及び定額減税に伴う対応~ 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 年末調整書類の書式について前年から変更がありましたら教えてください。 A 年末調整書類の書式の変更点は以下のとおりである。 * * 解 説 * * 1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 令和5年分と令和6年分の書式は同じである。また、令和6年分と令和7年分の書式も同じである。令和7年分から簡易な扶養控除等申告書が提出できることになった。 令和6年分に記載した事項から異動がない場合には、申告書の右上の「前年の申告内容からの異動」のチェックボックスにチェックを入れる。または、チェックボックスのない申告書については「前年から異動なし」と記載する。ただし、氏名、個人番号、住所(下記申告書の上段の赤枠、下段の赤字の箇所)は記入が必要である。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁「【簡易対応様式】令和7年分扶養控除等(異動)申告書」より抜粋のうえ筆者作成 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁「簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)」7頁より抜粋 2 給与所得者の保険料控除申告書 令和5年分と令和6年分の書式は同じである。 3 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 令和5年分の書式と比べて、令和6年分の書式には「年末調整に係る定額減税のための申告書」が追加された。下記申告書の赤枠部分が新たに追加された箇所である。 給与所得者の基礎控除申告書について、令和5年分では判定欄の「1,000万円超2,400万円以下」の箇所が、令和6年分では判定欄が「1,000万円超1,805万円以下」、「1,805万円超2,400万円以下」に区分された。これは、本人の合計所得金額が1,805万円以下の方が定額減税の対象だからである。判定欄の(A)~(D)にあてはまる場合は、「本人定額減税対象」のチェックボックスにチェックを入れる。 給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書において、定額減税の対象となる同一生計配偶者の合計所得金額は48万円以下であるから、判定欄の(A)~(D)かつ、①・②にあてはまる場合は、「配偶者定額減税対象」のチェックボックスにチェックを入れる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁「令和6年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書」より抜粋のうえ筆者作成 〈令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書の一部〉 (※) 国税庁「令和5年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」より一部抜粋のうえ筆者作成 (了)